説明

光化学反応装置、及び光化学プロセスシステム

【課題】 本発明は、光化学反応装置(12)に関する。本発明はさらに、光化学プロセスシステムに関する。
【解決手段】 光化学反応装置は、流体(30)を含む容器(20)と、UV−放射(UV1)を発生し、前記流体に発光する光源(40)と、前記光源と、前記流体の間に設けられ、光源から発光した少なくとも一部のUV−放射を、UV−放射と比べて長波長のUV−放射(UV2)へ変換する発光物質(50)とを有する。前記発光物質は、光化学反応装置から除去可能に結合され、前記光源からは離されている。前記発光物質を光化学反応装置から除去可能に、かつ光源からはなされて設けることで、前記発光物質は、使用中の発光物質が劣化した際、新たな発光物質に交換可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体のための光化学反応装置に関する。
本発明は、さらに、光化学反応装置にて使用する発光スクリーン、及び光化学プロセスシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
光化学反応装置は自体知られており、例えば流体の光化学プロセスに使用されている。化学的及び物理的消毒プロセスは、共に、バクテリア、ウイルス及び原虫のような病原性有機体を減少させるために、これまで長い間知られかつ使用されてきた。この化学的プロセスは、主に塩素化合物やオゾンの使用を基にしている。物理的プロセスは、ろ過、超音波、加熱若しくは紫外線照射のように、環境に大きな負荷を与えない。加えて、水を紫外線―放射(またUV-放射とも示す)に暴露させることは、連続的であり、かつ相対的に保守の必要ないプロセスである。そこで水の消毒に光化学反応装置の使用が増えている。特に発展途上国においては、上水道供給施設整備が増大する要求に追いつけていないからである。
【0003】
最近、特にエキシマランプのUV効率が顕著に上がってきた。エキシマ放射は、放電ランプの充填ガスにより再吸収されない。それゆえそのようなエキシマ放電ランプにより達成され得る効率は、たとえ放電ランプ中の希ガスからなるものが使用されても、比較的に高い。キセノンが最も効率的な充填希ガスであることがわかった。しかし、172ナノメータの短波長のために、この放射は水により強く吸収され、水系についてはそれほど魅力的ではない。
【0004】
発光物質について最近の開発は、エキシマランプを、相対的に高効率で紫外光を発生する発光物質とともに使用することを可能とする。これについては、米国特許US6,398,970B1に開示されている。この特許は、水の消毒のための装置につき記載され、キセノンが充填されたガス放電ランプについて開示している。ここでは、その放電容器の内側壁の少なくとも一部が、UV−領域で発光する蛍光体で覆われている。そのような装置において、UV−放射は、もっぱら消毒に関係する範囲にスペクトル成分を有する。即ち、230ナノメータ及び300ナノメータの間である。
【0005】
この知られた光化学反応装置の欠点は、時間とともに効率が低下することであり、また、低下した効率を改良するのが相対的に高価である、ということである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、相対的に低コストで、効率が改良され得る、光化学反応装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の側面によると、この目的は、流体用光化学反応装置の手段により達成される。この光化学反応装置は:
流体を含む容器と、
UV−放射の発生と、それを前記流体に向けて放射するための光源と、及び
前記光源と前記流体の間の少なくとも一部に配置され、前記光源により放射されたUV−放射の少なくとも一部を、前記UV−放射と比べてより長波長を有する、さらなるUV−放射に変換する発光物質とを有し、
前記発光物質が、前記光化学反応装置に除去可能に結合され、かつ前記光源から離されている。
【0008】
本発明者は、エキシマガス放電ランプを使用することにより、紫外線放射の発生にー特に遠紫外領域(またはVUVと記載)での発生の効率が改良されることを見出した。しかし、この改良された効率の欠点は、UV−放射の相対的に高いフラックスであり、これは発光物質に悪影響を与える。このUV−放射―特にVUV放射―は、一般的に、相対的に短波長を有しており、相対的に高い1フォトン当たりのエネルギーを有する。その結果、相対的に短波長UV−放射を発光する光発光体の使用は、発光物質を、通常の蛍光ランプにおけるよりも早く性能劣化させ、長期稼動において光化学反応装置の効率を減少させる。発光物質が光化学反応装置に除去可能に結合されており、かつ光源からは離されているということに鑑みて、現発光物質が、UV−放射の悪影響により劣化した場合、現発光物質を新しい発光物質と交換することができる。例えば、光化学反応装置の効率が、例えばあらかじめ設定されたレベルよりも下に減少した場合、その発光物質は交換されることができる。
