説明

光半導体素子用パッケージ及び光半導体装置

【課題】光半導体素子とそれに接続される素子用電極とを十分に近づけることができ、伝送経路の伝送損失を小さくできる光半導体素子用パッケージを提供する。
【解決手段】中央部に光半導体素子50を実装するための実装領域Aを有し、光半導体素子50を接続するための素子用電極20a,20bと、素子用電極20a,20bに接続された外部接続電極30a,30bとを備えたセラミックス配線基板部5と、セラミックス配線基板部5の上に設けられ、中央部に素子用電極20a,20b及び実装領域Aを露出させる開口部40xを備え、かつ開口部40xの外周部にリング状突出部42が設けられた金属シールリング40とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
光半導体素子用パッケージ及び光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光素子や受光素子などが実装される光半導体素子用パッケージがある。従来の光半導体素子用パッケージでは、円板状の金属製のステムにガラスで封着されたリードが設けられている。そして、ステムの上に発光素子及びその光をモニタする受光素子が実装され、中央部に透明のガラス窓が設けられたキャップがステムの上に搭載され、発光素子及び受光素子が気密封止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−186965号公報
【特許文献2】特開2003−163382号公報
【特許文献3】特表2005−516404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
後述する予備的事項の欄で説明するように、円板状のステムにリードがガラスで封着された光半導体素子用パッケージでは、伝送経路の伝送損失を小さくするために面発光レーザとリードと近づける要求があるとしても容易には対応できない。
【0005】
本発明は、光半導体素子とそれに接続される素子用電極とを十分に近づけることができ、伝送経路の伝送損失を小さくできる光半導体素子用パッケージ及び光半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の開示の一観点によれば、中央部に光半導体素子を実装するための実装領域を有し、前記光半導体素子を接続するための素子用電極と、前記素子用電極に接続された外部接続電極とを備えたセラミックス配線基板部と、前記セラミックス配線基板部の上に設けられ、中央部に前記素子用電極及び前記実装領域を露出させる開口部を備え、かつ開口部の外周部にリング状突出部が設けられた金属シールリングとを有する光半導体素子用パッケージが提供される。
【0007】
また、その開示の他の観点によれば、請求項1乃至5のいずれかの光半導体素子用パッケージと、前記実装領域に実装された前記光半導体素子と、前記光半導体素子の電極と前記素子用電極とを接続する金属ワイヤと、前記金属シールリングの上に設けられ、中央部にガラス窓を備えて前記光半導体素子を気密封止する金属キャップとを有する光半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
以下の開示によれば、光半導体素子用パッケージは、セラミックス配線基板部を採用しているので、光半導体素子と素子用電極との距離を一般的なステムを使用する場合より短くすることができる。従って、光半導体素子と素子用電極とを接続する金属ワイヤの長さを短くすることができる。
【0009】
これにより、より高速な電気信号の伝送に対応することが可能になり、10Gbps以上の大容量光通信のアプリケーションに対応することができる。
【0010】
また、径が細くてハンドリング性が悪いリードを使用する必要がないので、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は予備的事項に係る光半導体素子用パッケージに面発光レーザ及びフォトダイオードが実装された様子を斜視図である。
【図2】図2は図1の光半導体素子用パッケージに金属キャップが装着された様子を示す斜視図である。
【図3】図3は実施形態の光半導体素子用パッケージのセラミックス配線基板部を示す斜視図である。
【図4】図4は図3のセラミックス配線基板部の下面側の様子をB方向からみた斜視図である。
