説明

光伝送路監視装置

【課題】光伝送路の品質監視において、光信号レベルの劣化監視だけでなく同時に光信号の振幅の監視を、特に信号の送受信を停止させることなく通常使用状態にて実現することを目的とする。
【解決手段】本発明は、光ファイバ等の光伝送路を介して送信された光信号を電気信号に変換し出力する光−電気変換器と、この光−電気変換器の出力を入力とし、その入力を整流平滑し、この整流平滑された結果が閾値電圧を下回った場合にアラーム信号を発出する振幅監視部とを備えたことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送路監視装置において、光信号のハイレベルとローレベルを十分判断できる波形伝送が行われているかの監視が行える光伝送路監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光ファイバを用いた光伝送路の品質監視には、(1)試験パターンを用いて受信側でエラー検出器によりビットデータのエラーを監視する方法や、(2)受信側でアイパターン(受信波形をクロックパルスで同期を取りオシロスコープ等にモニタし描出した波形)を監視する方法なども挙げられる。しかしながら、これらの監視方法では、例えば(1)の方法では伝送路を敷設した時に、あるいは試験のため信号伝送を一旦停止させた時に、試験パターンを用いて測定する必要があるし、(2)の方法ではアイパターンをモニタするためのオシロスコープ機器等が必要なため装置規模が大きくなってしまう。
【0003】
このため一般的に常時監視においては受信端で光レベルをモニタし、その光レベル低下を検出し監視する方法が用いられている。このような監視方法は、例えば下記特許文献1、2に示されている。
【0004】
受信端で受光レベル低下を検出する例を、図5を用いて説明する。図5において、光伝送路10は光信号を伝送する。光−電気変換器20は光伝送路10から光信号が入力される。平滑回路部30は、光−電気変換器20の出力を入力とする。コンパレータ40は平滑回路部30の出力を一方の入力とし、閾値電圧50の出力を他方の入力とする。アラーム発出回路60はコンパレータ40からの出力を入力する。
【0005】
電圧出力波形Aは、光信号での2進数のデータ「101」が光−電気変換器20によって電圧に変換された出力を、光−電気変換器20と平滑回路部30の間に位置する地点
Vinでモニタした例である。電圧出力波形Xは、平滑回路部30の出力を平滑回路部30とコンパレータ40の間に位置する地点V3でモニタした例である。電圧出力波形YとZは地点V3での電圧と閾値電圧50の出力を比較した図である。
【0006】
このような装置の動作を以下に説明する。光信号が光ファイバ伝送路10から光−電気変換器20に入力されると、その入力に応じた電圧が出力される(例えば電圧出力波形A)。この電圧を平滑回路部30が平滑し、電圧出力の平均値付近のレベル(例えば電圧出力波形X)を出力する。コンパレータ40はこの平滑回路部30からの出力を一方の入力、また、閾値電圧50の出力を他方の入力とし、それら電圧を比較し、もし平滑回路部30からの電圧レベルが、閾値電圧50からの電圧レベル以上だった場合(例えば電圧出力波形Y)にネゲート信号を出力し、逆に平滑回路部30からの電圧レベルが、閾値電圧50からの電圧レベルを下回った場合(例えば電圧出力波形Z)にはアサート信号を出力する。アラーム発出回路60は、コンパレータ40からアサート信号が入力された場合にアラーム信号を発出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−326613号公報
【特許文献2】特開2002−296110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような装置だけでは、光信号の平均レベルを閾値と比較するという構成であるので、通常使用状態においての光信号のハイレベルとローレベルのレベル差、つまり振幅、を測定することは出来ない。特に伝送される光信号が高速になると、光ファイバ伝送路特有のモード分散や波長分散などの影響で、信号のハイレベルとローレベルの値が判断できなくなるような歪んだ波形となりやすい。この場合光信号の平均レベルは変わらないので、従来のように光信号の平均レベルだけで監視するのは不十分で、光信号のハイレベルとローレベルを十分判断できる波形が伝送されているか否かを監視することも必要である。
【0009】
そこで、本発明の目的は、光信号のハイレベルとローレベルを十分判断できる波形伝送が行われているかの監視が行える光伝送路監視装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
光ファイバを介して送信された光信号を電気信号に変換し出力する光−電気変換器と、
この光−電気変換器の出力を入力とし、その入力を整流平滑し、この整流平滑された結果が閾値電圧を下回った場合にアラーム信号を発出する振幅監視部と
を備えたことを特徴とするものである。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明であって、
前記振幅監視部は、
前記光−電気変換器の出力を入力とし、その入力信号を整流平滑する振幅抽出部と、
この振幅抽出部の出力と前記閾値電圧とを比較するコンパレータと、
このコンパレータの出力を入力とし、アラーム信号を発生するアラーム発出回路と
