説明

光学ユニット及び液晶表示モジュール

【課題】光線の利用効率を格段に高め、輝度の向上を飛躍的に促進でき、直下型液晶表示モジュール等に好適な光学ユニット及びバックライトユニットの提供を目的とする。
【解決手段】本発明の光学ユニットは、反射偏光板と、この反射偏光板の裏面側に重畳される光学シートと、反射偏光板と光学シートとの間に充填される透明媒体層とを備える方形の層状構造体である。この光学シートが光学的異方性がある樹脂製の基材フィルムを有しており、反射偏光板の透過軸方向を基準とする基材フィルムの結晶軸方向の角度の絶対値がπ/8以上3π/8以下である。上記基材フィルムのリタデーション値は70nm以上320nm以下が好ましい。上記光学シートは基材フィルムの一方の面に積層される光学層を有するとよい。本発明の液晶表示モジュールは液晶表示素子と当該光学ユニットと直下型等のバックライトとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光線の利用効率を格段に高め、輝度の向上を促進する光学ユニット及びこれを用いた液晶表示モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示モジュール(LCD)は、薄型、軽量、低消費電力等の特徴を活かしてフラットパネルディスプレイとして多用され、その用途は携帯電話、携帯情報端末(PDA)、パーソナルコンピュータ、テレビなどの情報用表示デバイスとして年々拡大している。近年、液晶表示モジュールに要求される特性は、用途により様々であるが、明るい(高輝度化)、見やすい(広視野角化)、省エネルギー化、薄型軽量化等が挙げられ、特に高輝度化についての要求が高い。
【0003】
従来の一般的な液晶表示モジュールは、図8示すように、液晶表示素子51、各種光学シート52及びバックライト53が表面側から裏面側にこの順に重畳された構造を有している。液晶表示素子51は、一対の偏光板54,55間に液晶セル56が挟持された構造を有し、TN、IPS等の様々な表示モードが提案されている。バックライト53は、液晶表示素子51を裏面側から照らして発光させるものであり、エッジライト型(サイドライト型)、直下型など形態が普及している。各種光学シート52は、液晶表示素子51及びバックライト53間に重畳されており、バックライト53の表面から出射された光線を効率良くかつ均一に液晶表示素子51全面に入射させるべく、法線方向側への屈折、拡散等の光学的機能を有する光拡散シート、プリズムシート等を備えている。
【0004】
液晶表示素子51に備えられる偏光板54,55は、一般的に光の一方向成分を吸収することで残りの偏光成分を透過するという吸収2色性を示すものが用いられている。このタイプの偏光板54,55は、偏光を得るために原理的に50%の光が吸収されるため、液晶表示モジュールの光の利用効率を低下する大きな理由の一つとなっている。
【0005】
かかる偏光板54,55による光の利用効率を低下を改善すべく、液晶表示モジュールにおける裏面側偏光板55の裏面側に反射偏光板(偏光分離器)を重畳する技術や、裏面側偏光板55の代わりに反射偏光板を用いる技術が開発されている(例えば、特開2005−106959号公報、特表平9−506985号公報等参照)。この反射偏光板は、裏面側偏光板55の透過軸成分についてはそのまま透過させ、それ以外の偏光成分を下方側へ戻すことで、光線を再利用するものである。
【0006】
一方、液晶表示モジュールに備えられる光拡散シート、プリズムシート等の光学シート52は、一般的には合成樹脂製の透明な基材フィルムと、この基材層の表面に積層される光拡散層、プリズム列層等の光学層とを備えている(例えば特開2000−89007号公報、特開2004−4970号公報等参照)。これらの従来の光学シート52は、所定の構造を有する光学層によって法線方向側への屈折、拡散等の光学的機能を奏するよう構成されているが、透過光線の偏光特性の制御までは意図されていない。
【特許文献1】特開2005−106959号公報
【特許文献2】特表平9−506985号公報
【特許文献3】特開2000−89007号公報
【特許文献4】特開2004−4970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の液晶表示モジュールにおいて、薄型、軽量化というLCDのコンセプトを保ちながら輝度を確保するためにはバックライト53の導光板や冷陰極管等の改善だけでは追いつかない状況となっている。
【0008】
また、上述の反射偏光板を用いた液晶表示モジュールでも、実際にはリサイクルされた光の熱吸収、反射などのロスにより光線の利用効率が75%程度しか実現できていないのが現状である。
【0009】
本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものであり、光線の利用効率を格段に高め、輝度の向上を飛躍的に促進することができ、直下型液晶表示モジュール及び対向エッジライト型液晶表示モジュールに好適な光学ユニット及びこれを用いた液晶表示モジュールの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、液晶表示モジュールの各構成要素の偏光特性を鋭意検討した結果、液晶表示素子の裏面側偏光板又は反射偏光板で反射されてバックライト側に戻る光線の強度に偏光があり、その偏光方向が裏面側偏光板又は反射偏光板の透過軸方向と一致していないことによって光線の利用効率の低下を招来していることを見出した。
【0011】
その結果、上記課題を解決するためになされた発明は、
反射光と透過光とで偏光特性を分離する反射偏光板と、この反射偏光板の裏面側に重畳される光学シートとを備える方形の層状構造体であって、
上記光学シートが、光学的異方性がある樹脂製の基材フィルムを有しており、
上記反射偏光板の透過軸方向を基準とする基材フィルムの結晶軸方向の角度の絶対値がπ/8以上3π/8以下の光学ユニットである。
【0012】
当該光学ユニットは、反射光と透過光とで偏光特性を分離する反射偏光板を備えていることから、液晶表示モジュールにおいて、液晶表示素子の裏面側偏光板の透過軸方向と平行な偏光成分についてはそのまま透過させ、それ以外の偏光成分を下方側へ戻して光線の再利用に供し、ランプから発せられる光線の利用効率を向上することができる。また当該光学ユニットは、反射偏光板の裏面側に重畳される光学シートを備え、この光学シートが光学的異方性がある樹脂製基材フィルムを有し、この基材フィルムの結晶軸方向の角度(絶対値)を反射偏光板の透過軸方向に対してπ/8以上3π/8以下とすることで、液晶表示モジュールにおいて、反射偏光板でバックライト側(裏面側)に反射され、バックライトで表面側に反射されて往復する再帰光線の偏光方向を反射偏光板の透過軸方向(つまり、液晶表示素子の裏面側偏光板の透過軸方向)へ変換することができ(以下、当該機能を「再帰光線の偏光機能」と略す)、その結果再帰光線の液晶セルへの到達率、ひいてはランプから発せられる光線の利用効率を促進することができる。なお、当該光学ユニットは、上記再帰光線の偏光機能を効果的に奏するため、バックライトの出射光線の偏光特性が比較的等方的な直下型液晶表示モジュール及び対向エッジライト型液晶表示モジュールに好適に使用される。
【0013】
当該光学ユニットにおいて、上記反射偏光板と光学シートとの間に充填される透明媒体層をさらに備えるとよい。このように、反射偏光板及び光学シート間に空気よりも屈折率が大きい透明媒体層を充填することで、光学シートの表面での全反射臨界角が反射偏光板及び光学シート間に空気が介在する場合よりも大きくなり、その結果光学シートの表面から出射する光線の割合ひいてはランプから発せられる光線の利用効率をより高めることができる。
【0014】
上記基材フィルムのリタデーション値としては、70nm以上320nm以下が好ましい。かかるリタデーション値を有する基材フィルムは、上述の再帰光線の偏光機能を奏するよう位相差が最適化され、光線の利用効率を格段に向上することができる。また、当該リタデーション値の上記数値範囲は位相差の最適化のためのリタデーション値として比較的小さい方であることから、当該基材フィルムの製造容易性も良好である。
【0015】
上記基材フィルムを構成するマトリックス樹脂としてはポリエチレンテレフタレート又はポリカーボネートが好ましい。このポリエチレンテレフタレートは、リタデーション値が比較的高い性質を有しており、リタデーション値を上述のように最適化するのが容易かつ確実である。またポリカーボネートは、リタデーション値の制御が容易である。
【0016】
上記光学シートは、基材フィルムの一方の面に積層される光学層を有するとよい。この光学層としては、(a)複数の光拡散剤とそのバインダーとを有するもの(光拡散シートの光拡散層)や、(b)屈折性を有する微小な凹凸形状を有するもの(プリズムシートのプリズム列層等)とすることができる。かかる光拡散シートやプリズムシートなどの光学シートは通常液晶表示モジュールに使用されているため、当該手段のように一般的に備えられる光学シートの基材フィルムとして上述の再帰光線の偏光機能を有する当該基材フィルムを用いることで、液晶表示モジュールの光学シート装備枚数の増大を招来することなく、上述の再帰光線の偏光機能が付与され、光線の利用効率を格段に高め、高輝度化及び省エネルギー化を促進することができる。
