説明

光学フィルムの製造方法、光学フィルム、偏光板、及び液晶表示装置

【課題】配向膜と、透明支持体及び/又は光学異方性層との密着性の改善。
【解決手段】透明支持体、配向膜、及び光学異方性層を有する光学フィルムの製造方法であって、透明支持体上で、カルボキシル基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物の少なくとも1種と、エポキシ化合物の少なくとも1種とを含有する配向膜形成用組成物の熱架橋反応を不完全に進行させて、配向膜を形成する配向膜形成工程、及び配向膜上で、円盤状液晶化合物の少なくとも1腫を含む光学異方性層形成用組成物の硬化反応を進行させて光学異方性層を形成する光学異方性層形成工程を含み;前記エポキシ化合物が、1分子中のエポキシ官能基数が2より大きく、エポキシ当量が170g/当量以下であることを特徴とする光学フィルムの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置の光学補償フィルム等として有用な、光学フィルムの製造方法、光学フィルム、並びにそれを有する偏光板及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶分子に対して配向制御能を有する配向膜が、種々提案されている(例えば、特許文献1〜4)。例えば、特許文献3には、円盤状液晶分子を、配向膜界面において空気界面より大きな傾斜角で配向させることが可能な配向膜(以下、液晶性分子を配向膜界面に対して大きい傾斜角、つまり、配向膜界面と液晶性分子のダイレクタとのなす角が小さい角度で配向可能な配向膜を「垂直配向膜」という)が提案されている。しかし、従来の垂直配向膜は、支持体及び/又はその上に形成される光学異方性層との密着性が悪く、その結果、耐久性が悪いという問題があった。
【0003】
配向膜と支持体及び/又は光学異方性層との密着性を改善する方法としては、配向膜形成用材料として、架橋性基を有するポリマーを利用する方法や、配向膜形成用ポリマーを架橋剤により架橋する方法がある(例えば、特許文献5)。この方法により、光学異方性層と配向膜との密着性を改善するためには、配向膜形成材料の架橋反応を、光学異方性層形成時の硬化反応と同時に進行させることが好ましいとされている。しかし、未架橋の配向膜は軟らかく、当該配向膜の表面に配向制御能付与のためにラビング処理を施すと、顕著な発塵があり、その後の光学異方性層の形成工程に悪影響がある。一方、配向膜の架橋を光学異方性層形成前に進行させてしまうと、ラビング処理による配向制御能が不十分となる場合があり、また架橋による密着性改善効果も得られない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−98836号公報
【特許文献2】特開2005−99228号公報
【特許文献3】特開2002−122736号公報
【特許文献4】特開2006−276203号公報
【特許文献5】特開2008−164921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記問題点に鑑みなされたものであって、垂直配向膜の配向能を低下させることなしに、垂直配向膜と光学異方性層及び/又は支持体との密着性を改善することを課題とする。
また、本発明は、垂直配向膜の密着性が良好であり、その結果耐久性が良好な、垂直配向膜を有する光学フィルムの製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、耐久性が良好で、且つ配向欠陥等による光学特性の劣化が軽減された、垂直配向膜を有する光学フィルム、並びに該光学フィルムを有する、偏光板及び液晶表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 透明支持体、配向膜、及び光学異方性層を有する光学フィルムの製造方法であって、
透明支持体上で、カルボキシル基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物の少なくとも1種と、エポキシ化合物の少なくとも1種とを含有する配向膜形成用組成物の熱架橋反応を不完全に進行させて、配向膜を形成する配向膜形成工程、及び
配向膜上で、円盤状液晶化合物の少なくとも1腫を含む光学異方性層形成用組成物の硬化反応を進行させて光学異方性層を形成する光学異方性層形成工程を含み;
前記エポキシ化合物が、1分子中のエポキシ官能基数が2より大きく、エポキシ当量が170g/当量以下であることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
[2] 前記配向膜形成工程において、熱架橋反応時の前記エポキシ化合物の反応率が10〜50%であることを特徴とする[1]の方法。
[3] 前記配向膜形成工程において、熱架橋反応を膜面温度80〜120℃で、1〜5分間進行させることを特徴とする[1]又は[2]の方法。
[4] 前記配向膜形成用組成物が、少なくとも1種の第3級アミンを含むことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかの方法。
【0007】
[5] 前記配向膜形成用組成物中に含まれる高分子化合物が、下記式(I)又は(II)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの方法:
【化1】

【0008】
[6] 前記配向膜形成用組成物中に含まれるエポキシ化合物が、下記部分構造(a)及び/又は(b)を有する化合物である[1]〜[5]のいずれかの方法:
【化2】