を備えたことを特徴とするものである。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明であって、
前記振幅抽出部は、
前記光−電気変換器の出力を入力とし、その入力の直流成分を除去した電圧を出力する直流カット回路部と、
この直流カット回路部の出力を入力とし、その正電圧成分のみを出力する整流回路部と、
この整流回路部の出力を入力とし、その入力を平滑した電圧を前記コンパレータへ出力する平滑回路部と
を備えたことを特徴とするものである。
請求項4記載の発明は、請求項2または3記載の発明であって、
前記振幅抽出部の出力と、前記閾値より大きい上限閾値電圧とを比較する上限コンパレータを設け、前記振幅抽出部の出力が上限閾値電圧を上回った場合に、前記アラーム発出回路が前記上限コンパレータの出力によりアラームを発出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光−電気変換器によって光信号を電圧信号に変換し、振幅抽出部によってその電圧信号を整流平滑し、閾値電圧との比較を行い、閾値電圧を下回るときアラームを発出することにより、光信号のハイレベルとローレベルを十分判断できる波形伝送が行われているかの監視を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例を示した構成図である。
【図2】図1に示した振幅抽出回路部4の実施例を示した構成図である。
【図3】図2に示した直流カット回路部41、整流回路部42、平滑回路部43の具体的構成を示した図である。
【図4】本発明の第2の実施例を示した構成図である。
【図5】従来の光伝送路監視装置の実施例を示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施例を示した構成図である。
【0014】
図1において、光ファイバ等の光伝送路1は、光信号を伝送する。光−電気変換器2は光伝送路1から光信号を入力し電圧に変換し出力する。振幅監視部3はこの光−電気変換器2の出力を入力とする。この振幅監視部3は、振幅抽出回路部4とコンパレータ5とアラーム発出回路6を含み以下の構成である。まず振幅抽出回路部4が光−電気変換器2の出力を入力とする。コンパレータ5は振幅抽出回路部4の出力を一方の入力とし、また閾値電圧7を他方の入力とする。アラーム発出回路6はコンパレータ5の出力を入力とする。
【0015】
次に図2は振幅抽出回路部4の一実施例を示した構成図である。
図2において、直流カット回路部41は、光−電気変換器2の出力が入力される。整流回路部42は、直流カット回路部41の出力が入力される。平滑回路部43は、整流回路部42の出力が入力され、コンパレータ5の一方の入力端子に出力する。
電圧出力波形Aは、光信号での2進数のデータ「101」が光−電気変換器2によって電圧に変換された出力を光−電気変換器2と直流カット回路部41の間に位置する地点Vinでモニタした例である。電圧出力波形Bは、直流カット回路部41の出力を直流カット回路部41と整流回路部42の間に位置する地点V1にてモニタした例である。電圧出力波形Cは、整流回路部42の出力を整流回路部42と平滑回路部43の間に位置する地点V2にてモニタした例である。電圧出力波形Dは、平滑回路部43の出力を出力直後に位置する地点Voutでモニタした例である。電圧出力波形EおよびFは電圧出力波形Dと閾値電圧7の出力との比較を示した図である。
【0016】
次に図3は振幅抽出回路部4の具体例である。
図3において、直流カット回路部41は例えば直流カットコンデンサC1を使用する。整流回路部42は例えばダイオードDを使用する。平滑回路部43は例えば平滑コンデンサC2を使用する。
【0017】
このような装置の動作を以下に説明する。光ファイバ等を用いた光伝送路1から光信号が光−電気変換器2に入力される。光−電気変換器2は入力された光信号の強度に応じた電圧信号を出力する。光信号での2進数のデータ「101」であれば、電圧出力波形Aのような波形となる。この出力を入力とする直流カット回路部41は入力の直流成分をカットして出力する。光信号伝送で用いられる信号は、DCバランスにすぐれた信号に変換(例えば8B10B変換)されているものがほとんどで、光信号にて「1」値(ハイレベル)と「0」値(ローレベル)が伝送される確率は同一である。かつ、ハイレベルまたはローレベルが連続するクロック数もたとえば8B10B変換では3クロック以下と、限定されている。そのため、直流カット回路部41の出力は、光−電気変換器2の出力のハイレベルとローレベルの中間レベルつまり平均値分をオフセットした電圧信号を出力する(例えば電圧出力波形B)。この出力を入力とする整流回路部42は信号を整流し、正電圧部のみを抽出し出力する(電圧出力波形C)。この出力を入力とする平滑回路部43は、信号の脈動分を低減し出力する(電圧出力波形D)。この出力をコンパレータ5の一方の入力へ、また閾値電圧7の出力をコンパレータ5の他方の入力へ出力する。平滑回路部43の出力値が閾値電圧7の出力値以上の場合(電圧出力波形E)にはコンパレータ5からの出力はネゲート信号のままで、光信号のハイレベルとローレベルの振幅が十分取れていると判断する。逆に、平滑回路部43の出力値が閾値電圧7の出力値を下回った場合(電圧出力波形F)にはコンパレータ5からアラーム発出回路6にアサート信号が入力され、アラーム信号を発出し、光信号のハイレベルとローレベルの振幅が十分取れていないと判断される。
【0018】
