説明

光伝送装置、及び光伝送ネットワークシステム

【課題】光伝送装置において、チャネル個別に、伝送路入力光パワーを設定する。
【解決手段】光伝送ネットワークを構成する光伝送装置において、波長選択スイッチと、前記波長選択スイッチの第1の出力ポートに接続された第1の光増幅手段と、前記波長選択スイッチの第2の出力ポートに接続された第2の光増幅手段とを含む多種光レベル増幅手段と、前記第1の光増幅手段から出力される信号光と、前記第2の光増幅手段から出力される信号光とを波長多重し、波長多重した信号光を前記光伝送ネットワークの光伝送路に送出する波長多重手段と、を備え、前記第1の光増幅手段は、前記第1の出力ポートから出力された1又は2つ以上の複数の波長の信号光の各々を第1の光レベルに増幅し、前記第2の光増幅手段は、前記第2の出力ポートから出力された1又は2つ以上の複数の波長の信号光の各々を、前記第1の光レベルより高い第2の光レベルに増幅するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送ネットワークの各ノードにおいて各パス毎に適切な送信光パワーで信号光を送出するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
データ通信需要の増大に伴い、大容量のトラフィックを伝送できる波長分割多重技術を用いた光伝送ネットワークが普及しつつある。そのような光伝送ネットワークでは、光伝送装置として、パス(特定の波長の信号光)の方路を切り替える光クロスコネクト装置(OXC : Optical cross Connect )、リングネットワークからパスを分岐したり、パスを挿入したりする光アドドロップ多重装置、リング間を接続するリング間接続装置等が用いられる。
【0003】
例えば、アクセス系のトラフィックを収容し、都市内でのトラフィック転送やコアネットワークとの間の橋渡しをするメトロネットワークは、図1に示すように、リングネットワークを構成し、これらが互いに接続された構成をとるのが一般的である。また、光伝送ネットワークにおける光伝送装置(図1における各ノード)においては、経済的にネットワークを構築する観点から、光信号をできるだけ光信号のまま受け渡すことが望まれている。
【非特許文献1】E. Bert Basch, et.al, "Architectural Tradeoffs for Reconfigurable Dense Wavelength-Division Multiplexing Systems", IEEE journal of selected topics in quantum electronics, VOL.12, NO.4, JULY/AUGUST. 2006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1には、一例として、リング1内に設定されるパスAと、リング1とリング2を跨って設定されるパスBが示されている。パスA、パスBで例示するように、リングネットワーク等の光伝送ネットワークでは長短様々なパスが設定され、パス毎の伝送距離のばらつきが大きい。従って、ある光伝送装置が収容する全パスの中には短い伝送距離のパスと長い伝送距離のパスが混在する。
【0005】
さて、光伝送ネットワークでは、パスの伝送距離に比例して光信号対雑音比(OSNR)が低下するため、パスの着信側でのOSNRを改善するために、光伝送ネットワークを構成する光伝送装置において光信号の伝送路入力光パワー(送信光パワー)を増大させることが一般に行われている。そして、従来は、パスの長短に関わらず、例えば長いパスに合わせて全てのパスで同一の伝送路入力光パワーを設定して光信号を出力している。
【0006】
つまり、パスの伝送距離が短かければ、パスの伝送距離が長い場合より光信号パワーは低くてよいにも関わらず、一律に伝送路入力光パワーを設定している。このため、無駄に高いパワーのパスが存在することになり、全パスの入力光パワーの合計が必要以上に高くなってしまう。これにより、従来技術では、非線形歪みが増大してしまうという問題がある。また、非線形歪みを抑えようとして伝送路入力光パワーを低くした場合、長い伝送距離のパスの光信号対雑音比(OSNR)が増大してしまう。なお、以下、"パス"のことを各光伝送装置において"チャネル"と呼ぶ。