説明

光半導体装置

【課題】光出力の低下を防ぐことができる光半導体装置を得る。
【解決手段】半導体レーザ1に光導波路2がバットジョイント接合されている。半導体レーザ1は、InGaAsP歪量子井戸活性層5と、InGaAsP歪量子井戸活性層5の側面を覆う埋め込み層17とを有するメサ構造である。光導波路2は、InGaAsP歪量子井戸活性層5とは異なる層構造からなるAlGaInAs量子井戸光導波路層9と、AlGaInAs量子井戸光導波路層9の側面を覆う埋め込み層17とを有するメサ構造である。光導波路2のメサ幅W2は、半導体レーザ1のメサ幅W1より狭い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザなどの光半導体素子に光導波路がバットジョイント接合された光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザに光導波路がバットジョイント接合された光半導体装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような装置では、半導体レーザの活性層で発光した光が、光導波路の光導波路層を伝播する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−307867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
活性層と光導波路層は異なる層構造からなるため、光が接合部で散乱されて光導波路層の外側に漏れ、損失となる。また、光のモードが乱れて光ファイバーに光が効率よく結合しなくなる。この結果、光出力が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は光出力の低下を防ぐことができる光半導体装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光半導体装置は、光半導体素子と、前記光半導体素子にバットジョイント接合された光導波路とを備え、前記光半導体素子は、活性層と、前記活性層の側面を覆う埋め込み層とを有するメサ構造であり、前記光導波路は、前記活性層とは異なる層構造からなる光導波路層と、前記光導波路層の側面を覆う埋め込み層とを有するメサ構造であり、前記光導波路のメサ幅は、前記光半導体素子のメサ幅より狭いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、光出力の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る光半導体装置を示す上面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る光半導体装置の共振器方向の断面図である。
【図3】図1のI−Iに沿った断面図である。
【図4】図1のII−IIに沿った断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態1に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態1に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態1に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態1に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態1に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態1に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態1に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態1に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態1に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。
【図19】本発明の実施の形態1に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。
【図20】比較例に係る光半導体装置を示す上面図である。
【図21】実施の形態1と比較例の遠視野像のシミュレーション結果を示す図である。
【図22】本発明の実施の形態2に係る光半導体装置を示す上面図である。
【図23】実施の形態2と比較例の光の伝播のシミュレーション結果を示す図である。
【図24】本発明の実施の形態3に係る光半導体装置を示す上面図である。
【図25】本発明の実施の形態3に係る光半導体装置の共振器方向の断面図である。
【図26】本発明の実施の形態3に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。
【図27】本発明の実施の形態3に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。
【図28】本発明の実施の形態3に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。
【図29】本発明の実施の形態4に係る光半導体装置を示す上面図である。
【図30】実施の形態4と比較例の遠視野像のシミュレーション結果を示す図である。
【図31】本発明の実施の形態4に係る光半導体装置の変形例を示す上面図である。
【図32】本発明の実施の形態5に係る光半導体装置を示す上面図である。
【図33】図32のI−Iに沿った断面図である。
