説明

光受信機

【課題】電気信号のレベルの安定性を向上させることができる、光受信機を提供すること。
【解決手段】光受信機1は、光信号を受信してRF信号に変換して出力する光受信機1であって、光信号をRF信号に変換するPD素子2と、PD素子2にて変換されたRF信号のレベルを調整するAGC6と、当該光受信機1の内部で発生した現象であって、PD素子2にて変換されたRF信号のレベルに影響を与える現象を検出する検出部7と、PD素子2からRF信号を受信すると共に、検出部7の検出出力を受信し、当該受信したRF信号のレベルと検出出力のレベルとに基づいてAGC6を制御する制御部9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の信号を光信号として受信して電気信号に変換する光受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、光通信技術の進展に伴い、光ファイバを使った家庭向けのデータ通信サービスであるFTTH(Fiber To The Home)が一般家庭に普及しつつある。この光伝送システムによれば、数10km程度の無中継伝送が可能となるため、伝送システムを容易に広域化できる。この光伝送システムは、概略的には、センター側に配置した光送信機や光増幅器と、受信者側に配置した光受信機(V−ONU:Video−Optical Network Unit:映像用光加入者線終端装置)とを、光ケーブルを介して接続して構成されている。そして、光送信機にてRF信号を光信号に変換して送信し、光増幅器にてこの光信号を増幅し、この光信号を光ケーブルによる長距離伝送路を介して光受信機に送信する。この光受信機では、光信号を電気信号(RF信号)に変換して、TV受像機等の受信端末に出力する。
【0003】
図6は、従来の光受信機の回路図である。図6に示すように、従来の光受信機100は、概略的に、PD(Photo Diode)素子101、増幅器102〜104、AGC(自動利得制御:Auto Gain Controller)105、制御部106、分岐器107、出力端子108、及びモニタ出力端子109を備えて構成されている。このような構成において、外部から入力された光信号はPD素子101にてRF信号に変換される。このRF信号は、増幅器102にて増幅され、AGC105によってレベル調整された後、増幅器103、104にて多段的に増幅され、出力端子108から出力される。
【0004】
ここで、制御部106にはAGC105に出力する制御電圧Vcを規定する制御電圧特性が予め設定されている。そして、制御部106は、PD端子101から受信した光信号のレベルを演算処理して、この光信号のレベルに応じた制御電圧Vcを制御電圧特性に基づいて決定し、この制御電圧VcをAGC105に出力する。そして、AGC105では、この制御電圧Vcに応じたレベルになるように、RF信号のレベルを調整する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−312282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のPD素子101は、設置環境の影響を受けやすい。例えば、PD素子101の直流電流増幅率hFEの温度特性により、当該PD素子101から出力されるRF信号のレベルが温度によって変動する。具体的には、PD素子101の温度が高くなると、当該PD素子101から出力されるRF信号のレベルは実際のレベルよりも低くなる。また、PD素子101の温度が低くなると、当該PD素子101から出力されるRF信号のレベルは実際のレベルよりも高くなる。このように、PD素子101から出力されるRF信号のレベルは設置環境に応じて変動するので、光受信機100のRF信号のレベルの安定性に関して改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電気信号のレベルの安定性を向上させることができる、光受信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の光受信機は、光信号を受信して電気信号に変換して出力する光受信機であって、光信号を電気信号に変換する光電変換手段と、前記光電変換手段にて変換された前記電気信号のレベルを調整するレベル調整手段と、当該光受信機の内部で発生した現象であって、前記光電変換手段にて変換された前記電気信号のレベルに影響を与える現象を検出する検出手段と、前記光電変換手段から前記電気信号を受信すると共に、前記検出手段の検出出力を受信し、当該受信した前記電気信号のレベルと前記検出出力のレベルとに基づいて前記レベル調整手段を制御するレベル調整制御手段とを備える。
