説明

光学フィルム

【課題】耐熱安定性に優れ、広い波長域で一様の偏光変換が可能な光学フィルムを提供する。
【解決手段】脂環式炭化水素骨格を有するポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる化合物に、さらに、イソシアネート基と反応しうる官能基及びエチレン性二重結合を有する化合物を反応させて得られる化合物に由来する構造単位からなる樹脂を含む光学フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム等に関する。
【背景技術】
【0002】
光学フィルムを透過する光の波長νnmにおける位相差値Re(ν)が、Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を充足し、300〜700nm可視領域全般で右上がりの分散を示すと、光学フィルムは広い波長域で一様の偏光変換を行うことができる。このような特性をもつ光学フィルムとして、ピュアエースWR(登録商標、帝人化成製)が知られている。
【非特許文献1】「ディスプレイ用光学フィルム」、シーエムシー出版、2004年2月、p.97−107
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の光学フィルムでは、耐熱安定性が十分でない場合があった。そこで本発明者らは、特定の構造単位を有する光学フィルムが、耐熱安定性に優れ、広い波長域で一様の偏光変換が可能であることを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、脂環式炭化水素骨格を有するポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる化合物に、さらに、イソシアネート基と反応しうる官能基及びエチレン性二重結合を有する化合物を反応させて得られる化合物に由来する構造単位からなる樹脂を含む光学フィルムである。
【0005】
また本発明は、イソシアネート基と反応しうる官能基及びエチレン性二重結合を有する化合物が、水酸基を有するアクリルアミド化合物及び水酸基を有するメタアクリルアミド化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である上記光学フィルムである。
【0006】
また本発明は、光学フィルムを透過する透過光の波長νnmにおける位相差値Re(ν)が、下記式を充足する上記光学フィルムである。
Re(450)<Re(550)<Re(650)
【0007】
また本発明は、上記光学フィルムからなる位相差板である。
【0008】
また本発明は、脂環式炭化水素骨格を有するポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる化合物に、さらに、イソシアネート基と反応しうる官能基及びエチレン性二重結合を有する化合物を反応させて得られる化合物を含む溶液を成膜する成膜工程と、さらに得られた膜を延伸する延伸工程とを含む光学フィルムの製造方法である。
【0009】
また本発明は、成膜工程が、脂環式炭化水素骨格を有するポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる化合物に、さらに、イソシアネート基と反応しうる官能基及びエチレン性二重結合を有する化合物を反応させて得られる化合物を含む溶液を平滑な面にキャストして溶剤を留去することによって成膜する工程である上記光学フィルムの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光学フィルムは、耐熱安定性に優れ、広い波長域で一様の偏光変換が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。光学フィルムとは、光を透過し得るフィルムであって、光学的な機能を有するフィルムをいう。光学的な機能とは、屈折、複屈折等を意味する。
本発明において、構造単位とは、所定の複屈折性を発揮する最小単位であり、(コ)ポリマー又は化合物に由来する単位を意味する。また、モノマー単位とは、(コ)ポリマーを構成するモノマーに由来する単位を意味する。
なお、所定の複屈折性の発揮は、所定の構造単位を含む樹脂から得られた層を延伸した際、延伸した方向(±10°)の屈折率が最大(正)又は延伸した方向と直交(±10°)する方向の屈折率が最大(負)等になることを意味する。
【0012】
また、(コ)ポリマーとは、ホモポリマー及びコポリマーの双方を包含する。(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び(メタ)アクリル酸の双方を包含する。
【0013】
本発明の光学フィルムは、脂環式炭化水素骨格を有するポリイソシアネート化合物(以下「脂環式ポリイソシアネート」という場合がある)とポリオール化合物(以下「ポリオール」という場合がある)とを反応させて得られる化合物に、さらに、イソシアネート基と反応しうる官能基及びエチレン性二重結合を有する化合物を反応させて得られる化合物(以下「化合物(1)」という場合がある))に由来する構造単位をからなる樹脂を含む。
ポリイソシアネート化合物とは、2以上のイソシアネート基を含む化合物を、ポリオール化合物とは、2以上の水酸基を有する化合物をいう。
【0014】
イソシアネート基と反応しうる官能基及びエチレン性二重結合を有する化合物が、水酸基を有するアクリレート化合物、水酸基を有するメタアクリレート化合物、水酸基を有するアクリルアミド化合物及び水酸基を有するメタアクリルアミド化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましく、水酸基を有するアクリルアミド化合物及び水酸基を有するメタアクリルアミド化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが特に好ましい。
【0015】
化合物(1)に由来する構造単位としては、
