説明

光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジンの製造法

【課題】 医薬及び農薬の合成中間体として有用な光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジンを、安価且つ入手容易な原料から効率的且つ工業的に実施可能な方法で製造する。
【解決手段】 窒素上がアシル型、又はカルバメート型の保護基で保護された光学活性3−(スルホニルオキシ)ピロリジン誘導体をピロリジンと反応させ、続いて酸との塩を形成させて有機溶媒を用いて晶析することにより、高純度の光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジン誘導体を製造する。更に脱保護することにより、高純度の光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジンを製造する。また、光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジンと酸から塩を形成させて有機溶媒を用いて晶析することにより、更に高純度の光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジンの塩を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬及び農薬の合成中間体として有用な光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジンの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジンの製造法としては以下が知られている。
【0003】
1−ベンジル−3−ピロリジノールの水酸基をトシル化し、続いてピロリジンと反応させ、粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより1−ベンジル−3−(1−ピロリジニル)ピロリジンを茶色油状物として得る。次にこれを塩酸酸性下、パラジウム触媒を用いて水素化することにより脱ベンジル化を行い、対応する3−(1−ピロリジニル)ピロリジンの一塩酸塩を微赤色油状物として得る(特許文献1)。
【特許文献1】WO2005/063709
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来技術ではシリカゲルカラムクロマトグラフィー等の工業的に煩雑な精製工程が必須であり、高純度の目的物を安価に製造することが困難である。また、3−(1−ピロリジニル)ピロリジンの1塩酸塩は取り扱いの困難な、微赤色油状物としてしか得られていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記に鑑み、本発明者は鋭意検討の結果、窒素上がアシル型又はカルバメート型の保護基で保護された光学活性3−(スルホニルオキシ)ピロリジン誘導体をピロリジンと反応させ、続いて酸との塩を形成させて有機溶媒を用いて晶析することにより、高純度の光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジン誘導体を製造し、更に脱保護することにより、高純度の光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジンを取得することに成功した。更に、ここで得た高純度の光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジンと酸から塩を形成させて有機溶媒を用いて晶析することにより、更に高純度の光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジンの塩を製造することにも成功した。
【0006】
即ち本発明は、下記式(1);
【0007】
【化15】

【0008】
(式中、R1はアシル型保護基、又はカルバメート型保護基を表す。R2は置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜12のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基を表す。*は不斉炭素原子を表す。)で表される光学活性3−(スルホニルオキシ)ピロリジン誘導体とピロリジンを反応させることにより、下記式(2);
【0009】
【化16】

【0010】
(式中、R1、*は前記に同じ。)で表される光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジン誘導体を製造し、更に脱保護した後、酸との塩を形成させて有機溶媒を用いて晶析することを特徴とする、下記式(3);
【0011】
【化17】

【0012】
(式中、*は前記に同じ。)で表される光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジンの塩の製造法であり、
また本発明は、下記式(2);
【0013】
【化18】

【0014】
(式中、R1、*は前記に同じ。)で表される光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジン誘導体と酸から塩を形成させて有機溶媒を用いて晶析することにより、混入している不純物を母液に除去することを特徴とする、下記式(4);
【0015】
【化19】

【0016】
(式中、R1、*は前記に同じ。An-は対陰イオンを表す。nは1又は2の整数を表す。)で表される光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジン塩の単離精製法であり、
また本発明は、下記式(1);
【0017】
【化20】

【0018】
(式中、R1はアシル型保護基、又はカルバメート型保護基を表す。R2は置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜12のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基を表す。*は不斉炭素原子を表す。)で表される光学活性3−(スルホニルオキシ)ピロリジン誘導体とピロリジンを反応させることにより、下記式(2);
【0019】
【化21】

【0020】
(式中、R1、*は前記に同じ。)で表される光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジン誘導体を製造し、続いて酸との塩を形成させて水に溶解させ、混入している不純物を有機溶媒で抽出して除去した後、更に脱保護することを特徴とする、下記式(3);
【0021】
【化22】

