説明

光ロータリージョイント

【課題】光学オイルを用いず、簡単な構成で、高速に回転するレーダー用にも使用可能となり、かつ光ファイバーの光軸のぶれが起きる場合でも、伝送損失が生じないようにする。
【解決手段】第1光ファイバー部11の端部に内面が鏡面とされた第1光反射パイプ15が接続される状態でこれらを第1固定用ブロック19に取り付け、第2光ファイバー部12の端部に第2光反射パイプ16が接続される状態でこれらを第2固定用ブロック20に取り付ける。そして、上記第1固定用ブロック19内の空間領域19dに、ベアリング21,22を介して2つの光ファイバー部11,12の端部が対向するように上記第2固定用ブロック20を取り付け、かつ第1光反射パイプ15と第2光反射パイプ16との間に1mm以下の間隙dを設けることにより、第1固定用ブロック19と第2固定用ブロック20が互いに回転可能となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ロータリージョイント、特にアンテナを回転させて電波の送受信を行うレーダー装置等に使用され、アンテナと一体で回転する送受信部から、表示装置へ信号を伝送するための伝送路を連結・接続するための光ロータリージョイントの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダー装置は、アンテナから電波を送信して目標物から戻ってくる反射波を受信し、その送受信時間から目標物までの距離を送受信部で計算し、この結果を回転するアンテナの方向と同期させて、目標物までの距離と方位を表示装置に表示するように構成されている。一般的なレーダー装置では、アンテナと送受信部とを接続する伝送路の接続装置としてロータリージョイントが用いられている。
【0003】
従来から用いられているロータリージョイントは、固定された送受信部側の伝送路に対し、アンテナ側の伝送路だけを回転させる構造となっており、回転するアンテナと送受信部との間で、電波伝送を可能としている。これは、レーダー装置の送受信部の中で、電波の発生、送信にマグネトロンを使用しており、その重量と体積の大きさにより、送受信部を回転するアンテナ側に設置できないためである。
【0004】
一方、将来的に送受信部(機)を小型化できれば、送受信部とアンテナを一体化させることも可能になるが、この場合においても、アンテナと一体になる送受信部と表示器との間に、ロータリージョイントに相当する回転部を設けなければならず、この回転部を介して送受信データを高速で通信することが必要になる。
【0005】
このような送受信部とアンテナ間の送受信或いはアンテナと一体になる送受信部と表示器との間の高速データ通信を行う方法として、従来から、導体を使用する方法、電波を使用する方法、光を使用する方法が知られている。上記の導体を使用する方法は、例えばスリップリングのように導体と導体を接触させ回転させるものがあるが、この方法では、スリップ部で発生する雑音等の影響があって、高速の通信ができないし、電波を使用する方法では、周波数により通信速度の制約があるため、所望のデータ転送ができない。
【0006】
一方、光を使用する方法では、光ロータリージョイントで連結される両部(装置)の光ファイバー等が同一軸上にあれば高速のデータ通信、データ転送が可能であり、この光ロータリージョイントにおいて、最も簡便なものとしては光ファイバーを対向させ接触させる方法がある。しかし、この方法では、接触面が磨耗して通信ができなくなり、装置の寿命が短くなるという問題がある。
【0007】
また、光ファイバー同士が接触しないようにそれらの間に空隙を設けることも考えられるが、この場合は、回転させたときに空隙分の光拡散と回転による光軸のぶれにより伝達する光量が減少するため、通信レートが落ち十分なデータ転送ができなくなる問題がある。更に、非接触で光通信する方法として、下記の特許文献1に示されるように、海底ケーブルで使用される水中用光ロータリーコネクタがある。
【0008】
図4には、特許文献1に示される従来の光ロータリージョイント(ロータリーコネクタ)の連結部の構成が示されており、この光ロータリージョイントでは、グラスファイバーと等価な屈折率を有する光学オイルが満たされた閉容器を固定環と回転環で構成し、例えばこの固定環に図の一方の光ファイバー1が設けられ、回転環に他方の光ファイバー2が設けられると共に、これら光ファイバー1,2が同一軸上で互いに回転可能となるように対向配置される。そして、これら光ファイバー1,2の例えば一方の光ファイバー1の端部に光ガイド3が設けられ、この光ガイド3は、金属スリーブ内に接着されるセラミック又は金属フェルールの中心に光ファイバーグラスを挿入したものであり、この光ガイド3と光ファイバー2との間に空隙を設けた構造にすることで、非接触の光通信が実現できるようになっている。