【0009】
知られた装置においては、発光物質は、放電ランプの放電容器の内側壁に配置されている。そのような配置では、光化学反応装置の効率が発光物質の劣化により減少した場合には、放電ランプ全体が交換されねばならない。この放電ランプの交換は、発光物質により吸収されるべきUV−放射を発生する光源の効率が、例えば、ほとんど劣化していない場合にも必要とされる。そのような場合、光化学反応装置の効率の改良は、相対的に高価なものとなり、一般に必要以上にコストがかかるものである。本発明の光化学反応装置においては、発光物質のみが交換され、そのような光化学反応装置の運転コストは一般的に下がる。
【0010】
本発明の光化学反応装置のさらなる利点は、次の点である。すなわち、光化学反応装置の使用者が、特定の発光物質又は特定の発光物質の混合物で、光化学反応装置で運転中に実施される光化学プロセスに適しているものを選択できる、ということである。必要とされる放射スペクトルを発光するために発光物質を使用することはすでに知られている。例えばすでに挙げた米国特許US6,398,970B1である。しかし、この知られた光化学反応装置の構成では、単一のUV−光源が存在してUV−放射を発光する。そのスペクトルは、UV−光源と、UV−光源の放電容器の壁に適用された発光物質との組み合わせで決められる。そのよう、この知られた光化学反応装置は、特定の光化学プロセスを実行するために構成されている。本発明の光化学反応装置においては、発光物質は除去可能に光化学反応装置に結合されている。そのような配置によって、発光物質は、光化学反応装置内の又は流れている現流体に実行されるべき現光化学プロセスの要求に合うように選択されることができる。異なる光化学プロセスが要求される場合、例えば、異なるスペクトルを有するUV−放射が要求される場合に、発光物質又は発光物質の混合物の交換だけが必要である。そのようにすることで、要求されるスペクトルを、光源と発光物質との組み合わせにより発生させて、異なる光化学プロセスを光化学反応装置において実施できるようになる。このことは、光化学反応装置の使用の柔軟性を満たすにはコストには限界があるものの、光化学反応装置の使用の柔軟性を改良する。
【0011】
光源は、UV−放射を発光するいかなる光発光体でもよい。例えば低圧放電ランプ、高圧放電ランプ、誘電バリア放電ランプ又は、例えば、固体光発光素子、例えば光発光ダイオード、レーザーダイオード又は有機光発光ダイオードなどである。
【0012】
光化学反応装置の一つの実施態様において、光源は、除去可能に光化学反応装置に結合されており、発光物質からは離されている。この実施態様の利点は、光源もまた相対的に交換容易であるという点である。光源もまた、例えば、劣化し、それにより光化学反応装置の効率が低下する。発光物質とは別に配置されている光源を交換可能にすることにより、光化学反応装置の効率を改良するために交換される必要のある部品のみを実際に交換する。それによって光化学反応装置の交換コスト及び/又は維持コストが下げられる。
【0013】
この実施態様のさらなる利点は、以下の点である。光源及び発光物質が独立して交換可能であるということから、使用者が、光化学反応装置の正確な要求及び/又は発光物質の正確な要求にそって、光源を選択することができるという点である。発光物質を交換することは、UV−放射のさらなるUV−放射への効率的な変換を行うために、光源が異なるUV−放射を発光することを要求することができる。本発明の光化学反応装置においては、光源も発光物質もともに交換可能である。そこで、例えば光源は、効率的に発光物質により吸収され、光化学反応装置の効率を最大限にするための光を発光するために選択され得る。さらに、例えば発光物質は、光源による光発光の一部だけをさらなるUV−放射に変更することができる。光源によるUV−放射の残りは、例えば、光化学反応装置において光化学反応に寄与することができる。発光物質と光源とを独立して除去可能に光化学反応装置と結合させたことにより、光化学反応装置で運転中起こるべき光化学反応にとって要求される通りの適したUV−放射およびさらなるUV−放射が選択できる。
