説明

光学共鳴分析ユニット

格子結合表面プラズモン共鳴(SPR)画像形成を実行するために特に適した光学分析ユニットは、SPRセンサなどの静止した目標センサ上に投影された入射光の角度範囲を介して走査することができる旋回光源を特徴とする。照明されたセンサからの反射画像は例えばCCDカメラにより検出され、画像および角走査データは、センサの表面上で進行する反応のリアルタイム分析を提供するために、例えば適合アルゴリズムにより処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により開示が本明細書に組み込まれている2003年8月1日に両件ともに出願された米国特許仮出願第60/492061号明細書および同第60/492062号明細書に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は一般に光学共鳴分析ユニットに関する。特に、本発明は、センサ・アレイの表面上で進行する多数の反応のリアルタイムの分析のための、照明システムおよび検出システムを利用した伝導性格子結合表面プラズモン共鳴画像形成のための改良された機器に関する。
【背景技術】
【0003】
格子結合表面プラズモン共鳴(GCSPR)の動作の基本原理は、特定の波長の光が金属表面に当たると生成される表面電荷振動を利用している。例えば、金などの高反射性金属の薄い(最大80nm)層でコーティングされたプラスチック製光学格子を一般に含むセンサ・チップに、(例えば、抗体などの)特定の結合性分子のアレイが点在されている。このチップが適切な波長、偏光、および、入射角の光により照明されると、光からのエネルギーが金属の電子内に結合して表面プラズモンを励起する際に共鳴状態が引き起こされる。したがって、この共鳴状態は、金属/誘電体界面において金属内の自由電子の伝播発振である。この例において、金属は金層であり、誘電体は、不動化された結合性分子に接触するように金属表面にわたり流された分析されるべき分子を含む水溶液である。表面プラズモンは界面に垂直な電場を有し、この電場に沿って伝播する。プラズモン電場の振幅は界面において最大となり、界面に垂直に指数的に減衰する。誘電体への透過率は励起光の波長に依存し、典型的に100〜300nmの範囲にある。(入射光が表面プラズモン中に結合すると)共鳴状態は入射ビームの反射率の大きな低下により明確にされる。
【0004】
溶液からの分子が金属表面上に堆積された材料に結合するに従い、堆積された材料の屈折率が変化し、続いて、この変化がSPR共鳴角のシフトを引き起こす。SPRはセンサ・チップの表面上での分子結合反応の検出のために使用することができる。なぜなら、SPR共鳴状態は金属/誘電体界面における屈折率に依存するからである。したがって、センサ・チップの表面上での分子結合反応は共鳴状態にシフトを引き起こし、このシフトは、実施手法によっては、波長、入射角、または、強度のシフトとしてモニタすることができる。
【0005】
しかし、多くの試料を並行して測定するための角度走査式アレイ画像形成を採用した現在の格子結合SPR法は、KretchmannのSPR画像形成手法を含む他の角度走査式光学共鳴センサ法と特定の短所を共有している。Kretschmann、Z. Phyzik、241:313−24(1971)を参照されたい。角度走査式アレイSPRに伴う問題の多くは光学系、および、SPRアレイ画像形成がSPR走査に関与した照明角度の範囲を収容するために比較的大きな開口数の画像形成システムを必要とするが、1回の角度走査中の各個別の露光または画像フレームに対しては光が全開口瞳孔の小さな部分に高度に集中されるという事実に関連している。
【0006】
SPR検出分析に対して使用されている従来のレンズ設計は「ウォーキング」または「ROIシフト」として知られている走査角度依存性画像欠陥を露呈し、同欠陥において、センサ・チップ上の分析対象領域(ROI)の画像は、照明角度(入射角)が走査されるに従い、検出器表面を横切って移動する。ウォーキングはフィールドの周辺領域において特に明白である。この効果は、開口角およびフィールド半径の双方に依存する各高次収差の組み合わせによるものであり、物体平面が傾けられると助長される。このような収差は従来の高開口数画像形成システムにおいては一般的であるが、全般に許容されるものであり、全ての開口角が同時に存在する際に単にコントラストまたは解像度の損失を引き起こすのみである。しかし、アレイSPRにおいて、このような収差は深刻な問題を提示する。なぜなら、高度に正確な反射率測定は照明角に応じてセンサ・チップ表面上に慎重に規定された位置で行なわれなければならないからである。いずれの1回の露光に対してもレンズ開口瞳孔の小さな部分のみが使用されるが、採用された部分は角度走査中に開口を横切って移動し、それにより、検出器上の画像位置を変更する。
【0007】
ROIシフト効果は、ROI画像の動きを追跡するように、走査角に応じてROIを含む検出器画素を移動することにより、ソフトウェアにおいてある程度までは補償することができる。ZizlspergerおよびKnoll、Progr.Colloid Polym. Sci.、109:244−253(1998)を参照されたい。しかし、ウォーキング効果に対するこのような事後データ処理補償は、第一に、より正確なデータの生成に対してはさほど好ましくない解決策である。
【0008】
現在のSPRアレイ機器における開口瞳孔の上述の深刻な瞬間的充填不足に伴う別の問題は、様々な光学表面間、特にレンズ要素表面間での多数の反射により引き起こされる「ホット・スポット」または画像フレアの現象である。このような多数の反射は、反射防止コーティングの使用を伴ってさえ全ての多要素屈性性画像形成システムにおいて迷光、および、コントラストの幾分かの損失を引き起こすが、この効果は全般に良性である。しかし、角度走査式SPR画像形成システムにおいては、開口瞳孔の小さな部分における光強度の高度な集中が、検出器表面上の画像フィールドの比較的小さな部分に集中された迷光をもたらす。これらの集中区画が「ホット・スポット」である。さらに、各ホット・スポットは一般に照明角が走査されるに従い画像を横切って移動する。各ホット・スポットの強度は検出器上での直接強度の非常に小さな部分であるが、ホット・スポットは影響を受けるROIに関連した反射率の明らかな低下を大幅に変調することができる。影響を受けたROIは影響を受けていないROIに比較して広範に変化するSPR共鳴角度を有し、このことは、したがって、システムにおける背景雑音の増加をもたらす。
【0009】
文献における他の方法は画像形成を使用しているが、画像形成は走査に依存する擬似信号から損害を被っているか、または、その他では、走査は全体的に回避されている。例えば、ZizlspergerおよびKnoll、infra.は、角度走査がROIのソフトウェア追跡を介して入念に扱われていた巨大なウォーキングをもたらすシステムを説明している。Guedon他は貧弱な画像形成、および、同じく巨大なウォークも示すが、固定角ならびに比較的少なく、かつ、大きなROIの使用を介して補償するシステムを説明している。Guedon他、Anal. Chem.、72:6003−6009(2000)、および、Lyon他、Review of Scientific Instruments、70(4):2076−2081(1999)を参照されたい。別の手法はKnollの特許である米国特許第5442448号明細書の二重格子垂直入射画像形成であるが、このシステムは追加の複雑さを導入する。しかし、固定角システムおよび波長システムは非常に限られたダイナミック・レンジを有し、かつ、光源の強度変動の影響を受けやすい。例えば、前述の技術のいずれも、ソフトウェア補償を使用してさえ、ロゴもしくは他の小さな識別子または指標構造物、あるいは、センサ表面上の小さなROIさえも読むために十分良好な画像を得ることができない。剥き出しの金属センサ表面を示す参照ROIに対する不動化された反応物質を示す目標ROIの比較を伴う目標ROIおよび参照ROIのアレイに対する共鳴角の検出を必要とする本明細書において考えられている如くのシステムにおいて、大きなダイナミック・レンジが必要である。すなわち、広範に変化する共鳴角が検出可能である必要がある。このような応用例は、双方のタイプのROIに影響を及ぼすシステムの変動、例えば、温度、圧力、および、内部屈折率の変化に対して補償するために、目標ROIおよび参照ROIの共鳴角の差し引きを必要とする。
【0010】
Journal of Molecular Structure、509:265−273(1999)においてSteiner他は、検出器CCDチップを傾けることによるSPR画像品質の改善を検討している。静止非垂直入射角SPR画像形成システムに対して見出される単純な焦点ずれに対する補正の目的を達成する一方、同改善は大幅なダイナミック・レンジを有するアレイ・センサに対して必要とされる広い範囲の入射角にわたり画像を収集する際の画像の「ウォーク」の問題に完全には対処しない。Steiner他の機器が連続的には角度走査しなかったが、単一の固定角でのみ画像を収集したため、本出願において説明されている「残存ウォーク」は気付かれないままであった。
【特許文献1】2003年8月1日に両件ともに出願された米国特許仮出願第60/492061号明細書および同第60/492062号明細書
【特許文献2】Knollの特許である米国特許第5442448号明細書
【非特許文献1】Kretschmann、Z. Phyzik、241:313−24(1971)
【非特許文献2】ZizlspergerおよびKnoll、Progr.Colloid Polym. Sci.、109:244−253(1998)
【非特許文献3】ZizlspergerおよびKnoll、infra.
