説明

光学ガラス

【課題】酸化ビスマスを含有する光学ガラスにおいて、加工性の良好な光学ガラスを提供する。
【解決手段】質量%で、Biを10%以上90%未満含有し、「JOGIS09−1975光学ガラスのヌープ硬さの測定方法」に準じた測定方法において、7級から3級のヌープ硬さを有する光学ガラスである。更に、SiO,B,RnO成分(RnはK,Na,Liからなる群より選択される1種以上を示す。)を所定量組み合わせることにより、機械的強度を調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化ビスマスを含有する光学ガラスに関し、更に詳しくは、加工性の良好な酸化ビスマスを含有する光学ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
通信用、映像用などに用いられる一般的な球形のレンズを製造する際には、プリフォームである研磨ボールを形成し、その後、この研磨ボールを加工し、球形のレンズを製造する。
【0003】
このような、研磨ボールの製造方法としては、板状のガラス材からなるブロックを所定の大きさにカットして、略立方体の加工片を形成する。これを研磨装置に投入し、研磨することで成形する方法が挙げられる。このとき、研磨ボールに傷又は割れが生じることを防止するために、光学ガラスの機械的強度を向上させる必要がある。
【0004】
また、レンズを生産する際に、低コスト・大量生産という目的を達成するためには、精密プレス成型に用いられる金型が繰り返し使用できなければ、低コスト・大量生産という目的には合致し得ない。そのためには金型の表面酸化を極力抑えるべく、プレス時の温度をできるだけ低く設定する必要がある。また、プレス時の上限温度と転移温度は相関性があり、これらの温度は低ければ低い程金型の表面酸化の進行が抑えられ、金型の寿命の観点からも好ましい。
【0005】
転移温度の低いガラスとして、Biを主成分とするガラスが研究されており、下記の特許文献1から3には、Biを主成分としたガラスが開示されている。しかし、Biを主成分としたガラスは、一般のガラスよりも柔らかく、磨耗が激しい傾向にある。したがって、Bi系のガラスは、加工性が悪く、研削・研磨加工を施す際に、傷や割れなどが頻繁に生ずるという問題があったが、下記特許文献においては、特に検討がなされていない。
【特許文献1】特開2002−201039号公報
【特許文献2】特開平9−20530号公報
【特許文献3】特開平8−225339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような課題に鑑みてなされたものであり、酸化ビスマスを含有する光学ガラスにおいて、加工性の良好な光学ガラスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、Biを含有するガラスにおいて、SiO、B及びアルカリ金属酸化物を所定量組み合わせることにより、屈折率[nd]が1.70以上でアッベ数[νd]が10以上の光学恒数を有し、加工性の良好な光学ガラスを得られることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0008】
(1) 質量%で、Biを10%以上90%未満含有し、「JOGIS09−1975光学ガラスのヌープ硬さの測定方法」に準じた測定方法において、7級から3級のヌープ硬さを有する光学ガラス。
【0009】
本発明の光学ガラスは、Biを10%以上90%未満含有させることで、ガラス転移温度の低いガラスを得ることができる。従って、プレス時の温度を低く設定することができるため、精密プレス成形用金型の表面酸化の進行を抑えることができ、金型の寿命を延ばすことができる。また、ヌープ硬さが7級から3級の範囲内にあるため、傷、割れの発生しにくい光学ガラスを提供することができる。
【0010】
