光学式検査装置、及び光学式検査装置のモデル予測によるスポット光の調整方法
【課題】従来は、熟練した作業者がスポット光の位置合わせを実施していた。人手での調整は時間がかかるため、調整の自動化が求められていた。自動化のためには装置構成をモデル化し、位置合わせを実施することになる。しかし、実際には、装置毎の機差や外乱によりモデル通りにスポット光は動かない。そのため、モデル単体では調整に時間がかかり、調整時のバラつきが生じる場合もある点については従来技術では配慮がなされていなかった。
【解決手段】第1の重み付けを行って光の傾きを調整し、第2の重み付けを行って光の前記基板上での位置を調整する。さらに、光の傾きのずれを測定し、ずれに応じて粗調整と、微調整とを切り替える。
【解決手段】第1の重み付けを行って光の傾きを調整し、第2の重み付けを行って光の前記基板上での位置を調整する。さらに、光の傾きのずれを測定し、ずれに応じて粗調整と、微調整とを切り替える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に存在する異物,傷等の欠陥を検査する検査装置に関する。本発明は、例えば、ウエハ上の欠陥を検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では歩留まりを管理するために、ウエハ上の欠陥を正しく検査する必要がある。
【0003】
半導体製造工程において、回路パターンの形成されていないベアウエハ上の欠陥を検査するのが、表面検査装置である。
【0004】
表面検査装置では、ウエハをステージに載置し、ウエハにスポット光を照射しながら、回転動作、及び直線動作を行う。この動作によってウエハ全面を走査することが可能となる。
【0005】
そして、表面検査装置は、スポット光を照射した領域からの散乱光を光電子増倍管等の検出器で検出し、その検出結果に閾値処理を施すことで欠陥を検出する。
【0006】
従来技術には以下のものがある。
【0007】
特許文献1では、検査装置において検出する異物等の座標精度を向上させる方法,照明ビームスポット径を補正する方法について開示している。
【0008】
特許文献2では、露光装置において、光学部材が着脱可能となっている点について開示している。
【0009】
特許文献3では、ビームエキスパンダに入光される光量が基準値以下にならないようにレーザ光の照射が一定時間を越えたところで、光軸が変わらないよう平面鏡を回転,移動させられる構造にしたことを開示している。
【0010】
特許文献4では、パターン検査装置において、各パターンの周辺部において、画像信号の重心を算出し、粗位置合わせ信号を送出し、粗位置合わせ後にパターンの画像信号の相関を演算して精密位置合わせ信号を送出することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−240512号公報
【特許文献2】特開2004−327529号公報
【特許文献3】特開2007−279021号公報
【特許文献4】特開昭63−136541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
表面検査装置はスポット光はウエハの所定の位置に存在すると認識した上で、検査を行う。そのため、実際にウエハ上に照射されているスポット光の位置が、表面検査装置が認識しているスポット光の位置とずれていると、表面検査装置では、正しく欠陥を認識できない。よって、ウエハに照射するスポット光の位置を正確に合わせる必要がある。
【0013】
この必要性は検出する欠陥が微細化し、より高精度な欠陥位置検出精度が求められるようになった近年ではより顕著である。
【0014】
従来は、熟練した作業者がスポット光の位置合わせを実施していた。人手での調整は時間がかかるため、調整の自動化が求められていた。自動化のためには装置構成をモデル化し、位置合わせを実施することになる。しかし、実際には、装置毎の機差や外乱によりモデル通りにスポット光は動かない。
【0015】
そのため、モデル単体では調整に時間がかかり、調整時のバラつきが生じる場合もある点については従来技術では配慮がなされていなかった。
【0016】
本発明は以下のことを目的とする。本発明は以下の目的を同時に達成する場合もあれば、それぞれ独立して達成する場合もある。
(1)基板に照射する光の位置合わせを短時間で行う。
(2)基板に照射する光の位置合わせを高精度に行う。
(3)基板に照射する光の位置合わせを広範囲で行う。
(4)基板に照射する光の位置合わせを実質的に自動化する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は以下の事項を特徴とする。なお、本発明は以下の特徴を独立して有する場合もあれば、複合して備える場合もある。
【0018】
本発明は光軸のずれをモデル化し、予測することを特徴とする。
【0019】
本発明は、基板の欠陥を検査する光学式検査装置において、前記基板へ第1の光を照射する照射光学系と、前記基板からの第2の光を検出する検出光学系と、前記検出光学系の検出結果に基づいて前記欠陥を検出する検査処理部と、前記第1の光の傾きを変化させる第1の機構と、第1の重み付けを行って前記第1の機構の第1の変化量を計算する第1の処理部と、を有することを特徴とする。
【0020】
本発明は、前記第1の光の前記基板上での位置を変化させる第2の機構と、第2の重み付けを行って前記第2の機構の第2の変化量を計算する第2の処理部と、を有することを特徴とする。
【0021】
本発明は、前記光の傾きのずれを測定する第3の処理部と、前記第1の変化量よりも小さい第3の変化量を計算する第4の処理部と、前記ずれ量に応じて前記第1の処理部と、前記第1の処理部と前記第4の処理部とを切り替える切り替え部と、を有することを特徴とする。
【0022】
本発明は、基板の欠陥を検査する光学式検査装置の前記基板へ照射される光の調整方法において、第1の重み付けを行って前記光の傾きを調整することを特徴する。
【0023】
本発明は、第2の重み付けを行って前記光の前記基板上での位置を調整することを特徴とする。
【0024】
本発明は、前記光の傾きのずれを測定し、前記ずれに応じて前記第1の重み付けを行うか否かを判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明は以下の効果を奏する。なお、本発明は、以下の効果をそれぞれ独立して奏する場合もあれば、同時に奏する場合もある。
(1)基板に照射する光の位置合わせを短時間で行うことができる。
(2)基板に照射する光の位置合わせを高精度に行うことができる。
(3)基板に照射する光の位置合わせを広範囲で行うことができる。
(4)基板に照射する光の位置合わせを実質的に自動化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】検査装置の構成。
【図2】表面検査装置の構成。
【図3】光軸調整機構3の詳細。
【図4】チルト量確認画像112,シフト量確認画像113。
