説明

光学フィルムの製造方法、光学フィルム、液晶表示装置、画像表示装置

【課題】連結部の両サイドを切断しつつも、比較的連結部に於ける破断の虞が少ない光学フィルムの製造方法等を提供する。
【解決手段】送り入れられた帯状フィルムを把持するニップ部が間隔を空けて配され該間隔内で該帯状フィルムを長手方向に延伸するように構成されてなる延伸装置に、帯状の原反フィルムを先端側から送り入れ、且つ先行して送り入れた原反フィルムの後端側と次の原反フィルムの先端側とをヒートシールにて連結することにより、順次連続して原反フィルムを延伸装置に送り入れて延伸させる光学フィルムの製造方法であって、前記原反フィルムの後端側と次の原反フィルムの先端側との連結部を前記延伸装置に送り入れる前に、該連結部を含む領域の両サイドを弧状に切断し、切断された領域の長手方向長さRをニップ部の間隔Lの90〜105%とすることを特徴とする光学フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、プラズマディスプレイ(PD)及び電界放出ディスプレイ(FED)等の画像表示装置等に使用される光学フィルムの製造方法、該製造方法によって製造された光学フィルム、該光学フィルムを含む液晶表示装置等の画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の光学フィルムの製造方法としては、送り入れられた帯状フィルムを延伸する延伸装置に、帯状の原反フィルムを先端側から送り入れ、該延伸装置にて延伸させて光学フィルムとする方法が採用されている。
例えば、帯状のポリビニルアルコール系原反フィルムがロール状に巻回されてなる原反ロールから原反フィルムの先端部を延伸装置に送り入れて、所定の薬液等に浸漬しつつ延伸させることにより偏光フィルムとする方法などが採用されている。
【0003】
また、この種の光学フィルムの製造方法においては、原反フィルム毎にその先端側を手作業で延伸装置内(例えば、装置内のローラとローラの間など)に送り入れることは、非常に煩雑であり且つ時間を浪費するものであることから、先行する原反フィルムの後端側に次の原反フィルムの先端側をヒートシールにより連結し、順次連続して延伸し光学フィルムとすることがなされている(下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−160665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の光学フィルムの製造方法においては、延伸によりフィルム幅が全体的に減少するところ、ヒートシールにより連結した連結部はあまり幅が減少しないことから、延伸過程でフィルム幅の不均一性が増大することとなり、連結部が延伸装置の対応幅よりも幅広となったり、延伸装置でフィルムの蛇行や詰まりが生じたりするなど種々の問題が生じうる。
従って、本発明者によれば、延伸装置に送り入れる前に、連結部の両サイドを予め切断する試みがなされている。
しかしながら、両サイドを切断すると、ヒートシールされた面積も減少することから、場合によって連結部に於ける破断の虞が増大することも十分に予測される。
本発明は、上記の如き種々の問題点等に鑑み、連結部の両サイドを切断しつつも、比較的連結部に於ける破断の虞が少ない光学フィルムの製造方法等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、下記手段によって上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、送り入れられた帯状フィルムを把持するニップ部が間隔を空けて配され該間隔内で該帯状フィルムを長手方向に延伸するように構成されてなる延伸装置に、帯状の原反フィルムを先端側から送り入れ、且つ先行して送り入れた原反フィルムの後端側と次の原反フィルムの先端側とをヒートシールにて連結することにより、順次連続して原反フィルムを延伸装置に送り入れて延伸させる光学フィルムの製造方法であって、
前記原反フィルムの後端側と次の原反フィルムの先端側との連結部を前記延伸装置に送り入れる前に、該連結部を含む領域の両サイドを弧状に切断し、切断された領域の長手方向長さRをニップ部の間隔Lの90〜105%とすることを特徴とする光学フィルムの製造方法を提供する。
また、本発明は、斯かる方法により製造された光学フィルムを提供する。