脂環式ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得られる化合物(以下「ポリウレタン」という場合がある)に、さらに、水酸基を有するアクリレート化合物及び水酸基を有するメタアクリレート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を反応させて得られる化合物(以下「ポリウレタンアクリレート」という場合がある)に由来する構造単位;
ポリウレタンにさらに、ポリアミンを反応させて得られる化合物(以下「ポリウレタン尿素」という場合がある)に、さらに、水酸基を有するアクリレート化合物及び水酸基を有するメタアクリレート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を反応させて得られる化合物(以下「ポリウレタン尿素アクリレート」という場合がある)に由来する構造単位;
ポリウレタンに、さらに、水酸基を有するアクリルアミド化合物及び水酸基を有するメタアクリルアミド化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を反応させて得られる化合物(以下「ポリウレタンアクリルアミド」という場合がある)に由来する構造単位;
ポリウレタン尿素に、さらに、水酸基を有するアクリルアミド化合物及び水酸基を有するメタアクリルアミド化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を反応させて得られる化合物(以下「ポリウレタン尿素アクリルアミド」という場合がある)に由来する構造単位;
が挙げられる。
【0016】
脂環式ポリイソシアネートは、置換されていてもよいシクロヘキシレン骨格を有する2価の基を含む化合物であることが好ましい。
脂環式ポリイソシアネートは、式(B)で表される2価の基を含む化合物であることが好ましい。
【0017】

(式(B)中、R21は、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。nは0〜10の整数を表す。nが2以上の整数である場合、複数のR21は、それぞれ同一であっても異なる種類の基であってもよい。)
脂環式ポリイソシアネートは、式(B−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0018】

【0019】
(式(B−1)中、R21及びnは、上記と同じ意味を表す。)
脂環式ポリイソシアネートは、イソホロンジイソシアネートであることが好ましい。
【0020】
ポリオールは、式(A−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0021】

【0022】
(式(A−1)中、R32は、単結合、炭素数1〜8のアルキレン基又は−Q−R32’−、−R32’−Q−もしくは−R32’−Q−R32’’−(ただし、R32’及びR32’’は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、Qは、−O−、−NH−、−S−、−CO−、−O−CO−、−CO−O−又は−O−CO−O−を表す。)を表す。R33は、炭素数1〜12の炭化水素基、複素環基、−R33’−CO−R33’’−基(ただし、R33’及びR33’’は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1〜11の炭化水素基又は複素環基を表す。)を表す。n31は、1〜15の整数を表す。n31が2以上の整数のとき、複数のR32及びR33は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
ポリオールは、式(A−2)〜式(A−4)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0023】

【0024】
(式(A−2)中、R27及びR28は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1〜8のアルキレン基又は−Q―R28’―もしくは−R28’―Q―R28’’−(ただし、R28’及びR28’’は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、Qは、−O−、−NH−、−S−、−CO−、−O−CO−又は−CO−O−を表す。)を表す。)
【0025】

(式(A−3)中、R29及びR30は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を表す。Qは、−O−、−CO−、−O−CO−、−CO−O−又は−O−CO−O−を表す。v29は、0〜18の整数を表す。v29が2以上の整数のとき、複数のR29及びR30は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0026】

式(A−4)中、R31は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基に置換されていてもよい。v31は、0〜18の整数を表す。
【0027】
ポリオールとしては、低分子量のポリオールとして、分子量50以上400未満のポリオールが挙げられる。例えば、脂肪族、脂環族、芳香族、及び複素環式のジヒドロキシ化合物、トリヒドロキシ化合物、テトラヒドロキシ化合物等が上げられる。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、デカメチレンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、p−キシレンジオール、ジヒドロキシエチルテトラハイドロフタレート、2−メチルプロパン−1,2,3−トリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等から選ばれる。
【0028】