【0017】
上記光学シートは、基材フィルムの他方の面に、バインダー中にビーズが分散したスティッキング防止層を有するとよい。このように基材フィルムの他方の面にスティッキング防止層を備えることで、例えば液晶表示モジュールにおいて、当該光学シートと裏面側に配設される導光板、プリズムシート等とのスティッキングが防止される。
【0018】
上記課題を解決するためになされた本発明の液晶表示モジュールは、(a)一対の偏光板間に液晶セルを挟持してなる液晶表示素子と、(b)この液晶表示素子の裏面側に重設される当該光学ユニットと、(c)この光学ユニットの裏面側に重設される面光源の直下型又は対向エッジライト型バックライトとを備えている。当該液晶表示モジュールは、上述のように当該光学ユニットが偏光板等で反射される再帰光線の偏光機能を有するため、ランプから発せられる光線の利用効率を格段に高め、今日社会的に要請されている高輝度化、省エネルギー化及び薄型軽量化を促進することができる。また当該液晶表示モジュールは、出射光線の偏光特性が比較的等方的な直下型又は対向エッジライト型バックライトを備えているため、上述の再帰光線の偏光機能を効果的に発揮することができる。
【0019】
当該液晶表示モジュールにおいて、上記光学ユニットの反射偏光板を液晶表示素子の裏面側偏光板とすることができる。このように液晶表示素子の裏面側偏光板を上記光学ユニットの反射偏光板で代替することで、偏光板の装備枚数の低減化が図られ、上記光学ユニットの再帰光線の偏光機能と相俟って、ランプから発せられる光線の利用効率をさらに向上することができる。
【0020】
当該液晶表示モジュールにおいて、上記液晶表示素子とバックライトとの間に他の光学シートを備える場合、この他の光学シートの基材フィルムとしては低リタデーションフィルムを使用するとよい。液晶表示モジュールには一般的に光拡散シート、プリズムシート等の複数枚の光学シートが装備される。このように複数枚の光学シートを備える場合、特定の一の光学シートの基材フィルムのみに上述の再帰光線の偏光機能を付与し、他の光学シートは透過光線の偏光方向を変換しないようにすることで、上述の再帰光線の偏光機能の最適化及び制御性を促進することができる。
【0021】
ここで、「光学シート」とは、上記基材フィルムのみからなる場合も含む概念である。「光線の偏光方向」とは、光線の偏光成分の最大平面方向を意味する。「反射偏光板の透過軸方向を基準とする基材フィルムの結晶軸方向の角度」とは、表面側から観察した平面上の角度であり、右回りを+、左回りを−とする角度を意味する。「表面側」とは、液晶表示モジュールの又は液晶表示モジュールに組み込まれた際の表示の観察側を意味する。「裏面側」とは、表面側の反対側を意味する。「リタデーション値(Re)」とは、当該基材フィルム表面の平面上の結晶軸方向のうち直交する進相軸方向及び遅相軸方向をx方向及びy方向、基材フィルムの厚さをd、x方向及びy方向の屈折率をnx及びny(nx≠ny)とし、Re=(ny−nx)dで計算される値である。「低リタデーションフィルム」とは、リタデーション値の絶対値が60nm以下のフィルムである。「直下型液晶表示モジュール」とは、直下型バックライトを備える液晶表示モジュールを意味する。「対向エッジライト型液晶表示モジュール」とは、対向エッジライト型バックライトを備える液晶表示モジュールを意味する。「対向エッジライト型バックライト」とは、エッジライト型バックライトであって、導光板の対向する側部にランプが配設されるものを意味する。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明の光学ユニットは、反射偏光板で反射される再帰光線の偏光方向を反射偏光板の透過軸方向へ積極的に変換する機能を有している。従って、当該光学ユニットを備える本発明の液晶表示モジュールは、ランプから発せられる光線の利用効率を格段に高め、今日社会的に要請されている高輝度化、省エネルギー化及び薄型軽量化を促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。図1は本発明の一実施形態に係る光学ユニットを示す模式的断面図、図2(a)及び(b)は図1の光学ユニットに備えられる反射偏光板及び基材フィルムを示す模式的平面図、図3は図1の光学ユニットとは異なる形態に係る光学ユニットを示す模式的断面図、図4は図1及び図3の光学ユニットとは異なる形態に係る光学ユニットを示す模式的断面図、図5(a)及び(b)は図4の光学ユニットの光学シートとは異なる光学シート(マイクロレンズシート)を示す模式的平面図及び模式的断面図、図6は図3の光学ユニットを備える液晶表示モジュールを示す模式的断面図である。
【0024】
図1の光学ユニット1は、反射偏光板2と、この反射偏光板2の裏面側に略平行に重畳される光学シート3とを備える層状構造体である。かかる反射偏光板2及び光学シート3は、略同一かつ方形の平面形状を有している。
【0025】
反射偏光板2は、反射光と透過光とで偏光特性を分離する機能を備えるものであり、図2(a)に示すように平面上に互いに直交する透過軸方向m及び反射軸方向nを有している。この反射偏光板2としては、例えば住友スリーエム社製の商品名「D−BEF」、日東電工社製の商品名「PCF」等が用いられる。この反射偏光板2は、液晶表示モジュールにおいて透過軸方向mが液晶表示素子の裏面側偏光板の透過軸方向と平行になるよう配置され、特に直下型液晶表示モジュールにおいては通常短辺方向と平行(つまり、線状のランプと平行)になるよう配置される。そのため、反射偏光板2は、裏面側から入射する光線のうち、液晶表示素子の裏面側偏光板の透過軸方向と平行な透過軸方向mに沿った偏光成分を透過し、反射軸方向nに沿った偏光成分を裏面側に反射してリサイクルするよう構成されている。
【0026】
光学シート3は、樹脂製の基材フィルム4のみから構成されている。この基材フィルム4の形成材料としては、透明、特に無色透明の合成樹脂が用いられている。この合成樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリオレフィン、セルロースアセテート、耐候性塩化ビニル等が挙げられる。かかる合成樹脂の中でも、透明性、強度が高く、後述するようにリタデーション値の制御が容易なポリエチレンテレフタレート又はポリカーボネートが好ましく、撓み性能が改善されたポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0027】
基材フィルム4の厚み(平均厚み)は、特には限定されないが、好ましくは10μm以上250μm以下、特に好ましくは20μm以上188μm以下とされている。基材フィルム4の厚みが上記範囲未満であると、後述するように基材フィルム4の表面に光拡散層等を形成すべくポリマー組成物を塗工した際にカールが発生しやすくなってしまう、取扱いが困難になる等の不都合が発生する。逆に、基材フィルム4の厚みが上記範囲を超えると、液晶表示モジュールの輝度が低下してしまうことがあり、また液晶表示モジュールの厚みが大きくなって薄型化の要求に反することにもなる。
【0028】
基材フィルム4は、光学的異方性を有し、具体的には平面方向で屈折率が異なる複屈折性を有しており、図2(b)に示すように平面上に結晶軸方向(x;y)を有している。かかる基材フィルム4は、最適化された結晶軸方向(x;y)の角度及びリタデーション値を有し、透過光線の偏光方向を意図する方向に変換するよう構成されている。
【0029】
反射偏光板2の透過軸方向mを基準とする基材フィルム4の結晶軸方向(x;y)の角度αの絶対値の下限としては、π/8が好ましく、3π/16が特に好ましい。一方、基材フィルム4の結晶軸方向(x;y)の角度αの絶対値の上限としては、3π/8が好ましく、5π/16が特に好ましい。さらに、基材フィルム4の結晶軸方向(x;y)の角度αの絶対値としては、π/4が最も好ましい。この結晶軸方向(x;y)の角度αが上記範囲の基材フィルム4は、反射偏光板2で反射される再帰光線の偏光方向を反射偏光板2の透過軸方向mへ効果的に変換することができる。なお、上記結晶軸方向(x;y)の角度αの特定を上述のように絶対値としたのは、結晶軸方向(x;y)の角度αが反射偏光板2の透過軸方向mに対してプラス側及びマイナス側であっても同様に上述の再帰光線の偏光機能を奏することからである。
【0030】
基材フィルム4のリタデーション値の下限としては、70nmが好ましく、110nmが特に好ましい。一方、基材フィルム4のリタデーション値の上限としては、320nmが好ましく、170nmが特に好ましい。かかる範囲のリタデーション値を有する基材フィルム4は、反射偏光板2で反射される再帰光線の偏光方向を反射偏光板2の透過軸方向mへ効果的に変換でき、また製造容易性も良好である。
