説明

光多重散乱性酸化チタンとその複合体

【課題】全紫外線領域を遮蔽できるようにするとともに、粒子による光の多重散乱や反射光の干渉や位相のずれなどによって光散乱性光沢を出して各種の化粧品特性を付与し、また写真、VTR,ハイビジョンなど撮影条件において、被写体の皮膚の全反射(白浮き)を防止し、ミー散乱により毛根やしわを見えにくくさせる酸化チタン超微粒子を提供する。
【解決手段】光散乱性酸化チタンは、鉄の金属有機化合物を酸化チタン粒子に吸着させて、脱脂したのち大気圧プラズマ、中、低圧プラズマ、真空紫外線、加熱などによって有機官能基を完全に分解してFe原子を酸化チタン結晶面に定着させた球状ないし自形酸化チタンをまし、又はこれらの粒子の表面に酸化珪素膜を1〜10nmの膜厚で完全に被覆した光散乱性酸化チタンを主体とする粉体であり、一次粒子径が10〜1000nmで二次粒子を形成しないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光多重散乱性ナノ空間イオン操作酸化チタンとその複合体に関し、基礎化粧品、メイクアップ化粧品、粉白粉、整髪料、容器、ガラス製品、プラスチック成形体、色素分散インキ、インクジェットインキ、塗料、フラットパネルディスプレイ、FED分散体、繊維、織物、紙、電子デバイス、フィルターの群から選択される複合体に適用する。
【背景技術】
【0002】
従来、パール光発光材料は無機微粒子、例えば雲母に酸化チタンなどを成膜したり、または、アルミナ、シリカ、炭酸塩、たんぱく質などを成膜した複屈折可能な粒子などが代表的であったが、これらは低屈折率層を高屈折率粒子に成膜して光を多重散乱させ光の屈折とそれにともなう光の干渉によって位相のずれを利用して光散乱性光沢を出すことが特徴であり、真珠など一部を除き多くは平板状の構造をなしている。また、天然には光散乱性光沢を呈するセリサイトや雲母がある。
【0003】
一方、発明者らは、高温熱プラズマ法によって、鉄またはアルミニウムを注入した球状酸化チタンが光散乱性光沢を出すことを確認しており、すでにファンデーションなどの化粧料に使用している。
【0004】
無機系の光散乱性光沢発現材料のうち、最も著名なチタンマイカでは、酸化チタン量を15〜25重量%粒子表面にコーティングしているが、それ自身が紫外線遮蔽材料としては完全なものではない。特に酸化チタンでは320nm以下の紫外線を遮蔽するにとどまっている。また、核となる粒子顔料級酸化チタン(粒子径0.1〜0.4μm)であれば、紫外線の遮蔽は期待できないことが判明している。純粋な酸化チタン(以下「酸化チタン、TiO」)は、UV−A領域に吸収を持っていないという欠点を持つ。
【0005】
高温熱プラズマ法によって得られる、鉄またはアルミニウムを注入した球状酸化チタンは、その製造方法が極めて熟練を要し、かつ連続運転ができないこと、製造能力が低いこと、プラズマ中の反応が制御できにくく発色の調整ができにくいこと、高価であることなどから、化粧品の分野でも少量生産にしか向かない素材であった。
【0006】
このように、すべての紫外線を遮蔽でき、単独で化粧品のポイントメイクやトップコートとして使われたとき、のびのよさ、滑らかさ、目に対する安全性、毛穴など皮膚の醜い部分を綺麗にカバーでき、なおかつ汗に強い皮脂を選択的に強く吸着する光多重散乱性を呈し、同時に活性酸素を産生しない微粒子粉体はゾルゲル法によってでも提供されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、金属有機化合物を有機溶剤に溶解させた後、表面処理されていない球状酸化チタン粒子にこれを吸着させて、脱脂したのち大気圧、中・低圧、低圧プラズマ、真空紫外線などのイオンや電子の衝突によって有機官能基を破断・分解して金属または金属−酸素の骨格のみを酸化チタン結晶面に注入させる方法により、酸化チタン母結晶面に異種の金属光バンドギャップを新たに生じせしめ、全紫外線領域を遮蔽できるようにすること、ならびに得られた粒子が多重散乱や粒子内部での光の吸収による反射光の干渉や位相のずれなどの物理現象によってパールやオパールに類似の光多重散乱性を皮膚や物体に与えること、また、プラズマ処理による粒子の滑らかさ、のびの良さ、皮脂の吸着性と汗に対する粒子の脱落抵抗力、種々の肌に対する分散性、写真、VTR,ハイビションなど撮影条件において、被写体の皮膚の全反射(白浮き)を防止し、ミー散乱により毛根やしわを見えにくくさせる酸化チタン超微粒子を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明はこれら化粧料の提供の記載に限定して解釈されない。すなわち、10−100nmの粒子サイズのいわゆるナノ粒子は、透明性を各種の物質・物体に付与することができ、完全な分散体を構成させた後可視・紫外線を遮蔽する複合体すなわち、自動車用ガラス、医薬品容器、昆虫防御フィルター、コンタクトレンズ、黄斑防御レンズ、白内障レンズ、
