説明

光学シート

【課題】実用上十分な接着強度を有しながら、光拡散シートの持つ光拡散性能がレンズシートの持つ集光性を阻害することのない、積層一体化された光学シートを提供する。
【解決手段】ディスプレイ用バックライトユニットにおける照明光路制御に用いられる光学シート10であって、照明光の入射側から順に前記照明光を拡散させる光拡散シート1と、結合層2と、前記照明光の出射側表面に複数の単位レンズ3が形成されたレンズシート4と、が積層一体化され、且つ前記結合層2が屈折率1.4以下であり、且つ、前記結合層2の厚さが0.001mm以上、0.5mm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学シートに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に代表されるディスプレイユニットには、通常、片側、もしくは両側に設置された光源からの光をディスプレイ面上へ均一に導くため、裏面にパターン印刷、ないしはパターン形状が形成された導光板と、導光板上に重ねられる光拡散シート、更にその上に重ねられるレンズシートが使用されている。
【0003】
その際、上記光拡散シートは光を拡散させることで、導光板裏面のパターンを表示画面側から視認されることを防止する目的で使用される。また、レンズシートは光源で消費される電力を低減させるため、光を使用者(ディスプレイを観察する者)の視覚方向へ集光させる目的で使用されている。
【0004】
しかしながら、光拡散シートの有する光拡散性能と、光拡散シートの上に重ねられるレンズシートの有する集光性とは互いに相反する性能であるため、それぞれの部材を別工程で加工し組み込む必要があり、バックライトの組み立て工程が煩雑になるという問題を有していた。
【0005】
この問題を解決するために光拡散性と集光性を兼ね備えた多層構成、もしくは光拡散粒子が添加された単層のレンズシートの試みがなされてきている。(例えば、特許文献1、2参照)
【0006】
しかし、上記のような方法を用いてもレンズシートの表面に施された単位レンズの集光性能が設計の意図したとおりに発現し難く、パネルからの光が使用者の視覚方向以外にも多く拡散してしまうことによって集光性が損なわれるという問題点があった。
【特許文献1】特許第3732253号
【特許文献2】特開平09−304606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、実用上十分な接着強度を有しながら、光拡散シートの持つ光拡散性能がレンズシートの持つ集光性を阻害することのない積層一体化された光学シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記(1)〜(4)に記載の本発明により達成される。
(1)ディスプレイ用バックライトユニットにおける照明光路制御に用いられる光学シートであって、照明光の入射側から順に前記照明光を拡散させる光拡散シートと、結合層と、前記照明光の出射側表面に複数の単位レンズが形成されたレンズシートと、が積層一体化され、且つ前記結合層の屈折率が1.4以下であり、且つ、0.001mm以上、0.5mm以下であることを特徴とする光学シート。
(2)前記結合層はフッ素樹脂またはシリコーン樹脂である(1)に記載の光学シート。
(3)前記フッ素樹脂が非晶性パーフルオロ樹脂を含むものである(2)に記載の光学シート。
(4)前記シリコーン樹脂がアルコキシシランとシランカップリング材で構成された(2)に記載の光学シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、実用上十分な接着強度を有しながら、光拡散層の持つ光拡散性能がレンズシートの持つ集光性を阻害することのない積層一体化された光学シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の光学シートは、照明光の入射側から順に前記照明光を拡散させる光拡散シートと、接着層と、前記照明光の出射側表面に複数の単位レンズを備えたレンズシートと、が結合層により積層一体化されていると共に、前記結合層の屈折率が1.4以下であることを特徴とする。以下、図面を用いて本発明の光学シートを詳細に説明する。
図面1は本発明の光学シートの断面図である。
【0011】
本発明の光学シート10に用いられる光拡散シート1は、熱可塑性樹脂に光拡散粒子を含有させた樹脂組成物であることが好ましい。上記熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等を単独で、あるいはこれらの混合体や共重合体を用いることができる。
【0012】