1及びR2はそれぞれ、1以上のエポキシ基を含む置換基を表す。
【0009】
[7] 前記光学異方性層形成工程において、円盤状液晶化合物の分子を、その配向膜側のダイレクタと、配向膜の面とのなす角度が0度以上25度以下で配向させ、その後、その配向状態を硬化反応により固定することを特徴とする[1]〜[6]のいずれかの方法。
[8] 透明支持体、配向膜、及び光学異方性層をこの順で有する光学フィルムであって、
前記配向膜が、カルボキシル基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物の少なくとも1種と、1分子中のエポキシ官能基数が2より大きく、エポキシ当量が170g/当量以下であるエポキシ化合物とを含有する組成物からなる膜であり、
前記光学異方性層が、円盤状液晶化合物を含有する組成物からなる層であり、前記光学異方性層中、円盤状液晶化合物の分子が、その配向膜側のダイレクタと、配向膜の面とのなす角度が0度以上25度以下で配向した状態に固定されている光学フィルム。
[9] 前記透明支持体が、セルロースアシレートフィルムであることを特徴とする[8]の光学フィルム。
[10] 前記配向膜がラビング処理面を有し、該ラビング処理面のラビング軸と、前記光学異方性層中の円盤状液晶分子のダイレクタを配向膜面に投影した軸とが平行であることを特徴とする[8]又は[9]の光学フィルム。
[11] [8]〜[10]のいずれかの光学フィルムと、偏光膜とを少なくとも有することを特徴とする偏光板。
[12] [11]の偏光板を有することを特徴とする液晶表示装置。
[13] 前記液晶表示装置の液晶セルがTNモードであることを特徴とする[11]の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、垂直配向膜の配向能を低下させることなしに、垂直配向膜と光学異方性層及び/又は支持体との密着性を改善することができる。
また、本発明によれば、垂直配向膜の密着性が良好であり、その結果耐久性が良好な、垂直配向膜を有する光学フィルムの製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、耐久性が良好で、且つ配向欠陥等による光学特性の劣化が軽減された、垂直配向膜を有する光学フィルム、並びに該光学フィルムを有する、偏光板及び液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の光学フィルムの一態様の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る液晶表示装置について詳細に説明する。
なお、本実施形態の説明において、「平行」あるいは「直交」とは、厳密な角度±5°未満の範囲内であることを意味する。厳密な角度との誤差は、4°未満であることが好ましく、3°未満であることがより好ましい。
また、角度について、「+」は時計周り方向を意味し、「−」は反時計周り方向を意味するものとする。
また、「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味し、更に屈折率の測定波長は、特別な記述がない限り、可視光域(λ=550nm)での値である。
【0013】
また、本実施形態の説明において「偏光板」とは、特別な記述がない限り、長尺の偏光板、及び液晶装置に組み込まれる大きさに裁断された偏光板の両者を含む意味で用いている。なお、ここでいう「裁断」には「打ち抜き」及び「切り出し」等も含むものとする。また、本実施形態の説明では、「偏光子」と「偏光板」とを区別して用いるが、「偏光板」は「偏光子」の少なくとも片面に該偏光子を保護する透明保護膜を有する積層体のことを意味するものとする。
【0014】
また、本実施形態の説明において、「分子のダイレクタ」とは、分子が回転対称軸を有する場合は、当該対称軸を指すが、厳密な意味で、分子が回転対称性であることを要求するものではない。一般的に、円盤状液晶化合物の分子については、ダイレクタは、円盤面の中心を貫く円盤面に対して垂直な軸と一致する。
【0015】
また、本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH、又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。測定されるフィルムが、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。なお、この測定方法は、後述する光学異方性層中のディスコティック液晶分子の配向膜側の平均チルト角、その反対側の平均チルト角の測定においても一部利用される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)、及び式(III)よりRthを算出することもできる。
【0016】
【数1】

なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzは、nx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d・・・・・・・・・・・式(III)
【0017】
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。
主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0018】
また、本明細書において、光学異方性層中のディスコティック液晶分子の配向膜側のダイレクタは、以下の方法で算出される値をいうものとする。
液晶性化合物を含む光学異方性層の配向において、チルト角、捩れ角などを厳密に制御することは一般に非常に困難である。また、目的の配向となっているかを検証することも同様に困難な場合が多い。
【0019】
そこで本明細書においては、円盤状化合物を配向させた光学異方性層において、光学異方性層の一方の面におけるチルト角(円盤状化合物における物理的な対象軸が光学異方性層の界面となす角度をチルト角とする)θ1および他方の面のチルト角θ2を、直接的にかつ正確に測定することは困難であることに鑑み、θ1及びθ2を、以下の手法で算出する。本手法は本発明の実際の配向状態を正確に表現していないが、光学フィルムのもつ一部の光学特性の相対関係を表す手段として有効である。
本手法では算出を容易にすべく、下記の2点を仮定し、光学異方性層の2つの界面におけるチルト角とする。
1.光学異方性層は円盤状化合物を含む層で構成された多層体と仮定する。さらに、それを構成する最小単位の層(円盤状化合物のチルト角は該層内において一様と仮定)は光学的に一軸と仮定する。
2.各層のチルト角は光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化すると仮定する。
具体的な算出法は下記のとおりである。
(1)各層のチルト角が光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化する面内で、光学異方性層への測定光の入射角を変化させ、3つ以上の測定角でレターデーション値を測定する。測定および計算を簡便にするためには、光学異方性層に対する法線方向を0°とし、−40°、0°、+40°の3つの測定角でレターデーション値を測定することが好ましい。このような測定は、KOBRA−21ADHおよびKOBRA−WR(王子計測器(株)製)、透過型のエリプソメータAEP−100((株)島津製作所製)、M150およびM520(日本分光(株)製)、ABR10A(ユニオプト(株)製)で行うことができる。
(2)上記のモデルにおいて、各層の常光の屈折率をno、異常光の屈折率をne(neは各々すべての層において同じ値、noも同様とする)、及び多層体全体の厚みをdとする。さらに各層におけるチルト方向とその層の一軸の光軸方向とは一致するとの仮定の元に、光学異方性層のレターデーション値の角度依存性の計算が測定値に一致するように、光学異方性層の一方の面におけるチルト角θ1および他方の面のチルト角θ2を変数としてフィッティングを行い、θ1およびθ2を算出する。
ここで、noおよびneは文献値、カタログ値等の既知の値を用いることができる。値が未知の場合はアッベ屈折計を用いて測定することもできる。光学異方性層の厚みは、光学干渉膜厚計、走査型電子顕微鏡の断面写真等により測定数することができる。
【0020】
1.光学フィルムの製造方法
本発明は、透明支持体、配向膜、及び光学異方性層を有する光学フィルムの製造方法に関する。以下、本発明の光学フィルムの製造方法について詳細に説明する。
(1)支持体の準備
まず、配向膜及び光学異方性層の支持体を準備する。支持体の材料については特に制限はない。例えば、ポリマーフィルムを用いることができる。一例は、透明で、光学異方性が小さいポリマーフィルムであるが、これに限定されるものではない。ここで支持体が透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。また、本発明に使用する支持体のReは、10〜20nm程度であるのが好ましい。透明支持体は、長尺状であってロール形態に巻き上げられた形状であっても、最終製品の大きさである、例えば、長方形のシート状であってもよい。ロール状に巻き上げられた長尺のポリマーフィルムを、支持体として用い、配向膜及び光学異方性層を連続的に形成してから、必要な大きさに切断することが好ましい。
【0021】
支持体として使用可能なポリマーフィルムの例には、セルロースアシレート、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート及びポリメタクリレート、環状ポリオレフィン等のフィルムが含まれる。セルロースアシレートフィルムが好ましく、セルロースアセテートフィルムがさらに好ましい。
【0022】
支持体として用いられるポリマーフィルム厚みについては特に制限はないが、一般的には、20〜500μmであることが好ましく、30〜200μmであることがさらに好ましい。
【0023】
支持体用のポリマーフィルムは、溶液製膜法及び溶融製膜法のいずれの方法で製造されたフィルムであってもよい。セルロースアシレートフィルムについては、ソルベントキャスト法により製造されたフィルムが好ましい。また、透明支持体として用いられるポリマーフィルムには、その上に設けられる配向膜との接着を改善するため、表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理、ケン化処理)を実施してもよい。透明支持体の上に、接着層(下塗り層)を設けてもよい。
【0024】
(2)配向膜の形成
次に、支持体上に配向膜を形成する。本発明では、配向膜の形成に、カルボキシル基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物の少なくとも1種と、エポキシ化合物の少なくとも1種とを含有する配向膜形成用組成物を用いる。
【0025】
・カルボキシル基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物
本発明の方法では、カルボキシル基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物を配向膜形成の主成分として用いる。前記高分子化合物は、カルボキシル基を有する繰り返し単位のみからなるホモポリマーであっても、カルボキシル基を有する繰り返し単位とともに、他の繰り返し単位を有するコポリマーであってもよい。前記高分子化合物は、垂直配向膜用ポリマー材料として公知の材料から選択することができる。例えば、特開2002−122736号公報の[0021]〜[0041]に記載のポリマー、及び特開2006−276203号公報の[0130]〜[0169]に記載のポリマーから選択することができる。
【0026】
前記カルボキシル基を有する繰り返し単位の例には、下記式(I)及び(II)で表されるカルボキシル基を有する繰り返し単位が含まれる。
【0027】
【化3】