【0014】
光化学反応装置の1つの実施態様において、光化学反応装置は、発光物質を含む発光スクリーンを有する。発光スクリーンは、光化学反応装置に除去可能に結合されていて、相対的に容易に発光物質の交換が可能である。発光スクリーンは、例えば、少なくとも一部がさらなるUV−放射に対し透明な物質、例えば、水晶からなる。発光物質は、発光スクリーンのひとつの層として配置されることができる。別態様としては、発光物質の粒子が、発光スクリーンに埋め込まれていてもよい。さらなる別態様としては、発光スクリーンは、発光物質から構成されていてもよい。発光スクリーンは、発光物質を、光源により発光されたUV−放射へ効率的に暴露するものであればいかなる形状でもよい。光化学反応装置のひとつの実施態様においては、さらに流体が光源と発光物質との間に流れることができる。この流体は、例えば、冷却ガス又は冷却液であってよく、発光物質及び/又は光源の温度があらかじめ設定されたレベルを超えないことを保証するために用いられることができる。発光物質は、高い温度に晒されると、相対的に速く劣化する。光源と発光物質との間にさらなる流体を適用することにより、さらなる流体は、温度上昇を抑制し、発光物質の劣化速度を減少させる冷却液として作用する。
【0015】
あるいは、さらなる流体が、それ自体の中で光化学反応を要求する流体であってもよい。このさらなる流体中での光化学反応においては、主に、光源により発光されたUV−放射が、光化学反応を起こすことが要求される。そのような構成において、光源により発光されたUV−放射は、最初は、さらなる流体中で光化学反応を起こすために用いられる。UV−放射の残り(さらなる流体によって使用されず、さらなる流体を透過した)は発光物質に影響を与え、その一部のUV−放射は、さらなるUV−放射に変換され、それは例えば、流体中の光化学反応で使用される。光化学反応は、2つの異なる光化学反応が単一の反応容器で実施されるように配置されている。これは、例えば、流体の2ステップ清浄工程で、又は2つの異なった流体を異なった光化学プロセスを用いて清浄化することに使用されることができる。
【0016】
光化学反応装置のひとつの実施態様において、さらなる流体は流体と同じ流体である。その構成において、光化学反応装置は、例えば、2つの容器を有することができ、そこで異なる光化学反応が実施される:ひとつ目のプロセスは、発光が光源により直接発光されて生じる場合に相対的に効率的であり、2つ目のプロセスは、発光が、発光物質により発光された(一般に、より長波長)のさらなるUV−放射により生じる場合に相対的に効率的である。またこの構成は、2ステップの清浄化プロセスに使用することができる。すなわち、発光物質により発光したさらなるUV−放射が、流体の前清浄化ステップで使用され、さらに光源により発光したUV−放射が2番目の清浄化ステップで使用され、完全に流体からすべての残留する汚染物又はバクテリアを除去する、プロセスである。
【0017】
光化学反応装置のひとつの実施態様においては、流体は光化学反応装置を通じて流れる。この配置は、光化学反応装置が、例えば、流体供給ラインで結合され、光化学プロセスで連続的に流体を清浄化することを可能とする。例えば、本発明によれば水供給ラインが光化学反応装置に結合され、水を清浄化しつつ、使用者に供給することができる。これは例えば、水の供給者により大規模に実施できる。光化学反応装置は、例えば、清浄化流体が要求されている場所にパイプを流れる間に、流体(例えば水)を清浄化することができる。あるいは消費者によりこれを行うこともできる。すなわち光化学反応装置を家庭のどこかに設置し、家庭で飲料水の水質を改良することができる。
【0018】
光化学反応装置のひとつの実施態様においては、光源は、誘電バリア放電ランプ(以下さらにDBDランプと参照する)である。DBDランプ、例えばキセノンDBDランプの使用の利点は、高効率で、高フラックスUV−光源を可能とすることである。そのような放電ランプは、172nmまでの波長のUV−放射を相対的に高い効率で、発生することができる。そのような光源を使う利点は、光化学反応装置が、UV−放射の発生が相対的に高効率であり、その結果、例えば、流体がより高い流速で光化学反応装置を通ることができることである。しかし、この高フラックスUV−放射の欠点は、発光物質の劣化が加速されることである。この加速は、光化学反応装置の相対的に高効率を取り戻すために、発光物質の交換及び/又は補充を要求する可能性がある。本発明の光化学反応装置においては、発光物質は除去可能に光化学反応装置に結合されており、光源からは離されている。DBDランプの使用は、高効率光化学反応装置を可能とするであろう。一方、効率がある限界内に維持されることを保証ために交換及び/又は維持管理は、使用とともに劣化していく発光物質のみの交換を要求する。こうして、このような非常に効率的光化学反応装置の運転コストを下げることができる。