水性塗料、フラットパネルディスプレイ用フィルムコーティング体、建築用大型ガラス、各種印刷インキ、テキスタイル、日傘、UV遮蔽防止、太陽電池、宇宙航空機用光線防御剤、PETボトル、食品包装材料、化粧品容器、そのほか幅広い応用分野に本発明の光線遮蔽効果と極めて均質な分散薄膜を付与した複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の紫外線遮蔽粉体は、アナターゼ型の単結晶粒子、ルチル型の単結晶粒子、ブルッカイト型の単結晶粒子又はこれらの混合粒子を主体とする表面処理が全く成されていない酸化チタン粒子であって、前記粒子はアルミニウム、鉄、ジルコニウム、シリコンなどの金属イオンを酸化チタンに対して0.05〜2.5重量%注入した金属注入型酸化チタン粒子で且つ一次粒子径が10〜1000nmで二次粒子を形成しないことを特徴とし、また光散乱性光沢を単独で皮膚に与える紫外線全波長遮蔽粉体であって、球状をなし汗に強く化粧崩れを防止し、潤滑で毛根など皮膚の組織を際立たせるテクスチャーを隠蔽し写真撮影、ビデオ撮影、ハイビジョン撮影においてきわめて繊細な皮膚表面を提供することを特徴とする。
【0010】
金属有機化合物を酸化チタン結晶の表面又はその近傍に吸着させるには、減圧下でなくても低濃度なら可能であるが自由に深部まで物質を移動させることはできない。発明者らは、プラズマや紫外線を利用して有機金属化合物吸着後、単純に分解を試みたが有機物の臭気及び未分解物が溶解析出され、安全面と品質面で大きな課題となった。そのため、化粧料に配合する目的においては徹底的な不純物除去が最大の問題となるため、酸化チタン粒子の比較的深部まで金属有機化合物を注入し、なおかつ金属または金属イオンを結晶面に固定後、残留臭気やアレルゲンを残さない厳密な製造方法を提供し、極めて安全な光多重散乱性酸化チタンを提供することを特徴とする。
【0011】
発明者らが開発した従来の技術では酸化チタンそのものもプラズマ合成を同時に行うので製造量がプラズマ装置の能力に限定される。また、熱プラズマ中ではゴム製のOリングがプラズマ蒸発し、製造された粒子表面に再吸着され、その臭気が容易に識別できることもあり、ゴムの官能基を除去するためには有機物で洗浄しなければならないこともある。これら有機官能基はラジカルであり皮膚やDNAに悪影響を及ぼす可能性が強いため、より低温で金属注入するシステムの開発を提供するとともに水相にも油相にも界面活性剤なしに高分散できる表面状態と該粒子を分散した光散乱性の高い透明感のある化粧料を提供することを目的としている。
【0012】
すなわち、請求項1から請求項4記載の紫外線遮蔽可能な光多重散乱性酸化チタン粉体は、結晶格子中に捕獲された鉄又はアルミニウムなどの金属イオンによる酸素吸収性を持ち、さらに紫外線波長域において▲1▼280〜310nm▲2▼320〜350nm、及び▲3▼360〜390nmにバックグラウンドの高い極大吸収を有し、さらに可視光線領域に高い吸収能を同時に有する酸化チタン超微粒子であって、二次粒子を形成しない多くの媒質に高分散可能な超微粒子を主体とする粉体である。
【0013】
請求項1から請求項4記載の光散乱性酸化チタン粉体では、前記鉄またはアルミニウムイオンは、不飽和状態で低次の酸化数状態であることが好ましい。該粉体は、請求項1がら請求項4記載の酸化チタン粒子が低次酸化され結晶格子中に捕獲された2価又は3価の金属イオンの群から選択される少なくとも1種が不飽和状態で低次酸化され、さらに広い光学的ワイドバンドギャップを付与せられ、200〜600nmまでの光線を同時に遮蔽できる酸化チタン超微粒子を主体とする粉体である。
【0014】
前記の粉体では、鉄の金属有機化合物が、完全にエタノールなどの極性溶剤に溶解し、加水分解を受けない安定した構造を呈していることが望ましい。さらに、プラズマ、紫外線、電子線などの前駆体の創製に際して、それらの処理条件においては、粉体が二次凝集を起こさないようにするため、反応チャンバー内で粒子を超音波ホーンや高速回転デバイス、例えばヘンシェルミキサーなどによって単粒子にまで分解することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に実施形態と実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。
【0016】
