説明

光学機器用遮光部材および光学機器用遮光部材の製造方法並びに積層体

【課題】薄型であっても、熱による変形や反りを防止し、平面性を損なうことがなく、また、型抜き加工による基材端部の浮きや剥がれの発生も防止することができる、高性能一眼レフカメラ、コンパクトカメラ、ビデオカメラ、携帯電話、プロジェクタなどに好適に用いることができる光学機器用遮光部材を提供することを目的とする。
【解決手段】2枚の厚み方向で熱伸縮性が異なる樹脂フィルム11の間に、樹脂層12が設けられている基材1と、前記基材1の少なくとも片面に形成された遮光膜2とからなるように構成する。また、好ましくは、前記熱伸縮性が異なる樹脂フィルム11に熱を加えたときに、凹面となる面との間に樹脂層12が設けられているように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高性能一眼レフカメラ、コンパクトカメラ、ビデオカメラ、携帯電話、プロジェクタなどの光学機器のシャッター、絞り部材、ギャップ調整材として好適に用いられる光学機器用遮光部材に関し、特に耐熱性が必要な用途に用いられる光学機器用遮光部材および光学機器用遮光部材の製造方法並びに積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
高性能一眼レフカメラ、コンパクトカメラ、ビデオカメラなどに対する小型化、軽量化の要求により、金属材料により形成されていた光学機器のシャッター、絞り部材、ギャップ調整材がプラスチック材料へと代わりつつある。
【0003】
このようなプラスチック材料の遮光部材としては、基材フィルムにカーボンブラック、滑剤、微粒子を含有する遮光膜を設けた遮光性フィルムが知られている(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−274218号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】WO2006/016555号公報(背景技術)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら近年、高性能一眼レフカメラ、コンパクトカメラ、ビデオカメラなどの更なる小型化、軽量化を図るために遮光部材の薄型化が求められる傾向にある。さらに、光学機器の小型化に伴い、光学機器のランプなどの熱源と遮光部材との間隔が狭くなったり、遮光部材を光学機器へ組み込む際に、高い熱を必要とする工程が加わるなど、遮光部材に耐熱性が求められるようになっていきている。
【0006】
しかし、小型化、軽量化を図るために遮光部材を薄型化するために、上述のような遮光部材において、単に基材フィルムや遮光膜を薄膜化した場合に、遮光部材に高い熱を加えると、基材フィルムに起因して、遮光部材が波状に変形を起こし、平面性を損なってしまうといった問題が発生した。
【0007】
そこで、基材フィルムとして、耐熱性を有するフィルムを用いることが考えられる。しかし、このような耐熱性を有するフィルムを用いた場合であっても、高い熱が加わると、フィルムに起因して遮光部材が、反りを発生し、平面性を損なう場合があることがわかった。
【0008】
そこで、本発明は、厚みを薄くしつつ、熱による反りや変形を防止した光学機器用遮光部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決すべく鋭意研究した結果、ガラス転移温度が比較的高い耐熱性を有するフィルムは、製造過程において、溶液流延法や溶融押出成型(Tダイ)法などによって成型されるため、フィルムの一方の面と他方の面でフィルム成型時の環境が異なることで、厚み方向で熱伸縮性が異なり、加温すると、反りを発生して平面性を損なうことがわかった。
【0010】
そこで、基材として、2枚の樹脂フィルムの間に樹脂層が設けられたものを用いることで、薄型であっても、熱による変形や反りを防止し、平面性を損なうことがない光学機器用遮光部材とすることができることを見出し本発明に至ったものである。
【0011】
本発明の光学機器用遮光部材は、基材と、前記基材の少なくとも片面に形成された遮光膜とからなる光学機器用遮光部材であって、前記基材は、厚み方向で熱伸縮性が異なる2枚の樹脂フィルムの間に、樹脂層が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
また、前記基材は、前記熱伸縮性が異なる樹脂フィルムに熱を加えたときに、凹面となる面又は凸面となる面どうしを、樹脂層側に配置してなることを特徴とするものである。
【0013】