【0022】
(式中、*は前記に同じ。)で表される光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジン、又はその塩の製造法でもあり、
更に本発明は、下記式(3);
【0023】
【化23】

【0024】
(式中、*は不斉炭素原子を表す。)で表される光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジンの塩を有機溶媒を用いて晶析することにより、化学純度の向上した光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジンの塩を結晶として取得する単離精製法でもある。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、高純度の光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジンを安価且つ入手容易な原料から効率的に製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
まず、本発明で使用する原料並びに生成物について説明する。
【0027】
光学活性3−(スルホニルオキシ)ピロリジン誘導体は下記式(1)で表される。
【0028】
【化24】

【0029】
ここで、R1はアシル型保護基、又はカルバメート型保護基を表す。具体的には例えば、JOHN WILEY & SONS,INC.(ジョン・ウイリー・アンド・サンズ)社、Theodora W.Greene(テオドラ・ダブリュー・グリーン)著のPROTECTIVE GROUPS in ORGANIC SYNTHESIS Third edition(プロテクティヴ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス第3版)の550〜560頁に記載のアシル型保護基、又は同著の503〜547頁に記載のカルバメート型保護基を表す。好ましくはホルミル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、ベンゾイル基、p−ニトロベンゾイル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジロキシカルボニル基、又はtert−ブトキシカルボニル基であり、更に好ましくはベンゾイル基、ベンジロキシカルボニル基、又はtert−ブトキシカルボニル基である。
【0030】
ここで、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜12のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基を表す。好ましくはメチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基、フェニル基、p−メチルフェニル基、p−クロロフェニル基、o−ニトロフェニル基、m−ニトロフェニル基、又はp−ニトロフェニル基であり、更に好ましくはメチル基である。ここで、*は不斉炭素原子を表す。なお両対掌体の内、僅かに一方の対掌体が過剰なものは全て本発明に含まれる。ここで、前記式(1)で表される光学活性3−(スルホニルオキシ)ピロリジン誘導体は例えば、Synlett(シンレット),1995,1,55−57.やBioorganic & Medicinal Chemistry Letters(バイオオーガニック・アンド・メディシナル・ケミストリー・レターズ),2000,10(21),2417−2419.に記載の方法により製造できる。
【0031】
また、光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジン誘導体は下記式(2)で表される。
【0032】
【化25】

【0033】
ここで、R1、*は前記に同じである。
【0034】
本発明において光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジンは下記式(3)で表される。
【0035】
【化26】

【0036】
ここで、*は前記に同じである。
【0037】
また、本発明において、光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジン塩は下記式(4)で表される。
【0038】
【化27】