更に、本発明は、斯かる光学フィルムを含む液晶表示装置等の画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る光学フィルムの製造方法によれば、複数の原反フィルムを順次連続して長手方向に延伸しつつも、延伸による破断の虞を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
先ず、本実施形態の光学フィルムの製造方法を実施するための好ましい製造装置について図面を参照しつつ説明する。
光学フィルムの製造装置として、例えば、偏光フィルムの製造装置は、通常、帯状のポリビニルアルコール系原反フィルム1がロール状に巻回された原反ロールから原反フィルム1が送り出される原反フィルム供給部3と、送り出された原反フィルム1を所定の薬液に浸漬するための複数の浸漬浴4と、原反フィルム1を長手方向(移動方向)に延伸する延伸装置2と、複数の浸漬浴4に浸漬され且つ延伸されたフィルムを偏光フィルムとしてロール状に巻き取る偏光フィルム巻取部10とを備えている。
【0008】
図1、図2は、好ましい偏光フィルムの製造装置の一態様を示す概略斜視図である。
図1に示すように、前記浸漬浴4としては、フィルムの流れ方向上流側から順に、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させる膨潤液の貯留された膨潤浴4a、膨潤されたフィルムを染色する染色液の貯留された染色浴4b、染色されたフィルムの構成高分子を架橋させる架橋剤液の貯留された架橋浴4c、浴内でフィルムを延伸するための延伸浴4d、更に、各浸漬浴4に通されたフィルムを洗浄する洗浄液が貯留された洗浄浴4fという5種類の浸漬浴4を備えている。
【0009】
本態様の製造装置は、洗浄浴4fの流れ方向下流側で且つ巻取部10の上流側に、フィルムに付着した洗浄液を乾燥させる乾燥装置11、具体的には乾燥オーブンが備えられ、更に、該フィルムの表面両側にロール状に巻回された表面保護フィルム(例えば、トリアセチルセルロースフィルム)等の積層用フィルム12がそれぞれ配されて、乾燥後の偏光フィルムの表面両側に積層用フィルム12が積層されるように構成されている。
【0010】
前記延伸装置2は、所謂ロール延伸方式によりフィルム1を延伸させるように構成されている。即ち、送り入れられたフィルム1を間で狭持し且つ流れ方向下流側に送り出すように配された1対のニップローラ9よりなるニップ部7を間隔Lを空けて有してなり、流れ方向下流側のニップ部7の送り速度(具体的にはニップローラ9の回転周速度)を上流側よりも高速とすることにより間隔L内でフィルム1を延伸させるように構成されている。
また、前記延伸装置2は、前記ニップ部7以外に、例えば、浸漬浴4内にフィルムを通すため、フィルムの移動経路を規制する複数のガイドローラ8等を備えている。
具体的には、前記延伸装置2は、フィルムを各浸漬浴4に通しつつそれぞれ任意の延伸倍率で延伸しうるように、各浸漬浴4に応じてそれぞれ複数箇所にニップ部7とガイドローラとを備えてなる。更に、前記延伸装置2においては、延伸が施されるニップ部7とニップ部7との間の各間隔Lは、それぞれ一定の値に設定されている。
尚、本明細書において、ニップ部の間隔Lとは、直線距離では無く、一のニップ部7のフィルムを把持する部分と隣のニップ部7のフィルムを把持する部分との間に於けるフィルム移動経路に沿った距離を意味する。
【0011】
本態様の製造装置は、好ましくは、図2に示すように、原反フィルム1の後端側1aが延伸装置2に通される前であって浸漬浴4に通される前に、原反フィルム1の後端側1aと該原反フィルム1に次いで延伸装置2に通される原反フィルム1(次の原反フィルム1)の先端側1bとをヒートシールにて接着し連結部30を形成するための連結装置(図2に図示せず)を備えている。
ここで、本明細書において、連結部30とは、ヒートシールにて接着されている部分を意味し、複数本の線状の接着部分によって連結されている場合には、それらの間の領域をも含む概念である。尚、図2に於いては、連結部30が黒塗りで示されている。
【0012】
図3、図4は、前記連結装置を示す概略基本構成図である。図3に於いては、連結される原反フィルム1のTD方向に向かって連結装置を見た側面が示されており、図4に於いては、図3のA−A線切断断面図が示されている。
