光分岐素子及びそれを含む光通信システム
【課題】光ファイバとの接続が容易な光分岐素子及び光通信システムを提供する。
【解決手段】光分岐素子100Aでは、マルチコア光ファイバ200の入射ポート200Aに対して前段の光ファイバ12から出射された光を入射させると、この光は第1コア内を伝搬し、第1コアと第2コアとのコア間クロストークにより第1コアから4つの第2コアに対してその光が分配される。4つの第2コアに分配された光は、それぞれのコアを伝搬し、出射ポート200Bにおいてコア毎にそれぞれ光学的に結合されたファンアウト部品300内の4本の光導波路に対して出射される。
【解決手段】光分岐素子100Aでは、マルチコア光ファイバ200の入射ポート200Aに対して前段の光ファイバ12から出射された光を入射させると、この光は第1コア内を伝搬し、第1コアと第2コアとのコア間クロストークにより第1コアから4つの第2コアに対してその光が分配される。4つの第2コアに分配された光は、それぞれのコアを伝搬し、出射ポート200Bにおいてコア毎にそれぞれ光学的に結合されたファンアウト部品300内の4本の光導波路に対して出射される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光分岐素子及びそれを含む光通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、1つの送信局と複数の加入者との間の光通信を可能にするFTTH(Fiber To The Home)サービスを提供するため、例えば図11に示されたように、多段の光スプリッタを介在させることで1本の光ファイバを各加入者が共有する、いわゆるPON(PassiveOptical Network)システムと呼ばれる光通信システムが実現されている。
【0003】
すなわち、図11に示されたPONシステムは、インターネットなどの既存の通信システムの最終中継局である端局1(送信局)と、端局1と加入者宅2(加入者)との間に敷設された光ファイバ網とを備える。この光ファイバ網は、分岐点として設けられたクロージャー(光分岐素子30を含む)と、端局1からクロージャーまでの光通信回線12と、クロージャーから各加入者宅2までの光通信回線31から構成されている。
【0004】
上記端局1は、局側終端装置10(OLT:Optical Line Terminal)と、OLT10からの多重化信号を分岐する光分岐素子11を備える。一方、上記加入者宅2には、加入者側終端装置20(ONU:OpticalNetwork Unit)が設けられている。また、端局1と加入者宅2との間に敷設されている光ファイバ網の分岐点としてのクロージャーには、少なくとも、到達した多重化信号をさらに分岐するための光分岐素子30や、サービス内容を制限するための波長選択フィルタなどが配置されている。
【0005】
以上のように、図11に示されたPONシステムでは、端局1内に光分岐素子11が設けられるとともに、光ファイバ網上に配置されたクロージャー内にも光分岐素子30が設けられているので、1つの局側終端装置10からは複数の加入者に対してFTTHサービスの提供が可能になっている。そして、このPONシステムでは、多数の加入者宅2に対して多重化信号を分岐するために、多数の光分岐素子が用いられる。したがって、安価に量産可能で、施工も容易な光分岐素子が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−341147号公報
【特許文献2】特開平10−104443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者らは、従来の光通信システムについて検討した結果、以下のような課題を発見した。すなわち、1本の光ファイバの後段に接続されて、この光ファイバから入射した光を複数の光ファイバに対して供給する光分岐素子としては、一般的に前段と後段との光ファイバの数に応じて光導波路が形成された光導波路チップが用いられる。しかしながら、この光導波路チップを光分岐素子として用いる場合、光導波路チップと、この光導波路チップの前段及び後段に設けられた光ファイバとを接続するためには、光ファイバと光導波路チップとを調芯した上で結合及び固定を行う必要がある。このような作業は布設現場で行われるため、複数の光ファイバに対して正確に光分岐素子を取り付けることが難しい。
【0008】
本発明は上述のような課題を解決するためになされたものであり、光ファイバとの接続が容易な光分岐素子及びこの光分岐素子を備える光通信システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明に係る光分岐素子は、マルチコア光ファイバと、ファンアウト部品と、を備える。マルチコア光ファイバは、所定軸に沿って延びた第1コアと、1又はそれ以上の第2コアと、第1及び第2コアを取り囲むクラッドを備える。また、マルチコア光ファイバは、第1の端面と、この第1の端面に対向する第2の端面と、第1の端面上に位置する入射ポートAと、第2の端面上に位置する複数の出射ポートBとを有する。なお、第1の端面上に位置する入射ポートAは、第1コアに外部からの光を導く。前記第2の端面上に位置する複数の出射ポートBは、第1及び第2コア内を伝搬した光を取り出す。ファンアウト部品は、マルチコア光ファイバの第2の端面に対面する第3の端面と、第3の端面に対向する第4の端面と、第3の端面上に位置する複数の入射ポートCと、第4の端面上に位置する複数の出射ポートDを有する。第3の端面上に位置する複数の入射ポートCは、複数の出射ポートBと光学的に結合するよう配置されている。第4の端面上に位置する複数の出射ポートDは、複数の入射ポートCそれぞれに対応しており、その中心間距離が複数の入射ポートCの第3の端面上における中心間距離よりも長くなるよう配置されている。なお、マルチコア光ファイバとしては、例えば上記特許文献1や特許文献2に記載された構成例が知られている。
【0010】
特に、本発明に係る光分岐素子において、出射ポートBの数は、入射ポートAの数よりも多く、かつ、第1及び第2コアの合計数と等しいかそれ以下である。また、入射ポートAを介して第1コアに入射した光の少なくとも一部は、コア間クロストークにより、第2コアに分岐される。このとき、第1の一方の端面(当該マルチコア光ファイバの第1の端面に一致)には入射ポートAが設けられ、第2コアの一方の端面(当該マルチコア光ファイバの第1の端面に一致)にはポートは設けられない。ただし、第1コアの他方の端面(当該マルチコア光ファイバの第2の端面に一致)には、出射ポートBのいずれかが設けられてもよい。
【0011】
上述のような構造を有する光分岐素子によれば、マルチコア光ファイバの第1の端面上に位置する入射ポートAから第1コア内に入射された光は、マルチコア光ファイバのコア間クロストークにより、第1コアから第2コア(第1コアを除くコアであって外部から光が入射されないコア)に分配される。また、第2コア内を伝搬する光や第1コア内を伝搬し続ける光は、マルチコア光ファイバの第2の端面の出射ポートBから出射される。そして、出射ポートBから出射される光は、これら出射ポートBとそれぞれ光学的に結合された入射ポートCを介して、その入射ポートCがその端面に設けられたファンアウト部品内に入射される。ファンアウト部品内をそれぞれ伝搬した光は、入射ポートCにそれぞれ対応する出射ポートD毎に個別に出射される。したがって、本発明に係る光分岐素子では、前段の光ファイバがマルチコア光ファイバと光学的に容易に結合することができることから、光導波路チップを用いた従来の光分岐素子と比較して、光ファイバとの接続が容易となる。
【0012】
本発明に係る光分岐素子において、ファンアウト部品は、それぞれが、複数の入射ポートCのいずれかのポートに一致した一方の端面と、複数の出射ポートDのうち対応するポートに一致した他方の端面を有する複数の出射用光ファイバを含む構造を備えてもよい。
【0013】
本発明に係る光分岐素子は、マルチコア光ファイバの前段に配置される入射用光ファイバをさらに備えてもよい。この場合、入射用光ファイバは、マルチコア光ファイバにおける第1の端面上の入射ポートAを介して第1のコアに、外部からの光を入射させる。
【0014】
なお、外部からの光が入射される第1コアは、マルチコア光ファイバの中心軸(上記所定軸に直交する当該マルチコア光ファイバの断面中心)にその光軸が一致するよう配置される必要はない。すなわち、本発明の一実施形態として、上記所定軸に直交する、マルチコア光ファイバの断面において、第1及び第2コアは、マルチコア光ファイバの断面中心を避けるよう配置されてもよい。
【0015】
一方、上記所定軸に直交する、マルチコア光ファイバの断面において、マルチコア光ファイバの断面中心にその光軸が一致するよう第1コアが配置された構成の場合、第1コアの周辺に配置される第2コアは、第1コアを中心とした円周上に等間隔に配置されるのが好ましい。また、マルチコア光ファイバの断面中心にその光軸が一致するよう第1コアが配置された構成において、第1コアから該第1コアの周辺に配置される第2コアそれぞれまでの距離は、互いに等しいのが好ましい。第2コアそれぞれを伝搬する光のパワーバラツキを低減することができるからである。
【0016】
さらに、本発明に係る光分岐素子において、マルチコア光ファイバは、第1コアと第2コアそれぞれとの間での出力光の分岐比を調整のために曲げられた状態で所定の空間内に設置されてもよい。
【0017】
なお、本発明に係る光分岐素子において、マルチコア光ファイバと入射用光ファイバとの結合効率を向上させる構造として、マルチコア光ファイバと入射用光ファイバは、それらのクラッド径同士が略等しいとともに入射ポートAを介して光学的に結合されるコア同士の径が略等しいのが好ましい。
【0018】
本発明に係る光通システムは、上述のような構造を有する光分岐素子(本発明に係る光分岐素子)を備える。この場合、当該光通信システムでは、入射ポートA及び複数の出射ポートDに対して、互いに異なる光通信回線がそれぞれ個別に光学的に結合される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光ファイバとの接続が容易な光分岐素子及びそれを含む光通信システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る光分岐素子の第1実施形態の概略構成を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る光分岐素子の一部を構成するマルチコア光ファイバの概略構成及び設置状態を示す図である。
【図3】図1(A)及び図1(B)中の線III−IIIに沿った、マルチコア光ファイバの断面構造を示す図である。
【図4】第1実施形態に係る光分岐素子を構成するファンアウト部品の概略構成の一例を示す図である。
【図5】第1実施形態に係る光分岐素子を構成するファンアウト部品の概略構成の他の例を示す図である。
【図6】図1(B)に示された構造を有する光分岐素子の構造の一例をより具体的に示す図である。
【図7】図1(B)に示された構造を有する光分岐素子の他の構造(使用例)をより具体的に示す図である。
【図8】第2実施形態に係る光分岐素子の一部を構成するマルチコア光ファイバの構成を示す断面図であって、図1(A)及び図1(B)中の線III−IIIに沿った、マルチコア光ファイバの断面図に一致した図である。
【図9】第2実施形態に係る光分岐素子の一部を構成するマルチコア光ファイバの他の構成を示す断面図であって、図1(A)及び図1(B)中の線III−IIIに沿った、マルチコア光ファイバの断面図に一致した図である。
【図10】第3実施形態に係る光分岐素子の一部を構成するマルチコア光ファイバの構成を示す断面図であって、図1(A)及び図1(B)中の線III−IIIに沿った、マルチコア光ファイバの断面図に一致した図である。
【図11】光通信システム(PONシステム)の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る光分岐素子及光通信システムの各実施形態を、図1〜図10を用いて詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。また、図1〜図10に示された各実施形態に係る光分岐素子は、当然のことながら、図11に示された光通信システムの光分岐素子11、30に適用可能である。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る光分岐素子の第1実施形態の概略構成を示す図である。具体的に、図1(A)は、当該光分岐素子に入射用光ファイバと出射用光ファイバとが含まれない構成を示し、図1(B)は、当該光分岐素子に入射用光ファイバと出射用光ファイバとを含む構成を示している。また、図2は、第1実施形態に係る光分岐素子の一部を構成するマルチコア光ファイバの概略構成及び設置状態を示す図である。図3は、図1(A)及び図1(B)中の線III−IIIに沿った、マルチコア光ファイバの断面図である。当該光分岐素子は、図11に示された光通信システムにおける光分岐素子11、30と同様の機能を有する素子である。なお、図1(A)の光分岐素子100Aと図1(B)の光分岐素子100Bの双方には、共通するマルチコア光ファイバ200が適用されている。
