説明

光学システムの特性解析

レンズ、別の光学装置、または人間の目などの光学系の光学的性質を光学システムの光学面上に特性化するための器械および方法。一実施例(図1)では、入射ビーム(16)がレンズ(12)の表面上で走査されて、レンズ(12)から異なる光学距離のところに位置する2次元検出器アレイ(24および26)にそれぞれ向けられた2つのビーム部分(20aおよび20b)にビームスプリッタ(22)によって分割されるビーム(20)を生成する。検出器アレイ(24および26)は、光軸(14)または入射ビーム(16)に対する射出ビーム(20)の角度が正確に決定されうるように、それぞれの射出ビーム部分(20aおよび20b)の入射点の横座標を出力する。レンズの表面上の射出ビームの角度の変化を決定することにより、レンズの多くの重要な光学特性を特性分析してレンズの表面上にマッピングすることができる。この器械および方法の多くの新規な変形例が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、光学システム、光学装置および光学素子の特性解析に使用する方法、器械および装置に関する。本発明は、レンズや鏡や自然目もしくはモデル目や光学器械などの複雑な光学システムのような形のある光学要素の反射および屈折特性の決定に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
そのような方法および装置の1つの用途が、レンズの面積全体にわたって屈折力をマッピングすること、すなわち空間的に分解することであり、これはレンズの波面収差の決定と呼ばれている。関連器械または装置は、分離レンズ、レンズの組、鏡、および形のある反射面または屈折面(本明細書ではまとめて「光学システム」と称される)が付いている、人間の目と共に使用することができる波面センサを備える。特に実用面での興味は、眼用レンズ、より具体的には、生産、実験的使用および処方における品質管理のためにソフトコンタクトレンズの屈折力をマッピングすることである。
関係する反射および屈折特性は、対象とする光学系の光学面全体にわたって、球、プリズム、筒および/または軸構成要素、高次および低次収差用のゼルニケ記述子、光学的平均伝達関数、平均パワープロファイルなどのバリエーションを示すデータセット(ここでは「パワーマップ」と呼ぶ)である。光学面全体にわたる選択特性の変化の視覚化により、光学系の性能を調べる貴重な方法が提供される。これにより、例えばソフトコンタクトレンズの様々な屈折ゾーン、混合ゾーンおよび周辺ゾーンの効率的な評価が可能となる。本発明の方法および装置は、例えば、目の網膜または別の表面から反射または散乱した光を利用することによって、角膜の表面上に健全な人間の目の光学特性をマッピングするのにも適用されうる。
したがって、便宜上、そのようなデータセットとその生成は、本明細書では、視覚化が不可欠であるか、または単純な屈折力が関係する唯一の特性であるかのどちらかを示唆しようとすることなく、「パワーマップ」および「パワーマッピング」と呼ぶことにする。
【0003】
様々な波面検知方法が、レンズの光学収差の評価に使用されている。これらの方法の概要が、J.M.Geary.の「Introduction to Wave−front sensors」SPIE 1995、ISBN−13:978−0819417015に記載されている。Hartmann−Shack技法およびレイトレーシング技法が、レンズの光学収差のマッピングに一般的に使用されており、自然目の複雑な光学特性のマッピングに適している。これらの技法は、E.Moreno−BarriusoおよびR.Navarroの「Laser Ray Tracing versus Hartmann−Shack sensor for measuring optical aberrations in the human eye」(J Opt.Soc.Am.A/Vol.17、No.6/June 2000)という名称の論文で説明され比較されている。
【0004】
Hartmann−Shack技法では、対応するイメージスポットのアレイが対象面上に投影されて、イメージアレイの均一性からの逸脱が収差(すなわち光パワーの局所変化)を示すように、マイクロレンズの均一なアレイからなるプレートが被試験レンズの後の光学経路内に配置されている。この技法では、好結果を得るために、器械または標的から光学面または光軸までの正確な距離を知る必要はない。
レイトレーシングでは、狭いレーザビームがレンズの表面全体に走査されて、類似のイメージアレイを1スポットずつ積み上げる。レイトレーシングは、スポットサイズをHartmann−Shackの場合よりも小さくすることができるため、より微細なパワーマップの生成を可能にするが、Hartmann−Shack技法は、すべての光線/スポットが連続的ではなく一度に処理されるので、迅速に評価することができる。レイトレーシング法は、器械の光軸に沿ったレンズ表面の位置が正確に知られていることを前提としており、このことは、小さい強く湾曲したまたは形付きの表面を有する、すなわちソフトコンタクトレンズのように軟らかい光学装置の場合に問題となることにも留意されたい。波面収差は一般に、ゼルニケ多項式によって表される。この多項式は数学的に屈折力マップに変換することができて、光学装置の平面図内で低次収差を視覚化するたことができる。
【0005】
人間の目の中の屈折収差を測定するためのレイトレーシング技法の一実施例が、Molebnyらの米国特許第6,932,475号(およびMolebnyらの「Principles of Ray Tracing Aberrometry」、J.Refractive Surgery、Vol.6 S572〜S575(2000))によって開示されている。Molebnyの米国特許第7,311,400号、同第7,303,281号、および同第6,409,345号も参照されたい。例えば、米国特許第6,932,475号では、網膜から反射したスポットのイメージは、スポットのx座標が一方の検出器によって記録され、かつ同じスポットのy座標が他方の検出器によって同時に記録されるような方法で、網膜から同一な有効距離のところに配置された2つの線形CCD検出器に向けられる。このように、スポットが問合せビームに対してシフトされた状態を示すことによって収差マップが構築されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,932,475号
【特許文献2】米国特許第7,311,400号
【特許文献3】米国特許第7,303,281号
【特許文献4】米国特許第6,409,345号
【特許文献5】米国特許第6,406,146号
【特許文献6】米国特許第7,025,460号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J.M.Geary.の「Introduction to Wave−front sensors」SPIE 1995,ISBN−13:978−0819417015
【非特許文献2】E.Moreno−BarriusoおよびR.Navarroの「Laser Ray Tracing versus Hartmann−Shack sensor for measuring optical aberrations in the human eye」(J Opt.Sec.Am.A/Vol.17,No.6/June 2000)