上記光拡散粒子としては特に限定されないが、例えば架橋アクリル樹脂、メラミン樹脂、有機シリコーン樹脂、アクリル−スチレン共重合体、有機シリコーン−アクリル−スチレン共重合体等の有機系粒子、及び炭酸カルシウム、シリカ、酸化アルミニウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、ガラスビーズ等の無機系粒子が挙げられ、これらを単独で使用しても、混合させて使用しても良い。光拡散粒子の平均粒子径は、0.5μm以上、40μm以下のものが好ましい。
【0013】
更に、本発明の光学シート10に用いられる結合層2は屈折率が1.4以下であることを特徴とする。
屈折率が1.4よりも大きくなると光拡散シート1から出た拡散光の結合層2における屈折が少なくなるため、レンズシート4の集光効果が低くなり、結合層2のメリットが少なくなってしまう。
【0014】
結合層2の形成方法としてはコーティングなどでレンズシート4や光拡散シート1に後から塗工する方法や溶融押出時に塗工しながら、ラミネート、転写などの方法により光拡散シート1とレンズシート4とを結合層2を介して一体化することができる。
【0015】
上記光拡散シート1の厚みは、0.05mm以上、3mm以下であることが好ましい。更に好ましくは0.1mm以上、2.5mm以下である。光拡散シート1の厚みについては、上記範囲とすることで特に積層一体化された光学シートの取り扱い性に優れ、薄肉化を図ることができる。
【0016】
本発明の光学シート1に用いられる結合層2に使用される材料は、フッ素樹脂又はシリコーン樹脂などを用いることができる。これらの樹脂を用いることにより屈折率を低くすることができる。
【0017】
フッ素樹脂としては非晶性パーフルオロ樹脂化合物を用いることができる。フッ素原子の導入による化合物の低屈折率化が可能となり、かつ非晶性構造とすることにより結晶化による白濁化を防ぐことが可能となる。
【0018】
シリコーン樹脂としてはアルコキシシランとシランカップリング材により構成された材料を使用することができる。アルコキシシランとシランカップリング材導入により、化合物中に極微細多孔が形成され、低屈折化が可能となる。
【0019】
上記結合層2の厚みは、0.001mm以上、0.5mm以下であることを特徴とする。好ましくは0.005mm以上、0.3mm以下である。結合層2の厚さを上記範囲とすることで、結合層2による光の屈折や実用上十分な接着性が確保できる。
【0020】
本発明の光学シート1に用いられるレンズシート4は、光出射側の表面に複数の単位レンズ3が形成されている。単位レンズ3が形成されていることで出射光を使用者(ディスプレイを観察する者)の視覚方向への集光性を良好とすることができる。
【0021】
上記レンズシート4は、透明熱可塑性樹脂であることが好ましい。
上記透明熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等を単独、あるいはこれらの混合体あるいは共重合体を用いることができる。
【0022】
レンズシート4に形成される複数の単位レンズ3の形状はとしては特に限定されないが、例えば球面レンズ、非球面レンズ、半円柱状のレンチキュラーレンズないしは三角柱形状のプリズムレンズ等を用いることができる。
【0023】
単位レンズ3のレンズシート4への形成方法は、例えば熱プレス成形、溶融押出成形によるロール転写、射出成形による金型転写等の方法でレンズシート基材表面に形成させても良いし、熱硬化性樹脂あるいは紫外線硬化性樹脂をレンズシート表面にストライプ状あるいはドット状に塗工することで形成しても良い。
【0024】
上記単位レンズ3の高さは特に限定されないが、0.005mm以上、0.1mm以下が好ましい。上記単位レンズ3を含むレンズシート4の厚みは特に限定されないが、0.05mm以上、0.3mm以下であることが好ましい。
【0025】
本発明の光学シート10に用いられる光拡散シート1と、レンズシート4とを結合層2を介して積層一体化させる方法としては特に限定されないが、光拡散シート1とレンズシート4とをあらかじめ別々に作製してどちらかに結合層2を塗布して貼り合せする、あるいは光拡散シート1を溶融押出法で製造しながらあらかじめ結合層2を塗工したレンズシート4をラミネートする方法を取っても良い。また光拡散シート1を溶融押出法で製造しながら、結合層2を塗布してレンズシート4をラミネートする方法をとっても良い。
また光拡散シート1またはレンズシート4と結合層2との密着が悪い場合にはプライマーをそれぞれまたは片側に塗布してもよい。
【0026】
以下に、本発明を実施するための代表的な形態を実施例にて示すが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
<実施例1>
ポリカーボネートを溶融押出して、頂角95°、ピッチ50μmのプリズム形状が形成された冷却ロールにダイスから出てきたポリカーボネートシートを押し付け、トータル厚さ0.1mmのポリカーボネートシートに転写させ、レンズシートを得た。