図3に示すように、前記連結装置は、発熱体21aを備えた板状のシールバー21と、該シールバー21と対向するように配された板状のシールバー受け22とを有し、先行する原反フィルム1の後端側1aと次の原反フィルム1の先端側1bとを重ね合わせ、重ね合わせた部分をシールバー21とシールバー受け22とで押圧し、シールバー21に備えられた発熱体21aで重ね合わせた部分を加熱することにより、先行する原反フィルム1と次の原反フィルム1とを熱接着により連結するように構成されている。
【0013】
前記シールバー21に備えられた発熱体21aとしては、好ましくは電気回路に接続され電流が供給されると発熱するニクロム線が用いられてなり、該ニクロム線は原反フィルム1を押圧する側の押圧面(即ち、シールバー受け22と対向する表面)に配されている。
【0014】
前記連結装置は、シールバー受け22の押圧面(即ち、シールバー21と対向する側の表面)で且つシールバー21に備えられた発熱体21aと対向する部位に、シリコンラバー等のラバーシート24が配されてなり、原反フィルム1の重ね合わされた部分が、シールバー21の発熱体21aが配された部位とラバーシート24とで押圧されるように構成されている。
また、前記連結装置は、シールバー21の押圧面温度(即ち、発熱体21aの温度)が例えば、55〜90℃となるように設定されており、好ましくは、シール時間が1〜15秒となるように条件設定されている。
斯かる条件によれば、連結されるポリビニルアルコール系の原反フィルム1同士は、互いに剥離する虞や熱による破断の虞が著しく低減されることとなる。
【0015】
前記連結装置によれば、板状のシールバー21とシールバー受け22とで原反フィルム1同士の重ね合わされた部分を押圧するヒートシールによって連結を実施することから、図4(イ)に示すように、原反フィルム1の重ね合わされた部分に凹凸のうねりや皺が生じていても、図4(ロ)に示すように、これらを是正しつつ連結することができる。
【0016】
また、本態様の製造装置は、ヒートシールによって連結された連結部30を前記延伸装置2に送り入れる前に、該連結部30を含む領域の両サイド(即ち原反フィルム1の幅方向の両側)を弧状に切断する切断手段(図示せず)を備えている。
詳しくは、図5に示すように、連結部30が最も幅狭な部分となるように、換言すれば、切断した弧状切断片の中央対称線上に連結部30が位置するように、原反フィルム1の幅方向の両側を略円弧状に切断する切断手段を備えている。
前記切断手段は、切断された領域の長手方向の長さRが、前記ニップ部7の間隔Lの90〜105%、好ましくは、95〜102%となるように設定されている。また、好ましくは、切断後の連結部30の幅A(連結部30の最短幅A)が、原反幅Bの50〜70%、より好ましくは、55〜65%、更により好ましくは、58〜62%となるように設定されている。
【0017】
本実施形態に於いて、使用しうる好ましい製造装置は上記の通りであるが、次に、上記の如き製造装置等を用いて実施できる本実施形態の光学フィルムの製造方法について説明する。
本実施形態の光学フィルムの製造方法は、上記の如き延伸装置2に、帯状の原反フィルム1を先端側1bから送り入れ、且つ先行して送り入れた原反フィルム1の後端側1aと次の原反フィルム1の先端側1bとをヒートシールにて連結することにより、順次連続して原反フィルム1を延伸装置2に送り入れ、所定の処理を施しつつ延伸させて光学フィルムとするものである。
【0018】
本実施形態に於いて、光学フィルムとしては、偏光フィルムを挙げることができ、また、帯状の原反フィルム1としては、偏光フィルムに用いられるポリビニルアルコール系原反フィルム1を挙げることができ、該ポリビニルアルコール系原反フィルム1としては、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、部分けん化ポリビニルアルコールフィルム又はポリビニルアルコールの脱水処理フィルム等を挙げることができる。
通常、これらの原反フィルム1は、ロール状に巻回された原反ロールの状態で用いるものである。
【0019】
前記ポリビニルアルコール系原反フィルム1の材料であるポリマーの重合度は、一般に500〜10,000であり、1000〜6000の範囲であることが好ましく、1400〜4000の範囲にあることがより好ましい。さらに、部分ケン化ポリビニルアルコールフィルムの場合、そのケン化度は、例えば、水への溶解性の点から、75モル%以上が好ましく、より好ましくは98モル%以上であり、98.3〜99.8モル%の範囲にあることがより好ましい。