【0031】
基材フィルム4の製造方法としては、上記結晶軸方向の角度α及びリタデーション値を有することができれば特に限定されるものではない。基材フィルム4の結晶軸方向の角度αは、例えばポリエチレンテレフタレート等の一軸延伸加工における延伸力、温度等の調節や、二軸延伸フィルムの打ち抜き加工における抜き位置及び抜き角度の調節により、本発明の範囲に制御可能である。また、基材フィルム4のリタデーション値は、例えば延伸加工の際の延伸力、温度、フィルム厚さ等で制御可能である。
【0032】
当該光学ユニット1は、反射偏光板2を備えていることから、液晶表示モジュールにおいて、液晶表示素子の裏面側偏光板の透過軸方向と平行な偏光成分についてはそのまま透過させ、それ以外の偏光成分を下方側へ戻して光線の再利用に供し、ランプから発せられる光線の利用効率を向上することができる。また当該光学ユニット1は、反射偏光板2の裏面側に基材フィルム4を備えていることから、液晶表示モジュールにおいて、反射偏光板2でバックライト側に反射され、バックライトで再度表面側に反射されて往復する再帰光線の偏光方向を反射偏光板2の透過軸方向mへ効果的に変換することができ、光線の利用効率を向上することができる。さらに当該光学ユニット1は、出射光線の偏光特性が比較的等方的な直下型バックライト又は対向エッジライト型バックライトを備える液晶表示モジュールに好適に使用され、上述の再帰光線の偏光機能を効果的に発揮することができる。
【0033】
図3の光学ユニット10は、反射偏光板2と、この反射偏光板2の裏面側に略平行に重畳される光学シート3と、反射偏光板2と光学シート3との間に充填かつ積層される透明媒体層11とを備える方形の層状構造体である。この反射偏光板2及び光学シート3は、上記図1の光学ユニット1と同様であるため、同一番号を付して説明を省略する。
【0034】
透明媒体層11を形成する透明媒体は、光線を表面側に透過させる必要から透明性を有し、かつ、空気よりも屈折率が大きいものである。この透明媒体層11の透明性は、無色透明に加え、有色透明、半透明等を含む概念である。この透明媒体としては、具体的には粘着剤、ラミネート用接着剤、溶融押出樹脂、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0035】
上記粘着剤としては、既知の種々のものが使用可能であるが、一般的には熱可塑性樹脂に粘着付与剤と可塑剤とが添加されたものであり、具体的には溶剤系粘着剤、エマルジョン系粘着剤などが挙げられる。
【0036】
上記ラミネート用接着剤としては、例えばドライラミネート用接着剤、ウェットラミネート用接着剤、ホットメルトラミネート用接着剤、ノンソルベントラミネート用接着剤等が挙げられる。これらのラミネート用接着剤のなかでも、接着強度、耐久性、耐候性等に優れるドライラミネート用接着剤が特に好ましい。
【0037】
上記ドライラミネート用接着剤としては、例えばポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル,ブチル,2−エチルヘキシルエステル等のホモポリマーまたはこれらとメタクリル酸メチル,アクリロニトリル,スチレン等との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル,アクリル酸エチル,アクリル酸,メタクリル酸等のモノマーとの共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂,メラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム,ニトリルゴム,スチレン−ブタジエンゴム等からなるゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート,低融点ガラス等からなる無機系接着剤などが挙げられる。これらのドライラミネート用接着剤の中でも、経時的な接着強度低下やデラミネーションが防止され、さらに透明媒体層11の黄変等の劣化が低減されるポリウレタン系接着剤が特に好ましい。
【0038】
上記溶融押出樹脂としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、酸変性ポリエチレン系樹脂、酸変性ポリプロピレン系樹脂、エチレン−アクリル酸又はメタクリル酸共重合体、サーリン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン−アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂の1種又は2種以上を使用することができる。なお、上記溶融押出樹脂を用いた押出ラミネート法を採用する場合、積層対向面にアンカーコート処理等の表面処理を施すとよい。
【0039】
透明媒体層11の積層量(固形分換算)の下限としては、1g/mが好ましく、3g/mが特に好ましい。一方、透明媒体層11の積層量の上限としては、10g/mが好ましく、7g/mが特に好ましい。透明媒体層11の積層量が上記下限より小さいと、接着強度が得られないおそれがある。一方、透明媒体層11の積層量が上記上限を超えると、積層強度や耐久性が低下するおそれがある。
【0040】
なお透明媒体層11を形成する粘着剤、ラミネート用接着剤、溶融押出樹脂等の透明媒体中には、取扱性、耐熱性、耐候性、機械的性質等を改良改質する目的で、例えば溶媒、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、充填剤、強化繊維、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤、顔料等の種々の添加剤を適宜混合することができる。
【0041】
当該光学ユニット10は、図1の光学ユニット1と同様に、反射偏光板2によって液晶表示モジュールにおける液晶表示素子の裏面側偏光板の透過軸方向以外の偏光成分を裏面側へ戻して光線の再利用に供し、基材フィルム4によって再帰光線の偏光方向を反射偏光板2の透過軸方向mへ効果的に変換することができ、その結果光線の利用効率を向上することができる。また、当該光学ユニット10は、反射偏光板2と光学シート3との間隙に充填される透明媒体層11によって基材フィルム4表面(透明媒体層11との界面)での全反射臨界角が大きくなる結果、基材フィルム4の表面から出射する光線を増大し、液晶表示モジュールにおいてランプから発せられる光線を利用効率を促進することができる。特に、当該光学ユニット10は、透明媒体層11として屈折率が基材フィルム4の屈折率より大きいものを用いれば、基材フィルム4側から透明媒体層11との界面に入射する光線の全反射が防止でき、液晶表示モジュールにおいてランプから放射された光線の利用効率を格段に高めることができる。さらに、当該光学ユニット10は、透明媒体層11の形成材料として粘着剤、ラミネート用接着剤又は溶融押出樹脂を使用することで、反射偏光板2と基材フィルム4との積層状態が固定され、取扱性、強度、耐久性等を向上することができる。
【0042】
図4の光学ユニット20は、反射偏光板2と、この反射偏光板2の裏面側に略平行に重畳される光学シート21とを備える方形の層状構造体である。この光学シート21は、透過光線を拡散させる光拡散機能(詳細には、拡散させつつ法線方向側へ集光させる方向性拡散機能)を有する光拡散シートである。当該光学シート21は、基材フィルム4と、この基材フィルム4の表面に積層される光学層(光拡散層)22と、基材フィルム4の裏面に積層されるスティッキング防止層23とを備えている。当該光学ユニット20の反射偏光板2及び基材フィルム4は、その内容や結晶軸方向(x;y)等を含めて図1の光学ユニット1と同様であるため、同一番号を付して説明を省略する。
【0043】
光学層22は、基材フィルム4表面に略均一に配設される複数の光拡散剤24と、その複数の光拡散剤24のバインダー25とを備えている。かかる複数の光拡散剤24は、バインダー25で被覆されている。このように光学層22中に含有する複数の光拡散剤24によって光学層22を裏側から表側に透過する光線を均一に拡散させることができる。また、複数の光拡散剤24によって光学層22の表面に微細な凹凸が略均一に形成されている。このように光学シート21表面に形成される微細な凹凸のレンズ的屈折作用により、光線をより良く拡散させることができる。なお、光学層22の平均厚みは、特には限定されないが、例えば1μm以上30μm以下程度とされている。
【0044】
光拡散剤24は、光線を拡散させる性質を有する粒子であり、無機フィラーと有機フィラーに大別される。無機フィラーとしては、例えばシリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫化バリウム、マグネシウムシリケート、又はこれらの混合物を用いることができる。有機フィラーの材料としては、例えばアクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等を用いることができる。中でも、透明性が高いアクリル樹脂が好ましく、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が特に好ましい。
