説明

光学デバイス用梱包ケース

【課題】 光学情報のノイズとなり、画像悪化の原因となる異物が光学デバイスの主面や側端部に付着するのを抑制できるより信頼性の高い梱包ケースを提供する。
【解決手段】 上面が開口した収容部が形成されてなる下ケースと、当該下ケースの開口部と下ケースに収納された光学デバイス4を被覆する上ケース3とからなる光学デバイス用梱包ケースであって、上記下ケースの収容部の底面に上記光学デバイスの一側面を固着する接着部材Tが設けられ、当該接着部材の端部T1が上記光学デバイスの一側面に接触しない位置に配置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ローパスフィルタ、波長板、複屈折板等の光学デバイスを収納する梱包ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学ローパスフィルタ等の光学デバイスは、ビデオカメラや電子スチルカメラ等に用いられている。これら光学デバイスは、特にその光学的情報を含む光線の入射面(主面)には、ゴミ、ホコリ等が付着しないように配慮することが求められており、製造並びに梱包はクリーンルーム内で行われる。従来、特許文献1に開示されているように、光学デバイスの梱包ケースは、上面が開口した収容部が形成されてなる下ケースと、当該下ケースの開口部と下ケースに収納された光学デバイスを被覆する上ケースとを有しており、上記下ケースの収容部の底面に上記光学デバイスの側端部を固定する両面接着テープ等の接着部材が設けられている。そして、これら光学デバイスを上ケースで被覆し、ホコリ等の侵入を防いでいる。
【特許文献1】特開2000−296894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような従来の構成においては、光学デバイスのエッジ部や側面、角部が収容部に接触することがあり、上述のケースに収納した場合、輸送時等において光学デバイスが遊動することにより、ケース内壁を切削し、樹脂クズ、ゴミ等の発生することがあった。また、光学デバイス自身の欠けがゴミとなることもあった。さらに、光学デバイスを両面接着先着テープなどの接着部材に固着する際に、当該接着部材の上部から押圧することで接着部材の端部から粘着剤がはみ出すことがあり、光学デバイスの主面あるいは側端部に付着し、当該粘着剤の付着部分、上記樹脂クズ、ゴミ、塵などが付着することもあった。このような異物が光学デバイスの主面に付着すると、所望の光学情報に対してノイズとなり、画像悪化の原因となるため、ユーザーでは光学デバイスにエアーブロー等をかけて異物を除去する必要があった。しかしながら、上記粘着剤に付着した異物は、エアーブロー等では完全に除去しきれないことがあり、付着残存した異物が粘着剤の経時的変化に伴って後になって析出することもあった。
【0004】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、光学情報のノイズとなり、画像悪化の原因となる異物が光学デバイスの主面や側端部に付着するのを抑制できるより信頼性の高い梱包ケースを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明の光学デバイス用梱包ケースは、特許請求項1に示すように、上面が開口した収容部が形成されてなる下ケースと、当該下ケースの開口部と下ケースに収納された光学デバイスを被覆する上ケースとからなる光学デバイス用梱包ケースであって、上記下ケースの収容部の底面に上記光学デバイスの一側面を固着する接着部材が設けられ、当該接着部材の端部が上記光学デバイスの一側面に接触しない位置に配置している。
【0006】
また、特許請求項2に示すように、上記構成に加えて、上記下ケースの収容部の底面に凸状部が形成され、当該凸状部の上面に上記光学デバイスを固着する接着部材が設けられるとともに、上記接着部材のうち上記光学デバイスと固着される領域の端部の位置が上記凸状部の頂点より下に配置している。
【0007】
また、特許請求項3に示すように、上記構成に加えて、上記下ケースは複数の開口部が形成されて複数の収納部を有しており、各収納部の底面に上記接着部材が設けられてなる。
【0008】
また、特許請求項4に示すように、上記構成に加えて、上記接着部材は、上記収容部の底面に貼り付ける側の粘着力より、上記光学デバイスに貼り付ける側の粘着力を弱めてなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1によれば、接着部材の端部が上記光学デバイスの一側面に接触しない位置に配置しているので、接着部材のはみ出した粘着剤が光学デバイスの主面あるいは側端部に付着することがなくなり、当該粘着剤の付着部分に、樹脂クズ、ゴミ、塵などの異物が付着させることがない。その結果、光学情報のノイズとなり、画像悪化の原因となる異物が光学デバイスの主面に付着するのを抑制できる。