低分子量のポリオールとしては、ジオール化合物であることが好ましく、特にプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール及び1,6−ヘキサンジオール等から選ばれることが好ましい。また低分子量のポリオールの分子量は、50以上200以下であることが好ましく、更には62以上200以下であることが好ましい。低分子量のポリオールの分子量が62以上200以下であると、本発明の光学フィルムの伸縮性を抑制することができるため、好ましい。
【0029】
高分子量のポリオールとしては、平均分子量400以上のポリオールが挙げられる。例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、シリコーンポリオール、ポリオレフィン系ポリオール及びこれらの共重合体等が使用される。
【0030】
高分子量のポリオールとしては、ジオール化合物であることが好ましく、アルキレン基の炭素数が1〜6のポリアルキレンジオール及びポリカーボネートジオールから選ばれる化合物であることが好ましく、特にポリプロピレングリコール及びポリヘキサメチレンカーボネートジオールが好ましい。また、高分子量のポリオールの平均分子量は、400以上7000以下であることが好ましく、更には400以上5000以下であることが好ましい。更には、400以上2000以下であることが特に好ましい。高分子量のポリオールの平均分子量が400以上2000以下であると、本発明の光学フィルムに柔軟性を与えるため、好ましい。
【0031】
ポリエステルポリオールとしては、例えばコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、ドデカン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、フマル酸等から選ばれるジカルボン酸と低分子量のポリオールとを反応させて得られたものがある。別の方法として、β−プロピオクラトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン、メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、メチル−ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、トリメチル−ε−カプロラクトン等のラクトン化合物を、低分子量のポリオールと反応せしめたものもある。
ポリエーテルポリオールとしては、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール等がある。
【0032】
ポリカーボネートポリオールとしては、低分子量のポリオール類とジアリルカーボネート、ジアルキルカーボネート及びエチレンカーボネートから選ばれる化合物からエステル交換法によって得られたもの、例えばポリ−1,6−ヘキサメチレンカーボネート、ポリ−2,2’−ビス(4−ヒドロキシヘキシル)プロパンカーボネート等がある。
【0033】
ポリオールとしては、特に限定されるものでなく、また複数のポリオールを組み合わせて用いてもよい。得られるフィルムの柔軟性や耐久性の観点から、低分子量ポリオールと高分子量ポリオールとをそれぞれ少なくとも1種用いて組み合わせることが好ましい。特に、平均分子量400以上10000以下の高分子量のポリオールと、高分子量のポリオールとは異なり、分子量50以上400未満の低分子量のジオール化合物とを含む化合物であることが好ましい。
【0034】
ポリアミンとしては、芳香族ポリアミン、脂肪族ポリアミン共に利用することができる。芳香族ポリアミンとしては、例えば、トリレンジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,6−ジアミノベンゼン、3,5,3’,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、等が挙げられる。脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキシルメタン、及び3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)等が挙げられる。
脂肪族ポリアミンが、変色が少ないことから好ましい。特に脂環式構造を有するポリアミンが、光学特性が良好になる傾向にあり好ましい。脂環式構造を有するポリアミンとしては、ジアミノシクロヘキシルメタン及びイソホロンジアミン等が挙げられる。
水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、モノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート、モノヒドロキシオリゴ(メタ)アクリレート、オリゴヒドロキシオリゴ(メタ)アクリレートがあるが、反応性の観点からモノヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートが好ましい。モノヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。
水酸基を有する(メタ)アクリルアミドとしては、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドが挙げられる。
【0035】
ポリイソシアネート100モル%中、置換されていてもよいシクロヘキシレン骨格を有する2価の基を含む化合物を80モル%以上有し、ポリオール100モル%中、式(A−2)で表される化合物を60モル%以上有する化合物であることが好ましい。
【0036】
脂環式ポリイソシアネートとポリオールとの反応時の混合比は、脂環式ポリイソシアネート中に含まれるイソシアネート基数がポリオール中に含まれる水酸基数に対して、1.00〜2.00倍量、好ましくは、1.01〜1.50倍量、更に好ましくは、1.02〜1.20倍量である。脂環式ポリイソシアネートとポリオールとの反応時の混合比が、上記範囲にあると、フィルムの柔軟性や耐久性の観点から、樹脂の分子量を調整でき好ましい。ポリウレタンに更にポリアミンを反応させる時の混合比は、ポリウレタン中に含まれるイソシアネート基数がポリアミン中に含まれるアミノ基数に対して、0.50〜1.00倍量、好ましくは、0.70〜0.98倍量、更に好ましくは、0.80〜0.95倍量がよい。ポリウレタンとポリアミンとの反応時の混合比が、上記範囲にあると、樹脂の分子量を調整でき好ましい。