【0045】
光拡散剤24の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば球状、紡錘形状、針状、棒状、立方状、板状、鱗片状、繊維状などが挙げられ、中でも光拡散性に優れる球状のビーズが好ましい。
【0046】
光拡散剤24の平均粒子径の下限としては、1μm、特に2μm、さらに5μmが好ましい。一方、光拡散剤24の平均粒子径の上限としては、50μm、特に20μm、さらに15μmが好ましい。光拡散剤24の平均粒子径が上記範囲未満であると、光拡散剤24によって形成される光学層22表面の凹凸が小さくなり、光拡散シートとして必要な光拡散性を満たさないおそれがある。逆に、光拡散剤24の平均粒子径が上記範囲を越えると、光学シート21の厚さが増大し、かつ、均一な拡散が困難になる。
【0047】
光拡散剤24の配合量(バインダー25の形成材料であるポリマー組成物中の基材ポリマー100部に対する固形分換算の配合量)の下限としては10部、特に20部、さらに50部が好ましく、この配合量の上限としては500部、特に300部、さらに200部が好ましい。これは、光拡散剤24の配合量が上記範囲未満であると、光拡散性が不十分となってしまい、一方、光拡散剤24の配合量が上記範囲を越えると光拡散剤24を固定する効果が低下することからである。なお、プリズムシートの表面側に配設される所謂上用光拡散シートの場合、高い光拡散性を必要とされないため、光拡散剤24の配合量としては10部以上40部以下、特に10部以上30部以下が好ましい。
【0048】
バインダー25は、基材ポリマーを含むポリマー組成物を架橋硬化させることで形成される。このバインダー25により基材フィルム4表面に光拡散剤24が略等密度に配置固定される。なお、バインダー25を形成するためのポリマー組成物は、基材ポリマーの他に例えば微小無機充填剤、硬化剤、可塑剤、分散剤、各種レベリング剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、粘性改質剤、潤滑剤、光安定化剤等が適宜配合されてもよい。
【0049】
上記基材ポリマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、紫外線硬化型樹脂等が挙げられ、これらのポリマーを1種又は2種以上混合して使用することができる。特に、上記基材ポリマーとしては、加工性が高く、塗工等の手段で容易に光学層22を形成することができるポリオールが好ましい。また、バインダー25に用いられる基材ポリマー自体は、光線の透過性を高める観点から透明が好ましく、無色透明が特に好ましい。
【0050】
上記ポリオールとしては、例えば水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られるポリオールや、水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールなどが挙げられ、これらを単体で又は2種以上混合して使用することができる。
【0051】
水酸基含有不飽和単量体としては、(a)例えばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アリルアルコール、ホモアリルアルコール、ケイヒアルコール、クロトニルアルコール等の水酸基含有不飽和単量体、(b)例えばエチレングリコール、エチレンオキサイド、プロピレングリコール、プロピレンオキサイド、ブチレングリコール、ブチレンオキサイド、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルデカノエート、プラクセルFM−1(ダイセル化学工業株式会社製)等の2価アルコール又はエポキシ化合物と、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸との反応で得られる水酸基含有不飽和単量体などが挙げられる。これらの水酸基含有不飽和単量体から選択される1種又は2種以上を重合してポリオールを製造することができる。
【0052】
また上記ポリオールは、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロヘキシル、スチレン、ビニルトルエン、1−メチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、酢酸アリル、アジピン酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、マレイン酸ジエチル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エチレン、プロピレン、イソプレン等から選択される1種又は2種以上のエチレン性不飽和単量体と、上記(a)及び(b)から選択される水酸基含有不飽和単量体とを重合することで製造することもできる。
【0053】
水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られるポリオールの数平均分子量は1000以上500000以下であり、好ましくは5000以上100000以下である。また、その水酸基価は5以上300以下、好ましくは10以上200以下、さらに好ましくは20以上150以下である。
【0054】
水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールは、(c)例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ハイドロキノンビス(ヒドロキシエチルエーテル)、トリス(ヒドロキシエチル)イソシヌレート、キシリレングリコール等の多価アルコールと、(d)例えばマレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、トリメット酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸等の多塩基酸とを、プロパンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール中の水酸基数が前記多塩基酸のカルボキシル基数よりも多い条件で反応させて製造することができる。
【0055】
かかる水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールの数平均分子量は500以上300000以下であり、好ましくは2000以上100000以下である。また、その水酸基価は5以上300以下、好ましくは10以上200以下、さらに好ましくは20以上150以下である。
【0056】
当該ポリマー組成物の基材ポリマーとして用いられるポリオールとしては、上記ポリエステルポリオール、及び、上記水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られ、かつ、(メタ)アクリル単位等を有するアクリルポリオールが好ましい。かかるポリエステルポリオール又はアクリルポリオールを基材ポリマーとするバインダー25は耐候性が高く、光学層22の黄変等を抑制することができる。なお、このポリエステルポリオールとアクリルポリオールのいずれか一方を使用してもよく、両方を使用してもよい。
【0057】
なお、上記ポリエステルポリオール及びアクリルポリオール中の水酸基の個数は、1分子当たり2個以上であれば特に限定されないが、固形分中の水酸基価が10以下であると架橋点数が減少し、耐溶剤性、耐水性、耐熱性、表面硬度等の被膜物性が低下する傾向がある。
【0058】
バインダー25を形成するポリマー組成物中に微小無機充填剤を含有するとよい。このようにバインダー25中に微小無機充填剤を含有することで、光学層22ひいては光学シート21の耐熱性が向上する。この微小無機充填剤を構成する無機物としては、特に限定されるものではないが、無機酸化物が好ましい。この無機酸化物は、金属元素が主に酸素原子との結合を介して3次元のネットワークを構成した種々の含酸素金属化合物と定義される。無機酸化物を構成する金属元素としては、例えば元素周期律表第2族〜第6族から選ばれる元素が好ましく、元素周期律表第3族〜第5族から選ばれる元素がさらに好ましい。特に、Si、Al、Ti及びZrから選択される元素が好ましく、金属元素がSiであるコロイダルシリカが、耐熱性向上効果及び均一分散性の面で微小無機充填剤として最も好ましい。また微小無機充填剤の形状は、球状、針状、板状、鱗片状、破砕状等の任意の粒子形状でよく、特に限定されない。
【0059】
微小無機充填剤の平均粒子径の下限としては、5nmが好ましく、10nmが特に好ましい。一方、微小無機充填剤の平均粒子径の上限としては50nmが好ましく、25nmが特に好ましい。これは、微小無機充填剤の平均粒子径が上記範囲未満では、微小無機充填剤の表面エネルギーが高くなり、凝集等が起こりやすくなるためであり、逆に、平均粒子径が上記範囲を超えると、短波長の影響で白濁し、光学シート21の透明性を完全に維持することができなくなることからである。
