光学フィルタ、蛍光分析用フィルタセット及びその光学フィルタを用いた蛍光測定装置
【課題】スペクトル上で不連続な2つの透過領域と2つの反射領域を有するフィルタの透過領域の幅を広げ、より少ない積層数で必要な反射率を実現する。
【解決手段】使用波長領域において透明な基板と、その基板の一方の表面に形成され、高屈折率層と低屈折率層とが交互に順次積層された積層構造をもち、所定の波長より短波長側と長波長側の一方が透過域となり他方が反射域となっている透過フィルタと、その基板の他方の表面に形成され、高屈折率層と低屈折率層とが交互に順次積層された積層構造をもち、透過フィルタの透過域内で、かつ前記所定の波長から離れた波長域に反射領域をもつノッチフィルタとを備えたことによって、スペクトル上で不連続な2つの透過領域と2つの反射領域を有するようにする。
【解決手段】使用波長領域において透明な基板と、その基板の一方の表面に形成され、高屈折率層と低屈折率層とが交互に順次積層された積層構造をもち、所定の波長より短波長側と長波長側の一方が透過域となり他方が反射域となっている透過フィルタと、その基板の他方の表面に形成され、高屈折率層と低屈折率層とが交互に順次積層された積層構造をもち、透過フィルタの透過域内で、かつ前記所定の波長から離れた波長域に反射領域をもつノッチフィルタとを備えたことによって、スペクトル上で不連続な2つの透過領域と2つの反射領域を有するようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明な基板上に高屈折率層と低屈折率層とが交互に順次積層された積層構造をもつ光学フィルタ、複数の光学フィルタを組み合わせた蛍光分析用フィルタセット及びその光学フィルタを用いた蛍光測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学フィルタ(以下では単にフィルタと称する。)として透明な基板上に高屈折率層と低屈折率層とが交互に順次積層された積層構造をもつものが用いられている。
【0003】
フィルタは1波長帯を透過させ、その他の波長帯をカットする製品は数多く存在する。フィルタの用途は多々あるが、例えば蛍光分析においてそのようなフィルタを用いて2種類以上の蛍光試薬を検出するためには、後で詳細に述べるように、フィルタの機械的な切替え機構が必要となって光学系が複雑化するとともに、蛍光分析に支障をきたすことがある)。
【0004】
複数の反射領域をもつフィルタも提案されている(特許文献1参照。)。そこでは、透明基板上に高屈折率層と低屈折率層とが交互に順次積層されて形成された繰り返し層が2つ設けられ、それぞれの繰り返し層において高屈折率層の光学膜厚の平均値と低屈折率層の光学膜厚の平均値との和が垂直入射光に対するそれぞれの反射波長に略等しくなるように設定されている。具体的な例として、(0.55H 0.45L)27 0.55H 0.476L (0.619H 0.501L)27 0.619H 0.251L (λ=488nmとして)又は(0.489H 0.404L)27 0.489H 0.427L (0.55H 0.45L)27 0.55H 0.225L(λ=543nmとして)という膜設計値が挙げられている。この2通りの表記は2つの反射領域の中心波長λのそれぞれについて光学膜厚の表記をしたものであり、同一のフィルタの設計値を表している。記号H、Lはそれぞれ高屈折率層、低屈折率層、その前の数字はその層が設計の中心波長の何倍の光学膜厚をもつかを示し、括弧の右肩の数値(この例では「27」)は括弧内の構成をその数値の回数だけ繰り返した構成であることを示している。
【特許文献1】特開2006−23471号公報
【特許文献2】特表2002−533096号公報
【特許文献3】特開2001−299366号公報
【特許文献4】特開2002−300894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上に紹介した複数の反射領域をもつフィルタでは、透過領域及び反射領域の幅は積層膜構成自体により決まるので、帯域幅を広げるのに制約が大きい。また、上の例では所望の反射率を得るために100層以上の膜構成となっており、物理的な膜厚にすると約15μmとなり、フィルタの生産性と再現性に問題がある。
【0006】
本発明の1つの目的はスペクトル上で不連続な2つの透過領域と2つの反射領域を有するフィルタであって、上に紹介した複数の反射領域をもつフィルタに比べて、透過領域の幅を広げるのが容易で、かつより少ない積層数で必要な反射率を実現することのできるフィルタを得ることである。
【0007】
また、本発明の他の目的は、本発明のフィルタを利用することにより構成が簡略化されるにも拘わらず測定精度の向上した蛍光測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、透明ガラス基板の一方の表面に短波長透過フィルタ又は長波長透過フィルタを成膜し、透明ガラス基板の他方の表面にノッチフィルタを成膜することにより、透過フィルタとノッチフィルタの組合せとして2つの透過領域と2つの反射領域をもつフィルタを形成しようとするものである。
【0009】
すなわち、本発明のフィルタは、使用波長領域において透明な基板と、前記基板の一方の表面に形成され、高屈折率層と低屈折率層とが交互に順次積層された積層構造をもち、所定の波長より短波長側と長波長側の一方が透過域となり他方が反射域となっている透過フィルタと、前記基板の他方の表面に形成され、高屈折率層と低屈折率層とが交互に順次積層された積層構造をもち、前記透過フィルタの透過域内で、かつ前記所定の波長から離れた波長域に反射領域をもつノッチフィルタとを備えたことによって、スペクトル上で不連続な2つの透過領域と2つの反射領域を有するようにしたものである。
【0010】
本発明では透過フィルタとノッチフィルタは基板のそれぞれの表面に互いに独立した積層構造として形成する。ノッチフィルタは1波長帯を反射し、その他の波長帯を透過させるよう設計を行う。短波長透過フィルタ又は長波長透過フィルタはノッチフィルタの短波長側又は長波長側の透過域の任意の波長から反射領域となるように設計を行う。これらの設計の組合わせにより、各フィルタの膜厚を薄くしても所望の反射率を達成することができ、生産性を向上させることができる。基板の片面に形成される積層膜の膜厚は、実施例に示した励起光フィルタでは片面の膜厚が約3μm、蛍光フィルタでは片面の膜厚が約5μmである。先に紹介した複数の反射領域をもつフィルタでは、所望の反射率を得るためには膜厚が約15μmとなったのに比べるとかなり薄くなる。本発明では積層膜は基板の両面に形成されるので、両面の膜厚は片面の膜厚の合計となる。単純に片面の膜厚の2倍としても約15μmよりはかなり小さい。成膜工程は片面ずつ行うので、片面に形成される膜厚によって生産性が大きく影響を受ける。すなわち、基板の片面に形成される膜厚が厚くなると、連続して行う成膜時間の増加、蒸着材料などの消耗品の不足といったことが生じる。消耗品不足に対応するには、材料の自動供給装置など、特別な装置が必要になるからである。
【0011】
また、透過フィルタにおける透過域と反射域との間の境界の波長(「所定の波長」と称しているもの。)とノッチフィルタの反射領域の中心波長は互いに独立して設定することができる。そして、ノッチフィルタの反射領域の中心波長を透過フィルタの所定の波長からどれくらい離して設定するかによって、透過フィルタの所定の波長からノッチフィルタの反射領域の間に存在する透過領域の幅を任意に設定することができる。
【0012】
第1の形態は、透過フィルタが所定の波長よりも短波長側が透過域となっている短波長透過フィルタであり、透過領域と反射領域は短波長側から順に第1の透過領域、第1の反射領域、第2の透過領域及び第2の反射領域となっているものである。
【0013】
第2の形態は、透過フィルタが所定の波長よりも長波長側が透過域となっている長波長透過フィルタであり、透過領域と反射領域は短波長側から順に第1の反射領域、第1の透過領域、第2の反射領域及び第2の透過領域となっているものである。
【0014】
ノッチフィルタと短波長透過フィルタ又は長波長透過フィルタの設計の組合わせを変えることにより、後述する2波長帯用励起光フィルタ、2波長帯用蛍光フィルタ及び2波長帯用ダイクロイックフィルタの設計が可能となる。そして、本発明のフィルタセットは、2種類の蛍光試薬で標識された試料の分析を行う蛍光分析装置に使用されるものであり、好ましい第1の形態としては、2種類の蛍光試薬を励起する2つの励起波長を透過させる励起光フィルタ及び蛍光試薬から発生する2つの蛍光波長を透過させる蛍光フィルタであって、励起光フィルタ及び蛍光フィルタの少なくとも一方が本発明の光学フィルタからなることを特徴としている。励起光フィルタとして本発明の光学フィルタを用いる場合、本発明のフィルタセットには、2つの透過領域が2つの励起波長を含むように設計される一つの2波長帯用励起光フィルタを含む。蛍光フィルタとして本発明のフィルタを用いる場合、本発明のフィルタセットには、2つの透過領域が蛍光試薬から発生する2つの蛍光波長を含むように設計される一つの2波長帯用蛍光フィルタを含む。ここで、フィルタの透過領域が励起波長又は蛍光波長を「透過させる」又は「含む」というのは、フィルタの透過領域が励起波長域又は蛍光波長域よりも広くなければならないことを意味するものではなく、励起波長域の少なくとも一部又は蛍光波長域の少なくとも一部を透過させるという意味である。
【0015】
本発明のフィルタセットの好ましい第2の形態としては、2種類の蛍光試薬を励起する2つの励起波長を透過させる励起光フィルタ、蛍光試薬から発生する2つの蛍光波長を透過させる蛍光フィルタ、及び、それらの2つの励起波長を反射しそれらの蛍光波長を透過させるダイクロイックフィルタであって、励起光フィルタ、蛍光フィルタ及びダイクロイックフィルタの少なくともいずれかひとつのフィルタが本発明の光学フィルタからなることを特徴とする。特に、ダイクロイックフィルタに本発明のフィルタを用いる場合は、本発明のフィルタセットには、2つの反射領域に2つの励起波長が、2つの透過領域に2つの蛍光波長が含まれる、一つの2波長帯用ダイクロイックフィルタを含む。励起光フィルタ又は蛍光フィルタとして本発明の光学フィルタを用いる場合は、上述の通りである。
【0016】
2波長帯用励起光フィルタ又は2波長帯用蛍光フィルタを含むフィルタセットでは、好ましくは、2波長帯用励起光フィルタと2波長帯用蛍光フィルタの反射領域はスペクトル上で反射率90%以上で交差する特性を有するように設定されている。本発明では透過領域又は反射領域の設定の自由度が高いので、そのような設定も容易である。その結果、励起光成分が試料で反射して蛍光フィルタに入射しても殆どが反射されるため、光源からの漏れ光が検出器に入射するのが低減する。さらに、2波長帯用励起光フィルタと2波長帯用蛍光フィルタの反射領域がスペクトル上で反射率99%以上で交差する特性を有するように設定することもでき、その場合には光源からの漏れ光が検出器に入射するのをさらに抑えることができる。
【0017】
2波長帯用ダイクロイックフィルタを含むフィルタセットでは、好ましくは、励起光フィルタと2波長帯ダイクロイックフィルタの反射領域はスペクトル上で反射率90%以上で交差する特性を有するように設定されている。その結果、励起フィルタを透過した励起光成分を確実に試料に照射させることができる。さらに、励起光フィルタと2波長帯ダイクロイックフィルタの反射領域が95%以上で交差する特性を有するように設定することもできる。この場合には、励起光フィルタを透過した励起光成分をさらに確実に試料に照射させることができる。
【0018】
2波長帯蛍光フィルタを含むフィルタセットでは、好ましくは、2波長帯用蛍光フィルタは蛍光試薬の発光スペクトルをカバーするように透過領域幅が広げられている。本発明によれば透過領域幅はノッチフィルタと短波長透過フィルタ又は長波長透過フィルタの設計の組合わせにより設定できるので、透過領域幅を広げることが容易であるので、蛍光測定のように所望の透過領域幅に設定することができる。その結果、蛍光信号の増大を実現することができる。
【0019】
このような好ましい第1及び第2の形態のフィルタセットを使用して蛍光測定を行えば、検出器における蛍光検出のS/N(信号対ノイズ)比が向上する。
【0020】
本発明の蛍光測定装置は、第1、第2の2種類の蛍光試薬で標識された試料を測定する蛍光測定装置である。蛍光測定装置の第1の形態は、第1蛍光試薬を励起することのできる第1励起波長を含む光を発生する第1励起光源及び第2蛍光試薬を励起することのできる第2励起波長を含む光を発生する第2励起光源を有し、それぞれの光源からの光を切り換えて共通の励起光光軸上に配置できるようにした励起光学系と、励起光学系に配置され、第1励起波長と第2励起波長をそれぞれ含む2つの透過領域をもつように設定された励起光フィルタと、本発明の光学フィルタからなり、第1励起波長と第2励起波長をそれぞれ含む2つの反射領域と、蛍光試薬から発生する2つの蛍光波長を透過させる2つの透過領域をもち、励起光学系からの励起光を試料方向に反射させ、試料からの蛍光を受光して透過させるように配置された単一の2波長帯用ダイクロイックフィルタと、蛍光試薬から発生する2つの蛍光波長をそれぞれ含む2つの透過領域をもつように設定され、ダイクロイックフィルタを透過した蛍光を受光して透過させる位置に配置された蛍光フィルタと、蛍光フィルタを透過した蛍光を受光する位置に配置された光検出器とを備えている。ここで、第1蛍光試薬を励起することのできる第1励起波長を「含む」光を発生する第1励起光源というのは、第1励起光源の発光スペクトルが、第1励起波長域よりも広くなければならないことを意味するものではなく、第1励起光源の発光スペクトルが第1励起波長域の少なくとも一部を含むという意味である。第2励起光源についても同様に解釈される。
【0021】
この場合、励起光フィルタと蛍光フィルタの一方又は両方は2つの透過領域をもつように設定された本発明の光学フィルタからなる単一の2波長帯用フィルタであることが好ましい。
【0022】
