説明

光伝送路

【課題】マルチコアファイバを用いて群速度分散の累積を簡単に解消する光伝送路を提供する。
【解決手段】クラッド20と複数のコア31,32とを備えたマルチコアファイバ10を複数互いに接続して形成されている光伝送路であって、複数のコアは、群速度分散が正常分散である第1のコア31と、群速度分散が異常分散である第2のコア32とを備えており、ファイバ中心軸を回転軸とした第1のコアの回転対称の位置には第2のコアが配置されており、マルチコアファイバ同士は、接続面において第1のコアと第2のコアとが当接して接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送路に関し、特にマルチコアファイバを複数互いに接続している光伝送路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年光ファイバが通信用、エネルギー伝達など様々な用途において、大量に用いられるようになっている。なかでも大量のデータを短時間で送るための通信用のデータ導通路として光ファイバは導電線を駆逐して、使用量が飛躍的に増えてきている。
【0003】
上述のように、通信用の光ファイバには、1本のファイバでより多くのデータを送受信できるようにすることが求められている。そのために、1本の光ファイバに複数のコアを入れて、各コアで別々の信号を送ることができるマルチコアファイバが検討されている。(例えば非特許文献1,2)
また、通信用の光ファイバは長距離にわたって敷設され、世界各地との通信に使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−56307号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】竹永他、2010年電子情報通信学会通信ソサエティ大会、BS-6-6(2010)
【非特許文献2】M.Koshiba, et al., IEICE Electronics Express., 6,98-103(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、通常の通信用の光ファイバとして用いられるシングルモードファイバでは、波の速度(群速度)が波長によって異なることから群速度分散が存在し、信号波形が変形する現象が生じる。群速度分散は、伝送距離に比例して累積していくため、長距離の光ファイバによる光信号伝送では、伝送特性が大きく劣化してしまう。この問題に対処するために、特許文献1に開示されているように、分散補償ファイバを用いることが提案されているが、マルチコアファイバにおける分散補償ファイバの検討は未だ行われていない。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、マルチコアファイバを用いて群速度分散の累積を簡単に解消する光伝送路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光伝送路は、クラッドと複数のコアとを備えたマルチコアファイバを複数互いに接続して形成されており、前記複数のコアは、群速度分散が正常分散である第1のコアと、群速度分散が異常分散である第2のコアとを備えており、ファイバ中心軸を回転軸とした前記第1のコアの回転対称の位置には前記第2のコアが配置されており、前記マルチコアファイバ同士は、接続面において前記第1のコアと前記第2のコアとが当接して接続されている構成とした。ここで、ファイバ中心軸を回転軸とした第1のコアの回転対称の位置には第2のコアが配置されているというのは、第1のコアは、ファイバ中心軸を回転軸としてファイバを回転させることにより、回転前の第2のコアが存した位置に移動する、ということである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光伝送路は、群速度分散が正常分散である第1のコアと異常分散である第2のコアとがファイバ中心軸の周りに回転させたときに重なり合う位置に配置されているマルチコアファイバを複数用いているので、マルチコアファイバ同士を接続する際に一方のファイバを中心軸周りに回転させるだけで第1のコアと第2のコアとの接続ができて、これにより分散補償を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態1に係るマルチコアファイバの端面を示す図である。
【図2】実施形態2に係るマルチコアファイバの端面を示す図である。
【図3】実施形態2の変形例1に係るマルチコアファイバの端面を示す図である。
【図4】実施形態2の変形例2に係るマルチコアファイバの端面を示す図である。
【図5】実施形態3に係るマルチコアファイバの端面を示す図である。
【図6】実施形態3の変形例に係るマルチコアファイバの端面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を説明する前に、本発明に用いる言葉の意味についての説明をする。