【非特許文献4】Guedon他、Anal. Chem.、72:6003−6009(2000)
【非特許文献5】Lyon他、Review of Scientific Instruments、70(4):2076−2081(1999)
【非特許文献6】Steiner他、Journal of Molecular Structure、509:265−273(1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は当技術分野では以前に知られていなかったこの予期せぬ残存ウォーク効果を説明し、かつ、これに対して補正する最初の発明である。
【0012】
驚いたことに、本発明は、「角度走査補償画像形成」技術の完全なセットを介してこれらの光学上の問題を解決しており、同技術は検出器(CCD)チップの適切な傾斜、ROIシフトを最小に抑えるための画像形成光学系の特別な最適化、補正器板、および、特別な位置合わせ技術を含んでいる。
【0013】
したがって、本発明は格子結合SPR分析の実行に適し、かつ、センサの表面上の分離された何百もの反応領域(すなわち、目標ROI)を有するアレイを同時にモニタために有用な改善された光学共鳴分析機器を目的としている。以下に説明するように、本発明は、上述されたKretschmann型SPR分析に(通常は)依存し、かつ、使用可能な反応座の数、ならびに、測定の正確さおよびダイナミック・レンジが限られた現在の機器に対するいくつかの長所を提供する。
【0014】
加えて、本機器は、格子結合SPRアレイ分析の分野に現存する上述の問題の多くを解決するように設計されており、そのため、同分野における大きな進歩を表す。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明は格子結合表面プラズモン共鳴(GCSPR)における使用のための改善された光学共鳴分析画像形成機器を目的とする。特に、本発明は、センサの表面上での最大何千もの分子結合相互作用のリアルタイムの同時分析の提供に加えて、システムの流体力学、温度制御、センサの走査、ならびに、走査されたセンサからのデータの収集および分析に関与する反応パラメータの制御の改善も提供する多くの特徴を組み合わせている。加えて、本発明は角度走査範囲、角度の正確さ、画像の忠実度を最適化し、かつ、共鳴擬似信号を排除するように設計されている。加えて、本発明は本明細書に説明されている新規な機器を利用するセンサの表面上で発生する反応をモニタするための新規な方法も説明する。
【0016】
本発明の新規な特徴と共に含まれているものは、フィールド全体にわたり像を大幅に改善する一方、ビーム角度が走査されるに従った画像の移動(「ウォーク」または「ROIシフト」)を最小に抑え、このことが、今度は、走査されたセンサ表面の全体的な解像度を大きく改善する新規なリレー・レンズ設計である。この驚くべき像の改善を達成するために、本明細書に説明されている機器が、集積された光学系全体の精密な位置合わせ、特に、以下により詳細に説明されるセンサ、光源、および、(例えば、CCDカメラなどの)検出器の間の位置合わせを通常達成できることが重要である。
【0017】
より詳細には、本発明によれば、システムの構成部分間の相互作用の重要な態様は、カメラ・レンズの焦点位置、検出器とセンサ表面の間の距離、ならびに、センサ表面に関した検出器の傾斜角度を含む。本明細書に説明されている機器の機械的機能は、本光学ユニットの性能を最適化するために要求される必要な調整を共働して実行するような形で相互接続されている。これらの機械的調整は、画像品質を改善し、かつ、光学的画像収差を低減するための機器較正を素早く最適化するために、重要なデータを分析し、かつ、様々なパラメータの迅速な調整を支援するように特別に設計された画像分析ソフトウェアの支援を得て好ましくは実行される。
【0018】
1つの態様において、本発明は完全に収容され、かつ、集積された光学格子結合表面プラズモン共鳴分析ユニットを目的とする。ユニットはセンサを受け入れるように設計された目標領域を備えた支持フレームを含む。1つの実施形態において、センサは、上に何千もの分子結合反応座を同時光学分析のために精密に配列することができる基板として適した格子結合表面プラズモン共鳴チップとすることができる。ユニットは、センサが機械的または手作業のいずれかで目標領域に挿入することができるように設計することができる。
【0019】
本発明はセンサ上に照明を差向けるための光源を含み、続いて、この照明はセンサの表面から、より詳細に以下に説明される新規な検出器組立体に反射される。本発明の各実施形態において、センサは静止に留まり、光源は、光源から外出して反射性センサ上に差向けられる光のビームがセンサに関して複数の角度を介して移動することを可能にするように機器フレーム上に搭載されている。例えば、好ましい実施形態において、光源は、光源から外出する光のビームが複数の角度でセンサに突き当たるようにフレームに旋回可能に固着されている。特に好ましい実施形態において、光源は、光源が円弧状の経路で可動となる方法で収容されたユニットのフレーム上に搭載され、そのため、光源は双方向のパターン、すなわち、正および負の方向で多数の異なった角度から目標領域を照明することができる。センサ表面は、信号雑音の増加につながり得るセンサを横切って移動する強度変動を最小に抑えるために、旋回する光源の光学的頂点に位置決めされている。
【0020】
1つの実施形態において、光源はセンサに差向けられる照明を発生させるための発光ダイオード(LED)組立体を含む。例としてのみ、LED組立体は印刷回路板上に搭載された単一の875nmLEDを含むことができ、かつ、不要な光を遮断するための独立した開口要素を含むことができるが、広範な適したLED波長を含めて、この設計に対しては多くの変形がある。本発明のLEDレンズ組立体は可能な限り点光源を模倣するように設計され、それにより、LEDのダイ自体から外出するいかなる迷光も最小に抑える。この迷光は、よりコリメートされていない光源ビームにつながり得、多数の光源点を引き起こし得、この両者ともに、共鳴幅の増加および、続いて、SPR角雑音の増加をもたらす。LED組立体の前面は、全ての光線を予測可能な経路で開口を介して、かつ、コリメート用レンズ内に差向けるために、この前面を光学的に平坦な表面へとすり合わせ加工することによりドーム形状から有利に修正することができる。
【0021】
加えて、本発明の光源は、光源からセンサ上に突き当たる光の特性を制御および最適化するための光源光学系組立体も含む。1つの実施形態において、光源光学系組立体はレンズ・チューブ内に収容され、かつ、光源から外出する照明をコリメートするために適したレンズ、不要な波長を遮断するための干渉フィルタ、および、P偏光された光を発生するための手段をさらに含む。1つの実施形態において、フィルタ幅は4nmであり、この幅はSPR共鳴のプロファイルの過剰な広がりを防止するために選択され、かつ、コヒーレンス雑音(「スペックル」)も防止する。別の実施形態において、S偏光された光を発生するために第2の偏光フィルタを追加することができ(るか、または、代案として、現行の偏光器を90度回転することができ)、それにより、強度の変化の影響を打ち消すことができる。レンズ・チューブはコリメート用レンズを合焦させるための手段も提供する。
【0022】
別の実施形態において、光源は機器フレームに直接に旋回可能に装着することができるか、または、代案として、旋回アームを介してフレームと接触させることができる。旋回アームはユニットのフレームに旋回可能に装着された支持フレームを含むことができる。この実施形態において、旋回アームは光源を固定するための手段、および、例えばモータなどの旋回アームおよび光源を動かすための駆動手段に光源を接続するための手段を含む。
【0023】
好ましい実施形態において、光源は、光源に直接に装着することができるか、または、ユニットのフレームに固定することができるステップ・モータと接触し、かつ、これにより再位置決めされている。1つの実施形態において、1つの端部において光源に装着され、かつ、モータの行動がアームを前後に駆動し、続いて、光源のビームに、センサ格子の溝に平行な軸についてセンサ表面の中心をほぼ介して旋回させるようにモータと嵌合されている線形アームが線形方向から角度に平行移動することを可能にするために、モータはユニットのフレームに固定され、かつ、線形アームを介して光源と接触している。1つの実施形態において、アームはネジ山を切られており、かつ、モータの回転行動により移動される。
【0024】
代案実施形態において、本明細書に説明されている機器は線形的に走査されるLEDを含むことができ、光源のレンズ系はフレームに堅固に固定することができ、かつ、LEDはモータにより駆動される可動線形スライドに搭載することができる。LEDの動きは、コリメートされた光がセンサに突き当たる角度を変化させる。この実施形態は、所望の範囲の角度を介して光源ビームを再位置決めするために必要なより小さなモータ、LEDが同じダイナミック・レンジを提供するために横切ることを必要とするより短い距離、より小さな質量からの低減された振動、および、同等の走査精度に対するより低いコストを含むいくつかの長所を有する。
【0025】
回転ミラーを利用する別の実施形態において、光源光学系およびLEDはフレーム上に固定することができ、かつ、旋回するミラーに光を当てることができる。この特定の実施形態において、機器はミラーの入射角を精密に制御するための手段を含む。この特定の実施形態の長所は、線形LEDに対しては上記に説明した如くである。
【0026】
さらに別の実施形態において、光源光学系の線形アレイはフレーム上に搭載することができ、かつ、センサを含む目標領域に向けて差向けることができる。光源光学系の幾何学的位置決め、すなわち、センサからの距離および両者の間の間隔は、SPR曲線を確立し、かつ、これに適合させるための十分な数の強度データ点が存在するように、いずれの2つの隣接した光学系間の入射光の最小必要角度を作り出す。光源光学系は、データ収集速度を上昇させるために非常に迅速に順次照明することができる。この系の重要な長所は、この系が固体状態であり、幾何学形状が安定しており、かつ、データ速度の上昇をもたらすことである。
【0027】
追加の変形は、全ての光源光学系を照明させたままに保つこと、および、精密に制御された速度で同光学系上を可動開口を通過させ、それにより、どの光線がセンサ上に突き当たるか、並びに、露光時間を開口が制限することを含む。
【0028】
本発明の1つの実施形態において、光源により発生されたコリメートされた光はある範囲の角度でセンサの表面上に突き当たり、かつ、この表面から、センサからの反射光を受光するように位置決めされた検出器組立体に反射される。1つの実施形態において、検出器はフレームに装着され、かつ、センサ表面から反射された光を受光するように配向されている。反射光は、その範囲の角度を介してセンサが走査する間にセンサの表面上の各ROIにおいて進行する反応に応じて強度を変化させる。各画像フレームに対する信号出力は各ROIに対する2つの値の測定値、(1)検出器により受光され、ROIを含む各検出器画素にわたり合計された反射光の強度、および、(2)反射された強度が角度符号化器により記録された如くに測定された対応入射角、に変換される。各角度走査が完了すると、続いて、集められた情報は、好ましくはEmpirical Profile Fit(経験的プロファイル適合:EPF)アルゴリズムである共鳴認定アルゴリズムに転送される。同適合アルゴリズムでは、各ROIに対して上記に説明されたデータが較正済みSPRプロファイルに適合され、各ROIに対して曲線の最小値の位置が決定される。続いて、これらの共鳴位置は、動作実行の過程にわたり連続角度走査の手段により時間に従って追跡される。本明細書で説明されている新規な機器によるSPR最小値のリアルタイムのモニタリングは、最大何千もの個別のROIの各々においてセンサの表面上で進行している反応に関する重要な情報を提供する。特に、生体分子感知に対して、SPR応答の時間依存性は、センサの表面上のROIの各々において進行している結合および解離の各相互作用を記述する動力学的定数konおよびkoffの算出を可能にする。