【0028】
前記高分子化合物の重合度及び分子量については特に制限はないが、重合度は、200〜5000程度であることが好ましく、300〜3000程度であることが特に好ましく;分子量は、9000〜200000程度であることが好ましく、13000〜130000程度であることが特に好ましい。但し、これらの範囲に制限されるものではない。
【0029】
・エポキシ化合物
本発明の方法では、所定のエポキシ化合物を前記高分子化合物の架橋剤として用いる。本発明に用いるエポキシ化合物は、1分子中のエポキシ官能基数が2より大きく、エポキシ当量が170g/当量以下であることを特徴とする。ここで、エポキシ当量とは、エポキシ官能基1つあたりのエポキシ化合物重量であり、この値が低いことは、単位重量あたりのエポキシ官能基数が多いことを示す。つまり、一定重量用いた時に、この値が低い化合物のほうが、より高い架橋を実現できることになる。1分子中のエポキシ官能基数の上限値については特に制限はないが、6以下が好ましく、5以下がより好ましく、2より大きく且つ4以下が特に好ましい。エポキシ当量の下限値についても特に制限はないが、100以上が好ましく、120以上がより好ましい。エポキシ官能基数又はエポキシ当量が前記範囲外であるエポキシ化合物を用いると、不完全な熱架橋反応を進行させて形成した配向膜の膜強度が不十分であり、ラビング処理時の発塵が顕著となる。しかも、その後の光学異方性層形成時の硬化反応中に、残余のエポキシ化合物の熱架橋反応を進行させても、密着性改善効果が十分に得られない。
なお、本発明の方法では、2種以上のエポキシ化合物の混合物を用いてもよく、混合物の態様では、エポキシ化合物の1分子中の官能基数及びエポキシ当量は、それぞれの平均値とする。2種以上のエポキシ化合物の混合物を用いる場合は、当該平均値が上記条件を満足している必要がある。
【0030】
前記エポキシ化合物が上記条件を満足する限り、その分子構造については特に制限はない。一例は、下記部分構造(a)及び/又は(b)を有するエポキシ化合物である。
【0031】
【化4】