【0023】
具体的に、図1(A)に示された光分岐素子100Aは、マルチコア光ファイバ200とファンアウト部品300と備える。マルチコア光ファイバ200は、所定軸に沿って延びる第1コアと、1又はそれ以上の第2コアと、第1及び第2コアを取り囲むクラッドを備える。また、マルチコア光ファイバ200は、外部からの光を導き光ファイバ12に対面した一方の端面(第1の端面)と、該一方の端面に対向する他方の端面(第2の端面)と、一方の端面上に配置された入射ポート200A(入射ポートA)と、他方の端面上に配置された出射ポート200B(出射ポートB)を備える。このマルチコア光ファイバ200において、一方の端面は、入射ポート200Aを介して前段の光ファイバ12と光学的に結合され、他方の端面は、出射ポート200Bを介してファンアウト部品300と結合される。そして、ファンアウト部品300は、マルチコア光ファイバ200の他方の端面に対面する一方の端面(第3の端面)と、該一方の端面に対向する他方の端面(第4の端面)と、一方の端面上に配置された入射ポート300A(入射ポートC)と、他方の端面上に配置された出射ポート300B(出射ポートD)を備える。このファンアウト部品300において、マルチコア光ファイバ200の第2コアから出射された光は入射ポート300Aから入射され、それぞれ互いに異なる出射ポート300Bを介してそれぞれ後段の光ファイバ31に対して出射される。
【0024】
なお、図1(A)において、200A、200B、300A、300Bの点(・)で示した部分は、コアに対応した端面に二次元的または一次元的に配列された各ポートを表し、ポートの数は、コアの数によって変化する(図1(B)においても同様)。また、図1(A)に示された構成例では、入射ポート200Aは、光ファイバ12のコアと光学的に結合するマルチコアファイバ200の1本の第1コア201の端面に対応するポートである。200B、300A、300Bの各ポートは、配列が一次元又は二次元で配列され、ポート数は、4に限定されず、2でも、3でも、4でも、5でも、6でも、またそれ以上であってもよい。マルチコア光ファイバ200の外径は、説明の都合で、光ファイバ12の外径に比して著しく大きく図示しているが、実際の大小を表しているものではなく、若干大きいものあるいは若干小さいものでもよい。
【0025】
マルチコア光ファイバ200は、図2(A)及び図3に示されたように、クラッド203と、このクラッド203の中心軸AXにその光軸が一致するよう配置された第1コア201と、このクラッド203内の第1コア201とは異なる位置に設けられて中心軸AXに沿って延びる4つの第2コア202と、クラッド203の側面を覆う被覆部204とを備える。4つの第2コア202は、クラッド203の中心(すなわち、第1コア201の中心)を中心とした円周上に等間隔に設けられている。
【0026】
上述のような構造を有するマルチコア光ファイバ200において、例えば第1コア201及び第2コア202の直径は9μm、第1コア201と第2コア202との距離(中心同士を結ぶ距離:図3におけるr1〜r4)は14μm、及び隣接する第2コア202同士の距離(中心同士を結ぶ距離)は20μmである。4つの第2コア202は、第1コア201を中心とした円周C上に等間隔に配置される。第1コア201及び第2コア202は、クラッド203に対して比屈折率差0.30%のステップインデックス型の屈折率プロファイルを有し、クラッド203の直径は125μmである。また、被覆部204(図2(A)参照)をクラッド203の側面に設けることで、マルチコア光ファイバ200全体の直径は245μmとなる。本実施形態では、マルチコア光ファイバ200の長さは、第1コア201に光が入射された場合、コア間クロストークによって第1コア201に入射した光が全て第2コア202に分配される長さとすることが好ましい。なお、第1コア201の他方の端面を出射ポート200Bとして利用する場合に、マルチコア光ファイバ200の長さは、第2コア202から出射される光のパワーと同程度のパワーを有する光が第1コア201から出射される程度の長さであればよい。
【0027】
なお、図1(A)の光分岐素子100Aでは、マルチコア光ファイバ200が直線状に配置されているが、マルチコア光ファイバ200をパッケージ等に収納する場合には、例えば図2(B)に示されたように、マルチコア光ファイバ200をリール250等に巻き付ける態様としてもよい。図2(B)の例では、マルチコア光ファイバ200が、中心軸AXに沿って延びた半径Rが30mmである胴部を有するリール250に、1周当り1回転の捻れを付与されながら10周巻き付けられている。特に、図2(B)に示されたように、マルチコア光ファイバを所定の曲げを付与した状態で所定の空間内に設置する構成は、第1コア201と第2コア202それぞれとの間での出力光の分岐比を調整可能にする。
【0028】
マルチコア光ファイバ200には、一方の端面に入射ポート200A(第1コア201の一方の端面に一致)が設けられ、他方の端面には出射ポート200B(第2コア202の他方の端面にそれぞれ一致)が設けられている。入射ポート200Aに対しては光ファイバ12が光学的に接続され、マルチコア光ファイバ200の第1コア201を除いた第2コア202が出射ポート200Bを経てファンアウト部品300と光学的に結合される。ファンアウト部品300は、第2コア202から出射された光をそれぞれ互いに異なる複数本の後段の光ファイバ31に対して出射するための光学部品である。すなわち、マルチコア光ファイバ200の第2コア202からファンアウト部品300に出射された光は、ファンアウト部品300内でその光路を変更して出射される。このファンアウト部品300の構成は特に限定されず、周知のファンアウト部品を本実施形態のファンアウト部品として適用することが可能である。
【0029】
図1(A)に示された光分岐素子100Aに適用されるファンアウト部品の一例を図4に示す。図4のファンアウト部品301は、石英ガラス等からなる光導波路部材410が第2コア202の数に応じて設けられ、この光導波路部材410の周囲が樹脂420により覆われた構造を有する。光導波路部材410のそれぞれは、一方の端面がマルチコア光ファイバ200の出射ポート200Bの対応するいずれかと光学的に結合する入射ポート300Aであり、他方の端面が後段の光ファイバに対して出射するための出射ポート300Bである。このうち、入射ポート300A側の端面では二次元に配列されたマルチコアファイバ200の4つの第2コア202の端面と複数の光導波路部材410とがそれぞれ一対一で光学的に結合するように光導波路部材410の入射ポート300Aが配置されている。また、出射ポート300B側の端面では、後段の光ファイバ31それぞれの端面と4つの光導波路部材410とがそれぞれ一対一で光学的に結合するよう、光導波路部材410の出射ポート300Bが配置されている。図4のファンアウト部品301では、出射ポート300Bの各ポートは、入射ポート300Aの各ポートに比し、ポートの中心間距離がより離間するように、直線状、すなわち一次元状に配置されている。図4のファンアウト部品301では、出射ポート300Bの配列は一次元配列であるが、図5に示されたように(ファンアウト部品302)、出射ポート300Bは二次元配列であってもよい。さらに、光導波路部材410の両端、すなわち、入射ポート300A側の端面及び出射ポート300B側の端面は、それぞれ石英ガラスやジルコニア等からなる平板形状の固定部材430、440により固定される。上記のファンアウト部品301とマルチコア光ファイバ200とを接続する方法としては例えば、コネクタ接続や融着接続等が挙げられる。なお、光導波路部材410の本数は、4本には限定されない。第1コア201の他方の端面を出射ポート200Bとして利用しない構成では、光導波路部材410の本数は、第2コア202の総数と等しいか、それ以下であってもよい。また、第1コア201の一方の端面を入射ポート200Aとして利用し、他方の端面を出射ポート200Bとして利用する場合、光導波路部材410の本数は、2本以上かつマルチコア光ファイバ200のコアの総数と等しいかそれ以下であればよい。
【0030】
上述のような構造を有する光分岐素子100Aにおいて、マルチコア光ファイバ200の入射ポート200Aに対して前段の光ファイバ12から出射された光が入射されると、この光は入射ポート200Aから第1コア201内を伝搬する。その間、第1コア201と第2コア202とのコア間クロストークによって、第1コア201から4つの第2コア202に対してその光が分配される。そして、4つの第2コア202に分配された光は、それぞれのコアを伝搬し、ファンアウト部品300内に入射される。すなわち、4つの第2コア202に分配された光は、マルチコア光ファイバ200の出射ポート200Bにおいてコア毎にそれぞれ光学的に結合されたファンアウト部品300内の4つの光導波路に対して、それぞれ出射される。その後、入射ポート300Aを介してファンアウト部品300内に入射された光は、各ポートに対応している4つの光導波路を伝搬し、ファンアウト部品300に対して光学的に結合する複数の光ファイバ31に対して出射ポート300Bから出射される。このように、本実施形態に係る光分岐素子100Aは、前段の1つの光ファイバ12内を伝搬する光(外部からの光)を入力し、後段の4つの光ファイバ31に対して出力する1入力4出力の光分岐素子として機能する。このとき、当該光分岐素子100Aは、必要に応じて、マルチコア光ファイバ200と他の部品との接続部分やマルチコア光ファイバ200自体を保護する目的から、パッケージ等に収納されてもよい。
【0031】
次に、図1(B)に示された光分岐素子について説明する。図1(B)の光分岐素子100Bの構造は、図1(A)の光分岐素子100Aと比較して、入射用光ファイバと出射用光ファイバとを含むよう構成された点で異なっている。具体的な相違点は以下の通りである。
【0032】
すなわち、光分岐素子100Bには、マルチコア光ファイバ200と前段の光ファイバ12との間に光ファイバ12からの光をマルチコア光ファイバ200に入射するための入射用光ファイバ110が設けられている。さらに、光分岐素子100Bのファンアウト部品300は、固定部材320と出射用光ファイバ310とから構成されている。
【0033】
光分岐素子100Bでは、マルチコア光ファイバ200の入射ポート200A(入射ポートA)は、前段の光ファイバ12と光学的に結合している入射用光ファイバ110に対して光学的に結合している。入射用光ファイバ110とマルチコア光ファイバ200との間は、融着接続等により接続することが可能である。一方、ファンアウト部品300側に位置する、マルチコア光ファイバ200の出射ポート200B(出射ポートB)は、ファンアウト部品300を構成する固定部材320の一方の端面320A(第3の端面)に設けられた入射ポート300A(入射ポートC)と光学的に結合している。固定部材320は、ファンアウト部品300の他方の端面(第4の端面)に設けられた出射ポート300B(出射ポートD)において、後段の光ファイバ31と光学的に結合する複数の出射用光ファイバ310の端部を入射ポート300Aに固定するための部材であり、出射用光ファイバ310の一方の端面が固定される他方の端面320Bを有する。この構成により、マルチコア光ファイバ200の出射ポート200Bから出射された光は、入射ポート300Aから出射用光ファイバ310に入射し、出射ポート300Bから後段の光ファイバ31に対して出射される。
【0034】
図1(B)に示された光分岐素子100B(特に、固定部材320を中心としたファンアウト部品302)のより具体的な構造の一例を図6に示す。図6のファンアウト部品302は、固定部材320と、出射用光ファイバとして機能する4本の単一コアファイバ310(クラッド内に単一のコアを有する光ファイバ)を備える。固定部材320は、接続対象であるマルチコアファイバ200の出射ポート200Bが設けられた端面に接着剤等で固定される第1端面320A(当該ファンアウト部品302の入射ポート300Aが設けられた端面)と、出射用光ファイバ310の一端が融着等により固定される第2端面320Bと、第1端面320Aと第2端面320Bの間を連絡する複数の貫通孔330を有する。なお、複数の貫通孔330は、第1端面320A上において、接続対象であるマルチコア光ファイバ200の光出射端面において出射ポート200Bとして機能するコア配列(第2コア202)に一致するよう配置されている。また、図6において、固定部材320の内部は、出射用光ファイバ310の挿入状態が確認できるように、貫通孔330に沿って出射用光ファイバ310の一部が破線で示されている。