【図5】図5(a)は実施形態の光半導体素子用パッケージを示す斜視図、図5(b)は図5(a)の光半導体素子用パッケージの金属シールリングを示す断面図である。
【図6】図6(a)及び(b)は図5の光半導体素子用パッケージに面発光レーザ及び受光素子が実装された様子を示す斜視図及び平面図である。
【図7】図7は実施形態の光半導体装置を示す斜視図である。
【図8】図8は図7の光半導体装置が実装基板に実装された様子を示す模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0013】
本実施形態の説明の前に、基礎となる予備的事項について説明する。
【0014】
図1に示すように、予備的事項に係る光半導体素子用パッケージは、円板状の本体部100aと本体部100aの周縁下部に設けられたリング状の縁部100bとを備えた金属製のステム100を有している。
【0015】
ステム100には、厚み方向に貫通する貫通孔100xが設けられている。ステム100の貫通孔100x内には、第1〜第4リード120a,120b,120c,120dがガラス部130によって封着された状態でそれぞれ挿通して固定されている。
【0016】
第1リード120aと第2リード120bとの間の領域のステム100上に、サブマウンド140を介して面発光レーザ200がその発光部を上側に向けた状態で実装されている。面発光レーザ200の電極と第1、第2リード120a,120bとは金ワイヤ160によって接続されている。
【0017】
また、第3リード120cと第4リード120dとの間の領域のステム100上には、サブマウント140を介してフォトダイオード300がその受光部300aを上側に向けた状態で実装されている。フォトダイオード300の電極と第3、第4リード120c,120dとは金ワイヤ160によって接続されている。
【0018】
さらに、図2に示すように、図1のステム100の上に、中央部に透明なガラス窓420が設けられた金属キャップ400が装着されて、面発光レーザ200及びフォトダイオード300が金属キャップ400の中に気密封止される。金属キャップ400のガラス窓420は水平方向に対して傾斜して形成されている。
【0019】
面発光レーザ200から出射される光は金属キャップ400のガラス窓420を透過し、外部の光ファイバに伝達される。このとき、面発光レーザ200から出射させる光の一部は、傾斜したガラス窓420で反射されてフォトダイオード300の受光部300aに入射する。このようにして、面発光レーザ200から出射される光がフォトダイオード300によってモニタされる。
【0020】
光半導体素子用パッケージでは、高速信号を伝達させるためには、伝送経路の特性インピーダンスを整合させる必要があり、一般的に伝送経路の特性インピーダンスは50Ωに設定される。
【0021】
そのような特性インピーダンスに設定するためには、使用するガラスの誘電率にもよるが、一般に、図1の例では、ステム100に形成される貫通孔100xの径d1(ガラス部130の径)は約1.3mmに設定され、その中心に配置される第1、第2リード120a,120bの径d2が0.2mmに設定される。
【0022】
従って、面発光レーザ200と第1、第2リード120a,120bとは、各部品のレイアウトのマージンを考慮すると、少なくとも1mm程度の距離で離れて配置されることになる。また、面発光レーザ200と第1、第2リード120a,120bとは、線径が25μm程度の細線の金ワイヤ160でそれぞれ接続される。
【0023】
このように、面発光レーザ200と第1、第2リード120a,120bとをある程度離して配置する必要があるので、金ワイヤ160の長さが長くなり、伝送経路の伝送損失が大きくなってしまう。この対策として、複数本の金ワイヤ160で結線することで電気抵抗を減らして伝送損失を小さくする方法があるが、面発光レーザ200の電極の面積が足りなかったり、生産効率が悪くなるため、実際には適用は困難である。
【0024】
また、前述した封止用のガラス部130を焼成する際には、ステム100をカーボン製の治具に設置し、1000℃程度の温度で行われる。各材料の熱膨張係数の差や治具の消耗を考慮すると、前述した設計ルールよりガラス部130の面積を小さくし、その中心部にリード120a,120bを精度よく封着することは困難を極める。