また、前記熱伸縮性が異なる樹脂フィルムは、ポリイミドフィルムであることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の光学機器用遮光部材の製造方法は、基材と、前記基材の少なくとも片面に形成された遮光膜とからなる光学機器用遮光部材を作製する方法であって、a)2枚の厚み方向に熱伸縮性が異なる樹脂フィルムの、前記熱伸縮性が異なる樹脂フィルムに熱を加えたときに、凹面となる面又は凸面となる面どうしを、樹脂層を介して貼り合わせて基材とする工程と、b)厚み方向に熱伸縮性が異なる樹脂フィルムの一方の面に遮光膜を形成する工程とを含む工程を行うことを特徴とするものである。
【0015】
本発明の積層体は、基材と、前記基材の少なくとも片面に形成された機能性層とからなる積層体であって、前記基材は、厚み方向で熱伸縮性が異なる2枚の樹脂フィルムの間に樹脂層が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基材として、熱伸縮性が異なる2枚の樹脂フィルムの間に樹脂層が設けられたものを用いることで、薄型であっても、熱による変形や反りを防止し、平面性を損なうことがない光学機器用遮光部材が得られる。また、このような遮光部材は、高性能一眼レフカメラ、コンパクトカメラ、ビデオカメラ、携帯電話、プロジェクタなどに好適に用いることができる。
【0017】
また、熱伸縮性が異なる樹脂フィルムに熱を加えたときに、凹面となる面との間に樹脂層を設けた場合には、型抜き加工による基材端部の浮きや剥がれの発生も防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の光学機器用遮光部材(以下、「遮光部材」という場合もある)について説明する。本発明の光学機器用遮光部材は、基材と、前記基材の少なくとも片面に形成された遮光膜とからなる光学機器用遮光部材であって、前記基材は、厚み方向で熱伸縮性が異なる2枚の樹脂フィルムの間に、樹脂層が設けられていることを特徴とするものである。以下、本発明の光学機器用遮光部材の実施の形態について説明する。
【0019】
本発明の遮光部材として用いられる熱伸縮性が異なる樹脂フィルムとしては、製造過程において、溶液流延法や溶融押出成型(Tダイ)法などによって成型される樹脂フィルムがあげられ、例えば、このような成型方法で製造されたポリエステル、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル、ポリオレフィン、セルロース樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミドなどの樹脂フィルムを用いることができる。その中でもポリイミドフィルムやポリアミドフィルムなどのガラス転移温度が200℃以上の樹脂フィルムが特に好ましい。ガラス転移温度が200℃以上の樹脂フィルムを用いることにより、カメラなどのレンズを実装するリフロー半田工程や鉛フリーの半田付けなどの際の高い温度(250℃以上)の熱が加わる工程でも波状の変形や反りを起こすことなく、平面性を損なうことを防止することができる。このような樹脂フィルムの厚みは、7〜50μmが好ましい。特に薄型化の観点からは薄いほどよいが、機械的強度や加工のしやすさなどを考慮すると、より好ましくは、10〜30μmである。
【0020】
また、溶液流延法や溶融押出成型(Tダイ)法などによって成型される樹脂フィルムは、フィルムの一方の面と他方の面でフィルム成型時の環境が異なることで、厚み方向で熱伸縮性が異なり、このような樹脂フィルムに熱を加えると、反りを発生して平面性を損ないやすい。そのため、熱を加えたときに、凹面となる面、又は凸面となる面どうしを、樹脂層側に配置してなることが好ましい。
【0021】
また、遮光部材を型抜き処理する際には、型抜き刃による遮光部材を押す力と、その力に反発する樹脂フィルムが発生する。この樹脂フィルムの反発する力が型抜き刃による遮光部材を押す力より大きくなると、型抜き処理された遮光部材端部の樹脂フィルムと樹脂層との間に浮きや剥がれが発生してしまう。熱を加えたときに凸面となる面どうしを樹脂層側に配置してなる場合では、製造工程や加工工程で加えられる熱による熱伸縮性が異なる樹脂フィルムの反りの力が樹脂層を押す力とすることができないが、凹面となる面どうしを樹脂層側に配置してなることで、製造工程や加工工程で加えられる熱による熱伸縮性が異なる樹脂フィルムの反りの力が樹脂層を押す力になるため、型抜き処理された遮光部材端部に浮きや剥がれを発生しにくくなり、特に好ましい。なお、熱を加えたときに反りを発生しない樹脂フィルムどうしを樹脂層側に配置してなる場合にも、凹部となる面どうしを樹脂層側に配置しなる場合のような効果は得られない。