本発明に係る光散乱性酸化チタンは、酸化チタン単結晶粒子を主体とする酸化チタン粉体であって、前記粒子は鉄またはアルミニウムなどのイオンを酸化チタンに対して0.05〜2.5重量%注入した金属イオン注入酸化チタン粒子で且つ一次粒子径が10〜1000nmで二次粒子を形成しないことを特徴とする(以下イオン注入型という)。ここで、酸化チタン単結晶粒子は、アナターゼ型の単結晶粒子、ルチル型の単結晶粒子、ブルッカイト型の単結晶粒子又はこれらの混合粒子である。イオン注入型酸化チタン母結晶はゾルゲル法酸化チタン、酸化燃焼型酸化チタン、プラズマ合成酸化チタン、水酸化チタンなどから得られた表面処理が全くなされていない酸化チタンとする。ゾルゲル法酸化チタン粒子とは、金属アルコキシチタネートを加水分解し得られた粒子で構成されている。
【0017】
また、本発明に係る光多重散乱性酸化チタンは、酸化チタン単結晶粒子を主体とする酸化チタン粉体であって、前記粒子は本発明の発明者らがすでに出願した薄膜形成粒子である該粒子表面に酸化珪素膜を1〜10nmの膜厚で被覆形成し且つ金属イオンを酸化チタンに対して0.05〜2.5重量%注入したイオン注入酸化チタン粒子で、一次粒子径が10〜000nmで二次粒子を形成しないものであっても良い。
【0018】
ここでイオン注入型の酸化チタン粒子は、光触媒効果を発揮し、しかもイオン注入型でルチル型の酸化チタン粒子はゼータ電位に基づく負の反発効果が弱く水に対して凝集体を形成する。したがって、酸化珪素膜で粒子表面を被覆することが光触媒効果を抑止するために必要であり、またゼータ電位に基づく負の反発効果を有する酸化珪素膜は、凝集体の形成を防止する。さらに、鉄やアルミニウムイオン注入や酸化珪素膜で粒子を被覆するため、粒子自体は、ゾルゲル法で製造した酸化チタンを含め、広く適用することが可能である。
【0019】
酸化チタン単結晶粒子とするのは、一次粒孑の粒子形状を均一化させ、且つ球形に近づけるためである。一次粒子径を10〜1000nmと制御することで、単結晶粒子の自形結晶成長を適度にとどめて球状に近いものとすることができ、粒子のアスペクト比を小さくすることができる。一次粒子径が10nm未満の場合には、粉体のハンドリングが難しくなり、また粒子での酸化チタン/酸化珪素の体積比が小さくなることから必ずしも酸化チタン本来の特性を引き出すことにつながらないが技術的に10nm以下の粒子が本発明の技術の範囲外であるということではなく、一般に販売されている酸化チタンの粒子サイズにより規定した物である。一方、一次粒子径が300nmを超えると紫外線遮蔽効果が薄れるが、可視光線や一部の赤外線の散乱反射特製は飛躍的に改善される。
【0020】
本発明では、一次粒子径を10〜1000nmと制御した上で、少なくとも20〜50nm、100〜300nm及び300nmを超える粒度範囲に正規分布を持たせることが好ましい。このような粒度分布を持たせる理由は、最小粒径範囲でレイリー散乱、それ以上の範囲で紫外線から可視光線をミー散乱させるようにしたものである。
【0021】
本発明では、酸化チタンの出発原料としてイソプロピルチタネートをゾルゲル法を用いて加水分解させて得た酸化チタン粒子に、酸化チタンの結晶格子中に鉄やアルミニウムのアセチルアセトナートなどの化合物を用いイオン注入するにあたり、通常は単なる吸着手段や強制吸着手段を採るのに対して、金属イオンの媒質中での溶解度を金属として4重量%程度から15重量%以上に高め、さらに大略1.1〜1.5オングストロームスクエア程度の酸化チタン結晶格子中に注入可能な分子サイズとして有機官能基を分断させる必要があリプラズマなどの処理によって、所定量の金属イオンを注入する。その結果結晶格子中に大きな不純物準位を生じさせ、光バンドギャップ及びエレクトロンギャップを発現させ、紫外線全域に3ヵ所、特に▲1▼280〜310nm、▲2▼320〜350nm及び▲3▼360〜390nmの各領域に極大吸収を持ち、同時に注入された金属イオンが光散乱を起こして光干渉が起きて肉眼で識別できる明らかな光散乱性光沢を発現するものである。特に▲2▼340〜350nm及び▲3▼360〜380nmの各領域の極大吸収は、顔料級酸化チタンが持ち合わせていないものである。
【0022】
また、鉄イオンを酸化チタンに対して0.05〜2.5重量%注入することで、遮蔽域の拡大が調整できる。なお、鉄イオンは酸化チタンの結晶格子中に固溶した形で注入される。注入量が0.05重量%未満であると遮蔽域の拡大幅が小さく、5.5重量%を超えると固溶域を超えることがある。アルミニウムイオンの場合には、さらに多くの量が結晶格子中に注入される。
【0023】
酸化チタン粒子に注入された鉄イオンは、低次の酸化数状態であることが好ましい。低次の酸化数状態とすることで、400nm以上の吸収が増大し、遮蔽域を拡大することができるからである。
【0024】