【0029】
好ましい実施形態において、本明細書で説明されている新規な検出器は、センサの表面から反射された光を受光するための新規なレンズ組立体、電荷結合素子(CCD)カメラ、および、多数の平面においてカメラ組立体を調整するための多構成部分ジンバル座組立体を含む。本明細書で説明されている新規な検出器組立体は、ROI画像シフト(「ウォーキング」効果)に寄与している画像収差の低減に役立てるためのレンズ組立体における補正板も好ましくは含み、かつ、加えて、強度の変動を引き起こし得る検出器光学系上での蒸着を防止するための受動的寒冷フィンガを含むことができる。
【0030】
特に好ましい実施形態において、レンズ組立体は本明細書で説明されている新規な光学共鳴分析ユニットにおける使用に対して特別に設計されている。詳細には、レンズ組立体は、光源がある範囲の照明角度にわたり走査される間、CCDカメラ上で画像安定性を維持するように特別に設計されている。従来のレンズ系を使用したセンサ分析は、「ウォーキング」、または、角度走査が進行する間にセンサ表面上の目標点(目標ROI)の実際の場所に関して目標点が移動もしくは移行してしまうような外観をもたらす。このことは、目標ROIのみよりも、むしろ参照ROI(剥き出しの金属)を少なくとも部分的に測定することにつながり、続いて、測定雑音の増加に直接につながる。本発明のレンズ組立体はこのROIシフト効果、および、その結果のSPR雑音を低減するように設計され、それにより、センサの表面上で進行している反応のより正確な読取りおよび分析を可能にする。本発明の光学系は、軸を外れた動作、または、物体平面の傾斜の条件下でセンサ表面全体にわたり正確な画像形成を提供するようにさらに構成されている。
【0031】
本明細書で説明されている新規なレンズ系は、SPRセンサ領域全体の画像を(例えば、CCDチップ領域などの)検出器の受像光学感応性領域上に投影するために有利に選択された倍率を持つ単色二重テレセントリック設計を有するセンサ画像形成レンズを含む。本光学系は、任意で、適切に傾けられた物体(センサ)平面および(画像(CCD検出器)平面と共に使用されるよう設計された傾斜補正板を含む。この光学的設計はセンサ窓、水性試料層、および、検出器カメラ窓を完全に考慮している。従来のレンズ設計と異なり、本発明の新規なレンズ組立体は(前述の大きなダイナミック・レンジに対して必要な)照明走査角の範囲全体にわたり、動作波長における画像のウォークを最小に抑えるよう特に設計されている。本レンズ組立体は、無限遠における傾斜物体平面の画像を生成する対物区間を含み、この虚像を取り込み、かつ、二次元検出器表面と一致する同じく傾けられた画像平面上に縮小実像を作成する画像形成区間がその後に続く。光学区間と画像形成区間は部分間の空隙に所在する共通の中間開口平面を共有する。この平面内の対物区間および画像形成区間間にスロット形開口絞りが挟み込まれている。レンズ組立体の新規な態様はさらに以下に詳細に説明される。
【0032】
本発明の光学分析ユニットは、好ましくは、上記に説明した光源の入射角、すなわち、照明がセンサの表面に突き当たる角度を精密に決定するための回転式符号化器も含む。回転式符号化器は、好ましくは、ユニット内に固定され、かつ、センサ表面に関して光源の角度を決定するような形で光源に接触している。続いて、この情報は(例えば、EPFアルゴリズムなどの)共鳴認定アルゴリズムに転送され、同アルゴリズムでは、データが様々な目標点(ROI)に対する較正済みSPR曲線に適合され、曲線の最小値の位置が時間に従って追跡される。好ましい実施形態において、回転式符号化器は旋回シャフト、符号化器筐体、および、符号化器を含む。
【0033】
線形式符号化器は上記に説明された回転式符号化器の代替物として使用することができ、線形式符号化器は、上記に説明された如くの可動光源光学系の位置を追跡するために、線形の単位から角度上の単位への変換を必要とする。別の代案実施形態において、回転式符号化器の代わりに、高度な正確さで角度の変化を直接に決定できるステップ型モータ機構を使用することができる。
【0034】
本発明の光学分析ユニットの追加の各実施形態は、様々な流体試薬溶液および試料溶液をセンサの表面へ、および、そこから搬送するための複雑な流体力学系も含む。本発明の1つの実施形態において、実験的な動作実行に先立ち、本ユニットの流体力学系は系を清掃し、水流洗浄すること、ならびに、系から気泡を一掃することにより準備することができる。この気泡はセンサの表面上で進行する反応ならびに反射された光学的データを正確に集め、かつ、解釈する機器の能力に悪影響を及ぼすことがある。センサとの接触に続き、流体系は、ユーザが流体を廃棄物受け器に差向けることを可能にするよう設計されているか、または、代案として、流体を、センサとの再接触またはユニットからの取出しのいずれかのために、系を介して再差向けすることができる。
【0035】
本発明の1つの好ましい実施形態において、流体力学系は、双方の流体経路を同時に準備する能力、ならびに、(例えば、バッファ溶液に対する)SPR基線が同時に確立されている間に1つの特定の流体回線を準備する能力をユーザに対して可能にするための独立した試料経路およびバッファ経路を含む。したがって、試料は、センサ表面との接触の直前に系に導入することができ、それにより、敏感な試料、特に、例えば、低温無酸素保管などの最適な保管状態から取り出された時に急速に劣化する傾向にある試料の完全性を維持する。
【0036】
加えて、本発明の好ましい流体力学系において、試料経路およびバッファ経路の双方とも、センサに非常に近接して位置決めされている調整可能四方弁につながっている。この弁は試料/バッファの混合を最小に抑えるために機能し、このことは同力学的値の正確な決定に重要である。
【0037】
好ましい流体力学系の追加の特徴は系に進入する試料および系を離れる廃棄物のための接続部として機能する試料注入ステーション(SIS)を含む。この特徴によれば、試料弁体は溶液中に機械的に下げられ、続いて、試料はポンプにより吸い上げられ、かつ、センサ内に注入される。弁体は機械的に、または、手作業で操作することができる。SISは、廃棄するために試料を排出すること、試料を回収すること、または、試料をセンサ領域にわたり再循環させることの選択肢をユーザに与える。本明細書で説明されている如くの試料を再循環させる能力は、ユーザが少ない量の特定の試料しか獲得できない場合に特に有利である。本明細書で説明されているSISの柔軟性は、ユーザが、より様々な試料の系内への自動的注入のための自動サンプラ(例えば、試料バンクまたは円形コンベヤ)に接続することを、任意で可能にすることができる。
【0038】
本明細書で説明されている最も好ましい流体力学系の別の長所は、「オンザフライ」試料ローディングのための能力であり、このローディングは、1つがバッファ溶液を動かし、1つが試料を動かす2つの別個のポンプにより可能となり、バッファが系を介して流れている間にユーザが試料を準備することを可能にする。多くの事例において、本機器を使用して、バッファ溶液が基線を確立するために数分以上にわたり系を介して別個に流れることを可能にすることは有利である。加えて、試料のローディングが時間に依存する場合、例えば、時間と共におよび/または温度の変化と共に劣化する可能性のある敏感な試料のために、試料の準備、混合などとローディングとの間の時間が短いことを要求されている場合において、センサ上への注入および導入のわずか数分前または数秒前さえに、試料が準備され、かつ、ローディングされることを、独立したバッファおよび試料の流体力学的経路が可能にする。上記に説明された如くの試料の再循環は、例えば、特に低いオン速度(すなわち、低い解離定数)を持つ試料に対しても有利である。なぜなら、この再循環は、正確な解離定数konを算出するために十分な応答を観測するための十分な長さの時間にわたり、試料が系を介して(再)周回し続けることを可能にするからである。
【0039】
加えて、もし反応が緩慢に進行すれば、再循環は、少量の試料がセンサ表面と継続的に再接触できることにおいて特に有利であるのに対して、もしこの選択肢が利用可能でなければ、ユーザははるかに大量の試料を獲得しなければならず、このことは、不可能でないとしても、困難となる、または、恐らく費用がかかる可能性がある。したがって、再循環試料のこの「無限供給」は、非常に緩慢または大量の搬送に制限のある反応のモニタリングを可能にするために、接触時間および流速の双方において十分な柔軟性を提供する。
【0040】
四方弁の使用は本発明の流体力学系において特に有利である。なぜなら、(1)系が同時に流れ、かつ、試料注入のために準備するため、四方弁がバッファおよび試料の濃度の完全性を維持し、(2)四方弁の位置、すなわち、センサにすぐ隣接している位置がバッファ/試料界面のいかなる混合も最小に抑えるからである。
【0041】
本発明の流体力学系はシリンジ・ポンプにより駆動される「気泡破裂」高速パルス化流も含む。(新しいセンサ・チップを含む)新しいフロー・セルを動作させると、バッファで満たした後にセルの隙間内に気泡が残るのが一般的である。気泡は、試料の切換え中および他の流体搬送動作中に偶発的に導入されることがある。これらの気泡は影響を受けたROI上の結合反応の正確な測定を妨害し、かつ、除去されなければならない。この除去は、特に、本発明の技術分野において一般的であるように、センサを含むフロー・セルの寸法が低減された場合に困難となり得る。臨界排斥流速(CDF)を超えた非常に大きな流体流速の短時間の印加がフロー・セル表面における湿潤張力の不均一性により、または、幾何学的形状の不連続により捕えられた気泡を除去できることが実証されている。
【0042】
本発明においては、大きな流量のパルスの多数の印加が、1つの「粘着」場所から次の「粘着」場所に気泡が移動する間に気泡を排除するために、通常必要であることが決定されている。フロー・セルからいずれの気泡も除去するために、流体力学系は、小流量インピーダンス流体流路を例えば介してセンサ・セルに「気泡破裂」、または、一連の高流速パルスを印加するために使用することができる容積式ポンプ(シリンジ・ポンプ)を組み込んでいる。加えて、気泡に対するリアルタイムのモニタリングは流体力学的動作を中断することができ、かつ、蓄積する可能性のあるいずれの気泡も「破裂」させることができる。
【0043】