【0039】
ここで、R1、*は前記に同じである。An-は対陰イオンを表し、nは1又は2の整数を表す。対陰イオンを形成するものであれば特に限定されないが、好ましくは塩素陰イオン(nは1)、臭素陰イオン(nは1)、硫酸陰イオン(nは2)、酢酸陰イオン(nは1)、ピバル酸陰イオン(nは1)、シュウ酸陰イオン(nは1又は2)、L−酒石酸陰イオン(nは1又は2)、D−酒石酸陰イオン(nは1又は2)、マンデル酸陰イオン(nは1)、メタンスルホン酸陰イオン(nは1)、p−トルエンスルホン酸陰イオン(nは1)、又はカンファースルホン酸陰イオン(nは1)であり、更に好ましくは塩素陰イオン(nは1)である。
【0040】
次に、本発明における製造法について説明する。
【0041】
即ち、前記式(1)で表される光学活性3−(スルホニルオキシ)ピロリジン誘導体とピロリジンを反応させることにより、前記式(2)で表される光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジン誘導体を製造する。この際、3位の立体化学は反転を伴って進行するので、(S)−3−(スルホニルオキシ)ピロリジン誘導体からは(R)−3−(1−ピロリジニル)ピロリジン誘導体が生成し、(R)−3−(スルホニルオキシ)ピロリジン誘導体からは(S)−3−(1−ピロリジニル)ピロリジン誘導体が生成することになる。
【0042】
ここで、前記ピロリジンは溶媒量使用してもよく、また使用量としてより好ましくは前記化合物(1)に対して1〜50倍モル量であり、更に好ましくは1〜10倍モル量である。また、前記ピロリジンの使用量を削減する目的で更に補助的な塩基を使用してもよく、具体的には例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−ブチルアミン、トリn−オクチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、ピリジン、3−ピコリン、キノリン、イソキノリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、4−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−ウンデク−7−エン、1,4−ジアザビシクロ−[2,2,2]−オクタン等の第3級アミン類;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の無機塩基が挙げられる。好ましくは第3級アミン類であり、更に好ましくはトリエチルアミンである。前記補助的な塩基の使用量としては、前記化合物(1)に対して1〜50倍モル量であり、更に好ましくは1〜10倍モル量である。
【0043】
本反応の反応溶媒としては例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジメチルプロピレンウレア等のウレア系溶媒;ヘキサメチルホスホン酸トリアミド等のホスホン酸トリアミド系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒を用いることができる。好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒であり、更に好ましくはN,N−ジメチルアセトアミドである。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、その混合比は特に制限されない。前記反応溶媒の使用量としては、多すぎるとコストや後処理の点で好ましくないため、前記化合物(1)に対して好ましくは50倍重量以下、更に好ましくは20倍重量以下である。
【0044】
本反応の反応温度は反応時間とのバランスで適宜選択することができるが、好ましくは20〜130℃、更に好ましくは50〜100℃であり、この場合、1〜24時間で反応が完結する。
【0045】
本反応の試剤の添加順序については任意であり、特に限定されない。
【0046】
反応後の後処理としては、反応液から生成物を取得するための一般的な処理を行えばよい。例えば、反応終了後の反応液に水を加え、一般的な抽出溶媒、例えば酢酸エチル、ジエチルエーテル、トルエン、ヘキサン、塩化メチレン等を加えて抽出操作を行う。更に水、または必要に応じて水酸化ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液で抽出液を洗浄し、その後、減圧加熱等の操作により、反応溶媒及び抽出溶媒を留去すると化合物(2)が得られる。このようにして得られた化合物(2)には、下記式(5);
【0047】
【化28】