【0009】
また、請求項2に記載の光受信機は、請求項1に記載の光受信機において、前記検出手段は、前記光電変換手段の温度を検出する温度センサである。
【0010】
また、請求項3に記載の光受信機は、請求項1又は2に記載の光受信機において、前記レベル調整制御手段は、前記光電変換手段から前記電気信号を受信できない場合、又は前記検出手段から検出出力を受信できない場合に、当該電気信号又は当該検出出力を受信できなくなる直前の制御と同一の制御を前記レベル調整手段に行う。
【0011】
また、請求項4に記載の光受信機は、請求項1から3のいずれか一項に記載の光受信機において、所定の上限値を記憶する記憶手段を備え、前記レベル調整制御手段は、前記検出手段から受信した検出出力のレベルが閾値を越えた場合に、前記記憶手段から前記所定の上限値を取得し、当該取得した上限値に基づいて前記レベル調整手段を制御する。
【0012】
また、請求項5に記載の光受信機は、請求項1から4のいずれか一項に記載の光受信機において、前記レベル調整制御手段は、前記レベル調整手段を所定の周期で制御する場合に、当該光受信機の立ち上げ時の周期を、当該光受信機の通常時の周期よりも短くする。
【0013】
また、請求項6に記載の光受信機は、請求項1から5のいずれか一項に記載の光受信機において、前記レベル調整制御手段に関する各種の情報を出力する出力手段を備え、前記レベル調整制御手段は、前記検出手段から受信した検出出力のレベルに基づいて、前記光電変換手段の異常の有無を判定し、前記光電変換手段に異常があると判定した場合に、当該異常がある旨を示す情報を前記出力手段によって出力させる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の光受信機によれば、レベル調整制御手段は、光電変換手段から電気信号を受信すると共に、検出手段の検出出力を受信し、当該受信した電気信号のレベルと検出出力のレベルとに基づいてレベル調整手段を制御するので、電気信号のレベルに影響を与える現象により増減した電気信号のレベルを本来の電気信号のレベルに調整することができ、電気信号のレベルの安定性を向上させることができる。
【0015】
また、請求項2に記載の光受信機によれば、検出手段は、光電変換手段の温度を検出する温度センサであるので、温度の変動により増減した電気信号のレベルを本来の電気信号のレベルに調整することができ、電気信号のレベルの安定性を一層向上させることができる。
【0016】
また、請求項3に記載の光受信機によれば、レベル調整制御手段は、光電変換手段から電気信号を受信できない場合、又は検出手段から検出出力を受信できない場合に、当該電気信号又は当該検出出力を受信できなくなる直前の制御と同一の制御をレベル調整手段に行うので、受信障害等により、レベル調整制御手段が光信号を受信できなくなってからそれ以降、又は検出手段の故障等により、レベル調整制御手段が検出出力を受信できなくなってからそれ以降でも、電気信号のレベルにとって最適な状態を維持することができ、当該光受信機の異常時における電気信号のレベルの安定性を向上させることができる。
【0017】
また、請求項4に記載の光受信機によれば、レベル調整制御手段は、検出手段から受信した検出出力のレベルが閾値を越えた場合に、記憶手段から取得した上限値に基づいてレベル調整手段を制御するので、検出手段の故障等により、検出出力のレベルが急激に高くなった場合又は急激に低くなった場合に、電気信号のレベルの誤調整を抑制することができ、当該光受信機の異常時における電気信号のレベルの安定性を一層向上させることができる。
【0018】
また、請求項5に記載の光受信機によれば、レベル調整制御手段は、レベル調整手段を所定の周期で制御する場合に、当該光受信機の立ち上げ時の周期を、当該光受信機の通常時の周期よりも短くするので、電気信号のレベルに影響を与える現象が生じやすいタイミングで、電気信号のレベルを効果的に調整することができ、電気信号のレベルの安定性をさらに一層向上させることができる。
【0019】
また、請求項6に記載の光受信機によれば、レベル調整制御手段は、光電変換手段に異常があると判定した場合に、当該異常がある旨を示す情報を出力手段によって出力させるので、ユーザに対して光電変換手段の異常がある旨を報知でき、適切な対応を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態に係る光受信機の回路図である。
【図2】補正制御電圧テーブルに格納される情報の内容を例示した表である。
【図3】上限値テーブルに格納される情報の内容を例示した表である。