【0035】
4本の出射用光ファイバ310それぞれにおいて、入射ポート300Aとして機能する端面を含む先端部分320Cは、残りの部分の外径よりも細くなるよう整形されており、各出射用光ファイバ310の先端部分320Cが固定部材320の対応する貫通孔330に挿入されている。先端部分320Cを残りの部分の外径よりも細くなるよう整形するのは、複数の出射用光ファイバ310の一般的な外径(クラッド径)が125μm以上であるのに対して、マルチコア光ファイバ200のコアの間隔がそれよりも小さく、マルチコアファイバ200のコア間隔に一致する間隔で、これら複数の出射用光ファイバ310の外径を変更せずに入射ポート300Aを形成することが困難であるためである。
【0036】
上述のような構造を有する光分岐素子100Bでは、前段の光ファイバ12から出射された光が、入射用光ファイバ110を経てマルチコア光ファイバ200の入射ポート200Aに入射される。そして、入射ポート200Aを介して第1コア201に入射された光は、該第1コア201内を伝搬し、第1コア201と第2コア202とのコア間クロストークによって、第1コア201から4つのコア202に対してその伝搬光が分配される。そして、4つの第2コア202に分配された光は、それぞれのコアを伝搬する。その後、4つの第2コア202を伝搬した光は、入射ポート200Aが設けられた端面とは逆側の端面に設けられた出射ポート200Bにおいてコア毎にそれぞれ光学的に結合されたファンアウト部品300に入射される。すなわち、入射ポート300Aを介して4本の出射用光ファイバ310内に入射された光は、それぞれ、4本の出射用光ファイバ310内を伝搬し、対応する出射ポート300Bを介してファンアウト部品302に対して光学的に結合する4本の光ファイバ31にそれぞれ出射される。このように、本実施形態に係る光分岐素子100Bは、前段の1つの光ファイバ12を伝搬した光(外部からの光)を入力し、後段の4つの光ファイバ31に対して出力する1入力4出力の光分岐素子として機能する。
【0037】
なお、図6に示された光分岐素子100Bの構成では、マルチコア光ファイバ200における第1コア201では、一方の端面が入射ポート200Aとして利用される一方、他方の端面は出射ポート200Bとしては利用されていない。しかしながら、マルチコア光ファイバ200の長さを調節することにより、第1コア201の他方の端面を出射ポート200Bとして利用することも可能である。また、光分岐素子100A、100Bは、マルチコア光ファイバ200の出射ポート200Bの一部だけが出射用光ファイバ31に接続される構成が採用されてもよい。例えば、図7は、図1(B)に示された光分岐素子100B(特に、固定部材320を中心としたファンアウト部品302A)の他の構造をより具体的に示す図である。図7のファンアウト部品302Aは、固定部材320と、出射用光ファイバとして3本の単一コアファイバ310A〜310Cを備える。固定部材320は、接続対象であるマルチコアファイバ200の出射ポート200Bが設けられた端面に接着剤等で固定される第1端面320A(当該ファンアウト部品302Aの入射ポート300Aが設けられた端面)と、3本の出射用光ファイバ310A〜310Cの一端が融着等により固定される第2端面320Bと、第1端面320Aと第2端面320Bの間を連絡する複数の貫通孔を有する。なお、複数の貫通孔は、第1端面320A上において、接続対象であるマルチコアファイバ200の光出射端面において出射ポート200Bとして機能するコア配列(第1コア201と第2コア202)に一致するよう配置されている。また、図7において、固定部材320の内部は、出射用光ファイバ310A〜310Cの挿入状態が確認できるように、貫通孔に沿って出射用光ファイバ310の一部が破線で示されている。
【0038】
3本の出射用光ファイバ310A〜310Cそれぞれにおいて、入射ポート300Aとして機能する端面を含む先端部分320Cは、残りの部分の外径よりも細くなるよう整形されており、出射用光ファイバ310A〜310Cそれぞれの先端部分320Cが固定部材320の対応する貫通孔330A〜330Cに挿入されている。また、貫通孔330A〜330Cを除く貫通孔には、出射用光ファイバの先端部分は挿入されていない。
【0039】
上述のような構造を有する光分岐素子100Bでは、前段の光ファイバ12から出射された光が、入射用光ファイバ110を経てマルチコア光ファイバ200の入射ポート200Aに入射される。そして、入射ポート200Aを介して第1コア201に入射された光の一部は、該第1コア201内を伝搬し、第1コア201と第2コア202とのコア間クロストークによって、第1コア201から4つのコア202に対してその伝搬光が分配される。そして、第1コア201と4つの第2コア202に分配された光は、それぞれのコアを伝搬する。その後、第1コア201と4つの第2コア202を伝搬した光は、入射ポート200Aが設けられた端面とは逆側の端面に設けられた出射ポート200Bのうち、必要なコア毎にそれぞれ光学的に結合されたファンアウト部品302Aに入射される。すなわち、入射ポート300Aを介して3本の出射用光ファイバ310A〜310C内に入射された光は、それぞれ、3本の出射用光ファイバ310A〜310C内を伝搬し、対応する出射ポート300Bを介してファンアウト部品302Aに対して光学的に結合する3本の光ファイバ31にそれぞれ出射される。このように、図7に示された構成では、前段の1本の光ファイバ12を伝搬した光(外部からの光)が入力され、後段の3本の光ファイバ31に対して出力する1入力3出力の光分岐素子として機能する。
【0040】
なお、図6及び図7に示されたいずれの構成においても、マルチコア光ファイバ200に対して接続される入射用光ファイバ110は、一般的なシングルモード光ファイバが好適に用いられる。そして、このシングルモードの入射用光ファイバ110のクラッド112は、マルチコア光ファイバ200のクラッド203の外径に略等しく、入射用光ファイバ110のコア111の外径は、マルチコア光ファイバ200内の第1コア201の外径に略等し。この状態で、入射用光ファイバ110のコア111とマルチコア光ファイバ200の第1コア201と、入射ポート200Aが設けられた端面において光学的に結合される。入射用光ファイバ110とマルチコア光ファイバ200との接続は融着接続等によって行われる。
【0041】
上述のファンアウト部品300の構成は、図4のファンアウト部品301や図5のファンアウト部品302(302A)の構成に限定されない。例えば、レンズ系、反射系、導光系等の光学部品を組み合わせて光学的にポート間隔をより離間するような他の構成を有するファンアウト部品を本実施形態のファンアウト部品として適用することが可能である。
【0042】
ここで、本実施形態に係る光分岐素子100A、100Bでは、前段の光ファイバ12がマルチコア光ファイバ200の前段の入射用光ファイバ110又はマルチコア光ファイバ200と光学的に容易に結合可能である。したがって、従来の光導波路チップを用いた光分岐素子と比較して、当該光分岐素子100A、100Bは、光ファイバとの接続を容易にする。
【0043】
また、第2コア202をマルチコア光ファイバ200の中心に配置された第1コア201を中心とした円周上に等間隔に配置することで、複数の第2コア202に対して第1コア201から分岐される光の比率を均一とすることができる。
【0044】
さらに、図2(B)に示されたように、マルチコア光ファイバ200を1周当り1回転の捻れを与えながら直径R(=30mm)の胴部を有するリール250に10周巻き付ける場合、該リール250の胴部への巻付けによるマルチコア光ファイバ200の曲げ方向は、捻れのために長手方向(光軸方向)に変化し、結果として、コア間のクロストークのばらつきが低減される。したがって、マルチコア光ファイバ200において、各コアへの光パワーの分配の均一性が維持される。
【0045】
また、柔軟性が有するマルチコア光ファイバ200を光分岐素子の一部に適用することで、柔軟性のない光導波路チップを光分岐素子の一部に適用した場合と比較して、形状の自由度が高められ、この光分岐素子の用途に応じて形状の変更等を行うことが可能になる。
【0046】
なお、上述の例では、光を均一に分配するためにマルチコア光ファイバ200に捻れを与えながらリール250の胴部に巻き付けた構成について説明したが、各コアへの分配される光パワーに差異を持たせるために、捻れを与えずにリール250の胴部に巻き付ける方法も採用できる。このように、マルチコア光ファイバ200に対して捻れを与えずにリール250の胴部に巻き付けることにより、複数の第2コア202のうちの特定のコアへの光パワーを大きく(あるいは小さく)することも可能である。さらに、マルチコア光ファイバ200を巻き付けるリール250の胴径(=2R)を変化させることで、各コア間の光パワー差を変化させることもできる。
【0047】
また、上述の実施形態では入射用光ファイバ110とマルチコア光ファイバ200との間の接続方法として融着接続を挙げたが、この部分をコネクタ接続・メカニカルスプライス等の標準的なシングルモード光ファイバ同士を接続する手段で置き換えることも可能である。このように、シングルモード光ファイバ同士を接続する方法を採用することができるため、光分岐素子の一部に光導波路チップが適用された従来技術の構成と比較して、本実施形態に係る光分岐素子100A、100Bの構成は、大幅に接続の手間が軽減される。
【0048】
また、上述の実施形態では、マルチコア光ファイバ200をリール250の胴部に巻き付けているが、コア間でのクロストークにより第1コア201から第2コア202に光パワーを分配する上では、リール250の胴部への巻付けは必須ではない。したがって、光分岐素子100A、100Bをパッケージ等に収納する場合の形態等に応じて、マルチコア光ファイバ200をリールに巻き付けずに収納する態様とすることもできる。
【0049】
また、上述の実施形態では、マルチコア光ファイバ200ではコア間クロストークを用いて第1コア201から第2コア202に対して光を分配している。しかしながら、ファンアウト部品300中において有意なコア間クロストークが発生すると所望の分岐比が実現出来ない可能性も考えられる。このため、ファンアウト部品300において、コア間クロストークを抑制する構成を設けることもできる。具体的には、ファンアウト部品300中で光を伝搬させる光導波路の周囲を囲むように、比屈折率差が低く、光導波路からの漏れ光のパワーを低減する領域を設けてもよい(閉じ込め等の光制御により漏れ光の光量を低減させる構成等)。
【0050】
(第2実施形態)
図8は、本発明に係る光分岐素子の第2実施形態の一部を構成するマルチコア光ファイバの断面図であり、図1(A)及び図1(B)中の線III−IIIに沿った断面に一致した図である。第2実施形態に係る光分岐素子と第1実施形態に係る光分岐素子と異なる点は、このマルチコア光ファイバの構成、すなわち、第2コアの数とその配置が異なる点である。
【0051】
図8に示されたように、第2実施形態の光分岐素子の一部を構成するマルチコア光ファイバ210では、その断面(当該マルチコア光ファイバ210の中心軸AXに直交する面)において、クラッド203内の第2コア202が第1コア201の周囲に8つ配置される。そして、これら第2コア202は、当該マルチコア光ファイバ210の中心軸AX(第1コア201の光軸に一致)を中心とした円周上に等間隔で配置されている。
【0052】
図8のマルチコア光ファイバ210において、例えば第1コア201及び第2コア202の直径は8.5μm、第1コア201と第2コア202との距離(中心同士を結ぶ距離)は20μmである。また、第1コア201及び第2コア202は比屈折率差0.35%のステップインデックス型屈折率プロファイルを有し、クラッド203の直径は125μmである。また、被覆部204(図2参照)を設けることで、マルチコア光ファイバ210全体の直径は245μmとなる。また、マルチコア光ファイバ210の長さは、第1コア201に光が入射された場合に、コア間クロストークによって第2コア202に分配された光の強度が最大となり、第1コア201の光の強度とが最小となる長さである。なお、第1コア201を当該マルチコア光ファイバ210の出射ポート200Bとしても利用する場合には、当該マルチコア光ファイバ220の長さは第1コア201を出射ポート200Bとして利用しない場合よりも短くなる。
【0053】
このマルチコア光ファイバ210を用いて、図1(A)及び1(B)の光分岐素子100A、100Bと同様に、一方の端面(図1(A)及び1(B)の端面200Aに相当する面)に標準的なシングルモード光ファイバからなる入射用光ファイバを融着接続する。これにより、入射用光ファイバのコアとマルチコア光ファイバ210の第1コア201とが光学的に結合させ、他方の端面(図1(A)及び1(B)の端面200Bに相当する面)にはマルチコア光ファイバ210の8つの第2コア202からの光が互いに異なる8本の出射用光ファイバに導くためのファンアウト部品(出射用光ファイバの本数が異なる点を除き、図1(A)及び1(B)に示されたファンアウト部品300に相当)が光学的に結合される。