【0025】
このような観点からも、面発光レーザ200と第1、第2リード120a,120bとをこれ以上近づけることは困難である。
【0026】
このように、予備的事項に係る光半導体素子用パッケージでは、伝送経路の伝送損失をさらに小さくするために面発光レーザ200と第1、第2リード120a,120bとを近づける要求があるとしても容易には対応できない。
【0027】
しかも、第1、第2リード120a,120bはその径が0.2mm程度でかなり細いため、リードをガラス封着する際や光半導体装置を光ファイバに連結する際に、リードのハンドリングには細心の注意が必要となり、生産性が悪化する要因になる。
【0028】
後述する実施形態の光半導体素子用パッケージでは、前述した不具合を解消することができる。
【0029】
(実施の形態)
図3及び図4は実施形態の光半導体素子用パッケージのセラミックス配線基板部を示す斜視図、図5は実施形態の光半導体素子用パッケージを示す図、図6は実施形態の光半導体素子用パッケージに光半導体素子が実装された様子を示す図、図7は実施形態の光半導体装置を示す斜視図である。
【0030】
図3に示すように、実施形態の光半導体素子用パッケージはセラミックス配線基板部5を有する。セラミックス配線基板部5は、平面視すると外形が六角形状であり、第1セラミックス配線基板部10の上に第2セラミックス配線基板部12及び第3セラミックス配線基板部14が積層されて形成される。セラミックス配線基板部5の外形の好適な例として、六角形を示すが、八角形などの多角形、あるいは円形状であってもよい。
【0031】
図3では、説明を分かりやすくするために、セラミックス配線基板部5を第1〜第3セラミックス配線基板部10,12,14に分けて説明するが、実際にはセラミックス配線基板部5は一体的なセラミックス体から形成される。
【0032】
後述するように、セラミックス配線基板部5の上に金属シールリングが設けられて光半導体素子用パッケージとなる。さらに、光半導体素子用パッケージに発光素子や受光素子が実装された後に、ガラス窓を備えた金属キャップが装着されて光半導体装置となる。
【0033】
光半導体装置は円形の光ファイバ装置に連結されるため、金属キャップなどは円形部材として形成される。このため、光半導体素子用パッケージのセラミックス配線基板部5は、キャップなどの円形部材と整合がとれるように、六角形や八角形などの円形に近い形状に設定される。
【0034】
つまり、セラミックス配線基板部5を四角形状から形成する場合は、金属キャップなどの円形部材から角部が露出したりするため、整合がとりづらくなり、好ましくない。しかし、特に問題がなければ、セラミックス配線基板部5を四角形状から形成することも可能である。
【0035】
セラミックス配線基板部5は、グリーンシート法によって製造される。詳しく説明すると、まず、アルミナなどのセラミックス粉末を粘結剤などでシート状にして成形したグリーンシート上にタングステンや銅などの導電ペーストによって所要の配線層を形成すると共に、スルーホールに導電ペーストを充填する。
【0036】
次いで、複数枚(本実施形態では3枚)のグリーンシートを重ねてプレスし、焼成した後に、ダイシングソーで切断することにより、セラミックス配線基板部5が得られる。グリーンシートの積層数は任意に設定することができ、各種の積層構造のセラミックス配線基板部を製造することができる。
【0037】
焼成済セラミックスシートを切断するときに、円形で切断することは比較的難しいため、円形に近く加工しやすい六角形又は八角形に切断する。
【0038】
実施形態に係るセラミックス配線基板部5では、最上の第3セラミックス配線基板部14の中央部に厚み方向に貫通するキャビティC(凹部)が設けられている。キャビティC(凹部)は、中央部に設けられて面発光レーザが配置される第1キャビティC1と、第1キャビティにC1の一端に連通して形成されて受光素子が配置される第2キャビティC2とを有する。
【0039】
第2キャビティC2の幅は第1キャビティC1の幅より太く設定されている。キャビティCの深さは任意の深さに設定することができる。
【0040】
このように、セラミックス配線基板部5の中央部には、キャビティCが設けられており、キャビティCの底部が実装領域Aとなっている。
【0041】