系の安定性を維持するために、ならびに、センサの表面上で進行している結合反応に関する正確かつ一貫したデータを生成するために、本発明によれば、センサを取り巻く雰囲気温度、ならびに、センサ自体、特に分析中の結合反応が進行するセンサ表面を制御するために、ユーザが、センサと接触する試料および溶液の温度に対する幾分かの制御を実施する能力を有することは特に有利である。加えて、ユーザが、雰囲気温度より上および下の双方の様々な温度で実験を行なうことを可能にすることが望ましい。上述の温度制御を容易にするために、本発明のユニットは、センサが所在する目標領域を収容し、かつ、上述の流体力学系の少なくとも一部を収容する保温室を有利に含むことができる。好ましい実施形態において、保温室は、循環ファンを含む比例積分導関数(PID)制御熱電素子モジュール、ヒートシンク、熱フューズおよび、センサを含む。保温室は、好ましくは、保温室内の熱定安定性を維持する断熱発泡剤で裏打ちされている。この断熱材は、環境または機器の動作により引き起こされることのある温度の変動に対して、センサ領域、化学反応、および、入来流体を保護する。保温室に同じく好ましく含まれるものは、入来流体の熱的安定性を維持するための受動的予備加熱器である。これらの受動的予備加熱器は、閉鎖環境内で空気を循環すること、および、流体力学配管の壁を介して伝導により流体へ、または、流体から熱を搬送することを介して、保温室の温度を緊密に追跡する。降温装置の成型材料は配管と予備加熱器の間の小さな隙間を充填するために塗布されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明は、反応座のアレイの同時測定が可能な格子結合表面プラズモン共鳴(GCSPR)に特における使用のための改善された光学共鳴分析機器を目的とする。特に、本発明は、最大何千もの分子結合相互作用のリアルタイムの分析を可能にすることに加えて、システムの流体力学、温度制御、センサの走査、ならびに、走査されたセンサからのデータの収集および分析に関与する反応パラメータの制御の改善も提供する多くの特徴を組み合わせている。
【0045】
分析ユニットは完全に自動化することができ、かつ、ユニットと共に含まれるソフトウェアにより自動的に制御および実施される全ての光学的走査動作を有する。基本的に、バッファ、試料、および、センサがユニット内に一旦ローディングされれば、ユーザは実験に関するパラメータ、例えば、時間、温度、流体流速などをユニットに接続されたコンピュータに入力することができ、ユニットは検定および分析の全体を即時または設定時刻のいずれかに実行するようにプログラムすることができ、かつ、検定が進行するに従い結合のリアルタイムのデータを提供することができる。
【0046】
特に、本発明は完全に集積された光学格子結合表面プラズモン共鳴分析ユニットを目的とする。図面を参照して以下に本発明の特に好ましい実施形態が説明される。しかし、説明される設計の特徴が特定の目的に対して改変または修正できること、および、本明細書で説明されている分析ユニットの多くの代案実施形態の生産がこの開示を考慮して可能であることは即座に理解されよう。全てのそのような改変、修正、および、追加の実施形態は本明細書で考慮されており、かつ、この説明および従属する特許請求の範囲の範囲内に該当することが意図されている。以下の説明は、いかなる形でも本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【0047】
図1はユーザが接触する必要のあるユニット自体の各部のみ、すなわち、バッファ/試薬瓶(50)、試料チューブ(40)、および、センサ(または、フロー・セル)ローディング・ドア(110)を含む本発明の1つの実施形態を示す。他の全ての機能は自動になっており、かつ、コンピュータを介してユーザにより入力されたパラメータおよび指示を使用してコンピュータ・プログラムにより制御される。
【0048】
図2を参照すると、ユニットはユニット内に収容された支持フレーム(70)を含み、かつ、センサ・ローディング・ドア(110)を介して(センサを含むフロー・セルなどの)センサ・ユニットを収容するように設計された(図示されていない)目標領域を含む。1つの実施形態において、センサ・ユニットは様々な分子結合相互反応を伝導および分析するために適した格子結合表面プラズモン共鳴(GCSPR)チップを含むことができる。典型的なフロー・セルはセンサ・チップが配置された反応領域、各溶液(バッファ、試薬溶液、試料溶液など)を反応領域を横切って流れるように導入することができる反応領域の1つの端部に隣接した入力ポート、および、反応領域からの流動流体溶液を回収されるべきセンサ・チップから離れるように差向け、廃棄するために排出し、または、センサとの追加の接触のために入力ポートを介して再循環することができる、入力ポートから反応領域の反対側にある端部に隣接した出力ポートを含む。入力ポートおよび出力ポートは、分析ユニット内へのフロー・セルの挿入の時点で、両ポートが分析ユニットの内部流体力学系との接点となり、それにより、ユニットに含まれている試料コンテナならびに他の流体貯蔵槽および受け器との連絡を確立するように構成されている。
【0049】
加えて、図2は本発明に関連する多くの構造体の関係を示す。特に、図2は旋回する光源組立体(10)、検出組立体(20)、内部流体力学系の蠕動ポンプ(62)、および、センサを収容している目標領域を収容する保温室組立体(30)を示す。センサがユニット内に一旦ローディングされれば、光源(10)は(図示されていない)センサ上に光のビームを差向ける。好ましい実施形態において、センサは、ユニットの照明および反射の検出組立体により走査することができる目標ROIのアレイが押印または堆積された反射性の金の表面を有する格子結合SPRチップである。ROIは、試料溶液中の検体と相互作用が可能な(例えば、抗体、アプタマー、一本鎖DNA分子などの)結合半体の濃縮から作成されている。フロー・セルおよび流体力学系はそのようなROIを支持するセンサの表面を横切る流れによりこのような溶液を導入するように、ならびに、光源から照明を受光し、かつ、センサ画像を検出器組立体に向けて反射するために静止した目標位置に同時に存在するように設計され、検出器組立体は、リアルタイムで、センサの表面上で発生している結合または他の化学反応事象を示す光学データを出力する。
【0050】
再び図2を参照すると、特に好ましい実施形態において、光源組立体(10)はユニットのフレーム(70)に旋回可能に装着されている。旋回性の装着は、光源からの光ビームが、目標領域に関してある範囲の角度を介して動くことを可能にする。代案として、光源は、それ自体がフレームに旋回可能に装着されている構造体に装着することができる。光源組立体(10)の自動旋回は、例えば、光源組立体上のステップ・モータ(12)の動きにより影響を受ける光ビーム角の変化を正確に記録することができるユニットのフレームに装着されたステップ・モータ(12)により達成される。
【0051】
一旦センサが所定の位置に置かれ、かつ、動作が開始すれば、光源は光のビームをセンサ上に、所定の角度で開始し、かつ、ある範囲の角度にわたり円弧状の経路またはパターンで継続して差向ける。センサの表面から反射された光は、レンズ組立体(22)およびCCDカメラなどの検出器(24)を含む静止検出器ユニット(20)に向けて差向けられる。
【0052】
図3は本発明の分析ユニットの基本的要素の斜視立面図である。特に、図3は、周囲で旋回可能アーム(9)が回転可能なシャフト(15)に装着された旋回アーム(9)を介して装着された光源組立体(10)を示す。シャフト(15)は、光源組立体全体が円弧状の経路で移動できるように(図示されていない)ユニット・フレームに装着される。光源の角度に関する位置の変化に関するデータは、光源の装着の旋回点において含むことができる回転式符号化器組立体(120)などの何らかのタイプの角位置符号化器により報告される。符号化された角位置データは、検出器(24)により受信された共鳴のデータと共にコンピュータに対して出力され、コンピュータは共鳴認定アルゴリズムを適用し、かつ、センサ表面上で発生している現象に関して報告する。好ましくは、SPRデータに対して、ユニットは、2003年8月1日に出願の同時係属かつ共通譲渡の米国特許仮出願第60/492061号明細書に説明されている如くのSPR曲線決定のためのEPFアルゴリズムを利用する。
【0053】
図3に示された実施形態において、旋回可能光源アーム(9)はステップ・モータ(12)により駆動されている。モータはユニットのフレームに固定することができ、かつ、光源または旋回可能光源アームと噛み合うための手段を含む。代案実施形態において、ステップ・モータは光源または旋回可能光源アームに装着することができ、かつ、静止フレームと噛み合うための手段を装備することができる。図3に示された実施形態において、ステップ・モータはユニットのフレームに固定され、線形スライド機構(14)を介して旋回可能光源アーム(9)に1つの端部で装着され、かつ、反対側の端部でステップ・モータと噛み合っている線形アーム(16)を介して、旋回可能光源アーム(9)と、したがって、光源組立体(10)と接触している。モータが動作されると、線形アームは前方または後方に駆動され、それにより、センサ(112)に関して様々な角度に光源を位置決めする。線形アーム(16)は平滑とすることができるか、または、ネジ山を切ることができ、この場合、ステップ・モータはネジ山を切られたアームを受け入れるための手段を含み、かつ、線形アームを回転型の動きに動作させる。サーボ・モータおよび磁気駆動システムを含めた他の様々な方法も採用することができる。
【0054】
図3に示された実施形態において、ステップ・モータ(12)は自身の動作により引き起こされた入射光角度(Δθ)の変化を正確に記録することができる。代案として、旋回可能に搭載された光源組立体は光源の角度の変化の正確な報告のための回転式符号化器を装備することができる。続いて、角度のデータが、検出器カメラ(24)からの反射強度のデータと共に、既に説明した如くの共鳴認定アルゴリズムに送られる。好ましい実施形態において、符号化器は旋回シャフト(15)を介して旋回光源アーム(9)に装着され、かつ、符号化器筐体(120)内に搭載されたベアリングにより支持されている。1つの分析から次の分析への一貫した角度の読みを確実にするために、回転式符号化器は各分析の開始において参照点を精密に決定するための内蔵式索引付けマークを含む。
【0055】
図4は本発明の旋回可能光源アーム(9)を含む光源組立体(10)の1つの実施形態の詳細な図を示す。アームは、アームをユニットに旋回可能に固定するための基部板(18)、光源をフレーム(19)に固定するための手段、光源組立体(10)の回転運動を動作に作動する静止モータに組立体(10)を接続するための線形スライド(14)を含む。線形ローラ・ベアリング(17)が示され、これらはフレームに関する組立体の非振動性の動きを確保するために含むことができる。
【0056】
動作において、モータ(図3の12)は(照明)光源をセンサ(112)を越えて円弧状の経路またはパターンで動かし、このことは、センサ(112)に当たる照明の角度を連続的に変化させる。このように、光源の角度を変化させることはセンサに当たる入射光の角度を変化させる。センサは、光源が自身の角度範囲を介して動かされる間、光のコリメートされたビームがチップ表面上の1つの位置に固定されて留まるように、光源の角度範囲の光学的頂点に設置されている。このことは、コリメートされたビーム強度のいかなる空間的不均一性も、入射角が走査される間、センサ表面上に不動にされた分析対象領域(ROI)に関して実質的に固定されたまま留まり、かつ、共鳴の偽の明白な角度シフトにつながることがある測定された共鳴のプロファイルの歪を形成しないことを確実にするうえでセンサが役立つことにおいて、本発明においては特に有利である。