【0032】
1及びR2はそれぞれ、1以上のエポキシ基を含む置換基を表す。R1及びR2は、1以上のエポキシ基と上記部分構造とを含む2価以上の連結基を含んでいてもよい。当該連結基の例には、直鎖又は分岐鎖のエーテル鎖(−CH2−O−CH2−、−CH2−O−CH2−CH(CH2−O―)2)等が含まれる。また、(a)及び/又は(b)の部分構造を複数含む化合物も好ましい。なお、エポキシ化合物は、市販品であってもよく、上記条件を満足するエポキシ化合物としては、「デナコールEX−313」及び「デナコールEX−512」(いずれもナガセケムテックス製)が好ましい。
【0033】
前記配向膜形成用組成物中、エポキシ化合物は、前記高分子化合物に対して、一般的には0.01〜30質量%程度であるのが好ましく、0.1〜20質量%程度であるのがより好ましく、1〜10質量%程度であるのがさらに好ましい。
【0034】
前記配向膜形成用組成物は、塗布液として調製してもよい。支持体としてポリマーフィルムを利用する態様では、支持体の劣化を避けるためには、溶媒として水、又は水と低級アルコール(例えばメタノール及びエタノール等)等との水系混合溶媒を用いて調製される水性塗布液として調製するのが好ましい。前記高分子化合物の中には、そのままでは水不溶性又は難溶性の高分子化合物も存在する。水不溶性又は難溶性高分子化合物については、溶解性を改善することを目的として、カルボキシル基と塩を形成可能な、塩基性化合物を添加することが好ましい。使用可能な塩基性化合物の例には、無機化合物及び有機化合物の双方が含まれ、具体的には、アルカリ金属の水酸化物(例えば、NaOH、KOH、LiOH)、及び第3級アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン)が含まれる。中でも第3級アミン化合物を添加すると、配向膜の配向制御能を低下させることなく、水性塗布液の調製が容易となるので好ましい。
塩基性化合物は、前記高分子化合物のカルボキシル基の少なくとも一部と塩を形成し、水への溶解性を改善できる量だけ添加されるであろう。
【0035】
本発明の方法では、前記高分子化合物、前記エポキシ化合物、及び所望により塩基性化合物を含む組成物を、例えば、水性塗布液として調製し、該組成物を、支持体の表面に塗布して、配向膜を形成する。配向膜の形成時には、前記エポキシ化合物による、前記高分子化合物の熱架橋反応を、不完全に進行させる。完全ではなく、一部が架橋された配向膜とすることにより、ラビング処理時の発塵を軽減できるとともに、架橋を不完全にすることで配向能が失われるのを防止することができる。その結果、配向膜界面において、円盤状液晶化合物の分子の配向を十分に制御し、所望の光学特性の光学異方性層を配向欠陥なく、安定的に形成できる。さらに、光学異方性層形成用組成物の硬化反応時に、残余のエポキシ化合物による架橋反応が進行し、配向膜と光学異方性層との密着性が改善される。
【0036】
本発明の方法では、前記配向膜形成時の熱架橋反応の進行の程度が、前記エポキシ化合物が完全に反応した反応率を100%とし、前記エポキシ化合物の反応率が10〜50%程度まで反応を進行させることが好ましく、25〜50%程度まで反応を進行させるのが好ましい。
なお、形成された配向膜中のエポキシ化合物の反応率は、ATR−IR測定により決定することができる。
【0037】
前記エポキシ化合物の反応率は、熱架橋反応時の温度及び/又は時間を調整することで、前記好ましい範囲に調整することができる。前記反応率を達成する熱架橋反応条件の一例は、膜面温度80〜120℃(より好ましくは90〜110℃)で、1〜5分間(より好ましくは1〜3分間)である。但し、この条件に限定されるものではない。
【0038】
この様にして形成する配向膜の厚みは、一般的には、100〜1000nmである。膜厚は、塗布量によって調整できる。
【0039】
形成された配向膜の表面に、ラビング処理を施すことが好ましい。本発明では、一般的なラビング処理方法を利用することができる。例えば、配向膜の表面を、ラビングロールで摺ることによって実施できる。長尺状のポリマーフィルムからなる支持体上に連続的に配向膜を形成する態様では、製造適性の観点では、ラビング処理の方向(ラビング軸)は、ポリマーフィルムの長手方向と一致しているのが好ましい。
【0040】
(3)光学異方性層の形成
次に、配向膜の表面(好ましくはラビング処理面)に、光学異方性層を形成する。本発明では、光学異方性層の形成に、円盤状液晶化合物を少なくとも含有する組成物を利用する。
・円盤状液晶化合物
本発明に用いる円盤状液晶化合物(以下、「ディスコティック液晶化合物」という場合もある)については特に制限はない。従来、光学異方性層の形成に利用されている種々の円盤状液晶化合物の中から選択することができる。ディスコティック液晶化合物が挙げられ、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、更に、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。
【0041】
ディスコティック液晶化合物には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
【0042】
前記ディスコティック液晶化合物には、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、又は置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造の、液晶性を示す化合物も含まれる。分子又は分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。
まお、最終的に光学異方性層に含まれる化合物は、もはや液晶性を示す必要はない。
【0043】
ディスコティック液晶化合物の好ましい例は、特開平8−50206号公報、特開2006−76992号公報明細書中の段落番号[0052]、特開2007−2220号公報明細書中の段落番号[0040]〜[0063]に記載されている。例えば下記一般式(DI)、(DII)で表される化合物が高い複屈折性を示すので好ましい。さらに下記一般式(DI)、(DII)表される化合物の中でも、ディスコティックネマチック相を示す化合物が好ましい。下記化合物の詳細(式中の符号の定義、及びその好ましい範囲)については、上記公報に具体的記載がある。
【0044】
【化5】