【0054】
以上の構成により、標準的なシングルモード光ファイバである入射用光ファイバからマルチコア光ファイバ210の第1コア201に光が入射されると、第1コア201と第2コア202とのコア間クロストークにより8つの第2コア202に光パワーが分配される。ここで、マルチコア光ファイバ210では、8つの第2コア202は第1コア201との間隔も含めて同一の設計であるため、光は均一に分配される。このように、本実施形態に係る光分岐素子は、1本の入射用光ファイバによる光を入力し、最大8本の出射用光ファイバに対して出力する1入力8出力の光分岐素子として機能する。このとき、必要に応じて、マルチコア光ファイバ210と他の部品との接続部分やマルチコア光ファイバ210自体を保護する目的から、これらがパッケージ等に収納されてもよい。なお、本実施形態の光分岐素子において、第1コア201はファンアウト部品とは光学的に接続されても、また、接続されなくてもよい。
【0055】
上述のような構造を有する第2実施形態に係る光分岐素子においても、第1実施形態に係る光分岐素子と同様に、前段の入射用光ファイバはマルチコア光ファイバ210の第1コアと光学的に結合され、後段の光ファイバはファンアウト部品と光学的に結合される。このため、光導波路チップが適用された従来の光分岐素子と比較して、本実施形態に係る光分岐素子の構成は、前段及び後段の光ファイバとの接続が容易になる。
【0056】
また、第2コア202をマルチコア光ファイバ210の中心に配置された第1コア201を中心とした円周上に等間隔に配置することで、複数の第2コア202に対して第1コア201から分岐される光の比率を均一とすることができる。
【0057】
図9は、本発明に係る光分岐素子の第2実施形態の一部を構成するマルチコア光ファイバの他の構成を示す断面図であり、図1(A)及び1(B)中の線III−IIIに沿った断面に一致した図である。この図9に示されたマルチコア光ファイバ220は、マルチコア光ファイバの構成、すなわち、第2コアの数とその配置が図8に示されたマルチコア光ファイバ210と相違する。
【0058】
図9に示されたように、第2実施形態に係る光分岐素子の一部を構成するマルチコア光ファイバ210では、6つの第2コア202が第1コア201の周囲に配置されている。そして、これら第2コア202は、マルチコア光ファイバ220の中心軸AX(第1コア201の光軸に一致)を中心とした円周上に等間隔に配置されている。このように、マルチコア光ファイバを構成する第2コアの数は、適宜変更することができる。すなわち、第2コアの数は、上述の各実施形態で説明された数、例えば4、6又は8個に限定されず、第1コア201の周囲に3つの第2コアが配置されても、また、10以上、20以上の第2コアが第1コア201の周囲に配置されてもよい。
【0059】
以上、第1及び第2実施形態について説明したが、本発明は上述の各実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。
【0060】
例えば、上述の第1及び第2実施形態では、第2コア202の位置はマルチコア光ファイバの中心軸AXを中心とした円周上にある。しかしながら、第2コア202は、マルチコア光ファイバの中心軸AXを中心とした円周上とは異なる位置に配置されてもよい。また、第2コア202の数は複数である必要はなく、以下の第3実施形態のように、第1コアを出力ポートとして利用する場合には、少なくとも1つあればよい。
【0061】
また、上記実施形態では、第1コアはファンアウト部品と接続しない構成について説明したが、第1コアもファンアウト部品と接続する構成とすることも可能である。なお、第1コアがファンアウト部品と接続する場合には、マルチコア光ファイバにおいて第1コアから個々の第2コアに分配される光の光量と同量の光が第1コアを伝搬する構成とすることが好ましい。そして、第1コアがファンアウト部品と接続しない場合には、上記実施形態で説明したように、第1コアに入射した光が第2コアに全て分配される構成とすることが好ましい。
【0062】
(第3実施形態)
図10は、本発明に係る光分岐素子の第3実施形態の一部を構成するマルチコア光ファイバの断面図であり、図1(A)及び1(B)中の線III−IIIに沿った断面に一致した図である。第3実施形態に係る光分岐素子と第1実施形態に係る光分岐素子と異なる点は、マルチコア光ファイバの構成、すなわち、第1コアと第2コアの数とその配置が異なる点である。
【0063】
図10(A)に示されたように、第3実施形態の光分岐素子の一部を構成するマルチコア光ファイバ230では、当該マルチコア光ファイバ230の中心軸AXから外れた位置に、第1コア201と第2コア201が配置されている。図10(A)に示された例では、マルチコア光ファイバ230は、中心軸AXを挟んで1つの第1コア201と1つの第2コア202がクラッド203によって囲まれた状態で配置されている。そして、第1コア201の一方の端面が、当該マルチコア光ファイバ230の入射ポート200Aとなる。一方、第1コア201の他方の端面、及び、第2コア202の光出射端面が、当該マルチコア光ファイバ230の出射ポート200Bとなる。
【0064】
このようなマルチコア光ファイバ230としては、例えば第1コア201及び第2コア202の直径が8.5μm、第1コア201と第2コア202との距離(中心同士を結ぶ距離)が20μmである。第1コア201及び第2コア202が比屈折率差0.35%のステップインデックス型屈折率プロファイルを有し、クラッド203の直径が125μmである。また、被覆部204(図2参照)を設けることで、マルチコア光ファイバ230の直径は245μmとなる。マルチコア光ファイバ230の長さは、第1コア201に光が入射された場合に、コア間クロストークによって第2コア202に分配された光の強度と第1コア201内を伝搬する光の強度とが略等しくなる長さが好ましい。
【0065】
このようなマルチコア光ファイバ230を用いて、図1(A)及び1(B)の光分岐素子100A、100Bと同様に、一方の端面(図1(A)及び1(B)の端面200Aに相当する面)に標準的なシングルモード光ファイバからなる入射用光ファイバが融着接続される。これにより、入射用光ファイバのコアと当該マルチコア光ファイバ230の第1コア201とが光学的に結合される。また、他方の端面(図1(A)及び1(B)の端面200Bに相当する面)には当該マルチコア光ファイバ230の第1コア201と第2コア202のそれぞれからの光を互いに異なる2本の出射用光ファイバに導くためのファンアウト部品が光学的に結合される。
【0066】
以上の構成により、標準的なシングルモード光ファイバである入射用光ファイバから当該マルチコア光ファイバ230の第1コア201に光が入射されると、第1コア201と第2コア202とのコア間クロストークにより1つの第2コア202に光パワーが分配される。ここで、当該マルチコア光ファイバ230では、1つの第2コア202は第1コア201と同一の設計であるため、第1コア201と第2コア202の間で光は均一に分配される。このように、本実施形態に係る光分岐素子は、1つの入射用光ファイバによる光を入力し、最終的に2本の出射用光ファイバに対して出力する1入力2出力の光分岐素子として機能する。このとき、必要に応じて、マルチコア光ファイバ230と他の部品との接続部分やマルチコア光ファイバ230自体を保護する目的から、これらがパッケージ等に収納されてもよい。
【0067】
上述のような構造を有する第3実施形態に係る光分岐素子においても、第1実施形態に係る光分岐素子と同様に、前段の入射用光ファイバはマルチコア光ファイバ230の第1コア201と光学的に結合され、後段の光ファイバはファンアウト部品と光学的に結合される。そのため、光導波路チップが適用された従来の光分岐素子と比較して、本実施形態に係る光分岐素子は、前段及び後段の光ファイバとの接続を容易にする。
【0068】
また、第2コア202をマルチコア光ファイバ230の中心軸AXを挟んで第1コア201と対称に配置することで、1つの第2コア202に対して第1コア201から分岐される光の比率を均等にすることができる。
【0069】
図10(B)は、本発明に係る光分岐素子の第3実施形態の一部を構成するマルチコア光ファイバの他の構成を示す断面図であり、図1(A)及び1(B)中の線III−IIIに沿った断面図に一致した図である。この図10(B)に示されたマルチコア光ファイバ240は、マルチコア光ファイバの構成、すなわち、第2コアの数と第1及び第2コアの配置が図10(A)に示されたマルチコア光ファイバ230と相違する。
【0070】
図10(B)に示されたように、第3実施形態に係る光分岐素子の一部を構成するマルチコア光ファイバ240では、当該マルチコア光ファイバ240の中心軸AXを第1コア201と3つの第2コア202が取り囲むように配置されている(中心軸AXから第1コア201や3つの第2コア202までの各距離は等しい)。このように、クラッド203内において、マルチコア光ファイバを構成する第2コアの数は、適宜変更することができる。すなわち、第2コアの数は、2、4、6又は8個に限定されず、例えば第1コア201及び第2コア202の総数が10以上、20以上となってもよい。
【0071】
マルチコア光ファイバ240の入射用光ファイバに光学的に結合される端面には、入射ポート200Aが設けられ、第1コア201の一方の端面が入射ポート200Aとなる。一方、マルチコア光ファイバ240の他方の端面には出射ポート200Bが設けられている。図10(B)に示されたマルチコア光ファイバ240では、第1コア201と3つの第2コア202の全てのコアの端面が出射ポート200Bとなっている。
【符号の説明】
【0072】
12…前段の光ファイバ(光通信回線)、31…後段の光ファイバ(光通信回線)、100A、100B…光分岐素子、110…入射用光ファイバ、310、310A〜310C…出射用光ファイバ、200、210、220、230…マルチコア光ファイバ、201…第1コア、202…第2コア、203…クラッド、204…被覆部、300、301、302、302A…ファンアウト部品。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光分岐素子及びそれを含む光通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、1つの送信局と複数の加入者との間の光通信を可能にするFTTH(Fiber To The Home)サービスを提供するため、例えば図11に示されたように、多段の光スプリッタを介在させることで1本の光ファイバを各加入者が共有する、いわゆるPON(PassiveOptical Network)システムと呼ばれる光通信システムが実現されている。
【0003】
すなわち、図11に示されたPONシステムは、インターネットなどの既存の通信システムの最終中継局である端局1(送信局)と、端局1と加入者宅2(加入者)との間に敷設された光ファイバ網とを備える。この光ファイバ網は、分岐点として設けられたクロージャー(光分岐素子30を含む)と、端局1からクロージャーまでの光通信回線12と、クロージャーから各加入者宅2までの光通信回線31から構成されている。
【0004】
上記端局1は、局側終端装置10(OLT:Optical Line Terminal)と、OLT10からの多重化信号を分岐する光分岐素子11を備える。一方、上記加入者宅2には、加入者側終端装置20(ONU:OpticalNetwork Unit)が設けられている。また、端局1と加入者宅2との間に敷設されている光ファイバ網の分岐点としてのクロージャーには、少なくとも、到達した多重化信号をさらに分岐するための光分岐素子30や、サービス内容を制限するための波長選択フィルタなどが配置されている。
【0005】
以上のように、図11に示されたPONシステムでは、端局1内に光分岐素子11が設けられるとともに、光ファイバ網上に配置されたクロージャー内にも光分岐素子30が設けられているので、1つの局側終端装置10からは複数の加入者に対してFTTHサービスの提供が可能になっている。そして、このPONシステムでは、多数の加入者宅2に対して多重化信号を分岐するために、多数の光分岐素子が用いられる。したがって、安価に量産可能で、施工も容易な光分岐素子が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−341147号公報