【0022】
本発明では、このような熱伸縮性が異なる2枚の樹脂フィルムの間に設けられる樹脂層は、2枚の熱伸縮性が異なる樹脂フィルムを貼り合せることができる樹脂層であればどのような樹脂からなるものでもよいが、遮光部材の腰や耐熱性を向上させるためには、熱硬化型樹脂及び/又は、電離放射線硬化型樹脂からなるものが好ましい。このような熱硬化型樹脂及び/又は電離放射線硬化型樹脂としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂などのアクリレート系樹脂などの熱や電離放射線により硬化膜を形成することができる樹脂を用いることができ、またこのような樹脂を2種以上混合して用いることもできる。また、常温硬化型樹脂を用いることも可能である。特に、樹脂フィルムとしてポリイミドフィルムを用いるときには、紫外線硬化型樹脂を用いると、紫外線硬化型樹脂の架橋硬化に用いる開始剤の選定に注意が必要になるため、熱硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂を用いることが好ましい。
【0023】
このように樹脂層により、2枚の熱伸縮性が異なる樹脂フィルムどうしを貼り合せる接着機能だけでなく、遮光部材の腰を調整する機能を付与することができる。本発明においては、樹脂層が硬化しすぎて遮光部材の可撓性を損なうことがないよう、比較的可撓性のある樹脂を混合することも可能である。このような可撓性を付与するための樹脂としては、熱可塑性樹脂を用いることもでき、ガラス転移温度が低い樹脂や、高分子の主鎖が長い樹脂を用いることができる。可撓性のある樹脂を含む場合でも遮光部材として必要な腰を得るために、硬化型樹脂は全樹脂成分に対して、好ましくは50重量%以上、70重量%以上がより好ましい。
【0024】
樹脂層の厚みは、0.5〜10μmが好ましく、1〜8μmであることがより好ましく、4〜6μmであることがさらに好ましい。0.5μm以上とすることにより遮光部材の腰を強くすることができ、10μm以下とすることにより、型抜き加工時に樹脂層の端部が割れたり、樹脂層と熱伸縮性が異なる樹脂フィルムとの界面が剥がれたりすることを防止することができ、遮光部材の薄型化を図ることができる。
【0025】
また、少なくとも2枚の樹脂フィルムの間に樹脂層を有する基材の厚みとしては、16〜110μm、特に薄型化の観点から16〜60μmが好ましく、さらに好ましくは、40μm以下である。さらに上述した範囲のうち機械的強度の観点から20μm以上が好ましい。本発明では、少なくとも2枚の熱伸縮性が異なる樹脂フィルムを上述した樹脂層を介して貼り合せて基材とするため、樹脂フィルムだけでは充分ではなかった熱による反りや変形を防止することができ、遮光部材の使用用途であるシャッターや絞り部材、ギャップ調整材として使用できるようになる。また、腰を強くすることによって、シャッターや絞り部材、ギャップ調整材として抜き加工を行う際に遮光部材がたわみにくいため、抜き加工での不良を少なくすることができる。
【0026】
このような少なくとも2枚の熱伸縮性が異なる樹脂フィルムで樹脂層を挟み込んだ基材を用いることにより、光学機器用遮光部材としたときに、必要な耐熱性を得ることができ、カメラなどのレンズを実装するリフロー半田工程や鉛フリーの半田付けなどの高い温度がかけられる工程でも波状の変形や反りを起こすことなく、平面性を損なうことを防止することができる。
【0027】
また、熱を加えたときに、凹面となる面どうしを、樹脂層を介して貼り合わせることで、製造工程や加工工程で加えられる熱による熱伸縮性が異なる樹脂フィルムの反りの力が樹脂層を押す力になるため、型抜き処理された遮光部材端部に浮きや剥がれを発生しにくくなり、特に好ましい。
【0028】
また、基材として、前記熱伸縮性が異なる樹脂フィルムに熱を加えたときに、凹面となる面又は凸面となる面を、樹脂層に配置してなる基材を例に説明したが、2枚以上の樹脂フィルムを有するものであってもよく、例えば2枚の樹脂フィルムで樹脂層を挟み込み、さらに、もう一枚の樹脂フィルムを樹脂層で貼り合せた基材を用いることもできる。
【0029】
次に、厚み方向に熱伸縮性が異なる樹脂フィルムの少なくとも片面に形成される遮光膜は、バインダー樹脂、カーボンブラック、微粒子を含有してなるものである。
【0030】