また、本発明では、上記バンドギャップによって、粒子表面を操作し、粒子の等電位点又は中性付近のゼータ電位を大きくマイナスサイドにシフトさせ、溶媒に対して分散性を一挙に高めたものである。本発明では、さらに金属イオン注入酸化チタン表面に、酸化チタンよりも光屈折率の低い酸化珪素膜を1〜10nmの膜厚で成膜することで、さらに光の反射効率を高めると同時に、シラノール基を個々の粒子に結合させ、全てマイナスに帯電させることにより粒子を単体分離させたものである。ここで、酸化珪素膜はアモルファスシリカ膜である。
【0025】
さらにこの酸化珪素膜はゾルゲル法で成膜した場合に残存するOH基やアルキル基等の残留官能基を持たないかもしくは故意に有機官能基を残留させたプラズマ酸化珪素膜である。残留官能基を有さない酸化珪素膜は、表面電位を粒子表面全面にわたって均一化することができ、良好な水系分散状態を実現し且つその分散状態を安定化させることができる。残留官能基を残留した酸化珪素膜は、炭化水素系有機物質に対して良好な分散状態を実現し且つその分散状態を安定化させることができる。したがって、この酸化珪素膜はイオン注入酸化鉄粒子表面を完全に被覆することが好ましい。酸化珪素膜をほどこす理由は、光触媒作用の抑止およびゼータ電位を負に整えるのみならず、酸化珪素が酸化チタンよりも屈折率が小さいために酸化珪素膜がどんなに薄くとも光を散乱反射するため、酸化チタン粒子単体以上に光の反射効率を高め、光散乱性光沢を明らかに生むことができるからである。
【0026】
酸化珪素膜を1〜10nmの膜厚とする理由は次の通りである。10nmを超えると粒子における酸化チタン粒子の体積割合を小さくせざるを得ず、酸化チタンが本来有する特性を発揮しえなくなるからである。一方、酸化珪素膜の膜厚の下限は、酸化珪素の4面体の1ユニット層が成膜されたときの膜厚である0.3nmである。しかし、酸化チタン粒子の表面全てを完全に酸化珪素で被覆するためには、0.3nmの酸化珪素膜で被覆すると被覆不良箇所の発生のおそれがあり、また膜厚分析法の確立が難しい。そこで、被覆不良箇所の発生抑止と分析手段の観点から、1nm以上の膜厚とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。球状超微粒子酸化チタン結晶格子中に、鉄などの不純物準位の比較的高いイオンを注入することにより、従来280nm〜320nmに1つしかなかった紫外線最大吸収を▲1▼280nm〜310nm、▲2▼320nm〜350nm、▲3▼360nm〜390nmにそれぞれ最大吸収をもち、光バンドギャップ、エレクトロンギャップなど、本来の純粋鉱物結晶が持ちえなかった広範囲な光遮蔽と光多重散乱特性が発揮できるようにした。同時に皮膚表面に薄膜コートしたとき光散乱性光沢を強く発現する。このときの使用量は、およそ、数10mg程度で顔面の保護膜が形成できる。また、触感は滑らかで汗に強く真夏でも化粧崩れを発生させにくい。したがって、非常に機能性が高く、またシリカコートした光散乱性酸化チタンはさらに水系でも溶剤系でも分散性がよく様々な応用が可能となった。また、皮脂を酸化させないため皮脂の主成分であるスクワレンがステロイド構造体に変化するのを防御でき、安全衛生性にすぐれる。
【0028】
同時に、光の散乱を高め、数10nmの球状超微粒子で起きるレイリー散乱とさらに広い粒子範囲で起きるミー散乱が得られるため、ラジカル反応が危険視される活性酸素の抑制ができる。また、注入イオンの活性力によって、たとえ活性酸素が発生しても即座に吸着固定できるため、容器内にラジカルが侵入し、内容物を変質することを防ぐことができる。
【0029】
さらに、光散乱性酸化チタンそのものの機能もさることながら、ファンデーションや下地クリームに混合することによって、さらに肌への密着度が増し滑らかな肌つくりと透明感を提供できる。そのうえ、単色使用も出来るが、カラーメイクアップの前に塗ることによってメイクアップの発色と持続性を著しく高めることが出来る。また、光散乱効果により、肌のきめを美しく見せ小じわや毛穴などの女性特有の肌の悩みを解消することが出来る。
【0030】
本発明の光散乱性酸化チタンは、顔だけでなく手、腕、デコルテ、首足など全身使用が可能で、モデルや女優などのプロ仕様の撮影にも光源の全反射を抑えて白浮きさせない美しく上品な皮膚を提供でき、従来のミクロンサイズ以上の粗い粒子の光散乱性反射のチタンマイカなどに比べ画期的な特性を与えることが出来る。
【0031】