【0048】
で表される2,5−ジヒドロ−1H−ピロール誘導体等の不純物が3〜10重量%、その他構造不明な不純物をあわせると約10〜30重量%の不純物が混入しており、そのまま後続工程に使用すると、後続工程の収率、若しくは後続工程で得られる化合物の純度が低くなるため、次にこれらの不純物の除去方法について説明する。
【0049】
まずは、前記式(2)で表される光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジン誘導体と酸から塩を形成させて化合物(4)とし有機溶媒を用いて晶析することにより、混入している不純物を母液に除去して、化合物(4)として単離する方法について説明する。
【0050】
ここで、前記酸として具体的には例えば、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ピバル酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、L−酒石酸、D−酒石酸、マンデル酸等のカルボン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸等のスルホン酸が挙げられる。好ましくは塩化水素、臭化水素、硫酸、酢酸、ピバル酸、シュウ酸、L−酒石酸、D−酒石酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、又はカンファースルホン酸であり、更に好ましくは塩化水素である。なお、塩化水素は水に溶解した状態の塩酸が取り扱いの容易さからより好ましい。前記酸の使用量としては前記化合物(2)に対し、好ましくは0.5〜5倍モル量であり、更に好ましくは0.5〜1.5倍モル量である。
【0051】
前記有機溶媒としては例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジメチルプロピレンウレア等のウレア系溶媒;ヘキサメチルホスホン酸トリアミド等のホスホン酸トリアミド系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒を用いることができる。好ましくはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、トルエン、ヘキサン、塩化メチレン、アセトニトリル、アセトンであり、更に好ましくは酢酸エチルである。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、その混合比は特に制限されない。前記有機溶媒の使用量としては、多すぎるとコストや後処理の点で好ましくないため、前記化合物(2)に対して好ましくは50倍重量以下であり、更に好ましくは20倍重量以下である。
【0052】
本工程の、有機溶媒を用いて結晶化する方法としては特に限定されないが、例えば以下のような方法が挙げられる。
(a)前記化合物(2)と酸の水溶液または酸と水を有機溶媒中、混合した後、濃縮して水分を留去することにより結晶化させる方法。この場合、水と共沸しうる有機溶媒(例えば、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、トルエン等)を使用し、共沸効果により水分を留去することもできる。
(b)前記化合物(2)を有機溶媒中で、酸と混合することにより結晶化させる方法。
(c)前記化合物(2)と酸を有機溶媒中で混合後、冷却して結晶化させる方法。
【0053】
前記の結晶化方法は、酸の種類と有機溶媒の組み合わせにより、適切に選択すれば良い。例えば、塩化水素、又は臭化水素はその水溶液である塩酸、又は臭化水素酸で取り扱う方が容易であるため、(a)の方法が適しており、また、メタンスルホン酸、酢酸等の通常非含水物として使用し易い酸を用いる場合は、(b)の方法を選択するのが好ましい。さらに、(a)、(b)又は(c)の方法で得られた塩を下記(d)、(e)の晶析方法に付してもよい。
(d)前記化合物(2)の塩(つまり前記化合物(4))を有機溶媒に溶解させた後、冷却して結晶化させる方法。
(e)前記化合物(2)の塩(つまり前記化合物(4))を有機溶媒に溶解させた後、貧溶媒を添加または貧溶媒に濃縮置換することにより結晶化させる方法。
【0054】
上記のように(a)、(b)、(c)、(d)、(e)の方法を適宜組み合わせて結晶化させることもできる。
【0055】
前記結晶化方法で用いる有機溶媒としては、前述の有機溶媒と同じものが挙げられ、(e)の方法で用いる貧溶媒としては例えば、トルエン、ヘキサン等が挙げられる。また、結晶化の際には種晶を加えてもよい。
【0056】
前記(a)〜(e)の結晶化方法における実施温度は、特に限定されないが、塩の種類と使用する溶媒の種類により適宜選択すればよく、好ましくは使用する溶媒種又は混合溶媒種に、前記化合物(2)の塩(つまり前記化合物(4))が溶解する温度未満で、目標とする析出量と結晶の品質に応じて設定すればよい。
【0057】