蛍光測定装置の第2の形態は、第1蛍光試薬を励起することのできる第1励起波長を含む光を発生する第1励起光源及び第2蛍光試薬を励起することのできる第2励起波長を含む光を発生する第2励起光源を有し、それぞれの光源からの光を切り換えて共通の励起光光軸上に配置して試料に照射する励起光学系と、励起光学系に配置され、第1励起波長と第2励起波長をそれぞれ含む2つの透過領域をもつように設定された励起光フィルタと、試料から発生する蛍光を検出する検出器と、試料に対して励起光学系の反対側で試料からの蛍光を受光する位置に配置され、受光した蛍光を検出器へ導く蛍光受光光学系と、蛍光受光光学系に配置され、蛍光試薬から発生する2つの蛍光波長をそれぞれ含む2つの透過領域をもつように設定された蛍光フィルタとを備え、励起光フィルタと蛍光フィルタの一方又は両方は2つの透過領域をもつように設定された本発明の光学フィルタからなる単一の2波長帯用フィルタである。
【0023】
この蛍光測定装置の測定対象となる試料の一例はDNAであり、測定項目は例えば一塩基多型(SNP)である。
【発明の効果】
【0024】
本発明のフィルタでは、所望の反射率を達成するための積層構造の膜厚を薄くすることができるので、生産性を向上させることができる。さらに、透過フィルタの所定の波長からノッチフィルタの反射領域の間に存在する透過領域の幅を任意に設定することができる。
【0025】
本発明のフィルタセットを使用すれば、蛍光測定装置において従来は複数必要であったフィルタが統合でき、部品点数の削減と光学系の簡素化を図ることができる。
さらに、本発明の蛍光測定装置ではフィルタもダイクロイックフィルタも機械的な切換えを必要としないので、蛍光測定を高精度に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
2種類の蛍光試薬を用いて分析を行う蛍光測定装置に使用されるフィルタセットとしては、蛍光試薬を励起する2つの励起波長を透過させる2つの透過領域をもつ2波長帯用励起光フィルタ、蛍光試薬から発生する2つの蛍光波長を透過させる2つの透過領域をもつ2波長帯用蛍光フィルタ、及び2つの励起波長を反射させる2つの反射領域と2つの蛍光波長を透過させる2つの透過領域をもつ2波長帯用ダイクロイックフィルタが必要である。そのような各フィルタの要求仕様の一例を表1〜表3に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
以下に設計例を示す。
フィルタの積層構造を構成する膜材料は、高屈折率膜材料がTa2O5(屈折率は波長に依存するが、約2.2)、TiO2(屈折率は波長に依存するが、約2.4)、Nb2O5、HfO2もしくはAl2O3、又はこれらを含む混合物、低屈折率膜材料がSiO2(屈折率は波長に依存するが、約1.46)又はその混合物である。ここでは、高屈折率膜材料としてTa2O5を使用し、低屈折率膜材料としてSiO2を使用する。基板は光学ガラスBK7とした。
【0031】
成膜は蒸着法により波長シフトの生じない手法で行い、基板温度を250℃とした。通常の蒸着方法では,膜の密度がバルク以下となる。密度が低いと隙間に水分などが進入し、使用環境によっては分光特性が変化(シフト)する。そこで、分光特性のシフトを抑制するために、イオンアシスト蒸着などのイオンプロセスなどを併用した蒸着を行うことで膜の充填密度をバルクの状態に近づけて水分の侵入を防止した。「波長シフトの生じない手法」とはそのような成膜方法を意味する。
【0032】
(1)励起光フィルタの設計は以下の通りに行った。
励起光フィルタは基板の一方の表面に短波長透過フィルタを形成し、基板の他方の表面にノッチフィルタを形成することにより製作した。
【0033】
短波長透過フィルタのベース膜構成を(0.5L H 0.5L)18(中心波長λ=663.0nmとして)として設計を行った。ここで、記号HはTa2O5膜、記号LはSiO2膜であり、それぞれの前の数字(数字が記載されていないのは、「1」を表す。)はその層が設計の中心波長の1/4波長厚の何倍の光学膜厚をもつかを意味する。括弧の右肩の数値(この例では「18」)は括弧内の構成をその数値の回数だけ繰り返すことを意味している。光学膜厚は物理的な膜厚とその膜材質の屈折率との積である。以下に示すベース膜構成の意味も同様である。なお、ベース膜構成とは最適化するための基礎になる設計(ベース設計)に基づく積層構成であることを意味している。
【0034】
したがって、この短波長透過フィルタのベース膜構成は、最下層から順に(0.5L H L H L …… H 0.5L)というようにSiO2膜とTa2O5膜が交互に積層されて全体で37層の積層構造となる。
【0035】
そのフィルタの光学特性を示すスペクトルを図1に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。この設計のベース膜構成では、その光学特性は反射域に近い側の透過域にリップルが発生している。なお、図1中において、「Illumination: WHITE」は測定に用いた照射光が白色光であること、「Medium: AIR」は空気中での測定であること、「Substrate: BK7」は基板がBK7ガラスであること、「Exit: BK7」は出射媒質がBK7ガラスであること、「Detector: IDEAL」は検出器が完全(感度の波長依存性などがないこと)であること、「Angle: 0.0 (deg)」は測定光を基板に対して垂直方向から入射させたこと、「Reference: 663.0 (nm)」は663.0nmを中心波長として積層構造を設計したこと、「Polarization: Ave -」は無偏光であること、「First surface: Front」は基板表面から光が入射することを意味している。
【0036】
次に、このベース膜構成を基にリップルの低減を図るため最適化設計を行った。最適化設計は積層構造の両端部の幾らかの層の膜厚を調整することにより行う。このベース膜構成の最適化だけでリップルが十分に低減できない場合は、さらに両端に幾らかの層を調整層として付加する。リップルを低減するための最適化設計方法は既知であり、市販のソフトウエアTF Calc(登録商標)(Spectra.Inc.社の製品)を使用して実行した。以下に示すフィルタの最適化設計も同様に実行した。
【0037】
その最適化設計されたフィルタの光学特性を示すスペクトルを図2に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。反射域に近い側の透過域にあったリップルが低減しているのがわかる。
【0038】
ノッチフィルタのベース膜構成を(L 3H)20(中心波長λ=527.0nmとして)として設計を行った。そのフィルタの光学特性を示すスペクトルを図3に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。この設計のベース膜構成では、その光学特性は反射領域の両側の透過域で反射領域に近い側にリップルが発生している。
【0039】
反射帯の幅は高屈折率材料と低屈折材料の屈折率の差で決まる。屈折率の差が大きいほど反射帯の幅は広がる。ただし、最適化設計によって反射帯の幅を広げることもできるが、製造上の膜厚誤差によっては反射帯の一部にリップルが生じ反射率が低下することもある。
【0040】
このベース膜構成を基にリップルの低減を図るため最適化設計を行った後のフィルタの光学特性を示すスペクトルを図4に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。反射領域に近い側の透過域にあったリップルが低減しているのがわかる。
【0041】
このように最適化設計を行った短波長透過フィルタをガラス基板の一方の表面に形成し、最適化設計を行ったノッチフィルタをそのガラス基板の他方の表面に形成した状態の励起光フィルタの光学特性を示すスペクトルを図5に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。この光学特性の励起光フィルタは表1に示された要求仕様を満たしている。
【0042】
(2)蛍光フィルタの設計は以下の通りに行った。
蛍光フィルタは基板の一方の表面に長波長透過フィルタを形成し、基板の他方の表面にノッチフィルタを形成することにより製作した。
【0043】
長波長透過フィルタのベース膜構成を(0.5H L 0.5H)17(中心波長λ=450.0nmとして)として設計を行った。そのフィルタの光学特性を示すスペクトルを図6に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。この設計のベース膜構成では、その光学特性は反射域に近い側の透過域にリップルが発生している。
【0044】
この設計を基にリップルの低減を図るため最適化設計を行った後のフィルタの光学特性を示すスペクトルを図7に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。反射域に近い側の透過域にあったリップルが低減しているのがわかる。
【0045】
ノッチフィルタのベース膜構成を(L 3H)17(中心波長λ=585.0nmとして)で設計を行った。そのフィルタの光学特性を示すスペクトルを図8に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。この設計のベース膜構成では、その光学特性は反射領域の両側の透過域で反射領域に近い側にリップルが発生している。
【0046】
このベース膜構成を基にリップルの低減を図るため最適化設計を行った後のフィルタの光学特性を示すスペクトルを図9に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。反射領域に近い側の透過域にあったリップルが低減しているのがわかる。
【0047】
このように最適化設計を行った長波長透過フィルタをガラス基板の一方の表面に形成し、最適化設計を行ったノッチフィルタをそのガラス基板の他方の表面に形成した蛍光フィルタの光学特性を示すスペクトルを図10に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。この光学特性の蛍光フィルタは表2に示された要求仕様を満たしている。
【0048】
(3)ダイクロイックフィルタの設計は以下の通りに行った。
ダイクロイックフィルタは基板の一方の表面に長波長透過フィルタを形成し、基板の他方の表面にノッチフィルタを形成することにより製作した。
【0049】
長波長透過フィルタのベース膜構成を(0.5H L 0.5H)19(中心波長λ=497.0nmとして)として設計を行った。そのフィルタの光学特性を示すスペクトルを図11に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。この設計のベース膜構成では、その光学特性は反射域に近い側の透過域にリップルが発生している。
【0050】
この設計を基にリップルの低減を図るため最適化設計を行った後のフィルタの光学特性を示すスペクトルを図12に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。反射域に近い側の透過域にあったリップルが低減しているのがわかる。
【0051】
ノッチフィルタのベース膜構成を(L 3H)17(中心波長λ=625.0nmとして)で設計を行った。そのフィルタの光学特性を示すスペクトルを図13に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。この設計のベース膜構成では、その光学特性は反射領域の両側の透過域で反射領域に近い側にリップルが発生している。
【0052】
このベース膜構成を基にリップルの低減を図るため最適化設計を行った後のフィルタの光学特性を示すスペクトルを図14に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。反射領域に近い側の透過域にあったリップルが低減しているのがわかる。
【0053】
このように最適化設計を行った長波長透過フィルタをガラス基板の一方の表面に形成し、最適化設計を行ったノッチフィルタをそのガラス基板の他方の表面に形成したダイクロイックフィルタの光学特性を示すスペクトルを図15に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。この光学特性のダイクロイックフィルタは表3に示された要求仕様を満たしている。
【0054】
前述の設計を基に製作した励起光フィルタa、蛍光フィルタb及びダイクロイックフィルタcからなるフィルタセットの光学特性をいっしょにして図16に示す。励起光フィルタaと蛍光フィルタbの反射領域は反射率99%程度で交差していることがわかる。また、励起光フィルタaとダイクロイックフィルタcの反射領域は反射率95%程度で交差していることがわかる。
【0055】
図17に既存のバンドパスフィルタと上述の実施例で作製した2波長帯用励起光フィルタ及び2波長帯用蛍光フィルタの光学特性を示す。aは実施例の蛍光フィルタ、bは実施例の励起光フィルタである。c〜fは既存のバンドパスフィルタであり、cは励起光フィルタ(黄色励起光用)、dは蛍光フィルタ(黄色励起光用)、eは励起光フィルタ(青色励起光用)、fは蛍光フィルタ(青色励起光用)である。実施例の各フィルタは、既存品と比較して透過領域幅は広く、透過率が高いことがわかる。実施例のフィルタと既存品を同じ蛍光測定装置に装着して比較した蛍光測定においても、実施例のフィルタは既存品より高い蛍光信号を得ることができた。
【0056】
図18にLED及び蛍光試薬の吸収・放出波長帯の一例を示す。aは蛍光試薬FAMの吸収スペクトル、bは同蛍光試薬FAMが放出する蛍光スペクトルであり、cは青色LEDの発光スペクトルである。これらのスペクトルから青色LEDによって蛍光試薬FAMを励起して蛍光を放出させることができる。また、dは蛍光試薬Redmond Redの吸収スペクトル、eは同蛍光試薬Redmond Redが放出する蛍光スペクトルであり、fは黄色LEDの発光スペクトルである。これらのスペクトルから黄色LEDによって蛍光試薬Redmond Redを励起して蛍光を放出させることができる。これらのLED及び蛍光試薬を使用する限り、上記の実施例の各フィルタを含むフィルタセットを使用すれば良好なS/N比で蛍光測定を行うことができることがわかる。
【0057】
次に、本発明のフィルタセットを用いるのに適した蛍光測定装置への適用例を示す。その好適な一例はDNAの一塩基多型を検出する遺伝子多型検出装置である。