【特許文献2】特開平10−104443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者らは、従来の光通信システムについて検討した結果、以下のような課題を発見した。すなわち、1本の光ファイバの後段に接続されて、この光ファイバから入射した光を複数の光ファイバに対して供給する光分岐素子としては、一般的に前段と後段との光ファイバの数に応じて光導波路が形成された光導波路チップが用いられる。しかしながら、この光導波路チップを光分岐素子として用いる場合、光導波路チップと、この光導波路チップの前段及び後段に設けられた光ファイバとを接続するためには、光ファイバと光導波路チップとを調芯した上で結合及び固定を行う必要がある。このような作業は布設現場で行われるため、複数の光ファイバに対して正確に光分岐素子を取り付けることが難しい。
【0008】
本発明は上述のような課題を解決するためになされたものであり、光ファイバとの接続が容易な光分岐素子及びこの光分岐素子を備える光通信システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明に係る光分岐素子は、マルチコア光ファイバと、ファンアウト部品と、を備える。マルチコア光ファイバは、所定軸に沿って延びた第1コアと、1又はそれ以上の第2コアと、第1及び第2コアを取り囲むクラッドを備える。また、マルチコア光ファイバは、第1の端面と、この第1の端面に対向する第2の端面と、第1の端面上に位置する入射ポートAと、第2の端面上に位置する複数の出射ポートBとを有する。なお、第1の端面上に位置する入射ポートAは、第1コアに外部からの光を導く。前記第2の端面上に位置する複数の出射ポートBは、第1及び第2コア内を伝搬した光を取り出す。ファンアウト部品は、マルチコア光ファイバの第2の端面に対面する第3の端面と、第3の端面に対向する第4の端面と、第3の端面上に位置する複数の入射ポートCと、第4の端面上に位置する複数の出射ポートDを有する。第3の端面上に位置する複数の入射ポートCは、複数の出射ポートBと光学的に結合するよう配置されている。第4の端面上に位置する複数の出射ポートDは、複数の入射ポートCそれぞれに対応しており、その中心間距離が複数の入射ポートCの第3の端面上における中心間距離よりも長くなるよう配置されている。なお、マルチコア光ファイバとしては、例えば上記特許文献1や特許文献2に記載された構成例が知られている。
【0010】
特に、本発明に係る光分岐素子において、出射ポートBの数は、入射ポートAの数よりも多く、かつ、第1及び第2コアの合計数と等しいかそれ以下である。また、入射ポートAを介して第1コアに入射した光の少なくとも一部は、コア間クロストークにより、第2コアに分岐される。このとき、第1の一方の端面(当該マルチコア光ファイバの第1の端面に一致)には入射ポートAが設けられ、第2コアの一方の端面(当該マルチコア光ファイバの第1の端面に一致)にはポートは設けられない。ただし、第1コアの他方の端面(当該マルチコア光ファイバの第2の端面に一致)には、出射ポートBのいずれかが設けられてもよい。
【0011】
上述のような構造を有する光分岐素子によれば、マルチコア光ファイバの第1の端面上に位置する入射ポートAから第1コア内に入射された光は、マルチコア光ファイバのコア間クロストークにより、第1コアから第2コア(第1コアを除くコアであって外部から光が入射されないコア)に分配される。また、第2コア内を伝搬する光や第1コア内を伝搬し続ける光は、マルチコア光ファイバの第2の端面の出射ポートBから出射される。そして、出射ポートBから出射される光は、これら出射ポートBとそれぞれ光学的に結合された入射ポートCを介して、その入射ポートCがその端面に設けられたファンアウト部品内に入射される。ファンアウト部品内をそれぞれ伝搬した光は、入射ポートCにそれぞれ対応する出射ポートD毎に個別に出射される。したがって、本発明に係る光分岐素子では、前段の光ファイバがマルチコア光ファイバと光学的に容易に結合することができることから、光導波路チップを用いた従来の光分岐素子と比較して、光ファイバとの接続が容易となる。
【0012】
本発明に係る光分岐素子において、ファンアウト部品は、それぞれが、複数の入射ポートCのいずれかのポートに一致した一方の端面と、複数の出射ポートDのうち対応するポートに一致した他方の端面を有する複数の出射用光ファイバを含む構造を備えてもよい。
【0013】
本発明に係る光分岐素子は、マルチコア光ファイバの前段に配置される入射用光ファイバをさらに備えてもよい。この場合、入射用光ファイバは、マルチコア光ファイバにおける第1の端面上の入射ポートAを介して第1のコアに、外部からの光を入射させる。
【0014】
なお、外部からの光が入射される第1コアは、マルチコア光ファイバの中心軸(上記所定軸に直交する当該マルチコア光ファイバの断面中心)にその光軸が一致するよう配置される必要はない。すなわち、本発明の一実施形態として、上記所定軸に直交する、マルチコア光ファイバの断面において、第1及び第2コアは、マルチコア光ファイバの断面中心を避けるよう配置されてもよい。
【0015】
一方、上記所定軸に直交する、マルチコア光ファイバの断面において、マルチコア光ファイバの断面中心にその光軸が一致するよう第1コアが配置された構成の場合、第1コアの周辺に配置される第2コアは、第1コアを中心とした円周上に等間隔に配置されるのが好ましい。また、マルチコア光ファイバの断面中心にその光軸が一致するよう第1コアが配置された構成において、第1コアから該第1コアの周辺に配置される第2コアそれぞれまでの距離は、互いに等しいのが好ましい。第2コアそれぞれを伝搬する光のパワーバラツキを低減することができるからである。
【0016】
さらに、本発明に係る光分岐素子において、マルチコア光ファイバは、第1コアと第2コアそれぞれとの間での出力光の分岐比を調整のために曲げられた状態で所定の空間内に設置されてもよい。
【0017】
なお、本発明に係る光分岐素子において、マルチコア光ファイバと入射用光ファイバとの結合効率を向上させる構造として、マルチコア光ファイバと入射用光ファイバは、それらのクラッド径同士が略等しいとともに入射ポートAを介して光学的に結合されるコア同士の径が略等しいのが好ましい。
【0018】
本発明に係る光通システムは、上述のような構造を有する光分岐素子(本発明に係る光分岐素子)を備える。この場合、当該光通信システムでは、入射ポートA及び複数の出射ポートDに対して、互いに異なる光通信回線がそれぞれ個別に光学的に結合される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光ファイバとの接続が容易な光分岐素子及びそれを含む光通信システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る光分岐素子の第1実施形態の概略構成を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る光分岐素子の一部を構成するマルチコア光ファイバの概略構成及び設置状態を示す図である。
【図3】図1(A)及び図1(B)中の線III−IIIに沿った、マルチコア光ファイバの断面構造を示す図である。
【図4】第1実施形態に係る光分岐素子を構成するファンアウト部品の概略構成の一例を示す図である。
【図5】第1実施形態に係る光分岐素子を構成するファンアウト部品の概略構成の他の例を示す図である。
【図6】図1(B)に示された構造を有する光分岐素子の構造の一例をより具体的に示す図である。
【図7】図1(B)に示された構造を有する光分岐素子の他の構造(使用例)をより具体的に示す図である。
【図8】第2実施形態に係る光分岐素子の一部を構成するマルチコア光ファイバの構成を示す断面図であって、図1(A)及び図1(B)中の線III−IIIに沿った、マルチコア光ファイバの断面図に一致した図である。
【図9】第2実施形態に係る光分岐素子の一部を構成するマルチコア光ファイバの他の構成を示す断面図であって、図1(A)及び図1(B)中の線III−IIIに沿った、マルチコア光ファイバの断面図に一致した図である。
【図10】第3実施形態に係る光分岐素子の一部を構成するマルチコア光ファイバの構成を示す断面図であって、図1(A)及び図1(B)中の線III−IIIに沿った、マルチコア光ファイバの断面図に一致した図である。
【図11】光通信システム(PONシステム)の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る光分岐素子及光通信システムの各実施形態を、図1〜図10を用いて詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。また、図1〜図10に示された各実施形態に係る光分岐素子は、当然のことながら、図11に示された光通信システムの光分岐素子11、30に適用可能である。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る光分岐素子の第1実施形態の概略構成を示す図である。具体的に、図1(A)は、当該光分岐素子に入射用光ファイバと出射用光ファイバとが含まれない構成を示し、図1(B)は、当該光分岐素子に入射用光ファイバと出射用光ファイバとを含む構成を示している。また、図2は、第1実施形態に係る光分岐素子の一部を構成するマルチコア光ファイバの概略構成及び設置状態を示す図である。図3は、図1(A)及び図1(B)中の線III−IIIに沿った、マルチコア光ファイバの断面図である。当該光分岐素子は、図11に示された光通信システムにおける光分岐素子11、30と同様の機能を有する素子である。なお、図1(A)の光分岐素子100Aと図1(B)の光分岐素子100Bの双方には、共通するマルチコア光ファイバ200が適用されている。
【0023】
具体的に、図1(A)に示された光分岐素子100Aは、マルチコア光ファイバ200とファンアウト部品300と備える。マルチコア光ファイバ200は、所定軸に沿って延びる第1コアと、1又はそれ以上の第2コアと、第1及び第2コアを取り囲むクラッドを備える。また、マルチコア光ファイバ200は、外部からの光を導き光ファイバ12に対面した一方の端面(第1の端面)と、該一方の端面に対向する他方の端面(第2の端面)と、一方の端面上に配置された入射ポート200A(入射ポートA)と、他方の端面上に配置された出射ポート200B(出射ポートB)を備える。このマルチコア光ファイバ200において、一方の端面は、入射ポート200Aを介して前段の光ファイバ12と光学的に結合され、他方の端面は、出射ポート200Bを介してファンアウト部品300と結合される。そして、ファンアウト部品300は、マルチコア光ファイバ200の他方の端面に対面する一方の端面(第3の端面)と、該一方の端面に対向する他方の端面(第4の端面)と、一方の端面上に配置された入射ポート300A(入射ポートC)と、他方の端面上に配置された出射ポート300B(出射ポートD)を備える。このファンアウト部品300において、マルチコア光ファイバ200の第2コアから出射された光は入射ポート300Aから入射され、それぞれ互いに異なる出射ポート300Bを介してそれぞれ後段の光ファイバ31に対して出射される。
【0024】
なお、図1(A)において、200A、200B、300A、300Bの点(・)で示した部分は、コアに対応した端面に二次元的または一次元的に配列された各ポートを表し、ポートの数は、コアの数によって変化する(図1(B)においても同様)。また、図1(A)に示された構成例では、入射ポート200Aは、光ファイバ12のコアと光学的に結合するマルチコアファイバ200の1本の第1コア201の端面に対応するポートである。200B、300A、300Bの各ポートは、配列が一次元又は二次元で配列され、ポート数は、4に限定されず、2でも、3でも、4でも、5でも、6でも、またそれ以上であってもよい。マルチコア光ファイバ200の外径は、説明の都合で、光ファイバ12の外径に比して著しく大きく図示しているが、実際の大小を表しているものではなく、若干大きいものあるいは若干小さいものでもよい。
【0025】
マルチコア光ファイバ200は、図2(A)及び図3に示されたように、クラッド203と、このクラッド203の中心軸AXにその光軸が一致するよう配置された第1コア201と、このクラッド203内の第1コア201とは異なる位置に設けられて中心軸AXに沿って延びる4つの第2コア202と、クラッド203の側面を覆う被覆部204とを備える。4つの第2コア202は、クラッド203の中心(すなわち、第1コア201の中心)を中心とした円周上に等間隔に設けられている。
【0026】