第1キャビティC1の両側近傍の第3セラミックス配線基板部14にはその上面から厚み方向に円柱状の第1素子用電極20a及び第2素子用電極20bがそれぞれ形成されている。第1素子用電極20a及び第2素子用電極20bは発光素子(光半導体素子)を接続するための電極である。
【0042】
図3の例では、第1素子用電極20a及び第2素子用電極20bは、第3セラミックス配線基板部14の厚み方向に貫通する貫通電極として形成される。
【0043】
図4は図3の下面側をBの方向からみた斜視図である。図3及び図4を同時に参照すると、第1素子用電極20aは、第2セラミックス配線基板12の上に形成された配線層(不図示)を介して第1、第2セラミックス配線基板10,12の側壁に形成された第1外部接続電極30aに接続されている。
【0044】
第1、第2セラミックス配線基板10,12の側壁の下端から上側に半円柱状の凹部16a(図4)が設けられており、凹部16aの内面に半円筒状の第1外部接続電極30aが形成されている。
【0045】
また、図3及び図4を同時に参照すると、第2素子用電極20bは、第2セラミックス配線基板12の上に形成された配線層(不図示)を介して第1、第2セラミックス配線基板10,12の側壁に形成された第2外部接続電極30bに接続されている。
【0046】
第1、第2セラミックス配線基板10,12の側壁の下端から上側に凹部16b(図4)が設けられており、凹部16bの内面に半円筒状の第2外部接続電極30bが形成されている。
【0047】
このようにして、第1、第2素子用電極20a,20bは、セラミックス配線基板部5の内部に形成された配線層を介して第1、第2外部接続電極30a,30bに接続されている。
【0048】
本実施形態に係るセラミックス配線基板部5は、グリーンシート法によって製造されるので、前述した予備的事項のステム100より、実装される発光素子と第1素子用電極20a及び第2素子用電極20bとの距離を短くすることができる。
【0049】
つまり、セラミックス配線基板部5では、発光素子の電極と第1、第2素子用電極20a,20bとの距離を0.5mm程度に近づけることができ、予備的事項のステム100の半分以下に設定することができる。前述したように、予備的事項のステム100では、面発光レーザ200の電極と第1、第2リード120a,120bとの距離は1mm程度必要である。
【0050】
従って、実装される発光素子と第1、第2素子用電極20a,20bとを接続する金ワイヤの長さを短くすることができる。よって、予備的事項のステム100より伝送経路の伝送損失を小さくすることができ、より高速な電気信号の伝送に対応することが可能になる。これにより、10Gbps以上の大容量光通信のアプリケーションに対応することが可能になる。
【0051】
また、図3に示すように、第2キャビティC2の両側近傍の第3セラミックス配線基板部14にはその上面から厚み方向に四角柱状の第3素子用電極20c及び第4素子用電極20dがそれぞれ形成されている。第3素子用電極20c及び第4素子用電極20dは受光素子(光半導体素子)を接続するための電極である。
【0052】
図3の例では、第3素子用電極20c及び第4素子用電極20dは、第1、第2素子用電極20a,20bと同様に、第3セラミックス配線基板部14の厚み方向に貫通する貫通電極として形成される。
【0053】
図3及び図4を同時に参照すると、第3素子用電極20cは、第2セラミックス配線基板12の上に形成された配線層(不図示)を介して第1、第2セラミックス配線基板10,12の側壁から第1セラミックス配線基板部10の下面に延在して形成された第3外部接続電極30c(図4)に接続されている。
【0054】
第1、第2セラミックス配線基板10,12の側壁の下端から上側に同様な半円柱状の凹部16c(図3)が設けられており、凹部16cの内面に半円筒状の第3外部接続電極30cが形成されている。
【0055】
また、図3及び図4を同時に参照すると、第4素子用電極20dは、第2セラミックス配線基板12の上に形成された配線層(不図示)を介して第1、第2セラミックス配線基板10,12の側壁から第1セラミックス配線基板部10の下面に延在して形成された第4外部接続電極30d(図4)に接続されている。
【0056】
第1、第2セラミックス配線基板10,12の側壁の下端から上側に同様な半円柱状の凹部16d(図3)が設けられており、凹部16dの内面に半筒状の第4外部接続電極30dが形成されている。