【0058】
遺伝子多型を利用して病気の罹りやすさなどを予測する方法又は装置として、下記のようなものが提案されている。
【0059】
患者が敗血症に罹りやすいか否か及び/又は敗血症に急速に進行しやすいか否かを決定するために、患者から核酸試料を採取し、該試料中におけるパターン2対立遺伝子、又はパターン2対立遺伝子と連鎖不平衡であるマーカー遺伝子を検出し、パターン2対立遺伝子又はパターン2対立遺伝子と連鎖不平衡であるマーカー遺伝子が検出されれば該患者が敗血症に罹りやすいと判定する(特許文献2参照。)。
【0060】
ヒトのflt−1遺伝子中の1又はそれ以上の単一ヌクレオチド多型性の分析のために、ヒトの核酸の1又はそれ以上の位置:1953、3453、3888(各々EMBL受理番号X51602中の位置に従う)、519、786、1422、1429(各々EMBL受理番号D64016中の位置に従う)、454(配列番号3に従う)及び696(配列番号5に従う)の配列を決定し、これらの多型性を参照することによりflt−1リガンド仲介疾患を診断する(特許文献3参照。)。
【0061】
SNP部位の塩基を判別する、いわゆるタイピングについては多くの手法が報告されている。そのうちの代表的なものは次の方法である。
【0062】
比較的に少量のゲノムDNAを用いて数十万箇所に及ぶSNP部位についてタイピングを行なうために、少なくとも一つの一塩基多型部位を含む複数の塩基配列を、ゲノムDNA及び複数対のプライマーを用いて同時に増幅し、増幅した複数の塩基配列を用いて、当該塩基配列に含まれる一塩基多型部位の塩基をタイピング工程により判別する。そのタイピング工程として、インベーダ法又はタックマンPCR法を用いる(特許文献4参照。)。
【0063】
これらの方法では、DNAの一塩基多型を検出するために蛍光試薬を用いることが一般的である。蛍光試薬を検出するためには、蛍光試薬を励起するための光源(励起光源)と、蛍光試薬から放出される光(蛍光)を検出するための検出器と、励起光源からの光が直接検出器に入るのを防ぐためのフィルタが必要である。
【0064】
従来の蛍光試薬検出のための典型的な部品構成を図19に示す。光源2からの光はコリメートレンズ4を通った後、第1のフィルタ(励起光フィルタ)6を透過することで、蛍光試薬の励起に必要な波長帯のみが選択的に取り出される。次にダイクロイックフィルタ8によって、蛍光試薬の励起に必要な波長帯のみが選択的に反射され、レンズ10を通してサンプル12に照射される。サンプル12の蛍光試薬からの蛍光はレンズ10で集められ、第2のフィルタ(ダイクロイックフィルタ8)によって蛍光の波長帯のみが選択的に透過する。ダイクロイックフィルタ8を透過した光は第3のフィルタ(蛍光フィルタ)13によって蛍光以外の不要な光を除去した後に、レンズ14を通して検出器16に集められ検出される。
【0065】
励起光源2にはレーザーやランプ、発光ダイオード(LED)などが用いられるが、近年では高輝度のLEDを用いられることが多い。それはLEDがレーザーよりも小型・安価で、さらにランプに比べて長寿命・高効率であるためである。
【0066】
また、検出器16には光電子増倍管(ホトマルチプライヤー:PMT)、フォトダイオード(PD)又は用途に応じて電荷結合素子(CCD)やC−MOSイメージセンサなどが主に使用される。
【0067】
フィルタ6,8,13はガラスなどの透明の基材に、真空蒸着などの方法によって薄膜を形成して、選択的に光を透過するようにしたものが使用される。
【0068】
これらの光学部品の中でも特にフィルタ6,8,13は蛍光測定の際の信号とノイズの比(S/N比)を決定付ける重要な部品であり、目的の蛍光物質の波長特性に適したものを選択する必要がある。また、光源2にレーザーやLEDなどのスペクトル幅の比較的狭いものを使用する場合には、目的の蛍光物質が効率よく励起できるような波長帯のものを選ばなければならない。
【0069】
これに対して、DNAの一塩基多型(SNP)の検出において、対象とするサンプルが野生型のホモ、変異型のホモ、又はヘテロのいずれであるかを判別するためには、通常2種類以上の蛍光試薬が使用される。つまり、例えば野生型を検出するプローブには蛍光試薬Aで標識しておき、変異型を検出するプローブには蛍光試薬Bで標識しておく。サンプルと2種類のプローブとを反応させた後に、蛍光試薬Aからの信号と蛍光試薬Bからの信号をそれぞれ検出する。その結果、蛍光試薬Aからの信号のみが得られた場合はそのサンプルが野生型のホモであることが分かる。同様にして、蛍光試薬Bからの信号のみが得られた場合は変異型のホモ、両方の蛍光試薬からの信号が得られた場合にはヘテロであることが分かる。
【0070】
このように、光学部品は蛍光試薬個々に応じて特性の異なるものを選ぶ必要があるのに対して、SNPの検出のためには2種類以上の蛍光試薬を使用する必要がある。そのため、各々の蛍光試薬からの信号を検出するために、光学系を蛍光試薬ごとに複数搭載する方法や、機械的に光学部品を切り換えて複数の蛍光試薬に対応する方法が採られている。
【0071】
2種類以上の蛍光試薬を検出するために、それぞれの蛍光試薬に対応した光学系を複数搭載する方法では、光学系全体が大型になる欠点がある。例えば2種類の蛍光試薬に対応した光学系を構成するためには、光源、検出器、フィルタ、レンズなど図19に示す全ての部品を個別に配置しなければならないため、その大きさは1種類の蛍光試薬の光学系に比べて2倍の大きさになる。
【0072】
また、蛍光試薬ごとに異なる光学系を使用するため、それぞれで光学部品の調整をする必要があり、手間がかかるだけでなく光学系ごとに調整のばらつきが大きく生じることになる。そのため、SNPのアレル判定のために複数の蛍光試薬の間での蛍光信号の比を計算する際に、その結果が調整のバラつきを大きく反映したものとなり、正しいSNPのアレル判定を困難なものにしている。
【0073】
さらに、蛍光試薬ごとに異なる光軸をもつ光学系から構成されるために、1つのサンプルに対して2種類以上の蛍光を測定するにはサンプル又は光学系の少なくともどちらか一方をモーターなどで動かす必要がある。モーターなどによる駆動のための機構が必要なため、装置が複雑かつ大型になるのに加えて、駆動の際の誤差が蛍光測定の誤差となり得る。これにより、SNPのアレル判定のために複数の蛍光試薬の間での蛍光信号の比を計算する際に、その計算結果が駆動のバラつきを大きく反映したものとなり、正しいSNPのアレル判定を困難なものにしている。
【0074】
以上のように、2種類以上の蛍光試薬を検出するために、それぞれの蛍光試薬に対応した光学系を複数搭載する方法では、光学系だけでなくその周辺の機構部品が複雑になり、蛍光試薬間での測定のばらつきの原因となる。その結果としてSNPのアレル判定が不正確なものになりがちであるという問題点がある。
【0075】
機械的に光学部品を切り換えて複数の蛍光試薬に対応する方法は、主に複数のフィルタが搭載された円盤を、モーターなどで動かして目的の蛍光試薬に適した波長特性のものに切り換えることで実現される。この方法では複数の蛍光試薬に対してレンズや検出器といった部品が共通で使え、さらに複数の蛍光試薬を測定するためにサンプル又は光学系をモーターなどで駆動する必要がないため、前述の方法に比べてより安定した測定が可能であることが特長である。
【0076】
ただし、複数のフィルタを蛍光試薬に応じて切り換える必要があるために、モーターなどの駆動部品が必要になり、さらに複数のフィルタを搭載した円盤も大きなものになってしまう。また、光学部品をモーターで動かすために測定が不安定になりがちである。特にタイクロイックフィルタを使用する構成では、サンプルに照射される励起光の光軸をそのダイクロイックフィルタで90度に折り曲げることになるが、そのダイクロイックフィルタをモーターで切り換えた場合、少しの誤差が光軸の大きなズレとなることになる。これにより、SNPのアレル判定のために複数の蛍光試薬の間での蛍光信号の比を計算する際に、その計算結果が駆動のバラつきを大きく反映したものとなり、正しいSNPのアレル判定を困難なものにしている。
【0077】
以上のように、2種類以上の蛍光試薬を検出するために、機械的に光学部品を切り換えて複数の蛍光試薬に対応する方法では、フィルタを切り換える機構部品が複雑になり、装置が大型・複雑なものになるという問題点がある。また、構成によっては蛍光測定が不安定になる可能性を含んでおり、SNPのアレル判定が不正確なものになりがちであるという問題点がある。
【0078】
上述の問題点を解決するために、2種類以上の蛍光試薬を検出するために、2つ以上の波長帯を透過することのできる本発明の実施例のフィルタを使用した。例として、2種類の蛍光試薬を検出するための、2つの波長帯を透過することのできる励起光フィルタ、ダイクロイックフィルタ及び蛍光フィルタを使用した場合の構成を図20に示す。この例では、光源として2種類のLEDを使用し、検出器としてフォトダイオードを使用しているが、これに限定されるものではない。
【0079】
蛍光試薬の励起効率が高い波長の2種類のLED20,22を光源として使用する。サンプルを標識している蛍光試薬として、波長470〜490nm(青色)で励起したときに波長510〜530nm(緑色)の蛍光を発する蛍光試薬Aと、波長580〜600nm(黄色〜オレンジ)で励起したときに波長620〜640nm(赤色)の蛍光を発する蛍光試薬Bを使用した場合の例で考えると、この場合には青色のLEDと黄色(又はオレンジ色)のLEDを使用するのが適している。それらのLED20,22からの光をそれぞれレンズ4a,4bによって平行光にした後、第1のダイクロイックフィルタ28で1つの光軸にする。ここでのダイクロイックフィルタ28は、黄色の波長帯を透過して青色の波長帯を反射させるような、所定の波長を境にして透過領域と反射領域に分かれた従来のダイクロイックフィルタでよい。
【0080】
次に、青色と黄色の光を透過させて緑色と赤色の光を反射することのできる実施例の励起光フィルタ30を通過させる。さらに青色と黄色の2つの波長帯を反射させて緑色と赤色を透過させることのできる実施例のダイクロイックフィルタ32を経て下部に配置されたサンプル12部分へ折り返される。その後、レンズ10で集光され蛍光試薬で標識されたサンプル12に照射される。
【0081】
サンプル12に励起光が照射され、青色と黄色の2つの光によってそれぞれ励起された2種類の蛍光試薬からの蛍光は、緑色と赤色というように異なる2つの波長を持っている。それらの光は再びサンプル部上方に配置されたレンズ10で集光され、ダイクロイックフィルタ32を透過する。その後、緑色と赤色の2つの波長帯を透過させて、青色と黄色を反射することのできる実施例の蛍光フィルタ34を透過する。最終的にそれらの光はレンズ14で集光され、フォトダイオード16で電気信号に変換される。
【0082】
蛍光試薬Aの信号を検出する場合は青色のLED20のみを点灯させ、黄色のLED22は消灯させる。すると蛍光試薬Aのみが青色LED20によって励起されて蛍光を発し、一方蛍光試薬Bは励起されず蛍光を発することがない。こうすることで蛍光試薬Aのみの信号を検出することができる。次に蛍光試薬Bの信号を検出する場合は黄色のLED22のみを点灯させ、青色のLED20は消灯させる。すると今度は逆に蛍光試薬Bのみが黄色LED22によって励起されて蛍光を発し、逆に蛍光試薬Aは励起されず、蛍光を発しない。このように、2種類のLED20,22を点灯・消灯するだけで共通のフォトダイオード16で2つの蛍光試薬からの信号をそれぞれ独立に読み取ることができる。
【0083】
図20の装置では光源として2種類のLED20,22を備え、LED20,22からの励起光をそれぞれのレンズ4a,4bを経てダイクロイックフィルタ28で1つの光軸にしているが、ダイクロイックフィルタ28を使用しない構成とすることもできる。ダイクロイックフィルタ28を使用しない構成では、LED20とレンズ4aを1組とし、LED22とレンズ4bを他の1組として、それらの組を切り換えて光軸上に配置できるようにすればよい。
【0084】
図20に示した実験装置を用いて、2つの透過領域を持つフィルタがSNPのアレル判定に有効であることを検証した。光源として5Wの青色(blue)及び黄色〜オレンジ(amber)の高輝度発光ダイオード(LED)20,22を使用した。使用したLEDの発光スペクトルを図4(a)に示す。点灯されたLED20,22からの光は直径20mm、焦点距離30mmの平凸レンズ4a又は4bによって平行光にされてダイクロイックフィルタ28で反射又は透過して励起光フィルタ30に入射される。励起光フィルタ30の透過特性は図21(b)に示すように、波長が460〜490nmと570〜590nmでは光を透過し、520〜560nmと620nm〜では光を透過しない。このように異なる2つの透過領域を持ったフィルタ30を用いることで、2種類のLED20,22のいずれに対しても有効な特性を1枚のフィルタ30で実現することができる。励起光フィルタ30を透過した光は、次にダイクロイックフィルタ32で図の下方向に折り返される。このダイクロイックフィルタ32の透過特性を図21(c)に示す。このダイクロイックフィルタ32では45度の角度で入射した光のうち、波長が460〜490nmと570−590nmの光は反射され、520〜560nmと620nm〜の光は透過する。ダイクロイックフィルタ32で反射された光は直径12mm、焦点距離12mmの平凸レンズで集光され、サンプル12に照射される。
【0085】
サンプル12からの蛍光は同じ平凸レンズ10で集光され、ダイクロイックフィルタ32を透過し、さらに蛍光フィルタ34に入射する。この蛍光フィルタ34の透過特性を図21(d)に示す。この蛍光フィルタ34は520〜540nmと630〜660nmでは光を透過させ、〜490nmと560〜600nmでは光を透過させない。蛍光フィルタ34を透過した光は直径12mm、焦点距離12mmの平凸レンズ14で集光され、フォトダイオード16で電気信号に変換される。フォトダイオード16からの電流は電流−電圧変換回路(図示略)で電圧信号に変換された後、デジタル電圧計(図示略)で測定を行う。
【0086】