本発明の光散乱性酸化チタンは、化粧品以外の分野において、その高い分散特性により容易に媒質に分散ができるため、純水、極性溶剤、油剤および表面の官能基の調整を行えば非極性溶剤の一部に界面活性剤なしに凝集体を形成せずに分散が可能で、透明でありながら紫外線から可視部の紫外線側半分の領域において優れた光遮蔽物質を複合化することが出来る。また、複合材料としてコーティング剤だけでなく、該コーティング剤を薄膜形成させ一体化された多くの光劣化をさせない機能性複合材料を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明は、下記の実施例に代表される酸化チタン結晶格子中への有機金属化合物の注入と不要な分子鎖のプラズマ等による分解除去により、従来熱プラズマ法でなければなしえなかったイオンドーピングを提供するものであるが、以下に示した発明の様態に限定して解釈されるものではない。
【実施例】
【0033】
(実施例1)
実施例1においては、出発原料の酸化チタンは、ゾルゲル法によって得られた平均粒子径200nmの酸化チタン微粒子を用いた。この酸化チタンは、305〜310nmに極大吸収を持ち、320nmより長波長側には吸収はない。また、それ自身を皮膚にこすり付けると多少の輝きはあるが、実際に皮膚に使うと白浮きが発生してしまう。また、当然ながら活性酸素が発生する。流動性は悪く、さらに水に対する分散は、超音波を用いてもいったんは分散するが、沈降速度は速い。単純にこの酸化チタン粒子を純水中に落下させると即座に急速沈降する。この粒子に、試薬特級の三価の鉄アセチルアセトナート(株式会社同仁化学研究所製)を、エタノールに溶解した後、Feとして1〜3重量%になるように、酸化チタン粒子に吸着させた。そのあと、溶剤を脱脂して乾燥した後、粒子をキャリアガスHeで回転させることができる大気圧プラズマ装置に導入し、1〜10分間He−O混合ガスを用いてプラズマを発生せしめ処理を行った。その結果、鉄の注入比率が1重量%の時には酸化チタンは黄色味を帯びた色調に変化した。3重量%では、濃いベージュ色となった。触感は滑らかで、油脂を表面に処理しなくても化粧後に指で十分にのばせる状態であった。一度に使用した平均重量はやく50mgでほぼ完全にポイントメイクができ顔面はきわめて綺麗なパール光沢が発現した。また、皮脂の吸着が良好で、日中の使用においても汗で化粧が流れ落ちることはなかった。また、KBr法によるUV−VIS測定結果では、紫外部の極大吸収は305、345、378nmの3箇所が認められ可視部はおおよそ450nmまで遮蔽できた。
【0034】
実施例1で得た光散乱性酸化チタン球状超微粒子の粒度分布は、200nmに個体数分布最大ピークを有し、100〜300nmに重量分布最大ピークを有している。分散試験では、純水に投入したとき緩やかに分散しながら沈降することが観察された。超音波を使用したときは完全に分散し光散乱機能(レイリー散乱およびミー散乱)が著しく高まり、透明感が高いものであった。
【0035】
実施例1で得た光散乱性酸化チタン球状超微粒子は、上記の製造方法ではアセチルアセトナート(以下「AA」)の残留官能基が強く残ったり、皮膚刺激を発生することがあった。一般には刺激性鉄有機化合物の存在も知られており、ほとんどAA残留分を残さないことが化粧料には望まれるため、エタノールによる溶出試験を行った。この結果、プラズマ照射条件によってはAAが20−10ppmに達することがあった。この原因はプラズマ中でのAAの分解が不十分であったこととプラズマ下流側での分解官能基の当該酸化チタン粒子への再吸着による。そのためAA残留成分を1ppmになるまでエタノール洗浄を実施した。その結果、AAは特有の赤色吸収部での測定で0.1ppm以下に出来た。しかし、得られた当該酸化チタンは流動性が悪化し、反射率がやや低下した。
【0036】
(実施例2)
実施例2においては、出発原料の酸化チタンは、実施例1と同じ製品のゾルゲル法によって得られた平均粒子径200nmの酸化チタン微粒子を用いた。この粒子に、試薬特級の三価の鉄アセチルアセトナート(株式会社同仁化学研究所製)をさらに15%以上溶解させないと吸着工程において、エタノール量が非常に大きくなる。そのため、先ず第一に鉄AAの溶解度を無視して15%固形分を作るようにエタノール100部に対し鉄を15部(Feとして)の比率で鉄AAを混合し、攪拌溶解しながら炭酸ガスバランス中で真空紫外線184〜163nmを3時間照射し溶解した。その結果、溶解できなかった固形分を分離し秤量した結果10.7重量%の鉄含有量となった。これは通常の溶解度の2.7倍であった。この溶液を23.4gとり、酸化チタン97.5gに含浸させつつ、真空チャンバー内で1時間保持し完全に粒子に当該イオンを吸着させた。