【非特許文献3】Molebnyらの「Principles of Ray Tracing Aberrometry」、J.Refractive Surgery、Vol.6 S572〜S575(2000)
【非特許文献4】CampbellおよびHughes(Vision Res.Vol.21、1229〜1148頁、1981)
【非特許文献5】GlasserおよびCampbell(Vision Res.Vol.38、No.2、209〜229頁、1988)
【非特許文献6】RoordaおよびGlasser(Journal of Vision(2004)4、250〜261頁)
【非特許文献7】Chaseら(Chase R、Keleti S、Norman BR、A Scanning Hartmann Instrument.Proceedings of SPIE−Volume 1618、Large Optics II(1991)、89〜96頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
CampbellおよびHughes(Vision Res.Vol.21、1229〜1148頁、1981)、GlasserおよびCampbell(Vision Res.Vol.38、No.2、209〜229頁、1988)およびRoordaおよびGlasser(Journal of Vision(2004)4、250〜261頁)は、隔離された動物の目のレンズ内の波面収差を測定する方法を開示しており、狭い入射および屈折レーザビームのアレイの軌道が横方向にまたは側面から撮影される。これらの方法では、実装レンズを、入射および射出光線を目に見えるようにする乳溶液のタンク内に置く。入射光線は、走査されたレーザビームまたは被試験レンズの光軸と平行に向けられた入射ビーム束とすることができる。使用されうる光線の数は、その光線を側面から視覚化しかつ識別する必要性によって厳格に制限される。しかし、各光線の傾きは(おおよそに)推定され、波面収差の等高線図が構成された。開示されていないが、レンズ上のスポットでの屈折力は、そのスポットから射出するビームの傾きから推定することができるので、レンズのパワーマップを構成することが可能であることに留意されたい。そのようなマップの正確さと分解能には所望されるべき点が多くあり、この技法は未完成で労力を要するので、コンタクトレンズの有用なパワーマップを生成する方法としては生産品質管理のためには全く非現実的なものになっている。もちろん、この技法は生体内の目に適用することはできない。
【0009】
Chaseら(Chase R、Keleti S、Norman BR、A Scanning Hartmann Instrument.Proceedings of SPIE−Volume 1618、Large Optics II(1991)、89〜96頁)は、大きな鏡の傾斜決定のための方法を提示しており、それによれば、レーザビームが鏡を旋回運動で横切って走査され、反射したビームは、x−yステージ上に取り付けられた光検出器で捕獲される。検出された反射ビームの横位置からは、鏡の傾きが各ラスタスポットに対して決定されうる。位置検出ユニットが移動できるのは、横方向のx−y面内だけであり、その軸位置は入射ビーム操縦スキャナに極めて接近しているので、最適な分解能および測定範囲を達成できる。
【0010】
2軸平面でスポット検出を使用するという概念が、米国特許第6,406,146号に開示されている。この装置は本質的には、第2の光検出器が第1の光検出器とは異なる軸位置に追加されうるように、小型レンズアレイの後に追加されたビームスプリッタを備えるHartmann−Shack接眼波面センサである。この第2の検出器は、重なり合うスポットのあいまいさを低減することによって測定範囲を拡大するのに役立ち、このあいまいさは、単一検出器のHartmann−Shackシステムの場合の限定因子になっている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様によれば、本発明は、各スポットに射出ビームを生成するために、入射ビームを光学面上のスポットに向けること、表面から第1および第2の光学距離のところで各射出ビームの横位置を決定すること、およびそれから各スポットでの光パワーを導き出すことを含む。これは、通常、各スポットでの射出ビームの射出角を計算することを含むことになる。次いで、得られた結果は、システムの光学特性を決定するために使用されうる。通常は、入射ビームの走査、射出ビームの角度の計算、データセットの生成、およびデータセットの視覚的表現は、コンピュータ制御またはコンピュータ介在されることになる。これにより、光学システムの多種多様な光学特性を生成できるようになり、所望であれば、光学面の描写上に視覚的にマッピングできるようになる。
【0012】
射出ビームの横位置は、射出ビームの少なくとも一部を各光学距離のところで阻止し、かつ各距離のところにあるビームの横空間座標を検出器手段に出力するように配置されうる少なくとも1つの検出器アレイを含む検出器手段を使用することによって決定されることが好ましい。2つの距離のところにある射出ビームの横座標は、一般には、射出ビームの角度を十分正確に決定するのに十分であるが、ビームの対応する入射角に関しては、光学系の各スポットでの屈折力を容易に計算できる。その場合、光学面全体にわたるそのような測定および/または計算の組は、上述のように、光学系の多くの重要な光学特性がそれから導き出されうるとともに、所望であれば表面上に表示またはマッピングされうるデータセットを提供する。
【0013】
各入射ビームが光学系の固定軸と確実に平行になるようにするのは、好都合であるが本質的なものではない。通常、これは光学系の中心光軸となるが、固定軸は任意に設計されうる。すべての入射ビームが互いに平行であり、好ましくは光学系の光軸と平行である場合、射出ビームの角度の変化は、指定された光学面全体にわたる光学系のパワー変化の代理として使用されうる。入射ビームの角度が、スポットによって異なる場合、これは入射ビームが共通の点源から円錐状に走査される場合によくあることだが、光軸などの共通データに対する各入射ビームの角度を記録または計算するとともに、各スポットでの入射角と射出角の両方を使用して「スポットパワー」を計算する必要がある。
【0014】
射出ビームの角度および/または位置が決定できるように、2次元の光検出器アレイ(例えばデジタルカメラで一般的に使用されているタイプのCCDまたはCMOS検出器)を使用して、各光学距離または面のところにある射出ビームの交点座標を検出および出力し、決定しかつ/または導き出すことができる。様々な構成が予想される。例えば、単一の検出器アレイを1つの面から別の面に移動させることができ、各位置でビーム座標を導き出すことができる。単一の固定アレイが、射出ビームの複数部分を異なる光学距離を通じてアレイへ方向付ける1つまたは複数のビーム分割器と共に1つの場所で使用されうる。すなわち、出射ビームの様々な部分が、符号化、時分割、または他の多重化形態によって互いに区別される。選択されたアレイをビーム経路の内外に移動させて射出ビームを所望の距離のところで阻止する場合、複数の光検出器アレイが一列で使用されうる。別法として、一方を他方の背後に一列で固定して位置付けできるほど十分に透明である光検出器アレイを得ることも可能となりうる。一列になっていない複数の固定アレイは、ビーム分割器を使用して同じ射出ビームの複数部分をそれぞれに方向付けることによって使用されうる。
【0015】