【0019】
光化学反応装置のひとつの実施態様においては、光源は、UV−放射に少なくとも一部は透明である壁を有する保護シースに配置され、発光物質は、保護シースの壁に配置されている。しばしば、保護シースは、光源と、運転中、光源からのUV−放射に晒される流体の間に存在する。この保護シースは、一般に高電圧放電ランプが流体と接触することを妨げて、安全性を改良するものである。保護シースは、一般にUV−放射に透明であり、流体が相対的に容易に、保護シースの内側の光源で発光照射される。発光物質を、例えば保護シースの内側の壁に設けることで、安全性は維持されたまま、発光物質は、光源とは独立して除去されることができる。このような構成においては、保護シースは、上ですでに述べたように、発光スクリーンにより構成される。
【0020】
保護シースを用いるさらなる利点は、DBDランプでは、部分的にDBDランプの外に配置される電極は、必ずしも無腐食である必要はないことである。流体と光源との間に保護シースを用いる場合、光源は流体とは接触していない。DBDランプでは、電極のひとつは、放電ランプの外側壁で、保護シースの内側に配置されることができる。この配置により、電極は、例えば水のような流体とは接触せず、そこで無腐食であることを必要としない。
【0021】
保護シースの使用は、さらに、流体を含む容器から光源を熱的に絶縁する。しばしば流体は水であり、光化学反応を用いて清浄化される。この水は一般に相対的に低温である。光源が、反応容器を通じて流れる水と接触する場合、光源の内部温度は流水により部分的に決定されるー一般には光源を冷却する。その結果、光源内の温度が低すぎることになり得るが、これは、光源内のUV放射発生の効率を下げる可能性がある。さらに流水による光源内の温度が下がることは、光源のスイッチを入れることが、より困難になるとか及び/又はかなりの時間経てからのみスイッチが入るとかの問題を引き起こす可能性がある。そのような、スイッチを入れることが遅延することは、清浄化されていない水が、光化学反応装置を通過し、水供給の残りを汚染するという問題を起こす可能性がある。この問題は、光源の温度を、光化学反応装置を通じて流れる流体の温度とは異なるようにできる保護シースにより、減少させることができる。
【0022】
光化学反応装置のひとつの実施態様においては、UV―放射は、200ナノメータより低い波長を有し、また、さらなるUV−放射が300ナノメータより低い波長を有する。
【0023】
本発明はまた、本発明による光化学反応装置で使用するための、発光物質を有する発光スクリーンに関する。本発明はまた、流体中の汚染を光化学的に処理するための光化学プロセスシステムに関する。光化学プロセスシステムは、特許請求の範囲のいずれかで請求する光化学反応装置と、及び、光源による光発光の強度を制御するため、及び/又は光化学反応装置を通じて流れる流体の流速を制御するため、及び/又は光化学反応装置の処理の前及び/又は後で流体の汚染レベルを分析するための、プロセッサとを有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明のこれら述べた側面及び他の側面は、以下説明する実施態様から明らかであり、参照しながら説明する。
【図1】図1A及び図1Bは、本発明の反応容器の断面を示す。
【図2】図2は、本発明の反応容器であって、さらなる実施態様の反応容器の断面を示す。
【図3】図3は、本発明の反応容器であって、さらに別の実施態様の反応容器の断面を示す。