さらに、イオン吸着できなかった固形分を除去するためミリポアフィルターを用いて数回ろ過し、固液分離し液中の鉄分を測定した。その結果、酸化チタン結晶内に注入できた鉄の量は2.20重量%であった。さらに、イオン注入した酸化チタンを65℃で2時間乾燥した後、超音波を用いてエタノール洗浄した。その結果、最終的にFeとして2.0重量%となった。実施例1の従来法では結果的に鉄は0.6重量%であった。この前駆体であるイオン注入酸化チタンをアルゴン・酸素をソースガスとするマイクロ波プラズマの下流側に吹き込み強く酸化した。この作業を数回繰り返した結果、ほとんど臭気が感じられない状態となり反応を停止した。得られた酸化チタンは淡茶色であったが肌に塗ると明瞭なパール色に似た反射光を示した。流動性は非常によく、油脂を全く混合しなくても皮膚に滑らかに乗り、素肌に薄く被覆させた後、3時間テニスを行い皮膚からの該粒子の脱落試験を延べ20人のエキスパートサンプルで実施した。
その結果、全員が皮膚から排出されえた汗によって当該発明の粒子の脱落は認められず、強い吸着特製と紫外線による日焼けの防御が立証された。また、長期使用試験を行った結果、当該粒子を直接皮膚に使用した場合、1年後には日焼けによるくすみや色素沈着が大幅に減少した。
【0037】
(実施例3)
実施例3においては、出発原科の酸化チタンは、東邦チタニウム製造株式会社製平均粒子径200nmの球状酸化チタン微粒子を用いた。この酸化チタンは、305〜310nmに極大吸収を持ち、320nmより長波長側には吸収はない。また、それ自身を皮膚にこすり付けると白い輝きはあるが、実際に皮膚に使うと白浮きが発生しざらつきがある。また、当然ながら活性酸素が発生する。流動性は悪く、さらに水に対する分散は、超音波を用いてもいったんは分散するが、沈降速度は速い。単純にこの酸化チタン粒子を純水中に落下させると即座に急速沈降する。この粒子に、試薬特級のAlアセチルアセトナート(以下ALAA)(和光純薬工業株式会社製)を、15重量%以上溶解させるため、先ず第一にALAAの溶解度を無視して20重量%固形分を作るようにエタノール100部に対しALAAを20部(Alとして)の比率でALAAを混合し、攪拌溶解しながら炭酸ガスバランス中で真空紫外線184〜163nmを3時間照射し溶解した。その結果、溶解できなかった固形分を分離し秤量した結果14.2重量%の鉄含有量となった。これは通常の溶解度の3倍であった。この溶液を21.2gとり、酸化チタン97.0gに含浸させつつ、真空チャンバー内で1時間保持し完全に粒子に当該イオンを吸着させた。
さらに、イオン吸着できなかった固形分を除去するためミリポアフィルターを用いて数回ろ過し、固液分離し液中の鉄分を測定した。その結果、酸化チタン結晶内に注入できたAlの量は2.5重量%であった。さらに、イオン注入した酸化チタンを65℃で2時間乾燥した後、超音波を用いてエタノール洗浄した。その結果、最終的にAlとして2.4重量%となった。この前駆体であるイオン注入酸化チタンをアルゴン・酸素をソースガスとするマイクロ波プラズマの下流側に吹き込み強く酸化した。さらに得られた当該酸化チタンを163〜254nmが放出されるスプラジル石英管で構成された真空紫外線ランプにより減圧下で流動させながら3時間照射し、さらに真空チャンバー内で残留官能基を1時間除去しアルミイオン注入酸化チタンを得た。
この結果当該酸化チタンには、ほとんど臭気が感じられなかった。得られた酸化チタンは白色であったが肌に塗ると明暸なパール色に似た反射光を示した。流動性は非常によく、油脂を全く混合しなくても皮膚に滑らかに乗り、素肌に薄く被覆させた後、外気温34−36℃、湿度75%の状態で6時間ゴルフを行い皮膚からの該粒子の脱落試験を延べ6人のエキスパートサンプルで実施した。
その結果、全員が皮膚から排出されえた汗によって当該発明の粒子の脱落は認められず、強い吸着特製と紫外線による日焼けの防御が立証された。
【0038】
(実施例4)
実施例3の方法において、アルミニウムアエチルアセトナートの代わりにトリエチルアルミネートを用いて同様の処理を行い、アルミニウムとして3.0重量%のアルミニウムオキサイド注入酸化チタンをエタノール中で超音波を用いて再度溶解し、HPLC高速クロマトグラフィーによって残留有機分子が存在するかどうかを確認した結果、有機分子を確認しなかった。そのため、当該酸化チタンを3重量部スキンケアクリーム中に配合するように調整した。第一工程として当該酸化チタンを10部、超純水を90部混合し、ギンセン製超音波分散装置により2分間分散し完全な分散体とした。次ぎに第二工程として油相混合体を80℃で溶解せしめた後、50℃に加熱した前記分散体を混合し低速回転で乳化した。その後自然冷却し、クリームとなした。その結果、粒子が非常に均質に分散され皮膚になめらかな下地クリームが得られた。これをハイビジョン撮影に試験的に放送局内でアナウンサーに用い、ハイヒジョンカメラに対する光の散乱効果が極めて高いことが判明した。顔の半分に通常のドーランを塗り片方に本発明のクリームを使用した。本発明のクリームはドーランに比べしわやくすみがわからなくなり、また自然な肌質に見え10歳以上若く観察された。さらに、この表面から実施例2で得た鉄イオン注入酸化チタンパウダーを使用するとスタジオ内の強いライティングに特有な白浮きや全反射が発生せず、しみが見えにくくなると同時に自然で明るい艶やかな肌質となった。このとき、メイクに要した時間は5分以内で、通常の場合の5倍〜10倍の時間短縮となった。