【図5】垂直照射時のミラー4a,4bとビーム位置移動量の関係を表す模式図。
【図6】照射光学系調整の概要フローチャート。
【図7】照射光学系におけるチルト量調整のブロック線図。
【図8】照射光学系におけるシフト量調整のブロック線図。
【図9】自動照射光学系調整の概略フローチャート。
【図10】チルト調整の詳細フローチャート。
【図11】シフト調整の詳細フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0028】
図1に検査装置の構成を示す。検査装置は、試料(ウエハ等の基板を含む)を載置し、操作方向に移動する搬送系1111と、光101を基板に照射する照射光学系1112と、試料からの光102(散乱光,反射光等)を検出する検出光学系1113と、検出結果から試料の検査を行う検査処理系1114と、様々な情報を表示し、入力する入出力系1115と、を有する。
【0029】
より、具体的には、搬送系1111は試料を載置する載置部1116と、載置部を移動させる移動部1117とを含む。照射光学系1112は光を発生する光源1と、光を試料へ導く光学素子1118とを含む。検出光学系1113は、試料からの光を検出する光検出器1119を含むが、試料からの光を検出器へ導く光学素子を含んでも良い。検査処理系1114は、検出器の検出結果から試料の欠陥を検査する欠陥処理部1120を有する。入出力系1115は、検査結果や欠陥の情報を表示する表示部1121と、検査条件等を入力する入力部1122とを含む。
【0030】
図2に、本発明の実施例である半導体ウエハの表面を検査する表面検査装置の構成を示す。
【0031】
本実施例の表面検査装置は、搬送系1111の載置部1116として試料8を置く(載置する)検査テーブル19を含み、走査部1117としてXYZθステージ9を含む。なお、搬送系1111はスピンドル等のモータと、ステージとを有し、回転と直進とを行う構成でも良い。照射光学系1112は光源1を含み、調整機構として光量調整機構2,光軸調整機構3、およびズーム機構5を含み、光学素子1118としてミラー6a,6b,6c,6d,レンズ7a,7bとを含む。検出光学系1113は光検出器1119として光電子増倍管等の検出器10を含む、その他、増幅器11,A/D変換機12を含む。検査処理系1114は欠陥処理部1120として欠陥判定機構13,検出欠陥分類機構14を含む。入出力系1115は表示部111を含む。
【0032】
光源1から照射された光101は、λ/2波長板と偏光ビームスプリッタ(PBS)とで構成されたアテネータ等の明るさを調整することができる光量調整機構2,光軸を調整する光軸調整機構3、およびビームエキスパンダ等のズーム機構5を通り、試料8に照射される。光軸調整機構3には撮像装置の一例であるCCDカメラ4a(第1の撮像装置)が設置されている。ズーム機構5から照射された光は垂直斜方切替ミラー6aで垂直光路または斜方光路に切替えられる。垂直に分岐された光はハーフミラー6dを通過し、集光レンズ7aにて集光され試料8に照射される。試料8に照射された光は、反射し、集光レンズ7aを通り、ハーフミラー6dで分岐され、CCDカメラ4b(第2の撮像装置)に到達する。
【0033】
また、垂直斜方切替ミラー6aが光路から抜けている場合は、ビームは斜方光路を進みミラー6b,6cで反射され集光レンズ7bにて試料面に照射される。試料8から反射した光は、垂直照射と同様に集光レンズ7aを通りCCDカメラ4bで撮像される。CCDカメラ4a、4bで撮像された画像は、画像解析、およびフィードバック制御を行う処理部15に取り込まれ画像解析を行い、正しく調整された状態からのビームのずれに関する情報(例えば、光軸の水平方向のずれ量を示すシフト量,光軸の傾きのずれを示すチルト量,形状ずれ量、および明るさのずれ量)を算出し、光量調整機構2,光軸調整機構3、およびズーム機構5それぞれに調整量を指令する。
【0034】
より具体的には、光量調整機構2では、調整量に基づいて、例えばλ/2波長板が回転することになる。また、光軸調整機構3では、調整量に基づいて、後述するチルト機構103およびシフト機構104の少なくとも1つが動作することとなる。
【0035】
このように、CCDカメラ4a、および4bの撮像結果に基づいて調整量を算出し、光量調整機構2,光軸調整機構3、およびズーム機構5それぞれが調整量に基づいて光101のずれを調整することになるので、安定した装置状態を実現することができる。
【0036】
図3に光軸調整機構3の詳細を示す。ミラー17,18にはミラー17,18を回転させるチルト(回転)機構103と、ミラー17,18を移動させるシフト機構104がそれぞれ設置されている。チルト機構としてはモータを、シフト機構としては一方向に移動するステージを用いることができる。ミラー17,18の後ろの光路に配置された固定反射ミラー16を抜けた光はCCDカメラ4aで観察される機構となっている。また固定反射ミラー16で向きを変えられた光はミラー6a,6b等を経由して試料8へ照射される。
【0037】
また、図4に光軸調整機構3に取り付けられたCCDカメラ4aの画像および試料8から反射した光を撮像するCCDカメラ4b画像を示す。
【0038】
光軸調整機構のCCDカメラ4aでは、光軸の水平方向のずれを示すシフト量と光軸の傾きのずれを示すチルト量が確認できる。CCDカメラ4bでは、ビームのチルト量が確認できる。ビームがチルト方向にずれている場合、光軸調整機構3のチルトにてビームを調整する。CCDカメラ4aでは、シフト量とチルト量が観察できるが、チルト量はCCDカメラ4bで確認し、調整を行うため、シフト量として確認できる。
【0039】
チルト量確認画像112,シフト量確認画像113について詳細に説明する。
【0040】
チルト量確認画像112は、一方向のチルト量(第1のチルト量)を1軸114として、第1のチルト量に対して垂直なチルト量(第2のチルト量)を1軸115としてチルト量を表示する。
【0041】
さらに、チルト量確認画像112は、画像を第1のチルト量の軸に対して平行な線(第1の線)116、および第2のチルト量の軸に対して平行な線(第2の線)117を用いて、画面を4分割表示する。目標ビーム位置118は、CCDカメラ4bにおける装置性能正常時のビーム位置である。ビーム位置が目標ビーム位置に近いほど、ずれの無い状態となる。
【0042】
このように目標ビーム位置118付近にビーム位置が調整された画像を表示することで、作業者は容易にビームのチルト量が正しく調整されたことを知ることができる。
【0043】
シフト量確認画像113についても同様のことが言える。シフト量確認画像113は、一方向のシフト量(第1のシフト量)を1軸119として、第1のシフト量に対して垂直なシフト量(第2のシフト量)を1軸120としてシフト量を表示する。
【0044】