【0037】
イソシアネート基と反応しうる官能基及びエチレン性二重結合を有する化合物の混合量は、脂環式ポリイソシアネートとポリオールとの反応物中、あるいは、更に、ポリアミンと反応させた反応物中に含まれるイソシアネート基数に対して、1.00〜2.00倍量、好ましくは、1.05〜1.50倍量、更に好ましくは、1.10〜1.20倍量がよい。混合比が、上記範囲にあると、フィルムの耐久性の観点から好ましい。
【0038】
化合物(1)の製造方法である重付加反応等は、有機溶剤を用いてもよいし無溶剤でおこなってもよい。有機溶剤としては、イソシアネート基と反応しないものであれば特に限定されない。例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ミネラルターペン等の炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、メチルグリコールアセテート、酢酸セロソルブ等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、等が挙げられる。また、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン等の非プロトン性極性溶剤を用いてもよい。
【0039】
化合物(1)の製造に際して、ウレタン化反応を促進するために、必要により通常のウレタン反応に使用される触媒を用いてもよい。具体的には、トリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等の第三級アミン;ジラウリン酸ジブチル錫、ジラウリン酸ジオクチル錫、オクチル酸錫等の有機錫系触媒、テトラブチルチタネート等の有機チタン系触媒、等が挙げられる。
【0040】
また、化合物(1)の製造に際して、合成中のアクリレートの重合を抑制するために重合禁止剤を使用することも好ましい。具体的には、メトキノン、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン等のヒドロキノン系重合禁止剤、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、t−ブチルカテコール等のヒンダードフェノール系重合禁止剤、フェノチアジン、ニトロソ化合物等の一般的なものが使用できる。重合禁止剤は、1種又は2種以上用いてもよく、使用量は、一般的には10〜50000ppm、好ましくは50〜1000ppm程度である。
【0041】
化合物(1)の分子量は特別に限定されるものではないが、粘性や溶解性の観点から数平均分子量で1,000〜100,000の範囲であることが好ましい。また、化合物(1)がウレタンオリゴマー、ウレタン尿素オリゴマー等の低分子量樹脂であってもよい。
【0042】
本発明の光学フィルムの製造方法は、化合物(1)を含む溶液を成膜する成膜工程と、さらに得られた膜を延伸する延伸工程とを含む。本発明の光学フィルムの製造方法は、さらに光重合工程を含んでいてもよい。光重合工程は、成膜工程と延伸工程との間に行っても、成膜工程と並行して行っても、延伸工程と並行して行っても、延伸工程の後で行ってもよい。特に、成膜工程と延伸工程との間に行うことが好ましい。成膜工程では、例えば、化合物(1)を含む溶液を平滑な面にキャストして溶剤を留去する溶剤キャスト法、化合物(1)を含む溶液を溶融押出機等でフィルム状に押出成形する溶融押出法等が挙げられる。特に溶剤キャスト法は化合物(1)を含む溶液をそのまま成膜できることから好ましい。
【0043】
光重合工程では、化合物(1)を紫外光(UV)によって光重合して硬化させる。紫外光の発生源としては、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト、低圧、高圧、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、太陽光線、無電極ランプ等が例示される。紫外光の照射強度は、終始一定の強度でも行ってよいし、硬化途中で強度を変化させることにより、硬化後の物性を微調整することもできる。
【0044】
また、延伸工程では、例えば、テンター法による延伸法、ロール間延伸による延伸法等が挙げられる。
延伸は、一軸延伸でも二軸延伸のいずれでもよく、縦延伸でも横延伸のいずれでもよい。特に生産性の観点から、ニ軸延伸及び横一軸延伸が好ましく、特に横一軸延伸が好ましい。
【0045】
化合物(1)を含む溶液は、更に、必要に応じて光重合開始剤(3)、溶剤(4)、重合禁止剤、光増感剤、レベリング剤及び可塑剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0046】
化合物(1)を含む溶液は、光重合開始剤(3)を含んでいてもよい。光重合開始剤(3)としては、例えばベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケトン類、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩等が挙げられ、より具体的には、イルガキュア(Irgacure)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア250、イルガキュア369(以上、全てチバ・ジャパン(株)製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、全て精工化学(株)製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬(株)製)、カヤキュアーUVI−6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP−152及びアデカオプトマーSP−170(以上、全て(株)ADEKA)等を挙げることができる。