この結果、外国語講座番組レギュラーの女性出演者によって、実際のハイビジョン撮影試験を実施した。モニターで観察すると、白人の外国人出演者は、色白ではあるが、かなり厚く化粧品が塗られくすみが強く自然でないのに対して、本発明の化粧料複合体は極めて明るく自然で皮膚の表情が豊かであった。
【0038】
(実施例5)
実施例1で得た光散乱性酸化チタン微粒子表面にシリカ薄膜を形成した。数nmの厚さの酸化珪素膜(アモルファスシリカ薄膜)を1個体ずつの球状粒子に被覆するため、テトラエトキシシラン(TEOS)を半導体級超純水に希釈(半導体級超純水が30%)し、対象の粉体に均一吸着させた。これを40℃で24時間密閉容器にて反応させ、TEOS同士が対抗電位(カウンターチャージ)を持ち始め、次第に、個々の粒子が強いマイナス電位チャージに取り囲まれて解こう(単分散)される。次に60℃で乾燥させる。この結果、TEOS膜が単一粒子に完全に付着される。次に0.01〜0.1気圧で、ヘリウム・酸素中でプラズマ発生させた。このときTEOSのエチル基が切断され酸化ケイ素骨格がアモルファス状に形成される。その後分級により、一次粒子径が100〜500nmの粒子を取り出した。プラズマ処理したシリカコート超微粒子は、光散乱特性が増加した。表面特性は+(プラス)から−(マイナス)に変化した。これにより溶媒に分散させれば凝集せず、二次粒子を形成しない。この方法は無触媒なので凝集しない。コーティングされた酸化珪素の膜厚を透過型電子顕微鏡(TEM)で実測した結果、粒子径100〜300nmの微粒子の表面を完全に被覆し、その膜厚は平均2nmであった。光散乱性光沢はかなり良好となった。なお、シリカ膜表面にはAA残留フラグメントが付着するため、プラズマ処理によってこれらが分解・真空系により完全に除去されたと考えられる。この場合には、真空紫外線チャンバー内で紫外線照射しても良い。
【0039】
本発明の実施例2で得た酸化チタン球状超微粒子の粒度分布は、120nmに個体数分布最大ピークを有し、100〜300nmに重量分布最大ピークを有している。しかし、表面特性が通常の酸化チタンと異なり、等電位点がpH≒4付近に存在し、純水(pH≒6)におけるゼータ電位が−30mV〜−80mVときわめて大きいため、瞬時に完全に分散して光散乱機能(レイリー散乱およびミー散乱)が著しく高まり、分散後に粗粒部を除去すると透明感が高くなった。
【0040】
(実施例6)
実施例1において得た多重散乱酸化チタンにおいて、平均粒子径50nmの酸化チタン微粒子を分級したのち、固形分35%のアクリルエマルション中に5重量%配合するため、当該酸化チタンを水中に20重量%になるよう50ミクロンの縦振幅を有する超音波分散装置を用いて3分間分散した。得られた分散体を9.2部とアクリルエマルション100部とを攪拌混合した結果得られた複合体は透明度が極めて高く容易に固形分離せず、その薄膜をガラス基板上で4ミクロンの厚みで成膜したところ乾燥後の膜厚は1.5ミクロンであった。その光特性は、紫外線から可視光線域まで幅広く遮蔽し、305nm、345nm、383nmに極大吸収を持っていた。
【産業上の利用可能性】
本発明の多重散乱酸化チタンは、次世代地上波デジタルハイビジョン放送において走査線数が現在の4倍にも達する可能性がある解像度に対して、皮膚のすべてが撮影されたとき多くの美観的デメリットを改善し、かつ危険な美白やサプリメントによる二次被害を減らすことが出来るため、単に将来のテレビ撮影だけでなく、家庭型ハイビジョン撮像機による問題も解決できるもので、非常に効果が高いと同時に活性酸素の発生なく太陽光線を遮断できる。また、過酸化脂質の産生なく安全に皮膚を保護することが可能である。同時に油脂類に対しての吸着性能が優れているため、化粧崩れさせない。これらの用途においては、国内外の潜在的な高級化粧品需要は数千億円に達する。また、そのほか、かゆみを止める効果としてのニーズは医療分野で300億円と見なされている。さらに、包装容器、太陽電池劣化防止保護膜、各種印刷システム、電子・医療機器、プラスチックなど非常に幅広い領域において画期的な基板素材および技術として利用の可能性が普及すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光散乱性酸化チタン球状超微粒子の酸化チタンアナターゼ基本結晶モデルTiOをユニット(白色8面体)と結晶内空間(隙間)を示した図面(図a)である。図bにおいては、アナターゼ結晶の(112)方向の結晶格子を立体的に表したのもで、その隙間にはSiOの基本ユニットが完全に通過出来ることを表している。すなわち、プラズマで寸断された有機金属化合物の金属イオンは酸化チタン結晶格子に容易に注入されうることを表している。