【図34】図32のII−IIに沿った断面図である。
【図35】本発明の実施の形態5に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。
【図36】本発明の実施の形態5に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。
【図37】本発明の実施の形態5に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。
【図38】本発明の実施の形態5に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。
【図39】本発明の実施の形態5に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。
【図40】実施の形態5と比較例の光の伝播のシミュレーション結果を示す図である。
【図41】実施の形態5と比較例の遠視野像のシミュレーション結果を示す図である。
【図42】本発明の実施の形態6に係る光半導体装置を示す上面図である。
【図43】図42のI−Iに沿った断面図である。
【図44】図42のII−IIに沿った断面図である。
【図45】実施の形態6と比較例の遠視野像のシミュレーション結果を示す図である。
【図46】本発明の実施の形態7に係る光半導体装置を示す上面図である。
【図47】本発明の実施の形態8に係る光半導体装置の共振器方向の断面図である。
【図48】本発明の実施の形態8に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。
【図49】本発明の実施の形態8に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。
【図50】実施の形態8と比較例の光の伝播のシミュレーション結果を示す図である。
【図51】本発明の実施の形態9に係る光半導体装置の共振器方向の断面図である。
【図52】本発明の実施の形態10に係る光半導体装置を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係る光半導体装置について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る光半導体装置を示す上面図である。同一基板上に半導体レーザ1と光導波路2が集積され、半導体レーザ1に光導波路2がバットジョイント接合されている。
【0011】
図2は、本発明の実施の形態1に係る光半導体装置の共振器方向の断面図である。半導体レーザ1において、N型InP基板3上に、N型InPクラッド層4(不純物濃度1×1018cm−3)、InGaAsP歪量子井戸活性層5、P型InPクラッド層6(不純物濃度1×1018cm−3)、P型InPクラッド層7(不純物濃度1×1018cm−3)、及びP型InGaAsコンタクト層8(不純物濃度1×1019cm−3)が順に積層されている。
【0012】
光導波路2において、N型InP基板3上に、N型InPクラッド層4、AlGaInAs量子井戸光導波路層9、P型InPクラッド層10(不純物濃度1×1018cm−3)、P型InPクラッド層7、及びP型InGaAsコンタクト層8が順に積層されている。
【0013】
半導体レーザ1においてP型InGaAsコンタクト層8上にP型電極11が設けられ、光導波路2においてP型InGaAsコンタクト層8上にSiO絶縁膜12が設けられている。N型InP基板3の裏面にN型電極13が設けられている。P型電極11及びN型電極13はTi/Pt/Auからなる。
【0014】
図3は図1のI−Iに沿った断面図であり、図4は図1のII−IIに沿った断面図である。N型InPクラッド層4、InGaAsP歪量子井戸活性層5、及びP型InPクラッド層6が、光が伝播するリッジ部を構成している。また、N型InPクラッド層4、AlGaInAs量子井戸光導波路層9、及びP型InPクラッド層10もリッジ部を構成している。これらのリッジ部の側面を、順に積層されたP型InP埋め込み層14(不純物濃度1×1018cm−3)、N型InP電流ブロック層15(不純物濃度1×1019cm−3)、及びP型InP電流ブロック層16(不純物濃度1×1018cm−3)からなる埋め込み層17が覆っている。
【0015】
InGaAsP歪量子井戸活性層5及びAlGaInAs量子井戸光導波路層9を挟んで2つの分離溝18が、埋め込み層17、P型InPクラッド層7、及びP型InGaAsコンタクト層8に設けられている。この2つの分離溝18の間において半導体レーザ1及び光導波路2はメサ構造になっている。分離溝18の外側の領域には光が伝搬しない。2つの分離溝18の間隔がメサ幅W1,W2である。本実施の形態の特徴として、光導波路2のメサ幅W2は、半導体レーザ1のメサ幅W1より狭い。
【0016】
続いて、上記の光半導体装置の製造方法を説明する。図5−19は、本発明の実施の形態1に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。図5−8,10,16は共振器方向の断面図、図9,15は上面図、図11−14,17−19は共振器方向とは垂直な方向の断面図である。
【0017】
まず、図5に示すように、N型InP基板3上に、N型InPクラッド層4、InGaAsP歪量子井戸活性層5、及びP型InPクラッド層6をMOCVD法により順に形成する。
【0018】
次に、図6に示すように、後に半導体レーザ1となる部分を覆うようにSiO絶縁膜19をパターニング形成する。
【0019】