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、光伝送ネットワークにおける光伝送装置において、チャネル個別に、伝送路入力光パワーを設定するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、光伝送ネットワークを構成するための光伝送装置であって、前記光伝送ネットワークの光伝送路から信号光を受信する入力ポートと、2つ以上の複数の出力ポートとを備え、前記信号光に含まれる複数の波長から任意に選択した波長の信号光を任意の出力ポートから出力する機能を備えた波長選択スイッチと、前記波長選択スイッチの第1の出力ポートに接続された第1の光増幅手段と、前記波長選択スイッチの第2の出力ポートに接続された第2の光増幅手段とを含む多種光レベル増幅手段と、前記第1の光増幅手段から出力される信号光と、前記第2の光増幅手段から出力される信号光とを波長多重し、波長多重した信号光を前記光伝送ネットワークの光伝送路に送出する波長多重手段と、を備え、前記第1の光増幅手段は、前記第1の出力ポートから出力された1又は複数の波長の信号光の各々を第1の光レベルに増幅し、前記第2の光増幅手段は、前記第2の出力ポートから出力された1又は2つ以上の複数の波長の信号光の各々を、前記第1の光レベルより高い第2の光レベルに増幅することを特徴とする光伝送装置として構成される。
【0009】
上記光伝送装置において、前記第1の光増幅手段の前段又は後段に、波長毎の光レベルを調整するための第1のスペクトル整形器を備え、前記第2の光増幅手段の前段又は後段に、波長毎の光レベルを調整するための第2のスペクトル整形器を備えることとしてもよい。
【0010】
また、本発明は、光伝送ネットワークを構成するための光伝送装置であって、第1の光伝送ネットワークの光伝送路から信号光を受信する入力ポートと、第2の光伝送ネットワークの光伝送路から信号光を受信する入力ポートとを含む2つ以上の複数の入力ポートと、2つ以上の複数の出力ポートとを備え、各信号光に含まれる複数の波長から任意に選択した波長の信号光を任意の出力ポートから出力する機能を備えた波長選択スイッチと、前記波長選択スイッチの第1の出力ポートに接続された第1の光増幅手段と、前記波長選択スイッチの第2の出力ポートに接続された第2の光増幅手段とを含む多種光レベル増幅手段と、前記第1の光増幅手段から出力される信号光と、前記第2の光増幅手段から出力される信号光を受信し、これらの信号光に含まれる波長のうち、前記第1の光伝送ネットワークの光伝送路に送出すべき波長の信号光を波長多重して当該第1の光伝送ネットワークの光伝送路に送出し、前記第2の光伝送ネットワークの光伝送路に送出すべき波長の信号光を波長多重して当該第2の光伝送ネットワークの光伝送路に送出する波長多重手段と、を備え、前記第1の光増幅手段は、前記第1の出力ポートから出力された1又は2つ以上の複数の波長の信号光の各々を第1の光レベルに増幅し、前記第2の光増幅手段は、前記第2の出力ポートから出力された1又は複数の波長の信号光の各々を、前記第1の光レベルより高い第2の光レベルに増幅することを特徴とする光伝送装置として構成することもできる。
【0011】
上記光伝送装置において、前記第1の光増幅手段の前段又は後段に、波長毎の光レベルを調整するための第1のスペクトル整形器を備え、前記第2の光増幅手段の前段又は後段に、波長毎の光レベルを調整するための第2のスペクトル整形器を備えることとしてもよい。
【0012】
前記光伝送装置は、例えば、光クロスコネクト装置、リング間接続装置、又は光アドドロップ多重装置である。また、前記光伝送装置を複数用意し、これらの光伝送装置を光伝送路を介して接続した光伝送ネットワークシステムを提供することもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、伝送距離の異なるチャネル個別に、伝送路入力光パワーを設定することが可能な光伝送装置を提供でき、この光伝送装置を用いることにより、各パスの着信側光信号対雑音比を改善しながら、非線形ペナルティをできるだけ小さくした光伝送ネットワークを構築することが可能となる。
【0014】
また、光増幅手段そのものが非線形性を有しているため、従来の構成では、光増幅手段の内部での四光波混合などの非線形波形劣化が問題となっていた。例えば、四光波混合光の大きさは、隣接周囲のチャネルの光パワーレベルによって決まり、対象チャネルの光パワーが小さいと、その分だけ相対的なクロストーク量が大きくなる。そのため、異種レベルが混在したまま光増幅すると、光パワーレベルが小さいチャネルでは非線形波形歪みが大きくなる。そこで、本発明のように、設定する光レベルによって、光増幅手段を分離することで、光増幅手段内での光レベル差が縮小され、非線形クロストークを小さくする効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、本明細書において、同一の機能を有する構成部には同一の参照符号を付与するものとする。