【図4】本実施の形態に係る光受信機が実行する処理のフローチャートである。
【図5】制御電圧出力処理のフローチャートである。
【図6】従来の光受信機の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る光受信機の本実施の形態を詳細に説明する。最初に光受信機の全体構成を説明し、次に光受信機が実行する処理について説明し、最後に本実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。なお、本実施の形態に係る光受信機の設置対象や適用対象は任意であるが、以下では、住戸の屋内に設置された光受信機に適用した場合を例として説明を行う。
【0022】
〔実施の形態〕
(構成)
図1は本実施の形態に係る光受信機の回路図である。図1に示すように、光受信機1は、PD素子2、増幅器3〜5、AGC6、検出部7、表示部8、制御部9、記憶部10、分岐器11、出力端子12、及び、モニタ出力端子13を備えて構成されている。
【0023】
PD素子2は、外部から入力された光信号を電気信号(以下、RF信号と称する)に変換する光電変換手段である。増幅器3〜5は、RF信号を増幅する増幅手段であり、増幅器3はAGC6に至る前の予備的増幅を行い、増幅器4はAGC6からの出力の予備増幅を行い、増幅器5は予備増幅後の増幅を行う。分岐器11は、増幅器5による増幅後のRF信号を出力端子12へ出力すると共に、その一部をモニタ出力端子13に分岐する。出力端子12は、分岐器11から出力されたRF信号をテレビ受像機等の後段機器に出力する。モニタ出力端子13は、分岐器11にて分岐されたRF信号や制御部9に関する情報を含む信号をモニタ用に出力する。
【0024】
ここで、AGC6は、RF信号のレベルを調整するレベル調整手段である。このAGC6は、従来の光受信機1におけるAGC6と略同様に構成することができ、例えば、制御部9から出力される制御電圧Vcに基づいて駆動される可変ATTなどを用いて構成される。
【0025】
検出部7は、光受信機1の内部で発生した現象であって、PD素子2にて変換されたRF信号のレベルに影響を与える現象を検出する検出手段である。ここで、「光受信機1の内部で発生した現象であって、PD素子2にて変換されたRF信号のレベルに影響を与える現象」としては、例えば光受信機1の内部の温度、湿度、気圧、磁気等が該当する。ただし、本実施の形態では、光受信機1の内部の温度について説明することとする。この検出部7は、例えばPD素子2の温度を検出する公知の温度センサとして構成されている。また、この検出部7の設置位置は任意であり、例えば、光受信機1の内部の温度がPD素子2の温度と近似するものとして、光受信機1の内部における任意の位置に設けてもよい(例えば、制御部9の近傍等)。あるいは、PD素子2の温度をより正確に検出するために、PD素子2の近傍に設けてもよい。
【0026】
表示部8は、制御部9に関する各種の情報を出力する出力手段である。この表示部8としては、例えばLED(Light Emitting Diode)等として構成される。
【0027】
制御部9は、PD素子2からRF信号を受信すると共に、検出部7の検出出力を受信し、当該受信したRF信号のレベルと検出出力のレベルとに基づいてAGC6を制御するレベル調整制御手段である。この制御部9は、例えば、受信したRF信号のレベルと検出出力のレベルとに基づいて制御電圧Vcを算出し、当該算出した制御電圧VcをAGC6に出力する。この制御部9は、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成される。
【0028】
記憶部10は、制御部9による制御に必要な各種のデータを記憶する記憶手段である。この記憶部10の具体的構成は任意であるが、例えば、RAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリを用いることができる。
【0029】
また、この記憶部10は、補正制御電圧テーブル10aと、上限値テーブル10bとを備えている。
【0030】
補正制御電圧テーブル10aは、後述する補正制御電圧特定情報を格納する補正制御電圧格納手段である。図2は、補正制御電圧テーブル10aに格納される情報の内容を例示した表である。図2に示すように、補正制御電圧テーブル10aには、テーブル項目「温度」、及び「補正制御電圧」に対応する情報が相互に関連付けて格納される。項目「温度」に対応して格納される情報は、温度を特定する温度特定情報であり、例えば「10℃−11℃」(10℃以上11℃未満を示す)等が格納される。項目「補正制御電圧」に対応して格納される情報は、補正制御電圧Vaを特定する補正制御電圧特定情報であり、例えば、「Va10」等が格納される。ここで、「補正制御電圧」とは、PD素子2の直流電流増幅率hFEの温度特性を含むものであって、制御部9にて算出された制御電圧Vcを補正するためのものである。