尚、「ヌープ硬さ」は、「JOGIS09−1975光学ガラスのヌープ硬さの測定方法」により測定することができ、ガラス表面に所定の荷重でくぼみをつけたときの、くぼみの長さから測定する。
【0011】
(2) 屈折率[nd]が1.70以上、アッベ数[νd]が10以上の光学恒数を有する(1)記載の光学ガラス。
【0012】
この態様によれば、屈折率[nd]が1.70以上、アッベ数[νd]が10以上の光学恒数を有する高屈折率高分散のガラスであるため、レンズ枚数を減少し、光学系を使用する機器の軽量化、小型化を図ることができる。
【0013】
(3) 「JOGIS10−1994光学ガラスの磨耗度の測定方法」に準じた測定方法において、450以下の磨耗度を有する(1)または(2)記載の光学ガラス。
【0014】
この態様によれば、磨耗度が450以下であるため、傷、割れの発生しにくい光学ガラスを提供することができる。
【0015】
尚、「磨耗度」は、「JOGIS10−1994光学ガラスの磨耗度の測定方法」により測定することができ、試験前後の光学ガラスと標準試料の質量から、磨耗質量を求め、その比から測定する。
【0016】
(4) ガラス転移温度(Tg)が530℃以下である(1)から(3)いずれか記載の光学ガラス。
【0017】
この態様によれば、ガラス転移温度が530℃以下であるため、プレス成形時の温度を530℃付近に設定することができる。したがって、再加熱時の温度を低く設定することができ、精密プレス成形用金型の寿命を延ばすことが可能となる。
【0018】
(5) 質量%で、SiO及びBの合計量を1%以上60%以下含有し、RnO成分を、合計0%以上50%以下含有する(1)から(4)いずれか記載の光学ガラス(ただし、RnはLi,Na,K,Csからなる群より選択される1種以上を示す。)、又は、(6) 質量%で、SiO及びBの合計量を8%以上60%以下含有し、RnO成分を、合計0%以上10%以下含有する(1)から(4)いずれか記載の光学ガラス(ただし、RnはLi,Na,K,Csからなる群より選択される1種以上を示す。)。
【0019】
この態様によれば、フォーマーであるSiOとBの含有量を増やすことで、ガラス内部の網目構造が増加するため、機械的強度が増加する。また、RnO成分は非架橋酸素を作るため、機械的強度が下がりやすくなる。特に、原子半径の大きいアルカリ金属を含有させることで機械的強度が下がる。したがって、SiO、B、及びRnO成分を所定量組み合わせることにより、機械的強度を調整することができる。
【0020】
(7) 質量%で
Bi:10〜90%未満、及び/又は
SiO:0%を超え30%以下、及び/又は
BaO:0〜50%、及び/又は
:0〜30%、及び/又は
Al:0〜10%、及び/又は
TiO:0〜20%、及び/又は
Nb:0〜20%、及び/又は
WO:0〜15%、及び/又は
Ta:0〜15%、及び/又は
ZrO:0〜10%、及び/又は
ZnO:0〜20%、及び/又は
MgO:0〜10%、及び/又は
CaO:0〜15%、及び/又は
SrO:0〜50%、及び/又は
LiO:0〜15%、及び/又は
NaO:0〜15%、及び/又は
O:0〜20%、及び/又は
:0〜10%、及び/又は
La:0〜10%、及び/又は
Gd:0〜10%、及び/又は
Yb:0〜10%、及び/又は
:0〜10%、及び/又は
Sb:0〜3%、及び/又は
GeO:0〜20%、及び/又は
F:0〜5%
を含有する光学ガラス。
【0021】
上記組成により光学ガラスを製造することで、加工性が良好であり、かつ、傷、割れの発生しにくい光学ガラスを製造することができる。
【0022】
(8) (1)から(7)いずれか記載の光学ガラスからなるガラス成形予備体、又は、(9) (8)記載のガラス成形予備体を精密プレス成形してなる光学素子。
【0023】
(1)から(6)記載の光学ガラスによれば、ヌープ硬さ、磨耗度などの優れた機械強度を有しているため、加工性に優れており、ガラス成形予備体、特に精密プレス成形用成形予備体として好適に用いることができる。ガラス成形予備体としては、球状、扁平状のものなど種々の形状のものを使用することができる。例えば、球状の場合として、研磨ボールなどを使用することができる。さらに、加工性に優れているため、当該研磨ボールを精密プレス成形した光学素子を容易に製造することができる。