【図4】図4は、本発明の光化学プロセスシステムを示す。 図面は、単に図として描かれているにすぎず、スケールが描かれているものではない。特に明瞭化のために、いくつかの寸法は強く誇張されている。図中の類似の部品は、同じ参照番号で可能な限り表される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1A及び図1Bは、本発明による光化学反応装置10、12の断面図を示す。光化学反応装置10、12は、光化学的に流体30を処理するように配置され、流体入り口24と流体出口26を有する容器20を含む。流体30の光化学的処理の際に、流体30は容器20を通じて、流体入り口24から流体出口26へ流れることができる。あるいは、流体30は、光化学反応が進行する間、容器20内で留まることができる。光化学反応装置10、12は、さらに、紫外放射UV1(さらに以下UV−放射と示される)を発光する光源40を有する。光源40は、UV−放射UV1を発光できるいかなる光エミッタ40であり得る。例えば、低圧放電ランプ、高圧放電ランプ、絶縁バリア放電ランプ40、又は例えば固体光エミッタ、光発光ダイオード、レーザーダイオード又は有機光発光ダイオードである。光化学反応装置10,12は、さらに、光源40と流体30の間の少なくとも一部に配置される発光物質50を有する。発光物質50は、光源40で発光されたUV−放射UV1の少なくとも一部を、UV−放射UV1と比べて増加した波長を有するさらなるUV−放射UV2に変換する。
【0026】
発光物質50は、発光スクリーン52上に配置されてもよい。発光物質50は、例えば、発光スクリーン52と光源40の間で、発光スクリーン52の壁の上に層として設けられてもよい。そのような配置で、発光スクリーン52は、発光物質により発光されたUV−放射UV2の少なくとも一部について光透過性である。あるいは、発光物質は、光源40とは向き合わないように、発光スクリーン52の壁の上に設けられてもよい。そのような配置で、発光スクリーン52は、光源40により発光されるUV−放射UV1の少なくとも一部について光透過性であってもよく、それにより、UV−放射UV1は、発光物質50に影響してさらなるUV−放射UV2へと変換される。さらにあるいは、発光スクリーン52は、発光物質50からなっていてもよい。
【0027】
発光物質50は、光化学反応装置10,12に除去可能に結合されており、光源40とは離されている。この配置の利益は、発光物質50が光化学反応装置12、12の他の部分がまだ使用可能である間に、発光物質50が交換可能であることである。これは、発光物質を含む発光スクリーン52を交換することで達成することができる。特に、光源40としてDBDランプを使用する場合、UV−放射UV1は172nmまでの波長を有することができるが、これはフォトンあたり相対的に高エネルギを表す。さらに、DBDランプ40は、UV−放射UV1を相対的に高効率で、相対的に高フラックスで発生させることができる。この相対的にフォトンあたりの高エネルギーと共に、相対的に高フラックスであることは、発光物質50が相対的に速く劣化させる原因となる発光物質を、光化学反応装置10、12に除去可能に配置することにより、光化学反応装置10,12の残りの部分を交換することなく、発光物質50を交換することができる。そのようにして、光化学反応装置10,12の効率をあらかじめ設定しておいたレベルに維持することが、相対的に容易に、例えば、発光スクリーン52を交換することで、達成することができる。
【0028】
図1Aに示される実施態様において、光化学反応装置10は、保護シース22を有し、保護シースは、光源40を、光化学反応装置10を通じて流れている流体と接触することから隔離する。保護シース22は、光源40によるUV−放射UV1発光に対し少なくとも部分的に光透過性であり、及び/又は発光物質50によるUV−放射UV2発光に対し少なくとも部分的に光透過性である。保護シース22は、光源40と向き合う保護シースの壁になるように内部壁を有する。図1Aで示される実施態様において、発光物質50は、保護シース22の内部壁上に配置される。この実施態様の利益は、次の点である。すなわち、発光物質50が、流体30と直接接触せず、流体30により汚染されることがないということである。あるいは、発光物質50は、保護シース22(図示されていない)に埋め込まれていてもよい。又は光源40(図示されていない)から離れて向き合う保護シース22の壁となるように保護シース22の外側壁上に設けられてもよい。
【0029】