【0031】
上限値テーブル10bは、後述する上限値特定情報を格納する上限値格納手段である。図3は、上限値テーブル10bに格納される情報の内容を例示した表である。図3に示すように、上限値テーブル10bには、テーブル項目「レベル」、及び「上限値」に対応する情報が相互に関連付けて格納される。項目「レベル」に対応して格納される情報は、電気信号のレベル又は検出部7の検出出力のレベルを特定するレベル特定情報であり、例えば「電気信号のレベルが第1の閾値以上」、「検出出力のレベルが第2の閾値以上」等が格納される。項目「上限値」に対応して格納される情報は、上限値Vcmaxを特定する上限値特定情報であり、例えば、「Vcmax1」、「Vcmax2」等が格納される。
【0032】
(処理)
次に、上述のように構成された光受信機1が実行する処理について説明する。図4は、本実施の形態に係る光受信機1が実行する処理のフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。この処理は、例えば、光受信機1に電源が投入された場合に起動される。
【0033】
図4に示すように、制御部9は、光受信機1が起動してから所定時間経過したか否かを監視する(SA1)。例えば、光受信機1の立ち上げ時と通常時とに分けてAGC6を制御する場合において、制御部9は、光受信機1が起動してから所定時間(例えば5分)経過していない場合、光受信機1の立ち上げ時としてAGC6を制御する。一方、所定時間経過した場合、光受信機1の通常時としてAGC6を制御する。
【0034】
ここで、光受信機1が起動してから所定時間経過していない場合(SA1、No)、制御部9は、AGC6を制御する周期Tを周期T1とする(SA2)。
【0035】
一方で、光受信機1が起動してから所定時間経過した場合(SA1、Yes)、制御部9は、AGC6を制御する周期Tを周期T2とする(SA3)。
【0036】
ここで、これら周期T1と周期T2は、任意に設定してもよいが、本実施の形態では、周期T1を周期T2より短く設定している。すなわち、光受信機1の立ち上げ時には、温度変動が生じやすいことが想定されるため、比較的短い周期T1(例えば1分)で後述する制御電圧出力処理を実行することで、RF信号のレベルをこまめに調整する。一方、光受信機1の立ち上げ時以降には、温度が安定していることが想定されるため、比較的長い周期T2(例えば10分)で後述する制御電圧出力処理を実行することで、制御電圧出力処理による消費電力を抑制する。
【0037】
次に、制御部9は、光受信機1が起動してから周期Tが経過したか否かを監視する(SA4)。
【0038】
ここで、光受信機1が起動してから周期Tが経過していない場合(SA4、No)、制御部9は、SA1に移行し、以降上述したSA1〜SA4の処理を繰り返す。
【0039】
一方、光受信機1が起動してから周期Tが経過した場合(SA4、Yes)、制御部9は、周期Tの計測時間をクリアすると共に、制御電圧出力処理を実行する(SA5)。この制御電圧出力処理の終了後、制御部9は、SA1に移行し、以降上述したSA1〜SA5の処理を繰り返す。
【0040】
(処理−制御電圧出力処理)
次に、光受信機1が実行する制御電圧出力処理について説明する。図5は、制御電圧出力処理のフローチャートである。
【0041】
図5に示すように、制御電圧出力処理が起動されると、制御部9は、PD素子2からRF信号を受信し、及び検出部7から検出出力を受信したか否かを監視する(SB1)。
【0042】
ここで、制御部9がPD素子2からRF信号を受信し、及び検出部7から検出出力を受信した場合(SB1、Yes)、当該制御部9は、PD素子2から受信したRF信号のレベルが第1の閾値を越えたか否か、又は検出部7から受信した検出出力のレベルが第2の閾値を越えたか否かを判定する(SB2)。
【0043】
その結果、PD素子2から受信したRF信号のレベルが第1の閾値を越えていないと判定され、及び検出部7から受信した検出出力のレベルが第2の閾値を越えていないと判定された場合(SB2、No)、制御部9は、当該受信したRF信号のレベルに基づいて公知の方法により制御電圧Vc0を算出する(SB3)。
【0044】
次いで、制御部9は、記憶部10に記憶された補正制御電圧テーブル10aを参照して、検出部7にて検出された検出レベルに対応する補正制御電圧Vaを取得する(SB4)。例えば、検出部7にて検出された温度が30℃であった場合、制御部9は、補正制御電圧テーブル10aを参照して、補正制御電圧Va30を取得する。