さらに、シフト量確認画像113は、画面を第1のシフト量の軸に対して平行な線(第1の線)121、および第2のシフト量の軸に対して平行な線(第2の線)112を用いて、画面を4分割表示する。目標ビーム位置123は、CCDカメラ4bにおける装置性能正常時のビーム位置である。ビーム位置が目標ビーム位置に近いほど、ずれの無い状態となる。このように目標ビーム位置123付近にビーム位置が調整された画像を表示することで、作業者は容易にビームのシフト量が正しく調整されたことを知ることができ、併せてビームの状態を常時監視することができる。
【0045】
なお、チルト量確認画像112,シフト量確認画像113は液晶ディスプレイやCRTディスプレイ等の表示部111でも確認できる。
【0046】
また、チルト量確認画像112,シフト量確認画像113に対して現在のビーム位置およびビームサイズを記述することで、ビーム照射状態の確認もできる。
【0047】
次に、垂直照射時のミラー4a,4bとビーム位置移動量の関係について説明する。
【0048】
図5は垂直照射時のミラー4a,4bとビーム位置移動量の関係を表す模式図である。光101はミラー17もしくはミラー18がチルト機構103により角度θ回転すると、角度2θ光軸方向が変化する。その後光101は、ビームエキスパンダ等のズーム機構5によりN倍に拡大されると光軸方向は角度2θ/N変化する。集光レンズには角度2θ/N変化して入射することになる。この角度変化による試料8上でのビーム位置の変位d203は、集光レンズの焦点距離f202を用いて、
d=f×tan(2θ/N) …(式250)
と表せる。
【0049】
式250がミラーのチルト動作量およびビーム位置移動の関係を表すモデル式となる。斜方照射においても同様にモデル式を構築することができる。
【0050】
変位d203を補正するために必要なチルト動作角度θは式250から
θ=1/(f×tan(2θ/N))×d …(式260)
により求めることができる。チルト機構にモータ等を使用しパルス量で制御する場合には角度θとパルス数の変換を行い必要な補正パルス数を出せばよい。
【0051】
なお、シフト量については、ミラー17,18の移動距離がCCDカメラ4a上での光の移動距離となる。
【0052】
次にこの関係を利用した照射光学系の調整について説明する。
【0053】
図6は照射光学系調整の概要フローチャートである。ステップ5010では、アルミウエハを格納容器から検査装置へ搬送する。アルミウエハは表面に凹凸が形成されているため適度に光が反射し、ビームの位置を把握することができる。ステップ5015ではCCDカメラ4a,4bによりビーム照射位置の測定を行う。ステップ5020では現在のビーム位置と目標ビーム位置とのズレ判定を行う。ズレ量が許容値を超えている場合には、後述するステップ5030に進み、ズレ量が許容値内の場合には後述するステップ5040に進む。ステップ5030では、ビーム位置が目標ビーム位置になるよう光軸調整機構3により調整を実施する。ステップ5040ではアルミウエハを検査装置から格納容器に搬送する。ステップ5050では、評価用ウエハを格納容器から検査装置へ搬送する。ステップ5060では検査を実施し調整後の装置性能評価を行う。ステップ5070では評価用ウエハを検査装置から格納容器に搬送する。
【0054】
次に照射光学系のチルト量,シフト量の自動調整について説明する。
【0055】
まず、チルト量の自動調整について説明する。
【0056】
図7は照射光学系におけるチルト量調整のブロック線図である。
【0057】
チルト量はわずかな角度の変化が大きく影響する。
【0058】
このため、本実施例では、補正量算出処理切替部6010は、ビーム位置のずれ量に応じて粗調整,微調整を行い、さらに粗調整,微調整のパルス算出方式を切替える。この切替えは閾値(微調整閾値)処理によって行われる。
【0059】
静的重みベクトル乗算部6015は、理想値(例えば、あらかじめチルト量補正を実施した際のビーム位置移動量の予測値)と実測値(例えばCCDカメラ4bから測定した値)から求めた静的重み(理想値/実測値)ベクトルWkbと補正するずれ(実測値と目標値との差)との積を求める。
【0060】
静的重みベクトルWkbは、例えばチルト機構のミラー17,18それぞれに対する係数Wkb17,Wkb18を有する。
【0061】
第1パルス算出部6020は、モデル式260を用いてチルト量を粗調整する際の補正パルス量を算出する。この補正パルスは、チルト機構のミラー17用の補正パルス,チルト機構のミラー18用の補正パルスを有する。ここで、補正パルスは静的重みベクトルWkbを乗算したずれ量の関数となる。
【0062】
第2パルス算出部6030は、ずれ量が微調整閾値よりも小さい場合の補正パルス算出を行う。
【0063】
光軸補正機構3は、第1補正パルス算出部6020、もしくは第2補正パルス算出部6030により算出された補正パルス量に基づき、チルト機構104を駆動させるミラー17,18を動作させる。
【0064】
CCDカメラ4bは光軸調整機構3直後および試料8におけるビーム位置を確認する。ずれ量判定部6050は、ずれ量に応じて、補正量算出処理切替部6010の切替を決定する。
【0065】
そしてずれ量がある許容値に達するまで、上記の補正を繰り返す。ずれ量が許容値内になった場合、補正は終了する。
【0066】
次にシフト量の自動調整について説明する。
【0067】
図8は、照射光学系におけるシフト量調整のブロック線図である。
【0068】
静的重みベクトル乗算部6500は、静的重みベクトルWkaと補正するずれ(実測値と目標値との差)との積を求める。
【0069】
静的重みベクトルWkaは、シフト量補正回数がチルト量補正回数と同程度になるために、1より小さい重み(例えば0.9)であり、例えばシフト機構のミラー17,18それぞれに対する係数Wka17,Wka18を有する。
【0070】
シフト補正パルス算出部6510は、ミラー17,18の移動距離がCCDカメラ4a上での光の移動距離となることを用いてシフト量を調整する際の補正パルス量を算出する。
【0071】
この補正パルスは、シフト機構のミラー17用の補正パルス,シフト機構のミラー18用の補正パルスを有する。ここで、補正パルスは静的重みベクトルWkaを乗算したずれ量の関数となる。
【0072】
シフト機構のミラー17,18はこの補正パルスに基づいて動作する。これによって、シフト機構の自動調整が行われる。
【0073】
そしてこの補正動作はCCDカメラ4aによって観察される。
【0074】
そしてずれ量がある許容値に達するまで、上記の補正を繰り返す。ずれ量が許容値内になった場合、補正は終了する。
【0075】
上述したチルト量の自動調整,シフト量の自動調整は、処理部15において実質的に独立、並行して行われる。このようにすることで、従来よりも短時間で自動調整を行うことが可能となる。
【0076】
また、静的重み算出部は、ずれ量に応じて可変となる動的重み算出部としても良い。動的重み算出部であればより精密な調整を行うことができる。
【0077】
次に本実施例の自動照射光学系調整のフローチャートを説明する。
【0078】
図9は自動照射光学系調整の概略図である。
【0079】
まずステップ810でCCDカメラ4a,4bを用いてビーム位置を測定する。