サンプルとして別の実験装置でインベーダ反応が既に終了している精製DNAを使用した。測定する部分に配置するプローブを標識する蛍光試薬としてFAMとRedmond Redを使用した。これらの蛍光試薬の吸収スペクトルを図22(a)に、発光スペクトルを図22(b)に示す。プローブのうち野生型を検出するためのプローブはFAMで標識し、変異型を検出するためのプローブはRedmond Redで標識した。
【0087】
FAMの測定に青色LED20を使用し、Redmond Redの測定に黄色〜オレンジのLED22を使用して、サンプル12の信号を検出した結果を図23に示す。蛍光試薬からの蛍光は図中の「蛍光」で示され、サンプル部分での反射・散乱のノイズを図中の「反射・散乱光」で示す。「反射・散乱光」はサンプルの部分にサンプルに代えて水を配置して測定した結果である。このようにノイズに対して十分に大きな蛍光の信号を得ることができた。この測定の結果はFAMからの蛍光とRedmond Redからの蛍光の両方が検出されたことを示しているので、ここで使用したサンプルはヘテロの型をもつものであるといえる。
【0088】
2種類以上の蛍光試薬を検出するために、従来技術ではそれぞれの蛍光試薬に対応した光学系を複数搭載する方法が用いられていたが、光学系だけでなくその周辺の機構部品が複雑になり、蛍光試薬間での測定のばらつきの原因となっていた。また、その結果としてSNPのアレル判定が不正確なものになりがちであるという問題点があった。また従来技術の別の方法として用いられてきた、機械的に光学部品を切り換えて複数の蛍光試薬に対応する方法では、フィルタを切り換える機構部品が複雑になり、装置が大型・複雑なものになるという問題点があった。また、構成によっては蛍光測定が不安定になる可能性を含んでおり、SNPのアレル判定が不正確なものになりがちであるという問題点があった。
【0089】
それに対し、本発明の実施例のフィルタを使用した上記の方法では、レンズやフィルタ、検出器といった光学部品の大部分がいずれの蛍光試薬でも共通して用いられるために、蛍光試薬間での測定のばらつきを最小限にすることができる。また、複数の蛍光試薬を検出する際には複数のLEDの点灯・消灯を行うだけであり、モーターなどの機構部品を必要としないために安定して測定が行えるだけでなく、装置を小型にすることができる。それらの結果、SNPのアレル判定が簡便かつ正確に行なうことができる。
【0090】
図24に示す蛍光検出装置に示すように、落射光学系で用いる励起光フィルタ、蛍光フィルタ及びダイクロイックフィルタのうち、例えば、ダイクロイックフィルタ32にのみ本発明のダイクロイックフィルタを用いてもよい。その場合、励起光フィルタとしてはそれぞれ励起光の光路に単一の透過波長帯域をもつ励起光フィルタ30a,30bを配置する。また、蛍光受光側では、蛍光フィルタとしてもそれぞれの蛍光用に単一の透過波長帯域をもつ蛍光フィルタ34a,34bを使用する。例えば、蛍光受光側では、ダイクロイックフィルタ32を透過した蛍光を1つの透過域と1つの反射域をもつ通常のダイクロイックフィルタ28aを用いて蛍光の波長により2つの蛍光光路に分離し、一方の蛍光光路にはその蛍光用の透過波長帯域をもつ蛍光フィルタ34aを配置し、その蛍光フィルタ34aを透過した蛍光をレンズ14aで集光してフォトダイオード16aに入射させる。ダイクロイックフィルタ28aで分離された他方の蛍光光路にはその蛍光用の透過波長帯域をもつ蛍光フィルタ34bを配置し、その蛍光フィルタ34bを透過した蛍光をレンズ14bで集光してフォトダイオード16bに入射させる。フォトダイオード16a,16bではそれぞれの蛍光が電気信号に変換される。
【0091】
この実施例の場合でも、各励起光に応じたダイクロイックフィルタを光軸上に配置しなおす必要がなくなるため、装置の小型化に寄与できる。
【0092】
図24の実施例において、励起光フィルタ30a,30bに代えて本発明の2波長帯用励起光フィルタ30を用いて図20に示されるような励起光学系を組み合わせてもよい。
【0093】
また、図24の実施例において、蛍光フィルタ34a,34bに代えて本発明の2波長帯用蛍光フィルタ34を用いて図20に示されるような蛍光受光光学系を組み合わせてもよい。
【0094】
これまでの実施例はダイクロイックフィルタを使用した落射光学系を使用しているが、ダイクロイックフィルタを使用しなくても蛍光測定装置を実現することができる。図25はダイクロイックフィルタを使用しない蛍光測定装置の一実施例である。
【0095】
図25に示される蛍光測定装置では、励起光フィルタとしては図24の蛍光測定装置と同様にそれぞれ励起光の光路に単一の透過波長帯域をもつ励起光フィルタ30a,30bを配置し、蛍光受光側では図20の実施例と同様に2つの波長帯を透過することのできる蛍光フィルタ34を使用する。励起光学系のダイクロイックフィルタ28で1つの光軸にされた励起光は、レンズ10aで集光され蛍光試薬で標識されたサンプル12に斜め方向から照射される。
【0096】
サンプル12に励起光が照射され、それぞれの波長の励起光によってそれぞれ励起された2種類の蛍光試薬からの蛍光は、励起光学系とは反対側に配置された蛍光受光光学系のレンズ10bで集光され、2つの波長帯に透過域をもつ実施例の蛍光フィルタ34を透過する。最終的にそれらの光はレンズ14で集光され、フォトダイオード16で電気信号に変換される。この実施例では、蛍光受光光学系において検出器を共通化できるため、装置の小型化に寄与できる。
【0097】
図25に示される蛍光測定装置において、励起光学系として図20の実施例と同様に2つの波長帯を透過することのできる励起光フィルタ30を使用し、蛍光受光側では図24の実施例と同様にレンズ10bを透過した蛍光を1つの透過域と1つの反射域をもつ通常のダイクロイックフィルタ28aを用いて蛍光の波長により2つの蛍光光路に分離し、それぞれの蛍光光路に単一の透過波長帯域をもつ蛍光フィルタ34a,34bをそれぞれ配置するようにしてもよい。この実施例では、励起光学系において励起光フィルタの数を減らすことができるので、やはり装置の小型化に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】励起光フィルタ用の短波長透過フィルタのベース膜構成によるスペクトルを示す図である。
【図2】同フィルタの最適化設計後のスペクトルを示す図である。
【図3】励起光フィルタ用のノッチフィルタのベース膜構成によるスペクトルを示す図である。
【図4】同フィルタの最適化設計後のスペクトルを示す図である。
【図5】最適化設計された短波長透過フィルタと最適化設計されたノッチフィルタからなる一実施例の励起光フィルタのスペクトルを示す図である。
【図6】蛍光フィルタ用の長波長透過フィルタのベース膜構成によるスペクトルを示す図である。
【図7】同フィルタの最適化設計後のスペクトルを示す図である。
【図8】蛍光フィルタ用のノッチフィルタのベース膜構成によるスペクトルを示す図である。
【図9】同フィルタの最適化設計後のスペクトルを示す図である。
【図10】最適化設計された長波長透過フィルタと最適化設計されたノッチフィルタからなる一実施例の蛍光フィルタのスペクトルを示す図である。
【図11】ダイクロイックフィルタ用の長波長透過フィルタのベース膜構成によるスペクトルを示す図である。
【図12】同フィルタの最適化設計後のスペクトルを示す図である。
【図13】ダイクロイックフィルタ用のノッチフィルタのベース膜構成によるスペクトルを示す図である。
【図14】同フィルタの最適化設計後のスペクトルを示す図である。
【図15】最適化設計された長波長透過フィルタと最適化設計されたノッチフィルタからなる一実施例のダイクロイックフィルタのスペクトルを示す図である。
【図16】同実施例で製作されたフィルタセットのスペクトルを示す図である。
【図17】同実施例で製作された励起光フィルタと蛍光フィルタの光学特性を従来の既存の製品と比較して示すスペクトルの図である。
【図18】2種類のLED及び蛍光試薬の吸収・放出波長帯の一例のスペクトルを示す図である。
【図19】従来の蛍光検出装置を示す概略構成図である。
【図20】実施例のフィルタセットを使用した蛍光検出装置を示す概略構成図である。
【図21】2種類のLED及びフィルタセットのスペクトルを示す図である。
【図22】2種類の蛍光試薬の吸収スペクトルと発光スペクトルを示す図である。
【図23】インベーダ反応が終了したDNAサンプルの測定結果を示す図である。
【図24】実施例のフィルタを使用した蛍光検出装置の他の実施例を示す概略構成図である。
【図25】実施例のフィルタを使用した蛍光検出装置のさらに他の実施例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0099】
4a,4b,10,10a,10b,14 レンズ
12 サンプル
16 フォトダイオード
20,22 LED
28,32 ダイクロイックフィルタ
30 励起光フィルタ
34 蛍光フィルタ
【技術分野】
【0001】
本発明は透明な基板上に高屈折率層と低屈折率層とが交互に順次積層された積層構造をもつ光学フィルタ、複数の光学フィルタを組み合わせた蛍光分析用フィルタセット及びその光学フィルタを用いた蛍光測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学フィルタ(以下では単にフィルタと称する。)として透明な基板上に高屈折率層と低屈折率層とが交互に順次積層された積層構造をもつものが用いられている。
【0003】
フィルタは1波長帯を透過させ、その他の波長帯をカットする製品は数多く存在する。フィルタの用途は多々あるが、例えば蛍光分析においてそのようなフィルタを用いて2種類以上の蛍光試薬を検出するためには、後で詳細に述べるように、フィルタの機械的な切替え機構が必要となって光学系が複雑化するとともに、蛍光分析に支障をきたすことがある)。
【0004】
複数の反射領域をもつフィルタも提案されている(特許文献1参照。)。そこでは、透明基板上に高屈折率層と低屈折率層とが交互に順次積層されて形成された繰り返し層が2つ設けられ、それぞれの繰り返し層において高屈折率層の光学膜厚の平均値と低屈折率層の光学膜厚の平均値との和が垂直入射光に対するそれぞれの反射波長に略等しくなるように設定されている。具体的な例として、(0.55H 0.45L)27 0.55H 0.476L (0.619H 0.501L)27 0.619H 0.251L (λ=488nmとして)又は(0.489H 0.404L)27 0.489H 0.427L (0.55H 0.45L)27 0.55H 0.225L(λ=543nmとして)という膜設計値が挙げられている。この2通りの表記は2つの反射領域の中心波長λのそれぞれについて光学膜厚の表記をしたものであり、同一のフィルタの設計値を表している。記号H、Lはそれぞれ高屈折率層、低屈折率層、その前の数字はその層が設計の中心波長の何倍の光学膜厚をもつかを示し、括弧の右肩の数値(この例では「27」)は括弧内の構成をその数値の回数だけ繰り返した構成であることを示している。
【特許文献1】特開2006−23471号公報
【特許文献2】特表2002−533096号公報
【特許文献3】特開2001−299366号公報
【特許文献4】特開2002−300894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上に紹介した複数の反射領域をもつフィルタでは、透過領域及び反射領域の幅は積層膜構成自体により決まるので、帯域幅を広げるのに制約が大きい。また、上の例では所望の反射率を得るために100層以上の膜構成となっており、物理的な膜厚にすると約15μmとなり、フィルタの生産性と再現性に問題がある。
【0006】
本発明の1つの目的はスペクトル上で不連続な2つの透過領域と2つの反射領域を有するフィルタであって、上に紹介した複数の反射領域をもつフィルタに比べて、透過領域の幅を広げるのが容易で、かつより少ない積層数で必要な反射率を実現することのできるフィルタを得ることである。
【0007】
また、本発明の他の目的は、本発明のフィルタを利用することにより構成が簡略化されるにも拘わらず測定精度の向上した蛍光測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、透明ガラス基板の一方の表面に短波長透過フィルタ又は長波長透過フィルタを成膜し、透明ガラス基板の他方の表面にノッチフィルタを成膜することにより、透過フィルタとノッチフィルタの組合せとして2つの透過領域と2つの反射領域をもつフィルタを形成しようとするものである。
【0009】
すなわち、本発明のフィルタは、使用波長領域において透明な基板と、前記基板の一方の表面に形成され、高屈折率層と低屈折率層とが交互に順次積層された積層構造をもち、所定の波長より短波長側と長波長側の一方が透過域となり他方が反射域となっている透過フィルタと、前記基板の他方の表面に形成され、高屈折率層と低屈折率層とが交互に順次積層された積層構造をもち、前記透過フィルタの透過域内で、かつ前記所定の波長から離れた波長域に反射領域をもつノッチフィルタとを備えたことによって、スペクトル上で不連続な2つの透過領域と2つの反射領域を有するようにしたものである。
【0010】
本発明では透過フィルタとノッチフィルタは基板のそれぞれの表面に互いに独立した積層構造として形成する。ノッチフィルタは1波長帯を反射し、その他の波長帯を透過させるよう設計を行う。短波長透過フィルタ又は長波長透過フィルタはノッチフィルタの短波長側又は長波長側の透過域の任意の波長から反射領域となるように設計を行う。これらの設計の組合わせにより、各フィルタの膜厚を薄くしても所望の反射率を達成することができ、生産性を向上させることができる。基板の片面に形成される積層膜の膜厚は、実施例に示した励起光フィルタでは片面の膜厚が約3μm、蛍光フィルタでは片面の膜厚が約5μmである。先に紹介した複数の反射領域をもつフィルタでは、所望の反射率を得るためには膜厚が約15μmとなったのに比べるとかなり薄くなる。本発明では積層膜は基板の両面に形成されるので、両面の膜厚は片面の膜厚の合計となる。単純に片面の膜厚の2倍としても約15μmよりはかなり小さい。成膜工程は片面ずつ行うので、片面に形成される膜厚によって生産性が大きく影響を受ける。すなわち、基板の片面に形成される膜厚が厚くなると、連続して行う成膜時間の増加、蒸着材料などの消耗品の不足といったことが生じる。消耗品不足に対応するには、材料の自動供給装置など、特別な装置が必要になるからである。