【0045】
そして、制御部9は、RF信号のレベルに基づく制御電圧Vc0に補正制御電圧Vaを加算することにより、制御電圧Vcを算出する(SB5)。例えば、補正制御電圧Vaが補正制御電圧Va30である場合、制御部9は、制御電圧Vc=制御電圧Vc0+制御電圧Va30として制御電圧Vcを算出する。
【0046】
SB5の処理後、制御部9は、制御電圧VcをAGC6に出力する(SB6)。これにより、AGC6では、SB5にて算出した制御電圧Vcに基づいてRF信号のレベルが調整されるので、RF信号のレベルに影響を与える現象により増減したRF信号のレベルを本来のRF信号のレベルに調整することができる。
【0047】
一方で、PD素子2から受信したRF信号のレベルが第1の閾値を越えていたと判定され、又は検出部7から受信した検出出力のレベルが第2の閾値を越えていたと判定された場合(SB2、Yes)、制御部9は、記憶部10に記憶された上限値テーブル10bを参照して、上限値Vcmaxを取得する(SB7)。例えば、制御部9は、ノイズ等の影響によりPD素子2から受信したRF信号のレベルが第1の閾値を越えていたと判定された場合、上限値テーブル10bから対応する上限値Vcmax1を取得する。また、制御部9は、検出部7の故障等により検出部7にて検出された検出出力のレベルが第2の閾値を越えていたと判定された場合、上限値テーブル10bから対応する上限値Vcmax2を取得する。
【0048】
そして、制御部9は、SB7にて取得した上限値Vcmaxを制御電圧Vcとし(SB8)、SB6の処理において、この制御電圧VcをAGC6に出力する(SB6)。これにより、ノイズ等の影響によりRF信号のレベルが急激に高くなった場合若しくは急激に低くなった場合、又は検出部7の故障等により検出出力のレベルが急激に高くなった場合若しくは急激に低くなった場合でも、RF信号のレベルの誤調整を抑制することができる。
【0049】
また、SB8の処理後、制御部9は、PD素子2に異常がある旨を示す情報を表示部8によって出力させる(SB9)。例えば、制御部9は、表示部8を点灯又は点滅させる。これにより、ユーザに対してPD素子2に異常がある旨を報知できる。
【0050】
また、制御部9がPD素子2から光信号を受信しておらず、又は検出部7から検出出力を受信していない場合(SB1、No)、当該制御部9は、SB1の処理後から所定時間経過したか否かを監視する(SB10)。
【0051】
ここで、SB1の処理後から所定時間経過していない場合(SB10、No)、制御部9は、SB1に移行する。
【0052】
一方、SB1の処理後から所定時間経過した場合(SB10、Yes)、制御部9は、記憶部10からPD素子2から光信号を受信できなくなる直前の制御電圧Vcnを取得し、又は検出部7から検出出力を受信できなくなる直前の制御電圧Vcnを取得する(SB11)。例えば、制御部9は、AGC6に出力した制御電圧Vcを記憶部10に逐次記憶させる(例えばVc1、Vc2、・・・、Vc10等を記憶部10に記憶させる)。そして、制御部9は、当該制御部9とPD素子2とを接続する線路の断線等によりPD素子2から光信号を受信できない場合、又は検出部7の故障により検出部7から検出出力を受信できない場合、当該光信号又は当該検出出力を受信できなくなる直前に記憶部10に記憶された制御電圧Vcnを取得する(例えば直前に記憶されたものが制御電圧Vc10の場合、このVc10を取得する。なお、記憶部10に制御電圧Vcnが記憶されていない場合、デフォルト値を取得する)。
【0053】
そして、制御部9は、SB11にて取得した制御電圧Vcnを制御電圧Vcとし(SB12)、SB6の処理において、この制御電圧VcをAGC6に出力する(SB6)。これにより、制御部9が当該制御部9とPD素子2とを接続する線路の断線等からRF信号を受信できなくなってからそれ以降、又は検出部7の故障により検出部7から検出出力を受信できなくなってからそれ以降でも、RF信号のレベルにとって最適な状態を維持することができる。
【0054】
(効果)
このように本実施の形態によれば、制御部9は、PD素子2から光信号を受信すると共に、検出部7の検出出力を受信し、当該受信したRF信号のレベルと検出出力のレベルとに基づいてAGC6を制御するので、RF信号のレベルに影響を与える現象により増減したRF信号のレベルを本来のRF信号のレベルに調整することができ、RF信号のレベルの安定性を向上させることができる。
【0055】
また、検出部7は、PD素子2の温度を検出する温度センサであるので、温度の変動により増減したRF信号のレベルを本来のRF信号のレベルに調整することができ、RF信号のレベルの安定性を一層向上させることができる。