遮光膜に用いられるバインダー樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン/ポリブタジエン樹脂、ポリウレタン系樹脂、アルキド樹脂、アクリル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリエーテルアクリレート系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂などの熱可塑性樹脂または熱硬化型樹脂があげられ、これらの1種又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0031】
バインダー樹脂の含有率は、遮光膜中50〜80重量%が好ましく、55〜75重量%とすることがより好ましい。バインダー樹脂を50重量%以上とすることにより、基材と遮光膜との接着性が低下するのを防止することができ、80重量%以下とすることにより、遮光性、摺動性、艶消し性などの遮光膜の物性が低下するのを防止することができる。
【0032】
次に、カーボンブラックは、遮光膜を黒色に着色し遮光性を付与すると共に、導電性を付与し静電気による帯電を防止するための役割をもつものである。このようなカーボンブラックの平均粒径は、充分な遮光性を得るため1μm以下が好ましく、0.5μm以下とすることがさらに好ましい。
【0033】
カーボンブラックの含有率は、遮光膜中5〜20重量%が好ましく、10〜20重量%とすることがより好ましい。カーボンブラックを5重量%以上とすることにより、遮光性及び導電性を付与することができ、20重量%以下とすることにより、接着性や耐擦傷性、塗膜強度の低下を防止することができ、またコスト高となるのを防止することができる。
【0034】
次に、遮光膜に含有される微粒子は、表面に微細な凹凸を形成させることで遮光部材表面に入射する光の反射を少なくし、表面の光沢度(鏡面光沢度)を低下させ、遮光部材とした際の艶消し性を向上させるためのものである。
【0035】
このような微粒子としては、架橋アクリルビーズなどの有機系、シリカ、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、酸化チタンなどの無機系いずれのものも用いることができ、その中でも無機系のものがつや消し効果が高いため好ましく、特に、微粒子の分散性・低コストなどの観点からシリカを用いることが好ましい。また、これらの1種又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0036】
微粒子の平均粒径は、1〜10μmが好ましく、1〜6μmとすることがより好ましい。このような範囲とすることにより、遮光部材の表面に微細な凹凸が形成され、艶消し性が得られるためである。
【0037】
微粒子の含有率は、遮光膜中1〜10重量%が好ましく、1〜5重量%とすることがより好ましい。微粒子を1重量%以上とすることにより、表面の光沢度(鏡面光沢度)が増加して艶消し性が低下するのを防止することができ、10重量%以下とすることにより、遮光部材の摺動による微粒子の脱落が生じたり、摺動性の低下を招くことを防止することができる。
【0038】
また、遮光膜中には、バインダー樹脂、カーボンブラック、微粒子のほかに、滑剤を含有させることが好ましい。滑剤を含有させることにより、遮光部材の表面の摺動性を向上させ、シャッターや絞り部材などに加工した際、作動時の摩擦抵抗を小さくすると共に、表面の耐擦傷性を向上させることができる。このようなものとしては、固体状のものであれば有機系、無機系いずれのものも用いることができ、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックスなどの炭化水素系滑剤、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などの脂肪酸系滑剤、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどのアミド系滑剤、ステアリン酸モノグリセリドなどのエステル系滑剤、アルコール系滑剤、金属石鹸、滑石、二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤、シリコーン樹脂粒子、ポリテトラフッ化エチレンワックスなどのフッ素樹脂粒子、架橋ポリメチルメタクリレート粒子、架橋ポリスチレン粒子などがあげられるが、特に有機系のものが好ましく用いられる。また、これらの1種又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0039】
このような滑剤は、粒子状のものが好ましく、平均粒径は、3〜20μmが好ましく、5〜10μmとすることがより好ましい。このような範囲とするのは、表面に適切な凹凸が形成され、摺動性が得られるためである。