当分野で知られている任意の好都合なビーム分割器ならどれでも使用することができ、例えば、部分的に銀めっきされた鏡、ダイクロイックまたは偏光または非偏光立方または薄膜ビームスプリッタ、回動または振動鏡、立方体、ビーム切換器として働くプリズム、もしくは符号化、光学特性の変化または時分割多重化を利用するビームマルチプレクサなどを使用することができる。
検出器アレイは、それぞれがその位置で射出ビームの横座標を即座に出力することができるように、平面2次元「領域」タイプであることが好ましいが、狭い線形検出器アレイもまた、もし特定の経線に沿った交点だけが対象であれば使用されうる。そうでない場合、そのような線形検出器アレイは、完全領域または部分領域のアレイとして有効に働くように、ある位置で回動または交差されうる。
上記から、検出器手段は検出器アレイと任意のビーム分割器の両方を包含することが理解されよう。
【0016】
一応用実施例では、本方法は、水和ソフトコンタクトレンズを水平に支持するステップと、入射光ビームをレンズによって垂直下方に向けるステップと、射出ビームをレンズの下の位置で分割して、屈折した射出ビームの異なる部分を、レンズから異なる光学距離のところに配置されたそれぞれの固定検出器に向けるステップとを含むことができる。この場合、コンタクトレンズは光学系を構成し、好都合には、その上面が光学面を構成しており、その光学面全体にわたって光学特性がマッピングされることになる。
あるコンタクトレンズは、円形周辺境界を有しておらず、複数の光学ゾーンを有し、特定の方向で使用されるように設計されており、かつ/または微小な方位マークを有しているので、入射ビームがレンズの表面全体にわたってその周辺境界を越えて走査されること、およびコンピュータソフトウェアが方位マークを識別し再現することが望ましい。
【0017】
異なる距離のところに3つ以上の検出器を使用することにより、射出ビームの座標が所与の面または位置で決定されうる精度、すなわち範囲を向上させることができる。追加の1つまたは複数の検出器は、ほぼ垂直に偏向された射出ビームを阻止するように配置されうる。例えば、通常より強力なレンズがマッピングされているとき、射出ビームは、2つの「標準」検出器のうちより遠隔にある方に当たらない程度に「超偏向」されうる。したがって、第3の検出器が超偏向射出ビームを阻止するように配置されうる。追加のビーム分割器が、射出ビームの一部を追加の検出器へ偏向させるために使用されうる。別法として、(上述のように)「標準」遠隔検出器は、超偏向ビームを阻止するように移動されうる。逆に、通常より弱いレンズが特性化されている場合、「標準」近接検出器は、近すぎて射出ビーム座標を十分な精度では読み取れない所に配置することができ、近接検出器は、さらに遠くへ移動されてもよく、あるいは関連するビーム分割器を有するさらに遠隔にある第3の検出器がその目的で使用されてもよい。他の多くの配置が、本発明の範囲内で可能である。
【0018】
既述のように、本方法は、レンズの縁部を越えて問合せビームを走査するステップを含むことができ、その結果、縁部を検出することができ、レンズの周縁部を正確にかつ自動的に決定することができる。これは、レンズ全体をマッピングできるようにするだけでなく、レンズが円形周縁部を有していないか、そうでなければ非対称である場合に、確実にパワーマップが正確にかつ自動的に整列されるようにもする。したがって、本方法は、光学系の縁部/境界、光軸、物理的または光学的中心を決定するステップも含むことができる。同様に、レンズに方位マークが付いている場合、本方法は、そのマークを検出しかつ認識するステップを含むことができる。これにより、方位マークならびに周辺輪郭をパワーマップで再現することができる。多焦点光学系(2焦点眼用レンズなど)の特定のケースでは、本方法は、隣接する光パワーゾーン間の接合部/境界を検出するステップも含むことができる。
【0019】
別の変形例では、本方法は、レンズがマッピングされる光軸に対して入射ビームの角度を調節するステップを含み、必要に応じて、検出器の角度および位置を同時に調節するステップを含むことができる。これは、Smithらの米国特許第7,025,460号に教示されている方法で周辺の像面湾曲を調節するようになされた周辺光学域で取り囲まれた中心光学域を有する眼用レンズの場合に特に価値がある。
別の態様では、本発明は、光学系を光学系の光学面に対して特性化するのに使用する装置、器械またはシステムを含み、この装置は、
狭い入射光ビームをスポットからスポットへ光学面全体にわたって移動させて、各スポットにある射出角を有する射出ビームを生成するためのスキャナ手段と、
光学系から2つの異なる光学距離のところで射出ビームの横座標を検出しかつ決定するようになされた検出器手段と、 前記横座標から各スポットでの射出角を計算するようになされたプロセッサ手段とを含む。
【0020】
検出器手段は、光学系から第1および第2の距離のところに位置する別個の光検出器アレイを含むことができ、各検出器アレイは、射出ビームとアレイの交点の横座標を出力するようになされる。一方のアレイが他方のアレイを遮るのを回避するために、光学系に近接するアレイ(単数または複数)は、射出ビームがより遠いアレイに達することができるように、移動可能とすることができる。別法として、複数のアレイは、一列に配置される(したがって一方が他方を遮る)必要がないが、代わりに、検出器手段は、射出ビームの別の部分を各アレイに向けるビーム分割器手段を含むことができる。別の配置では、検出器手段は、第1の光学距離と第2の光学距離の間で移動させることができるただ1つの光検出器アレイを含むことができるので、同じアレイが各距離のところにまたは各位置に射出ビームの横座標を決定するために使用される。既に指摘したように、検出器手段は、射出ビームの少なくとも一部をそれぞれに向けるために、3つ以上の別個の検出器アレイとビーム分割器手段とを含むことができる。
【0021】
一実施形態では、本装置は、接眼レンズ(コンタクトレンズやメガネのレンズなど)のパワーおよび/または収差をマッピングするための器械とすることができる。レンズがソフトコンタクトレンズであるので、レンズは水和状態で(場合により水浴中で)取り付けたほうが好ましく、そうすればレンズは重力または表面張力による実質的歪曲のない水平な面で端座し、走査手段は入射ビームをレンズによって垂直下方に向けることができ、光検出器およびビーム分割器(使用される場合)を備える検出器手段はレンズの下方に配置される。ソフトコンタクトレンズを取り付けかつ位置付けるための技法が、当分野で知られており、例えば、Hartmann−Shack器械で使用される。
当分野では一般的であるように、入射ビームを生成するためにレーザを使用することが好都合である。1つまたは複数の入射ビームは、調査目的に適合するように選択された波長をもつ単色とすることができる。より一般的には、可視スペクトル内の白色光に近い波長帯域を有するビームは、特性化されるレンズが目に関連して使用しようとする場合に適している。しかし、2色または多色ビームの使用もまた、被試験装置の特定のスペクトル特性を得るために想定される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施例を形成する器械またはシステムの光学配置の概略斜視図であり、特性化される光学系はレンズであり、入射ビームはレンズの光軸と平行でありかつレンズの表面全体にラスタ走査され、固定したビーム分割器が使用される。