【0057】
代案実施形態において、光源自体はユニットのフレームに直接に旋回可能に装着することができる。別の実施形態において、光源組立体の旋回点(図3の15)はモータまたは他の回転作動手段の位置とすることができる。
【0058】
図4に見られるように、光源組立体(10)はセンサに差向けられている照明を発生するためのLED組立体(11)などの光源を含む。1つの実施形態において、LED組立体は印刷回路板上に搭載された単一875nmLEDを含み、不要の光を遮断するための(図示されていない)別個の開口要素をさらに含む。しかし、単一波長光源(または、狭帯域波長光源)は重要ではなく、ある範囲の波長が本明細書で考慮されているSPR分析を実行するために適している。LED筐体のための調整機構は、好ましくは、コリメートされた光源ビームの2度の横方向オフセット角を発生するために必要とされる軸から離れた位置に光源を位置合わせするために、好ましくは含まれている。LEDを包み込むいかなるプラスチック筐体も、好ましくは、LEDのダイの前の余剰なプラスチックおよび表面欠陥を除去するために、平坦にヤスリをかけられ、かつ、高度に研磨されている。このことは正確なコリメートを可能にし、かつ、プラスチック製表面の欠陥により引き起こされた光のいかなる散乱も最小に抑える。発明者は、多くの市販LEDを包み込んでいるプラスチックの上の元の球形表面が通常の応用例においてはLEDビームを差向けるための低品質レンズとして機能するが、このような設計は、ビームのコリメートを劣化させることによりSPR系における共鳴プロファイルの鋭さに大幅に干渉することを発見した。LEDのプラスチック製筐体を光学的に平坦化することは、SPR雑音を大幅に、かつ、驚くほどに低減した。したがって、光学的に平坦な外装を提示すことは、プラスチック製被包のないLEDを調達するために、または、平坦な被包を持つLEDを得るために、または、得られたLEDの被包を研削するためにLED光源を使用する時に最も好ましい。
【0059】
図4に見られるように、光源は、センサの表面に差向けられているLEDにより発生された光の特性を最適化するための光源光学系組立体(13)も含む。1つの実施形態において、光源光学系組立体はレンズ・チューブ(13)に収容され、かつ、LEDダイの発光領域の寸法によってのみ制限された程度まで光をコリメートするための球面収差補正済みレンズをさらに含む。光源光学系組立体は不要な波長を遮断するための干渉フィルタ、および、センサに入射するP偏光を供給するために配向された(図示されていない)近赤外線形偏光器を典型的にさらに含む。従来の複合二重型色消しレンズは、この応用例に対して十分な球面収差補正を提供する。レンズ・チューブは、LEDにより発生された光のコリメートを最適化するためにコリメート・レンズを合焦させるための手段も提供する。
【0060】
本発明の好ましい実施形態において、光源ビームは(例えば、本発明の試作機器の規模で約2.3nmの)短い距離だけ光学系の中心線からずれており、このことは約2度の角度上のビームのスキューをもたらす。このずれは、機器内の様々な光学表面から反射する光により引き起こされるいずれのゴースト反射も低減するために使用されている。特に、非順次光線追跡分析は、検出器平面内の迷光の集中した各点(以下にさらに詳細に検討される「ホット・スポット」)が、光学系組立体内、特に検出器組立体の画像形成レンズ内の様々な対の光学表面間で発生する二重反射の複数のセットの結果である得ることを実証している。これらのホット・スポットは、SPR角が走査の過程にわたり変化するに従い移動し、特定のROIにおけるSPR共鳴の形状への追加の歪をもたらし、かつ、そのため、SPR分析の不正確さをもたらす。
【0061】
本発明の好ましい光学系はホット・スポットまたは画像フレアの発生を最小に抑えるための3つの特徴の1つまたは組み合わせを含む。すなわち、(1)(以下に説明される)検出器組立体の画像形成レンズ組立体内の全てのレンズ表面が光源の動作波長、すなわち、好ましい単一波長実施形態において875nmに調整された高効率多層反射防止コーティングでコーティングされている、(2)本発明の新規な態様として、軸をはずれた横方向ビーム・スキュー、すなわち、上記に説明された光源のずれ、および、(3)横方向ビーム・スキューと組み合わせられた、画像形成レンズ内の軸からずれたスロット形開口絞り、である。これらの特徴は従来技術の系において知られているホット・スポットを大幅に低減することが見出されている。
【0062】
上記に述べられたように、本発明の光学分析ユニットは光源の位置、および、したがって、照明がセンサの表面上に突き当たっている角度を精密に報告するための(図示されていない)精密回転符号化器も含むことができる。1つの実施形態において、回転符号化器はユニットのフレームに搭載され、かつ、フレームへの装着の回転符号化器の旋回可能点において光源組立体に装着されている。好ましい実施形態において、回転符号化器は旋回シャフト、符号化器筐体、および、符号化器を含む。回転符号化器は、光源の角度に関するデータを、各カメラ画像に対応する送信中の光源の角位置を解釈するようにプログラムされたコンピュータに報告する。各全角走査に対するこの角度データおよびカメラ画像データは、センサ・チップ上の各ROIにおけるSPR共鳴角のリアルタイムの決定のための適切なアルゴリズムに入力される。
【0063】
図2に見られるように、本発明の光学分析ユニットは、反応がアレイ・センサの表面上で進行するに従い、最大何千もの反応座またはROIの各々における光学共鳴角の変化を測定するために、センサの表面から反射された光を受光するため、および、その光を分析するための検出器組立体(20)を含む。
【0064】
図5は本発明による分析ユニットに適した検出器組立体(20)の断面図である。好ましい実施形態において、検出器は、センサ(図3および6の112)の表面から反射された照明を受光するための開口(130)を含む画像レンズ組立体(22)、多数の自由度で検出器組立体を調整するための内部(23)、中央(25)、および、外部(27)のジンバル座組立体、検出器内に搭載された(図示されていない)CCDチップなどの光学感応性感知要素を含む単色電荷結合素子(CCD)カメラ(24)などの検出器、上記に説明されたウォーキング効果に伴う収差を低減するための補正器板(21)、(例えば、CCDカメラ内のCCDチップなどの)検出器感知要素の保護のための、かつ、感知要素に不活性雰囲気を供給することによりカメラの周辺以下の温度での動作を可能にするためのCCD窓(28)、ならびに、周辺よりも冷たくすることができるCCD窓(28)上の核形成座における発生から汚染物質蒸気の凝結を低減するための受動的寒冷フィンガ(26)を含む。このような凝結点は、存在すれば、光を散乱し、かつ、影響を受けるROIにおいて走査角度依存の信号変動を持ち込む。
【0065】
好ましい検出器は(a)動作波長において適切な量子効率を有し、(b)(検出器が冷却される必要があってもなくても)暗信号のずれおよび応答の恒常性に対して好ましくは温度が安定されており、(c)通常のSPR測定条件下での信号が実質的にフォトン・ショット雑音が制限されるように、十分に低い暗雑音および読み出し雑音、ならびに、十分なアナログ/デジタル変換器(ADC)分解能、(d)センサ目標ROIを明確に解像するために十分な数の画素を有し、(e)角走査速度に追従するために十分速く読み出されることができ、かつ、(f)前述のショット雑音を最小に抑えるために可能な限り大きな画素ウェル電子容量を有するように選択されたCCDカメラである。より詳細には、画素数および画素ウェル容量は、ROI画像を構成する画素の全ての総結合電荷容量を最大化するために選択されるべきである。この好ましい実施形態はCCDカメラを使用するが、CMOSカメラなどの他の固体アレイ・カメラも検出器として採用することができる。
【0066】
センサの表面から反射された照明のデータの収集および分析を最適化するためには、検出器組立体が、特別に補正された大開口数二重テレセントリック・レンズ系を利用することが好ましい。「テレセントリック」とは、物体平面または画像平面から見られると、レンズ開口絞りが無限遠にあることを指す。言い換えれば、物体平面(または、画像平面)上の全ての点からのアクセプタンス円錐が同じ方向を指している、すなわち、円錐の軸が平行となることである。「二重テレセントリック」とは、このことが、物体側(センサ・チップ)および画像側(検出器感知要素)の双方に対して真実であることを意味する。テレセントリック性は不可欠ではないが、本発明において、特に物体側では非常に有利である。なぜなら、アレイ上の全てのROIの歪んでいない画像が走査角度範囲の全体にわたり利用可能でなければならないからである。テレセントリック設計を使用して、レンズ開口は物体平面内のどこでも同じ形で入射角に直接にマッピングでき、レンズの開口絞りの完全な広がりは全てのフィールド点における角走査範囲を収容するために(すなわち、センサ・チップの表面全体にわたり)使用することができる。上記に述べられたように、本発明に関した二重テレセントリックは検出器においてもテレセントリック性を示し、かつ、本発明において有利である。なぜなら、同二重テレセントリック性が、検出器感知要素(CCDチップ)上の入射角の極端なものを最小に抑え、かつ、極端な走査角度における異なったROI間での検出器感度の大きな変化を回避するうえで役立つからである。本発明において、二重テレセントリック性はレンズ系の各半体を別個にテレセントリックにすることにより達成され、それにより、中間開口絞り、すなわち、スロットは、物体空間(センサ・チップ)および画像空間(CCDチップ)の双方から見られた場合に無限遠にあるように見える。
【0067】
この特別なレンズ系は、横方向倍率が選択されたCCDチップの面積に対するSPRセンサ・チップ活性幅に適合するように設計され、かつ、ほぼ10度(物体側の開口数0.10)の走査角度範囲にわたり、センサ・フィールド全体にわたり画像の動き(ROIシフト)を最小に抑えるように特に最適化されていた。この最適化は、干渉フィルタの4nmの半値全幅(FWHM)により決定された如くの採用された狭波長範囲も考慮している。必要な限られたスペクトル帯域幅は色収差の制御に対する必要性を排除し、このことは、全ての要素に対する単一高屈折率ガラス・タイプの使用を可能にし、したがって、費用を低減する。結果として得られる残存色収差は大きくない。このことは特に有利である。なぜなら、設計の自由度は消費されず、色収差および歪に対して制御するからである。同じく、単一のガラスが色補正済みの系においては多数のガラスの平均屈折率より大きな屈折率を有することができるため、ROIシフト収差を制御するためには、より少ないレンズ要素が必要である。事実、双方の要求(すなわち、ROIシフトの排除および広帯域色補正)が、同等のレンズ設計においていかなる合理的な費用においても達成できることは明白でない。当然、通常は色収差のない市販のテレセントリックCCDレンズは、本発明を使用して達成されたウォークの要件には近づいていない。
【0068】