【0060】
微小無機充填剤の基材ポリマー100部に対する配合量(無機物成分のみの配合量)の下限としては固形分換算で5部が好ましく、50部が特に好ましい。一方、微小無機充填剤の上記配合量の上限としては500部が好ましく、200部がより好ましく、100部が特に好ましい。これは、微小無機充填剤の配合量が上記範囲未満であると、光学シート21の耐熱性を十分に発現することができなくなってしまうおそれがあり、逆に、配合量が上記範囲を越えると、ポリマー組成物中への配合が困難になり、光学層22の光線透過率が低下するおそれがあることからである。
【0061】
上記微小無機充填剤としては、その表面に有機ポリマーが固定されたものを用いるとよい。このように有機ポリマー固定微小無機充填剤を用いることで、バインダー25中での分散性やバインダー25との親和性の向上が図られる。この有機ポリマーについては、その分子量、形状、組成、官能基の有無等に関して特に限定はなく、任意の有機ポリマーを使用することができる。また有機ポリマーの形状については、直鎖状、分枝状、架橋構造等の任意の形状のものを使用することができる。
【0062】
上記有機ポリマーを構成する具体的な樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルおよびこれらの共重合体やアミノ基、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の官能基で一部変性した樹脂等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリル−スチレン系樹脂、(メタ)アクリル−ポリエステル系樹脂等の(メタ)アクリル単位を含む有機ポリマーを必須成分とするものが被膜形成能を有し好適である。他方、上記ポリマー組成物の基材ポリマーと相溶性を有する樹脂が好ましく、従ってポリマー組成物に含まれる基材ポリマーと同じ組成であるものが最も好ましい。
【0063】
なお、微小無機充填剤は、微粒子内に有機ポリマーを包含していてもよい。このことにより、微小無機充填剤のコアである無機物に適度な軟度および靱性を付与することができる。
【0064】
上記有機ポリマーにはアルコキシ基を含有するものを用いるとよく、その含有量としては有機ポリマーを固定した微小無機充填剤1g当たり0.01mmol以上50mmol以下が好ましい。かかるアルコキシ基により、バインダー25を構成するマトリックス樹脂との親和性や、バインダー25中での分散性を向上させることができる。
【0065】
上記アルコキシ基は、微粒子骨格を形成する金属元素に結合したRO基を示す。このRは置換されていてもよいアルキル基であり、微粒子中のRO基は同一であっても異なっていてもよい。Rの具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル等が挙げられる。微小無機充填剤を構成する金属と同一の金属アルコキシ基を用いるのが好ましく、微小無機充填剤がコロイダルシリカである場合には、シリコンを金属とするアルコキシ基を用いるのが好ましい。
【0066】
有機ポリマーを固定した微小無機充填剤中の有機ポリマーの含有率については、特に制限されるものではないが、微小無機充填剤を基準にして0.5質量%以上50質量%以下が好ましい。
【0067】
微小無機充填剤に固定する上記有機ポリマーとして水酸基を有するものを用い、バインダー25を構成するポリマー組成物中に水酸基と反応するような官能基を2個以上有する多官能イソシアネート化合物、メラミン化合物およびアミノプラスト樹脂から選ばれる少なくとも1種のものを含有するとよい。これにより、微小無機充填剤とバインダー25のマトリックス樹脂とが架橋構造で結合され、保存安定性、耐汚染性、可撓性、耐候性、保存安定性等が良好になり、さらに得られる被膜が光沢を有するものとなる。
【0068】
上記基材ポリマーとしてはシクロアルキル基を有するポリオールが好ましい。このように、バインダー25を構成する基材ポリマーとしてのポリオール中にシクロアルキル基を導入することで、バインダー25の撥水性、耐水性等の疎水性が高くなり、高温高湿条件下での当該光学シート21の耐撓み性、寸法安定性等が改善される。また、光学層22の耐候性、硬度、肉持感、耐溶剤性等の塗膜基本性能が向上する。さらに、表面に有機ポリマーが固定された微小無機充填剤との親和性及び微小無機充填剤の均一分散性がさらに良好になる。
【0069】
上記シクロアルキル基としては特に限定されず、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロヘプタデシル基、シクロオクタデシル基等が挙げられる。
【0070】
上記シクロアルキル基を有するポリオールは、シクロアルキル基を有する重合性不飽和単量体を共重合することで得られる。このシクロアルキル基を有する重合性不飽和単量体とは、シクロアルキル基を分子内に少なくとも1つ有する重合性不飽和単量体である。この重合性不飽和単量体としては特に限定されず、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0071】
また、ポリマー組成物中には硬化剤としてイソシアネートを含有するとよい。このようにポリマー組成物中にイソシアネート硬化剤を含有することで、より一層強固な架橋構造となり、光学層22の被膜物性がさらに向上する。このイソシアネートとしては上記多官能イソシアネート化合物と同様の物質が用いられる。中でも、被膜の黄変色を防止する脂肪族系イソシアネートが好ましい。
【0072】
特に、基材ポリマーとしてポリオールを用いる場合、ポリマー組成物中に配合する硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネート、イソフロンジイソシアネート及びキシレンジイソシアネートのいずれか1種もしくは2種以上混合して用いるとよい。これらの硬化剤を用いると、ポリマー組成物の硬化反応速度が大きくなるため、帯電防止剤として微小無機充填剤の分散安定性に寄与するカチオン系のものを使用しても、カチオン系帯電防止剤による硬化反応速度の低下を十分補うことができる。また、かかるポリマー組成物の硬化反応速度の向上はバインダー中への微小無機充填剤の均一分散性に寄与する。その結果、当該光学シート21は熱、紫外線等による撓みや黄変を格段に抑制することができる。
【0073】
さらに、ポリマー組成物中に帯電防止剤を混練するとよい。このように帯電防止剤が混練されたポリマー組成物からバインダー25を形成することで、当該光学シート21に帯電防止効果が発現され、ゴミを吸い寄せたり、プリズムシート等との重ね合わせが困難になる等の静電気の帯電により発生する不都合を防止することができる。また帯電防止剤を表面にコーティングすると表面のベタツキや汚濁が生じてしまうが、このようにポリマー組成物中に混練することでかかる弊害は低減される。この帯電防止剤としては、特に限定されるものではなく、例えばアルキル硫酸塩、アルキルリン酸塩等のアニオン系帯電防止剤、第四アンモニウム塩、イミダゾリン化合物等のカチオン系帯電防止剤、ポリエチレングリコール系、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル、エタノールアミド類等のノニオン系帯電防止剤、ポリアクリル酸等の高分子系帯電防止剤などが用いられる。中でも、帯電防止効果が比較的大きいカチオン系帯電防止剤が好ましく、少量の添加で帯電防止効果が奏される。
【0074】
スティッキング防止層23は、基材フィルム4裏面に配設される複数のビーズ26と、この複数のビーズ26のバインダー27とを備えている。このバインダー27も、上記光学層22のバインダー25と同様のポリマー組成物を架橋硬化させることで形成される。また、ビーズ26の材料としては光学層22の光拡散剤24と同様のものが用いられる。なお、このスティッキング防止層23の厚み(ビーズ26が存在しない部分でのバインダー27部分の厚み)は特には限定されないが、例えば1μm以上10μm以下程度とされている。
【0075】
このビーズ26の配合量は比較的少量とされ、ビーズ26は互いに離間してバインダー27中に分散している。また、ビーズ26部分で当該光学シート21の下面に凸部が形成されている。そのため、この光学シート21を導光板等の表面に積層すると、突出したビーズ26部分が導光板等の表面に当接し、光学シート21の裏面全面が導光板等と当接することがない。これにより、光学シート21と導光板等とのスティッキングが防止され、液晶表示装置の画面の輝度ムラが抑えられる。
【0076】