【0057】
第3、第4外部接続電極30c,30dは、六角形の第1、第2セラミックス配線基板10,12の一つの同一側壁に並んで配置されている。
【0058】
さらに、図3に示すように、第3セラミックス配線基板部14の上に第1〜第4素子用電極20a〜20dと分離された状態で上側グランドプレーン22が一体的に形成されている。そして、キャビティCの両外側領域の上側グランドプレーン22に半円周状の開口部22xがそれぞれ形成されている。
【0059】
キャビティCの底部の第2セラミックス配線基板部12上にも上側グランドプレーン22aが形成されている。
【0060】
図3及び図4を同時に参照すると、第3セラミックス配線基板部14上の上側グランドプレーン22は、第3セラミックス配線基板部14を貫通して設けられた貫通電極(不図示)に接続されている。
【0061】
さらに、上側グランドプレーン22に接続された貫通電極(不図示)は、第2セラミックス配線基板12上に形成された配線層(不図示)を介して第1、第2セラミックス配線基板部10,12の側壁に形成されたグランド用接続電極32に接続されている。
【0062】
第1、第2セラミックス配線基板10,12の側壁の下端から上側に同様な半円柱状の凹部16e(図3)が設けられており、凹部16eの内面に半筒状のグランド用接続電極32が形成されている。
【0063】
また、キャビティC内の第2セラミックス配線基板部12上の上側グランドプレーン22aは、第2セラミックス配線基板12上に形成された配線層(不図示)を介してグランド用接続電極32に接続されている。
【0064】
そして、図4に示すように、第1セラミックス配線基板部10の下面には、グランド用接続電極32に繋がる下側グランドプレーン23が一体的に形成されている。
【0065】
以上のように、本実施形態に係るセラミックス配線基板部5は、中央部に光半導体素子を実装するための実装領域Aを有し、光半導体素子を接続するための第1〜第4素子用電極20a〜20dと、それらに接続された第1〜第4外部接続電極30a〜30dとを備えている。そして、第1キャビティC1の底部に発光素子が実装され、第2キャビティC2の底部に受光素子が実装される。
【0066】
上側グランドプレーン22と下側グランドプレーン23との間にアルミナセラミックス(誘電体)を介して配線層(不図示)が配置されて、ストリップラインが形成されている。このようにして、発光素子が接続される第1、第2素子用電極20a,20bから配線層(不図示)を介して第1、第1外部接続電極30a,30bまでの伝送経路の特性インピーダンスは50Ωに設定される。これにより、高速信号を伝達させる経路として機能させることができる。
【0067】
なお、第3、第4素子用電極20c,20dから配線層(不図示)を介して第3、第4外部接続電極30c,30cまでの伝送経路は、発光素子の光モニタ用の受光素子に接続されるので、必ずしも厳密に特性インピーダンスを考慮する必要はない。
【0068】
次に、図5(a)及び(b)に示すように、金属シールリング40を用意する。金属シールリング40の外形は円形であり、その中央部に円形の開口部40xが設けられている。さらに、開口部40xの外周部に上側に突き出るリング状突出部42が形成されている。
【0069】
金属シールリング40は例えばコバール(鉄(Fe)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)合金)から形成される。そして、図5(a)に示すように、図3のセラミックス配線基板部5の上に金属ロウ材によって金属シールリング40を接合する。金属ロウ材としては、銀ろう(Ag−Cu(28%)合金)が好適に使用される。
【0070】
このとき、セラミックス配線基板部5の上側グランドプレーン22に半円周状の開口部22xが対向して形成されており、その開口部22xが溝として機能するため、金属ロウ材がセラミックス配線基板部5の内側に流れることが防止される。
【0071】
これにより、図5(a)に示すように、実施形態の光半導体素子用パッケージ2が得られる。図5(a)に示すように、本実施形態の光半導体素子用パッケージ2は、図3のセラミックス配線基板部5と、その上に設けられた金属シールリング40とを備えている。
【0072】