図1Aに示される実施態様において、光源40は、保護シース22から離されて配置され、従って発光物質50からも離されて配置されている。この配置により、発光物質50及び光源40は、別々に交換可能となる。これは、発光物質50と光源40がお互いに異なる速度で劣化する場合に、特に利益となる。劣化した発光物質50(例えば保護シース22とともに)のみが交換されるべきであり、又は劣化した光源40が交換されるべきである。あるいは、この配置は、特定の光源40を、特定の発光物質50に適合させるために選択するために、使用されることができる。例えば、発光物質50が、特定の光化学プロセスで要求される特定の波長を有するUV−放射UV2をさらに発光するという理由から、発光物質は選択され得る。しかしながら、現在使用されている光源40が、UV−放射UV1を発光するが、それが発光物質50によりさらなるUV−放射UV2へ効率的に変換することができないことがある。そのような場合、光源40は、発光物質50の要求により適合したUV−放射UV1を発光する別の光源40に交換されることができる。発光物質50と光源40がともに別々に交換可能であるということから、光化学反応装置10の使用に際し、柔軟性が改良される。
【0030】
図1Bに示される光化学反応装置12の実施態様において、発光物質50は、発光スクリーン52上に配置され、少なくとも部分的に光源40と保護シース22の間に配置される。発光スクリーン52は、光化学反応装置12と除去可能に結合されている。この配置の利益は次の点にある。すなわち、発光スクリーン52は、光源40の交換も保護シース22の交換もすることなく、交換することができるということである。一般的に、保護シース22は光化学反応装置12を通じて流れる流体30の流れの一部を規定する。発光物質50は保護シース22上に配置される場合には、発光物質50を交換するためには保護シース22全体が交換されなければならない。この配置によると、流体は光化学反応装置10から除かなければならない。特に光化学反応装置10,12が水の脱汚染のために構成される場合、水は、光化学反応装置10,12を相対的に高圧で流れている。保護シース22が交換されなければならない場合、発光物質50を有する保護シース22が交換されるまで水の流れを止めるため、追加の蛇口(図示されていない)が(一時的に)必要とされる。
【0031】
図1Bで示される実施態様においては、光化学反応装置12は、発光物質を有する発光スクリーン52を有する。発光スクリーン52は、少なくとも部分的に、保護シース22の内側壁と光源40との間に配置されている。この配置では、発光スクリーン52は、保護シース22を取り除いたり交換したりする必要なく、交換可能である。光化学反応装置12が水の脱汚染のために構成される場合、発光スクリーン52が、相対的に容易に交換される間、水は、最初の圧力のまま、光化学反応装置12内に留まる。
【0032】
図2は、本発明によるさらなる実施態様である光化学反応装置14の断面を示す。図2に示される光化学反応装置14は、流体入り口24と流体出口26に加えて、さらに流体入り口34と流体出口36を備える。さらなる流体入り口34は、光源40と保護シース22との間に実質的に位置する、追加の容器21へのアクセスを提供する。追加の容器21は、使用の際に、さらなる流体35であって、追加の容器21を通じて流れるか又は追加の容器21に位置する流体35を有することができる。このさらなる流体35は、例えば、光源40と発光物質50の間を流れて光源40及び/又は発光物質50を冷却する、冷却流体35であってもよい。
【0033】
あるいは、このさらなる流体35は、例えば、さらなるUV−放射UV2よりはむしろUV−放射UV1を用いる光化学プロセスをまた要求してもよい。図2に示された配置は、2つの光化学プロセスが実質的に同時に起こることを許容するものである。ひとつのプロセスは光源40による直接のUV―放射UV1発光を用いるものであり、さらなる光化学プロセスは、発光物質50によるさらなるUV−放射UV2を使用するものであって、効率的光化学プロセスのためにより長波長のUV−放射を必要とする光化学プロセスである。一般的に、さらなる流体35は光源40により発光するUV−放射UV1に対し、少なくとも部分的に光透過性でなければならない。このUV−放射UV1の一部は、発光物質50に影響し、さらなるUV−放射へ変換する。
【0034】
図2に示される光化学反応装置14の構成においては、光化学反応装置14は、流体30が暴露される紫外放射光と、さらなる流体35が暴露される紫外放射光との間に、明確な区別をすることを可能にする。例えば保護シース22は、光源40によるUV−放射UV1発光に対して光透過性でなく、発光物質50によるさらなるUV−放射UV1に対しては少なくとも部分的に光透過性であればよい。そのような構成においては、流体35は、実質的に、さらなるUV−放射UV1のみに暴露されるであろう。一方さらなる流体35は、光源40によるUV−放射UV1発光と、発光物質50によるさらなるUV−放射UV2発光の両方に暴露される。
【0035】