次に、当該光学シート21の製造方法を説明する。当該光学シート21の製造方法は、(a)バインダー25を構成するポリマー組成物に光拡散剤24を混合することで光学層用組成物を製造する工程と、(b)光学層用組成物を基材フィルム4の表面に積層し、硬化させることで光学層22を形成する工程と、(c)バインダー27を構成するポリマー組成物にビーズ26を混合することでスティッキング防止層用組成物を製造する工程と、(d)スティッキング防止層用組成物を基材フィルム4の裏面に積層し、硬化させることでスティッキング防止層23を積層する工程とを有する。上記光学層用組成物及びスティッキング防止層用組成物を基材フィルム4に積層する手段としては、特に限定されるものではなく、例えばバーコーター、ブレードコーター、スピンコーター、ロールコーター、グラビアコーター、フローコーター、スプレー、スクリーン印刷等を用いたコーティング等が採用される。
【0077】
当該光学ユニット20は、図1の光学ユニット1と同様に、反射偏光板2によって液晶表示モジュールにおいて液晶表示素子の裏面側偏光板の透過軸方向以外の偏光成分を下方側へ戻して光線の再利用に供し、基材フィルム4によって再帰光線の偏光方向を反射偏光板2の透過軸方向mへ効果的に変換することができ、その結果光線の利用効率を向上することができる。また当該光学ユニット20は、光学シート21の光学層22中に含有する光拡散剤24の界面での反射や屈折及び光学層22表面に形成される微細凹凸での屈折により高い光拡散機能(方向性拡散機能)を有している。さらに当該光学ユニット20は、液晶表示モジュールに一般的に備えられる光拡散シートの基材フィルムとして上述の再帰光線の偏光機能を有する基材フィルム4を用いていることから、液晶表示モジュールの光学シート装備枚数の増大を招来することなく上述の再帰光線の偏光機能が付与され、光線の利用効率を格段に高め、高輝度化及び省エネルギー化を促進することができる。そのため、当該光学ユニット20は、液晶表示モジュールに使用されると、ランプから発せられる光線の利用効率を格段に高め、高輝度化及び省エネルギー化ひいては省スペース化を促進することができる。
【0078】
図4の光学ユニット20は、光学シート21に替えて、図5の光学シート31を備えることができる。図5の光学シート31は、高い集光、法線方向側への屈折、拡散等の光学的機能を有する所謂マイクロレンズシートである。当該光学シート31は、基材フィルム4と、この基材フィルム4の表面に積層される光学層32とを備えている。この基材フィルム4は、図1の光学ユニット1と同様であるため、同一番号を付して説明を省略する。
【0079】
光学層32は、基材フィルム4表面に積層されるシート状部33と、このシート状部33の表面に形成されるマイクロレンズアレイ34とを備えている。なお、光学層32は、シート状部33が存在せず、マイクロレンズアレイ34のみから構成することも可能である。つまり、基材フィルム4の表面に直接マイクロレンズアレイ34を形成することも可能である。
【0080】
光学層32は、光線を透過させる必要があるので透明、特に無色透明の合成樹脂から形成されている。光学層32に用いられる合成樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリオレフィン、セルロースアセテート、耐候性塩化ビニル、活性エネルギー線硬化型樹脂等が挙げられる。中でも、マイクロレンズアレイ34の成形性に優れる紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等の放射線硬化型樹脂や、透明性及び強度に優れるポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。なお、光学層32には、上記の合成樹脂の他、例えばフィラー、可塑剤、安定化剤、劣化防止剤、分散剤等が配合されてもよい。
【0081】
マイクロレンズアレイ34は、多数のマイクロレンズ35から構成されている。このマイクロレンズ35は、半球状(半球に近似した形状を含む)とされ、基材フィルム4表面側に突設されている。なお、マイクロレンズ35は、上記半球状凸レンズに限定されず、半球状凹レンズのマイクロレンズも可能である。かかる半球状凹レンズのマイクロレンズも、上記マイクロレンズ35と同様に優れた光学的機能を有する。
【0082】
マイクロレンズ35は、基材フィルム4の表面に比較的密にかつ幾何学的に配設されている。具体的にはマイクロレンズ35は、基材フィルム4の表面において正三角形格子パターンで配設されている。従って、マイクロレンズ35のピッチ(P)及びレンズ間距離(S)は全て一定である。この配設パターンは、マイクロレンズ35を最も密に配設することができる。なお、マイクロレンズ35の配設パターンとしては、稠密充填可能な上記正三角形格子パターンに限定されず、例えば正方形格子パターンやランダムパターンも可能である。このランダムパターンによれば、当該光学シート31を他の光学部材と重ね合わせた際にモアレの発生が低減される。
【0083】
マイクロレンズ35の直径(D)の下限としては、10μm、特に100μm、さらに特に200μmが好ましい。一方、マイクロレンズ35の直径(D)の上限としては、1000μm、特に700μmが好ましい。マイクロレンズ35の直径(D)が10μmより小さいと、回析の影響が大きくなり、光学的性能の低下や色分解が起こり易く、品質の低下を招来する。一方、マイクロレンズ35の直径(D)が1000μmを超えると、厚さの増大や輝度ムラが生じやすく、品質の低下を招来する。また、マイクロレンズ35の直径(D)を100μm以上とすることで、単位面積当たりのマイクロレンズ35が少なくなる結果、マイクロレンズシートである当該光学シート31の大面積化が容易になり、製造時の技術的かつコスト的な負担が軽減される。
【0084】
マイクロレンズ35の表面粗さ(Ra)の下限としては、0.01μmが好ましく、0.03μmが特に好ましい。一方、マイクロレンズ35の表面粗さ(Ra)の上限としては、0.1μmが好ましく、0.07μmが特に好ましい。このようにマイクロレンズ35の表面粗さ(Ra)を上記下限以上とすることで、当該光学シート31のマイクロレンズアレイ34の成形性が比較的容易になり、製造面での技術的及びコスト的負担が軽減される。一方、マイクロレンズ35の表面粗さ(Ra)を上記上限未満とすることで、マイクロレンズ35表面での光の散乱が低減される結果、マイクロレンズ35による集光機能や法線方向側への屈折機能が高められ、かかる良好な光学的機能に起因して正面方向の高輝度化が図られる。
【0085】
マイクロレンズ35の高さ(H)の曲率半径(R)に対する高さ比(H/R)の下限としては、5/8が好ましく、3/4が特に好ましい。一方、この高さ比(H/R)の上限としては1が好ましい。このようにマイクロレンズ35の高さ比(H/R)を上記範囲とすることで、マイクロレンズ35におけるレンズ的屈折作用が効果的に奏され、当該光学シート31の集光等の光学的機能が格段に向上される。
【0086】
マイクロレンズ35のレンズ間距離(S;P−D)の直径(D)に対する間隔比(S/D)の上限としては1/2が好ましく、1/5が特に好ましい。このようにマイクロレンズ35のレンズ間距離(S)を上記上限以下とすることで、光学的機能に寄与しない平坦部が低減され、当該光学シート31の集光等の光学的機能が格段に向上される。
【0087】
マイクロレンズ35の充填率の下限としては、40%が好ましく、60%が特に好ましい。このようにマイクロレンズ35の充填率を上記下限以上とすることで、当該光学シート31表面におけるマイクロレンズ35の占有面積を高め、当該光学シート31の集光等の光学的機能が格段に向上される。
【0088】
なお、上述した高さ比(H/R)、間隔比(S/D)及び充填率の数値範囲は、モンテカルロ法を用いたノンシーケンシャル光線追跡による輝度解析シミュレーションに基づいて導かれたものである。
【0089】
光学層32を構成する素材の屈折率の下限としては1.3が好ましく、1.45が特に好ましい。一方、この素材の屈折率の上限としては1.8が好ましく、1.6が特に好ましい。この範囲の中でも、光学層32を構成する素材の屈折率としては1.5が最も好ましい。このように光学層32を構成する素材の屈折率を上記範囲とすることで、マイクロレンズ35におけるレンズ的屈折作用が効果的に奏され、当該光学シート31の集光等の光学的機能がさらに高められる。
【0090】
当該光学シート31の製造方法としては、上記構造のものが形成できれば特に限定されるものではなく、種々の方法が採用される。当該光学シート31の製造方法としては、具体的には、
(a)マイクロレンズアレイ34表面の反転形状を有するシート型に合成樹脂及び基材フィルム4をこの順に積層し、シート型を剥がすこと当該光学シート31を形成する方法、
(b)シート化された樹脂を再加熱して基材フィルム4と共にマイクロレンズアレイ34表面の反転形状を有する金型と金属板との間にはさんでプレスして形状を転写する方法、
(c)マイクロレンズアレイ34表面の反転形状を周面に有するロール型と他のロールとのニップに溶融状態の樹脂及び基材フィルム4を通し、上記形状を転写する押出しシート成形法、