【0045】
また、前記円盤状液晶化合物の好ましい例には、特開2005−301206号公報に記載の化合物も含まれる。
【0046】
本発明では、円盤状液晶化合物を少なくとも一種含有する組成物を、配向膜の表面(好ましくは配向膜のラビング処理面)に配置する。例えば、前記組成物を、塗布液として調製し、配向膜の表面に塗布するのが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒の例には、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジン)、炭化水素(例えば、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれ、アルキルハライド及びケトンが好ましい。前記有機溶媒は、1種単独で使用してもよく、2種類を併用してもよい。塗布液の表面張力が25mN/m以下(より好ましくは22mN/m以下)であると、均一性の高い光学異方性層を形成できるので好ましい。
【0047】
塗布方法としてはカーテンコーティング法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、印刷コーティング法、スプレーコーティング法、スロットコーティング法、ロールコーティング法、スライドコーテティング法、ブレードコーティング法、グラビアコーティング法、ワイヤーバー法等の公知の塗布方法が挙げられる。
【0048】
前記光学異方性層形成用組成物は、円盤状液晶化合物の分子を所望の配向状態とするため、及び組成物の塗布性もしくは硬化性の良化のために、円盤状液晶化合物とともに、一種以上の添加剤を含んでいてもよい。
例えば、層の空気界面側の配向を制御し得る添加剤を添加してもよい。該添加剤として、フッ化アルキル基及びスルホニル基等の親水性基を有する低分子量もしくは高分子量の化合物が挙げられる。使用可能な空気界面配向制御剤の具体例には、特開2006−267171号公報等に記載の化合物が含まれる。また、塗布性の良化のために、フッ素系界面活性剤を添加することもできる。
【0049】
また、前記組成物を塗布液として調製し、塗布により前記光学異方性層を形成する場合は、塗布性の良化のために界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、フッ素系化合物が好ましく、具体的には、特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物が挙げられる。また市販の「メガファックF780」(大日本インキ製)などを用いてもよい。
【0050】
また、前記組成物は、硬化性であるのが好ましく、当該態様では、重合開始剤を含有しているのが好ましい。前記重合開始剤は、熱重合開始剤であっても光重合開始剤であってもよいが、制御が容易である等の観点から、光重合開始剤が好ましい。光の作用によりラジカルを発生させる光重合開始剤の例としては、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物等が好ましい。
【0051】
また、感度を高める目的で重合開始剤に加えて、増感剤を用いてもよい。増感剤の例には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、及びチオキサントン等が含まれる。光重合開始剤は複数種を組み合わせてもよく、使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。液晶化合物の重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。
【0052】
前記組成物は、重合性液晶化合物とは別に、非液晶性の重合性モノマーを含有していてもよい。重合性モノマーとしては、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物が好ましい。なお、重合性の反応性官能基数が2以上の多官能モノマー、例えば、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレートを用いると、耐久性が改善されるので好ましい。前記非液晶性の重合性モノマーは、非液晶性成分であるので、その添加量が、液晶化合物に対して15質量%を超えることはなく、0〜10質量%程度であるのが好ましい。
【0053】
前記組成物の塗膜を乾燥する際には、加熱してもよい。塗膜を乾燥して溶媒を除去すると同時に、塗膜中の円盤状液晶化合物の分子を配向させて、所望の配向状態を得ることができる。
【0054】
円盤状液晶化合物の分子を所望の配向状態とした後、重合により硬化させ、その配向状態を固定して、光学異方性層を形成する。その際に、配向膜中の残余のエポキシ化合物の架橋反応が進行し、密着性が改善される。硬化反応は、光照射により進行させるのが、制御が容易である点で好ましい。照射する光は、X線、電子線、紫外線、可視光線または赤外線(熱線)を用いることができる。中でも、紫外線を利用するのが好ましい。光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)あるいはショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)が好ましく用いられる。露光量は、50〜6000mJ/cm2程度であることが好ましく、100〜2000mJ/cm2程度であることがさらに好ましい。短時間で配向を制御するためには、加熱しながら光を照射することが好ましい。加熱温度は、40〜250℃程度であることが好ましい。
【0055】
光照射時に、光学異方性層形成用組成物の硬化反応のみならず、配向膜中の残余のエポキシ化合物による架橋反応も進行させるためには、比較的高い照度の光を照射させるのが好ましい。照射照度は、10〜5000mW/cm2であるのが好ましく、100〜2000mW/cm2であるのがより好ましく、500〜1000mW/cm2であるのがさらに好ましい。
【0056】
この様にして形成する光学異方性層の厚みについては特に制限されないが、0.1〜10μmであるのが好ましく、0.5〜5μmであるのがより好ましい。
【0057】
なお、本発明では、光学異方性層中の円盤状液晶化合物の分子の配向形態については特に制限はない。本発明では、配向膜が、カルボキシル基を有する高分子を主成分として含有することが一つの特徴であり、当該配向膜は、円盤状液晶化合物の分子を、その配向膜側のダイレクタと、配向膜の面とのなす角度が0度以上25度以下で配向させることが可能である。
【0058】
2.光学フィルム
本発明は、本発明の製造方法により製造された光学フィルムにも関する。本発明の光学フィルムは、透明支持体、配向膜、及び光学異方性層をこの順で有する光学フィルムであって、前記配向膜が、カルボキシル基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物の少なくとも1種と、1分子中のエポキシ官能基数が2より大きく、エポキシ当量が170g/当量以下であるエポキシ化合物とを含有する組成物からなる膜であり、
前記光学異方性層が、円盤状液晶化合物を含有する組成物からなる層であり、前記光学異方性層中、円盤状液晶化合物の分子が、その配向膜側のダイレクタと、配向膜の面とのなす角度が0度以上25度以下で配向した状態に固定されている光学フィルムである。
前記配向膜及び光学異方性層の形成に利用される材料の例については、上記した通りである。また、支持体として用いられるポリマーフィルムの例についても、上記した通りである。
【0059】
本発明の光学フィルムの一例を図1に示す。
図1に示す光学フィルムは、ポリマーフィルム等からなる支持体1、配向膜2、及び光学異方性層3を有する。光学異方性層3中、円盤状液晶分子LCは、配向膜2の近傍において、そのダイレクタDa(ここで、円盤状液晶分子のダイレクタは、円盤面の法線方向と一致する)と、配向膜2の表面とのなす角が、βaで配向している。配向膜2は、カルボキシル基を有する高分子を主成分として含有していて、βaを0〜25度程度に配向制御可能である。また、所望により空気界面配向制御剤を添加することで、図1に示す通り、光学異方性層3の空気界面Bにおいて、円盤状液晶化合物の分子LCが、そのダイレクタDbを配向膜面に対して実質的に90度で配向している、配向状態を得ることができる。即ち、円盤状液晶化合物の分子のダイレクタと、配向膜面とのなす角が、配向膜から空気界面に向かって増加している(即ち、βa<βb)、ハイブリッド配向状態を得ることができる。
但し、本発明の製造方法によって得られる光学フィルムの態様は図1に示す態様に限定されるものではない。添加剤の種類や添加量を調整することで、円盤状液晶化合物の分子のダイレクタと、配向膜の面とのなす角度が、層全体にわたって、一様に、0度以上25度以下程度である、配向状態を達成することもできる。
【0060】
垂直配向膜の表面に、ラビング処理が施されていると、一般的には、円盤状液晶化合物の分子は、ラビング軸に対して、ダイレクタを直交にして配向するのが主流である。しかし、配向膜2は、カルボキシル基を有する化合物を主成分として含んでいるので、上記した通り、βaを0〜25度程度に配向制御可能であるとともに、図1に示す通り、円盤状化合物の分子LCのダイレクタDaを配向膜面に投影した軸が、ラビング軸Rとほぼ一致する。この配向状態は、後述する偏光板の連続生産において、好ましい。
【0061】
3.偏光板
本発明は、偏光膜と、本発明の光学フィルムとを少なくとも有する偏光板にも関する。本発明の偏光板の一態様は、偏光膜の一方の表面に本発明の光学フィルムが積層され、他方の表面に保護フィルムが積層された偏光板である。本態様では、本発明の光学フィルムの支持体の裏面(配向膜及び光学異方性層が形成されていない側の面)が、偏光膜の一方の表面に貼合されているのが好ましい。他方の表面に貼合される保護フィルムについては特に制限はなく、上記支持体として利用可能なポリマーフィルムの例から選択するのが好ましい。保護フィルムの好ましい一例は、トリアセチルセルロースフィルム等のセルロースアシレートフィルムである。
【0062】
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜があり、本発明にはいずれを使用してもよい。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。
【0063】
長尺状の偏光膜と、長尺状の本発明の光学フィルムとを、連続的に貼合して、偏光板を作製することができる。光学フィルムの製造において、支持体の長手方向に沿ってラビング処理をすることが製造適性の観点では好ましいことは上記した通りである。本発明では、配向膜が、所定の高分子を含有しているので、円盤状液晶化合物の配向方向(図1中Da)を配向膜面に投影した軸が、ラビング軸(図1中R)とほぼ平行、即ち、長尺状のポリマーフィルムの長手方向と一致した、光学異方性層を形成することができる。光学異方性層の遅相軸は、ダイレクタを配向膜面に投影した軸に対して直交する軸である。よって、長尺状の偏光膜と貼り合せる際に、長手方向を一致させて本発明の光学フィルムを積層することで、光学異方性層の遅相軸と、偏光膜の吸収軸とが直交した偏光板を、容易に連続的に作製することができる。
【0064】
4.液晶表示装置
本発明は、本発明の偏光板を有する液晶表示装置にも関する。本発明の光学フィルムは、TN型液晶表示装置の光学補償に適している。従って、本発明の液晶表示装置の好ましい態様は、TN型液晶表示装置である。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置とについては、従来からよく知られている。液晶セルのΔn・dは300〜500nm程度である。本発明の偏光板は、本発明の光学フィルムを、液晶セル側にして配置されるのが好ましい。光学補償に利用される光学異方性層中に配向欠陥等があると、それは例えば、液晶表示装置の黒表示時の輝点として現れる。本発明の液晶表示装置によれば、黒表示時にかかる輝点が生じるのを軽減することができる。さらに、配向膜と、光学異方性層及び/又は支持体との密着性が良好であり、それらの界面での剥離に基づく故障などを軽減することができる。
【実施例】
【0065】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0066】
[実施例1]
(透明支持体の作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、30℃に加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液を調製した。
────────────────────────────────────
セルロースアシレート溶液組成(質量部) 内層 外層
────────────────────────────────────
酢化度60.9%のセルロースアシレート 100 100
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8 7.8
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑 3.9 3.9
メチレンクロライド(第1溶媒) 293 314
メタノール(第2溶媒) 71 76
1−ブタノール(第3溶媒) 1.5 1.6
シリカ微粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)
0 0.8
下記レタデーション上昇剤 1.3 1.3
────────────────────────────────────
【0067】
【化6】