【0016】
(第1の実施の形態)
図2に本発明の第1の実施の形態における光伝送装置30の構成図を示す。図2に示すように、この光伝送装置30は、光スイッチ機能部10と、チャネル毎光増幅部20を有する。この光伝送装置30は、リングネットワーク間を接続するリング間接続装置、メッシュネットワークにおける光クロスコネクト装置、クライアントネットワークとリングネットワーク間で信号光の挿入・分岐(アド/ドロップ)を行う光アドドロップ多重装置のいずれにも適用可能である。
【0017】
図2に示すように、光スイッチ機能部10は、T(Tは1以上の整数)本の光伝送路(光ファイバー)から信号光(1つ又は複数の波長が多重されたもの、以下同様)を受信し、各信号光における各波長(チャネル)を適宜選択して方路変換(クロスコネクト)や挿入・分岐(アド/ドロップ)を行い、T本の光伝送路の各々に信号光を出力する機能部である。
【0018】
このような機能を実現するために、光スイッチ機能部10は、波長分離部11、クロスコネクト/挿入分岐部12、及び波長多重部13を含む。なお、クロスコネクト/挿入分岐部12は、クロスコネクトと挿入分岐のいずれか一方を行う機能部であることとしてもよいし、両方を行う機能部であるとしてもよい。
【0019】
図3に、チャネル毎光増幅部20の機能構成図を示す。なお、図2の構成では複数のチャネル毎光増幅部が存在するが、それらは基本的に同様の構成である(ただし、具体的な光増幅レベルの数やその値は、個々のチャネル毎光増幅部により相違し得る)。
【0020】
図3に示すように、チャネル毎光増幅部20は、1×N(1入力N出力、Nは2以上の整数)波長選択スイッチ(WSS:Wavelength Selective Switch)21と、高い出力レベルLH用の光増幅部22と、低い出力レベルLL用の光増幅部23と、波長多重部24とを有する。
【0021】
1×N波長選択スイッチ21は、入力ポートから信号光を入力し、N個の出力ポートのうちの任意の出力ポートから任意の波長の信号光を出力する機能を備えている。なお、「任意の」とは、遠隔操作等で適宜設定できるという意味である。本実施の形態では、1×N波長選択スイッチ21は、入力された信号光に多重された複数の波長のうち、出力レベルLHで出力するべきものとして予め定めた波長を多重した信号光を、光増幅部22が接続された出力ポートから出力し、入力された信号光に多重された複数の波長のうち、出力レベルLLで出力するべきものとして予め定めた波長を多重した信号光を光増幅部23が接続された出力ポートから出力する。
【0022】
1×N波長選択スイッチ21として、波長分離部、波長選択部、波長多重部からなる構成が知られている。この波長分離部は例えばMEMSや液晶などにより構成され、各々の波長毎のパワーを光分岐などによりタップして直接モニタすることが可能である。この機能を用いることにより、パワーのモニタ値と所定の値とを比較し、その大小関係に応じて、出力レベルLHと出力レベルLLのうちのどちらのポートで出力するかを選択するようにしてもよい。
【0023】
高い出力レベルLH用の光増幅部22は、入力された信号光に含まれる各波長の信号光を同じレベルLHに増幅して出力する機能部である。また、低い出力レベルLL用の光増幅部23は、入力された信号光に含まれる各波長の信号光を同じレベルLLに増幅して出力する機能部である。この光増幅の様子が図3に示されている。
【0024】
波長多重部24は、光増幅部22、23により増幅され、入力された信号光を多重し、出力(伝送路に入力)する機能部であり、例えば、光カプラー、N×1波長選択スイッチ等である。
【0025】
図2に示した光伝送装置30では、各光伝送路から入力される信号光に対し、光スイッチ機能部10において適宜波長分離、方路変換、及び波長多重がなされ、各光伝送路向けに出力される信号光が各チャネル毎光増幅部20に入力され、各チャネル毎光増幅部20において、予めなされた設定に基づき高いレベルLHで出力を要する波長の信号光は光増幅部22でレベル増幅がなされ、低いレベルLLで出力を要する波長の信号光は光増幅部23でレベル増幅がなされ、これらが波長多重されて光伝送路に送出される。