ステップ820では、チルト量,シフト量それぞれについてビーム位置のずれ量を算出する。
【0080】
ステップ830では、ずれ量が許容値内にあるか否かを判定する。
【0081】
許容値内であれば、補正は行われず終了となる。
【0082】
なお、ステップ840,ステップ850に示すようにずれ量の判定は、CCDカメラ4a,4bつまりチルト量,シフト量それぞれについて独立、並行して行われる。
【0083】
ステップ845では、チルト量の調整が行われる。
【0084】
ステップ855では、シフト量の調整が行われる。
【0085】
さらにこれらの調整はそれぞれのずれ量が許容値内となるまで繰り返される。
【0086】
図10はチルト量調整(図9のステップ845)の詳細を説明するフローチャートである。
【0087】
図9にてチルト量調整が必要と判断された場合、まずステップ7050で、CCDカメラ4bの画像におけるずれ量の判定を行い、ずれ量が微調整閾値外の場合には後述する粗調整7060,閾値内の場合には後述する微調整7070に進む。
【0088】
粗調整7060は、チルト補正量決定の際に、静的重みを用いて予測補正量と実測補正量とのずれを低減する調整を行う。
【0089】
ステップ7061では、補正ずれ量に対して静的重みをかける。
【0090】
ステップ7062では、ミラー17,18のチルト補正量を算出する。
【0091】
微調整7070では、ミラー17,18のチルト動作104における駆動速度を粗調整動作より遅くし、駆動精度を向上させ、微小量ずつ動かすことで高精度なビーム位置の補正を行う。
【0092】
ステップ7071では、ミラー17,18の駆動速度を粗調整動作より低速に設定する。ステップ7072では、CCDカメラ4bにおけるビーム位置のずれ量に応じて、ミラー17,18の微小チルト補正量を算出する。
【0093】
ステップ7080では前述したステップ7060もしくは7070にて算出した補正量にてチルト機構104のミラー17,18を駆動させる。
【0094】
次にシフト量調整の詳細について説明する。
【0095】
図11は、シフト量調整(図9のステップ855)の詳細を説明するフローチャートである。
【0096】
図9にてシフト量調整が必要と判断された場合、ステップ8551でシフトずれ量に静的重みをかける。
【0097】
ステップ8552ではミラー17,18のシフト補正量を算出する。
【0098】
ステップ8553では、ステップ8552で算出したシフト補正量に基づいてシフト量の調整を行う。
【0099】
上述した本実施例では、例えば以下の効果を奏する。
【0100】
照射光学系の調整において、粗調整と微調整を組み合わせることで、効率的な調整により時間短縮が図れる。
【0101】
粗調整では、装置光学系をモデル化してシフト量・チルト量の補正を行う。これに対し静的重みを用いることで、モデルと実測で生じる違いを低減し、広範囲・短時間・高精度の合わせ込みができる。
【0102】
微調整は、最小補正量で補正を繰り返すことで、粗調整のモデルでは吸収しきれない実際との微小な差や外乱に対応することができる。
【0103】
さらに、補正が収束しないハンチング現象も防止できる。
【0104】
また、光軸調整機構の駆動速度を低速に設定することで高精度な駆動を実現し、粗調整では補正できない微小な補正を実現する。
【0105】
さらに、光軸調整機構の駆動速度を低速に設定することで駆動時に発生する振動を低減する効果も得られる。
【0106】
ビームのチルト量とシフト量を自動調整することで、安定した装置状態を実現することができる。さらに従来では照射光学系の調整に高い知識・技術・経験を必要とし、時間も多く必要としていたが、本実施例では、容易にかつ迅速に調整ができる。
【0107】
また、半導体の製造工場では製造ラインに本実施例のような表面検査装置等の検査装置を配置し、製造ラインの発塵状態等を監視している。照射光学系を搭載している装置ならば、安定的な感度を出すために、照射光学系の状態の安定性が不可欠である。調整時間を短時間にすることで、容易に調整を実施でき装置状態を安定に保て、装置稼働時間も向上させることができる。
【0108】
複数製造ラインがある場合には、各装置の照射光学系状態の差異が機差に繋がる。本実施例のように自動化することで、手動調整に比べ差異は低減でき、機差を低減できる。
【0109】
本発明は実施例に限定されない。チルト量の調整,シフト量の調整はそれぞれ別個に採用しても良い。
【0110】
なお、本発明は、ウエハ以外の、ハードディスク,液晶基板等の基板検査に適用できる。さらに、本発明は楕円球を用いて散乱光を集光する方式のウエハ検査装置にも適用できるし、パターンの形成されたウエハの欠陥を検査するパターン付きウエハ検査装置や、ハードディスクの欠陥を検査するハードディスク検査装置にも適用可能である。
【0111】
また、搬送系は、Xステージと、Yステージと、Zステージと、θステージとを有し、XY方向に走査する構成であっても良いし、照射光学系によって基板に照射されるレーザの形状は線状であっても良いし、検出光学系は、ミラー,レンズ等を用いた結像系であっても良いし、パターンからの回折光を除去する空間フィルタを備えていても良いし、検出器は、時間遅延積分型センサやCCDセンサであっても良い。
【符号の説明】
【0112】
1 光源
2 光量調節機構
3 光軸調整機構
4 CCDカメラ
5 ズーム機構
6,17,18 ミラー
7 集光レンズ
8 試料
9 XYZθステージ
10 検出器
11 増幅器
12 A/D変換機
13 欠陥判定機構
14 検出欠陥分類機構
15 処理部
103 チルト機構
104 シフト機構
6015 静的重み算出部
6020 第1パルス算出部(粗調整)
6030 第2パルス算出部(微調整)
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に存在する異物,傷等の欠陥を検査する検査装置に関する。本発明は、例えば、ウエハ上の欠陥を検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では歩留まりを管理するために、ウエハ上の欠陥を正しく検査する必要がある。
【0003】
半導体製造工程において、回路パターンの形成されていないベアウエハ上の欠陥を検査するのが、表面検査装置である。
【0004】
表面検査装置では、ウエハをステージに載置し、ウエハにスポット光を照射しながら、回転動作、及び直線動作を行う。この動作によってウエハ全面を走査することが可能となる。
【0005】
そして、表面検査装置は、スポット光を照射した領域からの散乱光を光電子増倍管等の検出器で検出し、その検出結果に閾値処理を施すことで欠陥を検出する。
【0006】
従来技術には以下のものがある。
【0007】
特許文献1では、検査装置において検出する異物等の座標精度を向上させる方法,照明ビームスポット径を補正する方法について開示している。
【0008】
特許文献2では、露光装置において、光学部材が着脱可能となっている点について開示している。
【0009】