【0024】
尚、「研磨ボール」とは、ガラスを転がして研磨することにより作成される球状のプリフォームのことをいう。
【発明の効果】
【0025】
本発明の光学ガラスは、上記構成要件を採用することにより、研磨加工を含む全ての加工において、歩留まりが改善し、良好な加工性を有する光学ガラス、研磨ボール、プリフォーム、光学素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、本発明の光学ガラスにおいて、具体的な実施態様について説明する。
【0027】
[ガラス成分]
本発明の光学ガラスを構成する各成分の組成範囲を以下に述べる。各成分は質量%にて表現する。なお、本願明細書中において質量%で表されるガラス組成は全て酸化物基準での質量%で表されたものである。ここで、「酸化物基準」とは、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、硝酸塩等が溶融時にすべて分解され酸化物へ変化すると仮定した場合に、当該生成酸化物の質量の総和を100質量%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
【0028】
<必須成分、任意成分について>
Biは、ガラスの安定性の向上、及び、高屈折率高分散化及びガラス転移温度(Tg)を下げるため、本発明の目的を達成するのに欠かせない成分である。しかし、Biを過剰に含有するとガラス安定性が損なわれ、少なすぎると本発明に目的を満たすことが出来ない。よって、Bi量の含有量の下限は、好ましくは10%、より好ましくは20%、最も好ましくは30%である。また、含有量の上限は90%未満、より好ましくは80%未満、最も好ましくは70%未満である。
【0029】
または、SiOはガラス形成酸化物として非常に有用な成分であり、ガラスの失透性及び液相温度に対する粘性を高くするのに非常に効果がある成分である。これら成分の1種または2種合計の含有量の下限値は1%以上が好ましく、4%以上とすることが好ましく、さらに好ましくは、8%以上とすることが好ましい。ただし、本発明が目的とする屈折率を得る為には、含有量の上限値を60%とすることが望ましく、55%とすることがより望ましく、さらに50%とすることが最も望ましい。この2つの成分は、単独でガラス中に導入しても本発明の目的を達成することができ、ガラスの失透性に効果がある。
【0030】
、SiOの各成分は、Bの上限値を30%以下とすることが好ましく、25%以下とすることがより好ましく、20%以下とすることが最も好ましい。また、SiOの上限値を30%以下とすることが好ましく、さらに25%以下とすることがより好ましく、さらには20%以下とすることが最も好ましい。また、SiOは、ガラス組成中に必須に含ませることが好ましい。SiOはBと同時に使用することにより、更に、耐失透性を向上させることができる。
【0031】
また、Bi、B及びSiOの含有量を増加させることにより、ガラス内部の網目構造が増加するため、機械的強度を増加させることができる。
【0032】
Alは、化学的耐久性を改善させ、かつ機械的強度を向上させるのに効果的な任意成分であるが、その量が多すぎるとガラスの溶融性が悪くなり失透性が増しやすく、ガラス屈伏点を高くする傾向にある。従って、上限値を10%とすることが好ましく、5%とすることがより好ましく、4%とすることが最も好ましい。
【0033】
TiOは、ガラスの屈折率を高め、高分散に寄与し、液相温度を下げるのには効果的な任意成分であるが、その量が多すぎると逆にガラスの失透性が増しやすくなる傾向にある。従って、20%以下とすることが好ましく、10%以下とすることがより好ましく、5%以下とすることが最も好ましい。
【0034】