【0040】
滑剤の含有率は、遮光膜中5〜20重量%が好ましく、10〜20重量%とすることがより好ましい。滑剤を5重量%以上とすることにより、表面に適切な凹凸が形成され摺動性を得ることができ、20重量%以下とすることにより、カーボンブラックの相対的含有量を高くすることができ、遮光性及び導電性が低下するのを防止することができる。
【0041】
本発明の遮光膜は、本発明の機能を損なわない場合であれば、難燃剤、抗菌剤、防かび剤、酸化防止剤、可塑剤、レべリング剤、流動調整剤、消泡剤、分散剤などの種々の添加剤を含有させることができる。
【0042】
遮光膜の厚みは、5〜30μmが好ましく、5〜20μmとすることがより好ましい。5μm以上とすることにより、遮光膜にピンホールなどが発生して遮光性が低下することを防止することができ、充分な遮光性を得ることができる。また、30μm以下とすることにより、遮光膜に割れが発生して遮光性が低下することや、遮光膜が基材から脱落することを防止することができる。
【0043】
このような遮光部材を構成する樹脂層や遮光膜は、樹脂などを適当な溶媒に溶解させた塗布液を、公知の塗工法により塗布し、乾燥・硬化させて形成することができる。
【0044】
また、樹脂フィルムと樹脂層や遮光膜との接着を向上させるため、必要に応じてアンカー処理やコロナ処理などを行うこともできる。
【0045】
以上のように、本発明の光学機器用遮光部材は、少なくとも2枚の樹脂フィルムが硬化型樹脂を含む樹脂層を介して貼り合わせられた基材と、前記基材の少なくとも片面に形成された遮光膜とからなることから、レンズを実装するリフロー半田工程や鉛フリーの半田付けなどの高い温度がかけられる工程でも波状の変形や反りを起こすことなく、平面性を損なうことを防止することができるため、高性能一眼レフカメラ、コンパクトカメラ、ビデオカメラ、携帯電話、プロジェクタなどの光学機器のシャッターや絞り部材、ギャップ調整材として好適に用いることができる。
【0046】
本発明の積層体について説明する。本発明の積層体は、基材と、前記基材の少なくとも片面に形成された機能性層とからなる積層体であって、前記基材は、2枚の厚み方向で熱伸縮性が異なる樹脂フィルムの間に、硬化型樹脂を含む樹脂層が設けられていることを特徴とするものである。以下、本発明の積層体の実施の形態について説明する。
【0047】
本発明の積層体として用いられる樹脂フィルムとしては、上述の光学機器用遮光部材と同様な樹脂フィルムを用いることでき、樹脂層についても、同様な樹脂を用いることができる。
【0048】
基材の少なくとも片面に形成される機能性層は、上述の遮光性を有する遮光性層のほか、他の部材との接着性を向上させるための易接着層、印刷などを行う記録層、帯電を防止する帯電防止層、滑り性を向上させる易滑層などがある。
【0049】
本発明の光学機器用遮光部材の製造方法について説明する。基材と、前記基材の少なくとも片面に形成された遮光膜とからなる光学機器用遮光部材を作製する方法であって、a)厚み方向に熱伸縮性が異なる2枚の樹脂フィルムの、前記熱伸縮性が異なる樹脂フィルムに熱を加えたときに、凹面となる面、又は凹面となる面どうしを、樹脂層を介して貼り合わせて基材とする工程と、b)厚み方向に熱伸縮性が異なる樹脂フィルムの一方の面に遮光膜を形成する工程とを含む工程を行うことを特徴とするものである。本発明の光学機器用遮光部材の製造方法の実施の形態について説明する。
【0050】
まず、厚み方向に熱伸縮性が異なる2枚の樹脂フィルムの、熱を加えたときに、凹面となる面、又は凹面となる面どうしを、樹脂層を介して貼り合わせて基材とする工程について説明する。
【0051】
光学機器用遮光部材の製造方法に用いられる厚み方向に熱伸縮性が異なる樹脂フィルムとしては、上述の樹脂フィルムを用いることができる。
【0052】
また、樹脂層についても、上記光学機器用遮光部材に用いられる樹脂層を用いることができる。
【0053】
このような2枚の樹脂フィルムの、熱を加えたときに凹面となる面、又は凹面となる面どうしを、樹脂層を介して貼り合わせて基材とする。2枚の樹脂フィルムの熱による伸縮性は、同じ程度が好ましく、2枚の樹脂フィルムをそれぞれ一辺が5cmの正方形をサンプル片とした場合に、300℃、10秒の熱処理工程後の2枚の樹脂フィルムの4隅(角)の反りを測定し、その平均値を各樹脂フィルムの反り値とした場合に、反り値の差が3mm以下であることが好ましく、より好ましくは、2mm以下である。サンプル片どうしの反りの差をこの範囲とすることにより、積層体に熱をかけたときに、基材に起因する反りをさらに防止することができる。