【図2】本発明に係る光散乱性酸化チタン超微粒子を刷毛で20mgを片手に塗ったときの皮膚テクスチャーの変化を示す。エキスパートサンプルの右手シミが見えにくくなったことを表した図面である。
【図3】本発明に係る光散乱性酸化チタン超微粒子のプラズマ装置で、付着官能基をプラズマ酸化除去している。イオン注入された酸化チタンは、粉体供給部からアルゴン気流でマイクロ波プラズマ(アルゴン・酸素)下流側に導入され、瞬間的に反応して官能基は除去されることを表している。
【図4】一般的な表面処理後にプラズマ処理を行った後イオン注入された酸化チタンをエタノールで溶解したときは、数10ppmのアセチルアセトナートが洗浄し、鉄の場合には右の容器の液面上部のごとく著しい発色をする。しかし、鉄アセチルアセトナート分子鎖を吸着前に断裂した後酸化チタンに吸着してプラズマ処理したときは、エタノール中で洗浄しても左の容器のように残留官能基は検出されないことを表したている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が全く異物で被覆されていない酸化チタン粒子を出発母体とする粒子であって、且つ前記粒子は酸化チタン粒子内部に0.05〜5.5重量%の金属原子又は/及び金属イオンが注入されてなる酸化チタン粒子であり、且つ一次粒子径が10〜1000nmで1000nm以上の凝集体を形成せず、単独で多重散乱性光沢を皮膚に与えつつ300nm±10nm、330−350nm、360−390nmに極大吸収を有するとともに紫外線全波長領域を遮蔽でき、同時に400−600nmの可視光線領域を遮蔽する粉体であって、pH=6周辺の中性領域での純水中のゼータ電位が少なくとも−20mV以上−100mVである超分散結晶粒子であり、さらに皮脂を瞬間的に吸着する両性親和力を有し、前記酸化チタンは汗による皮膚表面からの脱落による化粧崩れが洗顔するまで起こらず、毛根、しわなど皮膚の組織を直接均等になめらかに被覆でき、しみの色素を不明瞭に見せ写真撮影、ビデオ撮影、デジタルハイビジョン撮影においてきわめて繊細な美しい皮膚表面を提供することを特徴とする光多重散乱性酸化チタン。
【請求項2】
前記金属イオンは、金属アセチルアセトナート、金属カルボニル、金属アルコキシド、金属アセテート、金属アルコラート、イオン性金属水溶液などから選択される金属を含有する化合物であって、これを媒質中に溶解させたのち金属中心部と有機官能基との結合を少なくとも3エレクトロンボルト(eV)以上のイオンまたは電子を衝突させて切断小型化させてなる金属イオンでありことを特徴とする請求項1記載の光多重散乱性酸化チタン。
【請求項3】
前記金属イオンは、プラズマ、紫外線、電子線、光線により強制的に分断されてなる小型の金属分子体をなしたのち酸化チタン結晶空間に真空あるいは長期のエージング法により強制注入せしめられたのち、該金属分子体は母結晶が成すサブナノ単位の三次元空間に移動・吸着せしめられ、ナノ構造イオン注入前駆体を成すこと、を特徴とする請求項1又は2記載の光多重散乱性酸化チタン。
【請求項4】
請求項3記載のナノ構造イオン注入前駆体において、該前駆体表面あるいは結晶母体中に賦存する微量の有機官能基又は/及び断裂せしめられた有機フラグメントが、大気圧下あるいは減圧下において完全に除去されてなり無臭でアレルゲンが1ppm以上含まれないことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3記載の光多重散乱性酸化チタン。
【請求項5】
請求項1から請求項4記載の光多重散乱性酸化チタンが基礎化粧品、メイクアップ化粧品、粉白粉、整髪料、容器、ガラス製品、プラスチック成形体、色素分散インキ、インクジェットインキ、塗料、フラットパネルディスプレイ、FED分散体、繊維、織物、紙、電子デバイス、フィルターの群から選択される複合体の表面又は内部に透明あるいは不透明に均質に分散され一体化されたことを特徴とする光多重散乱性酸化チタンの複合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−50242(P2008−50242A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253454(P2006−253454)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(592083247)有限会社アイエスアイ (3)
【出願人】(390035932)
【Fターム(参考)】