【0010】
本発明の請求項2によれば、上記下ケースの収容部の底面に凸状部が形成され、当該凸状部の上面に上記光学デバイスを固着する接着部材が設けられてなるとともに、上記接着部材のうち上記光学デバイスと固着される領域の端部の位置が上記凸状部の頂点より下に配置している。この構成により、上記光学デバイスが下ケースの底面から上部に浮き上がった状態で固定されるので、光学デバイスのエッジ部や側面、角部が収容部の底面に接触することが抑えられ、ケース内壁を切削し、樹脂クズ、ゴミ等の発生することがない。また、上記凸状部の上部に光学デバイスを固着することで、梱包下ケースの接着部材から光学デバイスを容易に着脱でき、光学デバイスの収容作業性・取り出し作業性を向上させる。凸状部が、製品の輸送時の振動、衝撃を吸収する事ができる。さらに、凸状部より上部に光学デバイスを位置させ、凸状部の頂点より下に配置した接着部材の端部が光学デバイスの一側面に接触することが一切なくなるので、接着部材のはみ出した粘着剤が光学デバイスの主面あるいは側端部に付着することがなくなる。このため、上記光学デバイスの粘着剤付着部分に、上記樹脂クズ、ゴミ、塵などが付着させることがない。加えて、上記光学デバイスと接触しない凸状部から下側の接着部材の領域に、樹脂クズ、ゴミ、塵などの不要な異物を吸着させることも可能となる。その結果、光学情報のノイズとなり、画像悪化の原因となる異物が光学デバイスの主面に付着するのをより一層抑制できる。
【0011】
本発明の請求項3によれば、上記作用効果に加えて、上記下ケースは複数の開口部が形成されて複数の収納部を有しており、各収納部の底面に上記接着部材が設けられているので、上記収納部に沿って接着部材を設けることで極めて容易に貼り替えることができ、梱包ケースの再利用が行える。しかも、各収納部の底面のみに上記接着部材を設ければ、消耗品としての接着部材の使用をできるだけ少なくして、梱包ケースの維持コスト抑制に大きく貢献できる。
【0012】
本発明の請求項4によれば、上記作用効果に加えて、接着部材が梱包下ケースからはがれることなく、光学デバイスを取り外しやすくする。従って、光学デバイスを梱包下ケースの接着部材から容易に着脱でき、光学デバイスの収容作業性・取り出し作業性をより一層向上させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態について光学ローパスフィルタ用梱包ケースを例にとり、図面とともに説明する。図1は本発明の第1の実施形態を示す分解斜視図であり、図2は図1に光学ローパスフィルタを挿入し、上ケースを閉蓋した状態でのA−A線に沿った断面図である。
【0014】
本発明の実施形態の梱包ケースは、その材料がポリエチレンテレフタレートやポリエチレン、あるいは塩化ビニール等の合成樹脂からなり、下ケースと当該下ケースを被覆する上ケース3とから構成される。このうち、下ケースは、第1の下ケース1と第2の下ケース2を有する上下分割構造となっており、お互いに着脱自在の構造となっている。
【0015】
第1の下ケース1は、光学ローパスフィルタ4を搭載する土台となるものであり、上面に後述する第2の下ケースに形成された2カ所の開口部に対応する位置にそれぞれ凸状部11が形成されている。凸状部11の上面には当該凸状部より幅広の両面接着テープT(接着部材)が貼り付けられる。このとき、両面接着テープの端面部分T1は、上記凸状部11の頂点111より下に位置する底面に回り込むように配置されている。また、第1の下ケース1の側端部分には、後述する第2の下ケース2を取り付けるための係止部12が形成されている。
【0016】
上記両面接着テープTは、例えば、ベースフィルムの表裏に接着面が形成されており、表裏の粘着力は、裏面側(上記収容部の底面に貼り付ける側)の粘着力より、表面側(上記光学ローパスフィルタの貼り付ける側)の粘着力を弱めているものが好ましい。このように両面接着テープの表裏面において、粘着力差をもたせる構成にするためには、表裏面で粘着強度差のある両面接着テープを用いるのが一般的であるが、両面テープの上面により粘着強度の弱い片面テープの接着面を上面にして取り付けたり、両面テープの上面により粘着強度の弱い両面テープを取り付けたりしてもよい。この場合、極めて安価で、手軽に、上記収容部の底面に貼り付ける側の粘着力より、上記光学ローパスフィルタに貼り付ける側の粘着力を弱めてなる両面接着テープが得られる。なお、接着部材として両面接着テープを例にしているが、これに限らず粘着材や他の接着部材であってもよい。