【0012】
本発明においては、群速度分散の大きさを表す量として分散パラメータD(ps/nm/km)を用いる。群速度分散が正常分散であるのは、分散パラメータが負の値となっている場合であり、異常分散であるのは、分散パラメータが正の値となっている場合である。
【0013】
群速度分散スロープとは、波長λの変化に対する群速度分散の分散パラメータDの変化の割合、dD/dλのことである。
【0014】
また、マルチコアファイバ内において第1のコアの隣に第2のコアを配置し、第2のコアの隣に第1のコアを配置することが好ましい。この関係を、第1のコアに隣接し且つ近接しているのは第2のコアであり、第2のコアに隣接し且つ近接しているのは第1のコアである、と表現する。
【0015】
この、第1のコアに隣接し且つ近接しているのは第2のコアである、というのは、1つの第1のコアの周囲に複数のコアがある場合、隣接しているコアの中で最も近い位置にあるコアは第2のコアであるということである。第1と第2と言う言葉を入れ替えると前段落の各文章の後半部分の説明となる。1つのコアに最も近い位置にあるコアが複数存在する場合もある。この場合、ファイバの製造バラツキなどの関係上、最短コア間距離の1.1倍以下のコア間距離を有するコアも最も近い位置にあるコアとする。
【0016】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。
【0017】
(実施形態1)
図1に示すように、実施形態1に係るマルチコアファイバ10は、石英からなるクラッド20の中に6本の第1のコア31,31,…と6本の第2のコア32,32,…、計12本のコアが存している。なお、第1のコア31と第2のコア32を図面で見分けるために、図面での表現上は第1のコア31を黒塗りとしているが、実際には第1のコア31が黒いわけではない。以下の図面においても同様の表現としている。
【0018】
12本の第1のコア31,31,…及び第2のコア32,32,…は、ファイバ横断面において、正十二角形の各頂点に配置されている。2本の第1のコア31,31が隣同士並んで配置され、それらの隣には2本一組で並んだ第2のコア32,32が配置されて、正十二角形を形作っている。
【0019】
第1のコア31,31,…は群速度分散が正常分散(分散パラメータが負)であり、第2のコア32,32,…は異常分散(分散パラメータが正)である。いずれのコア31,32も石英にGe等がドープされて石英よりも大きい屈折率となっている。そして、第1のコア31,31,…の分散パラメータを−D(ps/nm/km)とすると、第2のコア32,32,…の分散パラメータはD(ps/nm/km)となっている。即ち、第1のコア31,31,…と第2のコア32,32,…とは、互いの分散パラメータの絶対値が等しく符号が逆になっている。なお、分散パラメータの絶対値が等しいというのは、数学的に厳密な意味で等しいということではなく、ファイバの原材料の構造・物質構成・特性などのバラツキやファイバの製造工程での製造条件・環境等のバラツキ等を考慮して多少の差異、例えば平均値のプラスマイナス10%の範囲内であれば等しいものとする。
【0020】
第1のコア31,31,…と第2のコア32,32,…とは、各コア31,32の比屈折率差及びコア径を調整することによって、上述の分散パラメータを設定することができる。例えばコア径を小さくすると分散パラメータは負の値を取ることができる。
【0021】
また、第1のコア31,31,…と第2のコア32,32,…とは、それぞれの群速度分散スロープの符号が逆であって且つ分散スロープの絶対値を等しく設定している。このように設定するには、例えば第2のコア32,32,…を通常のステップ型のコアとして分散スロープの符号を+にして、第1のコア31,31,…の周囲のクラッドを同心円の二重構造とし内側の屈折率を外側より低くすることにより分散スロープの符号を−にする。なお、群速度分散スロープの絶対値が等しいというのは、数学的に厳密な意味で等しいということではなく、ファイバの原材料の構造・物質構成・特性などのバラツキやファイバの製造工程での製造条件・環境等のバラツキ等を考慮して多少の差異、例えば平均値のプラスマイナス20%の範囲内であれば等しいものとする。
【0022】
このようなマルチコアファイバ10の製造方法は、石英の多孔パイプにコア用ロッド挿入して母材として用いる方法や石英の単孔パイプにコアロッドと石英ロッドを詰め込んで母材とする方法等を挙げることができる。
【0023】
本実施形態のマルチコアファイバ10の第1のコア31,31,…と第2のコア32,32,…とは上述のように正十二角形に配置されている。従って本実施形態のマルチコアファイバ10は、ファイバ中心軸を回転軸として60°回転させると、第1のコア31,31,…が回転前の第2のコア32,32,…が存した位置に移動し、逆に第2のコア32,32,…が回転前の第1のコア31,31,…が存した位置に移動する。即ち、60°の回転によって第1のコア31,31,…の位置と第2のコア32,32,…の位置とが逆になる。