次に、図7に示すように、SiO絶縁膜19をマスクとして用いて、P型InPクラッド層6とInGaAsP歪量子井戸活性層5の一部をドライエッチングする。そして、ウェットエッチングにより、残りのInGaAsP歪量子井戸活性層5をN型InPクラッド層4に対して選択的にエッチングする。
【0020】
次に、図8に示すように、N型InPクラッド層4上に、AlGaInAs量子井戸光導波路層9、及びP型InPクラッド層10をMOCVD法により順に形成する。
【0021】
次に、図9−11に示すように、SiO絶縁膜19を除去した後、後にリッジ部となる部分を覆うようにSiO絶縁膜20をパターニング形成する。
【0022】
次に、図12に示すように、SiO絶縁膜20をマスクとして用いて、N型InP基板3の途中までドライエッチングする。これによりリッジ部が形成される。
【0023】
次に、図13に示すように、P型InP埋め込み層14、N型InP電流ブロック層15、及びP型InP電流ブロック層16からなる埋め込み層17をMOCVD法により順に形成する。
【0024】
次に、図14に示すように、SiO絶縁膜20を除去した後、P型InPクラッド層7とP型InGaAsコンタクト層8をMOCVD法により順に形成する。
【0025】
次に、図15−17に示すように、後に分離溝18となる部分以外を覆うようにSiO絶縁膜21をパターニング形成する。この際に、光導波路2におけるSiO絶縁膜21の幅を、半導体レーザ1におけるSiO絶縁膜21の幅に比べて狭くする。
【0026】
次に、図18,19に示すように、SiO絶縁膜21をマスクとして用いて、N型InP基板3の途中までドライエッチングして、2つの分離溝18を形成する。この際に、SiO絶縁膜21を上記の形状としたため、2つの分離溝18の間において光導波路2のメサ幅は半導体レーザ1のメサ幅より狭くなる。
【0027】
その後、SiO絶縁膜21を除去し、図1−4に示すように、SiO絶縁膜12、P型電極11、及びN型電極13を形成する。以上の工程により実施の形態1に係る光半導体装置が製造される。
【0028】
続いて、実施の形態1の効果を比較例と比較して説明する。図20は、比較例に係る光半導体装置を示す上面図である。比較例では、光導波路2のメサ幅は、半導体レーザ1のメサ幅と同じである。異なる層構造からなるInGaAsP歪量子井戸活性層5とAlGaInAs量子井戸光導波路層9の接合部で光が散乱されてメサの横幅一杯に広がるため、光のモードが乱れる。
【0029】
一方、実施の形態1では、光導波路2のメサ幅が半導体レーザ1のメサ幅より狭い。従って、光が光導波路2のメサの横幅一杯に広がっても、そのメサ幅W2が狭いため、光のモードの乱れが抑制される。図21は、実施の形態1と比較例の遠視野像のシミュレーション結果を示す図である。実施の形態1の方が、水平方向の遠視野像がガウシアン分布に近い形状を示していることが分かる。よって、実施の形態1の方が光ファイバーに光が効率よく結合するため、光出力の低下を防ぐことができる。
【0030】
実施の形態2.
図22は、本発明の実施の形態2に係る光半導体装置を示す上面図である。半導体レーザ1と光導波路2の接合部の近傍において、光導波路2の埋め込み層17に、メサ幅が狭くなるくびれ22が設けられている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0031】
光導波路2のメサ幅W2が狭いほど、光のモードの乱れは抑制される。しかし、光導波路2のメサ幅W2が狭すぎると、光がメサ内に閉じ込められず、メサ外に放射され、光の損失が大きくなる。そこで、本実施の形態2では、くびれ22を設けて接合部の近傍のみメサ幅W2を狭くしている。これにより、光のモードの乱れを抑制でき、かつ光のメサ外への放射も抑制できる。
【0032】
図23は、実施の形態2と比較例の光の伝播のシミュレーション結果を示す図である。実施の形態2では、比較例に比べて光の伝播ロスが6%ほど小さくなっていることが分かる。
【0033】
実施の形態3.
図24は、本発明の実施の形態3に係る光半導体装置を示す上面図である。図25は、本発明の実施の形態3に係る光半導体装置の共振器方向の断面図である。半導体レーザ1と光導波路2の接合部の近傍において、光導波路2のP型InPクラッド層7に凹部23が設けられている。
【0034】
続いて、上記の光半導体装置の製造方法を説明する。図26−28は、本発明の実施の形態3に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。図27,28は共振器方向の断面図、図26は上面図である。
【0035】
まず、図5−19に示す工程を実施の形態1と同様に実行する。その後、SiO絶縁膜21を除去し、図26,27に示すように、後に凹部23を形成する部分以外の部分にSiO絶縁膜24をパターニング形成する。
【0036】
次に、図28に示すように、SiO絶縁膜24をマスクとして用いて、P型InPクラッド層7の途中までドライエッチングして凹部23を形成する。その後、SiO絶縁膜24を除去し、SiO絶縁膜12、P型電極11、及びN型電極13を形成する。以上の工程により実施の形態3に係る光半導体装置が製造される。
【0037】
続いて、実施の形態3の効果を説明する。異なる層構造からなるInGaAsP歪量子井戸活性層5とAlGaInAs量子井戸光導波路層9の接合部で光が散乱されて、メサの横幅だけでなく、垂直方向にも広がる。そこで、実施の形態3では凹部23を設けて、AlGaInAs量子井戸光導波路層9上のP型InPクラッド層7を薄くしている。これにより、光の垂直方向への散乱を抑制できるため、光のモードの乱れが抑制される。よって、光ファイバーに光が効率よく結合するため、光出力の低下を防ぐことができる。
【0038】
実施の形態4.