前記(a)〜(e)の結晶化方法により、析出した前記化合物(2)の塩(つまり前記化合物(4))は、減圧濾過、加圧濾過、又は遠心分離等の方法により分離、取得することができる。また、取得結晶中に母液が残存して結晶の純度が低下する場合は必要に応じて、更に有機溶媒で洗浄することにより、品質を高めることもできる。
【0058】
結晶の乾燥方法としては、熱分解や溶融を避けて約60℃以下で、減圧乾燥(真空乾燥)するのが望ましい。
【0059】
前記方法によって取得した前記化合物(2)の塩(つまり前記化合物(4))は、更に水酸化アルカリ金属等の塩基で処理することにより前記化合物(2)を遊離させ、抽出、濃縮等の操作を行うことにより、化学純度の向上した前記化合物(2)として取得することもできる。
【0060】
次に、前記化合物(2)と酸から塩を形成させて化合物(4)とし、水に溶解させ、混入している不純物を有機溶媒で抽出して除去する方法について説明する。ここで、前記酸としては具体的には例えば、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ピバル酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、クエン酸、L−酒石酸、D−酒石酸、マンデル酸等のカルボン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸等のスルホン酸が挙げられる。好ましくは塩化水素、臭化水素、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、又はメタンスルホン酸であり、更に好ましくは塩化水素である。なお、塩化水素は水に溶解した状態の塩酸が取り扱いの容易さからより好ましい。前記酸の使用量としては前記化合物(2)に対し、好ましくは0.5〜5倍モル量であり、更に好ましくは0.5〜1.5倍モル量である。
【0061】
前記有機溶媒としては水と相溶性の少ない溶媒であれば特に限定されず、具体的には例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒が挙げられる。好ましくはベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒であり、更に好ましくはトルエン、又は酢酸エチルである。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、その混合比は特に制限されない。前記有機溶媒の使用量としては、多すぎるとコストや後処理の点で好ましくないため、前記化合物(2)に対して好ましくは50倍重量以下であり、更に好ましくは20倍重量以下である。
【0062】
本工程の操作手順としてまずは、前記化合物(2)と水と酸を混合する。ここで、前記水の使用量は前記化合物(2)と酸から形成される塩(つまり前記化合物(4))が溶解して均一溶液となる量であればよく、より好ましくは前記化合物(2)に対して50倍重量以下であり、更に好ましくは20倍重量以下である。このようにして得た前記化合物(2)の塩(つまり前記化合物(4))の水溶液と有機溶媒を混合攪拌し、攪拌を止めて静置後、有機層を分離することにより、混入している不純物が有機溶媒中に除去される。また、不純物の除去効率が悪い場合は必要に応じて有機溶媒による抽出を繰り返してもよい。このようにして得た前記化合物(2)の塩(つまり前記化合物(4))の水溶液は後続工程に使用できる十分な純度を有しており、そのまま後続工程に使用してもよいが、必要に応じて水を減圧留去して、化学純度の向上した前記化合物(2)の塩として単離してもよい。また、水酸化アルカリ金属等の塩基で処理することにより前記化合物(2)を遊離させ、抽出、濃縮等の操作を行うことにより、化学純度の向上した前記化合物(2)として取得することもできる。
【0063】
次に、前記化合物(2)又は前記化合物(4)を脱保護して前記式(3)で表される光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジンを製造する方法について説明する。ここで用いる化合物(2)または(4)は前述の方法で化合物(1)から化合物(2)を製造し、必要に応じて酸で処理して化合物(4)とした反応液そのものでもよいし、適宜、前述の方法で化合物(2)または(4)を後処理したもの、または、結晶化させたものを用いてもよい。さらに、別途既知の方法で製造した化合物(2)または化合物(4)を用いてもよい。前記脱保護する方法については、保護基の種類に応じて適宜条件を選択すればよい。即ち、アシル型保護基であればJOHN WILEY & SONS,INC.(ジョン・ウイリー・アンド・サンズ)社、Theodora W.Greene(テオドラ・ダブリュー・グリーン)著のPROTECTIVE GROUPS in ORGANIC SYNTHESIS Third edition(プロテクティヴ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス第3版)の550〜560頁にその脱保護法が記載されている。また、カルバメート型保護基であれば同著の503〜547頁に記載されている。具体的には例えば、ベンゾイル基であれば、塩酸、又は臭化水素酸中で加熱することにより脱保護することができる。また、ベンジロキシカルボニル基であれば、パラジウム炭素、又は水酸化パラジウム炭素触媒存在下に水素と反応させることにより脱保護することができる。また、tert−ブトキシカルボニル基であれば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、又は1,4−ジオキサン中の塩化水素と反応させることにより脱保護することができる。