(d)基材フィルム4に紫外線硬化型樹脂を塗布し、上記と同様の反転形状を有するシート型、金型又はロール型に押さえ付けて未硬化の紫外線硬化型樹脂に形状を転写し、紫外線をあてて紫外線硬化型樹脂を硬化させる方法、
(e)上記と同様の反転形状を有する金型又はロール型に未硬化の紫外線硬化性樹脂を充填塗布し、基材フィルム4で押さえ付けて均し、紫外線をあてて紫外線硬化型樹脂を硬化させる方法、
(f)未硬化(液状)の紫外線硬化型樹脂等を微細なノズルから基材フィルム4上にマイクロレンズ35を形成するよう射出又は吐出し、硬化させる方法、
(g)紫外線硬化型樹脂の代わりに電子線硬化型樹脂を使用する方法
などがある。
【0091】
なお、上記マイクロレンズアレイ34の反転形状を有する型(モールド)の製造方法としては、例えば基材上にフォトレジスト材料により斑点状の立体パターンを形成し、この立体パターンを加熱流動化により曲面化することでマイクロレンズアレイ模型を作製し、このマイクロレンズアレイ模型の表面に電鋳法により金属層を積層し、この金属層を剥離することで製造することができる。また、上記マイクロレンズアレイ模型の作製方法としては、上記(f)に記載の方法を採用することも可能である。
【0092】
上記製造方法によれば、任意形状のマイクロレンズアレイ34が容易かつ確実に形成される。従って、マイクロレンズアレイ34を構成するマイクロレンズ35の直径(D)、高さ比(H/R)、間隔比(S/D)、充填率等が容易かつ確実に調整され、その結果当該光学シート31の光学的機能が容易かつ確実に制御される。
【0093】
当該光学シート31は、マイクロレンズアレイ34によって高い集光、法線方向側への屈折、拡散等の光学的機能を有し、かつ、その光学的機能を容易かつ確実に制御することができる。そのため、当該光学シート31は、例えばバックライトユニットのプリズムシートへの入射光線のピーク方向を法線方向側への屈折に最適な傾斜角に制御することができる。光学シート21に替えて当該光学シート31を備える光学ユニット20も、図1の光学ユニット1と同様に、反射偏光板2によって液晶表示モジュールにおける液晶表示素子の裏面側偏光板の透過軸方向以外の偏光成分を下方側へ戻して光線の再利用に供し、基材フィルム4によって再帰光線の偏光方向を反射偏光板2の透過軸方向mへ効果的に変換することができ、その結果光線の利用効率を向上することができる。また当該光学シート31を備える光学ユニット20は、液晶表示モジュールに備えられる光学シートの基材フィルムとして上述の再帰光線の偏光機能を有する基材フィルム4を用いていることから、液晶表示モジュールの光学シート装備枚数の増大を招来することなく、上述の再帰光線の偏光機能が付与され、光線の利用効率を格段に高め、高輝度化及び省エネルギー化を促進することができる。そのため、当該光学シート31を備える光学ユニット20も、液晶表示モジュールに使用されると、ランプから発せられる光線の利用効率を格段に高め、高輝度化及び省エネルギー化ひいては省スペース化を促進することができる。
【0094】
なお、上記「マイクロレンズ」とは、界面が部分球面状の微小レンズを意味し、例えば半球状凸レンズ、半球状凹レンズ等が該当する。「直径(D)」とは、マイクロレンズの基底又は開口の直径を意味する。「高さ(H)」とは、マイクロレンズが凸レンズの場合にはマイクロレンズの基底面から最頂部までの垂直距離、マイクロレンズが凹レンズの場合にはマイクロレンズの開口面から最底部までの垂直距離を意味する。「レンズ間距離」とは、隣り合う一対のマイクロレンズ間の最短距離を意味する。「充填率」とは、表面投影形状における単位面積当たりのマイクロレンズの面積比を意味する。「正三角形格子パターン」とは、表面を同一形状の正三角形に区分し、その正三角形の各頂点にマイクロレンズを配設するパターンを意味する。
【0095】
図6の液晶表示モジュールは、直下型であり、液晶表示素子41、光学ユニット10及びバックライト42を備えている。かかる液晶表示素子41、光学ユニット10及びバックライト42(出光面)は、略同一かつ方形の平面形状を有し、表面側から裏面側にこの順に重畳されている。
【0096】
液晶表示素子41は、略平行にかつ所定間隔を開けて配設される表面側偏光板43及び裏面側偏光板44と、その間に挟持される液晶セル45とを有している。偏光板43,44は、特に限定されるものではなく、一般的にはヨウ素系偏光子、染料系偏光子、ポリエン系偏光子等の偏光子及びその両側に配置される二枚の透明保護膜から構成される。表面側偏光板43と裏面側偏光板44との透過軸方向は互いに直交するよう構成されており、裏面側偏光板44の透過軸方向は短辺方向と平行(つまり、ランプ47と平行)になるよう構成されている。
【0097】
液晶セル45は、透過する光量を制御する機能を有するものであり、公知の種々のものが採用される。液晶セル45は、一般的には基板、カラーフィルタ、対向電極、液晶層、画素電極、基板等からなる積層構造体である。この画素電極には、ITO等の透明導電膜が用いられている。液晶セル45の表示モードとしては、現在提案されている例えばTN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、HAN(Hybrid Aligned Nematic)等を用いることができる。
【0098】
バックライト42は、直下型の面光源装置であり、液晶表示素子41を裏面側から照らして発光させるものである。バックライト42としては、例えば特開平11−295731号公報等に開示の公知のものが用いられ、具体的にはケーシング46、複数本のランプ47、拡散板48等を主構成要素とする。ケーシング46は、方形のトレイ状(表面側が開口した薄箱状)に形成されており、表面側に光線を出射するよう内面に金属膜等の反射層を備えている。複数本のランプ47は、冷陰極管等の線状光源であり、ケーシング46の内部に短辺方向と平行かつ略等間隔に配設されている。拡散板48は、ランプイメージを緩和するためのものであり、例えばアクリル樹脂やポリカーボネート等に無機フィラー等を混合した乳白色の樹脂板が一般的に用いられている。かかる構造のバックライト42は、ランプ47から発せられた光線を表面全面から出光するよう構成されている。
【0099】
光学ユニット10の反射偏光板2の透過軸方向mは、液晶表示素子41の裏面側偏光板44の透過軸方向と平行に配置されている。従って、反射偏光板2の透過軸方向mは、短辺方向と平行(つまり、ランプ47と平行)になるよう構成されている。
【0100】
当該液晶表示モジュールにおいて、バックライト42の表面から出射し、光学シート3(基材フィルム4)を透過した光線(反射偏光板2に入射する光線)のうち反射偏光板2の透過軸方向mに沿った偏光成分は、反射偏光板2及び裏面側偏光板44を透過し、液晶セル45を照明する。一方、反射偏光板2に入射する光線のうち反射偏光板2の反射軸方向nに沿った偏光成分は、反射偏光板2で裏面側に反射され、次いでバックライト42で表面側に反射されて反射偏光板2に再帰するが、この往復過程で基材フィルム4の上記偏光機能により反射偏光板2の透過軸方向m(つまり、裏面側偏光板44の透過軸方向)に効果的に変換され、液晶セル45を照明する。この再帰光線の偏光機能の理論的作用としては、基材フィルム4を往復透過する際に直線偏光の偏光方向が約90°回転すること等が考えられる。従って、当該液晶表示モジュールは、ランプ47から発せられた光線の利用効率を飛躍的に向上することができ、今日社会的に要請されている高輝度化、省エネルギー化及び薄型化を促進することができる。また、当該液晶表示モジュールは、出射光線の偏光特性が比較的等方的な直下型バックライト42を備えているため、上述の再帰光線の偏光機能を効果的に発揮することができる。さらに、当該液晶表示モジュールの光学ユニット10は、反射偏光板2及び基材フィルム4間に空気よりも屈折率が大きい透明媒体層11が充填積層されていることから、基材フィルム4の表面での全反射臨界角が大きくなり、その結果光学シート3の表面から出射する光線の割合ひいてはランプ47から発せられる光線の利用効率をより高めることができる。
【0101】
なお、本発明の光学ユニット及び液晶表示モジュールは、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、液晶表示素子の裏面側偏光板が当該光学ユニットの反射偏光板で代替される液晶表示モジュールも可能である。当該光学ユニットは、対向エッジライト型液晶表示モジュールにも適用可能であり、上述の当該直下型液晶表示モジュールと同様の効果を奏することができる。図4の光学ユニット20における反射偏光板2及び光学シート21間に透明媒体層を充填積層することも可能であり、光拡散性等の光学特性を奏しつつ光線の透過率を向上することができる。
【0102】
また当該光学ユニットは、紫外線吸収剤層、トップコート層等の他の層が積層されてもよい。当該光学シートの光学層は、図4の光拡散層や図5のマイクロレンズアレイに限定されず、例えばストライプ状に配設される複数のプリズム部、シリンドリカルレンズ部等から構成してもよい。図5に示すようなマイクロレンズアレイを構成するマイクロレンズは、楕円面の部分的形状に形成することも可能である。このように楕円面の部分的形状を有するマイクロレンズによれば、透過光線に対する正面側への集光機能、拡散機能、法線方向側への変角機能等の光学的機能の向上や、かかる光学的機能の異方性を獲得することができる。