Nbは、ガラスの屈折率を高め、高分散を寄与し、ガラスの失透性を改善させるのには効果的な任意成分であるが、その量が多すぎるとガラスの溶融性が悪化する傾向にある。従って、20%以下とすることが好ましく、15%以下とすることがより好ましく、8%以下とすることが最も好ましい。
【0035】
WOは、ガラスの屈折率を高め、高分散を寄与し、ガラスの屈伏点を下げるのに効果的な任意成分であるが、その量が多すぎるとガラスの分相が増しやすくなる傾向にある。従って、15%以下とすることが好ましく、10%以下とすることがより好ましく、5%以下とすることが最も好ましい。
【0036】
Taは、ガラスの屈折率を高め、化学的耐久性を改善させるのには効果的な任意成分であるが、その量が多すぎるとガラスの分相が増しやすくなる傾向にある。上限値を15%とすることが好ましく、10%とすることがより好ましく、5%とすることが最も好ましい。さらに好ましくは含まない。
【0037】
ZrOは、化学的耐久性を改善させるのには効果的な任意成分であるが、その量が多すぎるとガラスの失透傾向が増しやすくなる。上限値を10%とすることが好ましく、5%とすることがより好ましく、2%とすることが最も好ましい。さらに好ましくは含まない。
【0038】
RO(RはZn,Ba,Ca,Mg,Srからなる群より選択される1種以上を示す。)成分はガラスの溶融性、耐失透性の向上及び化学的耐久性の向上に効果がある。好ましくはこれらのRO(R=Zn,Ba,Ca,Mg,Sr)の合計量を0.1%以上含有させることが好ましく、さらに好ましくは5%以上、最も好ましくは10%以上である。ただし0%でも差し支えない。
【0039】
ZnOは、化学的耐久性を改善させるのには効果的な成分であるが、その量が多すぎると失透が発生しやすくなる。従って、上限値を20%とすることが好ましく、15%とすることがより好ましく、10%とすることが最も好ましい。
【0040】
CaOは、ガラスの溶融性を改善させるのには効果的な成分であるが、その量が多すぎると失透が発生しやすくなる。従って、上限値を15%とすることが好ましく、10%とすることがより好ましい。
【0041】
BaOは、ガラスの失透性及び着色を改善させるのには効果的な成分であるが、その量が多すぎると本開発が目的とする屈折率が得られにくくなる。従って、上限値を50%とすることが好ましく、40%とすることがより好ましく、35%とすることが最も好ましい。下限値については、0.1%以上とすることが好ましく、1%以上とすることがより好ましく、3%以上とすることが最も好ましい。ただし、0%でも差し支えない。
【0042】
MgOは、ガラスを高分散化させるのには効果的な成分であるが、その量が多すぎると失透が発生しやすくなる。従って、上限値を10%とすることが好ましく、7%とすることがより好ましく、5%とすることが最も好ましい。
【0043】
SrOは、ガラスの失透性を改善させるのには効果的な成分であるが、その量が多すぎると再加熱試験における失透が発生しやすくなる。従って、上限値を50%とすることが好ましく、40%とすることがより好ましく、30%とすることが最も好ましい。
【0044】
RnO(RnはK,Na,Liからなる群より選択される1種以上を示す。)ガラスの溶融性とガラス屈伏点を下げる効果があるが、ガラス内部で、非架橋酸素を作るため、その量が多すぎると機械的強度が下がりやすくなる。従って、RnOの合計量の上限値を50%とすることが好ましく、20%とすることが更に好ましい。
【0045】
LiOは、ガラスの溶融性を改善させ、ガラス転移温度(Tg)大幅に下げる効果を有する成分であるが、その量が多すぎると本発明の目的とする屈折率が得られにくくなる。従って、上限値を15%とすることが好ましく、10%とすることがより好ましく、5%とすることが最も好ましい。
【0046】
NaOは、ガラスの失透性を改善させ、ガラス転移温度(Tg)大幅に下げる効果を有する成分であるが、その量が多すぎると屈折率が下がってしまう。従って、上限値を15%とすることが好ましく、10%とすることがより好ましく、5%とすることが最も好ましい。