【0064】
次に、前記化合物(3)と酸から塩を形成させて有機溶媒を用いて晶析することにより、高純度の前記化合物(3)の塩を結晶として取得する方法について説明する。ここで用いる化合物(3)は前述の方法で製造した化合物(3)でもよいし、別途既知の方法で製造した化合物(3)でもよい。
【0065】
ここで、前記酸としては具体的には例えば、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ピバル酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、L−酒石酸、D−酒石酸、マンデル酸等のカルボン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸等のスルホン酸が挙げられる。好ましくは塩化水素、臭化水素、硫酸、酢酸、ピバル酸、シュウ酸、L−酒石酸、D−酒石酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、又はカンファースルホン酸であり、更に好ましくは塩化水素である。なお、塩化水素は水に溶解した状態の塩酸が取り扱いの容易さからより好ましい。前記酸の使用量としては前記化合物(3)に対し、好ましくは0.5〜5倍モル量であり、更に好ましくは0.5〜1.5倍モル量である。
【0066】
前記有機溶媒としては例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジメチルプロピレンウレア等のウレア系溶媒;ヘキサメチルホスホン酸トリアミド等のホスホン酸トリアミド系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒を用いることができる。好ましくはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、トルエン、ヘキサン、塩化メチレン、アセトニトリル、アセトンであり、更に好ましくは酢酸エチルである。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、その混合比は特に制限されない。前記有機溶媒の使用量としては、多すぎるとコストや後処理の点で好ましくないため、前記化合物(3)に対して好ましくは50倍重量以下であり、更に好ましくは20倍重量以下である。
【0067】
本工程の結晶化方法としては特に限定されないが、例えば以下のような方法が挙げられる。
(a)前記化合物(3)と酸の水溶液または酸と水を有機溶媒中、混合した後、濃縮して水分を留去することにより結晶化させる方法。この場合、水と共沸しうる有機溶媒(例えば、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、トルエン等)を使用し、共沸効果により水分を留去することもできる。
(b)前記化合物(3)を有機溶媒中で、酸と混合することにより結晶化させる方法。
(c)前記化合物(3)と酸を有機溶媒中で混合後、冷却して結晶化させる方法。
【0068】
前記の結晶化方法は、酸の種類と有機溶媒の組み合わせにより、適切に選択すれば良い。例えば、塩化水素、又は臭化水素はその水溶液である塩酸、又は臭化水素酸で取り扱う方が容易であるため、(a)の方法が適しており、また、メタンスルホン酸、酢酸等の通常非含水物として使用し易い酸を用いる場合は、(b)の方法を選択するのが好ましい。さらに、(a)、(b)又は(c)の方法で得られた塩を下記(d),(e)の晶析方法に付してもよい。
(d)前記化合物(3)の塩を有機溶媒に溶解させた後、冷却して結晶化させる方法。
(e)前記化合物(3)の塩を有機溶媒に溶解させた後、貧溶媒を添加または貧溶媒に濃縮置換することにより結晶化させる方法。
【0069】
上記のように(a)、(b)、(c)、(d),(e)の方法を適宜組み合わせて結晶化させることもできる。
【0070】
前記結晶化方法で用いる有機溶媒としては、前述の有機溶媒と同じものが挙げられ、(e)の方法で用いる貧溶媒としては例えば、トルエン、ヘキサン等が挙げられる。また、結晶化の際には種晶を加えてもよい。
【0071】