図3は、本発明によるさらなる実施態様である光化学反応装置16の断面を示す。図3に示される光化学反応装置16においては、流体30とさらなる流体30は同じであり、共に容器20とさらなる容器21を通じて連続的に流れる。光化学反応装置16は、流体30が光化学反応装置16へと流れ込む流体入り口24を有する。最初、流体30は容器20を通じて流れ、発光物質50によるさらなるUV−放射UV2に暴露される。一般的に、このさらなるUV−放射UV2は、光源40によるUV−放射UV1発光に比べて減少した波長を有するので、フォトンあたりのエネルギは相違する。このさらなるUV−放射UV2は、流体30が最初に暴露される第一の光化学プロセスに特定の要求に合わせて選択され得る。流体30は、結合手段32を通じて、実質的に追加の容器21へと流れる。追加の容器21は一般的に、光源40を囲み、主に光源40にいるUV−放射UV1を含む。光源40により発光されるUV−放射は、流体が続いて暴露される第二の光化学プロセスに特定の要求に合わせて選択され得る。一般的に発光物質50は、さらなるUV−放射UV2をあらゆる方向に発光するので、さらなるUV−放射UV2は追加の容器22内にも存在し、それはなおも、追加の容器内で、第一の光化学プロセスを起こすことができる。このように図3に示される光化学反応装置16の構成で使用される場合、流体30は連続的に、さらなるUV−放射UV2とUV−放射UV1に暴露されることが可能となり、2つの光化学プロセスを同じ流体30に対して、連続的に実施することが可能となる。
【0036】
容器20と追加の容器21との結合手段32は、容器20と追加の容器21との間の結合ホース32の手段で形成されてもよい。あるいは、結合手段は、容器20と追加の容器21を結合する、保護シース22を貫通する穴(図示されていない)であってもよい。また光化学反応装置16の形状は相違していてもよいし、光化学反応装置16を通じる流体30の効率的流れを可能するため最適化し、例えば、光化学反応装置16全体に亘る圧力低下を抑制する。これは、例えば、光化学反応装置16が水の脱汚染に使用される場合に利益がある。光化学反応装置16全体に亘る圧力低下があまりに大きいと、水圧が大きく下がり、このことは、水が光化学反応装置16に残留した後の水の供給に不都合となるからである。
【0037】
図4は、本発明による光化学プロセスシステム100を示す。光化学プロセスシステム100は、図1Aに示される光化学反応装置10を有する。光化学プロセスシステム100はさらに、プロセッサ110を有する。プロセッサ110は、光源40と結合されることができ、光源40により発光されるUV−放射UV1の強度を制御する。プロセッサ110は、ポンプ110と結合されることができ、流体30が光化学反応装置10を通じる速度を制御する。プロセッサ110はまた、例えば、光化学反応装置10に入る前の流体30の汚染のレベルを感知する、第1のセンサ120と結合されることができる。さらにロセッサ110は、例えば、流体30が光化学プロセスに暴露された後の汚染レベルを感知する第2のセンサと結合されることができる。UV−放射UV1の強度及び/又は流体30の流速を用いて、プロセッサ110は、例えば、流体の脱汚染の品質を継続的にモニタすることが可能であり、これらのパラメータを脱汚染に反映させることができる。例えば、発光物質50の効率が低下した場合、流体30の脱汚染は減少する。これがプロセッサ110により測定された場合、プロセッサ110は、流体30の流速を低下させ、脱汚染のレベルを保証することができる。あるいは、流体30の汚染が時間経過につれて変化する場合、プロセッサ110は、これを感知し、光源40の照射強度を適合させるか、及び/又は要求される脱汚染をなお提供するように、流体の流速を適合させる。
【0038】
あるいは、光化学プロセスシステム100の光化学プロセスに影響させるために、他の制御手段(図示されていない)もあり得る。例えば、流体30の流速は、圧力バルブ(図示されていない)により制御されることができ、必要な場合、流体30の流速を減少するために使用することができる。また、流体30の汚染を感知するために、又は光化学反応装置10の効率を感知するために、又は光源40によるUV−放射UV1発光の強度を感知するために、又は発光物質50によるさらなるUV−放射UV2発光の強度を感知するために、他のセンサ(図示されていない)もあり得る。
【0039】
次のことが注意されるべきである。すなわち、上で説明された実施態様は、本発明のいくつかを説明したものにすぎないこと、当技術分野の専門家であれば、本発明の請求項の記載からはずれることなく、多くの実施態様の変法を考えることができることである。