【0026】
例えば、本光伝送装置30が、図1に示すリング1の中のノードCとして用いられる場合を考える。この場合、光伝送装置30は光アドドロップ装置として用いられ、光伝送装置におけるTは1であるものとする。つまり、光伝送装置30は、図1におけるリング1の逆時計回り方向の信号光を入力し、リング1の逆時計回り方向に向けて、アド光が挿入された信号光を出力するものとする。
【0027】
この光伝送装置30の1つのチャネル毎光増幅部20において、パスAを含む伝送距離が比較的短いパスの信号光が、1×N波長選択スイッチ21により低い出力レベルLL用の光増幅部22に出力されて、そのレベルの光増幅がなされ、パスBを含む伝送距離が比較的長いパスの信号光が、高い出力レベルLH用の光増幅部23に出力されて、そのレベルの光増幅がなされる。そして、これらの信号光が波長多重部24で波長多重されて出力される。
【0028】
なお、上記の例では、チャネル毎光増幅部20における増幅レベルの種類をLHとLLの2種類としたが、2種類より多くの種類のレベルに対応する個数の光増幅部を1×N波長選択スイッチ21と波長多重部24の間に備えてよいことはいうまでもない。
【0029】
図4に、チャネル毎光増幅部20の他の構成例を示す。図4に示すように、このチャネル毎光増幅部20は、光増幅部22、23の後段にスペクトル整形器101、104を備えている。また、スペクトル整形器101から出力される光を一部タップして、各チャネルの光パワーをモニタするモニタ部102と、各チャネルの光レベルが目標値になるようにフィードバック制御を行うための制御回路103を備えている。スペクトル整形器104に対しても同様に、モニタ部105及び制御回路106が備えられている。なお、波長多重後の光の一部をタップし、タップした光をモニタ部102、105に提供することとしてもよい。
【0030】
図4に示すように、スペクトル整形器101、104を光増幅部22、23の後段に設置することにより、光ファイバへの送出光の各チャネルの光レベルを高精度に調整することが可能となる。一般に、光増幅部には利得波長依存性があり、それを補償するために利得等化器が組み込まれている。しかし、その精度には限界があり、複数の光増幅部を多段通過すると、この波長による利得偏差が増幅される。また、時間変化にも対応できない。
【0031】
そこで、本例では、この利得偏差による光パワーの波長依存性を吸収するために、光増幅部22、23の後に動的に制御可能なスペクトル整形器101、104を挿入している。更に、各チャネルの光パワーをモニタするモニタ部102、105を備えるとともに、各チャネルの光レベルが目標値になるようにフィードバック制御を行う制御回路103、106を備えることにより、より高精度に光パワーを制御することが可能になる。
【0032】
モニタ部102、105では、各チャネル毎に光パワーをモニタする必要があるため、波長分離した上でそれぞれの波長の光パワーを測定する機能を有している。また、制御回路103、106は、各チャネルのレベルの測定値と、予め設定した目標値とを比較して、その差分が小さくなるように、スペクトル整形器101、104の各チャネル、もしくは、各波長の損失値を調整する。
【0033】
本例で使用するスペクトル整形器としては、入力された光に対し、各チャネルごとに波長分離を行い、各波長の光を、それぞれの波長に対応して備えられる光可変減衰器に入力する構成や、波長分散媒質を用いて空間的に波長多重信号光を分離して、空間変調器を用いて波長依存の減衰量を与え、再び波長合成する構成がある。
【0034】
また、図4では、光増幅部22、23の後段にスペクトル整形器101、104を備えているが、光増幅部22、23の前段にスペクトル整形器101、104を配置しても、同様の効果が得られる。
【0035】
本実施の形態における光伝送装置30では、チャネル毎に出力レベルを変えて光増幅することを可能としたため、短いパスの信号光の出力レベルよりも長いパスの信号光の出力レベルを大きくするように出力レベルの設定を行うことができる。従って、従来のように長いパスに合わせて全体を同じ出力レベルに設定する必要がなくなり、各パスの着信側光信号対雑音比を改善しながら、非線形ペナルティをできるだけ小さくした光伝送ネットワークを構築することが可能となる。
【0036】