【0047】
Oは、ガラスの失透性を改善させるのに効果的な成分であるが、その量が多すぎると屈折率が下がってしまい本発明の目的とする屈折率が得られにくくなる。従って、上限値を20%とすることが好ましく、15%とすることがより好ましく、10%とすることが最も好ましい。
【0048】
,La,Gd,Ybの成分は、ガラスの化学的耐久性の向上に効果があり、任意に添加し得る成分であるが、その量が多いと分散が低分散になる傾向があり、耐失透性も増す傾向にある。従って上記成分の合計量の上限値を10%とすることが好ましく、7%とすることが好ましく、0.1%とすることが最も好ましい。さらに好ましくは含まない。なお、各成分についてはそれぞれ10%以下であれば問題ない。
【0049】
は、ガラスの着色の改善に効果がある成分であり任意に添加し得る成分である。しかしその量が多すぎるとガラスの分相傾向が強くなる。従って、上限値を10%とすることが好ましく、5%とすることがより好ましく、1%とすることが最も好ましい。さらに好ましくは含まない。
【0050】
Sbは、ガラス溶融の脱泡のために任意に添加することができるが、その量は3%以下で十分に効果を有する。
【0051】
GeOは、ガラスの着色の改善と高屈折率・高分散の向上に効果がある成分であるが、高価であるために任意に添加し得る成分である。従って、上限値を20%とすることが好ましく、10%とすることがより好ましく、5%とすることが最も好ましい。さらに好ましくは含まない。
【0052】
Fは、ガラスの溶融性を高める効果があるが、屈折率を急激に下げるために任意に添加し得る成分である。従って、上限値を5%とすることが好ましく、3%とすることがより好ましく、1%とすることが最も好ましい。さらに好ましくは含まない。
【0053】
<含有させるべきでない成分について>
他の成分を本願発明のガラスの特性を損なわない範囲で必要に応じ、添加することができる。ただし、Tiを除くV,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Ag及びMo等の各遷移金属成分は、それぞれを単独又は複合して少量含有した場合においても、ガラスが着色し、可視域の特定の波長に吸収を生じさせる。したがって、可視領域の波長を使用する光学ガラスにおいては、実質的に含まないことが好ましい。
【0054】
Th成分は高屈折率化又はガラスとしての安定性の向上を目的として、Cd及びTl成分は低ガラス転移温度(Tg)化を目的として含有させることができる。しかし、Pb,Th,Cd,Tl,Osの各成分は、近年有害な化学物資として使用を控える傾向にあるため、ガラスの製造工程のみならず、加工工程、及び製品化後の処分に至るまで環境対策上の措置が必要とされる。したがって、環境上の影響を重視する場合には実質的に含まないことが好ましい。
【0055】
鉛成分は、ガラスを製造、加工、及び廃棄をする際に環境対策上の措置を講ずる必要があるため、コストが高くなり、本発明のガラスに鉛成分を含有させるべきでない。
【0056】
Asは、ガラスを溶融する際、泡切れ(脱泡性)を良くするために使用される成分であるが、ガラスを製造、加工、及び廃棄をする際に環境対策上の措置を講ずる必要があるため、本発明のガラスにAsを含有させることは好ましくない。
【0057】
本発明は、各成分を質量%で、以下の範囲で含有させることが好ましい。
Bi:10〜90%未満、及び/又は
SiO:0%を超え30%以下、及び/又は
BaO:0〜50%、及び/又は
:0〜30%、及び/又は
Al:0〜10%、及び/又は
TiO:0〜20%、及び/又は
Nb:0〜20%、及び/又は
WO:0〜15%、及び/又は
Ta:0〜15%、及び/又は
ZrO:0〜10%、及び/又は
ZnO:0〜20%、及び/又は
MgO:0〜10%、及び/又は
CaO:0〜15%、及び/又は
SrO:0〜50%、及び/又は