上述のような構造を有するマルチコア光ファイバ200において、例えば第1コア201及び第2コア202の直径は9μm、第1コア201と第2コア202との距離(中心同士を結ぶ距離:図3におけるr1〜r4)は14μm、及び隣接する第2コア202同士の距離(中心同士を結ぶ距離)は20μmである。4つの第2コア202は、第1コア201を中心とした円周C上に等間隔に配置される。第1コア201及び第2コア202は、クラッド203に対して比屈折率差0.30%のステップインデックス型の屈折率プロファイルを有し、クラッド203の直径は125μmである。また、被覆部204(図2(A)参照)をクラッド203の側面に設けることで、マルチコア光ファイバ200全体の直径は245μmとなる。本実施形態では、マルチコア光ファイバ200の長さは、第1コア201に光が入射された場合、コア間クロストークによって第1コア201に入射した光が全て第2コア202に分配される長さとすることが好ましい。なお、第1コア201の他方の端面を出射ポート200Bとして利用する場合に、マルチコア光ファイバ200の長さは、第2コア202から出射される光のパワーと同程度のパワーを有する光が第1コア201から出射される程度の長さであればよい。
【0027】
なお、図1(A)の光分岐素子100Aでは、マルチコア光ファイバ200が直線状に配置されているが、マルチコア光ファイバ200をパッケージ等に収納する場合には、例えば図2(B)に示されたように、マルチコア光ファイバ200をリール250等に巻き付ける態様としてもよい。図2(B)の例では、マルチコア光ファイバ200が、中心軸AXに沿って延びた半径Rが30mmである胴部を有するリール250に、1周当り1回転の捻れを付与されながら10周巻き付けられている。特に、図2(B)に示されたように、マルチコア光ファイバを所定の曲げを付与した状態で所定の空間内に設置する構成は、第1コア201と第2コア202それぞれとの間での出力光の分岐比を調整可能にする。
【0028】
マルチコア光ファイバ200には、一方の端面に入射ポート200A(第1コア201の一方の端面に一致)が設けられ、他方の端面には出射ポート200B(第2コア202の他方の端面にそれぞれ一致)が設けられている。入射ポート200Aに対しては光ファイバ12が光学的に接続され、マルチコア光ファイバ200の第1コア201を除いた第2コア202が出射ポート200Bを経てファンアウト部品300と光学的に結合される。ファンアウト部品300は、第2コア202から出射された光をそれぞれ互いに異なる複数本の後段の光ファイバ31に対して出射するための光学部品である。すなわち、マルチコア光ファイバ200の第2コア202からファンアウト部品300に出射された光は、ファンアウト部品300内でその光路を変更して出射される。このファンアウト部品300の構成は特に限定されず、周知のファンアウト部品を本実施形態のファンアウト部品として適用することが可能である。
【0029】
図1(A)に示された光分岐素子100Aに適用されるファンアウト部品の一例を図4に示す。図4のファンアウト部品301は、石英ガラス等からなる光導波路部材410が第2コア202の数に応じて設けられ、この光導波路部材410の周囲が樹脂420により覆われた構造を有する。光導波路部材410のそれぞれは、一方の端面がマルチコア光ファイバ200の出射ポート200Bの対応するいずれかと光学的に結合する入射ポート300Aであり、他方の端面が後段の光ファイバに対して出射するための出射ポート300Bである。このうち、入射ポート300A側の端面では二次元に配列されたマルチコアファイバ200の4つの第2コア202の端面と複数の光導波路部材410とがそれぞれ一対一で光学的に結合するように光導波路部材410の入射ポート300Aが配置されている。また、出射ポート300B側の端面では、後段の光ファイバ31それぞれの端面と4つの光導波路部材410とがそれぞれ一対一で光学的に結合するよう、光導波路部材410の出射ポート300Bが配置されている。図4のファンアウト部品301では、出射ポート300Bの各ポートは、入射ポート300Aの各ポートに比し、ポートの中心間距離がより離間するように、直線状、すなわち一次元状に配置されている。図4のファンアウト部品301では、出射ポート300Bの配列は一次元配列であるが、図5に示されたように(ファンアウト部品302)、出射ポート300Bは二次元配列であってもよい。さらに、光導波路部材410の両端、すなわち、入射ポート300A側の端面及び出射ポート300B側の端面は、それぞれ石英ガラスやジルコニア等からなる平板形状の固定部材430、440により固定される。上記のファンアウト部品301とマルチコア光ファイバ200とを接続する方法としては例えば、コネクタ接続や融着接続等が挙げられる。なお、光導波路部材410の本数は、4本には限定されない。第1コア201の他方の端面を出射ポート200Bとして利用しない構成では、光導波路部材410の本数は、第2コア202の総数と等しいか、それ以下であってもよい。また、第1コア201の一方の端面を入射ポート200Aとして利用し、他方の端面を出射ポート200Bとして利用する場合、光導波路部材410の本数は、2本以上かつマルチコア光ファイバ200のコアの総数と等しいかそれ以下であればよい。
【0030】
上述のような構造を有する光分岐素子100Aにおいて、マルチコア光ファイバ200の入射ポート200Aに対して前段の光ファイバ12から出射された光が入射されると、この光は入射ポート200Aから第1コア201内を伝搬する。その間、第1コア201と第2コア202とのコア間クロストークによって、第1コア201から4つの第2コア202に対してその光が分配される。そして、4つの第2コア202に分配された光は、それぞれのコアを伝搬し、ファンアウト部品300内に入射される。すなわち、4つの第2コア202に分配された光は、マルチコア光ファイバ200の出射ポート200Bにおいてコア毎にそれぞれ光学的に結合されたファンアウト部品300内の4つの光導波路に対して、それぞれ出射される。その後、入射ポート300Aを介してファンアウト部品300内に入射された光は、各ポートに対応している4つの光導波路を伝搬し、ファンアウト部品300に対して光学的に結合する複数の光ファイバ31に対して出射ポート300Bから出射される。このように、本実施形態に係る光分岐素子100Aは、前段の1つの光ファイバ12内を伝搬する光(外部からの光)を入力し、後段の4つの光ファイバ31に対して出力する1入力4出力の光分岐素子として機能する。このとき、当該光分岐素子100Aは、必要に応じて、マルチコア光ファイバ200と他の部品との接続部分やマルチコア光ファイバ200自体を保護する目的から、パッケージ等に収納されてもよい。
【0031】
次に、図1(B)に示された光分岐素子について説明する。図1(B)の光分岐素子100Bの構造は、図1(A)の光分岐素子100Aと比較して、入射用光ファイバと出射用光ファイバとを含むよう構成された点で異なっている。具体的な相違点は以下の通りである。
【0032】
すなわち、光分岐素子100Bには、マルチコア光ファイバ200と前段の光ファイバ12との間に光ファイバ12からの光をマルチコア光ファイバ200に入射するための入射用光ファイバ110が設けられている。さらに、光分岐素子100Bのファンアウト部品300は、固定部材320と出射用光ファイバ310とから構成されている。
【0033】
光分岐素子100Bでは、マルチコア光ファイバ200の入射ポート200A(入射ポートA)は、前段の光ファイバ12と光学的に結合している入射用光ファイバ110に対して光学的に結合している。入射用光ファイバ110とマルチコア光ファイバ200との間は、融着接続等により接続することが可能である。一方、ファンアウト部品300側に位置する、マルチコア光ファイバ200の出射ポート200B(出射ポートB)は、ファンアウト部品300を構成する固定部材320の一方の端面320A(第3の端面)に設けられた入射ポート300A(入射ポートC)と光学的に結合している。固定部材320は、ファンアウト部品300の他方の端面(第4の端面)に設けられた出射ポート300B(出射ポートD)において、後段の光ファイバ31と光学的に結合する複数の出射用光ファイバ310の端部を入射ポート300Aに固定するための部材であり、出射用光ファイバ310の一方の端面が固定される他方の端面320Bを有する。この構成により、マルチコア光ファイバ200の出射ポート200Bから出射された光は、入射ポート300Aから出射用光ファイバ310に入射し、出射ポート300Bから後段の光ファイバ31に対して出射される。
【0034】
図1(B)に示された光分岐素子100B(特に、固定部材320を中心としたファンアウト部品302)のより具体的な構造の一例を図6に示す。図6のファンアウト部品302は、固定部材320と、出射用光ファイバとして機能する4本の単一コアファイバ310(クラッド内に単一のコアを有する光ファイバ)を備える。固定部材320は、接続対象であるマルチコアファイバ200の出射ポート200Bが設けられた端面に接着剤等で固定される第1端面320A(当該ファンアウト部品302の入射ポート300Aが設けられた端面)と、出射用光ファイバ310の一端が融着等により固定される第2端面320Bと、第1端面320Aと第2端面320Bの間を連絡する複数の貫通孔330を有する。なお、複数の貫通孔330は、第1端面320A上において、接続対象であるマルチコア光ファイバ200の光出射端面において出射ポート200Bとして機能するコア配列(第2コア202)に一致するよう配置されている。また、図6において、固定部材320の内部は、出射用光ファイバ310の挿入状態が確認できるように、貫通孔330に沿って出射用光ファイバ310の一部が破線で示されている。
【0035】
4本の出射用光ファイバ310それぞれにおいて、入射ポート300Aとして機能する端面を含む先端部分320Cは、残りの部分の外径よりも細くなるよう整形されており、各出射用光ファイバ310の先端部分320Cが固定部材320の対応する貫通孔330に挿入されている。先端部分320Cを残りの部分の外径よりも細くなるよう整形するのは、複数の出射用光ファイバ310の一般的な外径(クラッド径)が125μm以上であるのに対して、マルチコア光ファイバ200のコアの間隔がそれよりも小さく、マルチコアファイバ200のコア間隔に一致する間隔で、これら複数の出射用光ファイバ310の外径を変更せずに入射ポート300Aを形成することが困難であるためである。
【0036】
上述のような構造を有する光分岐素子100Bでは、前段の光ファイバ12から出射された光が、入射用光ファイバ110を経てマルチコア光ファイバ200の入射ポート200Aに入射される。そして、入射ポート200Aを介して第1コア201に入射された光は、該第1コア201内を伝搬し、第1コア201と第2コア202とのコア間クロストークによって、第1コア201から4つのコア202に対してその伝搬光が分配される。そして、4つの第2コア202に分配された光は、それぞれのコアを伝搬する。その後、4つの第2コア202を伝搬した光は、入射ポート200Aが設けられた端面とは逆側の端面に設けられた出射ポート200Bにおいてコア毎にそれぞれ光学的に結合されたファンアウト部品300に入射される。すなわち、入射ポート300Aを介して4本の出射用光ファイバ310内に入射された光は、それぞれ、4本の出射用光ファイバ310内を伝搬し、対応する出射ポート300Bを介してファンアウト部品302に対して光学的に結合する4本の光ファイバ31にそれぞれ出射される。このように、本実施形態に係る光分岐素子100Bは、前段の1つの光ファイバ12を伝搬した光(外部からの光)を入力し、後段の4つの光ファイバ31に対して出力する1入力4出力の光分岐素子として機能する。
【0037】
なお、図6に示された光分岐素子100Bの構成では、マルチコア光ファイバ200における第1コア201では、一方の端面が入射ポート200Aとして利用される一方、他方の端面は出射ポート200Bとしては利用されていない。しかしながら、マルチコア光ファイバ200の長さを調節することにより、第1コア201の他方の端面を出射ポート200Bとして利用することも可能である。また、光分岐素子100A、100Bは、マルチコア光ファイバ200の出射ポート200Bの一部だけが出射用光ファイバ31に接続される構成が採用されてもよい。例えば、図7は、図1(B)に示された光分岐素子100B(特に、固定部材320を中心としたファンアウト部品302A)の他の構造をより具体的に示す図である。図7のファンアウト部品302Aは、固定部材320と、出射用光ファイバとして3本の単一コアファイバ310A〜310Cを備える。固定部材320は、接続対象であるマルチコアファイバ200の出射ポート200Bが設けられた端面に接着剤等で固定される第1端面320A(当該ファンアウト部品302Aの入射ポート300Aが設けられた端面)と、3本の出射用光ファイバ310A〜310Cの一端が融着等により固定される第2端面320Bと、第1端面320Aと第2端面320Bの間を連絡する複数の貫通孔を有する。なお、複数の貫通孔は、第1端面320A上において、接続対象であるマルチコアファイバ200の光出射端面において出射ポート200Bとして機能するコア配列(第1コア201と第2コア202)に一致するよう配置されている。また、図7において、固定部材320の内部は、出射用光ファイバ310A〜310Cの挿入状態が確認できるように、貫通孔に沿って出射用光ファイバ310の一部が破線で示されている。