また、光増幅部そのものが非線形性を有しているため、従来の構成では、光増幅部の内部での四光波混合などの非線形波形劣化が問題となっていた。例えば、四光波混合光の大きさは、隣接周囲のチャネルの光パワーレベルによって決まり、対象チャネルの光パワーが小さいと、その分だけ相対的なクロストーク量が大きくなる。そのため、異種レベルが混在したまま光増幅すると、光パワーレベルが小さいチャネルでは非線形波形歪みが大きくなる。そこで、本実施の形態のように、設定する光レベルによって、光増幅部を分離することで、光増幅部内での光レベル差が縮小され、非線形クロストークを小さくする効果がある。
【0037】
(第2の実施の形態)
図5に、本発明の第2の実施の形態における光伝送装置40の構成図を示す。この光伝送装置40は、ネットワーク1とネットワーク2間のネットワーク間接続装置、もしくは光クロスコネクト装置として使用されるものである。
【0038】
図5に示すように、この光伝送装置40は、N×M(N入力M出力、N、Mは2以上の整数)の波長選択スイッチ41と、M×N(M入力N出力)の波長選択スイッチ44とを備え、N×M波長選択スイッチ41とM×N波長選択スイッチ44との間に高い出力レベルLH用の光増幅部42と低い出力レベルLL用の光増幅部43を備えた構成を有する。これらの光増幅部の機能は、第1の実施の形態における各チャネル毎光増幅部20の中の光増幅部22、23と同様である。
【0039】
N×M波長選択スイッチ41とM×N波長選択スイッチ44はそれぞれ、任意の波長(1又は複数)を任意の入力ポートから入力し、任意の波長(1又は複数)を任意の出力ポートから出力する機能を備えた波長選択スイッチである。また、M×N波長選択スイッチ44は、N×M波長選択スイッチ41の入力と出力を逆にしたものに相当する。
【0040】
図5の構成において、N×M波長選択スイッチ41の入力ポート、及びM×N波長選択スイッチ44の出力ポートは、それぞれネットワーク1とネットワーク2に接続され、N×M波長選択スイッチ41の2つ出力ポートが、光増幅部42と光増幅部43に接続され、これらはM×N波長選択スイッチ44の2つの入力ポートに接続される。
【0041】
次に、図5に示す光伝送装置40の動作例を説明する。
【0042】
ネットワーク1からN×M波長選択スイッチ41の入力ポートに信号光が入力されるとともに、ネットワーク2からN×M波長選択スイッチ41の別の入力ポートに信号光が入力される。そして、N×M波長選択スイッチ41は、両信号光の波長の中で、高い出力レベルLHで出力するべき波長の信号光(一般に、ネットワーク間を跨る信号光、ネットワーク間を跨らないネットワーク1上の信号光、ネットワーク間を跨らないネットワーク2上の信号光を含む)を、光増幅部42が接続された出力ポートから出力し、また、低い出力レベルLLで出力するべき波長の信号光(一般に、ネットワーク間を跨る信号光、ネットワーク間を跨らないネットワーク1上の信号光、ネットワーク間を跨らないネットワーク2上の信号光を含む)を、光増幅部43が接続された出力ポートから出力する。
【0043】
そして、各光増幅部42、43において、各波長の光増幅が行われ、光増幅された信号光が各光増幅部42、43から出力され、対応するM×N波長選択スイッチ44の入力ポートに入力される。
【0044】
そして、M×N波長選択スイッチ44は、各入力ポートに入力された信号光の波長のうち、ネットワーク1に送出すべき波長を多重した信号光をネットワーク1に出力し、ネットワーク2に送出すべき波長を多重した信号光をネットワーク2に出力する。
【0045】
図6に、光伝送装置40の他の構成例を示す。図6に示すように、この光伝送装置40は、光増幅部42、43の後段にスペクトル整形器111、114を備えている。また、スペクトル整形器111から出力される光を一部タップして、各チャネルの光パワーをモニタするモニタ部112と、各チャネルの光レベルが目標値になるようにフィードバック制御を行うための制御回路113を備えている。スペクトル整形器114に対しても同様に、モニタ部115及び制御回路116が備えられている。なお、波長多重後の光の一部をタップし、タップした光をモニタ部112、115に提供することとしてもよい。
【0046】
図6に示すように、スペクトル整形器111、114を光増幅部42、43の後段に設置することにより、光ファイバへの送出光の各チャネルの光レベルを高精度に調整することが可能となる。一般に、光増幅部には利得波長依存性があり、それを補償するために利得等化器が組み込まれている。しかし、その精度には限界があり、複数の光増幅部を多段通過すると、この波長による利得偏差が増幅される。また、時間変化にも対応できない。