前記(a)〜(e)の結晶化方法における実施温度は、特に限定されないが、塩の種類と使用する溶媒の種類により適宜選択すればよく、好ましくは使用する溶媒種又は混合溶媒種に、前記化合物(3)の塩が溶解する温度未満で、目標とする析出量と結晶の品質に応じて設定すればよい。
【0072】
前記(a)〜(e)の結晶化方法により、析出した前記化合物(3)の塩は、減圧濾過、加圧濾過、又は遠心分離等の方法により分離、取得することができる。また、取得結晶中に母液が残存して結晶の純度が低下する場合は必要に応じて、更に有機溶媒で洗浄することにより、品質を高めることもできる。
【0073】
結晶の乾燥方法としては、熱分解や溶融を避けて約60℃以下で、減圧乾燥(真空乾燥)するのが望ましい。
【0074】
前記方法によって取得した前記化合物(3)の塩は、更に水酸化アルカリ金属等の塩基で処理することにより前記化合物(3)を遊離させ、抽出、濃縮等の操作を行うことにより、化学純度の向上した前記化合物(3)として取得することもできる。
【実施例】
【0075】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0076】
参考例1(R)−1−(tert−ブトキシカルボニル)−3−(メタンスルホニルオキシ)ピロリジンの製造
(R)−3−ピロリジノール塩酸塩(100%e.e.)6.037g(48.9mmol)、アセトニトリル6.037g、トルエン18.111g、トリエチルアミン11.876g(2.4当量)からなる溶液を5℃に冷却し、ここにニ炭酸ジtert−ブチル10.660g(1当量)のトルエン溶液(6.037g)を2時間で滴下した。更に5℃、2時間攪拌後、塩化メタンスルホニル6.719g(1.2当量)を2時間で滴下し、20℃まで昇温して1時間攪拌した。水12.1gを加えて水解し、水層を分離後、有機層を水6gで2回洗浄、減圧濃縮することにより、標題化合物を橙色油状物として得た(15.302g、含量:79.5重量%、収率:94%)。
【0077】
実施例1(S)−1−(tert−ブトキシカルボニル)−3−(1−ピロリジニル)ピロリジン塩酸塩の製造
N,N−ジメチルアセトアミド40mL、ピロリジン16.322g(5当量)からなる溶液を80℃に加温し、ここに参考例1で得られた(R)−1−(tert−ブトキシカルボニル)−3−(メタンスルホニルオキシ)ピロリジン15.302g(45.9mmol)のN,N−ジメチルアセトアミド溶液(5.9mL)を2時間で滴下した。更に同温度で6時間攪拌後、室温まで冷却し、トルエン91.8mL、水45.9mLを加えて抽出した。水層を分離後、有機層を水45.9mLで2回洗浄し、減圧濃縮することにより、橙色油状物13.730gを得た(含量:71.3重量%、不純物として1−(tert−ブトキシカルボニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロールを3.6重量%含む)。ここにイソプロパノール45.9mL、濃塩酸4.0687g(0.85当量)を加えて減圧濃縮し、残渣にイソプロパノール45.9mLを加えて再度濃縮すると白色スラリー溶液となった。ここに酢酸エチル114.8mLを加えて5℃、1時間攪拌後、結晶を減圧濾別した。結晶を酢酸エチル23mLで洗浄後、真空乾燥することにより、標題化合物を白色結晶として得た(10.469g、含量:100重量%、収率:82%)。
1HNMR(400MHz,D2O):δ1.47(s、9H)、2.10(brs、4H)、2.15(m、1H)、2.43(m、1H)、3.3−3.7(m、8H)、3.92(m、1H)
実施例2(S)−3−(1−ピロリジニル)ピロリジンニ塩酸塩の製造
実施例1で得られた(S)−1−(tert−ブトキシカルボニル)−3−(1−ピロリジニル)ピロリジン塩酸塩10.032g(36.2mmol)のメタノール溶液(100mL)に、20重量%塩化水素/イソプロパノール溶液11.0g(1.67当量)を加えて20℃、16時間攪拌した。減圧下に溶媒を留去して得られる白色スラリー溶液(約23g)に、酢酸エチル100mLを加えて5℃、1時間攪拌した。結晶を減圧濾別し、酢酸エチル30mLで洗浄後、真空乾燥することにより、標題化合物を白色結晶として得た(7.550g、含量:100重量%、収率:98%)。
1HNMR(400MHz,D2O):δ2.12(m、4H)、2.28(m、1H)、2.65(m、1H)、3.46(m、4H)、3.54(m、2H)、3.63(m、1H)、3.89(m、1H)、4.14(m、1H)
参考例2(S)−3−(1−ピロリジニル)ピロリジンの光学純度分析
実施例2で得られた(S)−3−(1−ピロリジニル)ピロリジンニ塩酸塩149.3mg(0.7mmol)、アセトニトリル3mL、トリエチルアミン303mg(3mmol)、酢酸エチル10mLからなる溶液に塩化p−ニトロベンゾイル92.7mg(0.5mmol)を加えて、20℃、1.5時間攪拌した。水5mLを加えて水解し、水層を分離後、有機層を水5mLで2回洗浄した。減圧下に溶媒を留去し、残渣に酢酸エチル10mLを加えて再度濃縮した。残渣をイソプロパノール20mLに溶解し、試料溶液とした。注入量3μlにてHPLC分析した結果、100%e.e.であった。