【特許文献1】特開昭63−267902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図4の従来の光ロータリージョイントでは、対向する光ファイバー1,2を保持する固定環と回転環の内部が光学オイルで満たされており、この光ロータリーコネクタをそのままレーダーに適用する場合には、連続する回転によって光学オイルの温度が上昇し、このオイルが膨張して光軸がずれたり、気泡の発生により伝送損失が増大する等の問題がある。しかも、光学オイルを密封することから、構造が複雑になるという不都合もある。
【0010】
また、光ファイバー1と光ガイド3との接続、光ガイド3と光ファイバー2との接続において、それぞれの光軸を一致させる必要があるが、一方が回転する構成のロータリージョイントでは、光軸のぶれが起き易く、伝送損失が生じるという問題がある。
【0011】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光学オイルを用いず、簡単な構成で、高速に回転するレーダー用にも使用可能となり、かつ連結された光ファイバーの光軸のぶれが起きる場合でも、伝送損失が生じることのない光ロータリージョイントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る光ロータリージョイントは、光ファイバーを有するそれぞれの端部を対向させて配置される第1ファイバー部及び第2光ファイバー部と、これら第1及び第2光ファイバー部のそれぞれの端部に光接続され、光ファイバーのコア径よりも大きい内径を持ち、内面が鏡面とされた2つの管状光伝送路(例えばパイプ)であって、所定の間隙を以って配置された第1及び第2光反射伝送路と、を含み、上記第1光ファイバー部及び第1光反射伝送路と上記第2光ファイバー部及び第2光反射伝送路とが互いに回転可能となるように構成したことを特徴とする。
請求項2に係る発明は、上記第1光ファイバー部及び第1光反射伝送路を第1固定用ブロックに取り付け、上記第2光ファイバー部及び第2光反射伝送路を第2固定用ブロックに取り付け、上記第1固定用ブロック内空間に、ベアリング(転がり軸受、すべり軸受等)を介して上記第2固定用ブロックを取り付け、第1固定用ブロックと第2固定用ブロックとが互いに回転可能となるように構成したことを特徴とする。
【0013】
本発明の上記構成によれば、第1及び第2光ファイバー部から送出された光が、光ファイバーのコア径よりも大きい内径の第1及び第2光反射伝送路の内面で反射しながら伝搬されると共に、この第1光反射伝送路と第2光反射伝送路との間に連結部の回転を確保しかつ良好な光伝送を可能にするための例えば1mm以下の間隙が設けられるので、第1及び第2光ファイバー部間の光通信を光学オイルを用いることなく行うことができる。しかも、第1又は第2光ファイバー部に光軸のぶれがあった場合でも、第1光ファイバー部と第1光反射伝送路との間、第1光反射伝送路と第2光反射伝送路との間、及び第2光反射伝送路と第2光ファイバー部との間の光通信が伝送損失なく良好に行われる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光ロータリージョイントによれば、光学オイルを用いることなく、高速に回転するレーダー用にも使用可能となり、また簡単な構成となるので、低コストで製作することができる。更に、連結部(第1及び第2光反射伝送路)における通信の面積が光ファイバーのコア径よりも大きくなるので、連結された光ファイバーに光軸のぶれが起きる場合でも、光軸のぶれ分を吸収し、伝送損失が生じることがないという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1乃至図3には、本発明の実施例に係る光ロータリージョイントの構成が示されており、図1に示されるように、実施例は、第1光ファイバー部11及び第2光ファイバー部12と、第1光反射パイプ15及び第2光反射パイプ16が設けられる。
図3に示されるように、上記第1光ファイバー部11及び第2光ファイバー部12は、その中心部に、コア17Cとクラッド17Kからなる光ファイバー17を備えており、第1光反射パイプ15及び第2光反射パイプ16は、内面が鏡面とされた円筒管であり、実施例では、その内径を上記コア17Cの径よりも大きくし、上記クラッド17Kの径(0.2mm程度)と略同一に設定している。なお、パイプ15,16の長さは、例えば4.4mm程度である。