【0011】
また、透過フィルタにおける透過域と反射域との間の境界の波長(「所定の波長」と称しているもの。)とノッチフィルタの反射領域の中心波長は互いに独立して設定することができる。そして、ノッチフィルタの反射領域の中心波長を透過フィルタの所定の波長からどれくらい離して設定するかによって、透過フィルタの所定の波長からノッチフィルタの反射領域の間に存在する透過領域の幅を任意に設定することができる。
【0012】
第1の形態は、透過フィルタが所定の波長よりも短波長側が透過域となっている短波長透過フィルタであり、透過領域と反射領域は短波長側から順に第1の透過領域、第1の反射領域、第2の透過領域及び第2の反射領域となっているものである。
【0013】
第2の形態は、透過フィルタが所定の波長よりも長波長側が透過域となっている長波長透過フィルタであり、透過領域と反射領域は短波長側から順に第1の反射領域、第1の透過領域、第2の反射領域及び第2の透過領域となっているものである。
【0014】
ノッチフィルタと短波長透過フィルタ又は長波長透過フィルタの設計の組合わせを変えることにより、後述する2波長帯用励起光フィルタ、2波長帯用蛍光フィルタ及び2波長帯用ダイクロイックフィルタの設計が可能となる。そして、本発明のフィルタセットは、2種類の蛍光試薬で標識された試料の分析を行う蛍光分析装置に使用されるものであり、好ましい第1の形態としては、2種類の蛍光試薬を励起する2つの励起波長を透過させる励起光フィルタ及び蛍光試薬から発生する2つの蛍光波長を透過させる蛍光フィルタであって、励起光フィルタ及び蛍光フィルタの少なくとも一方が本発明の光学フィルタからなることを特徴としている。励起光フィルタとして本発明の光学フィルタを用いる場合、本発明のフィルタセットには、2つの透過領域が2つの励起波長を含むように設計される一つの2波長帯用励起光フィルタを含む。蛍光フィルタとして本発明のフィルタを用いる場合、本発明のフィルタセットには、2つの透過領域が蛍光試薬から発生する2つの蛍光波長を含むように設計される一つの2波長帯用蛍光フィルタを含む。ここで、フィルタの透過領域が励起波長又は蛍光波長を「透過させる」又は「含む」というのは、フィルタの透過領域が励起波長域又は蛍光波長域よりも広くなければならないことを意味するものではなく、励起波長域の少なくとも一部又は蛍光波長域の少なくとも一部を透過させるという意味である。
【0015】
本発明のフィルタセットの好ましい第2の形態としては、2種類の蛍光試薬を励起する2つの励起波長を透過させる励起光フィルタ、蛍光試薬から発生する2つの蛍光波長を透過させる蛍光フィルタ、及び、それらの2つの励起波長を反射しそれらの蛍光波長を透過させるダイクロイックフィルタであって、励起光フィルタ、蛍光フィルタ及びダイクロイックフィルタの少なくともいずれかひとつのフィルタが本発明の光学フィルタからなることを特徴とする。特に、ダイクロイックフィルタに本発明のフィルタを用いる場合は、本発明のフィルタセットには、2つの反射領域に2つの励起波長が、2つの透過領域に2つの蛍光波長が含まれる、一つの2波長帯用ダイクロイックフィルタを含む。励起光フィルタ又は蛍光フィルタとして本発明の光学フィルタを用いる場合は、上述の通りである。
【0016】
2波長帯用励起光フィルタ又は2波長帯用蛍光フィルタを含むフィルタセットでは、好ましくは、2波長帯用励起光フィルタと2波長帯用蛍光フィルタの反射領域はスペクトル上で反射率90%以上で交差する特性を有するように設定されている。本発明では透過領域又は反射領域の設定の自由度が高いので、そのような設定も容易である。その結果、励起光成分が試料で反射して蛍光フィルタに入射しても殆どが反射されるため、光源からの漏れ光が検出器に入射するのが低減する。さらに、2波長帯用励起光フィルタと2波長帯用蛍光フィルタの反射領域がスペクトル上で反射率99%以上で交差する特性を有するように設定することもでき、その場合には光源からの漏れ光が検出器に入射するのをさらに抑えることができる。
【0017】
2波長帯用ダイクロイックフィルタを含むフィルタセットでは、好ましくは、励起光フィルタと2波長帯ダイクロイックフィルタの反射領域はスペクトル上で反射率90%以上で交差する特性を有するように設定されている。その結果、励起フィルタを透過した励起光成分を確実に試料に照射させることができる。さらに、励起光フィルタと2波長帯ダイクロイックフィルタの反射領域が95%以上で交差する特性を有するように設定することもできる。この場合には、励起光フィルタを透過した励起光成分をさらに確実に試料に照射させることができる。
【0018】
2波長帯蛍光フィルタを含むフィルタセットでは、好ましくは、2波長帯用蛍光フィルタは蛍光試薬の発光スペクトルをカバーするように透過領域幅が広げられている。本発明によれば透過領域幅はノッチフィルタと短波長透過フィルタ又は長波長透過フィルタの設計の組合わせにより設定できるので、透過領域幅を広げることが容易であるので、蛍光測定のように所望の透過領域幅に設定することができる。その結果、蛍光信号の増大を実現することができる。
【0019】
このような好ましい第1及び第2の形態のフィルタセットを使用して蛍光測定を行えば、検出器における蛍光検出のS/N(信号対ノイズ)比が向上する。
【0020】
本発明の蛍光測定装置は、第1、第2の2種類の蛍光試薬で標識された試料を測定する蛍光測定装置である。蛍光測定装置の第1の形態は、第1蛍光試薬を励起することのできる第1励起波長を含む光を発生する第1励起光源及び第2蛍光試薬を励起することのできる第2励起波長を含む光を発生する第2励起光源を有し、それぞれの光源からの光を切り換えて共通の励起光光軸上に配置できるようにした励起光学系と、励起光学系に配置され、第1励起波長と第2励起波長をそれぞれ含む2つの透過領域をもつように設定された励起光フィルタと、本発明の光学フィルタからなり、第1励起波長と第2励起波長をそれぞれ含む2つの反射領域と、蛍光試薬から発生する2つの蛍光波長を透過させる2つの透過領域をもち、励起光学系からの励起光を試料方向に反射させ、試料からの蛍光を受光して透過させるように配置された単一の2波長帯用ダイクロイックフィルタと、蛍光試薬から発生する2つの蛍光波長をそれぞれ含む2つの透過領域をもつように設定され、ダイクロイックフィルタを透過した蛍光を受光して透過させる位置に配置された蛍光フィルタと、蛍光フィルタを透過した蛍光を受光する位置に配置された光検出器とを備えている。ここで、第1蛍光試薬を励起することのできる第1励起波長を「含む」光を発生する第1励起光源というのは、第1励起光源の発光スペクトルが、第1励起波長域よりも広くなければならないことを意味するものではなく、第1励起光源の発光スペクトルが第1励起波長域の少なくとも一部を含むという意味である。第2励起光源についても同様に解釈される。
【0021】
この場合、励起光フィルタと蛍光フィルタの一方又は両方は2つの透過領域をもつように設定された本発明の光学フィルタからなる単一の2波長帯用フィルタであることが好ましい。
【0022】
蛍光測定装置の第2の形態は、第1蛍光試薬を励起することのできる第1励起波長を含む光を発生する第1励起光源及び第2蛍光試薬を励起することのできる第2励起波長を含む光を発生する第2励起光源を有し、それぞれの光源からの光を切り換えて共通の励起光光軸上に配置して試料に照射する励起光学系と、励起光学系に配置され、第1励起波長と第2励起波長をそれぞれ含む2つの透過領域をもつように設定された励起光フィルタと、試料から発生する蛍光を検出する検出器と、試料に対して励起光学系の反対側で試料からの蛍光を受光する位置に配置され、受光した蛍光を検出器へ導く蛍光受光光学系と、蛍光受光光学系に配置され、蛍光試薬から発生する2つの蛍光波長をそれぞれ含む2つの透過領域をもつように設定された蛍光フィルタとを備え、励起光フィルタと蛍光フィルタの一方又は両方は2つの透過領域をもつように設定された本発明の光学フィルタからなる単一の2波長帯用フィルタである。
【0023】
この蛍光測定装置の測定対象となる試料の一例はDNAであり、測定項目は例えば一塩基多型(SNP)である。
【発明の効果】
【0024】
本発明のフィルタでは、所望の反射率を達成するための積層構造の膜厚を薄くすることができるので、生産性を向上させることができる。さらに、透過フィルタの所定の波長からノッチフィルタの反射領域の間に存在する透過領域の幅を任意に設定することができる。
【0025】
本発明のフィルタセットを使用すれば、蛍光測定装置において従来は複数必要であったフィルタが統合でき、部品点数の削減と光学系の簡素化を図ることができる。
さらに、本発明の蛍光測定装置ではフィルタもダイクロイックフィルタも機械的な切換えを必要としないので、蛍光測定を高精度に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
2種類の蛍光試薬を用いて分析を行う蛍光測定装置に使用されるフィルタセットとしては、蛍光試薬を励起する2つの励起波長を透過させる2つの透過領域をもつ2波長帯用励起光フィルタ、蛍光試薬から発生する2つの蛍光波長を透過させる2つの透過領域をもつ2波長帯用蛍光フィルタ、及び2つの励起波長を反射させる2つの反射領域と2つの蛍光波長を透過させる2つの透過領域をもつ2波長帯用ダイクロイックフィルタが必要である。そのような各フィルタの要求仕様の一例を表1〜表3に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
以下に設計例を示す。
フィルタの積層構造を構成する膜材料は、高屈折率膜材料がTa2O5(屈折率は波長に依存するが、約2.2)、TiO2(屈折率は波長に依存するが、約2.4)、Nb2O5、HfO2もしくはAl2O3、又はこれらを含む混合物、低屈折率膜材料がSiO2(屈折率は波長に依存するが、約1.46)又はその混合物である。ここでは、高屈折率膜材料としてTa2O5を使用し、低屈折率膜材料としてSiO2を使用する。基板は光学ガラスBK7とした。
【0031】
成膜は蒸着法により波長シフトの生じない手法で行い、基板温度を250℃とした。通常の蒸着方法では,膜の密度がバルク以下となる。密度が低いと隙間に水分などが進入し、使用環境によっては分光特性が変化(シフト)する。そこで、分光特性のシフトを抑制するために、イオンアシスト蒸着などのイオンプロセスなどを併用した蒸着を行うことで膜の充填密度をバルクの状態に近づけて水分の侵入を防止した。「波長シフトの生じない手法」とはそのような成膜方法を意味する。
【0032】
(1)励起光フィルタの設計は以下の通りに行った。
励起光フィルタは基板の一方の表面に短波長透過フィルタを形成し、基板の他方の表面にノッチフィルタを形成することにより製作した。
【0033】
短波長透過フィルタのベース膜構成を(0.5L H 0.5L)18(中心波長λ=663.0nmとして)として設計を行った。ここで、記号HはTa2O5膜、記号LはSiO2膜であり、それぞれの前の数字(数字が記載されていないのは、「1」を表す。)はその層が設計の中心波長の1/4波長厚の何倍の光学膜厚をもつかを意味する。括弧の右肩の数値(この例では「18」)は括弧内の構成をその数値の回数だけ繰り返すことを意味している。光学膜厚は物理的な膜厚とその膜材質の屈折率との積である。以下に示すベース膜構成の意味も同様である。なお、ベース膜構成とは最適化するための基礎になる設計(ベース設計)に基づく積層構成であることを意味している。
【0034】
したがって、この短波長透過フィルタのベース膜構成は、最下層から順に(0.5L H L H L …… H 0.5L)というようにSiO2膜とTa2O5膜が交互に積層されて全体で37層の積層構造となる。
【0035】
そのフィルタの光学特性を示すスペクトルを図1に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。この設計のベース膜構成では、その光学特性は反射域に近い側の透過域にリップルが発生している。なお、図1中において、「Illumination: WHITE」は測定に用いた照射光が白色光であること、「Medium: AIR」は空気中での測定であること、「Substrate: BK7」は基板がBK7ガラスであること、「Exit: BK7」は出射媒質がBK7ガラスであること、「Detector: IDEAL」は検出器が完全(感度の波長依存性などがないこと)であること、「Angle: 0.0 (deg)」は測定光を基板に対して垂直方向から入射させたこと、「Reference: 663.0 (nm)」は663.0nmを中心波長として積層構造を設計したこと、「Polarization: Ave -」は無偏光であること、「First surface: Front」は基板表面から光が入射することを意味している。
【0036】
次に、このベース膜構成を基にリップルの低減を図るため最適化設計を行った。最適化設計は積層構造の両端部の幾らかの層の膜厚を調整することにより行う。このベース膜構成の最適化だけでリップルが十分に低減できない場合は、さらに両端に幾らかの層を調整層として付加する。リップルを低減するための最適化設計方法は既知であり、市販のソフトウエアTF Calc(登録商標)(Spectra.Inc.社の製品)を使用して実行した。以下に示すフィルタの最適化設計も同様に実行した。
【0037】
その最適化設計されたフィルタの光学特性を示すスペクトルを図2に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。反射域に近い側の透過域にあったリップルが低減しているのがわかる。
【0038】
ノッチフィルタのベース膜構成を(L 3H)20(中心波長λ=527.0nmとして)として設計を行った。そのフィルタの光学特性を示すスペクトルを図3に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。この設計のベース膜構成では、その光学特性は反射領域の両側の透過域で反射領域に近い側にリップルが発生している。
【0039】
反射帯の幅は高屈折率材料と低屈折材料の屈折率の差で決まる。屈折率の差が大きいほど反射帯の幅は広がる。ただし、最適化設計によって反射帯の幅を広げることもできるが、製造上の膜厚誤差によっては反射帯の一部にリップルが生じ反射率が低下することもある。