【0054】
次に、厚み方向に熱伸縮性が異なる樹脂フィルムの一方の面に遮光膜を形成する工程は、上述した熱伸縮性が異なる樹脂フィルムどうしを、樹脂層を介して貼り合せた基材の、少なくとも一方の面に、上述した遮光膜を形成することのほか、熱伸縮性が異なる樹脂フィルムの一方の面に遮光膜を形成した後、上述の基材とする場合も含むものである。熱伸縮性が異なる樹脂フィルムの一方の面に遮光膜を形成する場合には、特に、熱伸縮性が異なる樹脂フィルムの表面になる面に遮光膜を形成することが、遮光部材表面に遮光膜が形成されるため好ましい。
【0055】
このような工程により、光学機器用遮光部材を製造することにより、樹脂フィルムに起因する反りや変形を防止することができる。また、使用する樹脂フィルムごとに、カール防止層を設計する必要がないため、製造が容易かつ簡便である。
【0056】
また、熱を加えたときに凹面となる面との間に、樹脂層を設けることにより、製造工程や加工工程で加えられる熱による熱伸縮性が異なる樹脂フィルムの反りの力が樹脂層を押す力になるため、型抜き処理された遮光部材端部に浮きや剥がれを発生しにくくなり、特に好ましい。
【実施例】
【0057】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0058】
[実施例1]
厚み25μmの厚み方向に熱伸縮性が異なる樹脂フィルム(ポリイミドフィルム、カプトンH:東レ・デュポン社)の加熱により凹形状に変形する面に、下記樹脂層用塗布液を塗布・乾燥し、厚み4μmの樹脂層を形成し、樹脂層面に厚み25μmの厚み方向に熱伸縮性が異なる樹脂フィルム(ポリイミドフィルム、カプトンH:東レ・デュポン社)の加熱により凹形状に変形する面を貼り合せ、厚み54μmの基材を作製した。
【0059】
<樹脂層用塗布液>
・ポリエステル系樹脂 10部
(バイロン#300:東洋紡績社)
・硬化剤 1部
(コロネートL:日本ポリウレタン工業社、固形分45%)
・希釈溶剤 20部
【0060】
次いで、作製された基材両面に、下記遮光膜用塗布液を塗布・乾燥し、厚み10μmの遮光膜をそれぞれ形成し、実施例1の光学機器用遮光部材を作製した。
【0061】
<遮光膜用塗布液>
・アクリル系樹脂 92部
(アクリディックA804:DIC社、固形分50%)
・硬化剤 25部
(バーノックDN980:DIC社、固形分75%)
・カーボンブラック 16.3部
(バルカンXC-72:キャボット社)
・微粒子 2.6部
(シリカTS100:デグサ社、平均粒径4μm)
・滑剤 16.3部
(セリダスト3620:ヘキスト社、平均粒径8.5μm)
・希釈溶剤 100部
【0062】
[実施例2]
実施例1の厚み方向に熱伸縮性が異なる樹脂フィルム(ポリイミドフィルム、カプトンH:東レ・デュポン社)を、加熱により凸形状に変形する面どうしを貼り合せた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の光学機器用遮光部材を作製した。
【0063】
[実施例3]
実施例1の樹脂層塗布液を下記樹脂層塗布液に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の光学機器用遮光部材を作製した。
【0064】
<樹脂層用塗布液>
・アクリル系樹脂 15.38部
(アクリディック A807:DIC社、固形分50%)
・ウレタン系樹脂 30.45部
(SKダイン 1473H:綜研化学社、固形分30%)
・硬化剤 3.08部
(タケネートD110N:三井化学ポリウレタン社、固形分75%)
・硬化剤 2.03部
(コロネートL45E:綜研化学社、固形分45%)
・希釈溶剤 73.20部
【0065】
[実施例4]
実施例1の樹脂層塗布液を下記樹脂層塗布液に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の光学機器用遮光部材を作製した。
【0066】
<樹脂層用塗布液>
・アクリル系樹脂 22.75部
(SKダイン 1439U:綜研化学社、固形分30%)
・硬化剤 0.34部
(E−50C:綜研化学社、固形分45%)
・希釈溶剤 64部
【0067】
[実施例5]
実施例4の厚み方向に熱伸縮性が異なる樹脂フィルム(ポリイミドフィルム、カプトンH:東レ・デュポン社)を、加熱により凸形状に変形する面どうしを貼り合せた以外は、実施例4と同様にして、実施例5の光学機器用遮光部材を作製した。
【0068】
[実施例6]