【0056】
また、制御部9は、PD素子2からRF信号を受信できない場合、又は検出部7から検出出力を受信できない場合に、当該RF信号又は当該検出出力を受信できなくなる直前の制御と同一の制御をAGC6に行うので、制御部9が当該制御部9とPD素子2とを接続する線路の断線等から光信号を受信できなくなってからそれ以降、又は検出部7の故障により検出部7から検出出力を受信できなくなってからそれ以降でも、RF信号のレベルにとって最適な状態を維持することができ、光受信機1の異常時におけるRF信号のレベルの安定性を向上させることができる。
【0057】
また、検出部7から受信した検出出力のレベルが第2の閾値を越えた場合に、記憶部10から取得した上限値Vcmax2に基づいてPD素子2を制御するので、検出部7の故障等により、検出出力のレベルが急激に高くなった場合又は急激に低くなった場合に、RF信号のレベルの誤調整を抑制することができ、光受信機1の異常時におけるRF信号のレベルの安定性を一層向上させることができる。
【0058】
また、制御部9は、AGC6を所定の周期で制御する場合に、光受信機1の立ち上げ時の周期を、光受信機1の通常時の周期よりも短くするので、RF信号のレベルに影響を与える現象が生じやすいタイミングで、RF信号のレベルを効果的に調整することができ、RF信号のレベルの安定性をさらに一層向上させることができる。
【0059】
また、制御部9は、PD素子2に異常があると判定した場合に、当該異常がある旨を示す情報を表示部8によって出力させるので、ユーザに対してPD素子2に異常がある旨を報知でき、適切な対応を促すことができる。
【0060】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0061】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0062】
(分散や統合について)
上述した各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成できる。
【0063】
(検出部について)
上述した本実施の形態では、検出部7は、PD素子2の温度を検出すると説明したが、例えば、PD素子2以外の機器(例えばAGC6、増幅器3〜5等)の温度も検出してもよい。具体的には、検出対象となる機器毎に検出部7を光受信機1に設け、各検出部7の検出出力を制御部9に出力させるようにする。この場合において、例えば、制御部9は、PD素子2以外の他の機器に異常が発生した場合に、当該他の機器に異常がある旨を示す情報を表示部8によって出力させてもよい。具体的には、制御部9は、記憶部10に記憶された公知の診断ソフトウェアを用いて当該制御部9を診断したことにより当該制御部9の異常を発見した場合に、表示部8を点灯又は点滅させる。これにより、ユーザに対して他の機器に異常がある旨を報知できる。
【0064】
また、上述した本実施の形態では、検出部7は温度センサにて構成されると説明したが、これに限られない。例えば、この検出部7は、光受信機1の内部で発生した現象であって、PD素子2にて変換されたRF信号のレベルに影響を与える現象を検出できるものであればよい。具体的には、この検出部7は、湿度を測定する湿度センサ、気圧を測定する気圧センサ、磁気を測定する磁気センサ等として構成されてもよい。
【0065】
また、検出部7は、上述した二以上のセンサを任意の組み合わせで構成されてもよい。例えば、本実施の形態では、温度センサにて構成されると説明したが、例えば、温度センサと湿度センサとを組み合わせて構成されてもよい。これにより、RF信号のレベル変動を一層抑制することができる。
【0066】
(記憶部について)
上述した本実施の形態では、記憶部10は、上限値特定情報を格納する上限値テーブル10bを備えると説明したが、例えば、下限値Vcminを特定する下限値特定情報を格納する下限値テーブルも備えてもよい。具体的には、この下限値テーブルは、テーブル項目「レベル」、及び「下限値」に対応する情報が相互に関連付けて格納される。ここで、テーブル項目「レベル」に対応する格納される情報は、レベル特定情報であり、例えば「RF信号のレベルが第3の閾値以下」、「検出出力のレベルが第4の閾値以下」等が格納される。また、項目「下限値」に対応して格納される情報は、下限値特定情報であり、例えば、「Vcmin1」、「Vcmin2」等が格納される。
【0067】
(光受信機が実行する処理について)