【0020】
前記ポリビニルアルコール系原反フィルム1の製法としては、水または有機溶媒に溶解した原液を流延成膜する流延法、キャスト法、押出法等任意の方法で成膜されたものを適宜使用することができる。原反フィルム1の位相差値は、5nm〜100nmのものが好ましく用いられる。また、面内均一な偏光フィルムを得るために、ポリビニルアルコール系原反フィルム1面内の位相差バラツキはできるだけ小さい方が好ましく、原反フィルム1としてのポリビニルアルコール系フィルムの面内位相差バラツキは、測定波長1000nmにおいて10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましい。
【0021】
本実施形態に於いては、好ましくは、上記の如き原反フィルム1がロール状に巻回された原反ロールを用い、該原反ロールから原反フィルム1を送り出し、延伸装置2に送り入れて延伸処理を施し、延伸処理の過程として、複数のローラ8、9で移動経路を規制して複数の浸漬浴4に通す浸漬工程の処理等を実施する。
浸漬工程の処理として好ましくは、図1で例示されるように、それぞれローラ8、9で移動経路を規制しつつ、膨潤浴4aに通す等によってフィルムを膨潤させる膨潤工程、染色浴4bに通す等によってフィルムを染色する染色工程、架橋浴4cに通す等によってフィルム構成高分子を架橋させる架橋工程、延伸浴4dに通して延伸し易くする延伸浴浸漬工程、洗浄浴4fに通す等によってフィルムを洗浄する洗浄工程の処理を実施する。
尚、洗浄工程後は、通常、乾燥工程を実施する。
【0022】
前記膨潤工程としては、例えば、水で満たされた膨潤浴4aに浸漬する。これにより原反フィルム1が水洗され、原反フィルム1表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるとともに、原反フィルム1を膨潤させることで染色ムラ等の不均一性を防止する効果が期待できる。
前記膨潤浴4a中には、グリセリンやヨウ化カリウム等を適宜添加しておいてもよく、添加する場合、その濃度は、グリセリンは5重量%以下、ヨウ化カリウムは10重量%以下であることが好ましい。膨潤浴4aの温度は、20〜50℃の範囲とすることが好ましく、25〜45℃とすることがより好ましい。膨潤浴4aへの浸漬時間は、2〜180秒間が好ましく、10〜150秒間がより好ましく、60〜120秒間が特に好ましい。また、この膨潤浴4a中でポリマーフィルムを延伸してもよく、そのときの延伸倍率は膨潤による伸展も含めて1.1〜3.5倍程度とすることが好ましい。
【0023】
前記染色工程としては、例えば、膨潤工程を経たフィルムをヨウ素等の二色性物質を含む染色浴4bに浸漬することによって、上記二色性物質をフィルムに吸着させる。
【0024】
前記二色性物質としては、従来公知の物質が使用でき、例えば、ヨウ素や有機染料等が挙げられる。有機染料としては、例えば、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、エロー3G、エローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジS、ファーストブラック等が使用できる。
【0025】
これらの二色性物質は、一種類のみ使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。 前記有機染料を用いる場合は、例えば、可視光領域のニュートラル化を図る点から、二種類以上を組み合わせることが好ましい。具体例としては、コンゴーレッドとスプラブルーG、スプラオレンジGLとダイレクトスカイブルーの組み合わせ、又は、ダイレクトスカイブルーとファーストブラックとの組み合わせが挙げられる。
【0026】
前記染色浴4bの溶液としては、前記二色性物質を溶媒に溶解した溶液を使用できる。前記溶媒としては、水を一般的に使用できるが、水と相溶性のある有機溶媒をさらに添加して用いても良い。
二色性物質の濃度としては、0.010〜10重量%の範囲とすることが好ましく、0.020〜7重量%の範囲とすることがより好ましく、0.025〜5重量%の範囲とすることが特に好ましい。
【0027】