【0016】
また、第1光ファイバー部11と第1光反射パイプ15を固定・保持するための第1固定用ブロック19、第2光ファイバー部12と第2光反射パイプ16を固定・保持するための第2固定用ブロック20、2つのベアリング(例えばボールベアリング)21,22、これらベアリング21,22を第1固定用ブロック19内に固定するためのベアリング固定部材24が設けられる。
【0017】
上記第1固定用ブロック19には、第1光ファイバー部11の先端側円筒部内面に形成された雌ネジ部11aに螺合し、第1光ファイバー部11を固定するための雄ネジ部19a、第1光ファイバー部11の先端部を挿入する空間(円柱状)領域(挿入部)19b、第1光反射パイプ15を挿入固定する空間領域19c、第2固定用ブロック20及びベアリング21,22を挿入配置する空間領域19dが形成され、この空間領域19cと19dの間に、ベアリング21の回転を確保すると共に、第1光反射パイプ15と第2光反射パイプ16の間隙を確保するための調整空間19eが設けられる。
【0018】
即ち、この調整空間19eは、空間領域19dにベアリング21を挿入したとき、このベアリング21の内軸が回転可能になるように、該内軸外径より大きくし、外軸(側面)のみに接触するように加工され、またその横幅は、第1及び第2光反射パイプ15と16の間隙dが1mm以下(例えば0.15mm程度)になるように設定される。また、この第1固定用ブロック19の空間領域19dの外周側端部には、ベアリング固定部材24を固定するためのネジ穴19fが形成される。
【0019】
次に、第2固定用ブロック20には、第2光ファイバー部12の先端側円筒部内面に形成された雌ネジ部12aに螺合し、第2光ファイバー部12を固定するための雄ネジ部20a、第2光ファイバー部12の先端部を挿入する空間領域20b、第2光反射パイプ16を挿入固定する空間領域20c、ブロック外周に設けられ、ベアリング15,16の内軸側面のみに接する環状突起20dが形成される。
【0020】
上記ベアリング21,22は、内軸(内輪)と外軸(外輪)との間に配置されたボール、ローラ等によって、内軸と外軸が互いに回転可能となる軸受である。上記ベアリング固定部材24は、第1固定用ブロック19の空間領域19dにベアリング21,22と第2固定用ブロック20を配置して固定する蓋のような役割をし、空間領域19d内に嵌合してベアリシグ22の外軸のみに接する凸部24a、上記ネジ穴19eの位置に一致するネジ固定用孔24bが形成される。
【0021】
実施例は以上の構成からなり、実施例の光ロータリージョイントは、図2の状態に組み立てられる。即ち、第1固定用ブロック19の空間領域19cに、空間領域19b側から第1光反射パイプ15を挿入し、この空間領域19bに第1光ファイバー部11の先端部を配置しながら、この雌ネジ部11aに雄ネジ部19aを螺合結合すれば、第1光ファイバー部11が第1固定用ブロック19に固定・保持され、同時に第1光反射パイプ15も固定状態となる。その後、第2固定用ブロック20の空間領域20cに、空間領域20b側から第2光反射パイプ16を挿入し、この空間領域20bに第2光ファイバー部12の先端部を配置しながら、この雌ネジ部12aに雄ネジ部20aを螺合結合すれば、第2光ファイバー部12が第2固定用ブロック20に固定・保持され、第2光反射パイプ16も固定状態になる。
【0022】
次に、上記第1固定用ブロック19の空間領域19dに対し、ベアリング21、第2光ファイバー部12を固定した第2固定用ブロック20、ベアリング22を挿入し、このベアリング22の外軸側面に、凸部24aを当接しながらベアリング固定部材24を配置し、このベアリング固定部材24をネジ26で第1固定用ブロック19(ネジ穴19f)に固定すれば、光ロータリージョイントの組み立てが完了する。
【0023】
図3には、第1光ファイバー部11と第2光ファイバー部12の対向部分の拡大図が示されており、実施例では、第1光ファイバー部11の右側端面に第1光反射パイプ15が接触固定され、第2光ファイバー部12の左側端面に第2光反射パイプ16が接触固定されると共に、これら第1光反射パイプ15と第2光反射パイプ16との間には、例えば0.15mm程度の隙間dができる。
【0024】