したがって本発明によれば、光−電気変換器2によって光信号を電圧信号に変換し、振幅抽出回路部4によって、結果的に振幅に相当する電圧を抽出し、抽出した電圧と閾値電圧7との比較を行い、振幅に相当する電圧が閾値電圧7を下回るときアラームを発出することにより、光信号のハイレベルとローレベルの信号判別が十分取れる波形伝送か否かの監視を行うことができる。
【0019】
次に、第2の実施例を図4に示し説明する。ここで図1と同一のものは同一符号を付し説明を省略する。図4において、上限コンパレータ51はコンパレータ5の代わりに設けられ、振幅抽出回路部4の出力を一方の入力とし、同様に下限コンパレータ52はコンパレータ5の代わりに設けられ、振幅抽出回路部4の出力を一方の入力とする。上下限アラーム発出回路61はアラーム発出回路6の代わりに設けられ、上限コンパレータ51の出力と下限コンパレータ52の出力を入力とする。閾値電圧発生部71は、複数組の上限閾値電圧、下限閾値電圧を選択し、それぞれ上限コンパレータ51、下限コンパレータ52の他方の入力に出力する。電圧出力波形Gは、振幅抽出回路部4の出力を振幅抽出回路部4直後に位置する地点Voutでモニタした例である。
【0020】
このような装置の動作を以下に説明する。上限コンパレータ51および下限コンパレータ52はそれぞれ振幅抽出回路部4の出力を一方の入力とする。閾値電圧発生部71は、光信号が光−電気変換器2によって変換された出力電圧が正常信号として許容される振幅の上限閾値電圧と下限閾値電圧を発生し、それぞれ上限コンパレータ51、下限コンパレータ52へ出力する。上限コンパレータ51は振幅抽出回路部4の出力と上限閾値電圧とを比較し、振幅抽出回路部4の電圧が上限閾値電圧を上回った場合にアサート信号を出力する。一方、下限コンパレータ52は振幅抽出回路部4の出力と下限閾値電圧とを比較し振幅抽出回路部4の電圧が下限閾値電圧を下回った場合にアサート信号を出力する。上下限アラーム発出回路61は、上限コンパレータ51の出力もしくは下限コンパレータ52の出力がアサートされた場合にアラーム信号を発出し、振幅抽出回路部4の出力が許容振幅範囲外であることを判断する。
【0021】
通信では、光モジュール同士の送受信レベルの仕様を定めていて、例えば、ギガビットイーサネット(登録商標)では、「1」値(ハイレベル)と「0」値(ローレベル)の平均パワーと消光比で送信器の光出力や受信器の受光感度を規定したり、10ギガビットイーサネット(登録商標)では、「0」値と「1」値の光レベルの差分で規定(OMAと呼ばれている)されているように、送信・受信の光レベル振幅の範囲が決められている。したがって、各々の規格レベルの閾値を閾値電圧発生部71が複数組用意し、光ファイバ断線や、受信モジュール側のOMA規格範囲外検出の判定などにも応用することができる。
【0022】
なお、本発明はこれに限定されるものではなく、直流カット回路部41を設ける構成を示したが、光−電気変換器2の出力が、直流カットされていれば、直流カット回路部41を設けない構成でも良い。
また、整流回路42は半波整流を行う構成を示したが、全波整流を行う構成でも良い。
【符号の説明】
【0023】
1 光伝送路
2 光−電気変換器
3 振幅監視部
4 振幅抽出回路部
5 コンパレータ
6 アラーム発出回路
7 閾値電圧
41 直流カット回路部
42 整流回路部
43 平滑回路部
51 上限コンパレータ
52 下限コンパレータ
61 上下限アラーム発出回路
71 閾値電圧発生部
10 光伝送路
20 光−電気変換器
30 平滑回路部
40 コンパレータ
50 閾値電圧
60 アラーム発出回路



【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを介して送信された光信号を電気信号に変換し出力する光−電気変換器と、
この光−電気変換器の出力を入力とし、その入力を整流平滑し、この整流平滑された結果が閾値電圧を下回った場合にアラーム信号を発出する振幅監視部と
を備えたことを特徴とする光伝送路監視装置。
【請求項2】
前記振幅監視部は、
前記光−電気変換器の出力を入力とし、その入力信号を整流平滑する振幅抽出部と、
この振幅抽出部の出力と前記閾値電圧とを比較するコンパレータと、
このコンパレータの出力を入力とし、アラーム信号を発出するアラーム発出回路と
を備えたことを特徴とする請求項1記載の光伝送路監視装置。
【請求項3】
前記振幅抽出部は、
前記光−電気変換器の出力を入力とし、その入力の直流成分を除去した電圧を出力する直流カット回路部と、
この直流カット回路部の出力を入力とし、その正電圧成分のみを出力する整流回路部と、
この整流回路部の出力を入力とし、その入力を平滑した電圧を前記コンパレータへ出力する平滑回路部と
を備えたことを特徴とする請求項2記載の光伝送路監視装置。
【請求項4】
前記振幅抽出部の出力と前記閾値より大きい上限閾値電圧とを比較する上限コンパレータを設け、前記振幅抽出部の出力が上限閾値電圧を上回った場合に、前記アラーム発出回路が前記上限コンパレータの出力によりアラームを発出することを特徴とする請求項2または3記載の光伝送路監視装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−226571(P2010−226571A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73344(P2009−73344)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】