【0040】
このベース膜構成を基にリップルの低減を図るため最適化設計を行った後のフィルタの光学特性を示すスペクトルを図4に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。反射領域に近い側の透過域にあったリップルが低減しているのがわかる。
【0041】
このように最適化設計を行った短波長透過フィルタをガラス基板の一方の表面に形成し、最適化設計を行ったノッチフィルタをそのガラス基板の他方の表面に形成した状態の励起光フィルタの光学特性を示すスペクトルを図5に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。この光学特性の励起光フィルタは表1に示された要求仕様を満たしている。
【0042】
(2)蛍光フィルタの設計は以下の通りに行った。
蛍光フィルタは基板の一方の表面に長波長透過フィルタを形成し、基板の他方の表面にノッチフィルタを形成することにより製作した。
【0043】
長波長透過フィルタのベース膜構成を(0.5H L 0.5H)17(中心波長λ=450.0nmとして)として設計を行った。そのフィルタの光学特性を示すスペクトルを図6に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。この設計のベース膜構成では、その光学特性は反射域に近い側の透過域にリップルが発生している。
【0044】
この設計を基にリップルの低減を図るため最適化設計を行った後のフィルタの光学特性を示すスペクトルを図7に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。反射域に近い側の透過域にあったリップルが低減しているのがわかる。
【0045】
ノッチフィルタのベース膜構成を(L 3H)17(中心波長λ=585.0nmとして)で設計を行った。そのフィルタの光学特性を示すスペクトルを図8に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。この設計のベース膜構成では、その光学特性は反射領域の両側の透過域で反射領域に近い側にリップルが発生している。
【0046】
このベース膜構成を基にリップルの低減を図るため最適化設計を行った後のフィルタの光学特性を示すスペクトルを図9に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。反射領域に近い側の透過域にあったリップルが低減しているのがわかる。
【0047】
このように最適化設計を行った長波長透過フィルタをガラス基板の一方の表面に形成し、最適化設計を行ったノッチフィルタをそのガラス基板の他方の表面に形成した蛍光フィルタの光学特性を示すスペクトルを図10に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。この光学特性の蛍光フィルタは表2に示された要求仕様を満たしている。
【0048】
(3)ダイクロイックフィルタの設計は以下の通りに行った。
ダイクロイックフィルタは基板の一方の表面に長波長透過フィルタを形成し、基板の他方の表面にノッチフィルタを形成することにより製作した。
【0049】
長波長透過フィルタのベース膜構成を(0.5H L 0.5H)19(中心波長λ=497.0nmとして)として設計を行った。そのフィルタの光学特性を示すスペクトルを図11に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。この設計のベース膜構成では、その光学特性は反射域に近い側の透過域にリップルが発生している。
【0050】
この設計を基にリップルの低減を図るため最適化設計を行った後のフィルタの光学特性を示すスペクトルを図12に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。反射域に近い側の透過域にあったリップルが低減しているのがわかる。
【0051】
ノッチフィルタのベース膜構成を(L 3H)17(中心波長λ=625.0nmとして)で設計を行った。そのフィルタの光学特性を示すスペクトルを図13に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。この設計のベース膜構成では、その光学特性は反射領域の両側の透過域で反射領域に近い側にリップルが発生している。
【0052】
このベース膜構成を基にリップルの低減を図るため最適化設計を行った後のフィルタの光学特性を示すスペクトルを図14に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。反射領域に近い側の透過域にあったリップルが低減しているのがわかる。
【0053】
このように最適化設計を行った長波長透過フィルタをガラス基板の一方の表面に形成し、最適化設計を行ったノッチフィルタをそのガラス基板の他方の表面に形成したダイクロイックフィルタの光学特性を示すスペクトルを図15に示す。縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。この光学特性のダイクロイックフィルタは表3に示された要求仕様を満たしている。
【0054】
前述の設計を基に製作した励起光フィルタa、蛍光フィルタb及びダイクロイックフィルタcからなるフィルタセットの光学特性をいっしょにして図16に示す。励起光フィルタaと蛍光フィルタbの反射領域は反射率99%程度で交差していることがわかる。また、励起光フィルタaとダイクロイックフィルタcの反射領域は反射率95%程度で交差していることがわかる。
【0055】
図17に既存のバンドパスフィルタと上述の実施例で作製した2波長帯用励起光フィルタ及び2波長帯用蛍光フィルタの光学特性を示す。aは実施例の蛍光フィルタ、bは実施例の励起光フィルタである。c〜fは既存のバンドパスフィルタであり、cは励起光フィルタ(黄色励起光用)、dは蛍光フィルタ(黄色励起光用)、eは励起光フィルタ(青色励起光用)、fは蛍光フィルタ(青色励起光用)である。実施例の各フィルタは、既存品と比較して透過領域幅は広く、透過率が高いことがわかる。実施例のフィルタと既存品を同じ蛍光測定装置に装着して比較した蛍光測定においても、実施例のフィルタは既存品より高い蛍光信号を得ることができた。
【0056】
図18にLED及び蛍光試薬の吸収・放出波長帯の一例を示す。aは蛍光試薬FAMの吸収スペクトル、bは同蛍光試薬FAMが放出する蛍光スペクトルであり、cは青色LEDの発光スペクトルである。これらのスペクトルから青色LEDによって蛍光試薬FAMを励起して蛍光を放出させることができる。また、dは蛍光試薬Redmond Redの吸収スペクトル、eは同蛍光試薬Redmond Redが放出する蛍光スペクトルであり、fは黄色LEDの発光スペクトルである。これらのスペクトルから黄色LEDによって蛍光試薬Redmond Redを励起して蛍光を放出させることができる。これらのLED及び蛍光試薬を使用する限り、上記の実施例の各フィルタを含むフィルタセットを使用すれば良好なS/N比で蛍光測定を行うことができることがわかる。
【0057】
次に、本発明のフィルタセットを用いるのに適した蛍光測定装置への適用例を示す。その好適な一例はDNAの一塩基多型を検出する遺伝子多型検出装置である。
【0058】
遺伝子多型を利用して病気の罹りやすさなどを予測する方法又は装置として、下記のようなものが提案されている。
【0059】
患者が敗血症に罹りやすいか否か及び/又は敗血症に急速に進行しやすいか否かを決定するために、患者から核酸試料を採取し、該試料中におけるパターン2対立遺伝子、又はパターン2対立遺伝子と連鎖不平衡であるマーカー遺伝子を検出し、パターン2対立遺伝子又はパターン2対立遺伝子と連鎖不平衡であるマーカー遺伝子が検出されれば該患者が敗血症に罹りやすいと判定する(特許文献2参照。)。
【0060】
ヒトのflt−1遺伝子中の1又はそれ以上の単一ヌクレオチド多型性の分析のために、ヒトの核酸の1又はそれ以上の位置:1953、3453、3888(各々EMBL受理番号X51602中の位置に従う)、519、786、1422、1429(各々EMBL受理番号D64016中の位置に従う)、454(配列番号3に従う)及び696(配列番号5に従う)の配列を決定し、これらの多型性を参照することによりflt−1リガンド仲介疾患を診断する(特許文献3参照。)。
【0061】
SNP部位の塩基を判別する、いわゆるタイピングについては多くの手法が報告されている。そのうちの代表的なものは次の方法である。
【0062】
比較的に少量のゲノムDNAを用いて数十万箇所に及ぶSNP部位についてタイピングを行なうために、少なくとも一つの一塩基多型部位を含む複数の塩基配列を、ゲノムDNA及び複数対のプライマーを用いて同時に増幅し、増幅した複数の塩基配列を用いて、当該塩基配列に含まれる一塩基多型部位の塩基をタイピング工程により判別する。そのタイピング工程として、インベーダ法又はタックマンPCR法を用いる(特許文献4参照。)。
【0063】
これらの方法では、DNAの一塩基多型を検出するために蛍光試薬を用いることが一般的である。蛍光試薬を検出するためには、蛍光試薬を励起するための光源(励起光源)と、蛍光試薬から放出される光(蛍光)を検出するための検出器と、励起光源からの光が直接検出器に入るのを防ぐためのフィルタが必要である。
【0064】
従来の蛍光試薬検出のための典型的な部品構成を図19に示す。光源2からの光はコリメートレンズ4を通った後、第1のフィルタ(励起光フィルタ)6を透過することで、蛍光試薬の励起に必要な波長帯のみが選択的に取り出される。次にダイクロイックフィルタ8によって、蛍光試薬の励起に必要な波長帯のみが選択的に反射され、レンズ10を通してサンプル12に照射される。サンプル12の蛍光試薬からの蛍光はレンズ10で集められ、第2のフィルタ(ダイクロイックフィルタ8)によって蛍光の波長帯のみが選択的に透過する。ダイクロイックフィルタ8を透過した光は第3のフィルタ(蛍光フィルタ)13によって蛍光以外の不要な光を除去した後に、レンズ14を通して検出器16に集められ検出される。
【0065】
励起光源2にはレーザーやランプ、発光ダイオード(LED)などが用いられるが、近年では高輝度のLEDを用いられることが多い。それはLEDがレーザーよりも小型・安価で、さらにランプに比べて長寿命・高効率であるためである。
【0066】
また、検出器16には光電子増倍管(ホトマルチプライヤー:PMT)、フォトダイオード(PD)又は用途に応じて電荷結合素子(CCD)やC−MOSイメージセンサなどが主に使用される。
【0067】
フィルタ6,8,13はガラスなどの透明の基材に、真空蒸着などの方法によって薄膜を形成して、選択的に光を透過するようにしたものが使用される。
【0068】
これらの光学部品の中でも特にフィルタ6,8,13は蛍光測定の際の信号とノイズの比(S/N比)を決定付ける重要な部品であり、目的の蛍光物質の波長特性に適したものを選択する必要がある。また、光源2にレーザーやLEDなどのスペクトル幅の比較的狭いものを使用する場合には、目的の蛍光物質が効率よく励起できるような波長帯のものを選ばなければならない。
【0069】
これに対して、DNAの一塩基多型(SNP)の検出において、対象とするサンプルが野生型のホモ、変異型のホモ、又はヘテロのいずれであるかを判別するためには、通常2種類以上の蛍光試薬が使用される。つまり、例えば野生型を検出するプローブには蛍光試薬Aで標識しておき、変異型を検出するプローブには蛍光試薬Bで標識しておく。サンプルと2種類のプローブとを反応させた後に、蛍光試薬Aからの信号と蛍光試薬Bからの信号をそれぞれ検出する。その結果、蛍光試薬Aからの信号のみが得られた場合はそのサンプルが野生型のホモであることが分かる。同様にして、蛍光試薬Bからの信号のみが得られた場合は変異型のホモ、両方の蛍光試薬からの信号が得られた場合にはヘテロであることが分かる。
【0070】
このように、光学部品は蛍光試薬個々に応じて特性の異なるものを選ぶ必要があるのに対して、SNPの検出のためには2種類以上の蛍光試薬を使用する必要がある。そのため、各々の蛍光試薬からの信号を検出するために、光学系を蛍光試薬ごとに複数搭載する方法や、機械的に光学部品を切り換えて複数の蛍光試薬に対応する方法が採られている。
【0071】
2種類以上の蛍光試薬を検出するために、それぞれの蛍光試薬に対応した光学系を複数搭載する方法では、光学系全体が大型になる欠点がある。例えば2種類の蛍光試薬に対応した光学系を構成するためには、光源、検出器、フィルタ、レンズなど図19に示す全ての部品を個別に配置しなければならないため、その大きさは1種類の蛍光試薬の光学系に比べて2倍の大きさになる。
【0072】
また、蛍光試薬ごとに異なる光学系を使用するため、それぞれで光学部品の調整をする必要があり、手間がかかるだけでなく光学系ごとに調整のばらつきが大きく生じることになる。そのため、SNPのアレル判定のために複数の蛍光試薬の間での蛍光信号の比を計算する際に、その結果が調整のバラつきを大きく反映したものとなり、正しいSNPのアレル判定を困難なものにしている。
【0073】
さらに、蛍光試薬ごとに異なる光軸をもつ光学系から構成されるために、1つのサンプルに対して2種類以上の蛍光を測定するにはサンプル又は光学系の少なくともどちらか一方をモーターなどで動かす必要がある。モーターなどによる駆動のための機構が必要なため、装置が複雑かつ大型になるのに加えて、駆動の際の誤差が蛍光測定の誤差となり得る。これにより、SNPのアレル判定のために複数の蛍光試薬の間での蛍光信号の比を計算する際に、その計算結果が駆動のバラつきを大きく反映したものとなり、正しいSNPのアレル判定を困難なものにしている。
【0074】
以上のように、2種類以上の蛍光試薬を検出するために、それぞれの蛍光試薬に対応した光学系を複数搭載する方法では、光学系だけでなくその周辺の機構部品が複雑になり、蛍光試薬間での測定のばらつきの原因となる。その結果としてSNPのアレル判定が不正確なものになりがちであるという問題点がある。
【0075】