実施例1の厚み方向に熱伸縮性が異なる2枚の樹脂フィルムを、厚み12.5μmのポリイミドフィルム(カプトンH:東レ・デュポン社)に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例6の光学機器用遮光部材を作製した。
【0069】
[実施例7]
実施例1の厚み方向に熱伸縮性が異なる樹脂フィルムの一方を、厚み12.5μmのポリイミドフィルム(カプトンH:東レデュポン社)に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例7の光学機器用遮光部材を作製した。
【0070】
[比較例1]
実施例1の基材を、厚み50μmのポリエステルフィルム(ルミラーT60:東レ社)に代えた以外は、実施例1と同様にして、基材両面に遮光膜を形成し、比較例1の光学機器用遮光部材を作製した。
【0071】
[比較例2]
実施例1の基材を、厚み50μmのポリイミドフィルム(カプトンH:東レ・デュポン社)に代えた以外は、実施例1と同様にして、基材両面に遮光膜を形成し、比較例2の光学機器用遮光部材を作製した。
【0072】
実施例1〜7、および比較例1、2で用いた樹脂フィルムの熱伸縮性を確認するために、樹脂フィルムを、一辺が5cmの正方形に断裁し、各サンプル片を、300℃、10秒の環境下に静置後、サンプル片の4隅(角)の反りを測定し、その平均値を各樹脂フィルムの反り値とした。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
実施例1〜7、および比較例1〜2の光学機器用遮光部材について、下記項目の評価を行った。結果を表2に示す。
【0075】
[平面性]
実施例1〜7、および比較例1〜2の光学機器用遮光部材を、一辺が5cmの正方形に断裁しサンプル片とした。各サンプル片を、300℃、10秒の環境下に静置後、サンプル片の端部の浮きを測定した。熱処理前と熱処理後で、サンプル片の端部の浮きの差が5mm以上あったものを「×」、3mm以上5mm未満だったものを「△」、3mm未満だったものを「○」とした。
【0076】
[加工適性]
実施例1〜7、および比較例1〜2の光学機器用遮光部材、100枚について型抜き機による型抜きを行った。遮光部材端部の樹脂フィルムと樹脂層との間で端部に浮きや剥がれが発生したものが、100枚中5枚以上あったものを「×」、端部に浮きや剥がれが発生したものが、100枚中1〜4枚あったものを「△」、浮きや剥がれが発生しなかったものを「○」とした。
【0077】
[耐熱性]
実施例1〜7、および比較例1〜2の光学機器用遮光部材、100枚について型抜き機による型抜きを行った後、300℃、10秒の熱処理を行った。遮光部材端部の樹脂フィルムと樹脂層との間で端部に浮きや剥がれが発生したものが、100枚中10枚以上あったものを「×」、端部に浮きや剥がれが発生したものが、100枚中1〜9枚あったものを「△」、浮きや剥がれが発生しなかったものを「○」とした。
【0078】
[遮光性]
実施例1〜7、および比較例1〜2の光学機器用遮光部材を、マクベスの濃度計TD-904により、透過濃度をUVフィルタで測定し、透過濃度が4.0未満のものを「×」、4.0以上のものを「○」とした。
【0079】
【表2】

【0080】
実施例1〜7、比較例1、2の光学機器用遮光部材は遮光性に優れるものであった。
【0081】
また、実施例1〜7の光学機器用遮光部材は、2枚の樹脂フィルムの間に、硬化型樹脂を含む樹脂層が設けられているため、遮光部材の腰が十分なものであった。
【0082】
実施例1〜6の光学機器用遮光部材は、熱伸縮性が同等の面どうし(熱を加えたときに凸になる面どうし、又は凹になる面どうし)を、樹脂層を介して貼り合せているため、平面性が良好なものであった。
【0083】
実施例1、3、4、6の光学機器用遮光部材は、熱を加えたときに凹になる面どうしを、硬化型樹脂を含む樹脂層を介して貼り合せているため、樹脂フィルムの反りによる力が、型抜き処理の断裁刃の力に反発する樹脂フィルムの力を弱めることができるため、端部の浮きや剥がれを防止することができるものであった。
【0084】
実施例2の光学機器用遮光部材は、熱を加えたときに凸になる面どうしを、硬化型樹脂を含む樹脂層を介して貼り合せているが、樹脂フィルムと樹脂層との接着力が強いため、端部の浮きや剥がれを防止することができるものであった。
【0085】
実施例5の光学機器用遮光部材は、実施例2と同様に、熱を加えたときに凸になる面どうしを、硬化型樹脂を含む樹脂層を介して貼り合せたものである。熱を加えたときに、凸面となる面どうしを、樹脂層を介して貼り合わせたため、貼り合わせ時の熱による樹脂フィルムの反りの力が、樹脂層から剥がれる力になり、型抜き処理された遮光部材端部に浮きや剥がれを完全に防止することができないものであった。また、型抜き処理だけでは、サンプル片の端部が樹脂フィルムと樹脂層の間で、浮きや剥がれが発生していないものであっても、型抜き処理後に熱処理を行ったものでは、一部に浮きや剥がれが発生してしまうものがあった。