上述した本実施の形態では、制御部9は、光受信機1が起動してから所定時間経過した場合とそうでない場合とで異なる周期でAGC6を制御すると説明したが、これに限られない。例えば、制御部9は、制御電圧Vcの変動等に応じてAGC6を制御してもよい。具体的には、制御部9は、当該制御部9から出力する制御電圧Vcと直前に出力された制御電圧Vcとの差の絶対値が所定値以内であるか否かを判定する(SA1)。ここで、PD素子2の急激な温度上昇等により、これらの差の絶対値が所定値以内でないと判定された場合(SA1、No)、制御部9は、SA2の処理において周期Tを周期T1(例えば1分間隔等)とする。一方で、これらの差の絶対値が所定値以内であると判定された場合(SA1、Yes)、制御部9は、SA3の処理において周期Tを周期T2とする(例えば1時間間隔等)。これにより、光受信機1のRF信号のレベルに影響を与える現象が生じた場合に、RF信号のレベルを一層効果的に調整することができる。
【0068】
(制御電圧出力処理について)
上述した本実施の形態では、SB3〜SB5の処理において、制御部9は、PD素子2から受信した光信号のレベルと検出部7から受信した検出出力のレベルとに基づいて制御電圧Vcを算出すると説明したが、これに限られない。例えば、制御部9は、検出出力のレベルに基づく制御機能を必要に応じて遮断できるようにしてもよい。このため、例えば、検出出力のレベルに基づく制御を行うか否かの選択スイッチを光受信機1に設け、この選択スイッチを介して、検出出力のレベルに基づく制御を行わないことが選択されている場合には、制御部9は、PD素子から光信号を受信したか否かのみを監視し、この光信号に基づく制御のみを実行する。これにより、ユーザの多様なニーズに応じた制御を実行することができる。
【符号の説明】
【0069】
1、100 光受信機
2、101 PD素子
3、4、5、102、103、104 増幅器
6、105 AGC
7 検出部
8 表示部
9、106 制御部
10 記憶部
10a 補正制御電圧テーブル
10b 上限値テーブル
11、107 分岐器
12、108 出力端子
13、109 モニタ出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を受信して電気信号に変換して出力する光受信機であって、
光信号を電気信号に変換する光電変換手段と、
前記光電変換手段にて変換された前記電気信号のレベルを調整するレベル調整手段と、
当該光受信機の内部で発生した現象であって、前記光電変換手段にて変換された前記電気信号のレベルに影響を与える現象を検出する検出手段と、
前記光電変換手段から前記電気信号を受信すると共に、前記検出手段の検出出力を受信し、当該受信した前記電気信号のレベルと前記検出出力のレベルとに基づいて前記レベル調整手段を制御するレベル調整制御手段と、
を備えた光受信機。
【請求項2】
前記検出手段は、前記光電変換手段の温度を検出する温度センサである、
請求項1に記載の光受信機。
【請求項3】
前記レベル調整制御手段は、
前記光電変換手段から前記電気信号を受信できない場合、又は前記検出手段から検出出力を受信できない場合に、当該電気信号又は当該検出出力を受信できなくなる直前の制御と同一の制御を前記レベル調整手段に行う、
請求項1又は2に記載の光受信機。
【請求項4】
所定の上限値を記憶する記憶手段を備え、
前記レベル調整制御手段は、
前記検出手段から受信した検出出力のレベルが閾値を越えた場合に、前記記憶手段から前記所定の上限値を取得し、当該取得した上限値に基づいて前記レベル調整手段を制御する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の光受信機。
【請求項5】
前記レベル調整制御手段は、
前記レベル調整手段を所定の周期で制御する場合に、当該光受信機の立ち上げ時の周期を、当該光受信機の通常時の周期よりも短くする、
請求項1から4のいずれか一項に記載の光受信機。
【請求項6】
前記レベル調整制御手段に関する各種の情報を出力する出力手段を備え、
前記レベル調整制御手段は、
前記検出手段から受信した検出出力のレベルに基づいて、前記光電変換手段の異常の有無を判定し、
前記光電変換手段に異常があると判定した場合に、当該異常がある旨を示す情報を前記出力手段によって出力させる、
請求項1から5のいずれか一項に記載の光受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−205003(P2012−205003A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66451(P2011−66451)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】