【0047】
また光重合開始剤(3)の使用量は、例えば化合物(1)を含む溶液の固形分量の合計量100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは0.5重量部〜20重量部である。上記範囲内であれば、透過率を低下することなく、モノマーを重合させることができる。
本明細書において、固形分とは、化合物(1)を含む溶液から溶剤を除いたすべての成分を意味する。
【0048】
化合物(1)を含む溶液は、モノマーの光重合を制御し、得られる光学フィルムの安定性を向上させるために、重合禁止剤を含んでいてもよい。重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン及びアルキルエーテル等の置換基を有するハイドロキノン類、ブチルカテコール等のアルキルエーテル等の置換基を有するカテコール類、ピロガロール類、2,2、6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル補足剤、チオフェノール類、β−ナフチルアミン類あるいはβ−ナフトール類等を挙げることができる。
【0049】
重合禁止剤の使用量は、例えば化合物(1)を含む溶液の固形分量の合計量100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは0.5重量部〜10重量部である。上記範囲内であれば、透過率を低下することなく、モノマーを重合させることができる。
【0050】
化合物(1)を含む溶液は、光重合開始剤の反応を高感度化するために光増感剤を含有していてもよい。光増感剤としては、例えばキサントン及びチオキサントン等のキサントン類、アントラセン及びアルキルエーテル等の置換基を有するアントラセン類、フェノチアジンあるいはルブレンを挙げることができる。
【0051】
光増感剤の使用量は、化合物(1)を含む溶液の固形分量の合計量100重量部に対して、例えば0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは0.5重量部〜10重量部である。上記範囲内であれば、透過率を低下することなく、高感度にモノマーを重合させることができる。
【0052】
化合物(1)を含む溶液は、溶剤(4)を含んでいてもよい。有機溶剤としては、例えばエーテル類、芳香族炭化水素類、ケトン類、アルコール類、エステル類、アミド類等が挙げられる。
【0053】
エーテル類としては、例えばテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテート、アニソール、フェネトール及びメチルアニソール等が挙げられる。
【0054】
芳香族炭化水素類としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン及びメシチレン等が挙げられる。
【0055】
ケトン類としては、例えばアセトン、2−ブタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロペンタノン及びシクロヘキサノン等が挙げられる。
【0056】
アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール及びグリセリン等が挙げられる。
【0057】
エステル類としては、例えば酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート及びγ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0058】
アミド類としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
その他の溶剤としては、例えばN−メチルピロリドン及びジメチルスルホオキシド等が挙げられる。
溶剤は、それぞれ単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
化合物(1)を含む溶液は、レベリング剤を含んでいてもよい。レベリング剤としては、例えばトーレシリコーンDC3PA、同SH7PA、同DC11PA、同SH21PA、同SH28PA、同29SHPA、同SH30PA、ポリエーテル変性シリコンオイルSH8400(トーレシリコーン(株)製)、KP321、KP322、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341(信越シリコーン製)、TSF400、TSF401、TSF410、TSF4300、TSF4440、TSF4445、TSF−4446、TSF4452、TSF4460(ジーイー東芝シリコーン(株)製)、フロリナート(商品名)FC430、同FC431(住友スリーエム(株)製)、メガファック(商品名)F142D、同F171、同F172、同F173、同F177、同F183、同R30(大日本インキ化学工業(株)製)、エフトップ(商品名)EF301、同EF303、同EF351、同EF352(新秋田化成(株)製)、サーフロン(商品名)S381、同S382、同SC101、同SC105(旭硝子(株)製)、E5844((株)ダイキンファインケミカル研究所製)、BM−1000、BM−1100(いずれも商品名:BM Chemie社製)、メガファック(商品名)R08、同BL20、同F475、同F477及び同F443(大日本インキ化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0060】
レベリング剤を用いることにより、得られるフィルム(膜)を平滑化することができる。更に成膜化の製造過程で、化合物(1)を含む溶液の流動性を制御したり、化合物(1)を重合して得られるフィルムの架橋密度を調整したりすることができる。
レベリング剤の含有量は、化合物(1)を含む溶液の固形分量の合計100重量部に対して、0.001重量部〜2.0重量部であり、好ましくは0.005重量部〜1.5重量部である。上記範囲内であれば、透過率を低下することなく、モノマーを重合させることができる。