この第1光反射パイプ15と第2光反射パイプ16との間隙の適正値は、実験の結果、第1及び第2光ファイバー部11,12内の光ファイバーのコア径が100μm程度、クラッド径が0.2mm程度のとき、光反射パイプ15,16間の間隙を1mm以下とすれば、良好な光通信が可能であることが分かった。また、第1光ファイバー部11と第2光ファイバー部12の間隔を最大で20mmとし、第1及び第2の光反射パイプ15,16の長さとそれらの間隙(d=0.15mm程度)を設定すると、第1及び第2光反射パイプ15,16の内径は、0.1mmよりも大きく、0.7mm以下の範囲で良好な光通信が可能となった。
【0025】
そして、実施例の構成によれば、例えば第2光ファイバー部12から送出された光は、第2固定用ブロック20に挿入された第2光反射パイプ16の内面を反射し第1固定用ブロック19に挿入された第1光反射パイプ15に入射し、その後内部を反射して第1光ファイバー部11へ入射する。
【0026】
一方、第1光ファイバー部11及び第1固定用ブロック19が固定側となる場合は、第1光ファイバー部11及び第1固定用ブロック19が回転し、又は第2光ファイバー部12及び第2固定用ブロック20が固定側となる場合は、第1光ファイバー部11及び第1固定用ブロック19が回転することになり、いずれの光ファイバー部11,12を回転させた場合でも光の送受信が可能となる。即ち、第1又は第2光ファイバー部11,12のいずれか一方を送受信部又は表示器側に、他方をアンテナ又は送受信部を一体化したアンテナ側に配置した光ロータリージョイントが実現可能となる。
【0027】
また、実施例では、第1光ファイバー部11と第2光ファイバー部12の回転時の光軸のぶれは、大きく見積ってもベアリング21,22自体のぶれ程度であり、第1及び第2光反射パイプ15,16により連結部での光拡散を防止する効果と合わせると、光ファイバーを直接対向配置した場合より大きい許容範囲となり、回転ぶれによる通信劣化が良好に抑制できるという効果がある。
【0028】
上記実施例では、第1及び第2光反射伝送路として、光反射パイプ15,16を設けたが、図1において、第1固定用ブロック19の空間領域(パイプ挿入部)19c及び第2固定用ブロック20の空間領域20cの内面を鏡面に形成して、この管状空間を光反射パイプ15,16の代わりとして用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例に係る光ロータリージョイントの構成を示す分解断面図である。
【図2】実施例の光ロータリージョイントを組み立てたときの一部断面図である。
【図3】図2の光ロータリージョイントの第1光ファイバー部と第2光ファイバー部が対向する部分の拡大断面図である。
【図4】従来の光ロータリージョイントの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1,2,17…光ファイバー、
11…第1光ファイバー部、 12…第2光ファイバー部、
15…第1光反射パイプ、 16…第2光反射パイプ
17C…コア、 17K…クラッド
19…第1固定用ブロック、 20…第2固定用ブロック、
21,22…ベアリング、 24…ベアリング固定部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバーを有するそれぞれの端部を対向させて配置される第1ファイバー部及び第2光ファイバー部と、
これら第1及び第2光ファイバー部のそれぞれの端部に光接続され、光ファイバーのコア径よりも大きい内径を持ち、内面が鏡面とされた2つの管状光伝送路であって、所定の間隙を以って配置された第1及び第2光反射伝送路と、を含み、
上記第1光ファイバー部及び第1光反射伝送路と上記第2光ファイバー部及び第2光反射伝送路とが互いに回転可能となるように構成した光ロータリージョイント。
【請求項2】
上記第1光ファイバー部及び第1光反射伝送路を第1固定用ブロックに取り付け、上記第2光ファイバー部及び第2光反射伝送路を第2固定用ブロックに取り付け、上記第1固定用ブロック内空間に、ベアリングを介して上記第2固定用ブロックを取り付け、第1固定用ブロックと第2固定用ブロックとが互いに回転可能となるように構成したことを特徴とする請求項1記載の光ロータリージョイント。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−169053(P2009−169053A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6547(P2008−6547)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000191238)新日本無線株式会社 (569)
【Fターム(参考)】