特許文献3では、ビームエキスパンダに入光される光量が基準値以下にならないようにレーザ光の照射が一定時間を越えたところで、光軸が変わらないよう平面鏡を回転,移動させられる構造にしたことを開示している。
【0010】
特許文献4では、パターン検査装置において、各パターンの周辺部において、画像信号の重心を算出し、粗位置合わせ信号を送出し、粗位置合わせ後にパターンの画像信号の相関を演算して精密位置合わせ信号を送出することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−240512号公報
【特許文献2】特開2004−327529号公報
【特許文献3】特開2007−279021号公報
【特許文献4】特開昭63−136541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
表面検査装置はスポット光はウエハの所定の位置に存在すると認識した上で、検査を行う。そのため、実際にウエハ上に照射されているスポット光の位置が、表面検査装置が認識しているスポット光の位置とずれていると、表面検査装置では、正しく欠陥を認識できない。よって、ウエハに照射するスポット光の位置を正確に合わせる必要がある。
【0013】
この必要性は検出する欠陥が微細化し、より高精度な欠陥位置検出精度が求められるようになった近年ではより顕著である。
【0014】
従来は、熟練した作業者がスポット光の位置合わせを実施していた。人手での調整は時間がかかるため、調整の自動化が求められていた。自動化のためには装置構成をモデル化し、位置合わせを実施することになる。しかし、実際には、装置毎の機差や外乱によりモデル通りにスポット光は動かない。
【0015】
そのため、モデル単体では調整に時間がかかり、調整時のバラつきが生じる場合もある点については従来技術では配慮がなされていなかった。
【0016】
本発明は以下のことを目的とする。本発明は以下の目的を同時に達成する場合もあれば、それぞれ独立して達成する場合もある。
(1)基板に照射する光の位置合わせを短時間で行う。
(2)基板に照射する光の位置合わせを高精度に行う。
(3)基板に照射する光の位置合わせを広範囲で行う。
(4)基板に照射する光の位置合わせを実質的に自動化する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は以下の事項を特徴とする。なお、本発明は以下の特徴を独立して有する場合もあれば、複合して備える場合もある。
【0018】
本発明は光軸のずれをモデル化し、予測することを特徴とする。
【0019】
本発明は、基板の欠陥を検査する光学式検査装置において、前記基板へ第1の光を照射する照射光学系と、前記基板からの第2の光を検出する検出光学系と、前記検出光学系の検出結果に基づいて前記欠陥を検出する検査処理部と、前記第1の光の傾きを変化させる第1の機構と、第1の重み付けを行って前記第1の機構の第1の変化量を計算する第1の処理部と、を有することを特徴とする。
【0020】
本発明は、前記第1の光の前記基板上での位置を変化させる第2の機構と、第2の重み付けを行って前記第2の機構の第2の変化量を計算する第2の処理部と、を有することを特徴とする。
【0021】
本発明は、前記光の傾きのずれを測定する第3の処理部と、前記第1の変化量よりも小さい第3の変化量を計算する第4の処理部と、前記ずれ量に応じて前記第1の処理部と、前記第1の処理部と前記第4の処理部とを切り替える切り替え部と、を有することを特徴とする。
【0022】
本発明は、基板の欠陥を検査する光学式検査装置の前記基板へ照射される光の調整方法において、第1の重み付けを行って前記光の傾きを調整することを特徴する。
【0023】
本発明は、第2の重み付けを行って前記光の前記基板上での位置を調整することを特徴とする。
【0024】
本発明は、前記光の傾きのずれを測定し、前記ずれに応じて前記第1の重み付けを行うか否かを判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明は以下の効果を奏する。なお、本発明は、以下の効果をそれぞれ独立して奏する場合もあれば、同時に奏する場合もある。
(1)基板に照射する光の位置合わせを短時間で行うことができる。
(2)基板に照射する光の位置合わせを高精度に行うことができる。
(3)基板に照射する光の位置合わせを広範囲で行うことができる。
(4)基板に照射する光の位置合わせを実質的に自動化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】検査装置の構成。
【図2】表面検査装置の構成。
【図3】光軸調整機構3の詳細。
【図4】チルト量確認画像112,シフト量確認画像113。
【図5】垂直照射時のミラー4a,4bとビーム位置移動量の関係を表す模式図。
【図6】照射光学系調整の概要フローチャート。
【図7】照射光学系におけるチルト量調整のブロック線図。
【図8】照射光学系におけるシフト量調整のブロック線図。
【図9】自動照射光学系調整の概略フローチャート。
【図10】チルト調整の詳細フローチャート。
【図11】シフト調整の詳細フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0028】
図1に検査装置の構成を示す。検査装置は、試料(ウエハ等の基板を含む)を載置し、操作方向に移動する搬送系1111と、光101を基板に照射する照射光学系1112と、試料からの光102(散乱光,反射光等)を検出する検出光学系1113と、検出結果から試料の検査を行う検査処理系1114と、様々な情報を表示し、入力する入出力系1115と、を有する。
【0029】
より、具体的には、搬送系1111は試料を載置する載置部1116と、載置部を移動させる移動部1117とを含む。照射光学系1112は光を発生する光源1と、光を試料へ導く光学素子1118とを含む。検出光学系1113は、試料からの光を検出する光検出器1119を含むが、試料からの光を検出器へ導く光学素子を含んでも良い。検査処理系1114は、検出器の検出結果から試料の欠陥を検査する欠陥処理部1120を有する。入出力系1115は、検査結果や欠陥の情報を表示する表示部1121と、検査条件等を入力する入力部1122とを含む。
【0030】
図2に、本発明の実施例である半導体ウエハの表面を検査する表面検査装置の構成を示す。
【0031】
本実施例の表面検査装置は、搬送系1111の載置部1116として試料8を置く(載置する)検査テーブル19を含み、走査部1117としてXYZθステージ9を含む。なお、搬送系1111はスピンドル等のモータと、ステージとを有し、回転と直進とを行う構成でも良い。照射光学系1112は光源1を含み、調整機構として光量調整機構2,光軸調整機構3、およびズーム機構5を含み、光学素子1118としてミラー6a,6b,6c,6d,レンズ7a,7bとを含む。検出光学系1113は光検出器1119として光電子増倍管等の検出器10を含む、その他、増幅器11,A/D変換機12を含む。検査処理系1114は欠陥処理部1120として欠陥判定機構13,検出欠陥分類機構14を含む。入出力系1115は表示部111を含む。