【0017】
第2の下ケース2は、光学ローパスフィルタ4を搭載する位置決めとなるものであり、上面に2カ所の開口部21が形成されている。各開口部21には各光学ローパスフィルタの配置する部分に応じて幅広の切り込み22がそれぞれ形成され、各光学ローパスフィルタの収容部を構成している。また、第2の下ケース2の下端部内側部分には、係止部23が形成されており、上記第1の下ケースの係止部12と係止し組み立てることで下ケースが完成する。
【0018】
上ケース3は、下方に開口した断面逆凹形で、上記組み立てられた下ケースと嵌め合う用に構成されている。
【0019】
光学ローパスフィルタ4(光学デバイス)は、例えば、全体として直方体形状で、複屈折板、波長板等の複数の光学板を貼り合わせたもの、あるいはこれらのうち単板のものからなり、光学的情報を含む光線を入射する主面には誘電体多層膜等のコーティング膜が形成されている。なお、光学ローパスフィルタは直方体形状を例示したが、平面視長円形状等他の形状のものでもよい。
【0020】
そして、上記下ケース1の各収容部に、光学ローパスフィルタ4を挿入し、当該光学ローパスフィルタの一側面を上記両面接着テープTに接着する。その後、上ケース3にて閉蓋し、両ケースの周縁にセロハンテープ等を接着固定し、梱包が完了する。なお、図2のT2は、接着固定後に両面接着テープの端部T1からはみ出した粘着剤である。このとき、両面接着テープの端面部分T1を、上記凸状部11の頂点111より下に位置する底面に回り込むように配置されているので、上記粘着材T2が上記光学ローパスフィルタ4の一側面に直接接触することがない。しかも、上記光学ローパスフィルタ4と接触しない凸状部11から下側の両面接着テープTの領域によって、梱包ケース内に残存した一部の樹脂クズ、ゴミ、塵などの不要な異物を吸着除去され、上部の光学ローパスフィルタの主面に再付着することがなくなる。
【0021】
次に、本発明の他の実施形態を図3〜図6とともに説明する。各図は光学ローパスフィルタを挿入し、上ケースを閉蓋した状態での断面図である。なお、上記第1の実施形態と同様の部分については同番号を付すとともに説明の一部を割愛した。
【0022】
図3(第2の実施形態)の梱包ケースは、下ケース5と当該下ケースを被覆する上ケース3とから構成される。下ケース5は、上面に2カ所の凹所(開口部)51が形成されている。本実施形態では、上記凹所の底面より幅広の両面接着テープT(接着部材)を用い、当該両面接着テープTを凹所の底面から側面に沿って貼り付けている。このため、両面接着テープの端部T1が上記光学ローパスフィルタ4の一側面に直接接触しない位置に配置されるので、両面接着テープTの粘着剤が光学ローパスフィルタの側端部に付着することがなくなる。従って、図3の実施形態の梱包ケースでは、凸状部を形成することなく、上記第1の実施形態と同様の効果を得るとともに、下ケースを2分割構成としていないので、梱包ケースの部品点数の削減化が行える。また、両面接着テープと光学ローパスフィルタの接触面積が大きくなるので、搭載時の安定性が高まる。両面接着テープと光学ローパスフィルタの接触しない領域も大きくなるので、この部分に、樹脂クズ、ゴミ、塵などの不要な異物を吸着させることも可能となる。
【0023】
図4(第3の実施形態)の梱包ケースは、下ケース5と当該下ケースを被覆する上ケース3とから構成される。下ケース5は、上面に2カ所の凹所(開口部)51と、当該凹所の底面の中央が円弧状に隆起した凸状部52が形成されている。当該凸状部52の上部には粘着材Nが塗布されている。このとき、粘着材の端部N1は、上記凸状部51の頂点521から下側に回り込むように配置されている。図4の実施形態の梱包ケースでは、接着部材として両面接着テープではなく、粘着材を用いているので、凸状部の形状に制限されることなく容易に設けることができる。また、光学ローパスフィルタの搭載によりはみ出した余分な粘着剤は、凸状部の下側へ回り込み光学ローパスフィルタに付着することが一切ない。また、円弧状に隆起した凸状部としたことで、光学ローパスフィルタの取り外しが行いやすくなる。さらに、ケース内壁ともこすれにくくなるので、樹脂クズ、ゴミ等の発生することが抑制できる。
【0024】