図6は本発明の検出器組立体内の新規なレンズ系を含む様々な要素の図を表す。図6に示された実施形態において、目標領域センサ(112)と検出器感知要素(113)の間に位置決めされたレンズ組立体は、屈折性要素121〜124で作成された対物区間(120)、スロット開口(130)、屈折性要素126〜129で作成された画像形成区間(125)、補正器板(21)、および、検出器窓(28)を含む。図5を参照して上記に説明された受動的寒冷フィンガ要素の相対位置は、図6の要素26により示されている。図6は光が(図示されていない)光源からセンサ・チップ(112)上に突き当たり、続いて、レンズ光学系(120、125)、スロット開口(130)、および、補正器板(21)を介してセンサに反射されセンサを離れ、検出器窓(28)を介して検出器感知要素(113)上に反射される間の光の経路(点線)も示す。
【0069】
この特別なレンズ組立体設計は特に有利である。なぜなら、標準的な「市販品」のレンズ系および従来のテレセントリック・レンズ設計は、角度の範囲を介して旋回アームが走査する間、CCDカメラ上で適切な画像安定性を維持することができないからであり、これを維持することは本明細書に説明されている光学分析ユニットの最適な性能に対して不可欠である。上記に概説されたように、カメラは、分析されるべき目標に対応するセンサ上の分析対象領域(ROI)を識別する。従来のレンズ系におけるフィールド・サイズおよび開口サイズの双方に依存する高次収差により、センサ上に固定されたROIの光学画像は、照明角度が走査されている間、検出器表面を横切って移動または「ウォーク」し、測定雑音の増加につながる。このことは、特に、軸をはずれたフィールド点において、および、レンズ軸から大きな走査角度偏差において起こる。従来の如く照明された系において、この場合におけるような小さな点状区画よりも、むしろ全開口絞りが照明されている場合に、責任のある収差はフィールドの曲率、非点収差、および、コマ収差を含む。重要なことに、物体フィールドの傾斜(例えば、ここで好ましい構成においては通常21度)およびScheimpflugの原理により結果的に得られる画像平面の傾斜が、測定雑音の低減の困難さに加わる。しかし、角走査SPRにおいては、上記に述べられたこれらの収差の分類は直接に適用可能または有用ではなく、入射角に応じた画像シフトの数値上の最小化が設計手順において必要とされる。単純な歪などのフィールド半径および開口角の双方には依存しない収差がSPRの結果に通常は影響を及ぼさないことに注意されたい。
【0070】
上記に説明された二重テレセントリック・レンズ組立体は、本明細書に説明されたウォーキングの問題を解決するために特別に設計および最適化され、かつ、特別に構成された開口絞りが間に挟みこまれた、各々が高効率多層反射防止コーティングを有する4つの要素を、各々が含む対物区間および画像形成区間を含む。最も好ましい実施形態におけるレンズ組立体の軌道長は272mmである。
【0071】
二重テレセントリック設計は大きな角走査範囲(10度の機械的な総移動量に対して±5度)を収容する一方、対物および画像形成の双方の区間においてガラス要素の直径を最小に抑える。(図6を参照。)要素の直径を制限し続けることは、続いて、レンズの費用および重量を低減し、かつ、収差の制御を容易にする。
【0072】
図6に示されたように、スロット形状の開口(130)が従来の円形開口絞りの代わりに選択された。レンズは(画像空間における0.18に対応する)物体空間における0.10の開口数(NA)の円形開口全体の使用を可能にするために十分に良好に補正されているが、本明細書において説明されたSPRの応用例は開口全体の使用は必要としない。したがって、開口は、センサおよび他の表面からの拡散散乱により引き起こされた迷光を低減するように、かつ、多数の鏡面反射による残存「ホット・スポット」を排除するように、好ましくは設計されている。開口は、(a)センサ表面上にROI点を堆積する際に印刷可能な領域の正確な位置を決定するために役立つことにより使用可能性を高めるように、かつ、(b)自動点発見アルゴリズムが採用されている際に点自体の位置を決定するための参照位置として機能するように設計されたセンサ上の基準マークの空間的分解能の上昇も可能にする。
【0073】
いずれの1つのセンサ照明角度においても、センサ表面から反射されたゼロ次光は開口平面において比較的小さな点を占有し、そのため、瞬間的な開口は現在の走査角度に中心を置く小さな円に原則的に限定される。この円は(1)光源の有限のコリメート角を包含するため、かつ、より重要なことに、(2)小さなROI区画の、ならびに、基準マークおよび同マークにエッチングされた、または、その他でセンサ表面上に配置された識別文などのセンサ・チップ補助構造物の忠実な画像形成を妨害することがある画像解像度の過剰な回折ぶれを回避するために十分大きくする必要がある。この必要な円形開口区画が角走査中に開口平面を横切って線形的に移動することにより、好ましい合成最小値開口は細長いスロットの形態を取る。スロットの長さは所望の角SPR走査長により決定される一方、スロットの幅は画像内の回折擬似信号を最小に抑えるように選択されている。
【0074】
したがって、図6に見られるように、本発明の新規な開口絞りは好ましくは丸い、または、四角形の端部を持つスロットの形態となっている。この改善は、レンズ開口の不要な部分に対応する角度における拡散した散乱光を排除することにより、迷光背景を最小に抑え、かつ、明白なSPR共鳴の深さを増大する。典型的な開口幅および長さは物体空間においてそれぞれ約3度および13度に対応する。好ましくは、光源のずれを適合し、かつ、上記に検討された如くの多反射ホット・スポットを排除するために採用された横方向ビーム・スキューを収容するために、スロット開口は横方向に2度ずれているか、または、光軸から約2mmずれている。加えて、ホット・スポットはレンズ要素上の多層反射防止コーティングにより部分的に支持することができる。スロット開口は所定の場所に固定、または、光学的位置合わせの手順での便宜のために取外し可能のいずれかとすることができる。
【0075】
図6に示されたように、SPR中央角、すなわち、光源からの照明が走査中央でセンサ・チップの表面に当たる角度は、センサ・チップの表面で約21度である。したがって、レンズの軸は、この角度に中心を置く角走査範囲を最良に収容するためにチップ表面に垂直から21度の角度に設定されている。フィールド全体にわたる最良の画像品質のために、検出器表面は、示されたように、レンズの軸に対して約12度傾けられている。精密な角度は光線追跡の最適化により選択され、かつ、ウォーク最小化基準を使用して調整されるが、よく知られているScheimpflug条件によりほぼ与えられる。
【0076】
本発明によれば、フィールド全体、すなわち、センサ・チップ上の全てのROIにわたり画像品質をさらに最適化するために、残存ROI画像シフト、および、フィールドおよび画像平面の傾斜からもたらされる他の収差、すなわち、21度のセンサの通常傾斜および12度の検出器要素の通常傾斜は、約20度の角度で傾けられた約1mmの厚さの平坦なガラス補正器板(21)により追加的に補償されている。この板は画像品質およびウォーク性能の幾分かの劣化を伴って省くことができるが、好ましくは含まれている。本発明の動作実施形態において、横方向倍率は、センサ・チップ幅をCCDのチップ寸法に適合させるために0.57である。フィールドの傾斜により、縦方向倍率はこれより低く、約0.53である。
【0077】
同じく、図5に見られるように、かつ、図6に位置が示されたように、本発明のレンズ組立体は、データ分析にために検出器組立体の感度を高めるための受動的寒冷フィンガ(26)を好ましくは含む。詳細には、検出器窓(28)と補正器板(21)の間の空隙におけるより暖かい表面により脱気された空中浮遊汚染物質蒸気は、普通は検出器窓である最も寒冷な表面に対して吸引される。検出器窓または補正器板上に不均一に蒸着することは、SPR信号の雑音およびドリフトの増加につながる強度の変動を引き起こす。この問題を解決するために、高伝導率金属、例えば銅で作成された受動的寒冷フィンガは空隙の外の大きな熱質量に接続され、かつ、雰囲気温度を維持するように設計され、フィンガが空隙内での最も寒冷な物体であり、かつ、それにより、検出器窓または補正器板上に吸引および堆積されるべき蒸気から離れるよりも、むしろ蒸気をフィンガに引き寄せることを確実にする。
【0078】
図5に見られるように、多数の軸の周囲および同軸に沿った検出器組立体(20)の位置または向きは、多数のジンバル座、すなわち、検出器組立体に固定された内部ジンバル座(23)、内部ジンバル座に固定された中央ジンバル座(25)、および、ユニットのフレームに固定された外部(27)ジンバル座の使用を介して調整することができる。詳細には、ジンバル座は、6つの方向(X、Y、Z(図6を参照)、ρ、σ、および、φ)においてセンサを持つ検出器(24)内の画像記録検出器感知要素を位置合わせするために使用される。この位置合わせは、検出器感知要素(例えば、CCDカメラ・チップ)の活性領域を、光学系により形成されたセンサ・アレイの拡大され、かつ、傾けられた画像と精密に一致させるために必要である。X軸またはY軸に沿った向きは内部ジンバル座に関してカメラを移動させることにより調整される。Z軸(すなわち、レンズ組立体の光軸)に沿った向きは、センサの位置に関して検出器の位置を揺らせることにより達成される。X軸の周囲の回転ρは内部ジンバル座により調整され、Y軸の周囲の回転σは中央ジンバル座により調整され、かつ、Z軸の周囲の回転φは、内部ジンバルに関して検出器の位置を調整することにより、検出器組立体を、例えばセンサの平面に関して回転させることにより調整される。最も好ましい実施形態において、レンズ組立体は検出器とは独立に調整可能であり、検出器感知要素に到達する反射センサ画像の微調整を可能にする。
【0079】
ジンバル座は、センサ反射と検出器感知要素により受光された画像の間の適合を最適化するために検出器組立体の向きを調整するために有用である。この対応が一旦最適化されれば、検出器組立体はセンサを収容する目標領域の位置に関して静止させられる。したがって、走査動作において、光源のみが動くこと(すなわち、センサに突き当たる入射光の角度の変更)が可能であり、センサおよび検出器組立体は実質的に静止、または、可能な限り静止に留まる。一旦調整されれば、検出器組立体は固定化ネジを例えば使用してロックまたは固定化され、目標領域の設計は、フロー・セルが光源からの入射照明を反射するための正しい位置に、かつ、分析ユニット内に組み込まれたいずれの流体力学系とも接点となるための正しい位置に固定化されるようなものになる。可動光源に関したセンサおよび検出器の固定化は、動作中の光源の位置と検出器の位置を調整する必要性を回避し、かつ、データ収集後データ処理において補償アルゴリズムを使用して画像経路の変動に対して補償する必要性を回避する。
【0080】
図2に部分的に見られるように、本発明の機器は試薬および試料をセンサの表面に差向けるための複雑な流体力学系(60)も含むことができる。図7に示された好ましい実施形態において、試薬および試料がセンサと接触した後、流体力学系は、ユーザが、任意のセンサ領域(112)への再循環またはユニットからの取出しのために、センサ(112)を含むフロー・セルに存在する流体を廃棄物受け器(63)に、もしくは、代わりに、回収容器(64)に差向け、または試料貯蔵槽(40)に差向け戻すことを可能にするように設計されている。