【0038】
3本の出射用光ファイバ310A〜310Cそれぞれにおいて、入射ポート300Aとして機能する端面を含む先端部分320Cは、残りの部分の外径よりも細くなるよう整形されており、出射用光ファイバ310A〜310Cそれぞれの先端部分320Cが固定部材320の対応する貫通孔330A〜330Cに挿入されている。また、貫通孔330A〜330Cを除く貫通孔には、出射用光ファイバの先端部分は挿入されていない。
【0039】
上述のような構造を有する光分岐素子100Bでは、前段の光ファイバ12から出射された光が、入射用光ファイバ110を経てマルチコア光ファイバ200の入射ポート200Aに入射される。そして、入射ポート200Aを介して第1コア201に入射された光の一部は、該第1コア201内を伝搬し、第1コア201と第2コア202とのコア間クロストークによって、第1コア201から4つのコア202に対してその伝搬光が分配される。そして、第1コア201と4つの第2コア202に分配された光は、それぞれのコアを伝搬する。その後、第1コア201と4つの第2コア202を伝搬した光は、入射ポート200Aが設けられた端面とは逆側の端面に設けられた出射ポート200Bのうち、必要なコア毎にそれぞれ光学的に結合されたファンアウト部品302Aに入射される。すなわち、入射ポート300Aを介して3本の出射用光ファイバ310A〜310C内に入射された光は、それぞれ、3本の出射用光ファイバ310A〜310C内を伝搬し、対応する出射ポート300Bを介してファンアウト部品302Aに対して光学的に結合する3本の光ファイバ31にそれぞれ出射される。このように、図7に示された構成では、前段の1本の光ファイバ12を伝搬した光(外部からの光)が入力され、後段の3本の光ファイバ31に対して出力する1入力3出力の光分岐素子として機能する。
【0040】
なお、図6及び図7に示されたいずれの構成においても、マルチコア光ファイバ200に対して接続される入射用光ファイバ110は、一般的なシングルモード光ファイバが好適に用いられる。そして、このシングルモードの入射用光ファイバ110のクラッド112は、マルチコア光ファイバ200のクラッド203の外径に略等しく、入射用光ファイバ110のコア111の外径は、マルチコア光ファイバ200内の第1コア201の外径に略等し。この状態で、入射用光ファイバ110のコア111とマルチコア光ファイバ200の第1コア201と、入射ポート200Aが設けられた端面において光学的に結合される。入射用光ファイバ110とマルチコア光ファイバ200との接続は融着接続等によって行われる。
【0041】
上述のファンアウト部品300の構成は、図4のファンアウト部品301や図5のファンアウト部品302(302A)の構成に限定されない。例えば、レンズ系、反射系、導光系等の光学部品を組み合わせて光学的にポート間隔をより離間するような他の構成を有するファンアウト部品を本実施形態のファンアウト部品として適用することが可能である。
【0042】
ここで、本実施形態に係る光分岐素子100A、100Bでは、前段の光ファイバ12がマルチコア光ファイバ200の前段の入射用光ファイバ110又はマルチコア光ファイバ200と光学的に容易に結合可能である。したがって、従来の光導波路チップを用いた光分岐素子と比較して、当該光分岐素子100A、100Bは、光ファイバとの接続を容易にする。
【0043】
また、第2コア202をマルチコア光ファイバ200の中心に配置された第1コア201を中心とした円周上に等間隔に配置することで、複数の第2コア202に対して第1コア201から分岐される光の比率を均一とすることができる。
【0044】
さらに、図2(B)に示されたように、マルチコア光ファイバ200を1周当り1回転の捻れを与えながら直径R(=30mm)の胴部を有するリール250に10周巻き付ける場合、該リール250の胴部への巻付けによるマルチコア光ファイバ200の曲げ方向は、捻れのために長手方向(光軸方向)に変化し、結果として、コア間のクロストークのばらつきが低減される。したがって、マルチコア光ファイバ200において、各コアへの光パワーの分配の均一性が維持される。
【0045】
また、柔軟性が有するマルチコア光ファイバ200を光分岐素子の一部に適用することで、柔軟性のない光導波路チップを光分岐素子の一部に適用した場合と比較して、形状の自由度が高められ、この光分岐素子の用途に応じて形状の変更等を行うことが可能になる。
【0046】
なお、上述の例では、光を均一に分配するためにマルチコア光ファイバ200に捻れを与えながらリール250の胴部に巻き付けた構成について説明したが、各コアへの分配される光パワーに差異を持たせるために、捻れを与えずにリール250の胴部に巻き付ける方法も採用できる。このように、マルチコア光ファイバ200に対して捻れを与えずにリール250の胴部に巻き付けることにより、複数の第2コア202のうちの特定のコアへの光パワーを大きく(あるいは小さく)することも可能である。さらに、マルチコア光ファイバ200を巻き付けるリール250の胴径(=2R)を変化させることで、各コア間の光パワー差を変化させることもできる。
【0047】
また、上述の実施形態では入射用光ファイバ110とマルチコア光ファイバ200との間の接続方法として融着接続を挙げたが、この部分をコネクタ接続・メカニカルスプライス等の標準的なシングルモード光ファイバ同士を接続する手段で置き換えることも可能である。このように、シングルモード光ファイバ同士を接続する方法を採用することができるため、光分岐素子の一部に光導波路チップが適用された従来技術の構成と比較して、本実施形態に係る光分岐素子100A、100Bの構成は、大幅に接続の手間が軽減される。
【0048】
また、上述の実施形態では、マルチコア光ファイバ200をリール250の胴部に巻き付けているが、コア間でのクロストークにより第1コア201から第2コア202に光パワーを分配する上では、リール250の胴部への巻付けは必須ではない。したがって、光分岐素子100A、100Bをパッケージ等に収納する場合の形態等に応じて、マルチコア光ファイバ200をリールに巻き付けずに収納する態様とすることもできる。
【0049】
また、上述の実施形態では、マルチコア光ファイバ200ではコア間クロストークを用いて第1コア201から第2コア202に対して光を分配している。しかしながら、ファンアウト部品300中において有意なコア間クロストークが発生すると所望の分岐比が実現出来ない可能性も考えられる。このため、ファンアウト部品300において、コア間クロストークを抑制する構成を設けることもできる。具体的には、ファンアウト部品300中で光を伝搬させる光導波路の周囲を囲むように、比屈折率差が低く、光導波路からの漏れ光のパワーを低減する領域を設けてもよい(閉じ込め等の光制御により漏れ光の光量を低減させる構成等)。
【0050】
(第2実施形態)
図8は、本発明に係る光分岐素子の第2実施形態の一部を構成するマルチコア光ファイバの断面図であり、図1(A)及び図1(B)中の線III−IIIに沿った断面に一致した図である。第2実施形態に係る光分岐素子と第1実施形態に係る光分岐素子と異なる点は、このマルチコア光ファイバの構成、すなわち、第2コアの数とその配置が異なる点である。
【0051】
図8に示されたように、第2実施形態の光分岐素子の一部を構成するマルチコア光ファイバ210では、その断面(当該マルチコア光ファイバ210の中心軸AXに直交する面)において、クラッド203内の第2コア202が第1コア201の周囲に8つ配置される。そして、これら第2コア202は、当該マルチコア光ファイバ210の中心軸AX(第1コア201の光軸に一致)を中心とした円周上に等間隔で配置されている。
【0052】
図8のマルチコア光ファイバ210において、例えば第1コア201及び第2コア202の直径は8.5μm、第1コア201と第2コア202との距離(中心同士を結ぶ距離)は20μmである。また、第1コア201及び第2コア202は比屈折率差0.35%のステップインデックス型屈折率プロファイルを有し、クラッド203の直径は125μmである。また、被覆部204(図2参照)を設けることで、マルチコア光ファイバ210全体の直径は245μmとなる。また、マルチコア光ファイバ210の長さは、第1コア201に光が入射された場合に、コア間クロストークによって第2コア202に分配された光の強度が最大となり、第1コア201の光の強度とが最小となる長さである。なお、第1コア201を当該マルチコア光ファイバ210の出射ポート200Bとしても利用する場合には、当該マルチコア光ファイバ220の長さは第1コア201を出射ポート200Bとして利用しない場合よりも短くなる。
【0053】
このマルチコア光ファイバ210を用いて、図1(A)及び1(B)の光分岐素子100A、100Bと同様に、一方の端面(図1(A)及び1(B)の端面200Aに相当する面)に標準的なシングルモード光ファイバからなる入射用光ファイバを融着接続する。これにより、入射用光ファイバのコアとマルチコア光ファイバ210の第1コア201とが光学的に結合させ、他方の端面(図1(A)及び1(B)の端面200Bに相当する面)にはマルチコア光ファイバ210の8つの第2コア202からの光が互いに異なる8本の出射用光ファイバに導くためのファンアウト部品(出射用光ファイバの本数が異なる点を除き、図1(A)及び1(B)に示されたファンアウト部品300に相当)が光学的に結合される。
【0054】
以上の構成により、標準的なシングルモード光ファイバである入射用光ファイバからマルチコア光ファイバ210の第1コア201に光が入射されると、第1コア201と第2コア202とのコア間クロストークにより8つの第2コア202に光パワーが分配される。ここで、マルチコア光ファイバ210では、8つの第2コア202は第1コア201との間隔も含めて同一の設計であるため、光は均一に分配される。このように、本実施形態に係る光分岐素子は、1本の入射用光ファイバによる光を入力し、最大8本の出射用光ファイバに対して出力する1入力8出力の光分岐素子として機能する。このとき、必要に応じて、マルチコア光ファイバ210と他の部品との接続部分やマルチコア光ファイバ210自体を保護する目的から、これらがパッケージ等に収納されてもよい。なお、本実施形態の光分岐素子において、第1コア201はファンアウト部品とは光学的に接続されても、また、接続されなくてもよい。
【0055】
上述のような構造を有する第2実施形態に係る光分岐素子においても、第1実施形態に係る光分岐素子と同様に、前段の入射用光ファイバはマルチコア光ファイバ210の第1コアと光学的に結合され、後段の光ファイバはファンアウト部品と光学的に結合される。このため、光導波路チップが適用された従来の光分岐素子と比較して、本実施形態に係る光分岐素子の構成は、前段及び後段の光ファイバとの接続が容易になる。
【0056】
また、第2コア202をマルチコア光ファイバ210の中心に配置された第1コア201を中心とした円周上に等間隔に配置することで、複数の第2コア202に対して第1コア201から分岐される光の比率を均一とすることができる。
【0057】
図9は、本発明に係る光分岐素子の第2実施形態の一部を構成するマルチコア光ファイバの他の構成を示す断面図であり、図1(A)及び1(B)中の線III−IIIに沿った断面に一致した図である。この図9に示されたマルチコア光ファイバ220は、マルチコア光ファイバの構成、すなわち、第2コアの数とその配置が図8に示されたマルチコア光ファイバ210と相違する。
【0058】
図9に示されたように、第2実施形態に係る光分岐素子の一部を構成するマルチコア光ファイバ210では、6つの第2コア202が第1コア201の周囲に配置されている。そして、これら第2コア202は、マルチコア光ファイバ220の中心軸AX(第1コア201の光軸に一致)を中心とした円周上に等間隔に配置されている。このように、マルチコア光ファイバを構成する第2コアの数は、適宜変更することができる。すなわち、第2コアの数は、上述の各実施形態で説明された数、例えば4、6又は8個に限定されず、第1コア201の周囲に3つの第2コアが配置されても、また、10以上、20以上の第2コアが第1コア201の周囲に配置されてもよい。
【0059】
以上、第1及び第2実施形態について説明したが、本発明は上述の各実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。
【0060】
例えば、上述の第1及び第2実施形態では、第2コア202の位置はマルチコア光ファイバの中心軸AXを中心とした円周上にある。しかしながら、第2コア202は、マルチコア光ファイバの中心軸AXを中心とした円周上とは異なる位置に配置されてもよい。また、第2コア202の数は複数である必要はなく、以下の第3実施形態のように、第1コアを出力ポートとして利用する場合には、少なくとも1つあればよい。
【0061】