【0068】
得られた内層用ドープ及び外層用ドープを、三層共流延ダイを用いて、−10℃に冷却したドラム上に流延した。セルロースアシレート100質量部に対し、残留溶剤量が290質量部のフィルムをドラムから剥ぎ取り、両端をピンテンターにて固定して搬送方向のドロー比を115%として搬送しながら給気温度70℃で乾燥させ、残留溶剤量が40質量部となったところで、給気温度140℃で乾燥させた。その後、給気温度140℃の温度で10分間乾燥し、残留溶剤が0.2質量%のセルロースアシレートフィルム(外層膜厚:3μm、内層膜厚:74μm(総膜厚:80μm)、長さ:2000m、幅:1490mm)を作製した。
【0069】
作製したセルロースアシレートフィルムについて、エリプソメータ(M−150、日本分光(株)製)を用いて、波長632.8nmにおける面内方向のレターデーション値(Re)および厚み方向のレターデーション値(Rth)を測定した。遅相軸は搬送方向に直交であり、Reは15nm、Rthは100nmであった。
【0070】
(アルカリ鹸化処理)
セルロースアシレートフィルムを、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムの片面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m2で塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m2塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアシレートフィルムを作製した。
【0071】
(アルカリ溶液組成)
────────────────────────────────────
アルカリ溶液組成(質量部)
────────────────────────────────────
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
界面活性剤
SF−1:C1429O(CH2CH2O)20H 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
────────────────────────────────────
【0072】
(配向膜の作製)
前記のようにアルカリ鹸化処理したセルロースアシレートフィルムのアルカリ鹸化処理面の上に、下記の組成の配向膜形成用組成物塗布液をバーコーターで14ml/m2の塗布量で塗布した。その後、膜面温度が100℃になるように給気を行ない、120秒間の乾燥を行なった。
【0073】
(配向膜形成用塗布液組成)
────────────────────────────────────
配向膜形成用塗布液組成(質量部)
────────────────────────────────────
下記構造の配向膜用ポリマー 4.0質量部
トリエチルアミン 1.6質量部
エポキシ化合物(デナコールEX−313、ナガセケムテックス(株)製)
0.2質量部
水 47.1質量部
メタノール 47.1質量部
────────────────────────────────────
【0074】
【化7】