また、前記二色性物質としてヨウ素を使用する場合、染色効率をより一層向上できることから、さらにヨウ化物を添加することが好ましい。このヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等が挙げられる。これらヨウ化物の添加割合は、前記染色浴において、0.010〜10重量%とすることが好ましく、0.10〜5重量%とすることがより好ましい。これらのなかでも、ヨウ化カリウムを添加することが好ましく、ヨウ素とヨウ化カリウムの割合(重量比)は、1:5〜1:100の範囲とすることが好ましく、1:6〜1:80の範囲とすることがより好ましく、1:7〜1:70の範囲とすることが特に好ましい。
【0028】
前記染色浴4bへのフィルムの浸漬時間は、特に限定されるものではないが、1〜5分が好ましく、2〜4分がより好ましい。また、染色浴の温度は、5〜42℃の範囲とすることが好ましく、10〜35℃の範囲とすることがより好ましい。また、この染色浴中でフィルムを延伸してもよく、このときの累積した総延伸倍率は、1.1〜4.0倍程度とすることが好ましい。
【0029】
尚、染色工程としては、前述のような染色浴4bに浸漬する方法以外に、例えば、二色性物質を含む水溶液を前記ポリマーフィルムに塗布または噴霧する方法を採用してもよい。また、本発明に於いては、染色工程を行わずに、用いる原反フィルム1として、予め二色性物質が混ぜられたポリマー原料で製膜されたフィルムを採用してもよい。
【0030】
前記架橋工程としては、例えば、架橋剤を含む架橋浴4c中にフィルムを浸漬して架橋する。
前記架橋剤としては、従来公知の物質を使用できる。例えば、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物や、グリオキザール、グルタルアルデヒド等を使用できる。これらは一種類のみ用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。二種類以上を併用する場合には、例えば、ホウ酸とホウ砂の組み合わせが好ましく、また、その添加割合(モル比)は、4:6〜9:1の範囲とすることが好ましく、5.5:4.5〜7:3の範囲とすることがより好ましく、6:4とすることが最も好ましい。
【0031】
前記架橋浴4cの溶液としては、前記架橋剤を溶媒に溶解した溶液を使用できる。前記溶媒としては、例えば水を使用できるが、さらに、水と相溶性のある有機溶媒を併用しても良い。前記溶液における架橋剤の濃度は、特に限定されるものではないが、1〜10重量%の範囲とすることが好ましく、2〜6重量%とすることがより好ましい。
【0032】
前記架橋浴4c中には、偏光フィルムの面内の均一な特性が得られる点から、ヨウ化物を添加してもよい。このヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンが挙げられ、添加した場合に於けるヨウ化物の含有量は0.05〜15重量%が好ましく、0.5〜8重量%がより好ましい。
架橋剤とヨウ化物の組み合わせとしては、ホウ酸とヨウ化カリウムの組み合わせが好ましく、ホウ酸とヨウ化カリウムの割合(重量比)は、1:0.1〜1:3.5の範囲とすることが好ましく、1:0.5〜1:2.5の範囲とすることがより好ましい。
【0033】
前記架橋浴4cの温度は、通常20〜70℃の範囲とすることが好ましく、ポリマーフィルムの浸漬時間は通常1秒〜5分とし、好ましくは5秒〜4分とする。
前記架橋工程に於いては、架橋浴4c中でポリマーフィルムを延伸してもよく、このときの累積した総延伸倍率は、1.1〜5.0倍程度とすることが好ましい。
尚、架橋工程としては、染色工程と同様に、架橋浴4cに通す処理に代えて、架橋剤含有溶液を塗布または噴霧する方法を用いても良い。
【0034】
前記延伸浴浸漬工程では、延伸浴4d中に浸漬した状態で、累積した総延伸倍率が例えば2〜7倍程度となるように延伸する。
【0035】
延伸浴4dの溶液としては、特に限定されるわけではないが、例えば、各種金属塩、ヨウ素、ホウ素または亜鉛の化合物の添加された溶液を用いることができる。この溶液の溶媒としては、水、エタノールあるいは各種有機溶媒を適宜用いることができる。
なかでも、ホウ酸および/またはヨウ化カリウムをそれぞれ2〜18重量%程度添加した溶液を用いることが好ましい。このホウ酸とヨウ化カリウムを同時に用いる場合には、その含有割合(重量比)は、1:0.1〜1:4程度、より好ましくは、1:0.5〜1:3程度の割合で用いることが好ましい。
【0036】