【0047】
そこで、本例では、この利得偏差による光パワーの波長依存性を吸収するために、光増幅部42、43の後に動的に制御可能なスペクトル整形器111、114を挿入している。更に、各チャネルの光パワーをモニタするモニタ部112、115を備えるとともに、各チャネルの光レベルが目標値になるようにフィードバック制御を行う制御回路113、116を備えることにより、より高精度に光パワーを制御することが可能になる。
【0048】
モニタ部112、115では、各チャネル毎に光パワーをモニタする必要があるため、波長分離した上でそれぞれの波長の光パワーを測定する機能を有している。また、制御回路113、116は、各チャネルのレベルの測定値と、予め設定した目標値とを比較して、その差分が小さくなるように、スペクトル整形器111、114の各チャネル、もしくは、各波長の損失値を調整する。
【0049】
本例で使用するスペクトル整形器としては、入力された光に対し、各チャネルごとに波長分離を行い、各波長の光を、それぞれの波長に対応して備えられる光可変減衰器に入力する構成や、波長分散媒質を用いて空間的に波長多重信号光を分離して、空間変調器を用いて波長依存の減衰量を与え、再び波長合成する構成がある。
【0050】
また、図6では、光増幅部42、43の後段にスペクトル整形器111、114を備えているが、光増幅部42、43の前段にスペクトル整形器111、114を配置しても、同様の効果が得られる。
【0051】
本実施の形態に示した構成においても、非線形ペナルティを考慮して、パスの伝送距離に応じた出力レベルをチャネル毎に適切に設定できる。また、本実施の形態に示す構成では、ネットワーク間で光増幅部を共用できるという利点もある。
【0052】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に説明する。図7に、第3の実施の形態における光伝送装置50の構成図を示す。この光伝送装置50は、第1の実施の形態におけるチャネル毎光増幅部20を備えた光アドドロップ多重装置(ROADM:Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer)である。
【0053】
図7に示すように、この光伝送装置50は、光カプラー51、1×N波長選択スイッチ52、及びN×1波長選択スイッチ53、及びチャネル毎光増幅部20を備えている。図7に示す光伝送装置50では、入力された信号光が光カプラー51でカプラ分岐され、分岐された信号光のうちの一方は1×N波長選択スイッチ52に入力され、1×N波長選択スイッチ52において特定の波長の信号光がドロップ信号光としてドロップされる。光カプラー51で分岐された他方の信号光はN×1波長選択スイッチ53に入力され、ドロップした波長の信号光がブロックされるとともに、クライアントネットワーク側から別の信号光が挿入され、これらが多重された信号光が出力され、チャネル毎光増幅部20に入力される。
【0054】
チャネル毎光増幅部20は、第1の実施の形態における各チャネル毎光増幅部と同じ構成を有する。チャネル毎光増幅部20における1×N波長選択スイッチ21は、入力された信号光に多重された複数の波長のうち、出力レベルLHで出力するべきものとして予め定められた波長を多重した信号光を、光増幅部22が接続された出力ポートから出力し、入力された信号光に多重された複数の波長のうち、出力レベルLLで出力するべきものとして予め定められた波長を多重した信号光を光増幅部23が接続された出力ポートから出力する。そして、各光増幅部22、23において光レベルの増幅が行われ、波長多重部24は、増幅された各信号光を多重し、出力する。
【0055】
図8に示すとおり、第1の実施の形態における図4に示した構成と同様に、スペクトル整形器121、124、モニタ部122、125、制御回路123、126を備える構成としてもよい。
【0056】
(チャネルの出力レベルの設計方法例)
次に、本発明に係る光伝送装置から構成される光伝送ネットワークにおいて、各光伝送装置が収容する各パス(チャネル)の出力レベルの設計方法の例を説明する。
【0057】
図9に示すように、本発明に係る光伝送装置である各ノードにより構成される光伝送ネットワークシステム60の制御のためにネットワーク制御装置61が備えられ、各ノードとネットワーク制御装置61がネットワーク(例えば、制御対象とする光伝送ネットワークとは別のIPネットワーク等)を介して接続される。