【0061】
化合物(1)を含む溶液は、可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤としては、リン酸エステル、カルボン酸エステル及びグリコール酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート及びトリブチルホスフェートが挙げられる。
【0062】
カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)及びジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が挙げられる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチルが挙げられる。
その他のカルボン酸エステルとしては、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが例示される。
【0063】
グリコール酸エステルとしては、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート及びブチルフタリルブチルグリコレート等が例示される。またトリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、ジトリメチロールプロパンテトラアセテート、ジトリメチロールプロパンテトラプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、ソルビトールヘキサプロピオネート、ソルビトールトリアセテートトリプロピオネート、イノシトールペンタアセテート及びソルビタンテトラブチレート等も好例として挙げられる。
【0064】
可塑剤としては、中でもトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジエチルヘキシルフタレート、トリアセチン、エチルフタリルエチルグリコレート、トリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、ジトリメチロールプロパンテトラアセテート、ペンタエリスリトールテトラアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、ソルビトールヘキサプロピオネート及びソルビトールトリアセテートトリプロピオネート等が好ましく、特にトリフェニルホスフェート、ジエチルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、トリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、ジトリメチロールプロパンテトラアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、ソルビトールヘキサプロピオネート及びソルビトールトリアセテートトリプロピオネートが好ましい。
【0065】
可塑剤は1種でもよいし2種以上併用してもよい。可塑剤の添加量は、本発明の光学フィルム特性を大きく損ねない範囲で適宜、選択されればよく、例えば化合物(1)を含む溶液の固形分量の合計量に対して0.1〜30重量%程度である。
【0066】
可塑剤の具体例としては、特開平11−124445号公報記載の(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、特開平11−246704号公報記載のグリセロールエステル類、特開2000−63560号公報記載のジグリセロールエステル類、特開平11−92574号公報記載のクエン酸エステル類、特開平11−90946号公報記載の置換フェニルリン酸エステル類等が挙げられる。
【0067】
光学フィルムを透過する光の波長450nmのレターデーション[Re(450)]と波長550nmのレターデーション[Re(550)]との比([Re(450)]/[Re(550)])は波長分散係数αと定義され、光学フィルムが広い波長域において一様の偏光変換を行うためには、光学フィルムの波長分散係数αが1.00未満である波長分散特性を有することが好ましい。かくして得られた本発明の光学フィルムは、通常、波長分散係数αが1.00未満である。
光学フィルムを透過する光の波長νnmにおける位相差値Re(ν)は、通常Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を充足する等、300〜700nm可視領域全般で右上がりの分散を示すことから、広い波長域で一様の偏光変換を行うことができる。
【0068】
本発明の光学フィルムは、広い波長域において一様の偏光変換が可能であるため、λ/2板及びλ/4板等の位相差板や、視野角向上フィルム等として用いられる。また光学フィルムがλ/4板であれば、それを直線偏光板と組み合わせて広波長域の円偏光板とすることができ、またλ/2板であれば、それを直線偏光板と組み合わせて広波長域の偏光回転素子とすることができる。したがって、各種液晶表示装置、陰極線管(CRT)、タッチパネル、エレクトロルミネセンス(EL)ランプ等における反射防止フィルター、更には液晶プロジェクター等に使用することができる。
本発明の位相差板は、このように上記光学フィルムからなり、広い波長域において一様の偏光変換が可能である。
【実施例】
【0069】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、重量%及び重量部である。なお、光学異方性は以下の方法によって求めた。
【0070】
(光学異方性)
延伸によって重合体主鎖を一軸配向させた際に、その配向方向と屈折率が最大になる方向が異なる(例えば、直交する、等)光学異方性を有する場合、負の複屈折性を有している。一方、配向方向と屈折率が最大になる方向が一致する、又はほぼ一致する(例えば、配向方向と屈折率が最大になる方向との差が10度以内の場合、等)場合、正の複屈折性を有している。屈折率が最大になる方向は自動複屈折計(KOBRA−WR、王子計測機器社製)より求められる。