金属シールリング40は、中央部にセラミックス配線基板部5の第1〜第4素子用電極20a〜20d及び実装領域Aを露出させる開口部40xを備え、かつ開口部40xの外周部にリング状突出部42が設けられている。金属シールリング40の外周は、セラミックス配線基板部5の外周より外側に突出して配置される。
【0073】
次いで、図6(a)及び(b)に示すように、セラミックス配線基板部5の第1キャビティC1にサブマウント52を介して面発光レーザ50(発光素子)をその発光面を上側に向けて実装する。面発光レーザ50は、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)と呼ばれる。
【0074】
このとき、サブマウント52の高さを調整するなどして、面発光レーザ50の電極の高さと第1、第2素子用電極20a,20bの高さとを同一に設定する。
【0075】
また、セラミックス配線基板部5の第2キャビティC2にサブマウント62を介して受光素子60をその受光部60aを上側にして実装する。受光素子60としては、フォトダイオードが好適に使用される。受光素子60を実装する際にも、サブマウント62の高さを調整するなどして、受光素子60の電極の高さと第3、第4素子用電極20c,20dの高さとを同一に設定する。
【0076】
面発光レーザ50及び受光素子60の背面をキャビティCの底部の上側グランドプレーン22aに電気的に接続する場合は、各サブマウント52,62が導電材料から形成される。
【0077】
次いで、同じく図6(a)及び(b)に示すように、面発光レーザ50の電極と第1、第2素子用電極20a,20bとをワイヤボンディング法により金ワイヤ44で接続する。金ワイヤ44の他に銅ワイヤなどの各種の金属ワイヤを使用することができる。
【0078】
前述したように、セラミックス配線基板部5はグリーンシート法によって製造されるので、面発光レーザ50の電極と第1、第2素子用電極20a、20bとの距離を0.5〜0.7mm程度に設定することができる。従って、金ワイヤ44の長さを予備的事項のステム100を使用する場合より短く設定することができる。
【0079】
さらには、本実施形態に係るセラミックス配線基板部5では、面発光レーザ50の電極と第1、第2素子用電極20a,20bとを同一の高さに設定できるという観点からも金ワイヤ44の長さを短くすることができる。
【0080】
予備的事項のステム100では、面発光レーザ200の電極の高さと第1、第2リード100a,100bの高さとが異なるため、その分さらに金ワイヤ160の長さが長くなってしまう。
【0081】
続いて、受光素子60の電極と第3、第4素子用電極20c,20dをワイヤボンディング法により金ワイヤ44で接続する。
【0082】
次いで、図7に示すように、金属キャップ70を用意する。金属キャップ70は例えばコバール(鉄(Fe)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)合金)から形成される。
【0083】
金属キャップ70は、円筒部70aと、円筒部70aの下部に繋がるリング状接合部70bと、円筒部70aの上部を塞いで中央部に円形の透明なガラス窓72を備えた天井部70cとを備える。金属キャップ70の天井部70cは水平方向に対して所定角度で傾斜して設けられており、ガラス窓72が天井部70cと平行になって傾斜して配置されている。
【0084】
そして、図6(a)の光半導体素子用パッケージ2の金属シールリング40の上に金属キャップ70を抵抗溶接によって接合する。ここで、金属キャップ70の円筒部70aの内径は金属シールリング40のリング状突出部42の外径に対応している。
【0085】
このため、金属キャップ70の円筒部70aの内周面が金属シールリング40のリング状突出部42の外周面に当接するように配置することにより、金属キャップ70を容易に位置合わせして配置することができる。これにより、金属キャップ70の円形のガラス窓72の中心部に面発光レーザ50の発光部が位置合わせされて配置される。
【0086】
このようにして、セラミックス配線基板部5の上に金属シールリング40を介して金属キャップ70が装着される。金属シールリング40を用いることにより、金属キャップ70を抵抗溶接によって接合できると共に、金属キャップ70を面発光レーザ50に容易に位置合わせして配置することができる。