前記延伸浴4dの温度としては、例えば、40〜67℃の範囲とすることが好ましく、50〜62℃とすることがより好ましい。
【0037】
前記洗浄工程は、例えば、水の貯留された洗浄浴4fにフィルムを通すことにより、これより前の処理で付着したホウ酸等の不要残存物を洗い流す工程である。前記水には、ヨウ化物を添加することが好ましく、例えば、ヨウ化ナトリウム又はヨウ化カリウムを添加することが好ましい。洗浄浴4fの水にヨウ化カリウムを添加した場合、その濃度は通常0.1〜10重量%、好ましくは3〜8重量%とする。さらに、洗浄浴4fの温度は、10〜60℃とすることが好ましく、15〜40℃とすることがより好ましい。また、洗浄処理の回数、即ち、洗浄浴4fに通す回数は、特に限定されることなく複数としてもよく、複数の洗浄浴4fに添加物の種類や濃度異なる水を貯留しておき、これらにフィルムを通すことにより洗浄工程を実施してもよい。
【0038】
なお、フィルムを各工程における浸漬浴4から引き上げる際には、液だれの発生を防止するために、従来公知であるピンチロール等の液切れロールを用いたり、エアーナイフによって液を削ぎ落としたりする等の方法により、余分な水分を取り除いても良い。
【0039】
前記乾燥工程としては、自然乾燥、風乾、加熱乾燥等、適宜な方法を採用することができるが、通常、加熱乾燥が好ましい。加熱乾燥の条件は、加熱温度を20〜80℃程度、乾燥時間を1〜10分間程度とすることが好ましい。
【0040】
本実施形態に於いては、以上のような工程を経たフィルムを巻取ローラにて巻き取ることによりロール状に巻回された偏光フィルムを得ることができる。
尚、本実施形態に於いては、乾燥工程にて乾燥させた偏光フィルムの表面片側もしくは両側に適宜表面保護用等の別種のフィルムを積層してから巻き取るようにしてもよい。
【0041】
このように製造された偏光フィルムの最終的な総延伸倍率は、原反フィルム1に対して、3.0〜7.0倍であることが好ましく、5.0〜6.5倍の範囲にあることがより好ましく、5.5〜6.3倍の範囲にあることが更に好ましい。最終的な総延伸倍率が3.0倍未満では、高偏光度の偏光フィルムを得ることが難しく、7.0倍を超えると、フィルムは破断しやすくなる。
【0042】
上記の如き各工程を経ることにより、偏光フィルムを連続して製造することができるが本実施形態に於いては、更に、次の原反フィルム1に上記の如き各工程を実施すべく、次の原反フィルム1を延伸装置2に送り入れる前に、先行する原反フィルム1の後端側1aと、次の原反フィルム1の先端側1bとをヒートシールにて熱接着させ、連結部30を形成する。
【0043】
具体的には、図3に示すような連結装置を用い、先行する原反フィルム1の後端側1aに次の原反フィルム1を重ね合わせ、重ね合わせた部分をシールバー21とシールバー受け22で挟み込んで押圧すると共に、シールバー温度、即ち、シールバー21の押圧面側に配された発熱体21aの温度を55〜90℃とすることにより熱接着させる。
原反フィルム1同士の熱接着部分が通常必要とされる延伸倍率(4倍以上)に延伸しても55℃以上であれば十分な熱接着によって剥離する虞が少なく、また、90℃以下であれば、その作用は定かではないもののフィルム内の水分の蒸発による気泡の発生が抑制されるためか、原反フィルム1が劣化して破断する虞も少ないものとなる。
ここで、ヒートシールの時間(即ち、シールバー21が原反フィルム1と接触している時間)は、好ましくは1〜15秒、より好ましくは2〜10秒とする。
ヒートシールの時間が1秒未満であれば、十分にヒートシールされない虞があり、また、15秒を超えて実施する必要性に乏しいからである。
【0044】
また、通常、ヒートシールは、シールされた部分が帯状で且つ原反フィルム1の幅方向(TD方向)に沿うように、即ち延伸方向と直交する方向に沿うようにし、そのシール幅は、特に限定されるものではないが、通常1〜10mm、好ましくは、2〜4mmとする。
シール幅が1mm以上であれば十分な接着強度が得られ、一方、シール幅を必要以上に大きくするとそれだけ固化して延伸し難い部分が増加するため破断の虞が増加するところ、10mm以下であれば、そのような虞も極めて少ないものとなる。
尚、シール幅は、フィルムと接触してフィルムを加熱するニクロム線等の発熱体21aの幅を調整することによって適宜調整することができる。
更に、連結部30は、1カ所をヒートシールすることにより形成してもよいが、念のため図3や図5に示すように2カ所以上をヒートシールすることにより形成しても良い。