LiO:0〜15%、及び/又は
NaO:0〜15%、及び/又は
O:0〜20%、及び/又は
:0〜10%、及び/又は
La:0〜10%、及び/又は
Gd:0〜10%、及び/又は
Yb:0〜10%、及び/又は
:0〜10%、及び/又は
Sb:0〜3%、及び/又は
GeO:0〜20%、及び/又は
F:0〜5%
【0058】
本発明の光学ガラスは、高屈折率、高分散であると共に、530℃以下のガラス転移温度(Tg)を容易に得ることができる。Tgのより好ましい範囲は、510℃以下であり、さらに好ましくは480℃以下である。
【0059】
本発明の光学ガラスは、「JOGIS09−1975光学ガラスのヌープ硬さの測定方法」に準じた測定方法おいて、7級から3級のヌープ硬さを有することが好ましい。ヌープ硬さが小さいと、ガラス成形時に傷、割れが発生しやすくなる。
【0060】
また、「JOGIS10−1994光学ガラスの磨耗度の測定方法」に準じた測定方法において、450以下の磨耗度を有することが好ましい。磨耗度が高いとガラス成形時に、ガラスが磨耗し易く、傷、割れが発生し易くなる。
【0061】
[製造方法]
本発明の光学ガラスは、通常の光学ガラスを製造する方法であれば、特に限定されないが、例えば、以下の方法により製造することができる。各出発原料(酸化物、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、フッ化物塩など)を所定量秤量し、均一に混合する。混合した原料を石英坩堝又はアルミナ坩堝に投入し、粗溶融の後、金坩堝、白金坩堝、白金合金坩堝又はイリジウム坩堝に投入し、溶解炉で850〜1250℃で1〜10時間熔解する。その後、攪拌、均質化した後、適当な温度に下げて金型等に鋳込み、ガラスを製造する。
【0062】
次に、製造した板状のガラスを所定の大きさにカットし、略立方体の加工片を形成する。これを研磨装置に投入し、研磨することにより研磨ボールを製造する。具体的には、ガラスを略立方体に切断し、バレル加工を行い、略立方体のガラスの角を取る。その後、オスカー加工機に投入し、粗丸目加工、仕上げ丸目加工、研磨を実施することにより製造する。
【0063】
本発明の光学ガラスは、典型的にはレンズ、プリズム、ミラー用途に使用される。また、本発明の光学素子製造においては、溶融状態のガラスを白金等の流出パイプの流出口から滴下させて典型的には球状のプリフォームを作製することもできる。研磨ボール及びプリフォームは精密プレス成形方法によって所望の形状の光学素子が製造される。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0065】
表1に示す実施例1から14の組成(単位は質量%)で、合計量が400gになるように原料を秤量し、均一に混合した。石英坩堝、又は、白金坩堝を用いて950〜1050℃で2〜3時間熔解した後、800〜900℃に下げて、更に1時間くらい保温してから金型に鋳込み、ガラスを作製した。得られたガラスと特性を表1に示す。
【0066】
実施例1から12の光学ガラスについて、ヌープ硬さ、磨耗度、ガラス転移温度[Tg]、屈折率[nd]の測定を行った。
【0067】
ヌープ硬さ(Hk)は、「JOGIS09−1975光学ガラスのヌープ硬さの測定方法」に準じた測定方法おいて行った。具体的には、試料の平面研磨面ダイヤモンド菱形圧子(対稜角172°30´と130°)を0.98N(0.1kgf)の荷重をかけ15秒間押しつけくぼみをつける。くぼみの長い方の対角線の長さを測定し、式(1)により求めた。
【0068】
ヌープ硬さ=1.451F/l (1)
F:荷重(N)
l:長い方の対角線の長さ(mm)
【0069】
ヌープ硬さが150未満の場合を1級、150以上250未満を2級、250以上350未満を3級、350以上450未満を4級、450以上550未満を5級、550以上650未満を6級、650以上を7級として、級が大きいほどガラスが硬いことを意味する。
【0070】