【0058】
図9に示すように、ネットワーク制御装置61は、指示情報入力部62、演算部63、レベルダイヤ記憶部64、情報変換部65、制御情報出力部66を有する。また、図10に示すように、レベルダイヤ記憶部64は、各チャネル毎、ノード間のスパン毎のレベルダイヤ(光伝送装置の伝送路入力光パワー)を記憶している。なお、レベルダイヤ記憶部64は、各チャネル(パス)の着信OSNR、各種伝送ペナルティを記憶することとしてもよい。このネットワーク制御装置61の動作は次のとおりである。
【0059】
指示情報入力部62は、始点及び終点を含む光パスの設定要求を受信する。演算部63は、レベルダイヤ記憶部64に記憶された情報に基づき、設定しようとする光パスにおける着信OSNRの計算、及び光伝送路の非線形ペナルティの計算を行うことにより、設定しようとする光パスの各スパンにおける出力レベルを決定する。つまり、演算部63は、レベルダイヤ記憶部64に記憶された情報に基づき、設定しようとする光パスにおける信号光の伝送に必要な着信OSNRを確保しつつ、既に設定された光パスを含む全ての光パスにおいて非線形ペナルティが予め定めた許容値の範囲内になるように、設定しようとする光パスの各スパンにおける出力レベルを決定する。
【0060】
例えば、図10に示すベルダイヤ記憶部64に格納された情報において、チャネルN(Ch-N)以外は既に設定されたチャネル(パス)であり、Ch-Nを設定対象のパスであると想定する。その場合、演算部63は、例えば、設定しようとしているCh-Nのパスは伝送距離が長いため、着信OSNRを適切な値にするために各スパンを高出力レベルLHに仮に設定し、更に、各スパンにおいて各チャネルの光パワーの合計に基づき非線形ペナルティーを算出し、許容値を超える場合には、該当ノードでのCh-Nの出力レベルを低く(LL)する(図10の例では、スパン2−3、3−4)といった演算を行う。このようにして、演算部63は、設定しようとするパスのスパン毎の出力レベルを決定し、レベルダイヤ記憶部64に記憶する。
【0061】
そして、情報変換部65は、演算部63により演算され、レベルダイヤ記憶部64に記憶された情報を、ノードを制御するためのノード制御情報(各ノードのWSSにおける該当チャネルの出力ポート、各光増幅部の動作波長数等)に変換し、制御情報出力部66がノード制御情報を、パス上の各ノードに送信する。これにより、各ノードにおいて波長選択スイッチ21、光増幅部21、22等における設定がなされ、前述したような各パスに応じた光増幅の動作が可能となる。
【0062】
本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々変更・応用が可能である。例えば、上述した実施の形態では、チャネル毎光増幅部を方路変換等が行われた後の信号光を増幅する位置に配置する構成(第1の実施の形態等)や、チャネル毎光増幅部に相当する光レベル増幅のための構成を、方路変換等を行う波長変換スイッチの間に配置する構成を示したが、チャネル毎光増幅部を配置する位置は上記の位置に限定されるものではなく、上記以外の種々の位置に配置することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】リングネットワークの例を示す図である。
【図2】第1の実施の形態における光伝送装置30の構成図である。
【図3】チャネル毎光増幅部20の構成図である。
【図4】チャネル毎光増幅部20の他の例の構成図である。
【図5】第2の実施の形態における光伝送装置40の構成図である。
【図6】第2の実施の形態における光伝送装置40の他の例の構成図である。
【図7】第3の実施の形態における光伝送装置50の構成図である。
【図8】第3の実施の形態における光伝送装置50の他の例の構成図である。
【図9】各チャネルの出力レベルの設計方法の例を説明するための図である。
【図10】レベルダイヤ記憶部64に記憶される情報の例を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
10 光スイッチ機能部
11 波長分離部
12 クロスコネクト/挿入分岐部
13 波長多重部
20 チャネル毎光増幅部
21 1×N波長選択スイッチ
22、23 光増幅部
24 波長多重部
30、40、50 光伝送装置
41 N×M波長選択スイッチ
44 M×N波長選択スイッチ
51 光カプラー
52 1×N波長選択スイッチ
53 N×1波長選択スイッチ