【0032】
光源1から照射された光101は、λ/2波長板と偏光ビームスプリッタ(PBS)とで構成されたアテネータ等の明るさを調整することができる光量調整機構2,光軸を調整する光軸調整機構3、およびビームエキスパンダ等のズーム機構5を通り、試料8に照射される。光軸調整機構3には撮像装置の一例であるCCDカメラ4a(第1の撮像装置)が設置されている。ズーム機構5から照射された光は垂直斜方切替ミラー6aで垂直光路または斜方光路に切替えられる。垂直に分岐された光はハーフミラー6dを通過し、集光レンズ7aにて集光され試料8に照射される。試料8に照射された光は、反射し、集光レンズ7aを通り、ハーフミラー6dで分岐され、CCDカメラ4b(第2の撮像装置)に到達する。
【0033】
また、垂直斜方切替ミラー6aが光路から抜けている場合は、ビームは斜方光路を進みミラー6b,6cで反射され集光レンズ7bにて試料面に照射される。試料8から反射した光は、垂直照射と同様に集光レンズ7aを通りCCDカメラ4bで撮像される。CCDカメラ4a、4bで撮像された画像は、画像解析、およびフィードバック制御を行う処理部15に取り込まれ画像解析を行い、正しく調整された状態からのビームのずれに関する情報(例えば、光軸の水平方向のずれ量を示すシフト量,光軸の傾きのずれを示すチルト量,形状ずれ量、および明るさのずれ量)を算出し、光量調整機構2,光軸調整機構3、およびズーム機構5それぞれに調整量を指令する。
【0034】
より具体的には、光量調整機構2では、調整量に基づいて、例えばλ/2波長板が回転することになる。また、光軸調整機構3では、調整量に基づいて、後述するチルト機構103およびシフト機構104の少なくとも1つが動作することとなる。
【0035】
このように、CCDカメラ4a、および4bの撮像結果に基づいて調整量を算出し、光量調整機構2,光軸調整機構3、およびズーム機構5それぞれが調整量に基づいて光101のずれを調整することになるので、安定した装置状態を実現することができる。
【0036】
図3に光軸調整機構3の詳細を示す。ミラー17,18にはミラー17,18を回転させるチルト(回転)機構103と、ミラー17,18を移動させるシフト機構104がそれぞれ設置されている。チルト機構としてはモータを、シフト機構としては一方向に移動するステージを用いることができる。ミラー17,18の後ろの光路に配置された固定反射ミラー16を抜けた光はCCDカメラ4aで観察される機構となっている。また固定反射ミラー16で向きを変えられた光はミラー6a,6b等を経由して試料8へ照射される。
【0037】
また、図4に光軸調整機構3に取り付けられたCCDカメラ4aの画像および試料8から反射した光を撮像するCCDカメラ4b画像を示す。
【0038】
光軸調整機構のCCDカメラ4aでは、光軸の水平方向のずれを示すシフト量と光軸の傾きのずれを示すチルト量が確認できる。CCDカメラ4bでは、ビームのチルト量が確認できる。ビームがチルト方向にずれている場合、光軸調整機構3のチルトにてビームを調整する。CCDカメラ4aでは、シフト量とチルト量が観察できるが、チルト量はCCDカメラ4bで確認し、調整を行うため、シフト量として確認できる。
【0039】
チルト量確認画像112,シフト量確認画像113について詳細に説明する。
【0040】
チルト量確認画像112は、一方向のチルト量(第1のチルト量)を1軸114として、第1のチルト量に対して垂直なチルト量(第2のチルト量)を1軸115としてチルト量を表示する。
【0041】
さらに、チルト量確認画像112は、画像を第1のチルト量の軸に対して平行な線(第1の線)116、および第2のチルト量の軸に対して平行な線(第2の線)117を用いて、画面を4分割表示する。目標ビーム位置118は、CCDカメラ4bにおける装置性能正常時のビーム位置である。ビーム位置が目標ビーム位置に近いほど、ずれの無い状態となる。
【0042】
このように目標ビーム位置118付近にビーム位置が調整された画像を表示することで、作業者は容易にビームのチルト量が正しく調整されたことを知ることができる。
【0043】
シフト量確認画像113についても同様のことが言える。シフト量確認画像113は、一方向のシフト量(第1のシフト量)を1軸119として、第1のシフト量に対して垂直なシフト量(第2のシフト量)を1軸120としてシフト量を表示する。
【0044】
さらに、シフト量確認画像113は、画面を第1のシフト量の軸に対して平行な線(第1の線)121、および第2のシフト量の軸に対して平行な線(第2の線)112を用いて、画面を4分割表示する。目標ビーム位置123は、CCDカメラ4bにおける装置性能正常時のビーム位置である。ビーム位置が目標ビーム位置に近いほど、ずれの無い状態となる。このように目標ビーム位置123付近にビーム位置が調整された画像を表示することで、作業者は容易にビームのシフト量が正しく調整されたことを知ることができ、併せてビームの状態を常時監視することができる。
【0045】
なお、チルト量確認画像112,シフト量確認画像113は液晶ディスプレイやCRTディスプレイ等の表示部111でも確認できる。
【0046】
また、チルト量確認画像112,シフト量確認画像113に対して現在のビーム位置およびビームサイズを記述することで、ビーム照射状態の確認もできる。
【0047】
次に、垂直照射時のミラー4a,4bとビーム位置移動量の関係について説明する。
【0048】
図5は垂直照射時のミラー4a,4bとビーム位置移動量の関係を表す模式図である。光101はミラー17もしくはミラー18がチルト機構103により角度θ回転すると、角度2θ光軸方向が変化する。その後光101は、ビームエキスパンダ等のズーム機構5によりN倍に拡大されると光軸方向は角度2θ/N変化する。集光レンズには角度2θ/N変化して入射することになる。この角度変化による試料8上でのビーム位置の変位d203は、集光レンズの焦点距離f202を用いて、
d=f×tan(2θ/N) …(式250)
と表せる。
【0049】
式250がミラーのチルト動作量およびビーム位置移動の関係を表すモデル式となる。斜方照射においても同様にモデル式を構築することができる。
【0050】
変位d203を補正するために必要なチルト動作角度θは式250から
θ=1/(f×tan(2θ/N))×d …(式260)
により求めることができる。チルト機構にモータ等を使用しパルス量で制御する場合には角度θとパルス数の変換を行い必要な補正パルス数を出せばよい。
【0051】
なお、シフト量については、ミラー17,18の移動距離がCCDカメラ4a上での光の移動距離となる。
【0052】
次にこの関係を利用した照射光学系の調整について説明する。
【0053】