【0024】
従って、2本の本実施形態のマルチコアファイバ10の端面同士を接続させるとき、ファイバ中止軸周りを回転させることによって、一方のファイバ10の第1のコア31,31,…を他方のファイバ10の第2のコア32,32,…に突き合わせて当接させられるようになり、この状態で一方のファイバ10の第2のコア32,32,…は他方のファイバ10の第1のコア31,31,…に突き合わせられ当接させられている。このようにして2本のマルチコアファイバ10の全てのコアにおいて、第1のコア31は第2のコア32に、第2のコア32は第1のコア31にそれぞれ接続されることができる。
【0025】
ここで接続された2本のマルチコアファイバ10が互いに同じ長さであるとすると、上述のように第1のコア31,31,…と第2のコア32,32,…とは、互いの分散パラメータの絶対値が等しく符号が逆になっているため、全てのコアにおいて完全に分散補償がなされる。つまり、接続された2本のマルチコアファイバ10に入射した光信号は、群速度分散がない状態で出射される。さらに、上述のように第1のコア31,31,…と第2のコア32,32,…とは、互いの分散スロープの絶対値が等しく符号が逆になっているため、波長多重通信を行ったときでも全ての波長において分散補償がなされる。
【0026】
本実施形態のマルチコアファイバ10を複数用いて、上記のように接続を行って光伝送路を形成すると、上記の2本のマルチコアファイバ10の場合と同様に、全てのコアについて分散補償が行われ、波長多重通信を行ったときでも全ての波長において分散補償が行われる。この場合、光伝送路の入力端から出力端までにおいて、全てのコアでは第1のコア31,31,…と第2のコア32,32,…とが同じ長さ用いられていることが好ましい。このような光伝送路は、本実施形態のマルチコアファイバ10を複数用いれば、単にファイバ中心軸周りに回転させて接続するだけの簡単な方法で形成することができる。即ち、マルチコアファイバを用いた光伝送路において、1種類のファイバを用いるのみで簡単且つ低コストで全てのコアについて分散補償を行うことができる。分散補償のために、別種の分散補償ファイバを使用する必要がない。
【0027】
(実施形態2)
実施形態2に係るマルチコアファイバは、コアの配置が実施形態1とは異なり、それ以外の点については実施形態1と同じである。以下では実施形態1と同じ点については省略するが、実施形態1の記載がそのまま本実施形態にも当てはまる。光伝送路についても同様である。
【0028】
図2に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ11は、石英からなるクラッド21の中に3本の第1のコア31,31,31と3本の第2のコア32,32,32、計6本のコアが存している。6本の第1のコア31,31,31及び第2のコア32,32,32は、ファイバ横断面において、正六角形の各頂点に配置されている。第1のコア31,31,31と第2のコア32,32,32とは交互に配置されて、正六角形を形作っている。この構成により、実施形態1と同様に、マルチコアファイバ11をファイバ中心軸の周りに60°回転させると、第1のコア31,31,31の位置と第2のコア32,32,32の位置とが逆になる。
【0029】
本実施形態では実施形態1と異なり、隣接し且つ近接しているコア同士は種類の異なるコアである。即ち、第1のコア31に隣接し且つ近接しているコアは第2のコア32であるし、第2のコア32に隣接し且つ近接しているコアは第1のコア31である。このような構成により、本実施形態のマルチコアファイバ11及びそれを用いた光伝送路は、実施形態1に係るマルチコアファイバ10,光伝送路に比べて、実施形態1の効果を全て奏した上で、さらにクロストークを抑制できるという効果を奏する。以下、クロストークの抑制効果について説明する。
【0030】
マルチコアファイバでは、シングルコアファイバと同じ径の光ファイバの中に複数のコアが入っているため、隣り合うコアの間の距離が短く、これらのコアにクロストークが生じるという問題があった。クロストークを抑制するためにはコアの間の距離を大きくすればよいのであるが、そうすると光ファイバ自体の径が大きくなってしまって現行の通信用装置や設備に適用できなくなってしまい、新たな通信用装置や設備を製造するコストが膨大になってしまう。
【0031】
クロストークを抑制する別の方法として、隣り合う2つのコアの伝搬定数に差を設けることが研究されている(例えば非特許文献2参照)。
【0032】