図29は、本発明の実施の形態4に係る光半導体装置を示す上面図である。実施の形態1と同様に光導波路2のメサ幅が半導体レーザ1のメサ幅より狭くなっており、かつ実施の形態3と同様に凹部23が設けられている。これにより、水平方向と垂直方向の両方の光の散乱を抑制できるため、実施の形態1と実施の形態3の効果を得ることができる。
【0039】
図30は、実施の形態4と比較例の遠視野像のシミュレーション結果を示す図である。実施の形態4の方が、水平方向と垂直方向の両方の遠視野像がガウシアン分布に近い形状を示していることが分かる。よって、実施の形態4の方が光ファイバーに光が効率よく結合するため、光出力の低下を防ぐことができる。
【0040】
図31は、本発明の実施の形態4に係る光半導体装置の変形例を示す上面図である。凹部23で反射された光が半導体レーザ1に戻ると、レーザの線幅が広くなるという弊害や、光電流−光出力特性においてキンクが発生するという弊害がある。そこで、変形例では、凹部23を半導体レーザ1の共振器方向に対して斜め45度に傾けている。これにより、凹部23で反射された光が半導体レーザ1に戻らず、導波路の外に放射されるため、上記の弊害を抑制することができる。
【0041】
実施の形態5.
図32は、本発明の実施の形態5に係る光半導体装置を示す上面図である。図33は図32のI−Iに沿った断面図であり、図34は図32のII−IIに沿った断面図である。
【0042】
実施の形態5では、屈折率の大きいAlGaInAs量子井戸光導波路層9の幅をInGaAsP歪量子井戸活性層5に比べて狭くして、InGaAsP歪量子井戸活性層5とAlGaInAs量子井戸光導波路層9の実効屈折率を一致させている。
【0043】
続いて、上記の光半導体装置の製造方法を説明する。図35−39は、本発明の実施の形態5に係る光半導体装置の製造工程を示す図である。図36は共振器方向の断面図、図35は上面図、図37−39は共振器方向とは垂直な方向の断面図である。
【0044】
まず、図5−8に示す工程を実施の形態1と同様に実行する。その後、SiO絶縁膜19を除去し、図35−37に示すように、後にリッジ部となる部分を覆うようにSiO絶縁膜24をパターニング形成する。この際に、光導波路2におけるSiO絶縁膜24の幅を、半導体レーザ1におけるSiO絶縁膜24の幅に比べて狭くする。
【0045】
次に、図38,39に示すように、SiO絶縁膜24をマスクとして用いて、N型InP基板3の途中までドライエッチングする。この際に、SiO絶縁膜24を上記の形状としたため、AlGaInAs量子井戸光導波路層9の幅がInGaAsP歪量子井戸活性層5に比べて狭くなる。そして、P型InP埋め込み層14、N型InP電流ブロック層15、及びP型InP電流ブロック層16をMOCVD法により順に形成する。その後の工程は実施の形態1と同様である。
【0046】
実施の形態5では、InGaAsP歪量子井戸活性層5とAlGaInAs量子井戸光導波路層9の幅を変えて実効屈折率を一致させるため、両者の接合部での光の散乱が減少する。よって、光の損失が小さくなり、光出力の低下を防ぐことができる。ただし、両者の幅を変えるだけでは不十分で、両者の実効屈折率を一致させる必要がある。
【0047】
図40は、実施の形態5と比較例の光の伝播のシミュレーション結果を示す図である。実施の形態5では、比較例に比べて光の伝播ロスが6%ほど小さくなっていることが分かる。
【0048】
図41は、実施の形態5と比較例の遠視野像のシミュレーション結果を示す図である。実施の形態5の方が、垂直方向の遠視野像がガウシアン分布に近い形状を示していることが分かる。よって、実施の形態5の方が光ファイバーに光が効率よく結合するため、光出力の低下を防ぐことができる。
【0049】
実施の形態6.
図42は、本発明の実施の形態6に係る光半導体装置を示す上面図である。図43は図42のI−Iに沿った断面図であり、図44は図42のII−IIに沿った断面図である。
【0050】
実施の形態1と同様に光導波路2のメサ幅が半導体レーザ1のメサ幅より狭くなっており、かつ実施の形態5と同様にInGaAsP歪量子井戸活性層5とAlGaInAs量子井戸光導波路層9の幅を変えて実効屈折率を一致させている。これにより、実施の形態1と実施の形態5の効果を得ることができる。
【0051】
図45は、実施の形態6と比較例の遠視野像のシミュレーション結果を示す図である。実施の形態6の方が、水平方向と垂直方向の両方の遠視野像がガウシアン分布に近い形状を示していることが分かる。よって、実施の形態6の方が光ファイバーに光が効率よく結合するため、光出力の低下を防ぐことができる。
【0052】
実施の形態7.