【0045】
本実施形態の光学フィルムの製造方法においては、上記の如く、連結部30の形成により次の原反フィルム1を連結した後には、連結部30を含む領域の両サイド(原反フィルム1の幅方向の両側)を略円弧状に切断する。
具体的には、切断装置を用い、例えば、切断用の受け台上に連結部30を含む領域を配し、原反フィルム1を挟むようにして、略円弧状に形成されたカッターを原反フィルム1の両サイドに圧接すること等により、連結部30が最も幅狭となるように該両サイドを円弧状に切断する。
このとき、切断後の切断された領域の長手方向長さRが、延伸を施すニップ部7とニップ部7との間隔Lの90〜105%となるように、好ましくは95〜102%となるように切断する。
このように切断することにより、連結部30に於けるフィルム幅を狭くしつつも、比較的延伸による破断の虞を低減させることができる。
また、好ましくは、切断後の連結部30の幅A(即ち、連結部30の最短幅A)が、原反幅Bの50〜70%となるように、より好ましくは、55〜65%、更により好ましくは、58〜62%となるように切断する。
原反幅Bの50〜70%とすることにより、切断のない場合に比べて、連結部30の破断強度が向上し、より高い倍率で原反フィルム1を延伸させることができ、また、製造工程中に、不意に連結部30が破断するような虞がより一層低減することとなる。
【0046】
本実施形態においては、このような切断を行った後、次の原反フィルム1を延伸装置2に送り入れ、必要に応じ、連結部30が延伸装置を通過し終わるまでは延伸倍率を下げ、順次偏光フィルムを製造する。
【0047】
本実施形態により製造された偏光フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、5〜40μmであることが好ましい。厚さが5μm以上であれば機械的強度が低下することはなく、また40μm以下であれば光学特性が低下せず、画像表示装置に適用しても薄型化を実現できる。
【0048】
本実施形態により製造された偏光フィルムは、液晶セル基板に積層される偏光フィルム等として、液晶表示装置等に使用することができ、また、液晶表示装置の他、エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマディスプレイ及び電界放出ディスプレイ等の各種の画像表示装置に於ける偏光フィルムとして用いることができる。
尚、実用に際しては、両面又は片面に各種光学層を積層して光学フィルムとしたり、各種表面処理を施したりして、液晶表示装置等の画像表示装置に用いることもできる。前記光学層としては、要求される光学特性を満たすものであれば特に限定されるものではないが、例えば、偏光フィルムの保護を目的とした透明保護層、視角補償等を目的とした配向液晶層、他のフィルムを積層するための粘着層の他、偏光変換素子、反射板、半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板(λ板)を含む)、視角補償フィルム、輝度向上フィルムなどの画像表示装置等の形成に用いられるフィルムを用いることができる。
また、表面処理としては、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止や拡散ないしアンチグレアを目的とした表面処理を挙げることができる。
【0049】
本実施形態の偏光フィルムの製造方法は、以上の通りであるが、本発明は本実施形態に限定されず本発明の意図する範囲内に於いて適宜設計変更可能である。
例えば、本実施形態においては、延伸を施すニップ部7とニップ部7との各間隔Lが同じ値に設定された延伸装置を用い、且つこの間隔Lに対して、切断された領域の長手方向長さRが90〜105%となるように切断したが、本発明に於いては、各間隔Lが同じ値に設定された延伸装置を用いる場合に限定されるものではない。
即ち、延伸を施すニップ部7とニップ部7との間隔Lが異なる延伸装置を用いる場合であっても、いずれかの間隔Lに対して、切断された領域の長手方向長さRが90〜105%となるように切断する限り、本発明の意図する範囲内である。
また、当然ながら、ニップ部7が2つしかない延伸装置2、即ち、延伸を施す間隔Lが一つしかない延伸装置2を用いる場合であっても、この間隔Lに対して、切断された領域の長手方向長さRが90〜105%となるように切断する限り本発明の意図する範囲内である。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0051】