【図2】図1の器械の一部の概略側面図であり、第1の実施例の器械の第1の変形例を含む。この第1の変形例では、入射ビームの走査を実現するために、入射ビームを移動させるのではなく(またはそれに加えて)レンズが移動する。
【図3】図1の器械の一部の概略側面図であり、第1の実施例の器械の第2の変形例を含み、入射ビームは、それがレンズの光軸と平行のままではないように枢動可能に走査される。
【図4】図1の器械の一部の概略側面図であり、第1の実施例の器械の第3の変形例を含み、ピンホールマスクが、入射ビームをレンズの表面全体にわたって効果的に走査するように使用されている。
【図5】図1の器械の一部の概略側面図であり、第1の実施例の器械の第4の変形例を含み、3つ以上の検出器の面または位置が使用されている。
【図6】図1の器械の一部の概略側面図であり、第1の実施例の器械の第5の変形例を含み、振動鏡がビーム分割器として効果的に機能する。
【図7】図1の器械の一部の概略側面図であり、レンズは、その非近軸パワー(non−paraxial power)が特定の位置でマッピングまたは測定されうるように傾けられる。
【図8】第2の実施例を含む器械の光学配置の概略側面図であり、1つの固定アレイおよび1つの可動アレイが使用されており、ビーム分割器が不要になる。
【図9】第3の実施例を含む器械の光学配置の概略側面図であり、単一の可動検出器アレイが使用されており、この場合もビーム分割器が不要になる。
【図10】第4の実施例を含む器械の光学配置の概略側面図であり、矯正モダリティ(corrective modality)の設計に有用である、人間の目のような屈折光学系からのパワーマップを生成するようになされている。
【図11】単一の固定検出器アレイが使用されている第5の実施例を含む器械の光学配置の概略側面図であり、射出ビームは、分割され、異なる長さの経路を経由してアレイまで送られ、ビーム部分の多重化が使用される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(本発明の実施例の詳細な説明)
本発明の本質を説明してきたが、以下は、特定の実施例について添付図面を参照しながら説明する。ただし、当業者ならば、上述したように、また以下で特許請求するように、本発明の範囲から逸脱することなく提供される実施例に多くの変形例および変更例を加えることができることを理解するであろう。また、他の多くの実施例が本発明の範囲内で可能である。
【0024】
図1に、第1の実施例のシステムまたは器械10の光学配置が概略斜視で示されており、システムの構成要素はブロック図形態で示されている。単純なレンズ12が、特性化されるべき光学系を含み、適所に示されており、レンズ12の光軸は鎖線14で示されている。狭い入射ビーム16は、それが軸14と平行のままとなるように、スキャナユニット17によって生成されかつレンズ12の上面全体にわたってラスタ走査され、ラスタパターン18は、レンズの周縁部が画定されうるように、レンズ12より大きいことが好ましい。この実施例では、レンズ12は、非対称形であり、その周縁部付近に方位マーク19を有する。
スキャナユニット17は、コンピュータ「PC」に接続されており、コンピュータPCの制御下で動作する。スキャナ17は、レーザ光源、電気機械走査装置、ならびにコンピュータPCとインタフェースをとるようになされたスキャナドライバを含むが、これらの構成要素は、そのようなスキャナユニットが当分野で知られているので示されていない。
【0025】
射出ビーム20は、射出ビーム20の一部分20aを第1の検出器アレイ24へ透過させかつ第2の部分20bを第2の検出器アレイ26へ反射する部分反射ビームスプリッタ22(ビーム分割器として働く)によって遮られ、アレイ24および26は、レンズ12およびビームスプリッタ22に対して固定されているマウント24aおよび26aによって位置決めされる。(したがって、この実施例では、検出器手段は、ビームスプリッタ22と検出器アレイ24および26とを備える。)便宜上、第1の検出器アレイ24の面は、軸14と直交にかつレンズ12に光学的により近接して示してあり、アレイ26の面は、軸14と平行にかつアレイ24よりもレンズ12から光学的にさらに離れて示してある。この特定の配置は本質的なものではなく、アレイ24および26はレンズ12から異なる光学距離のところに配置されていることが重要である。すなわち、一方のアレイ(例えばアレイ24)が第1の光学距離のところにあり、他方のアレイ(例えばアレイ26)が第2の光学距離のところに配置される。
【0026】
図1では、走査された入射光線16が、レンズ12に位置P0で当たって示され、P0からの射出光線20の第1の部分20aは、第1の光検出器アレイ24に点P1で当たって示され、射出光線20の第2の部分20bは、第2の光検出器アレイ26に点P2で当たって示されている。この実施例では、検出器アレイ24および26は平面かつ2次元であるので、点P1およびP2の座標は、即座に読み取られ、入力線23および25を介してコンピュータPCのI/Oインタフェースに入力されうる。コンピュータPCは、これらの入力から、走査された入射光線16の入射角に対する射出光線20の角度を計算し、それによってレンズ12のスポットP0での屈折力を決定するように設定される。このプロセスは、レンズ12の光学特性を与えるデータセットが生成されるまで、レンズ12上の各スポットに対して繰り返される。このデータセットはコンピュータPCによって使用されるものであり、レンズの表面全体にわたるレンズ12の屈折力の変化が、モニタ27に等高線マップMで表示される。マップMは、レンズ12上の方位マーク19の位置にある可視マーク19a、ならびにレンズ12の周辺境界の表示12aを含むことが好ましい。
【0027】
このように生成されるパワーマップまたはデータセットは、当分野で知られている多くの方法で使用されうる。例えば、設計済みパワープロファイルと測定済みパワープロファイルとを比較して製造されたレンズの品質を監視すること、補正光学を計算すること、光学的改良または修正などがある。これは、眼用レンズが特定の人間の目の収差を整合させかつ補正するために形付けまたはカスタマイズされる場合、かなり重要である。そのような形付き表面は、28に示されている機械によって補正レンズに付着されうる。別法として、光学系が目である場合(図10を参照しながら説明する)、目のパワーマップを使用して、相補的なレンズをコンピュータ設計しかつ製造することができ、あるいは当分野でも知られているように、29に示されているコンピュータ作動レーザ手術機を制御して目の角膜の形状を自動的に変形させ、それによって屈折誤差および高次収差を補正することができる。
【0028】
図1の器械10の基本的な光学的配置は、入射ビーム16に対する射出ビーム20の偏向が、スキャナ17からレンズ12までの距離を知る必要なしに、検出器アレイ24および26各々の内の点P1およびP2の座標から計算されうることが、当業者によって理解されるであろう。これは、多くのデータ出力を確実にコンピュータ生成できるようにするとともに、従来技術よりもはるかに有利であり、より重要なデータ出力には、図1のテキストボックス21内に含まれているリストに示されているものもある。