図6は照射光学系調整の概要フローチャートである。ステップ5010では、アルミウエハを格納容器から検査装置へ搬送する。アルミウエハは表面に凹凸が形成されているため適度に光が反射し、ビームの位置を把握することができる。ステップ5015ではCCDカメラ4a,4bによりビーム照射位置の測定を行う。ステップ5020では現在のビーム位置と目標ビーム位置とのズレ判定を行う。ズレ量が許容値を超えている場合には、後述するステップ5030に進み、ズレ量が許容値内の場合には後述するステップ5040に進む。ステップ5030では、ビーム位置が目標ビーム位置になるよう光軸調整機構3により調整を実施する。ステップ5040ではアルミウエハを検査装置から格納容器に搬送する。ステップ5050では、評価用ウエハを格納容器から検査装置へ搬送する。ステップ5060では検査を実施し調整後の装置性能評価を行う。ステップ5070では評価用ウエハを検査装置から格納容器に搬送する。
【0054】
次に照射光学系のチルト量,シフト量の自動調整について説明する。
【0055】
まず、チルト量の自動調整について説明する。
【0056】
図7は照射光学系におけるチルト量調整のブロック線図である。
【0057】
チルト量はわずかな角度の変化が大きく影響する。
【0058】
このため、本実施例では、補正量算出処理切替部6010は、ビーム位置のずれ量に応じて粗調整,微調整を行い、さらに粗調整,微調整のパルス算出方式を切替える。この切替えは閾値(微調整閾値)処理によって行われる。
【0059】
静的重みベクトル乗算部6015は、理想値(例えば、あらかじめチルト量補正を実施した際のビーム位置移動量の予測値)と実測値(例えばCCDカメラ4bから測定した値)から求めた静的重み(理想値/実測値)ベクトルWkbと補正するずれ(実測値と目標値との差)との積を求める。
【0060】
静的重みベクトルWkbは、例えばチルト機構のミラー17,18それぞれに対する係数Wkb17,Wkb18を有する。
【0061】
第1パルス算出部6020は、モデル式260を用いてチルト量を粗調整する際の補正パルス量を算出する。この補正パルスは、チルト機構のミラー17用の補正パルス,チルト機構のミラー18用の補正パルスを有する。ここで、補正パルスは静的重みベクトルWkbを乗算したずれ量の関数となる。
【0062】
第2パルス算出部6030は、ずれ量が微調整閾値よりも小さい場合の補正パルス算出を行う。
【0063】
光軸補正機構3は、第1補正パルス算出部6020、もしくは第2補正パルス算出部6030により算出された補正パルス量に基づき、チルト機構104を駆動させるミラー17,18を動作させる。
【0064】
CCDカメラ4bは光軸調整機構3直後および試料8におけるビーム位置を確認する。ずれ量判定部6050は、ずれ量に応じて、補正量算出処理切替部6010の切替を決定する。
【0065】
そしてずれ量がある許容値に達するまで、上記の補正を繰り返す。ずれ量が許容値内になった場合、補正は終了する。
【0066】
次にシフト量の自動調整について説明する。
【0067】
図8は、照射光学系におけるシフト量調整のブロック線図である。
【0068】
静的重みベクトル乗算部6500は、静的重みベクトルWkaと補正するずれ(実測値と目標値との差)との積を求める。
【0069】
静的重みベクトルWkaは、シフト量補正回数がチルト量補正回数と同程度になるために、1より小さい重み(例えば0.9)であり、例えばシフト機構のミラー17,18それぞれに対する係数Wka17,Wka18を有する。
【0070】
シフト補正パルス算出部6510は、ミラー17,18の移動距離がCCDカメラ4a上での光の移動距離となることを用いてシフト量を調整する際の補正パルス量を算出する。
【0071】
この補正パルスは、シフト機構のミラー17用の補正パルス,シフト機構のミラー18用の補正パルスを有する。ここで、補正パルスは静的重みベクトルWkaを乗算したずれ量の関数となる。
【0072】
シフト機構のミラー17,18はこの補正パルスに基づいて動作する。これによって、シフト機構の自動調整が行われる。
【0073】
そしてこの補正動作はCCDカメラ4aによって観察される。
【0074】
そしてずれ量がある許容値に達するまで、上記の補正を繰り返す。ずれ量が許容値内になった場合、補正は終了する。
【0075】
上述したチルト量の自動調整,シフト量の自動調整は、処理部15において実質的に独立、並行して行われる。このようにすることで、従来よりも短時間で自動調整を行うことが可能となる。
【0076】
また、静的重み算出部は、ずれ量に応じて可変となる動的重み算出部としても良い。動的重み算出部であればより精密な調整を行うことができる。
【0077】
次に本実施例の自動照射光学系調整のフローチャートを説明する。
【0078】
図9は自動照射光学系調整の概略図である。
【0079】
まずステップ810でCCDカメラ4a,4bを用いてビーム位置を測定する。
ステップ820では、チルト量,シフト量それぞれについてビーム位置のずれ量を算出する。
【0080】
ステップ830では、ずれ量が許容値内にあるか否かを判定する。
【0081】
許容値内であれば、補正は行われず終了となる。
【0082】
なお、ステップ840,ステップ850に示すようにずれ量の判定は、CCDカメラ4a,4bつまりチルト量,シフト量それぞれについて独立、並行して行われる。
【0083】
ステップ845では、チルト量の調整が行われる。
【0084】
ステップ855では、シフト量の調整が行われる。
【0085】
さらにこれらの調整はそれぞれのずれ量が許容値内となるまで繰り返される。
【0086】
図10はチルト量調整(図9のステップ845)の詳細を説明するフローチャートである。
【0087】
図9にてチルト量調整が必要と判断された場合、まずステップ7050で、CCDカメラ4bの画像におけるずれ量の判定を行い、ずれ量が微調整閾値外の場合には後述する粗調整7060,閾値内の場合には後述する微調整7070に進む。
【0088】
粗調整7060は、チルト補正量決定の際に、静的重みを用いて予測補正量と実測補正量とのずれを低減する調整を行う。
【0089】
ステップ7061では、補正ずれ量に対して静的重みをかける。
【0090】
ステップ7062では、ミラー17,18のチルト補正量を算出する。
【0091】
微調整7070では、ミラー17,18のチルト動作104における駆動速度を粗調整動作より遅くし、駆動精度を向上させ、微小量ずつ動かすことで高精度なビーム位置の補正を行う。
【0092】
ステップ7071では、ミラー17,18の駆動速度を粗調整動作より低速に設定する。ステップ7072では、CCDカメラ4bにおけるビーム位置のずれ量に応じて、ミラー17,18の微小チルト補正量を算出する。
【0093】
ステップ7080では前述したステップ7060もしくは7070にて算出した補正量にてチルト機構104のミラー17,18を駆動させる。
【0094】
次にシフト量調整の詳細について説明する。
【0095】
図11は、シフト量調整(図9のステップ855)の詳細を説明するフローチャートである。
【0096】
図9にてシフト量調整が必要と判断された場合、ステップ8551でシフトずれ量に静的重みをかける。