【0071】
(波長分散特性)
450nmから750nmの波長範囲において、自動複屈折計(KOBRA−WR、王子計測機器(株)製)を用いて波長分散特性を測定した。
【0072】
(平均分子量)
平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)(東ソー(株)製、HLC−8200)を用い、ポリスチレン換算で求めた。
【0073】
装置 ;HLC-8220GPC(東ソー(株)製)
ガードカラム ;TSKguardcolumn SuperH−H(商品名)
カラム ;TSK−gel SuperHM−H(商品名)
TSK−gel SuperHM−H(商品名)
TSK−gel SuperHM−H(商品名)(直列接続)
カラム温度 ;40℃
溶媒 ;THF
流速 ;0.6mL/min
注入量 ;50μL
検出器 ;RI、UV
測定試料濃度 ;0.6質量%(溶媒;THF)
校正用標準物質;TSK STANDARD POLYSTYRENE
A−500、A−1000、A−2500、A−5000、
F−1、F−2、F−4、F−10、F−20、F−40、
F−80、F−128、F−288,F−380
(商品名、東ソー(株)製)
上記測定方法で得られたポリスチレン換算重量平均分子量及び数平均分子量の比を分子量分布(Mw/Mn)とした。
【0074】
(合成例1)
攪拌機、温度計および還流冷却器を備えた反応槽に、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(平均分子量860)20.64部、1,4−シクロヘキサンジメタノール5.19部、ジラウリン酸ジブチル錫0.11部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート113.41部を仕込み、窒素気流攪拌下、イソホロンジイソシアネート14.67部を滴下し、滴下終了後、窒素気流下、90℃で5時間反応させ、次いで、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド1.58部を仕込み、50℃で1時間反応させ、数平均分子量:4.0×10のウレタンアクリルアミドを含むウレタンアクリルアミド溶液を得た。
【0075】
(実施例1)
合成例1で作製したウレタンアクリルアミド溶液をポリエチレンテレフタレート製の離型フィルム上に、700μmのギャップのアプリケーターで塗布、80℃で15分乾燥、UV照射(高圧水銀ランプ:1Pass当たり 650mJ/cm:365nm)、さらに温度調節オートグラフ延伸機を使用して3.0倍延伸した。
得られたフィルムを、450nmから750nmの波長範囲において、自動複屈折計(KOBRA−WR、王子計測機器(株)製)を用いて波長分散特性を測定した。
更に、フィルムをホットステージ上で昇温しながら位相差を測定した。評価結果を表1に示す。
【0076】
(比較例1)
ピュアエースWR S−142(登録商標、帝人化成製)を実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
実施例のフィルムは比較例と比較し、耐熱安定性に優れ、熱による位相差ムラ起因の表示ムラなどが起こりにくく、良好な表示性能が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の光学フィルムによれば、耐熱安定性に優れ、広い波長域で一様の偏光変換が可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式炭化水素骨格を有するポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる化合物に、さらに、イソシアネート基と反応しうる官能基及びエチレン性二重結合を有する化合物を反応させて得られる化合物に由来する構造単位からなる樹脂を含む光学フィルム。
【請求項2】
イソシアネート基と反応しうる官能基及びエチレン性二重結合を有する化合物が、水酸基を有するアクリルアミド化合物及び水酸基を有するメタアクリルアミド化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1記載の光学フィルム。
【請求項3】
光学フィルムを透過する透過光の波長νnmにおける位相差値Re(ν)が、下記式を充足する請求項1又は2記載の光学フィルム。
Re(450)<Re(550)<Re(650)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の光学フィルムからなる位相差板。
【請求項5】
脂環式炭化水素骨格を有するポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる化合物に、さらに、イソシアネート基と反応しうる官能基及びエチレン性二重結合を有する化合物を反応させて得られる化合物を含む溶液を成膜する成膜工程と、さらに得られた膜を延伸する延伸工程とを含む光学フィルムの製造方法。
【請求項6】
成膜工程が、脂環式炭化水素骨格を有するポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる化合物に、さらに、イソシアネート基と反応しうる官能基及びエチレン性二重結合を有する化合物を反応させて得られる化合物を含む溶液を平滑な面にキャストして溶剤を留去することによって成膜する工程である請求項5記載の光学フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2010−128417(P2010−128417A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306039(P2008−306039)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】