説明

光信号送信装置

【課題】送信側のクロック信号と受信側のクロック信号の間にずれがあっても、受信側で正確に光信号を解読可能な光信号送信装置を提供すること。
【解決手段】デジタルデータを示す光信号の授受によって通信を行う光通信システムを構成する光信号送信装置は、送受信間におけるクロック信号の許容交差に基づいて、光信号を構成する各フレームのデータ長を設定し、当該データ長の同じ内容のフレームが複数回連続した送信デジタルデータを生成する送信データ生成部と、前記送信デジタルデータに応じた形態の光信号を出力するよう発光部を駆動する発光駆動部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置が正確に解読可能な光信号を発信する光信号送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1及び非特許文献2には、人の目に見える光(可視光)を用いた通信に関する規格が定められている。また、特許文献1には、可視光を用いて情報通信を行う装置における可視光制御装置が開示されている。当該可視光制御装置は、副搬送波を変調し、変調信号を生成する変調手段と、変調信号を基に可視光の点滅を制御し、所定の発光時間比率で可視光を発光させる可視光制御手段と、所定の発光時間比率を変化させる発光時間比率制御手段とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4325604号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】電子情報技術産業協会規格(Standard of Japan Electronics and Information Technology Industries Association),「JEITA CP−1221 可視光通信システム Visible Light Communication System」,2007年3月,社団法人 電子情報技術産業協会
【非特許文献2】電子情報技術産業協会規格(Standard of Japan Electronics and Information Technology Industries Association)「JEITA CP−1222 可視光IDシステム Visible Light ID System」,2007年6月,社団法人 電子情報技術産業協会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記説明した可視光通信を行う可視光信号の送信装置は、当該送信装置におけるクロック信号に従って可視光信号を生成し発信する。また、可視光信号の受信装置は、当該受信装置におけるクロック信号に従って可視光信号を受信する。但し、送信装置のクロック信号と受信装置のクロック信号の間には、周波数に微小なずれがある。
【0006】
電磁波信号を用いた一般的な通信の場合は、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)など汎用の通信用ICを用いて調歩式通信を行うことにより、送信側と受信側の間のクロック信号のずれによる問題が発生しないよう設計されている。しかし、可視光通信にUARTを用いた調歩式通信を適用すると、可視光信号の明るさに影響する。このため、UARTを用いた調歩式通信を可視光通信に適用することは不適当である。
【0007】
また、非特許文献2で定められた可視光通信におけるフレームは542ビットで構成されているが、副変調波(SC)を変調する符号化方式としては4PPM(4 Pulse Position Modulation)が使用されている。このため、1フレームは、物理的には1084ビットで構成されている。このように、1フレームが多数のビットで構成されていると、クロック信号のずれが蓄積され、受信装置で可視光信号が正常に解読されない場合がある。
【0008】
図4は、送信側のクロック信号に対して受信側のクロック信号の周波数が低いが低い場合の、可視光送信信号と、受信側のクロック信号と、受信装置が解読した受信データとの経時的な関係を示す図である。送信側のクロック信号に対して受信側のクロック信号の周波数が低いとき、送信側のクロック信号に従って発信された可視光送信信号を受信装置が受信側のクロック信号に従って解読する。しかし、図4に示すように、クロック信号のずれによって、可視光送信信号のデータの一部が抜けてしまう場合がある。
【0009】
ここで、送信側と受信側のクロック信号の許容交差を±0.5%とすると、送信側と受信側との合計でクロック信号のタイミングに最大1%の差が発生する。この場合、100ビットの内の1ビットが、クロック信号のずれによって過不足する。すなわち、仮に100ビットを1フレームとして受信した場合、受信側において、1フレーム中に最大1ビットのエラーが含まれる。
【0010】
本発明の目的は、送信側のクロック信号と受信側のクロック信号の間にずれがあっても、受信側で正確に光信号を解読可能な光信号送信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、デジタルデータを示す光信号の授受によって通信を行う光通信システムを構成する光信号送信装置であって、送受信間におけるクロック信号の許容交差に基づいて、光信号を構成する各フレームのデータ長を設定し、当該データ長の同じ内容のフレームが複数回連続した送信デジタルデータを生成する送信データ生成部と、前記送信デジタルデータに応じた形態の光信号を出力するよう発光部を駆動する発光駆動部と、を備えた光信号送信装置を提供する。
【0012】
上記光信号送信装置では、前記送信データ生成部は、前記許容交差が±A/2%のとき、各フレームのデータ長を「(1/A)×100/2」の計算式から算出する。
【0013】
上記光信号送信装置では、前記送信データ生成部は、所定データ長のデータを前記設定したデータ長の2つのフレームに分割する際、前記所定データ長のデータの先頭ビットから前記設定したデータ長のデータと、前記所定データ長のデータの最終ビットから前記設定したデータ長のデータとに分割する。
【0014】
上記光信号送信装置では、前記送信データ生成部は、誤り検出符号を含む送信デジタルデータを生成する。
【0015】
上記光信号送信装置では、前記光信号は可視光信号である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る光信号送信装置によれば、送信側のクロック信号と受信側のクロック信号の間にずれがあっても、受信側で正確に光信号を解読できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態の可視光通信システムの構成を示すブロック図
【図2】100ビットのデジタルデータを、前半の50ビットのデータのフレームと、後半の50ビットのデータのフレームとに分割する様子を示す図