【0081】
図7に見られるように、流体力学系に一体化されたバッファ貯蔵槽(50)に追加された(例えば、洗浄溶液などの)試薬は、例えば蠕動ポンプ(62)によって、貯蔵槽から流体力学系内に吸引される。しかし、真空、強制空気、電気運動などの導管系を介して流体を引く、または、推進させるためのいずれの知られている方法も使用することができる。好ましい特徴において、試薬は、上記に説明されたように、流体力学系内に一体化された脱気系(80)を介して通過され、続いて、センサ(112)の表面に差向けられる。図1および2に示されたように、ユニットはバッファ貯蔵槽(50)に隣接した試料領域(40)を含むことができる。図2に示されたように、試料領域(40)は試料注入弁体(42)を介して流体力学系に一体化されている。試料領域は、試料領域に収容された(図示されていない)別個の試料チューブ内に(例えば、検体または検出抗体などの)いくつかの試料を別個に保存するように設計されている。上記の試薬のように、試料は、蠕動ポンプを例えば介して注入弁体によりチューブの1つから吸引される。試料はセンサの表面に差向けられ、かつ、表面との接触の後、さらに、廃棄物受け器(63)へ差向けられるか、再循環およびセンサとの再接触のために系を介して、ユニットからの取出しのために元の試料チューブ(40)に、または、特別な試料復帰チューブ(64)へ差向け戻されるかのいずれかとなる。加えて、図7に示されたように、本発明の流体力学系は、特定の流路を介して流体を差向けるために、示された如くの六方弁(66)などの多流路弁を利用することができる。ユニットは、ユニットに含まれている隔壁継手(67)と接続することにより追加のバッファに対する追加の回線(65)も含むことができる。
【0082】
本発明の光学分析ユニットに組み込まれている流体力学系は、最も好ましくは、
シリンジ・ポンプ(65)により駆動される高速パルス化流を供給することができる「気泡破裂」脱気ユニット(80)も含む。このような気泡破裂系は、取外し可能なフロー・セルを収容するように、すなわち、それにより、(このフロー・セルに含まれている)センサが一定して変化することができるように設計された系における固有の問題を克服するために使用される。新しいフロー・セルを動作させると、バッファで満たした後にセルの隙間内に気泡が残るのが一般的である。気泡は、試料の切換え中および他の流体力学的動作中に偶発的に導入されることもある。これらの気泡は影響を受けたROI上の測定を妨害し、かつ、除去されなければならない。気泡は、特に本発明におけるようにセルの寸法が低減された場合に、除去が困難となり得る。我々は、臨界排斥流速(CDF)を超えた非常に大きな流体流速の短時間の印加が、フロー・セル表面における湿潤張力の不均一性により、または、幾何学的形状の不連続により捕えられた気泡を除去できると決定した。
【0083】
例えば、センサ表面上の不均一な表面特性により平面セル内に捕らえられた気泡を除去するために必要とされるCDFは、気泡の下流側の湿潤張力(τ)が上流側の湿潤張力(τ)より大きくなるように、以下によりほぼ与えられる。
CDF=Wh{τ−τ}/(6ηL)
ここで、Wはセルの幅、hはセル隙間の高さ、ηは流体の速度、かつ、Lは流れの軸に沿った気泡の名目上の長さである。微分湿潤張力Δτ=τ−τは大雑把に見積もることができ、現実において遭遇する実際の数値は通常は実験により見出される。分析は幾何学的規模を明確に示すが、この規模は気泡滞留の他の機構に対して同じであることが見出されている。臨界流量は隙間の高さが減少するに従い急速に低下するが、圧力は臨界流量の増加に伴い降下する。同じく、もし湿潤張力の差が小さな距離を越えて存続するなら、気泡の長さへの逆依存性は、非常に小さな(すなわち、短い)気泡が除去が困難となり得ることを示す。
【0084】
大流量のパルスの多数の印加が、1つの「粘着」場所から次の「粘着」場所に気泡が移動する間に気泡を排除するために、通常必要であることが決定されている。フロー・セルからいずれの気泡も除去するために、流体力学系は、小流量インピーダンス流体流路を例えば介してセンサ・セルに「気泡破裂」、または、高流速パルスを印加するために使用することができる容積式ポンプ(シリンジ・ポンプ)を組み込んでいる。加えて、気泡に対するリアルタイムのモニタリングは流体力学的動作を中断することができ、かつ、蓄積する可能性のあるいずれの気泡も「破裂」させることができる。
【0085】
SPR分析は温度および温度変動に極端に敏感であり、そのため、このパラメータは可能な限り厳格に制御されなければならない。系の安定性を維持するために、ならびに、センサの表面上で進行している結合反応に関する正確かつ一貫したデータを生成するために、ユーザが開示されたユニットの内部環境の温度に対する制御を有することが重要である。したがって、ユーザが系内の温度を迅速かつ精密に調節すること、流体力学系を通過している試薬および試料の温度を調節すること、および、センサの表面上の結合反応の温度を制御することを可能にするために、この発明による光学分析ユニット内への組み込みために、図2に見られるような光学保温室が設計されている。
【0086】
加えて、ユーザが、雰囲気温度より上および下の双方の様々な温度で実験を行なうことを可能にすることが望ましい。これを達成するために、図2に見られるように、保温室は、センサが所在する目標領域を収容し、かつ、上述の流体力学系の少なくとも一部を収容する。好ましい実施形態において、保温室は、循環ファン、降温装置、熱フューズ、および、センサを含む比例積分導関数(PID)制御熱電素子モジュールを含む。
【0087】
好ましい保温室は図8に示されている。保温室は、保温室内の熱定安定性を維持する断熱発泡剤(32)で有利に裏打ちされている。この断熱材は、環境または機器の動作により引き起こされることのある温度の変動に対して、センサ領域、センサ表面における入来流体、および、センサの表面上で発生する反応を保護する。図8に描かれているのは、目標領域の所定の場所にセンサ(フロー・セル)を正確に位置決めし、かつ、確実に保持するための保温室内の頂部板組立体(34)、および、センサを目標領域内に搬送するための機構である。センサ領域に対する四方弁(図7の36)の近接は同図内の番号36で示されている。(図示されていない)光学センサは頂部板に対するセンサ(フロー・セル)の正確な位置決めを決定するために含むことができる。入来流体の熱的安定性を維持するための受動的予備加熱器(38)も示されている。例えばひれ付き銅で作成されたこれらの受動的予備加熱器は閉鎖環境内で空気を循環させることを介して、かつ、熱交換ブロック内の溝内に埋め込まれた流体力学配管の壁を介して伝導により流体へ、または、流体から熱を搬送することを介して、保温室の温度を緊密に追跡する。降温装置の成型材料は配管と予備加熱器の間の小さな隙間を充填するために塗布されている。
【0088】
受動的予備加熱器に対する代替物は追加のサーボ・ループを使用した流体流の能動的加熱および冷却の使用である。しかし、受動的流体力学的熱交換器は費用および単純さに基づき、かつ、同熱交換器が不完全なフィードバック制御による温度サイクルまたは雑音を導入しないため好ましい。受動的熱交換器を使用することの困難さは、熱が熱交換器に、または、それから流れるために有限の温度差が必要であることである。この差は要求される熱束に比例し、したがって、流体流速、熱容量、および、流体温度の所望の上昇または下降に依存する。
【0089】
予備加熱器の究極の達成内容は、流体を保温室と同じ温度に、したがって、センサの温度に可能な限り近づけることである。しかし、配管の内外に熱を流すことは流体と保温室内の空気の間に温度差を必要とする。センサのフロー・セルに進入する流体と処方されたセンサ温度の間の温度のいかなる差もセンサの所望の温度を変化させる、このことは重大な問題を課す。正確なSPR応答は高度に温度依存である。したがって、もし予備加熱器が十分な熱質量を持っていたなら、予備加熱器は降温装置または熱貯蔵器として機能できたが、流体および保温室の温度が極端になるより長い動作実行は、貯蔵器の最終的な加熱または冷却を引き起こし、熱SPRドリフトをもたらす。さらに、このような大きな熱質量は、同じく必要とされる保温室の温度の調整への迅速な平衡化を抑える。
【0090】
本明細書で説明されている新規な解決策は各流体回線のための流体力学熱交換器を熱的に隔離され、かつ、直列に接続された多数の区分に分離することである。この設計によれば、区分された熱交換器に対する全体のサイズおよび流体力学的絶対的体積は、同じ取出し口温度誤差を達成するために設計された単一段の両者よりも劇的に小さい。実際には、第1のこのような段は流体流を保温室の温度に持ってくるために必要な全熱流量の大部分を搬送する一方、温度誤差を温度誤差の本来の値の何分の1かに低減するが、保温室の温度のはるか下方のブロック温度で動作し、かつ、流体流を所望の温度から未だに離れたままにする。次の同様の段は同様の要因による誤差を低減し、その後も同様である。
【0091】
等温空気流中の個別の熱交換器区分の性能は以下に概略を示すように評価することができる。熱は等温空気流からアルミニウムまたは銅などの高伝導性材料のひれ付きブロック内に、および、続いて、ブロック内の通路を通過している流体流中に、または、ブロックとの良好な熱的接触にある配管を介して搬送される。
図:空気/区分/水熱交換器区間の1つの区分の熱的分析
【0092】
【表1】

【0093】
前述の方式において、Qは定常状態条件下で温度TAIRにおける空気から区分内の液体流に搬送されている熱パワーである。液体の体積流速はF、密度はρ、かつ、熱容量はcである。ひれ付きブロックに対する強制空気の熱伝導係数はh、有効面積はA、かつ、液体チューブの熱収容係数はfTAである。fTAが流速Fの関数であることに注意されたい。上図に示された連立方程式を解くと、区分の取出し口温度TOUTLETに対して以下を得る。
OUTLET=TINLET+{fTAhA/(hA+FρcTA)}{TAIR−TINLET
ここで、TINLETはこの特定の区分に対する取入れ口温度である。
上記の方程式は以下に定義される「温度誤差低減係数」Rについて書き直すことができる。
R≡(TAIR−TOUTLET)/(TAIR−TINLET
以下が結果である。
R=1−[1/fTA+1/β]−1
ここで、βは以下により与えられる区分の相対空気熱伝導効率の次元のない測定値である。
β=hA/(Fρc
全ての場合において、流体温度終了係数fTA(F)は以下により拘束され、
0<fTA<1
かつ、β>0であるから、Rは同じ以下の拘束も受けている。
0<R<1
【0094】
典型的に、各区分はfTA>0.9、かつ、β>6となるように設計され、そのため、単一段Rの値はR<0.22である。このことは、多段受動的熱交換器の独立した区分が温度の食い違いを、その食い違いの以前の値の約20%に、または、より少なく低減することを意味する。
【0095】
与えられた流体流速において、各熱交換器区分は、常に1より小さく、かつ、典型的に0.20以下である固定係数Rにより、流体温度と保温室温度の間の差を低減するように機能する。したがって、直列に接続されたn個の多数の熱的に隔離された区分にわたり、流体温度誤差は幾何級数的にRの如くに低減する。区分の数を適切に選択することにより、SPR信号に対するいかなる有害な影響も最小に抑えるか、または、排除するために、流体温度のセンサとの不適合を許容可能な、または、瑣末な値にさえ低減することが可能となる。我々は、3つから4つの区分が一般に適切であり、温度平衡、流体力学的絶対的体積、および、流速の間の最適なバランスを提供することを見出している。