61 ネットワーク制御装置
62 指示情報入力部
63 演算部
64 レベルダイヤ記憶部
65 情報変換部
66 制御情報出力部
101、104、111、114、121、124 スペクトル整形器
102、105、112、115、122、125 モニタ部
103、106、113、116、123、126 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送ネットワークを構成するための光伝送装置であって、
前記光伝送ネットワークの光伝送路から信号光を受信する入力ポートと、2つ以上の複数の出力ポートとを備え、前記信号光に含まれる複数の波長から任意に選択した波長の信号光を任意の出力ポートから出力する機能を備えた波長選択スイッチと、
前記波長選択スイッチの第1の出力ポートに接続された第1の光増幅手段と、前記波長選択スイッチの第2の出力ポートに接続された第2の光増幅手段とを含む多種光レベル増幅手段と、
前記第1の光増幅手段から出力される信号光と、前記第2の光増幅手段から出力される信号光とを波長多重し、波長多重した信号光を前記光伝送ネットワークの光伝送路に送出する波長多重手段と、を備え、
前記第1の光増幅手段は、前記第1の出力ポートから出力された1又は2つ以上の複数の波長の信号光の各々を第1の光レベルに増幅し、前記第2の光増幅手段は、前記第2の出力ポートから出力された1又は複数の波長の信号光の各々を、前記第1の光レベルより高い第2の光レベルに増幅することを特徴とする光伝送装置。
【請求項2】
前記第1の光増幅手段の前段又は後段に、波長毎の光レベルを調整するための第1のスペクトル整形器を備え、前記第2の光増幅手段の前段又は後段に、波長毎の光レベルを調整するための第2のスペクトル整形器を備えることを特徴とする請求項1に記載の光伝送装置。
【請求項3】
光伝送ネットワークを構成するための光伝送装置であって、
第1の光伝送ネットワークの光伝送路から信号光を受信する入力ポートと、第2の光伝送ネットワークの光伝送路から信号光を受信する入力ポートとを含む2つ以上の複数の入力ポートと、2つ以上の複数の出力ポートとを備え、各信号光に含まれる複数の波長から任意に選択した波長の信号光を任意の出力ポートから出力する機能を備えた波長選択スイッチと、
前記波長選択スイッチの第1の出力ポートに接続された第1の光増幅手段と、前記波長選択スイッチの第2の出力ポートに接続された第2の光増幅手段とを含む多種光レベル増幅手段と、
前記第1の光増幅手段から出力される信号光と、前記第2の光増幅手段から出力される信号光を受信し、これらの信号光に含まれる波長のうち、前記第1の光伝送ネットワークの光伝送路に送出すべき波長の信号光を波長多重して当該第1の光伝送ネットワークの光伝送路に送出し、前記第2の光伝送ネットワークの光伝送路に送出すべき波長の信号光を波長多重して当該第2の光伝送ネットワークの光伝送路に送出する波長多重手段と、を備え、
前記第1の光増幅手段は、前記第1の出力ポートから出力された1又は2つ以上の複数の波長の信号光の各々を第1の光レベルに増幅し、前記第2の光増幅手段は、前記第2の出力ポートから出力された1又は複数の波長の信号光の各々を、前記第1の光レベルより高い第2の光レベルに増幅することを特徴とする光伝送装置。
【請求項4】
前記第1の光増幅手段の前段又は後段に、波長毎の光レベルを調整するための第1のスペクトル整形器を備え、前記第2の光増幅手段の前段又は後段に、波長毎の光レベルを調整するための第2のスペクトル整形器を備えることを特徴とする請求項3に記載の光伝送装置。
【請求項5】
前記光伝送装置は、光クロスコネクト装置、リング間接続装置、又は光アドドロップ多重装置であることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載の光伝送装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の前記光伝送装置を複数用意し、これらの光伝送装置を光伝送路を介して接続した光伝送ネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−74678(P2010−74678A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241774(P2008−241774)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】