【図3】エラーが含まれないフレームの可視光送信信号と、受信側のクロック信号と、受信装置が解読した受信データとの経時的な関係を示す図
【図4】送信側のクロック信号に対して受信側のクロック信号の周波数が低いが低い場合の、可視光送信信号と、受信側のクロック信号と、受信装置が解読した受信データとの経時的な関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、一実施形態の可視光通信システムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、可視光通信システムは、可視光信号を発信する送信装置100と、送信装置100から発信された可視光信号を受信する受信装置200とを備える。送信装置100は、クロック信号発生部101と、CPU103と、LED駆動回路105と、LED107とを有する。また、受信装置200は、光センサ201と、CPU203と、クロック信号発生部205とを有する。なお、送信装置100のクロック信号発生部101が発生するクロック信号と、受信装置200のクロック信号発生部205が発生するクロック信号との間には、従来と同様、周波数に微妙なずれがあっても良い。
【0020】
送信装置100では、クロック信号発生部101が発生したクロック信号に従って、CPU103が送信デジタルデータを生成し、LED駆動回路105は、当該クロック信号のタイミングで送信デジタルデータに応じてLED107を駆動する。なお、LED107は可視光を出力する。LED107は、送信デジタルデータに応じて異なる明るさの可視光を出力するよう駆動される。このLED107の明るさが変化する光が「可視光信号」である。
【0021】
受信装置200では、送信装置100からの可視光信号が示すデータを光センサ201が検出し、CPU203は、クロック信号発生部205が発生したクロック信号に従って、光センサ201が検出したデータを処理する。
【0022】
本実施形態で示した可視光通信システムにおいて、送信側と受信側のクロック信号の許容交差を±A/2%としたときは、送信側と受信側との合計でクロック信号のタイミングに最大A%の差が発生する。したがって、送信装置100のCPU103は、可視光信号における1フレームのビット長を「(1/A)×100/2」ビット以下に設定し、同じ内容のフレームが間隔を空けずに2回以上連続した送信デジタルデータを生成する。
【0023】
例えば、送信側と受信側のクロック信号の許容交差を±0.5%とすると、送信側と受信側との合計でクロック信号のタイミングに最大1%の差が発生する。この場合、送信装置100のCPU103は、可視光信号における1フレームのビット長を50(=(1/1)×100/2」ビット以下に設定し、同じ内容のフレームが間隔を空けずに2回以上連続した送信デジタルデータを生成する。クロック信号のタイミングに最大1%の差が発生するため、仮に1フレームのビット長を100ビットに設定すると、受信側において、1フレーム中に最大1ビットのエラーが含まれる。なお、1ビットのエラーは、100ビットのフレームの前半か後半のいずれかに含まれる。
【0024】
本実施形態では、CPU103が、1フレームのビット長を50ビットに設定し、100ビットのデジタルデータを、前半の50ビットのデータのフレームと、後半の50ビットのデータのフレームとに分割する。なお、図2に示すように、前半の50ビットは先頭ビットからの50ビットであり、後半の50ビットは最終ビットからの50ビットである。さらに、CPU103は、フレーム毎に、同じ内容の50ビットのデータのフレームが間隔を空けずに2回連続した送信デジタルデータを生成する。
【0025】
当該送信デジタルデータを受信した受信装置200は、光センサ201が検出したデータを処理する際、2回連続した同じ内容のフレームから構成された100ビットのデータの内、図3に示すように、エラーが含まれないフレームのデータを処理すれば良い。したがって、受信装置200は、送信側と受信側との間にクロック信号のずれがあっても、正確に可視光信号を解読することができる。
【0026】
なお、CPU103は、上記送信デジタルデータを生成する際、当該送信デジタルデータにエラーチェックコード(誤り検出符号)を含めても良い。また、本実施形態では、可視光を用いた通信を行うシステムを例に説明したが、赤外線等の可視光以外の帯域の光を用いた通信を行うシステムにも適用可能である。
【符号の説明】
【0027】
100 送信装置
101 クロック信号発生部
103 CPU
105 LED駆動回路
107 LED
200 受信装置
201 光センサ
203 CPU
205 クロック信号発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルデータを示す光信号の授受によって通信を行う光通信システムを構成する光信号送信装置であって、
送受信間におけるクロック信号の許容交差に基づいて、光信号を構成する各フレームのデータ長を設定し、当該データ長の同じ内容のフレームが複数回連続した送信デジタルデータを生成する送信データ生成部と、
前記送信デジタルデータに応じた形態の光信号を出力するよう発光部を駆動する発光駆動部と、
を備えたことを特徴とする光信号送信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光信号送信装置であって、
前記送信データ生成部は、前記許容交差が±A/2%のとき、各フレームのデータ長を「(1/A)×100/2」の計算式から算出することを特徴とする光信号送信装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光信号送信装置であって、
前記送信データ生成部は、所定データ長のデータを前記設定したデータ長の2つのフレームに分割する際、前記所定データ長のデータの先頭ビットから前記設定したデータ長のデータと、前記所定データ長のデータの最終ビットから前記設定したデータ長のデータとに分割することを特徴とする光信号送信装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の光信号送信装置であって、
前記送信データ生成部は、誤り検出符号を含む送信デジタルデータを生成することを特徴とする光信号送信装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の光信号送信装置であって、
前記光信号は可視光信号であることを特徴とする光信号送信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−85183(P2013−85183A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224940(P2011−224940)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】