図5(第4の実施形態)の梱包ケースは、下ケース5と当該下ケースを被覆する上ケース3とから構成される。下ケース5は、上面に2カ所の凹所(開口部)51と、当該凹所の底面にそれぞれ複数の凸状部53が形成されている。本実施形態では1つの凹所に対して例えば2つの凸状部53,53を形成しており、当該凸状部53,53の上部には両面接着テープTが貼り付けられる。このとき、両面接着テープの端面部分T1は、上記2つの凸状部53,53の幅よりも広く、当該2つの凸状部53,53の上面を横架した状態で、上記凸状部53,53の頂点531,531より下に位置する底面に回り込むように配置されている。なお、両面接着テープTについては、各凸状部53を横架することなく、それぞれに沿って貼り付けてもよく、個別に貼り付けてもよい。また、凸状部の断面形状として、方形状や台形状などの上部に平坦面を有する形状に限らず、円形状、楕円形状、あるいは三角形状などの線状、もしくは点状の形状であってもよい。図5の実施形態の梱包ケースでは、上記第1の実施形態に対して、下ケースを2分割構成としていないので、梱包ケースの部品点数の削減化が行え、凸状部を複数形成しているので、光学デバイスの安定搭載とクッション性能の向上が行える。
【0025】
図6(a)は第5の実施形態を示す下ケースの平面図であり、図6(b)は図6(a)に光学ローパスフィルタを挿入し、上ケースを閉蓋した状態でのB−B線に沿った断面図である。図6(第5の実施形態)の梱包ケースは、下ケース5と当該下ケースを被覆する上ケース3とから構成される。下ケース5は、上面に2カ所の凹所(開口部)51と、当該凹所の底面にそれぞれ複数の凸状部54が形成されている。本実施形態では上記光学ローパスフィルタの一側面の面積より小さく形成された凸状部54を形成しており、当該凸状部54の上部には粘着材Nが塗布されている。このとき、粘着材の端部N1は、上記凸状部54の頂点541から下側に回り込むように形成されている。図6の実施形態の梱包ケースでは、上記第1の実施形態に対して、下ケースを2分割構成としていないので、梱包ケースの部品点数の削減化が行える。接着部材として両面接着テープではなく、粘着材を用いているので、凸状部の形状に制限されることなく容易に設けることができる。また、上記凸状部54を上記光学ローパスフィルタの一側面の面積より小さく形成しているので、光学ローパスフィルタの稜部分に粘着材Nが接触することがなく、光学ローパスフィルタの搭載によりはみ出した余分な粘着剤が、光学ローパスフィルタの主面側に回り込むこともない。
【0026】
本発明は、その精神または収容な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施できるので、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求範囲によって示すものであって、明細書本文に拘束されるものではない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す分解斜視図
【図2】図1のA−A線に沿った断面図
【図3】第2の実施形態を示す断面図
【図4】第3の実施形態を示す断面図
【図5】第4の実施形態を示す断面図
【図6】第5の実施形態を示す断面図
【符号の説明】
【0028】
1,2,5 下ケース
3 上ケース
4 光学デバイス(光学ローパスフィルタ)
T 両面接着テープ
N 粘着材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口した収容部が形成されてなる下ケースと、当該下ケースの開口部と下ケースに収納された光学デバイスを被覆する上ケースとからなる光学デバイス用梱包ケースであって、
上記下ケースの収容部の底面に上記光学デバイスの一側面を固着する接着部材が設けられ、当該接着部材の端部が上記光学デバイスの一側面に接触しない位置に配置されてなることを特徴とする光学デバイス用梱包ケース。
【請求項2】
上記下ケースの収容部の底面に凸状部が形成され、当該凸状部の上面に上記光学デバイスを固着する接着部材が設けられてなるとともに、上記接着部材のうち上記光学デバイスと固着される領域の端部の位置が上記凸状部の頂点より下に配置されてなることを特徴とする特許請求項1記載の光学デバイス用梱包ケース。
【請求項3】
上記下ケースは複数の開口部が形成されて複数の収納部を有しており、各収納部の底面に上記接着部材が設けられてなることを特徴とする特許請求項1または特許請求項2記載の光学デバイス用梱包ケース。
【請求項4】
上記粘着部材は、上記収容部の底面に貼り付ける側の粘着力より、上記光学デバイスに貼り付ける側の粘着力を弱めてなることを特徴とする特許請求項1〜3のうちいずれか1項記載の光学デバイス用梱包ケース。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−232320(P2006−232320A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−48823(P2005−48823)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】