ここで実施形態1において第1のコア31と第2のコア32とでは伝搬定数に大きな差があることを本願発明者らは見出した。即ち第1のコア31と第2のコア32とでは分散パラメータの符号が正負逆であるため、伝搬定数に大きな差ができるのである。この知見より第1のコア31と第2のコア32とが互いに隣り合う配置にすれば、クロストークを抑制することもできると考えて本実施形態のマルチコアファイバ11を作製したところ、クロストークが大きく抑制されることが確認された。
【0033】
本実施形態のマルチコアファイバ11及びそれを複数接続した光伝送路では、実施形態1と同じく簡単且つ低コストで全てのコアについて分散補償を行うことができ、波長多重通信を行ったときでも全ての波長において分散補償が行われる。さらに各コア間のクロストークも十分に抑制される。これら全ての効果が、1種類のマルチコアファイバ11を用いるのみで達成できる。
【0034】
−変形例1−
さらにクラッド24内にマーカ(位置表示部材)41を配置した変形例1に係るマルチコアファイバ14を図3に示す。なお、マーカ形状を図において目立たせるために黒塗りとしているが、実際に黒くなっているわけではない。
【0035】
本変形例では、第1のコア31,31,31の配置を示すマーカ41,41,41を3つ配置している。マーカ41,41,41の形状は略二等辺三角形であり、等しい二辺に挟まれた角が第1のコア31,31,31を指している。マーカ41,41,41はコア31,32の光学特性に影響を与えず、かつはっきりと見えるものがよい。例えばクラッド24と大きく屈折率が異なる物質などを挙げることができる。
【0036】
本変形例ではファイバ中心軸にコアが存していないので、ファイバ中心軸近辺にマーカ41,41,41を置いている。マーカ41,41,41の等しい二辺に挟まれた角がファイバの外側を向き、この角に対向する辺がファイバ中心軸の側に置かれているので、マーカ41,41,41はファイバ中心軸から第1のコア31,31,31へ向かう二等辺三角形となっている。別の言葉でいうと、ファイバ横断面において正六角形の各頂点に第1のコア31と第2のコア32とが交互に配置されているマルチコアファイバ14において、ファイバ中心軸と第1のコア31とを結ぶ線上にマーカ41が配置され、マーカ41は前記線上に延びている形状を有していて、ファイバ中心軸から見て第1のコア31を指し示している。
【0037】
本変形例では3つの第1のコア31,31,31のそれぞれを示すマーカ41,41,41が存しており、マーカ形状もコアの位置を明確に示す形状であるので、2本のマルチコアファイバ14同士を接続する際に、マルチコアファイバ14同士の位置合わせを容易に且つ短時間で行うことができる。なお、マーカ41は第1のコア31に替えて第2のコア32を示すように形成してもよい。
【0038】
−変形例2−
変形例2に係るマルチコアファイバ16は、図4に示すように、変形例1とは異なり、マーカ42が一つだけである。このマーカ42は一つの第1のコア42とファイバ中心軸との中間近辺のクラッド26内に形成されている。2本のマルチコアファイバ16を接続する際に、双方のマーカ42が、ファイバ中心軸を対称中心とする点対称の位置に存するようにマルチコアファイバ16の端面の位置決めを行えば、双方のファイバの第1のコア31は第2のコア32に、第2のコア32は第1のコア31に接続される。このようにマーカ42が存していることにより、ファイバ同士の接続時における位置合わせが短時間で容易に行える。なお、本変形例では、マーカ42をクラッド26と大きく屈折率が異なる物質としてもよいし、エアホールにしてもよい。マーカ42は第1のコア31に替えて第2のコア32を示すように形成してもよい。
【0039】
(実施形態3)
実施形態3に係るマルチコアファイバは、コアの数及び配置が実施形態2とは異なり、それ以外の点については実施形態2と同じである。以下では実施形態2と同じ点については省略するが、実施形態2の記載がそのまま本実施形態にも当てはまる。
【0040】
図5に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ12は、石英からなるクラッド22の中に8本の第1のコア33,33,…と8本の第2のコア34,34,…、計16本のコアが存している。16本の第1のコア33,33,…及び第2のコア34,34,…は、ファイバ横断面において、正方形を成す碁盤の目に配置されている。第1のコア33,33,…と第2のコア34,34,…とは交互に配置されて、全体で大きな正方形を形作っている。この構成により、マルチコアファイバ12をファイバ中心軸の周りに90°回転させると、第1のコア33,33,…の位置と第2のコア34,34,…の位置とが逆になる。このような構造のため、実施形態1,2と同様に2本のマルチコアファイバ12同士を接続する際に、種類の異なるコア同士の接続のみを簡単に行うことができる。
【0041】
また、実施形態2と同様に、隣接し且つ近接しているコア同士は種類の異なるコアであるので、クロストークを十分に抑制することができる。その他、実施形態2と同じ効果を本実施形態のマルチコアファイバ及びそれを用いた光伝送路は奏する。