【0097】
ステップ8552ではミラー17,18のシフト補正量を算出する。
【0098】
ステップ8553では、ステップ8552で算出したシフト補正量に基づいてシフト量の調整を行う。
【0099】
上述した本実施例では、例えば以下の効果を奏する。
【0100】
照射光学系の調整において、粗調整と微調整を組み合わせることで、効率的な調整により時間短縮が図れる。
【0101】
粗調整では、装置光学系をモデル化してシフト量・チルト量の補正を行う。これに対し静的重みを用いることで、モデルと実測で生じる違いを低減し、広範囲・短時間・高精度の合わせ込みができる。
【0102】
微調整は、最小補正量で補正を繰り返すことで、粗調整のモデルでは吸収しきれない実際との微小な差や外乱に対応することができる。
【0103】
さらに、補正が収束しないハンチング現象も防止できる。
【0104】
また、光軸調整機構の駆動速度を低速に設定することで高精度な駆動を実現し、粗調整では補正できない微小な補正を実現する。
【0105】
さらに、光軸調整機構の駆動速度を低速に設定することで駆動時に発生する振動を低減する効果も得られる。
【0106】
ビームのチルト量とシフト量を自動調整することで、安定した装置状態を実現することができる。さらに従来では照射光学系の調整に高い知識・技術・経験を必要とし、時間も多く必要としていたが、本実施例では、容易にかつ迅速に調整ができる。
【0107】
また、半導体の製造工場では製造ラインに本実施例のような表面検査装置等の検査装置を配置し、製造ラインの発塵状態等を監視している。照射光学系を搭載している装置ならば、安定的な感度を出すために、照射光学系の状態の安定性が不可欠である。調整時間を短時間にすることで、容易に調整を実施でき装置状態を安定に保て、装置稼働時間も向上させることができる。
【0108】
複数製造ラインがある場合には、各装置の照射光学系状態の差異が機差に繋がる。本実施例のように自動化することで、手動調整に比べ差異は低減でき、機差を低減できる。
【0109】
本発明は実施例に限定されない。チルト量の調整,シフト量の調整はそれぞれ別個に採用しても良い。
【0110】
なお、本発明は、ウエハ以外の、ハードディスク,液晶基板等の基板検査に適用できる。さらに、本発明は楕円球を用いて散乱光を集光する方式のウエハ検査装置にも適用できるし、パターンの形成されたウエハの欠陥を検査するパターン付きウエハ検査装置や、ハードディスクの欠陥を検査するハードディスク検査装置にも適用可能である。
【0111】
また、搬送系は、Xステージと、Yステージと、Zステージと、θステージとを有し、XY方向に走査する構成であっても良いし、照射光学系によって基板に照射されるレーザの形状は線状であっても良いし、検出光学系は、ミラー,レンズ等を用いた結像系であっても良いし、パターンからの回折光を除去する空間フィルタを備えていても良いし、検出器は、時間遅延積分型センサやCCDセンサであっても良い。
【符号の説明】
【0112】
1 光源
2 光量調節機構
3 光軸調整機構
4 CCDカメラ
5 ズーム機構
6,17,18 ミラー
7 集光レンズ
8 試料
9 XYZθステージ
10 検出器
11 増幅器
12 A/D変換機
13 欠陥判定機構
14 検出欠陥分類機構
15 処理部
103 チルト機構
104 シフト機構
6015 静的重み算出部
6020 第1パルス算出部(粗調整)
6030 第2パルス算出部(微調整)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の欠陥を検査する光学式検査装置において、
前記基板へ第1の光を照射する照射光学系と、
前記基板からの第2の光を検出する検出光学系と、
前記検出光学系の検出結果に基づいて前記欠陥を検出する検査処理部と、
前記第1の光の傾きを変化させる第1の機構と、
前記第1の光の前記基板上での位置を変化させる第2の機構と、
第1の重み付けを行って前記第1の機構の第1の変化量を計算する第1の処理部と、
第2の重み付けを行って前記第2の機構の第2の変化量を計算する第2の処理部と、を有することを特徴とする光学式検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置において、
前記光の傾きのずれを測定する第3の処理部と、
前記第1の変化量よりも小さい第3の変化量を計算する第4の処理部と、
前記ずれ量に応じて前記第1の処理部と、前記第1の処理部と、前記第4の処理部とを切り替える切り替え部と、を有することを特徴とする光学式検査装置。
【請求項3】
基板の欠陥を検査する光学式検査装置の前記基板へ照射される光の調整方法において、
第1の重み付けを行って前記光の傾きを調整し、
第2の重み付けを行って前記光の前記基板上での位置を調整することを特徴とする調整方法。
【請求項4】
請求項3に記載の調整方法において、
前記光の傾きのずれを測定し、
前記ずれに応じて前記第1の重み付けを行うか否かを判断することを特徴とする調整方法。
【請求項1】
基板の欠陥を検査する光学式検査装置において、
前記基板へ第1の光を照射する照射光学系と、
前記基板からの第2の光を検出する検出光学系と、
前記検出光学系の検出結果に基づいて前記欠陥を検出する検査処理部と、
前記第1の光の傾きを変化させる第1の機構と、
前記第1の光の前記基板上での位置を変化させる第2の機構と、
第1の重み付けを行って前記第1の機構の第1の変化量を計算する第1の処理部と、
第2の重み付けを行って前記第2の機構の第2の変化量を計算する第2の処理部と、を有することを特徴とする光学式検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置において、
前記光の傾きのずれを測定する第3の処理部と、
前記第1の変化量よりも小さい第3の変化量を計算する第4の処理部と、
前記ずれ量に応じて前記第1の処理部と、前記第1の処理部と、前記第4の処理部とを切り替える切り替え部と、を有することを特徴とする光学式検査装置。
【請求項3】
基板の欠陥を検査する光学式検査装置の前記基板へ照射される光の調整方法において、
第1の重み付けを行って前記光の傾きを調整し、
第2の重み付けを行って前記光の前記基板上での位置を調整することを特徴とする調整方法。
【請求項4】
請求項3に記載の調整方法において、
前記光の傾きのずれを測定し、
前記ずれに応じて前記第1の重み付けを行うか否かを判断することを特徴とする調整方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−252871(P2011−252871A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128412(P2010−128412)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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