【0086】
実施例7の光学機器用遮光部材は、基材に用いた2枚の樹脂フィルムが、一辺が5cmの正方形をサンプル片とした場合の300℃、10秒の熱処理後による反りの差が、3mm以上である樹脂フィルムを用いて、樹脂フィルムの熱を加えたときに凹になる面どうしを、硬化型樹脂を含む樹脂層を介して貼り合せたものである。2枚の樹脂フィルムの熱処理後の反りの差が3mm以上であったため、樹脂フィルムどうしで反りを相殺することができず、加熱後の平面性に劣るものであった。しかし、熱を加えたときに凹になる面どうしを貼り合せているため、樹脂フィルムの反りによる力が、型抜き処理の断裁刃の力に反発する樹脂フィルムの力を弱めることができるため、端部の浮きや剥がれを防止することができるものであった。
【0087】
比較例1の光学機器用遮光部材は、基材として貼り合せていないポリエステルフィルムを用いているため、加熱後に波状に変形してしまうものであった。
【0088】
比較例2の光学機器用遮光部材は、基材として貼り合せていないポリイミドフィルムを用いているため、加熱後に、樹脂フィルムに起因する反りが発生するものであった。
【0089】
また、実施例1〜7の光学機器用遮光部材は、a)厚み方向に熱伸縮性が異なる2枚の樹脂フィルムの、前記熱伸縮性が異なる樹脂フィルムに熱を加えたときに、凹面となる面又は凸面となる面どうしを、樹脂層を介して貼り合わせて基材とする工程と、b)厚み方向に熱伸縮性が異なる樹脂フィルムの一方の面に遮光膜を形成する工程を含む工程で製造されているため、樹脂フィルムに起因する反りや変形を防止することができるものであった。また、使用する樹脂フィルムごとに、カール防止層を設計する必要がないため、製造が容易かつ簡便であった。
【0090】
一方、比較例1〜2の光学機器用遮光部材は、b)工程のみを含む工程により製造されているため、樹脂フィルムに起因する反りや変形を防止することができないものであった。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の光学機器用遮光部材の一実施例を示す断面図。
【符号の説明】
【0092】
1・・・基材
11・・樹脂フィルム
12・・樹脂層
2・・・遮光膜
3・・・光学機器用遮光部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の少なくとも片面に形成された遮光膜とからなる光学機器用遮光部材であって、
前記基材は、厚み方向で熱伸縮性が異なる2枚の樹脂フィルムの間に、樹脂層が設けられていることを特徴とする光学機器用遮光部材。
【請求項2】
前記基材は、前記熱伸縮性が異なる樹脂フィルムに熱を加えたときに、凹面となる面又は凸面となる面どうしを、樹脂層側に配置してなることを特徴とする請求項1記載の光学機器用遮光部材。
【請求項3】
前記熱伸縮性が異なる樹脂フィルムは、ポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1又は2記載の光学機器用遮光部材。
【請求項4】
基材と、前記基材の少なくとも片面に形成された遮光膜とからなる光学機器用遮光部材を製造する方法であって、下記a)工程とb)工程とを含む工程を行うことを特徴とする光学機器用遮光部材の製造方法。
a)厚み方向に熱伸縮性が異なる2枚の樹脂フィルムの、前記熱伸縮性が異なる樹脂フィルムに熱を加えたときに、凹面となる面又は凸面となる面どうしを、樹脂層を介して貼り合わせて基材とする工程
b)厚み方向に熱伸縮性が異なる樹脂フィルムの一方の面に遮光膜を形成する工程
【請求項5】
基材と、前記基材の少なくとも片面に形成された機能性層とからなる積層体であって、
前記基材は、厚み方向で熱伸縮性が異なる2枚の樹脂フィルムの間に、樹脂層が設けられていることを特徴とする積層体。

【図1】
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【公開番号】特開2010−145607(P2010−145607A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320892(P2008−320892)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000125978)株式会社きもと (167)
【Fターム(参考)】