【0042】
−変形例−
さらにクラッド28内にマーカ(位置表示部材)43を配置した、実施形態2の変形例と類似のマルチコアファイバ18を図6に示す。なお、マーカ形状を図において目立たせるために黒塗りとしているが、実際に黒くなっているわけではない。
【0043】
本変形例では、マルチコアファイバ18の一つの直径上に並んだ4本の第1のコア33,33,…の配置を示すマーカ43,43を2つ配置している。マーカ43,43は第1のコア33,33,…よりもファイバ側壁に近い方に形成されている。マーカ43,43はコア33,34の光学特性に影響を与えず、かつはっきりと見えるものがよい。例えばクラッド28と大きく屈折率が異なる物質やエアホールなどを挙げることができる。
【0044】
2本のマルチコアファイバ18を接続する際に、各ファイバにおける2つのマーカ43,43を結ぶ線が、互いに直交するようにマルチコアファイバ18の端面の位置決めを行えば、双方のファイバの第1のコア33は第2のコア34に、第2のコア34は第1のコア33に接続される。このようにマーカ43,43が存していることにより、ファイバ同士の接続時における位置合わせが短時間で容易に行える。なお、マーカ43は第1のコア33に替えて第2のコア34を示すように形成してもよい。
【0045】
(その他の実施形態)
上記の実施形態や変形例は本発明の例示であり、本発明はこれらの例示に限定されない。コアの配置は全体で正八角形や円形などどのような形状でもよいし、コアの数も第1のコアと第2のコアがそれぞれ1本以上あればよい。
【0046】
第1のコアと第2のコアとの分散パラメータの絶対値は等しくなくても構わない。また、第1のコアと第2のコアとの群速度分散スロープの絶対値は等しくなくても構わない。
【0047】
上記の実施形態においてはファイバ中心軸にコアが配置されていなかったが、ファイバ中心軸にコアを配置してもよい。この中心軸部分のコアは、それ以外のコアとは異なる使用、例えば保守用途とすれば分散補償をする必要がない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明したように、本発明に係る光伝送路は、複数のコアのそれぞれにおいて分散補償がなされており、光通信用伝送路等として有用である。
【符号の説明】
【0049】
10 マルチコアファイバ
11 マルチコアファイバ
12 マルチコアファイバ
14 マルチコアファイバ
16 マルチコアファイバ
18 マルチコアファイバ
20 クラッド
21 クラッド
22 クラッド
24 クラッド
26 クラッド
28 クラッド
31,33 第1のコア
32,34 第2のコア
41 マーカ(位置表示部材)
42 マーカ(位置表示部材)
43 マーカ(位置表示部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッドと複数のコアとを備えたマルチコアファイバを複数互いに接続して形成されている光伝送路であって、
前記複数のコアは、群速度分散が正常分散である第1のコアと、群速度分散が異常分散である第2のコアとを備えており、
ファイバ中心軸を回転軸とした前記第1のコアの回転対称の位置には前記第2のコアが配置されており、
前記マルチコアファイバ同士は、接続面において前記第1のコアと前記第2のコアとが当接して接続されている、光伝送路。
【請求項2】
前記マルチコアファイバ内では、前記第1のコアに隣接し且つ近接しているのは前記第2のコアであり、前記第2のコアに隣接し且つ近接しているのは前記第1のコアである、請求項1に記載されている光伝送路。
【請求項3】
前記第1のコアの群速度分散の絶対値と前記第2のコアの群速度分散の絶対値とが等しい、請求項2に記載されている光伝送路。
【請求項4】
入力端から出力端までに一つの光信号が通過する前記第1のコアの長さと前記第2のコアの長さとは略同じである、請求項3に記載されている光伝送路。
【請求項5】
前記第1のコアの群速度分散スロープと前記第2のコアの群速度分散スロープとは符号が異なっている、請求項4に記載されている光伝送路。
【請求項6】
前記第1のコア及び前記第2のコアのいずれか一方の配置位置を示す位置表示部材をさらに含む、請求項2から5のいずれか一つに記載されている光伝送路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−203036(P2012−203036A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64719(P2011−64719)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/革新的光ファイバ技術の研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】