【0075】
配向膜形成用塗布液で使用したエポキシ化合物(デナコールEX−313)のエポキシ官能基数は2〜3であり、エポキシ当量は141g/当量である。また、作製した配向膜について、エポキシ化合物の反応率をATR−IRにより測定した結果、反応率は30%であった。
【0076】
(光学異方性層の作製)
前記の方法で作製した配向膜表面を長手方向にラビング処理を実施した。
下記組成の光学異方性層用塗布液を、バーコーターを用いて塗布量4ml/m2で塗布した。膜面温度が130℃になるように連続的に加温する工程で、約120秒間加熱することで、液晶化合物を配向させた。その後、膜面温度が100℃の状態で紫外線照射装置(紫外線ランプ:出力160W/cm、発光長1.6m)により、照度600mW/cm2の紫外線を4秒間照射し、架橋反応を進行させ、液晶化合物をその配向に固定した。その後、室温まで放冷し、円筒状に巻き取ってロール状の光学フィルムを得た。
【0077】
(光学異方性層用塗布液組成)
────────────────────────────────────
光学異方性層塗布液組成(質量部)
────────────────────────────────────
下記構造の円盤状液晶化合物 100.0質量部
下記構造のフルオロ脂肪族基含有ポリマー 1.0質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3.0質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
メチルエチルケトン 341.8質量部
────────────────────────────────────
【0078】
【化8】

【0079】
【化9】

【0080】
(光学フィルムの特性評価)
(輝点評価)
前記のように作製した光学フィルムについて、偏光顕微鏡にて配向状態の観察を行なった結果、ラビング時の発塵が原因である輝点の発生はなく、配向性は良好だった。
ここでの評価基準は以下のように行なった。
○: 直径10mmの円の中に輝点の数が3個以下
△: 直径10mmの円の中に輝点の数が4〜10個
×: 直径10mmの円の中に輝点の数が10個以上
【0081】
(円盤状液晶化合物の配向状態評価)
KOBRA−21ADHにより、光学異方性層に対する法線方向を0°とし、−40°、0°、+40°の3つの測定角でレターデーション値を測定し、フィッティングを行ってダイレクタと配向膜面のなす角度を算出した。
配向膜側の液晶部分の遅相軸と配向膜面とのなす角は70度であり、この結果より、円盤状液晶化合物の配向膜側のダイレクタと配向膜面とのなす角は20度であることが分かった。
【0082】
(密着性評価)
さらに、光学フィルムを40℃のお湯に30分間浸漬し、水を含ませたBEMCOT、M−3II(旭化成せんい(株)製)を用い、250gの荷重をかけながら1秒間に1往復の速度で10cmの距離を30往復擦り、光学異方性層の剥れを評価した結果、剥れは確認されなかった。
ここでの評価基準は以下のように行なった。
○: 剥れ一切なし
△: 一部剥れあり
×: 全面剥れ
【0083】
(偏光板の作製)
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒間浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒間浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した。その後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光膜を得た。
市販のセルロースアセテートフィルムを1.5モル/Lで、55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、0.005モル/Lで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し、希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
前記の方法で作製した光学フィルムと、鹸化処理を行った市販のセルロースアセテートフィルムとを組み合わせて前記の偏光膜を挟むようにポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合せて偏光板を得た。ここで、光学フィルムの光学異方性層が、外側にくるように配置した。また市販のセルロースアセテートフィルムとしてはフジタックTF80UL(富士フイルム(株)製)を用いた。このとき、偏光膜及び偏光膜両側の保護膜はロール形態で作製されているため各ロールフィルムの長手方向が平行となっており連続的に貼り合わした。従って光学フィルムのロール長手方向(セルロースアセテートフィルムの流延方向)と偏光子吸収軸とは平行な方向となった。
【0084】
(TNモード液晶表示装置の作製)
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(AL2216W、日本エイサー(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに上記の作製した偏光板を、光学フィルムが液晶セル側となるように、即ち、光学異方性層を最も液晶セル側にして、粘着剤を介して、観察者側及びバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。このとき、観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とを直交にして配置した。
【0085】
(TNモード液晶表示装置の評価)
作製した液晶表示装置について、輝度計(TOPCON製BM−5)を用いて、正面の黒状態の輝度、および白状態の輝度を測定し、正面コントラストを算出した。結果を下記表に示す。
【0086】
[実施例2]
以下に示す組成の配向膜形成用塗布液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光学フィルム、偏光板、液晶表示装置を作製し、輝点、円盤状液晶化合物の配向膜側のダイレクタと配向膜面とのなす角、及び密着性を評価した。その評価結果を表に示す。
【0087】
(配向膜形成用塗布液組成)
────────────────────────────────────
配向膜形成用塗布液組成(質量部)
────────────────────────────────────
下記構造の配向膜用ポリマー 4.0質量部
トリエチルアミン 1.0質量部
エポキシ化合物(デナコールEX−313、ナガセケムテックス(株)製)
0.2質量部
水 47.4質量部
メタノール 47.4質量部
────────────────────────────────────
【0088】
【化10】