第1の実施例の器械の第1の変形例30が、図2によって概略的に示されている。入射ビーム16は、走査されないが、ビームスプリッタ22の光軸14上で安定状態を保たれ、レンズ12は、入射ビーム16をレンズ12全体にわたって効果的に走査するように、矢印31および32で示されているように2次元で水平に移動する。したがって、射出ビーム20の射出角αは、図1に関して説明したように、検出器アレイ24および26上の部分20aおよび20bの入射座標から計算されうる。前述のように(かつ後述する他の変形例のように)、レンズの周辺境界がマッピングされ、かつ、レンズの方向がレンズのプロファイルまたはレンズの縁上の方位マークを基準にして決定されうるように、入射ビーム16がレンズ12の縁部を越えて効果的に走査されることが望ましい(本質的なものではないが)。
【0029】
図1の器械の第2の変形例34が図3に示されており、図3では入射ビーム16は、矢印35および36で示されているように、レンズ12の表面全体にわたって枢動可能にまたは円錐状に走査される。走査される入射ビーム16は、レンズ12の光軸14と平行のままにはならず、任意スポットP0での軸14に対する入射角βは、スキャナユニット17(図1)のスキャナドライバおよび/またはプロセッサPC(図1)内のスキャナ制御ソフトウェア/ファームウェアから知られることになる。この場合にも、射出ビーム20の射出角α(図2)は、点P1およびP2の座標から計算され、レンズ12上の各スポットP0での屈折力を決定するために、入射ビーム16の角度βと共に使用されうる。
【0030】
図4に示されている第1の実施例の第3の変形例40では、17aに示されているスキャナユニットは、開口プレート41とコンピュータPC(図1)によって制御されるピンホールマスク42とで形成される。開口プレート41は、広範な平行光線44によって照らされ、プレート41に開口の2次元アレイを形成している多数の小開口を介して光を通過させる。次いで、マスク42は、当分野で知られている選択的に透明なLCD装置を備えうるものであり、プレート41の選択された開口からの光がマスク42を透明になっている位置合わせしたスポット(46に示されている)で通過するように制御される。実際には、適切なLCDマスク装置42の場合、別個の開口プレート41は必要とされないことがある。いずれにしても、マスク42は、光軸14と平行な走査入射ビーム16を生成する働きをするので、図1の器械と同様にゼロ入射角β(図3)を有する。図1および2と同様に、検出器手段はこの場合、2つの検出器アレイと1つのビームスプリッタとを備える。他方、スキャナ手段17aは、図示されていない光源、およびコンピュータPCとのマスクインタフェースとともに、開口プレート41およびマスク42を備える。
【0031】
図5は、射出ビーム20の角度がより正確に計算されうるように、かつ/または測定範囲を広げるように、3つ以上の検出器アレイを使用できるようにする図1の器械の第4の変形例50を示す。この変形例では、第1および第2の射出ビーム部分20aおよび20bがビームスプリッタ22によって生成され、図1と同様に、第1および第2の検出器アレイ24および26に向けられるが、ビーム部分20bは、ビーム部分20cが点P3に当たる第3の検出器アレイ52に向けられる第3のビーム部分20cを発生する第2のビームスプリッタ51を通過する。図示されている構成では、アレイ26は、レンズ12からアレイ52よりも光学的にさらに離れており、アレイ52は、アレイ24よりもさらに離れている。3つのアレイ24、26および52すべての出力は、コンピュータPCに送信されて、もし存在していれば、点P1、P2およびP3の交点座標を与える。検出器アレイの配置は、射出ビーム部分20aおよび20cが、測定可能なパワーの全範囲にわたってそれぞれのアレイ24および51と常に交差するが、ビーム部分20bだけは、測定可能なパワーの範囲下部にわたってアレイ26に当たるようになっている。この低いパワーの範囲では、検出器アレイ24および26の出力は、より正確なパワーの計算を可能にするために使用されうる。残りの高いパワーの範囲では(ビーム部分20bが検出器26に当たらない場合)、アレイ24および51の出力が使用されるようになる。したがって、このように3つ以上の検出器アレイを使用することにより、2検出器構成(図1の場合)よりも広い範囲のパワー測定が可能となり、かつ/またはより低いパワー範囲でのより高い精度の測定が可能となりうる。この変形例では、検出器手段が3つの検出器アレイと2つのビームスプリッタとを備えることに留意されたい。
【0032】
図6に示されている第1の実施例の第5の変形例60は、ビーム分割器として(図1の部分反射ビームスプリッタ22の代わりに)振動鏡または回動鏡62を使用している。鏡62は、射出ビーム20を検出器アレイ24および26の間で素早く切り換えて、前述のように射出ビーム部分20aおよび20b(および所望であれば20c)を効果的に生成する。もちろん、当分野で周知のように、鏡56はプリズム、レンズまたは多面反射器で置き換えて、走査/ビーム分割機能を果たすことができる。この種の単一ビーム分割器には、射出ビーム20の強度を低下させずに2つ以上の検出器アレイに容易に向けることができるという利点があるが、固定した部分反射ビームスプリッタと比較したときに相対的に遅いという欠点もある。変形例60では、検出器手段は、移動鏡62ならびに検出器アレイ24および26を備える。
【0033】
図7は、第1の実施例の第6の変形例70を示しており、レンズ12は軸14に対して傾けられているので、非近軸パワーが特定の位置でレンズ12の表面の一部(またはすべて)の上でマッピングまたは測定される。レンズ12はゴニオメータ様ホルダ(図示せず)内に取り付けられているので、それが多くの様々な面で軸14に対して正確に角度を付けることができる。
【0034】
図8は、ビーム分割器の必要のない第2の実施例を示す。この実施例の器械80は、特性解析される光学系となるレンズ86の反対側に、器械の光軸84上に配置された固定光検出器アレイ82を使用する。前述のように、入射ビーム88は、レンズ86の表面全体にわたって走査され、表面上のスポットP0に当たり、アレイ82に点P2の座標で当たる射出ビーム90を生成するように示されている。レンズ86に近接する点で第2の座標組を得るために、第2の検出器アレイ92は、それが破線94で示されている場所で軸88と一直線になるまで、横方向にスライドされる。アレイ92がそのように配置された状態では、アレイ94はより遠いアレイ82を遮り、射出ビーム90はこのとき、点P1でアレイ92に当たって、この位置(レンズ86からの光学距離)に射出ビームの座標組を与える。次いで、こうして得られた座標は、第1の実施例に関して説明したように、光学系(86)を特性化するために使用されうる。もちろん、両方の座標組がレンズ86上のスポットP0として記録された後、可動アレイ92はその元の位置(アレイ92が実線で示されている位置)に戻され、入射ビームはレンズ86上の新たなスポットに移動させられ、このプロセスは、新たなスポットの両座標組を記録するように繰り返される。このプロセスにおけるアレイ92の往復移動が矢印96で示されている。
【0035】
図9は、ウェットセル104内に位置しかつウェットセル104によって支持された水和ソフトコンタクトレンズ102を特性化する際に使用する、本発明の第3の実施例を含む器械100の光学配置の概略側面図である。この実施例では、レンズ102の光軸は106に、走査された入射ビームは108に、そして射出ビームは110に示されている。入射ビーム108は、この場合もレンズ102にスポットP0で当たって示されている。この実施例では、ビーム分割器が不要になり、単一光検出器アレイだけが必要となる。