【0087】
これにより、図7に示すように、実施形態の光半導体装置1が得られる。図7に示すように、実施形態の光半導体装置1は、図5(a)の光半導体素子用パッケージ5を備えており、そのキャビティC内の実装領域Aに面発光レーザ50及び受光素子60が実装されている。
【0088】
さらに、実施形態の光半導体装置1は、面発光レーザ50及び受光素子60の各電極と第1〜第4素子用電極20a〜20dとを接続する金ワイヤ44と、金属シールリング40の上に設けられて中央部にガラス窓72を有する金属キャップ70とを備えている。金属キャップ70によって面発光レーザ50及び受光素子60が気密封止されている。
【0089】
図8の模式的側面図に示すように、実施形態の光半導体装置1は光ファイバ装置に係る実装基板80に実装される。このとき、セラミックス配線基板部5の側壁に形成された第1〜第4外部接続電極30a〜30d及びグランド用外部接続電極32の側方にはんだなどの導電性接合材74が形成されて実装基板80の接続部82に電気的に接続される。セラミックス配線基板部5の下面の各電極も導電性接合材74で実装基板80に接続される。
【0090】
このようにすることにより、セラミックス配線基板部5の第1〜第4外部接続電極30a〜30d及びグランド用外部接続電極32が実装基板80の接続部82に接続されたかどうかを側面に形成された導電性接合材74を視認することにより確認できる。
【0091】
光半導体装置1では、第1、第2外部接続電極30a,30bから配線層及び第1、第2素子用電極20a、20bを介して面発光レーザ50に電気信号が供給される。これにより、面発光レーザ50の発光部から上側に光が出射される。面発光レーザ50から出射される光は金属キャップ70のガラス窓72を透過し、外部の光ファイバに伝達される。
【0092】
このとき、面発光レーザ50から出射させる光の一部は、傾斜したガラス窓72で反射されて受光素子60の受光部60aに入射する。このようにして、面発光レーザ50から出射される光が受光素子60によってモニタされる。
【0093】
実施形態の光半導体装置1では、前述したようにセラミックス配線基板部5を採用することにより、面発光レーザ50と第1、第2素子用電極20a,20dとの距離を予備的事項のステム100を使用する場合より短くすることができる。
【0094】
従って、面発光レーザ50と第1、第2素子用電極20a,20bとを接続する金ワイヤ44の長さを短くすることができる。しかも、誘電体であるセラミックス体にグランドプレーン、素子用電極及び配線層などを形成することにより、伝送経路の特性インピーダンスを50Ωに容易に設定することができる。これにより、より高速な電気信号の伝送に対応することが可能になり、10Gbps以上の大容量光通信のアプリケーションに対応することができる。
【0095】
また、セラミックス配線基板部5を採用することにより、配線基板部内に設けられた各外部接続電極を表面実装用の実装基板に接続することができる。これにより、径が細くてハンドリング性が悪いリードを使用する必要がないので、セラミックス配線基板部5を製造する際や光半導体装置1を実装する際の生産性を向上させることができる。
【0096】
また、セラミックス配線基板部5上の金属シールリング40及び金属キャップ70は、円形状で形成されるので、円形で構築される光ファイバ装置への光結合の容易性を維持することができる。
【0097】
本実施形態では、光半導体素子用パッケージに、光半導体素子として面発光レーザ50及びそれから出射される光をモニタする受光素子60を実装して発光装置とする形態を例示している。
【0098】
その他の形態として、光半導体素子用パッケージに、外部(光ファイバ)から入射される光を受けて電気信号に変換する受光素子を実装して受光装置としてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1…光半導体装置、2…光半導体素子用パッケージ、5…セラミックス配線基板部、10…第1セラミックス配線基板部、12…第2セラミックス配線基板部、14…第3セラミックス配線基板部、16a〜16e…凹部、20a…第1素子用電極、20b…第2素子用電極、20c…第3素子用電極、20d…第4素子用電極、22,22a…上側グランドプレーン、23…下側グランドプレーン、30a…第1外部接続電極、30b…第2外部接続電極、30c…第3外部接続電極、30d…第4外部接続電極、32…グランド用外部接続電極、40…金属シールリング、22x,40x…開口部、42…リング状突出部、44…金ワイヤ、50…面発光レーザ、52,62…サブマウント、60…受光素子、60a…受光部、70…金属キャップ、70a…円筒部、70b…リング状接合部、70c…天井部、72…ガラス窓、74…導電性接合材、80…実装基板、82…接続部、A…実装領域、C…キャビティ、C1…第1キャビティ、C2…第2キャビティ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に光半導体素子を実装するための実装領域を有し、前記光半導体素子を接続するための素子用電極と、前記素子用電極に接続された外部接続電極とを備えたセラミックス配線基板部と、
前記セラミックス配線基板部の上に設けられ、中央部に前記素子用電極及び前記実装領域を露出させる開口部を備え、かつ開口部の外周部にリング状突出部が設けられた金属シールリングとを有することを特徴とする光半導体素子用パッケージ。
【請求項2】
前記セラミックス配線基板部の外形は、六角形又は八角形であることを特徴とする請求項1に記載の光半導体素子用パッケージ。
【請求項3】
前記セラミックス配線基板部の側壁の下端から上側に凹部が設けられており、前記外部接続電極は前記凹部の内面に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光半導体素子用パッケージ。
【請求項4】
前記セラミックス配線基板部の前記実装領域にキャビティが設けられており、前記光半導体素子は前記キャビティの底部にサブマウントを介して実装されること特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光半導体素子用パッケージ。
【請求項5】
前記素子用電極は、前記セラミックス配線基板部の内部に形成された配線層を介して前記外部接続電極に接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光半導体素子用パッケージ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかの光半導体素子用パッケージと、
前記実装領域に実装された前記光半導体素子と、
前記光半導体素子の電極と前記素子用電極とを接続する金属ワイヤと、
前記金属シールリングの上に設けられ、中央部にガラス窓を備えて前記光半導体素子を気密封止する金属キャップとを有することを特徴とする光半導体装置。
【請求項7】
前記セラミックス配線基板の前記実装領域にキャビティが設けられており、前記光半導体素子は前記キャビティの底部にサブマウントを介して実装され、
前記光半導体素子の電極の高さは前記素子用電極の高さと同一に設定されていることを特徴とする請求項6に記載の光半導体装置。
【請求項8】
前記金属シールリングの前記開口部及び前記金属キャップは円形であり、前記金属キャップの内径が前記金属シールリングの前記リング状突出部の外径に対応していることを特徴とする請求項6又は7に記載の光半導体装置。
【請求項9】
前記セラミックス配線基板部の側壁の下端から上側に凹部が設けられており、前記外部接続電極は前記凹部の内面に設けられており、
前記光半導体装置が実装基板に実装される際に、前記外部接続電極の側方に導電性接合材が設けられて前記実装基板に電気的に接続されることを特徴とする請求項6又は7に記載の光半導体装置。
【請求項10】
前記光半導体素子は、面発光レーザ及び該面発光レーザから出射される光をモニタする受光素子、あるいは外部から入射される光を受ける受光素子であることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか一項に記載の光半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−238640(P2012−238640A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105100(P2011−105100)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】