続いてポリカーボネート樹脂に架橋アクリル樹脂を混入した0.3mm厚の光拡散シートを作製した。光拡散シートに結合層として屈折率1.34のフッ素樹脂(非晶性パーフルオロ樹脂:旭硝子社製 品番CT−P10)を塗布し、レンズシートとラミネートにより貼り合せを行い、80℃で硬化させ、光シートを得た。結合層の厚さは0.005mmであった。
【0028】
<実施例2>
結合層が屈折率1.36のシリコーン樹脂(東亞合成社製 品番AC−SQ−F)をフッ素樹脂の代わりに用いた以外は実施例1と同様にして光学シートを得た。結合層の厚さは0.005mmであった。
【0029】
<実施例3>
結合層が屈折率を1.4のシリコーン樹脂(東亞合成社製 品番OX−SQ−F)をフッ素樹脂の代わりに用いた以外は実施例1と同様にして光学シートを得た。結合層の厚さは0.005mmであった。
【0030】
<比較例1>
ポリカーボネートを溶融押出して、頂角95°、ピッチ50μmのプリズム形状が形成された冷却ロールにダイスから出てきたポリカーボネートシートを押し付け、トータル厚さ0.1mmのポリカーボネートシートに転写させ、レンズシートを得た。
続いてポリカーボネート樹脂に架橋アクリル樹脂を混入した0.3mm厚の光拡散シートを作製した。光拡散シートに結合層として屈折率1.46のシリコーン樹脂(東亞合成社製 品番OX−SQ)を塗布し、レンズシートとラミネートにより貼り合せを行い、80℃で硬化させ、光学シートを得た。結合層の厚さは0.005mmであった。
【0031】
<比較例2>
結合層の厚さを0.0005mmにした以外は実施例1と同様にして光学シートを得た。
【0032】
<比較例3>
結合層の厚さを1.0mmにした以外は実施例1と同様にして光学シートを得た。
【0033】
<比較例4>
結合層を用いず、光拡散シートとレンズシートを単に重ね合わせて光学シートを得た。
【0034】
得られた光学シートについて、次のように集光性、および光拡散シートと結合層との接着性を評価した。
【0035】
<集光性>
導光板の両端に光源をもつバックライトユニットの導光板上に光学シートを設置し、輝度計(ハイランド社製 RISA−CD7)を用いその正面輝度を測定した。
【0036】
<接着性>
光学シートを25mm幅に裁断し、オートグラフ引張試験機(島津製作所社製 AG−100kNG)にて片側のチャックにレンズシートと結合層とを、他方に光拡散シートをチャックし、180°引き剥がし接着力を測定した。
引き剥がしスピードは300mm/minとした。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表1の結果から明らかなように、光拡散シートと、結合層と、照明光の出射側表面に複数の単位レンズが配置されてなるレンズシート、が積層一体化されていると共に、結合層の屈折率が1.4以下であり、且つ、結合層の厚さが0.001mm以上、0.5mm以下である本発明の光学シートの実施例1〜3においては、結合層を有さない比較例4とほぼ同等の優れた集光性を有していた。また、実用上十分な接着性を有しており、集光性と接着強度に優れた光学シートであることが証明された。これに対し、結合層の屈折率が本発明の規定を超えた比較例1及び結合層の厚みが本発明の規定を超えた比較例3においては集光性に劣り、結合層の厚みが本発明の規定未満である比較例2においては接着性が不十分であった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 光拡散シート
2 結合層
3 単位レンズ
4 レンズシート
10 光学シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ用バックライトユニットにおける照明光路制御に用いられる光学シートであって、
照明光の入射側から順に前記照明光を拡散させる光拡散シートと、結合層と、前記照明光の出射側表面に複数の単位レンズが形成されたレンズシートと、が積層一体化されていると共に、前記結合層の屈折率が1.4以下であり、且つ、前記結合層の厚さが0.001mm以上、0.5mm以下であることを特徴とする光学シート。
【請求項2】
前記結合層が、フッ素樹脂またはシリコーン樹脂を含有する請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
前記フッ素樹脂が非晶性パーフルオロ樹脂を含むものである請求項2に記載の光学シー ト。
【請求項4】
前記シリコーン樹脂がアルコキシシランとシランカップリング材とで構成された請求項2に記載の光学シート。

【図1】
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【公開番号】特開2010−61016(P2010−61016A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228615(P2008−228615)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】