磨耗度(Aa)は、「JOGIS10−1994光学ガラスの磨耗度の測定方法」に準じた測定方法において行った。具体的には、30×30×10mmの大きさのガラス角板の試料を水平に毎分60回転する鋳鉄製平面皿(250mmφ)の中心から80mmの定位置に乗せ、9.8N(1kgf)の荷重を垂直にかけながら、水20mLに#800(平均粒径20μm)のラップ材(アルミナ質A砥粒)を10g添加した研磨液を5分間一様に供給して摩擦させ、ラップ前後の試料質量を測定して、磨耗質量を求めた。同様にして、日本光学硝子工業会で指定された標準試料の磨耗質量を求め、式(2)により求めた。
磨耗度={(試料の磨耗度/比重)/(標準試料の磨耗質量/比重)}×100 (2)
【0071】
屈折率(nd)については、徐冷降温速度を−25℃/Hrとして得られたガラスについて測定した。
【0072】
ガラス転移温度[Tg]については、熱膨張測定機で昇温速度を8℃/minにして測定した。
【0073】
【表1】

【0074】
表1に見られるとおり、本発明の実施例1から14の光学ガラスは、屈折率が1.70以上の光学恒数を有し、ヌープ硬さも7級から3級の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、Biを10%以上90%未満含有し、
「JOGIS09−1975光学ガラスのヌープ硬さの測定方法」に準じた測定方法において、7級から3級のヌープ硬さを有する光学ガラス。
【請求項2】
屈折率[nd]が1.70以上、アッベ数[νd]が10以上の光学恒数を有する請求項1記載の光学ガラス。
【請求項3】
「JOGIS10−1994光学ガラスの磨耗度の測定方法」に準じた測定方法において、450以下の磨耗度を有する請求項1または2記載の光学ガラス。
【請求項4】
ガラス転移温度(Tg)が530℃以下である請求項1から3いずれか記載の光学ガラス。
【請求項5】
質量%で、SiO及びBの合計量を1%以上60%以下含有し、RnO成分を、合計0%以上50%以下含有する請求項1から4いずれか記載の光学ガラス。
(ただし、RnはLi,Na,K,Csからなる群より選択される1種以上を示す。)
【請求項6】
質量%で、SiO及びBの合計量を8%以上60%以下含有し、RnO成分を、合計0%以上10%以下含有する請求項1から4いずれか記載の光学ガラス。
(ただし、RnはLi,Na,K,Csからなる群より選択される1種以上を示す。)
【請求項7】
質量%で
Bi:10〜90%未満、及び/又は
SiO:0%を超え30%以下、及び/又は
BaO:0〜50%、及び/又は
:0〜30%、及び/又は
Al:0〜10%、及び/又は
TiO:0〜20%、及び/又は
Nb:0〜20%、及び/又は
WO:0〜15%、及び/又は
Ta:0〜15%、及び/又は
ZrO:0〜10%、及び/又は
ZnO:0〜20%、及び/又は
MgO:0〜10%、及び/又は
CaO:0〜15%、及び/又は
SrO:0〜50%、及び/又は
LiO:0〜15%、及び/又は
NaO:0〜15%、及び/又は
O:0〜20%、及び/又は
:0〜10%、及び/又は
La:0〜10%、及び/又は
Gd:0〜10%、及び/又は
Yb:0〜10%、及び/又は
:0〜10%、及び/又は
Sb:0〜3%、及び/又は
GeO:0〜20%、及び/又は
F:0〜5%
を含有する光学ガラス。
【請求項8】
請求項1から7いずれか記載の光学ガラスからなるガラス成形予備体。
【請求項9】
請求項8記載のガラス成形予備体を精密プレス成形してなる光学素子。


【公開番号】特開2007−106625(P2007−106625A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298216(P2005−298216)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000128784)株式会社オハラ (539)
【Fターム(参考)】