【0096】
上記に述べられたように、本ユニットを使用して正確なSPRデータを生成するためには、ユーザが、センサの表面上の結合反応が進行する雰囲気温度を制御する能力を有することが有利である。この点において、ユーザが、試薬および試料がセンサとの接触に先立ち流体力学系を介して流れる間に両者の温度を制御する能力を有することも有利である。動作の温度感応性要素に対するこの制御を達成するために、光学分析ユニット内に組み込まれたいずれの流体力学系の少なくとも一部を上記に説明されたものなどの保温室内に収容させることが好ましい。好ましくは、保温室内に収容された流体力学系の一部は結合反応が発生する場所に最も近い、すなわち、センサに近い区間であり、センサ自体を含む。
【0097】
前述の説明から、この発明による革新的な特徴を組み込んでいるSRPおよび他の光学分析機器の多くの様々な実施形態が可能である。全てのこのような実施形態は、本明細書で開示された特定の好ましい設計の明白な改変を含めて、以下の特許請求の範囲により規定された如くのこの発明の範囲内となることを意図されている。
【0098】
上記に引用された出版物および文書の全ては参照により本明細書に組み込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】外部カバーが装着された本発明の光学共鳴分析ユニット(100)を示す図である。ユニットの設計は、ユーザに、試薬/バッファ瓶(50)、試料チューブ(40)、および、外部カバーを外さずにセンサ(または、センサ・チップを含むフロー・セル)をユニット内に挿入するためのチップ・ドア(110)を提供する。他の全てのユニットの機能は、ユニットに接続されたコンピュータにユーザが入力するコマンドにより制御することができる。
【図2】カバーが外された図1のユニットを示す図である。旋回アーム、検出組立体(20)、および、保温室(30)を含む光源組立体(10)を含めて、ユニットの主要構成部分が目視可能である。
【図3】旋回光源アーム(9)に装着され、かつ、検出器組立体(20)に関連した光源組立体(10)の1つの実施形態を示す図である。矢印はセンサ(112)上に突き当たる光源(11)からの照明の方向(下向き矢印)およびセンサ(112)の表面から反射され、かつ、検出器組立体(20)の方向(上向き矢印)における照明を示す。
【図4】光源(11、例えば、LED組立体)および光源に搭載された光源光学系組立体(13)を備えた旋回光源アーム(9)の図である。旋回アーム(9)を(図示されていない)駆動器モータ(12)に接続するための線形スライド(14)、旋回アーム(9)の基部板(18)、ローラ・ベアリング(17)、および、光源(11)を旋回アーム(9)に固定するための光源組立体支持部(19)も同じく示されている。
【図5】(図示されていない)レンズ組立体の外部ケース(22)、内部、中央部、および、外部のジンバル座(それぞれ23、25、および、27)、補正器板(21)、受動的寒冷フィンガ(26)の両端部、検出器窓(28、例えば、CCD窓)、検出器(24、例えば、CCDカメラ)、および、スロット開口(130)を示す検出器組立体(20)の断面図である。
【図6】検出器の(図5に示された外部ケース22内に収容された)レンズ組立体内に所在する検出器光学系の様々な要素の図である。レンズ組立体の要素は対物区間(125)、スロット開口(130)、画像形成区間(125)、補正器板(21)、および、検出器(113、例えば、CCDチップ)の光学感応性要素にすぐに隣接した検出器窓(28)を含む。したがって、レンズ組立体はセンサ(112)と、センサ反射の画像に対する受光器、すなわち、検出器の感知要素(113)との間に挟み込まれている。受動的寒冷フィンガ(図5の26)のレンズ組立体内の要素の位置合わせにおける相対位置は、番号26により示されている。X、Y、および、Zはジンバル座により制御されている検出器組立体の動きの平面を表す。
【図7】バッファ・コンテナ(50)および試料溶液コンテナ(40)の位置、ならびに、各溶液を、ユニットを介して(センサ112を含む)目標領域に差向け、かつ、元の試料チューブ(40)に、別個の回収チューブ(64)に、または、廃棄物受け器(63)に差向け戻すことができる様々な経路を示す流体力学形の図である。センサは典型的にフロー・セル内に収容され、ユニットの流体力学系との接点となる入力ポートおよび出力ポートを使用して構成されたフロー・セルは、進入ドア(図1の110)を介して光学分析ユニット(100)内に挿入されている変更可能なデバイスである。図7は予備加熱器(38)、四方弁(36)、および、センサ(112)を含む目標領域を包含する保温室(30)の相対位置も示す。
【図8】保温室筐体の位置および予備加熱器(38)の位置、(隠されている)四方弁(36)、頂部板組立体(34)、断熱パネル(32)、ならびに、センサ・チップ(112)のための担体を示す本発明による光学分析ユニットの一部分の部分切開斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学分析機器であって、
(a)支持フレームと、
(b)実質的に静止した位置にある反射性センサを含むフロー・セルを収容し、かつ、確実に保持するように構成された前記支持フレームに装着された目標領域と、
(c)光源と、前記光源から発光された光を合焦させるための光源光学系と、を含む光源組立体であって、光のビームを前記反射性センサ上に投影するように配向され、かつ、前記センサの位置に関して前記光源の向きを変更することを可能にするために前記支持フレームに回転可能に装着されている光源組立体と、
(d)前記光源組立体の向きを変更するための手段と、
(e)前記光源組立体の向きの角度上の変化を記録するための手段と、
(f)前記センサから反射された光を受光するように向けられた前記支持フレームに装着された検出器組立体と、を含む光学分析機器。
【請求項2】
前記反射性センサは格子結合表面プラズモン共鳴(SPR)センサである請求項1に記載の光学分析機器。
【請求項3】
前記手段(d)は手作業による調整手段である請求項1に記載の光学分析機器。
【請求項4】
前記手段(d)はモータ手段である請求項1に記載の光学分析機器。
【請求項5】
前記手段(d)はステップ型モータである請求項1に記載の光学分析機器。
【請求項6】
前記手段(e)はステップ・モータ、回転式符号化器、および、線形符号化器からの正確な角度上の変化データからなるグループから選択される請求項1に記載の光学分析機器。
【請求項7】
前記手段(e)は各光学分析の開始において参照点を提供する内蔵式索引付けマークを含む請求項6に記載の光学分析機器。
【請求項8】
前記光源は発光ダイオード(LED)または複数のLEDである請求項1に記載の光学分析機器。
【請求項9】
前記光源は狭い帯域の波長を発光するLEDである請求項8に記載の光学分析機器。
【請求項10】
前記LEDまたは複数のLEDはプラスチック材料に被包され、かつ、前記プラスチック材料は、前記プラスチック材料により引き起こされる光学歪みを最小に抑えるために、光学定に平坦であるか、または、光学的に平坦にされている請求項8に記載の光学分析機器。
【請求項11】
前記光源ビームは、機器の光学的表面から反射する光により引き起こされるゴースト反射を排除するために十分な横方向ビーム・スキューを提供するために、前記光学系の中心軸からずらされている請求項1に記載の光学分析機器。
【請求項12】
前記光源ビームは2度の横方向ビーム・スキューを提供するために前記光学系の中心軸からずらされている請求項1に記載の光学分析機器。
【請求項13】
前記検出器組立体(f)は、前記検出器組立体の向きがセンサの位置に関して変更されることを可能にする複数のジンバル座上に搭載されている請求項1に記載の光学分析機器。
【請求項14】
前記検出器組立体(f)は、検出器感知要素、および、前記センサの反射画像を前記検出器感知要素上に合焦させるためのレンズ組立体を含む検出器を含み、前記レンズ組立体は前記検出器感知要素と前記目標領域の間に位置決めされている請求項13に記載の光学分析機器。
【請求項15】
前記レンズ組立体は1つまたは複数の反射性要素、開口絞り、補正器板、および、検出器窓を含む請求項14に記載の光学分析機器。
【請求項16】
前記レンズ組立体は二重テレセントリック・レンズ組立体である請求項15に記載の光学分析機器。
【請求項17】
前記検出器組立体は、前記検出器窓と前記補正器平面の間に位置決めされた受動的寒冷フィンガをさらに含む請求項15に記載の光学分析機器。
【請求項18】
前記検出器組立体および前記レンズ組立体の屈折性要素の向きは、前記センサの反射画像の寸法を前記検出器感知要素の寸法に適合させるために有効である請求項15に記載の光学分析機器。
【請求項19】
前記検出器および前記レンズ組立体は前記センサの位置に関して独立して調整することができる請求項15に記載の光学分析機器。
【請求項20】
前記検出器はCCDカメラであり、かつ、前記感知要素はCCDチップである請求項15に記載の光学分析機器。
【請求項21】
(g)流体力学系であって、
(i)1つまたは複数の溶液貯蔵槽および/または溶液投入接続部と、
(ii)前記1つまたは複数の貯蔵槽および/または投入接続部を前記目標領域に接続する供給チューブ配管と、
(iii)廃棄物受け器、溶液貯蔵槽、回収コンテナ、および、目標領域のグループから選択された1つまたは複数の要素に前記目標領域を接続する除去チューブ配管と、
(iv)前記供給および除去のチューブ配管を介して流体を推進するための1つまたは複数のポンプと、を含む流体力学系をさらに含む請求項1に記載の光学分析機器。
【請求項22】
前記流体力学系(g)は捕らえられている空気泡を前記流体力学系から水流洗浄するための気泡破裂手段をさらに含む請求項21に記載の光学分析機器。
【請求項23】
前記流体力学系の一部および前記目標領域は保温室内に収容されている請求項21に記載の光学分析機器。
【請求項24】
前記目標領域に伝達されつつある流体の温度は1つまたは複数の受動的熱交換器を使用して制御される請求項23に記載の光学分析機器。
【請求項25】
前記降温装置は一連の区分された受動的熱交換器を含む請求項24に記載の光学分析機器。
【請求項26】
前記目標領域に伝達されつつある流体の温度は1つまたは複数の能動的加熱または冷却ループを使用して制御される請求項23に記載の光学分析機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−501393(P2007−501393A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522646(P2006−522646)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/024789
【国際公開番号】WO2005/012878
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(506036482)ビアコア エービー (2)
【Fターム(参考)】