機械的に光学部品を切り換えて複数の蛍光試薬に対応する方法は、主に複数のフィルタが搭載された円盤を、モーターなどで動かして目的の蛍光試薬に適した波長特性のものに切り換えることで実現される。この方法では複数の蛍光試薬に対してレンズや検出器といった部品が共通で使え、さらに複数の蛍光試薬を測定するためにサンプル又は光学系をモーターなどで駆動する必要がないため、前述の方法に比べてより安定した測定が可能であることが特長である。
【0076】
ただし、複数のフィルタを蛍光試薬に応じて切り換える必要があるために、モーターなどの駆動部品が必要になり、さらに複数のフィルタを搭載した円盤も大きなものになってしまう。また、光学部品をモーターで動かすために測定が不安定になりがちである。特にタイクロイックフィルタを使用する構成では、サンプルに照射される励起光の光軸をそのダイクロイックフィルタで90度に折り曲げることになるが、そのダイクロイックフィルタをモーターで切り換えた場合、少しの誤差が光軸の大きなズレとなることになる。これにより、SNPのアレル判定のために複数の蛍光試薬の間での蛍光信号の比を計算する際に、その計算結果が駆動のバラつきを大きく反映したものとなり、正しいSNPのアレル判定を困難なものにしている。
【0077】
以上のように、2種類以上の蛍光試薬を検出するために、機械的に光学部品を切り換えて複数の蛍光試薬に対応する方法では、フィルタを切り換える機構部品が複雑になり、装置が大型・複雑なものになるという問題点がある。また、構成によっては蛍光測定が不安定になる可能性を含んでおり、SNPのアレル判定が不正確なものになりがちであるという問題点がある。
【0078】
上述の問題点を解決するために、2種類以上の蛍光試薬を検出するために、2つ以上の波長帯を透過することのできる本発明の実施例のフィルタを使用した。例として、2種類の蛍光試薬を検出するための、2つの波長帯を透過することのできる励起光フィルタ、ダイクロイックフィルタ及び蛍光フィルタを使用した場合の構成を図20に示す。この例では、光源として2種類のLEDを使用し、検出器としてフォトダイオードを使用しているが、これに限定されるものではない。
【0079】
蛍光試薬の励起効率が高い波長の2種類のLED20,22を光源として使用する。サンプルを標識している蛍光試薬として、波長470〜490nm(青色)で励起したときに波長510〜530nm(緑色)の蛍光を発する蛍光試薬Aと、波長580〜600nm(黄色〜オレンジ)で励起したときに波長620〜640nm(赤色)の蛍光を発する蛍光試薬Bを使用した場合の例で考えると、この場合には青色のLEDと黄色(又はオレンジ色)のLEDを使用するのが適している。それらのLED20,22からの光をそれぞれレンズ4a,4bによって平行光にした後、第1のダイクロイックフィルタ28で1つの光軸にする。ここでのダイクロイックフィルタ28は、黄色の波長帯を透過して青色の波長帯を反射させるような、所定の波長を境にして透過領域と反射領域に分かれた従来のダイクロイックフィルタでよい。
【0080】
次に、青色と黄色の光を透過させて緑色と赤色の光を反射することのできる実施例の励起光フィルタ30を通過させる。さらに青色と黄色の2つの波長帯を反射させて緑色と赤色を透過させることのできる実施例のダイクロイックフィルタ32を経て下部に配置されたサンプル12部分へ折り返される。その後、レンズ10で集光され蛍光試薬で標識されたサンプル12に照射される。
【0081】
サンプル12に励起光が照射され、青色と黄色の2つの光によってそれぞれ励起された2種類の蛍光試薬からの蛍光は、緑色と赤色というように異なる2つの波長を持っている。それらの光は再びサンプル部上方に配置されたレンズ10で集光され、ダイクロイックフィルタ32を透過する。その後、緑色と赤色の2つの波長帯を透過させて、青色と黄色を反射することのできる実施例の蛍光フィルタ34を透過する。最終的にそれらの光はレンズ14で集光され、フォトダイオード16で電気信号に変換される。
【0082】
蛍光試薬Aの信号を検出する場合は青色のLED20のみを点灯させ、黄色のLED22は消灯させる。すると蛍光試薬Aのみが青色LED20によって励起されて蛍光を発し、一方蛍光試薬Bは励起されず蛍光を発することがない。こうすることで蛍光試薬Aのみの信号を検出することができる。次に蛍光試薬Bの信号を検出する場合は黄色のLED22のみを点灯させ、青色のLED20は消灯させる。すると今度は逆に蛍光試薬Bのみが黄色LED22によって励起されて蛍光を発し、逆に蛍光試薬Aは励起されず、蛍光を発しない。このように、2種類のLED20,22を点灯・消灯するだけで共通のフォトダイオード16で2つの蛍光試薬からの信号をそれぞれ独立に読み取ることができる。
【0083】
図20の装置では光源として2種類のLED20,22を備え、LED20,22からの励起光をそれぞれのレンズ4a,4bを経てダイクロイックフィルタ28で1つの光軸にしているが、ダイクロイックフィルタ28を使用しない構成とすることもできる。ダイクロイックフィルタ28を使用しない構成では、LED20とレンズ4aを1組とし、LED22とレンズ4bを他の1組として、それらの組を切り換えて光軸上に配置できるようにすればよい。
【0084】
図20に示した実験装置を用いて、2つの透過領域を持つフィルタがSNPのアレル判定に有効であることを検証した。光源として5Wの青色(blue)及び黄色〜オレンジ(amber)の高輝度発光ダイオード(LED)20,22を使用した。使用したLEDの発光スペクトルを図4(a)に示す。点灯されたLED20,22からの光は直径20mm、焦点距離30mmの平凸レンズ4a又は4bによって平行光にされてダイクロイックフィルタ28で反射又は透過して励起光フィルタ30に入射される。励起光フィルタ30の透過特性は図21(b)に示すように、波長が460〜490nmと570〜590nmでは光を透過し、520〜560nmと620nm〜では光を透過しない。このように異なる2つの透過領域を持ったフィルタ30を用いることで、2種類のLED20,22のいずれに対しても有効な特性を1枚のフィルタ30で実現することができる。励起光フィルタ30を透過した光は、次にダイクロイックフィルタ32で図の下方向に折り返される。このダイクロイックフィルタ32の透過特性を図21(c)に示す。このダイクロイックフィルタ32では45度の角度で入射した光のうち、波長が460〜490nmと570−590nmの光は反射され、520〜560nmと620nm〜の光は透過する。ダイクロイックフィルタ32で反射された光は直径12mm、焦点距離12mmの平凸レンズで集光され、サンプル12に照射される。
【0085】
サンプル12からの蛍光は同じ平凸レンズ10で集光され、ダイクロイックフィルタ32を透過し、さらに蛍光フィルタ34に入射する。この蛍光フィルタ34の透過特性を図21(d)に示す。この蛍光フィルタ34は520〜540nmと630〜660nmでは光を透過させ、〜490nmと560〜600nmでは光を透過させない。蛍光フィルタ34を透過した光は直径12mm、焦点距離12mmの平凸レンズ14で集光され、フォトダイオード16で電気信号に変換される。フォトダイオード16からの電流は電流−電圧変換回路(図示略)で電圧信号に変換された後、デジタル電圧計(図示略)で測定を行う。
【0086】
サンプルとして別の実験装置でインベーダ反応が既に終了している精製DNAを使用した。測定する部分に配置するプローブを標識する蛍光試薬としてFAMとRedmond Redを使用した。これらの蛍光試薬の吸収スペクトルを図22(a)に、発光スペクトルを図22(b)に示す。プローブのうち野生型を検出するためのプローブはFAMで標識し、変異型を検出するためのプローブはRedmond Redで標識した。
【0087】
FAMの測定に青色LED20を使用し、Redmond Redの測定に黄色〜オレンジのLED22を使用して、サンプル12の信号を検出した結果を図23に示す。蛍光試薬からの蛍光は図中の「蛍光」で示され、サンプル部分での反射・散乱のノイズを図中の「反射・散乱光」で示す。「反射・散乱光」はサンプルの部分にサンプルに代えて水を配置して測定した結果である。このようにノイズに対して十分に大きな蛍光の信号を得ることができた。この測定の結果はFAMからの蛍光とRedmond Redからの蛍光の両方が検出されたことを示しているので、ここで使用したサンプルはヘテロの型をもつものであるといえる。
【0088】
2種類以上の蛍光試薬を検出するために、従来技術ではそれぞれの蛍光試薬に対応した光学系を複数搭載する方法が用いられていたが、光学系だけでなくその周辺の機構部品が複雑になり、蛍光試薬間での測定のばらつきの原因となっていた。また、その結果としてSNPのアレル判定が不正確なものになりがちであるという問題点があった。また従来技術の別の方法として用いられてきた、機械的に光学部品を切り換えて複数の蛍光試薬に対応する方法では、フィルタを切り換える機構部品が複雑になり、装置が大型・複雑なものになるという問題点があった。また、構成によっては蛍光測定が不安定になる可能性を含んでおり、SNPのアレル判定が不正確なものになりがちであるという問題点があった。
【0089】
それに対し、本発明の実施例のフィルタを使用した上記の方法では、レンズやフィルタ、検出器といった光学部品の大部分がいずれの蛍光試薬でも共通して用いられるために、蛍光試薬間での測定のばらつきを最小限にすることができる。また、複数の蛍光試薬を検出する際には複数のLEDの点灯・消灯を行うだけであり、モーターなどの機構部品を必要としないために安定して測定が行えるだけでなく、装置を小型にすることができる。それらの結果、SNPのアレル判定が簡便かつ正確に行なうことができる。
【0090】
図24に示す蛍光検出装置に示すように、落射光学系で用いる励起光フィルタ、蛍光フィルタ及びダイクロイックフィルタのうち、例えば、ダイクロイックフィルタ32にのみ本発明のダイクロイックフィルタを用いてもよい。その場合、励起光フィルタとしてはそれぞれ励起光の光路に単一の透過波長帯域をもつ励起光フィルタ30a,30bを配置する。また、蛍光受光側では、蛍光フィルタとしてもそれぞれの蛍光用に単一の透過波長帯域をもつ蛍光フィルタ34a,34bを使用する。例えば、蛍光受光側では、ダイクロイックフィルタ32を透過した蛍光を1つの透過域と1つの反射域をもつ通常のダイクロイックフィルタ28aを用いて蛍光の波長により2つの蛍光光路に分離し、一方の蛍光光路にはその蛍光用の透過波長帯域をもつ蛍光フィルタ34aを配置し、その蛍光フィルタ34aを透過した蛍光をレンズ14aで集光してフォトダイオード16aに入射させる。ダイクロイックフィルタ28aで分離された他方の蛍光光路にはその蛍光用の透過波長帯域をもつ蛍光フィルタ34bを配置し、その蛍光フィルタ34bを透過した蛍光をレンズ14bで集光してフォトダイオード16bに入射させる。フォトダイオード16a,16bではそれぞれの蛍光が電気信号に変換される。
【0091】
この実施例の場合でも、各励起光に応じたダイクロイックフィルタを光軸上に配置しなおす必要がなくなるため、装置の小型化に寄与できる。
【0092】
図24の実施例において、励起光フィルタ30a,30bに代えて本発明の2波長帯用励起光フィルタ30を用いて図20に示されるような励起光学系を組み合わせてもよい。
【0093】
また、図24の実施例において、蛍光フィルタ34a,34bに代えて本発明の2波長帯用蛍光フィルタ34を用いて図20に示されるような蛍光受光光学系を組み合わせてもよい。
【0094】
これまでの実施例はダイクロイックフィルタを使用した落射光学系を使用しているが、ダイクロイックフィルタを使用しなくても蛍光測定装置を実現することができる。図25はダイクロイックフィルタを使用しない蛍光測定装置の一実施例である。
【0095】
図25に示される蛍光測定装置では、励起光フィルタとしては図24の蛍光測定装置と同様にそれぞれ励起光の光路に単一の透過波長帯域をもつ励起光フィルタ30a,30bを配置し、蛍光受光側では図20の実施例と同様に2つの波長帯を透過することのできる蛍光フィルタ34を使用する。励起光学系のダイクロイックフィルタ28で1つの光軸にされた励起光は、レンズ10aで集光され蛍光試薬で標識されたサンプル12に斜め方向から照射される。
【0096】
サンプル12に励起光が照射され、それぞれの波長の励起光によってそれぞれ励起された2種類の蛍光試薬からの蛍光は、励起光学系とは反対側に配置された蛍光受光光学系のレンズ10bで集光され、2つの波長帯に透過域をもつ実施例の蛍光フィルタ34を透過する。最終的にそれらの光はレンズ14で集光され、フォトダイオード16で電気信号に変換される。この実施例では、蛍光受光光学系において検出器を共通化できるため、装置の小型化に寄与できる。
【0097】
図25に示される蛍光測定装置において、励起光学系として図20の実施例と同様に2つの波長帯を透過することのできる励起光フィルタ30を使用し、蛍光受光側では図24の実施例と同様にレンズ10bを透過した蛍光を1つの透過域と1つの反射域をもつ通常のダイクロイックフィルタ28aを用いて蛍光の波長により2つの蛍光光路に分離し、それぞれの蛍光光路に単一の透過波長帯域をもつ蛍光フィルタ34a,34bをそれぞれ配置するようにしてもよい。この実施例では、励起光学系において励起光フィルタの数を減らすことができるので、やはり装置の小型化に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】励起光フィルタ用の短波長透過フィルタのベース膜構成によるスペクトルを示す図である。
【図2】同フィルタの最適化設計後のスペクトルを示す図である。
【図3】励起光フィルタ用のノッチフィルタのベース膜構成によるスペクトルを示す図である。
【図4】同フィルタの最適化設計後のスペクトルを示す図である。
【図5】最適化設計された短波長透過フィルタと最適化設計されたノッチフィルタからなる一実施例の励起光フィルタのスペクトルを示す図である。
【図6】蛍光フィルタ用の長波長透過フィルタのベース膜構成によるスペクトルを示す図である。
【図7】同フィルタの最適化設計後のスペクトルを示す図である。
【図8】蛍光フィルタ用のノッチフィルタのベース膜構成によるスペクトルを示す図である。
【図9】同フィルタの最適化設計後のスペクトルを示す図である。