また、上記実施形態では、第1コアはファンアウト部品と接続しない構成について説明したが、第1コアもファンアウト部品と接続する構成とすることも可能である。なお、第1コアがファンアウト部品と接続する場合には、マルチコア光ファイバにおいて第1コアから個々の第2コアに分配される光の光量と同量の光が第1コアを伝搬する構成とすることが好ましい。そして、第1コアがファンアウト部品と接続しない場合には、上記実施形態で説明したように、第1コアに入射した光が第2コアに全て分配される構成とすることが好ましい。
【0062】
(第3実施形態)
図10は、本発明に係る光分岐素子の第3実施形態の一部を構成するマルチコア光ファイバの断面図であり、図1(A)及び1(B)中の線III−IIIに沿った断面に一致した図である。第3実施形態に係る光分岐素子と第1実施形態に係る光分岐素子と異なる点は、マルチコア光ファイバの構成、すなわち、第1コアと第2コアの数とその配置が異なる点である。
【0063】
図10(A)に示されたように、第3実施形態の光分岐素子の一部を構成するマルチコア光ファイバ230では、当該マルチコア光ファイバ230の中心軸AXから外れた位置に、第1コア201と第2コア201が配置されている。図10(A)に示された例では、マルチコア光ファイバ230は、中心軸AXを挟んで1つの第1コア201と1つの第2コア202がクラッド203によって囲まれた状態で配置されている。そして、第1コア201の一方の端面が、当該マルチコア光ファイバ230の入射ポート200Aとなる。一方、第1コア201の他方の端面、及び、第2コア202の光出射端面が、当該マルチコア光ファイバ230の出射ポート200Bとなる。
【0064】
このようなマルチコア光ファイバ230としては、例えば第1コア201及び第2コア202の直径が8.5μm、第1コア201と第2コア202との距離(中心同士を結ぶ距離)が20μmである。第1コア201及び第2コア202が比屈折率差0.35%のステップインデックス型屈折率プロファイルを有し、クラッド203の直径が125μmである。また、被覆部204(図2参照)を設けることで、マルチコア光ファイバ230の直径は245μmとなる。マルチコア光ファイバ230の長さは、第1コア201に光が入射された場合に、コア間クロストークによって第2コア202に分配された光の強度と第1コア201内を伝搬する光の強度とが略等しくなる長さが好ましい。
【0065】
このようなマルチコア光ファイバ230を用いて、図1(A)及び1(B)の光分岐素子100A、100Bと同様に、一方の端面(図1(A)及び1(B)の端面200Aに相当する面)に標準的なシングルモード光ファイバからなる入射用光ファイバが融着接続される。これにより、入射用光ファイバのコアと当該マルチコア光ファイバ230の第1コア201とが光学的に結合される。また、他方の端面(図1(A)及び1(B)の端面200Bに相当する面)には当該マルチコア光ファイバ230の第1コア201と第2コア202のそれぞれからの光を互いに異なる2本の出射用光ファイバに導くためのファンアウト部品が光学的に結合される。
【0066】
以上の構成により、標準的なシングルモード光ファイバである入射用光ファイバから当該マルチコア光ファイバ230の第1コア201に光が入射されると、第1コア201と第2コア202とのコア間クロストークにより1つの第2コア202に光パワーが分配される。ここで、当該マルチコア光ファイバ230では、1つの第2コア202は第1コア201と同一の設計であるため、第1コア201と第2コア202の間で光は均一に分配される。このように、本実施形態に係る光分岐素子は、1つの入射用光ファイバによる光を入力し、最終的に2本の出射用光ファイバに対して出力する1入力2出力の光分岐素子として機能する。このとき、必要に応じて、マルチコア光ファイバ230と他の部品との接続部分やマルチコア光ファイバ230自体を保護する目的から、これらがパッケージ等に収納されてもよい。
【0067】
上述のような構造を有する第3実施形態に係る光分岐素子においても、第1実施形態に係る光分岐素子と同様に、前段の入射用光ファイバはマルチコア光ファイバ230の第1コア201と光学的に結合され、後段の光ファイバはファンアウト部品と光学的に結合される。そのため、光導波路チップが適用された従来の光分岐素子と比較して、本実施形態に係る光分岐素子は、前段及び後段の光ファイバとの接続を容易にする。
【0068】
また、第2コア202をマルチコア光ファイバ230の中心軸AXを挟んで第1コア201と対称に配置することで、1つの第2コア202に対して第1コア201から分岐される光の比率を均等にすることができる。
【0069】
図10(B)は、本発明に係る光分岐素子の第3実施形態の一部を構成するマルチコア光ファイバの他の構成を示す断面図であり、図1(A)及び1(B)中の線III−IIIに沿った断面図に一致した図である。この図10(B)に示されたマルチコア光ファイバ240は、マルチコア光ファイバの構成、すなわち、第2コアの数と第1及び第2コアの配置が図10(A)に示されたマルチコア光ファイバ230と相違する。
【0070】
図10(B)に示されたように、第3実施形態に係る光分岐素子の一部を構成するマルチコア光ファイバ240では、当該マルチコア光ファイバ240の中心軸AXを第1コア201と3つの第2コア202が取り囲むように配置されている(中心軸AXから第1コア201や3つの第2コア202までの各距離は等しい)。このように、クラッド203内において、マルチコア光ファイバを構成する第2コアの数は、適宜変更することができる。すなわち、第2コアの数は、2、4、6又は8個に限定されず、例えば第1コア201及び第2コア202の総数が10以上、20以上となってもよい。
【0071】
マルチコア光ファイバ240の入射用光ファイバに光学的に結合される端面には、入射ポート200Aが設けられ、第1コア201の一方の端面が入射ポート200Aとなる。一方、マルチコア光ファイバ240の他方の端面には出射ポート200Bが設けられている。図10(B)に示されたマルチコア光ファイバ240では、第1コア201と3つの第2コア202の全てのコアの端面が出射ポート200Bとなっている。
【符号の説明】
【0072】
12…前段の光ファイバ(光通信回線)、31…後段の光ファイバ(光通信回線)、100A、100B…光分岐素子、110…入射用光ファイバ、310、310A〜310C…出射用光ファイバ、200、210、220、230…マルチコア光ファイバ、201…第1コア、202…第2コア、203…クラッド、204…被覆部、300、301、302、302A…ファンアウト部品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定軸に沿って延びた第1コアと、1又はそれ以上の第2コアと、前記第1及び第2コアを取り囲むクラッドを備えたマルチコア光ファイバであって、第1の端面と、前記第1の端面に対向する第2の端面と、前記第1の端面上に位置して前記第1コアに外部からの光を導くための入射ポートAと、前記第2の端面上に位置して前記第1及び第2コア内を伝搬した光を取り出すための複数の出射ポートBと、を有するマルチコア光ファイバと、
前記マルチコア光ファイバの前記第2の端面に対面する第3の端面と、前記第3の端面に対向する第4の端面と、前記第3の端面上に位置して前記複数の出射ポートBと光学的に結合するよう配置された複数の入射ポートCと、前記複数の入射ポートCそれぞれに対応して前記第4の端面上に設けられた複数の出射ポートDであってその中心間距離が前記複数の入射ポートCにおける中心間距離よりも長くなるよう前記第4の端面上に配置された複数の出射ポートDを有するファンアウト部品と、を備え、
前記出射ポートBの数は、前記入射ポートAの数よりも多く、かつ、前記第1及び第2コアの合計数と等しいかそれ以下であり、
前記入射ポートAを介して前記第1コアに入射した光の少なくとも一部は、コア間クロストークにより、前記第2コアに分岐されることを特徴とする光分岐素子。
【請求項2】
前記ファンアウト部品は、それぞれが、前記複数の入射ポートCのいずれかのポートに一致した一方の端面と、前記複数の出射ポートDのうち対応するポートに一致した他方の端面を有する複数の出射用光ファイバを含むことを特徴とする請求項1記載の光分岐素子。
【請求項3】
前記第1の端面上の前記入射ポートAを介して前記第1のコアに、前記外部からの光を入射させるための入射用光ファイバをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の光分岐素子。
【請求項4】
前記所定軸に直交する、前記マルチコア光ファイバの断面において、前記第1コアは前記マルチコア光ファイバの断面中心に位置し、
前記第2コアは、前記第1コアを中心とした円周上に等間隔に配置されたことを特徴とする請求項1記載の光分岐素子。
【請求項5】
前記マルチコア光ファイバは、前記第1コアと前記第2コアそれぞれとの間での出力光の分岐比を調整のために曲げられていることを特徴とする請求項1記載の光分岐素子。
【請求項6】
前記マルチコア光ファイバと前記入射用光ファイバは、それらのクラッド径同士が略等しいとともに前記入射ポートAを介して光学的に結合されるコア同士の径が略等しいことを特徴とする請求項3記載の光分岐素子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項記載の光分岐素子を備え、
前記入射ポートA及び前記複数の出射ポートDに対して、互いに異なる光通信回線がそれぞれ個別に光学的に結合された光通信システム。
【請求項1】
所定軸に沿って延びた第1コアと、1又はそれ以上の第2コアと、前記第1及び第2コアを取り囲むクラッドを備えたマルチコア光ファイバであって、第1の端面と、前記第1の端面に対向する第2の端面と、前記第1の端面上に位置して前記第1コアに外部からの光を導くための入射ポートAと、前記第2の端面上に位置して前記第1及び第2コア内を伝搬した光を取り出すための複数の出射ポートBと、を有するマルチコア光ファイバと、
前記マルチコア光ファイバの前記第2の端面に対面する第3の端面と、前記第3の端面に対向する第4の端面と、前記第3の端面上に位置して前記複数の出射ポートBと光学的に結合するよう配置された複数の入射ポートCと、前記複数の入射ポートCそれぞれに対応して前記第4の端面上に設けられた複数の出射ポートDであってその中心間距離が前記複数の入射ポートCにおける中心間距離よりも長くなるよう前記第4の端面上に配置された複数の出射ポートDを有するファンアウト部品と、を備え、
前記出射ポートBの数は、前記入射ポートAの数よりも多く、かつ、前記第1及び第2コアの合計数と等しいかそれ以下であり、
前記入射ポートAを介して前記第1コアに入射した光の少なくとも一部は、コア間クロストークにより、前記第2コアに分岐されることを特徴とする光分岐素子。
【請求項2】
前記ファンアウト部品は、それぞれが、前記複数の入射ポートCのいずれかのポートに一致した一方の端面と、前記複数の出射ポートDのうち対応するポートに一致した他方の端面を有する複数の出射用光ファイバを含むことを特徴とする請求項1記載の光分岐素子。
【請求項3】
前記第1の端面上の前記入射ポートAを介して前記第1のコアに、前記外部からの光を入射させるための入射用光ファイバをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の光分岐素子。
【請求項4】
前記所定軸に直交する、前記マルチコア光ファイバの断面において、前記第1コアは前記マルチコア光ファイバの断面中心に位置し、
前記第2コアは、前記第1コアを中心とした円周上に等間隔に配置されたことを特徴とする請求項1記載の光分岐素子。
【請求項5】
前記マルチコア光ファイバは、前記第1コアと前記第2コアそれぞれとの間での出力光の分岐比を調整のために曲げられていることを特徴とする請求項1記載の光分岐素子。
【請求項6】
前記マルチコア光ファイバと前記入射用光ファイバは、それらのクラッド径同士が略等しいとともに前記入射ポートAを介して光学的に結合されるコア同士の径が略等しいことを特徴とする請求項3記載の光分岐素子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項記載の光分岐素子を備え、
前記入射ポートA及び前記複数の出射ポートDに対して、互いに異なる光通信回線がそれぞれ個別に光学的に結合された光通信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−237782(P2011−237782A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85419(P2011−85419)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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