器械100には、単一検出器アレイ112は、破線114で示されている位置に固定されていて、この位置に実線で描かれている。ウェットセル104は、調査中の光学系として働くソフトコンタクトレンズ102と共に、116および118に示されている2つの位置の間で光軸106に沿って上下に移動可能であり、位置116の検出器アレイ112からの光学距離は位置118よりも短い。所望であれば、セル104は、入射ビーム108で走査するための1つまたは複数の中間位置に移動することができ、レンズと検出器アレイとの間の3つ以上の光学距離が使用されている図5の器械50に関連して説明した利点を十分に活用する。実際、破線矢印120で示されているように、横向き移動のアレイ112を取り付けることによって、測定範囲に関するさらなる利点を得ることができる。これにより、器械100は、固定位置でアレイ120で測定されうる特性よりも高屈折であるレンズの特性を記録することができる。
【0036】
器械100の第2の構成では、アレイ112は、矢印122で示されているように、ウェットセル104内のレンズ102に(光学的に)近接したり離れたりするように軸106に沿って上下に移動させられうる。簡単化のために、114および124に示されている2つの位置だけが必要とされると想定されているが、図5の器械50に関連して言及した利点があるので、1つ以上の中間位置共に容易に使用できる。アレイ112は、最も離れた位置114に実線で示されており、112aに示されている最寄りの位置124に破線で示されている。この場合にも、所望であれば、アレイ112は位置114で(かつ/または位置124で)横方向に移動可能とすることができ、(破線矢印120で示されかつ上述したように)レンズ102のより広い範囲を特性化できる。実際、レンズ102とセル104の両方とも上述のように移動可能であれば、さらに大きな測定範囲が受け入れられうる。
コンタクトレンズなどの光学系を特性化するための器械のこの実施例ではビーム分割器が不要になるが、検出器アレイ(単数または複数)および/または光学系を1次元または2次元で正確に移動させることが必要になると、よりコストがかかり、複雑さが増すことになる。
【0037】
本発明に従って形成された測定器械または測定システムの第3の実施例が図9に示されている。この実施例では、器械150は、反射(後方散乱を含む)光学系が単純な鏡、形付き反射面、人間の目などの複雑な光学系にかかわらず、光学系をマッピングできるようにするか、そうでなければ特性解析できるようにする。図10に示されているように、光軸153を有する人間の目152の光学特性は、網膜155からの反射または後方散乱を利用して戻りビームまたは射出ビーム156を生成することにより入射ビーム154を目152の中に走査することによって評価することができる。なお、走査入射ビーム154は矢印158で示されており、スキャナユニットは別段図10には示されていない。走査された入射ビーム154は、第1のビームスプリッタ160と、目152の角膜161と、角膜161上の位置P0とを経由して、網膜155上にまで直接通される。戻り射出ビーム156は、ビームスプリッタ160の中まで戻り、156’に示されているように、第2のビームスプリッタ162の中へ反射され、第2のビームスプリッタ162は、(図1のビームスプリッタ22と同様に)射出ビーム156’の第1の部分156’aを第1のすなわち「近接する」検出器アレイ164に向け、射出ビームの第2の部分156’bを第2のすなわち「遠い」検出器アレイ166に向ける。第1の実施例について説明したように、アレイ164および166により、射出光線156の横座標を2つの異なる光学距離のところで決定することができ、その座標組から、入射光線154と射出光線156の間の相対角度が決定され、角膜161の表面上にマッピングされうる、図1に示されているようなデータ出力を生成するためのベースとして使用されうる。
【0038】
目152の光学特性を網膜125ではなく角膜161の表面上にマッピングすることが好都合である。というのは、角膜は容易に視覚化され、角膜の形状を変化させることを含む手順では、形状を変化させる手順の前の角膜表面の等高線またはプロファイルがかなり正確に決定されるからである。目のパワーの角膜上へのマッピングと角膜のプロファイルの決定との組合せにより、角膜修正に必要なほぼ完全な情報ならびに調整済み補正眼用レンズを提供する。しかし、眼の光学特性は、網膜表面上、または所望であれば目の中で視覚化されうる他のインタフェースにマッピングされうる。
【0039】
本発明の第4の例示的な実施形態が、図11に示されている器械200であり、単一固定検出器アレイを使用して光学系から2つの光学距離のところで射出ビームの横座標を出力している。より具体的には図11を参照すると、システムの光軸が201に、入射ビームが202に、射出ビームが204に、レンズ(特性解析される光学系)が206に、そして単一検出器アレイが207に示されている。第1の実施例(図1)と同様に、入射ビーム202が、レンズ206の表面全体にわたって走査され、入射ビーム202がスポットP0に当たったときの瞬間が示されている。1つの検出器アレイしか使用されていないが、破線ボックス209で示されている検出器手段はかなり複雑であり、以下で説明される。
【0040】
射出ビーム204は、ビームスプリッタ208によって2つの部分に分割される。第1の部分204aは、第2のビームスプリッタ210を経由してアレイ207までの短い光学距離を直進し、第2の部分204bは、やはり第2のビームスプリッタ210を経由してアレイ207までのより長い光学距離を間接的に進行する。ビーム部分204bのより長い光学距離が、ビーム204bをスプリッタ208内で横方向に第1の鏡214へ反射し、第1の鏡214から第2の鏡216へ反射され、第2の鏡216が第2のビームスプリッタ210へ反射し戻し、最後に第1のビーム部分204aとともにビームスプリッタ210からアレイ207へ反射されることによって達成される。
【0041】
アレイ207におけるビーム部分204aおよび204b間の混乱状態は、多くの方法で回避することができ、最も好都合なのが、光学特性、時分割多重化またはパルス符号化による識別である。光学特性による識別は、ビーム部分204aの経路内の第1の光学フィルタ218とビーム部分204bの経路内の第2のフィルタ220とを使用して実施されうる。フィルタ218および220は、偏光、色または強度とすることができ、検出器アレイ207の特性に応じて選択される。したがって、アレイ207が色に敏感である場合、フィルタ218は赤色フィルタとすることができ、フィルタ220は緑色フィルタとすることができるので、ビーム部分204aおよび204bがアレイ207によって容易に識別されうるようになる。時分割多重化は、第1の機械的または光電子チョッパ222をビーム部分204aの経路に導入しかつ同様のチョッパ224をビーム204bの経路に導入することによって実施されうる。チョッパ222および224は、ビーム204aおよび204bが時分割多重化の形で交互にアレイ207に提示される交互に阻止されるように操作される。このため、コンピュータシステム(ここでは図示せず)はどのビームが各タイムスロット内に存在するのかを追跡する必要があり、当業者なら実施できる事柄である。パルス符号化は、チョッパ222または224の一方だけを、例えばビーム204aの経路内のチョッパ222を使用することによって実施されうる。このチョッパは、レンズ206上のスポットからスポットへの入射ビーム202の走査よりもかなり速く操作されるので、入射ビーム202がスポットP0上にとどまる時間間隔の間、ビーム204aからの信号は交流として現れ、ビーム204bからの信号は直流として現れる。これらの2つの信号は、周知の電子フィルタリング技法によって容易に識別される。
【0042】
器械200を任意にさらに改良することにより、特性解析される光学系が異常に低い屈折力または収差を有している場合に器械の感度を大幅に向上するように、ビーム部分204bの経路長を所望されるように長くすることができる。この選択肢では、ボックス226で示されている、鏡214および216を含むサブアセンブリは、特性解析される光学系(この場合はレンズ206)とビーム部分204b専用の検出器アレイ207との間の光学距離を変えるために、ビームスプリッタ208および210に対して横方向に近付いたり離れたりすることができる。器械200のこの変形例は、3つ以上の光学経路長を含むように延長されうる。1つの検出器によって検出されるように再結合する前にさらなるビーム分割器を追加して複数の光学経路長を生成することができる。先の実施例で説明した他の変形例(移動鏡ビーム分割器をビームスプリッタ208および/または210に置き換えるなど)の使用も想定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学システムを特性解析する方法であって、
入射ビームを前記光学システムの光学面上の連続スポットに向けて、各スポットに対して射出ビームを生成するステップと、
前記光学システムから第1の光学距離のところで各射出ビームの横位置を決定するステップと、
前記光学システムから第2の光学距離のところで各射出ビームの横位置を決定するステップと、
前記射出ビームの前記決定済み横位置を使用することによって、前記光学面上の各スポットでの前記光学系のパワーを導き出すステップと
からなる方法。
【請求項2】
前記射出ビームの前記決定済み横位置を使用して、各スポットでの前記射出ビームの角度を計算するステップと、
前記スポットでの前記射出ビームの前記計算済み角度から各スポットでの前記光学システムのパワーを導き出すステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の光学距離にある各射出ビームの横位置が、前記第1の光学距離にある各射出ビームの横空間座標を決定することによって決定され、
前記第2の光学距離にある各射出ビームの横位置が、前記第2の光学距離にある各射出ビームの横空間座標を決定することによって決定されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
光学システムの光パワーをシステムの光学面上にマッピングするための方法であって、
各連続スポットに射出光ビームを生成するように、入射光ビームを表面上の各連続スポットに既知の入射角で当てるステップと、
各連続スポットに対して、前記光学システムから第1の光学距離のところで前記射出ビームの第1の横空間座標を決定するステップと、
各連続スポットに対して、前記光学システムから前記第1の光学距離よりも大きい第2の光学距離のところで前記射出ビームの第2の横空間座標を決定するステップと、
各連続スポットに対して、前記光学システムの光パワーを前記スポットで、(i)前記第1および第2の座標から前記射出ビームの角度を計算すること、および(ii)前記射出ビームの前記計算済み角度を前記スポットでの前記それぞれの入射ビームの前記入射角と比較すること、によって導き出すステップと
からなる方法。
【請求項5】
前記入射ビームを移動させることによって前記入射光ビームを前記光学面上の各連続スポットに当てさせるステップ
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記光学面を移動させることによって前記入射光ビームを前記光学面上の各連続スポットに当てさせるステップ
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記表面上の各スポットに別の入射ビームを順次生成するステップ
を含む、請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記光学システムが、前記光学面を通過する光軸を有し、
前記入射ビームが、前記表面上の各スポットで前記光軸と平行のままであることを特徴とする、請求項4から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
各スポットでの前記射出ビームを前記第1の光学距離を通じて第1の光検出器アレイへ方向付け、前記第1のアレイを使用して前記第1の空間座標を決定するステップと、
各スポットでの前記射出ビームを前記第2の光学距離を通じて第2の光検出器アレイへ方向付け、前記第2のアレイを使用して前記第2の空間座標を決定するステップと
を含む、請求項3から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
光検出器アレイを移動させて前記射出ビームを前記第1の光学距離のところで阻止し、それによって前記第1の空間座標を決定するステップ、または
前記光検出器アレイを移動させて前記射出ビームを前記第2の光学距離のところで阻止し、それによって前記第2の空間座標を決定するステップ
を含む、請求項3から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記射出ビームを各スポットから光検出器アレイに向けるステップと、
前記光学システムと前記光検出器アレイとの間の光学距離を変更して前記第1の光学距離に等しくし、それによって前記第1の空間座標を決定するステップと、
前記光学システムと前記光検出器アレイとの間の光学距離を変更して前記第2の光学距離に等しくし、それによって前記第2の空間座標を決定するステップと
を含む、請求項3から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記射出ビームを第1の部分と第2の部分に分割するステップと、
前記第1の部分を前記第1の光学距離を通じて方向付けて、前記射出ビームの前記第1の横座標の決定を可能にするステップと、
前記第2の部分を前記第2の光学距離を通じて方向付けて、前記射出ビームの前記第2の横座標の決定を可能にするステップと
を含む、請求項3から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記射出ビームを第3の部分にさらに分割するステップと、
前記第3の部分を第3の光学距離を通じて方向付けるステップと、
前記光学システムから第3の光学距離のところで前記射出ビームの前記第3の部分の空間座標を決定するステップと、
前記第1、第2および第3の横座標のうちの少なくとも2つを使用して、前記射出ビームの前記スポットでの射出角を決定するステップと
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記射出ビームが、
部分反射ビームスプリッタを使用すること、
移動反射器を使用して前記射出ビームを切り換えること、
前記ビーム部分のうちの少なくとも1つを別個に調節または検出すること、または
前記ビーム部分のうちの少なくとも1つの光学特性を別個に変更し、前記変更済みビーム部分を別個に検出すること
によって分割されることを特徴とする、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記ビーム部分のうちの少なくとも2つを共通光検出器アレイに向けるステップと、
前記共通アレイを使用して前記アレイの前記各ビーム部分のそれぞれの空間座標を別個に決定するステップと