【0040】
特許請求の範囲において、括弧内に参照として付された符号は、請求項を限定するものではない。動詞の「含む(comprise)」及びその活用型は、請求項に記載された要素又はステップにつき他の要素又はステップの存在を排除するものではない。「ひとつの(a,an)」で続けられた要素は、その要素が複数である場合が存在することを排除するものではない。本発明は、いくつかの別の要素を含む機器の手段により実施され得る。いくつかの手段を列記する装置に関する請求項において、これらの手段のいくつかは、いちの及び同じ品目の装置により実施され得る。ある手段が、相互に異なる従属請求項に引用されているということは、単なる事実であって、これらの手段の組み合わせは、有効に使用できない、ということを意味するものではない。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の光化学反応装置であって;
前記流体を含む容器と、
UV−放射を発生し、前記流体に照射する光源及び
発光物質とを含み、
前記発光物質が、前記光源と前記流体との間の少なくとも一部分に配置され、前記光源により発光された前記UV−放射の少なくとも一部を、前記UV−放射と比較して長波長を有するさらなるUV−放射に変換する、
流体の光化学反応装置。
【請求項2】
前記光源が、前記光化学反応装置に、除去可能に結合され、かつ前記発光物質から離れている、請求項1に記載の、光化学反応装置。
【請求項3】
前記前記光化学反応装置が、前記発光物質を有する発光スクリーンを有する、請求項1又は2のいずれか1項に記載の、光化学反応装置。
【請求項4】
さらなる流体が、光源と発光物質の間を流れる、請求項1又は2のいずれか1項に記載の、光化学反応装置。
【請求項5】
前記さらなる流体が、前記流体と同じである、請求項3に記載の、光化学反応装置。
【請求項6】
前記流体が、前記光化学反応装置を通じて流れる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の、光化学反応装置。
【請求項7】
前記光源が、誘電バリア放電ランプである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の、光化学反応装置。
【請求項8】
前記光源が、UV−放射に対しては少なくとも部分的に透明である壁を有する保護シース内に配置され、発光物質が、前記保護シースの前記壁上に配置されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の、光化学反応装置。
【請求項9】
UV−放射が、200ナノメータより低い波長を有し、さらなるUV−放射が、300ナノメータより低い波長を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の、光化学反応装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の光化学反応装置において使用するための、前記発光物質を含む、発光スクリーン。
【請求項11】
前記発光物質が、前記発光スクリーン上に配置されているか、及び/又は前記発光物質が、前記発光スクリーンに埋め込まれているか、及び/又は前記発光スクリーンが前記発光物質で構成されている、請求項10に記載の、発光スクリーン。
【請求項12】
流体の汚染を光化学的に処理する、光化学プロセスシステムであって、
請求項1〜9のいずれか1項に記載の光化学反応装置と、光源により発光する光強度、及び/又は前記光化学反応装置を通じて前記流体が流れる流速、及び/又は前記光化学反応装置において処理の前及び/又は後の前記流体の汚染を分析するための、プロセッサとを有する、光化学プロセスシステム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−522697(P2011−522697A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513090(P2011−513090)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際出願番号】PCT/IB2009/052365
【国際公開番号】WO2009/150582
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】