実施例1〜10、比較例1〜8
厚さ75μm、幅50mmのポリビニルアルコール(PVA)原反フィルム1((株)クラレ製、重合度2400)を2枚準備し、互いに重ね合わせて、図3に示す連結装置(発熱体:ニクロム線、幅3mm)にて、それぞれシール温度80℃、シール時間10秒で2カ所(ニクロム線間隔10mm)をTD方向に沿ってヒートシールし、2本の線状の溶着部分30bを有する連結部30を形成した。
次いで、図5に示すように、連結部30が最も幅狭な部分となるように、両サイドを略円弧状に切断した。
この際、切断された領域の長手方向長さRとニップ部7の間隔Lとの関係及び連結部30の幅A(連結部の最短幅A、図5においては連結部30の中央線30aの幅)と原反幅Bとの関係がそれぞれ表1、表2に示す関係となるように調整した。
尚、何れの実施例、比較例においても、ニップ部7の間隔Lを50mmに設定した。
そして、互いに連結された原反フィルム1を30℃の純水中に浸漬し、延伸区間50mm、延伸速度2mm/sの条件で手延伸機にて延伸し、連結された原反フィルム1が破断によって離反するまでの延伸倍率を測定した。それぞれ、結果を表1及び表2に示した。また、表1及び表2の結果をグラフにプロットし、それぞれ図6及び図7に示した。
【0052】
【表1】

【表2】

【0053】
これらの結果から認められるように、R/Lを90〜105%とすることにより、連結部30の破断強度を比較的優れたものとすることができ、しかも、A/B(%)を50(%)〜70(%)とすることにより、切断を実施していない比較例7よりも破断強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】製造装置の一態様を示す概略斜視図。
【図2】製造装置の一態様を示す概略斜視図。
【図3】連結装置を示す概略側面図。
【図4】図3のA−A線断面図。
【図5】原反フィルムの連結部を含む領域の両サイドを切断した状態を示す概略正面図。
【図6】延伸倍率とR/Lとの関係を示すグラフ。
【図7】延伸倍率とA/Bとの関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0055】
1・・・原反フィルム、1a・・・原反フィルムの後端側、1b・・・原反フィルムの先端側、2・・・延伸装置、7・・・ニップ部、30・・・連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送り入れられた帯状フィルムを把持するニップ部が間隔を空けて配され該間隔内で該帯状フィルムを長手方向に延伸するように構成されてなる延伸装置に、帯状の原反フィルムを先端側から送り入れ、且つ先行して送り入れた原反フィルムの後端側と次の原反フィルムの先端側とをヒートシールにて連結することにより、順次連続して原反フィルムを延伸装置に送り入れて延伸させる光学フィルムの製造方法であって、
前記原反フィルムの後端側と次の原反フィルムの先端側との連結部を前記延伸装置に送り入れる前に、該連結部を含む領域の両サイドを弧状に切断し、切断された領域の長手方向長さRをニップ部の間隔Lの90〜105%とすることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
切断後の連結部の幅を原反幅の50〜70%とする請求項1記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記原反フィルムがポリビニルアルコール系原反フィルムである請求項1又は2記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の光学フィルムの製造方法により製造された光学フィルム。
【請求項5】
請求項4に記載の光学フィルムを含む液晶表示装置。
【請求項6】
請求項4に記載の光学フィルムを含む画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−51202(P2009−51202A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181477(P2008−181477)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】