【図10】最適化設計された長波長透過フィルタと最適化設計されたノッチフィルタからなる一実施例の蛍光フィルタのスペクトルを示す図である。
【図11】ダイクロイックフィルタ用の長波長透過フィルタのベース膜構成によるスペクトルを示す図である。
【図12】同フィルタの最適化設計後のスペクトルを示す図である。
【図13】ダイクロイックフィルタ用のノッチフィルタのベース膜構成によるスペクトルを示す図である。
【図14】同フィルタの最適化設計後のスペクトルを示す図である。
【図15】最適化設計された長波長透過フィルタと最適化設計されたノッチフィルタからなる一実施例のダイクロイックフィルタのスペクトルを示す図である。
【図16】同実施例で製作されたフィルタセットのスペクトルを示す図である。
【図17】同実施例で製作された励起光フィルタと蛍光フィルタの光学特性を従来の既存の製品と比較して示すスペクトルの図である。
【図18】2種類のLED及び蛍光試薬の吸収・放出波長帯の一例のスペクトルを示す図である。
【図19】従来の蛍光検出装置を示す概略構成図である。
【図20】実施例のフィルタセットを使用した蛍光検出装置を示す概略構成図である。
【図21】2種類のLED及びフィルタセットのスペクトルを示す図である。
【図22】2種類の蛍光試薬の吸収スペクトルと発光スペクトルを示す図である。
【図23】インベーダ反応が終了したDNAサンプルの測定結果を示す図である。
【図24】実施例のフィルタを使用した蛍光検出装置の他の実施例を示す概略構成図である。
【図25】実施例のフィルタを使用した蛍光検出装置のさらに他の実施例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0099】
4a,4b,10,10a,10b,14 レンズ
12 サンプル
16 フォトダイオード
20,22 LED
28,32 ダイクロイックフィルタ
30 励起光フィルタ
34 蛍光フィルタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用波長領域において透明な基板と、
前記基板の一方の表面に形成され、高屈折率層と低屈折率層とが交互に順次積層された積層構造をもち、所定の波長より短波長側と長波長側の一方が透過域となり他方が反射域となっている透過フィルタと、
前記基板の他方の表面に形成され、高屈折率層と低屈折率層とが交互に順次積層された積層構造をもち、前記透過フィルタの透過域内で、かつ前記所定の波長から離れた波長域に反射領域をもつノッチフィルタとを備え、
スペクトル上で不連続な2つの透過領域と2つの反射領域を有する光学フィルタ。
【請求項2】
前記透過フィルタは前記所定の波長よりも短波長側が透過域となっている短波長透過フィルタであり、
前記透過領域と反射領域は短波長側から順に第1の透過領域、第1の反射領域、第2の透過領域及び第2の反射領域となっている請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項3】
前記透過フィルタは前記所定の波長よりも長波長側が透過域となっている長波長透過フィルタであり、
前記透過領域と反射領域は短波長側から順に第1の反射領域、第1の透過領域、第2の反射領域及び第2の透過領域となっている請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項4】
蛍光試薬を用いて分析を行う装置に使用される1組のフィルタからなるフィルタセットにおいて、
前記蛍光試薬を励起する2つの励起波長を透過させるように2つの透過領域が設定された励起光フィルタと、
前記蛍光試薬から発生する2つの蛍光波長を透過させるように2つの透過領域が設定された蛍光フィルタと、
前記2つの励起波長を反射させる2つの反射領域と前記2つの蛍光波長を透過させる2つの透過領域をもつように設定された請求項1から3のいずれか一項に記載の光学フィルタからなる単一の2波長帯用ダイクロイックフィルタとを備えたことを特徴とするフィルタセット。
【請求項5】
前記励起光フィルタと蛍光フィルタの一方又は両方は2つの透過領域をもつように設定された請求項1から3のいずれか一項に記載の光学フィルタからなる単一の2波長帯用フィルタである請求項4に記載のフィルタセット。
【請求項6】
蛍光試薬を用いて分析を行う装置に使用される1組のフィルタからなるフィルタセットにおいて、
前記蛍光試薬を励起する2つの励起波長を透過させるように2つの透過領域が設定された励起光フィルタと、
前記蛍光試薬から発生する2つの蛍光波長を透過させるように2つの透過領域が設定された蛍光フィルタと、を備え、
前記励起光フィルタと蛍光フィルタの一方又は両方は2つの透過領域をもつように設定された請求項1から3のいずれか一項に記載の光学フィルタからなる単一の2波長帯用フィルタであることを特徴とするフィルタセット。
【請求項7】
2波長帯用励起光フィルタと2波長帯用蛍光フィルタの反射領域は反射率90%以上で交差する特性を有する請求項4から6のいずれか一項に記載のフィルタセット。
【請求項8】
2波長帯用蛍光フィルタは蛍光試薬の発光スペクトルをカバーするように透過領域幅が広げられている請求項5から7のいずれか一項に記載のフィルタセット。
【請求項9】
第1、第2の2種類の蛍光試薬で標識された試料を測定する蛍光測定装置であって、
前記第1蛍光試薬を励起することのできる第1励起波長を含む光を発生する第1励起光源及び前記第2蛍光試薬を励起することのできる第2励起波長を含む光を発生する第2励起光源を有し、それぞれの光源からの光を切り換えて共通の励起光光軸上に配置できるようにした励起光学系と、
前記励起光学系に配置され、前記第1励起波長と第2励起波長をそれぞれ含む2つの透過領域をもつように設定された励起光フィルタと、
請求項1から3のいずれか一項に記載の光学フィルタからなり、前記第1励起波長と第2励起波長をそれぞれ含む2つの反射領域と、前記蛍光試薬から発生する2つの蛍光波長を透過させる2つの透過領域をもち、前記励起光学系からの励起光を試料方向に反射させ、試料からの蛍光を受光して透過させるように配置された単一の2波長帯用ダイクロイックフィルタと、
前記蛍光試薬から発生する2つの蛍光波長をそれぞれ含む2つの透過領域をもつように設定され、前記ダイクロイックフィルタを透過した蛍光を受光して透過させる位置に配置された蛍光フィルタと、
前記蛍光フィルタを透過した蛍光を受光する位置に配置された光検出器と、
を備えた蛍光測定装置。
【請求項10】
前記励起光フィルタと蛍光フィルタの一方又は両方は2つの透過領域をもつように設定された請求項1から3のいずれか一項に記載の光学フィルタからなる単一の2波長帯用フィルタである請求項9に記載の蛍光測定装置。
【請求項11】
第1、第2の2種類の蛍光試薬で標識された試料を測定する蛍光測定装置であって、
前記第1蛍光試薬を励起することのできる第1励起波長を含む光を発生する第1励起光源及び前記第2蛍光試薬を励起することのできる第2励起波長を含む光を発生する第2励起光源を有し、それぞれの光源からの光を切り換えて共通の励起光光軸上に配置して試料に照射する励起光学系と、
前記励起光学系に配置され、前記第1励起波長と第2励起波長をそれぞれ含む2つの透過領域をもつように設定された励起光フィルタと、
試料から発生する蛍光を検出する検出器と、
試料に対して前記励起光学系の反対側で試料からの蛍光を受光する位置に配置され、受光した蛍光を前記検出器へ導く蛍光受光光学系と、
前記蛍光受光光学系に配置され、前記蛍光試薬から発生する2つの蛍光波長をそれぞれ含む2つの透過領域をもつように設定された蛍光フィルタと、を備え、
前記励起光フィルタと蛍光フィルタの一方又は両方は2つの透過領域をもつように設定された請求項1から3のいずれか一項に記載の光学フィルタからなる単一の2波長帯用フィルタであることを特徴とする蛍光測定装置。
【請求項1】
使用波長領域において透明な基板と、
前記基板の一方の表面に形成され、高屈折率層と低屈折率層とが交互に順次積層された積層構造をもち、所定の波長より短波長側と長波長側の一方が透過域となり他方が反射域となっている透過フィルタと、
前記基板の他方の表面に形成され、高屈折率層と低屈折率層とが交互に順次積層された積層構造をもち、前記透過フィルタの透過域内で、かつ前記所定の波長から離れた波長域に反射領域をもつノッチフィルタとを備え、
スペクトル上で不連続な2つの透過領域と2つの反射領域を有する光学フィルタ。
【請求項2】
前記透過フィルタは前記所定の波長よりも短波長側が透過域となっている短波長透過フィルタであり、
前記透過領域と反射領域は短波長側から順に第1の透過領域、第1の反射領域、第2の透過領域及び第2の反射領域となっている請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項3】
前記透過フィルタは前記所定の波長よりも長波長側が透過域となっている長波長透過フィルタであり、
前記透過領域と反射領域は短波長側から順に第1の反射領域、第1の透過領域、第2の反射領域及び第2の透過領域となっている請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項4】
蛍光試薬を用いて分析を行う装置に使用される1組のフィルタからなるフィルタセットにおいて、
前記蛍光試薬を励起する2つの励起波長を透過させるように2つの透過領域が設定された励起光フィルタと、
前記蛍光試薬から発生する2つの蛍光波長を透過させるように2つの透過領域が設定された蛍光フィルタと、
前記2つの励起波長を反射させる2つの反射領域と前記2つの蛍光波長を透過させる2つの透過領域をもつように設定された請求項1から3のいずれか一項に記載の光学フィルタからなる単一の2波長帯用ダイクロイックフィルタとを備えたことを特徴とするフィルタセット。
【請求項5】
前記励起光フィルタと蛍光フィルタの一方又は両方は2つの透過領域をもつように設定された請求項1から3のいずれか一項に記載の光学フィルタからなる単一の2波長帯用フィルタである請求項4に記載のフィルタセット。
【請求項6】
蛍光試薬を用いて分析を行う装置に使用される1組のフィルタからなるフィルタセットにおいて、
前記蛍光試薬を励起する2つの励起波長を透過させるように2つの透過領域が設定された励起光フィルタと、
前記蛍光試薬から発生する2つの蛍光波長を透過させるように2つの透過領域が設定された蛍光フィルタと、を備え、
前記励起光フィルタと蛍光フィルタの一方又は両方は2つの透過領域をもつように設定された請求項1から3のいずれか一項に記載の光学フィルタからなる単一の2波長帯用フィルタであることを特徴とするフィルタセット。
【請求項7】
2波長帯用励起光フィルタと2波長帯用蛍光フィルタの反射領域は反射率90%以上で交差する特性を有する請求項4から6のいずれか一項に記載のフィルタセット。
【請求項8】
2波長帯用蛍光フィルタは蛍光試薬の発光スペクトルをカバーするように透過領域幅が広げられている請求項5から7のいずれか一項に記載のフィルタセット。
【請求項9】
第1、第2の2種類の蛍光試薬で標識された試料を測定する蛍光測定装置であって、
前記第1蛍光試薬を励起することのできる第1励起波長を含む光を発生する第1励起光源及び前記第2蛍光試薬を励起することのできる第2励起波長を含む光を発生する第2励起光源を有し、それぞれの光源からの光を切り換えて共通の励起光光軸上に配置できるようにした励起光学系と、
前記励起光学系に配置され、前記第1励起波長と第2励起波長をそれぞれ含む2つの透過領域をもつように設定された励起光フィルタと、
請求項1から3のいずれか一項に記載の光学フィルタからなり、前記第1励起波長と第2励起波長をそれぞれ含む2つの反射領域と、前記蛍光試薬から発生する2つの蛍光波長を透過させる2つの透過領域をもち、前記励起光学系からの励起光を試料方向に反射させ、試料からの蛍光を受光して透過させるように配置された単一の2波長帯用ダイクロイックフィルタと、
前記蛍光試薬から発生する2つの蛍光波長をそれぞれ含む2つの透過領域をもつように設定され、前記ダイクロイックフィルタを透過した蛍光を受光して透過させる位置に配置された蛍光フィルタと、
前記蛍光フィルタを透過した蛍光を受光する位置に配置された光検出器と、
を備えた蛍光測定装置。
【請求項10】
前記励起光フィルタと蛍光フィルタの一方又は両方は2つの透過領域をもつように設定された請求項1から3のいずれか一項に記載の光学フィルタからなる単一の2波長帯用フィルタである請求項9に記載の蛍光測定装置。
【請求項11】
第1、第2の2種類の蛍光試薬で標識された試料を測定する蛍光測定装置であって、
前記第1蛍光試薬を励起することのできる第1励起波長を含む光を発生する第1励起光源及び前記第2蛍光試薬を励起することのできる第2励起波長を含む光を発生する第2励起光源を有し、それぞれの光源からの光を切り換えて共通の励起光光軸上に配置して試料に照射する励起光学系と、
前記励起光学系に配置され、前記第1励起波長と第2励起波長をそれぞれ含む2つの透過領域をもつように設定された励起光フィルタと、
試料から発生する蛍光を検出する検出器と、
試料に対して前記励起光学系の反対側で試料からの蛍光を受光する位置に配置され、受光した蛍光を前記検出器へ導く蛍光受光光学系と、
前記蛍光受光光学系に配置され、前記蛍光試薬から発生する2つの蛍光波長をそれぞれ含む2つの透過領域をもつように設定された蛍光フィルタと、を備え、
前記励起光フィルタと蛍光フィルタの一方又は両方は2つの透過領域をもつように設定された請求項1から3のいずれか一項に記載の光学フィルタからなる単一の2波長帯用フィルタであることを特徴とする蛍光測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
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【図24】
【図25】
【公開番号】特開2009−122203(P2009−122203A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−293722(P2007−293722)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
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