図46は、本発明の実施の形態7に係る光半導体装置を示す上面図である。実施の形態2と同様に光接合部の近傍においてくびれ22を設け、かつ実施の形態5と同様にInGaAsP歪量子井戸活性層5とAlGaInAs量子井戸光導波路層9の幅を変えて実効屈折率を一致させている。これにより、実施の形態2と実施の形態5の効果を得ることができる。
【0053】
実施の形態8.
図47は、本発明の実施の形態8に係る光半導体装置の共振器方向の断面図である。本実施の形態では、InGaAsP歪量子井戸活性層5とAlGaInAs量子井戸光導波路層9の中央の高さが一致している。
【0054】
続いて、上記の光半導体装置の製造方法を説明する。図48,49は、本発明の実施の形態8に係る光半導体装置の製造工程を示す図であり、共振器方向の断面図である。
【0055】
まず、図5−7に示す工程を実施の形態1と同様に実行する。次に、図48に示すように、N型InPクラッド層4を少しドライエッチングする。この際のエッチング深さは、AlGaInAs量子井戸光導波路層9の厚さの半分とInGaAsP歪量子井戸活性層5の厚さの半分の差である。
【0056】
次に、図49に示すように、N型InPクラッド層4上に、AlGaInAs量子井戸光導波路層9、及びP型InPクラッド層7をMOCVD法により順に形成する。この際に、上記のようにN型InPクラッド層4を少しドライエッチングしたため、InGaAsP歪量子井戸活性層5とAlGaInAs量子井戸光導波路層9の中央の高さが一致する。その後の工程は実施の形態1と同様である。
【0057】
InGaAsP歪量子井戸活性層5とAlGaInAs量子井戸光導波路層9の厚さが異なるため、従来の装置では両者の中央の高さは一致していない。従って、両者の接合部で光が散乱されて、光の損失が大きくなるという問題がある。そこで、本実施の形態では、InGaAsP歪量子井戸活性層5とAlGaInAs量子井戸光導波路層9の中央の高さを一致させている。これにより、両者の接合部での光の散乱が減少する。よって、光の損失が小さくなり、光出力の低下を防ぐことができる。ただし、InGaAsP歪量子井戸活性層5とAlGaInAs量子井戸光導波路層9の光強度分布中心の高さを一致させても、同様の効果を得ることができる。
【0058】
図50は、実施の形態8と比較例の光の伝播のシミュレーション結果を示す図である。実施の形態8では、比較例に比べて光の伝播ロスが5%ほど小さくなっていることが分かる。
【0059】
なお、InGaAsP歪量子井戸活性層5とAlGaInAs量子井戸光導波路層9の光の強度分布全体を一致させようとすると、InGaAsP歪量子井戸活性層5とAlGaInAs量子井戸光導波路層9の最適設計が困難となる。そこで、本実施の形態では、InGaAsP歪量子井戸活性層5とAlGaInAs量子井戸光導波路層9の最適設計をした上で、両者の中央の高さ又は光強度分布中心の高さを一致させている。
【0060】
実施の形態9.
図51は、本発明の実施の形態9に係る光半導体装置の共振器方向の断面図である。実施の形態1〜8の光導波路2の部分に変調器25を設けている。この場合でも実施の形態1〜8と同様の効果を得ることができる。
【0061】
実施の形態10.