を含む、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記光学システムが眼用レンズであり、前記光学面が前記レンズの前面または後面を含み、前記レンズが周辺境界を有することを特徴とする、前記方法が、
前記入射ビームを前記レンズの前記周辺境界を越えて方向付けるステップと、
前記検出済み境界に対する前記光学面上の前記スポットの配向を可能にするように前記レンズの前記境界を検出するステップと
を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記光学システムが角膜および網膜を有する目であり、
前記光学面が前記角膜表面を含み、
前記射出ビームが、前記網膜後方から前記角膜にかけて前記入射ビームを反射または散乱させることによって生成されることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
光学システムをシステムの光学面に対して特性解析するのに使用する器械であって、
狭い入射光ビームをスポットからスポットへ光学面上を移動させて、各スポットにある射出角を有する射出ビームを生成するためのスキャナ手段と、
前記光学システムから少なくとも2つの異なる光学距離のところで各スポットでの前記射出ビームの横空間座標を検出しかつ決定するようになされた検出器手段と、
前記決定済み横座標から各スポットでの前記射出ビームの前記射出角を計算するようになされたプロセッサ手段と
を備える器械。
【請求項19】
光学システムの光パワーの変化をシステムの光学面上に示すようになされた器械または装置であって、
狭い光ビームを光学面上のスポットからスポットへ各スポットに既知の入射角で順次走査し、それによってある射出角を有する各スポットからの射出ビームを生成するようになされたスキャナ手段と、
射出ビームの第1の横座標を示す第1の出力を前記光学面から第1の光学距離のところで生成するようになされ、かつ前記射出ビームの第2の横座標を示す第2の出力を前記光学面から第2の光学距離のところで生成するようになされた検出器手段と、
前記第1および第2の出力を受信し、前記光学面上の各スポットでの射出ビームの射出角を前記第1および第2の出力から決定し、各スポットでの前記射出角と前記入射角の差を計算し、それによって前記光学面上の光パワーの変化を示すことができるようになされたプロセッサ手段と
を備える器械または装置。
【請求項20】
前記検出器手段が、前記射出ビームの第3の座標を示す第3の出力を前記光学面からそれぞれが互いに異なる第3の光学距離のところで生成するようにもなされ、
前記プロセッサ手段が前記第3の出力を受信し、前記第1および第2の出力の少なくとも一方に加えて前記第3の出力を使用して、前記射出ビームの前記射出角を決定するようにもなされたことを特徴とする、請求項19に記載の器械。
【請求項21】
前記検出器手段が、
その上に入射する光ビームの横空間座標を出力するようになされた2次元光検出器アレイと、
各スポットからの前記射出ビームを阻止し、前記射出ビームの第1の部分を前記第1の光学距離を通じて前記アレイへ方向付け、前記射出ビームの第2の部分を前記第2の光学距離を通じて前記アレイへ方向付けするようになされた、前記光学システムと前記アレイの間に位置する少なくとも1つのビーム分割器と
を含むことを特徴とする、請求項18から20のいずれか一項に記載の器械。
【請求項22】
前記検出器手段が、
その上に入射する光ビームの空間座標を出力するようになされた、光学面から前記第1の光学距離のところに配置された第1の2次元光検出器アレイと、
その上に入射する光ビームの空間座標を出力するようになされた、光学面から前記第2の光学距離のところに配置された第2の2次元光検出器アレイと
を含むことを特徴とする、請求項18から20のいずれか一項に記載の器械。
【請求項23】
各スポットからの前記射出ビームを阻止して、前記射出ビームの第1の部分を前記第1のアレイに向け、かつ前記射出ビームの第2の部分を前記第2のアレイに向けるようになされた、光学システムと前記検出器アレイのそれぞれとの間に位置する少なくとも1つのビーム分割器
を含む、請求項22に記載の器械。
【請求項24】
前記検出器手段が、
その上に入射する光ビームの横空間座標を出力するようになされた2次元光検出器アレイであって、射出ビームの少なくとも一部を光学面から前記第1の光学距離のところで阻止するように移動可能であり、かつ/または、射出ビームの少なくとも一部を光学面から前記第2の光学距離のところで阻止するように移動可能である、2次元光検出器アレイ
を備えることを特徴とする、請求項18から20のいずれか一項に記載の器械。
【請求項25】
前記光学システムが、主光学面、光軸および周辺境界を有する眼用レンズを含み、
前記光学面が、前記主光学面の少なくとも一部を含み、
前記スキャナ手段が、前記入射ビームを前記光軸と平行になるように維持しながら前記光学面上に前記入射ビームを走査するようになされ、
前記スキャナ手段が、前記ビームをレンズの前記周辺境界を越えて走査するようになされ、かつ
前記プロセッサ手段が、前記レンズの前記周辺境界を識別しかつ前記境界内の前記光学面上に光パワーの変化を示すようになされることを特徴とする、請求項18から24のいずれか一項に記載の器械。
【請求項26】
前記光学系が、主光学面、光軸および周辺境界を有する眼用レンズを含み、
前記スキャナ手段が、前記入射ビームを前記光学面上に向け、かつ前記レンズを制御された形で移動させて入射ビームを光学面上のスポットからスポットへ効果的に走査するようになされることを特徴とする、請求項18から24のいずれか一項に記載の器械。
【請求項27】
前記光学システムが角膜および網膜を有する目を含み、前記光学面が角膜の少なくとも一部を含み、
射出ビームが網膜から前記角膜を通して反射または後方散乱され戻すようにスキャナ手段が入射ビームを角膜を通して目の中に向けるように配置され、かつ
前記検出器手段が、入射ビームが入射経路に沿って通過するように配置されたビーム分割器を含み、前記ビーム分割器が前記入射経路からの射出ビームを阻止しかつ偏向させるようになっていることを特徴とする、請求項18から23のいずれか一項に記載の器械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−518407(P2010−518407A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549746(P2009−549746)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際出願番号】PCT/AU2008/000183
【国際公開番号】WO2008/098293
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(509268613)ザ インスティチュート フォー アイ リサーチ リミテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】THE INSTITUTE FOR EYE RESEARCH LIMITED
【住所又は居所原語表記】Level 4, Rupert Meyers Building, Barker Street, University of New South Wales, Sydney, NSW 2052, Australia
【Fターム(参考)】