【実施例】
【0103】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0104】
〈基材フィルムのサンプルの作成〉
ポリエチレンテレフタレート等の樹脂を二軸延伸した原反から位置を変えて抜き取り、リタデーション値がそれぞれ16nm(サンプル1)、70nm(サンプル2)、110nm(サンプル3)、140nm(サンプル4)、170nm(サンプル5)及び320nm(サンプル6)の方形の基材フィルムのサンプルを作成した。
【0105】
〈結晶軸方向角度α及びリタデーション値と正面輝度との関係を求める実験〉
図6と同様の直下型バックライト、反射偏光板及び液晶表示素子を裏面側からこの順に備え、液晶表示素子の裏面側偏光板及び反射偏光板の透過軸方向が短辺方向を基準として0°の液晶表示モジュールを用いた。この反射偏光板の裏面に透明の粘着剤を介してサンプル1〜6の基材フィルムを貼り付けることで光学ユニットを構成し、この光学ユニットにおける反射偏光板の透過軸方向に対する基材フィルムの結晶軸方向の角度を変化させて正面輝度を測定し、基材フィルムを組み込まない場合の正面輝度と対比した。その結果を下記表1及び図7のグラフに示す。
【0106】
【表1】

【0107】
〈リタデーション値と正面輝度との関係の評価〉
表1及び図7のグラフに示すように、リタデーション値が70nm以上320nm以下のサンプル2〜6の基材フィルム、つまり実質的に光学的異方性を有する基材フィルムを反射偏光板の裏面側に貼設した場合、サンプルなしの場合と比較して、正面輝度上昇効果が得られている。特に、リタデーション値が110nm以上170nm以下のサンプル3〜5の基材フィルムを反射偏光板の裏面側に貼設した場合、サンプルなしの場合と比較して、市場で高付加価値と認定される5%以上の輝度上昇効果が得られている。さらに、リタデーション値が140nmのサンプル4の基材フィルムを反射偏光板の裏面側に貼設した場合が最も高い輝度上昇効果が得られている。以上のリタデーション値評価結果から、上述のように本発明で特定する基材フィルムのリタデーション値の数値範囲の妥当性が実証されている。
【0108】
〈結晶軸方向角度αと正面輝度との関係の評価〉
表1及び図7のグラフに示すように、リタデーション値が70nm以上320nm以下のサンプル2〜6の基材フィルムを反射偏光板の裏面側に貼設した場合を見ると、反射偏光板の透過軸方向に対する基材フィルムの結晶軸方向の角度αの絶対値がπ/8以上3π/8以下の場合、基材フィルムなしの場合と比較して、正面輝度の上昇効果が得られている。特に、基材フィルムの結晶軸方向の角度αの絶対値が3π/16以上5π/16以下の場合、ピーク輝度より1%程度の輝度差に収まるため、ピーク輝度と同等程度の輝度が得られ、輝度のバラツキが抑制されている。さらに、基材フィルムの結晶軸方向の角度αの絶対値がπ/4の場合、最も高い正面輝度が発現されている。なお、基材フィルムの結晶軸方向の角度αが負の値の場合も上記と同様の正面輝度が発現される。以上の結晶軸方向角度αの評価結果から、上述のように本発明で特定する結晶軸方向角度αの数値範囲の妥当性が実証されている。
【0109】
〈透明媒体層の有無を評価する実験〉
図6と同様の直下型バックライト、反射偏光板及び液晶表示素子を裏面側からこの順に備え、液晶表示素子の裏面側偏光板及び反射偏光板の透過軸方向が短辺方向を基準として0°の液晶表示モジュールを用いた。リタデーション値が140nmのサンプル4の基材フィルムを用い、反射偏光板の透過軸方向に対する基材フィルムの結晶軸方向の角度αをπ/4とし、反射偏光板の裏面側に重畳した場合と透明の粘着剤を介して貼設した場合との正面輝度を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0110】
【表2】

【0111】
〈透明媒体層の有無の評価〉
表2に示しように、反射偏光板と基材フィルムとを重畳した場合に比べ、反射偏光板と基材フィルムとを透明媒体層(粘着剤)を介して貼設した場合の方が高い正面輝度を示している。
【産業上の利用可能性】
【0112】
以上のように、本発明の光学ユニット及び液晶表示モジュールは、液晶表示装置の構成要素として有用であり、特に透過型液晶表示装置に用いるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の一実施形態に係る光学ユニットを示す模式的断面図
【図2】(a)及び(b)は図1の光学ユニットに備えられる反射偏光板及び基材フィルムを示す模式的平面図
【図3】図1の光学ユニットとは異なる形態に係る光学ユニットを示す模式的断面図
【図4】図1及び図3の光学ユニットとは異なる形態に係る光学ユニットを示す模式的断面図
【図5】(a)及び(b)は図4の光学ユニットの光学シートとは異なる光学シート(マイクロレンズシート)を示す模式的平面図及び模式的断面図
【図6】図3の光学ユニットを備える液晶表示モジュールを示す模式的断面図
【図7】結晶軸方向角度α及びリタデーション値と正面輝度との関係を示すグラフ
【図8】一般的な直下型液晶表示モジュールを示す模式的断面図
【符号の説明】
【0114】
1 光学ユニット
2 反射偏光板
3 光学シート
4 基材フィルム
10 光学ユニット
11 透明媒体層
20 光学ユニット
21 光学シート
22 光学層
23 スティッキング防止層
24 光拡散剤
25 バインダー
26 ビーズ
27 バインダー
31 光学シート
32 光学層
33 シート状部
34 マイクロレンズアレイ
35 マイクロレンズ
41 液晶表示素子
42 直下型バックライト
43 表面側偏光板
44 裏面側偏光板
45 液晶セル
46 ケーシング
47 ランプ
48 拡散板
α 結晶軸方向の角度
X 結晶軸方向
Y 透過軸方向
Z 反射軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射光と透過光とで偏光特性を分離する反射偏光板と、この反射偏光板の裏面側に重畳される光学シートとを備える方形の層状構造体であって、
上記光学シートが、光学的異方性がある樹脂製の基材フィルムを有しており、
上記反射偏光板の透過軸方向を基準とする基材フィルムの結晶軸方向の角度の絶対値がπ/8以上3π/8以下である光学ユニット。
【請求項2】
上記反射偏光板と光学シートとの間に充填される透明媒体層を備えている請求項1に記載の光学ユニット。
【請求項3】
上記基材フィルムのリタデーション値が70nm以上320nm以下である請求項1又は請求項2に記載の光学ユニット。
【請求項4】
上記基材フィルムを構成するマトリックス樹脂としてポリエチレンテレフタレート又はポリカーボネートが用いられている請求項1、請求項2又は請求項3に記載の光学ユニット。
【請求項5】
上記光学シートが、基材フィルムの一方の面に積層される光学層を有している請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項6】
上記光学層が、複数の光拡散剤とそのバインダーとを有する請求項5に記載の光学ユニット。
【請求項7】
上記光学層が、屈折性を有する微小な凹凸形状を有している請求項5に記載の光学ユニット。
【請求項8】
上記光学シートが、基材フィルムの他方の面に、バインダー中にビーズが分散したスティッキング防止層を有している請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の光学ユニット。
【請求項9】
一対の偏光板間に液晶セルを挟持してなる液晶表示素子と、
この液晶表示素子の裏面側に重設される請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の光学ユニットと、
この光学ユニットの裏面側に重設される面光源の直下型又は対向エッジライト型バックライトと
を備える方形の液晶表示モジュール。
【請求項10】
上記光学ユニットの反射偏光板が液晶表示素子の裏面側偏光板とされている請求項9に記載の液晶表示モジュール。
【請求項11】
上記液晶表示素子とバックライトとの間に他の光学シートを備えており、
この他の光学シートの基材フィルムとして低リタデーションフィルムが使用されている請求項9又は請求項10に記載の液晶表示モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−3514(P2008−3514A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175809(P2006−175809)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(000165088)恵和株式会社 (63)
【Fターム(参考)】