図52は、本発明の実施の形態10に係る光半導体装置を示す上面図である。実施の形態1〜8の光導波路2の部分にマッハツェンダ変調器26を設けている。この場合でも実施の形態1〜8と同様の効果を得ることができる。
【0062】
上記の実施の形態1〜10では、半導体レーザ1に光導波路2がバットジョイント接合されている場合について述べたが、半導体レーザ1の代わりに半導体光増幅器などの他の光半導体素子を用いてもよい。また、光導波路2がAlGaInAs量子井戸層である場合について述べたが、半導体レーザ1の活性層5とは異なる層構造からなるInGaAsP量子井戸層であってもよい。
【0063】
また、異なる層構造を有する2種類の光導波路がバットジョイント接合されていてもよい。即ち、半導体レーザ1の代わりに他の光導波路が光導波路2にバットジョイント接合されていてもよい。この場合には、InGaAsP歪量子井戸活性層5の代わりに、AlGaInAs量子井戸光導波路層9とは異なる層構造からなる他の光導波路層が用いられる。
【符号の説明】
【0064】
1 半導体レーザ(光半導体素子)
2 光導波路
5 InGaAsP歪量子井戸活性層(活性層)
7 P型InPクラッド層(上クラッド層)
9 AlGaInAs量子井戸光導波路層(光導波路層)
17 埋め込み層
18 分離溝
22 くびれ
23 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光半導体素子と、
前記光半導体素子にバットジョイント接合された光導波路とを備え、
前記光半導体素子は、活性層と、前記活性層の側面を覆う埋め込み層とを有するメサ構造であり、
前記光導波路は、前記活性層とは異なる層構造からなる光導波路層と、前記光導波路層の側面を覆う埋め込み層とを有するメサ構造であり、
前記光導波路のメサ幅は、前記光半導体素子のメサ幅より狭いことを特徴とする光半導体装置。
【請求項2】
前記活性層及び前記光導波路層を挟んで2つの分離溝が前記埋め込み層に設けられ、
前記2つの分離溝の間において前記光半導体素子及び前記光導波路はメサ構造になっており、
前記2つの分離溝の間隔が前記メサ幅であることを特徴とする請求項1に記載の光半導体装置。
【請求項3】
前記光半導体素子と前記光導波路の接合部の近傍において、前記光導波路の前記埋め込み層に、メサ幅が狭くなるくびれが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光半導体装置。
【請求項4】
前記光半導体素子と前記光導波路の接合部の近傍において、前記光導波路の上クラッド層に凹部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光半導体装置。
【請求項5】
光半導体素子と、
前記光半導体素子にバットジョイント接合された光導波路とを備え、
前記光半導体素子は、活性層と、前記活性層の側面を覆う埋め込み層とを有するメサ構造であり、
前記光導波路は、前記活性層とは異なる層構造からなる光導波路層と、前記光導波路層の側面を覆う埋め込み層とを有するメサ構造であり、
前記光半導体素子と前記光導波路の接合部の近傍において、前記光導波路の上クラッド層に凹部が設けられていることを特徴とする光半導体装置。
【請求項6】
前記凹部は、前記光半導体素子の共振器方向に対して斜めに傾いていることを特徴とする請求項4又は5に記載の光半導体装置。
【請求項7】
前記活性層と前記光導波路層の幅を変えて両者の実効屈折率を一致させていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の光半導体装置。
【請求項8】
前記活性層と前記光導波路層の中央の高さ又は光強度分布中心の高さが一致することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の光半導体装置。
【請求項9】
前記活性層はInGaAsP量子井戸構造であり、
前記光導波路層はAlGaInAs量子井戸構造であることを特徴とする請求項8に記載の光半導体装置。
【請求項10】
光半導体素子と、
前記光半導体素子にバットジョイント接合された光導波路とを備え、
前記光半導体素子は、活性層と、前記活性層の側面を覆う埋め込み層とを有するメサ構造であり、
前記光導波路は、前記活性層とは異なる層構造からなる光導波路層と、前記光導波路層の上に設けられた上クラッド層と、前記光導波路層の側面を覆う埋め込み層とを有するメサ構造であり、
前記光半導体素子と前記光導波路の接合部の近傍において、前記光導波路の前記上クラッド層に凹部が設けられていることを特徴とする光半導体装置。
【請求項11】
光半導体素子と、
前記光半導体素子にバットジョイント接合された光導波路とを備え、
前記光半導体素子は、活性層と、前記活性層の側面を覆う埋め込み層とを有するメサ構造であり、
前記光導波路は、前記活性層とは異なる層構造からなる光導波路層と、前記光導波路層の側面を覆う埋め込み層とを有するメサ構造であり、
前記活性層と前記光導波路層の幅を変えて両者の実効屈折率を一致させていることを特徴とする光半導体装置。
【請求項12】
前記光半導体素子は他の光導波路であり、
前記活性層は、前記光導波路層とは異なる層構造からなる他の光導波路層であることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の光半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【公開番号】特開2013−115161(P2013−115161A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258462(P2011−258462)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】