【0089】
[実施例3]
配向膜形成用塗布液中に用いるエポキシ化合物を、デナコールEX−512(ナガセケムテックス(株)製)に代え、配向膜作製時の膜面温度を120℃になるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、光学フィルム、偏光板、液晶表示装置を作製し、輝点、円盤状液晶化合物の配向膜側のダイレクタと配向膜面とのなす角、密着性を評価した。その評価結果を下記表に示す。
【0090】
[実施例4]
配向膜形成用塗布液中に用いるトリエチルアミンを、NaOHに代えたこと以外は、実施例1と同様にして、光学フィルム、偏光板、液晶表示装置を作製し、輝点、円盤状液晶化合物の配向膜側のダイレクタと配向膜面とのなす角、密着性を評価した。その評価結果を下記表に示す。
【0091】
[実施例5]
光学異方性層作製時の紫外線照射時の照度を300mW/cm2にしたこと以外は実施例1と同様にして、光学フィルム、偏光板、液晶表示装置を作製し、輝点、円盤状液晶化合物の配向膜側のダイレクタと配向膜面とのなす角、密着性を評価した。その評価結果を下記表に示す。
【0092】
[比較例1]
配向膜形成用塗布液中にエポキシ化合物を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、光学フィルム、偏光板、液晶表示装置を作製し、輝点、円盤状液晶化合物の配向膜側のダイレクタと配向膜面とのなす角、密着性を評価した。その評価結果を下記表に示す。
【0093】
[比較例2]
配向膜形成用塗布液中に用いるエポキシ化合物を、デナコールEX−810(ナガセケムテックス(株)製)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、光学フィルム、偏光板、液晶表示装置を作製し、輝点、円盤状液晶化合物の配向膜側のダイレクタと配向膜面とのなす角、密着性を評価した。その評価結果を下記表に示す。
【0094】
[比較例3]
配向膜形成用塗布液中に用いるエポキシ化合物を、デナコールEX−521(ナガセケムテックス(株)製)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、光学フィルム、偏光板、液晶表示装置を作製し、輝点、円盤状液晶化合物の配向膜側のダイレクタと配向膜面とのなす角、密着性を評価した。その評価結果を下記表に示す。
【0095】
[比較例4]
配向膜形成用塗布液中に用いる配向膜用ポリマーを、下記構造のポリマーに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、光学フィルム、偏光板、液晶表示装置を作製し、輝点、円盤状液晶化合物の配向膜側のダイレクタと配向膜面とのなす角、密着性を評価した。その評価結果を、下記表に示す。
【0096】
【化11】

【0097】
【表1】

【0098】
上記結果から、カルボキシル基を有する高分子化合物と所定のエポキシ化合物とを含む組成物の、熱架橋反応を不完全に進行させて配向膜を形成し、その後、光学異方性層を形成すると、密着性が改善されるとともに、安定的に良好な光学特性を示す光学フィルムが得られることが理解できる。
本発明の条件を満足しないエポキシ化合物を用いても、密着性の改善効果は低く、さらにラビング処理時の発塵を原因とする輝点の発生も生じた(比較例2及び3)。
また、カルボキシル基を有さない高分子を利用すると、垂直配向膜として機能し得ないことが理解できる(比較例4)。
【0099】
なお、実施例1において、配向膜作製時の膜面温度を80℃、乾燥時間を90秒間にしたところ、配向膜形成時のエポキシ化合物の反応率は5%であった。その結果、実施例1と同様のラビング処理の条件では、発塵が顕著になり、輝点が生じ、所望の光学特性が得られなかった。
また、実施例1において、配向膜作製時の膜面温度を120℃、乾燥時間を300秒間にしたところ、配向膜形成時のエポキシ化合物の反応率は70%であった。その結果、実施例1と同一の条件ではラビング処理が実行できず、円盤状液晶化合物が十分に配向しなかった。但し、密着性は実施例1と同程度に優れていた。
この結果から、所定のエポキシ化合物の反応率を10〜50%熱架橋反応を進行させると、密着性を改善できるとともに、一般的なラビング処理により、配向膜に配向制御能を付与でき、安定的に所望の配向状態の光学異方性層を形成可能であることが理解できる。
【符号の説明】
【0100】
1 支持体
2 配向膜
3 光学異方性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体、配向膜、及び光学異方性層を有する光学フィルムの製造方法であって、
透明支持体上で、カルボキシル基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物の少なくとも1種と、エポキシ化合物の少なくとも1種とを含有する配向膜形成用組成物の熱架橋反応を不完全に進行させて、配向膜を形成する配向膜形成工程、及び
配向膜上で、円盤状液晶化合物の少なくとも1腫を含む光学異方性層形成用組成物の硬化反応を進行させて光学異方性層を形成する光学異方性層形成工程を含み;
前記エポキシ化合物が、1分子中のエポキシ官能基数が2より大きく、エポキシ当量が170g/当量以下であることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記配向膜形成工程において、熱架橋反応時の前記エポキシ化合物の反応率が10〜50%であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記配向膜形成工程において、熱架橋反応を膜面温度80〜120℃で、1〜5分間進行させることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記配向膜形成用組成物が、少なくとも1種の第3級アミンを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記配向膜形成用組成物中に含まれる高分子化合物が、下記式(I)又は(II)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法:
【化1】

【請求項6】
前記配向膜形成用組成物中に含まれるエポキシ化合物が、下記部分構造(a)及び/又は(b)を有する化合物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法:
【化2】

1及びR2はそれぞれ、1以上のエポキシ基を含む置換基を表す。
【請求項7】
前記光学異方性層形成工程において、円盤状液晶化合物の分子を、その配向膜側のダイレクタと、配向膜の面とのなす角度が0度以上25度以下で配向させ、その後、その配向状態を硬化反応により固定することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
透明支持体、配向膜、及び光学異方性層をこの順で有する光学フィルムであって、
前記配向膜が、カルボキシル基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物の少なくとも1種と、1分子中のエポキシ官能基数が2より大きく、エポキシ当量が170g/当量以下であるエポキシ化合物とを含有する組成物からなる膜であり、
前記光学異方性層が、円盤状液晶化合物を含有する組成物からなる層であり、前記光学異方性層中、円盤状液晶化合物の分子が、その配向膜側のダイレクタと、配向膜の面とのなす角度が0度以上25度以下で配向した状態に固定されている光学フィルム。
【請求項9】
前記透明支持体が、セルロースアシレートフィルムであることを特徴とする請求項8に記載の光学フィルム。
【請求項10】
前記配向膜がラビング処理面を有し、該ラビング処理面のラビング軸と、前記光学異方性層中の円盤状液晶分子のダイレクタを配向膜面に投影した軸とが平行であることを特徴とする請求項8又は9に記載の光学フィルム。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の光学フィルムと、偏光膜とを少なくとも有することを特徴とする偏光板。
【請求項12】
請求項11に記載の偏光板を有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項13】
前記液晶表示装置の液晶セルがTNモードであることを特徴とする請求項11に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−128242(P2011−128242A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284719(P2009−284719)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】