<HPLC分析条件>
カラム:ダイセルキラルパックAS 4.6×250mm、溶離液:イソプロパノール/ヘキサン=4/6(v/v)、流速:0.7mL/min.、カラム温度:30℃、検出器:UV210nm、R体保持時間=22.8分、S体保持時間=24.6分
参考例3(R)−1−(ベンジロキシカルボニル)−3−(メタンスルホニルオキシ)ピロリジンの製造
(R)−3−ピロリジノール塩酸塩6.840g(55.35mmol)、アセトニトリル20mL、トルエン60mL、トリエチルアミン19.04g(3.4当量)からなる溶液を5℃に冷却し、ここに塩化ベンジルオキシカルボニル9.437g(1当量)のトルエン溶液(20mL)を30分で滴下した。更に5℃、1時間攪拌後、塩化メタンスルホニル7.605g(1.2当量)を15分で滴下し、20℃まで昇温して2時間攪拌した。水20mLを加えて水解し、水層を分離後、有機層を水20mLで2回洗浄、減圧濃縮することにより、標題化合物を橙色油状物として得た(16.2148g、含量:91.2重量%、収率:89%)。
【0078】
実施例3(S)−1−(ベンジロキシカルボニル)−3−(1−ピロリジニル)ピロリジン塩酸塩の製造
参考例3で得られた(R)−1−(ベンジロキシカルボニル)−3−(メタンスルホニルオキシ)ピロリジン9.74g(29.7mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド30mL、ピロリジン10.561g(5当量)からなる溶液を80℃、16時間攪拌した。ここにトルエン60mL、水30mLを加えて抽出し、水層を分離後、有機層を水30mLで2回洗浄、減圧濃縮することにより、橙色油状物8.0137gを得た(含量:86.2重量%、不純物として1−(ベンジロキシカルボニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロールを7.1重量%含む)。ここにイソプロパノール30mL、濃塩酸2.789g(0.9当量)を加えて減圧濃縮し、残渣にイソプロパノール30mLを加えて再度濃縮した。ここにメタノール5mL、酢酸エチル75mLを加えて5℃、30分攪拌後、結晶を減圧濾別した。結晶を酢酸エチル25mLで洗浄後、真空乾燥することにより、標題化合物を白色結晶として得た(6.81g、含量:100重量%、収率:74%)。
1HNMR(400MHz,D2O):δ1.94(brs、4H)、2.02(m、1H)、2.31(m、1H)、3.0−3.8(m、7H)、3.8−3.9(m、2H)、4.65(s、2H)、7.30(s、5H)
実施例4(S)−3−(1−ピロリジニル)ピロリジン一塩酸塩の製造
実施例3で得られた(S)−1−(ベンジロキシカルボニル)−3−(1−ピロリジニル)ピロリジン塩酸塩1.553g(5mmol)のメタノール溶液(15mL)に、10%パラジウム炭素78mgを加え、常圧水素雰囲気下、20℃、2時間攪拌した。パラジウムを減圧濾別後、メタノール10mLで洗いこみ、濾液を減圧濃縮することにより、赤色油状物964mgを得た。ここに酢酸エチル30mLを加えると結晶が析出し、20℃、30分攪拌後、結晶を減圧濾別した。結晶を酢酸エチル10mLで洗浄後、真空乾燥することにより、標題化合物を白色結晶として得た(761.9mg、含量:100重量%、収率:86%)。
1HNMR(400MHz,D2O):δ1.69(m、4H)、1.7−1.8(m、1H)、2.15(m、1H)、2.61(m、4H)、2.91(m、1H)、3.10(m、2H)、3.24(m、1H)、3.35(m、1H)
参考例4(R)−1−ベンゾイル−3−(メタンスルホニルオキシ)ピロリジンの製造
(R)−3−ピロリジノール塩酸塩6.04g(48.88mmol)、アセトニトリル20mL、トルエン80mL、トリエチルアミン16.817g(3.4当量)からなる溶液を5℃に冷却し、ここに塩化ベンゾイル6.868g(1当量)を15分で滴下した。更に5℃、16時間攪拌後、塩化メタンスルホニル6.716g(1.2当量)を15分で滴下し、20℃まで昇温して1時間攪拌した。水20mLを加えて水解し、水層を分離後、有機層を水20mLで2回洗浄、減圧濃縮することにより、標題化合物を黒褐色油状物として得た(10.4469g、含量:81.7重量%、収率:65%)。
【0079】
実施例5(S)−1−ベンゾイル−3−(1−ピロリジニル)ピロリジン塩酸塩の製造
参考例4で得られた(R)−1−ベンゾイル−3−(メタンスルホニルオキシ)ピロリジン10.4469g(31.77mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド32mL、ピロリジン11.297g(5当量)からなる溶液を80℃、6時間攪拌した。ここにトルエン64mL、水32mLを加えて抽出し、水層を分離後、有機層を水32mLで2回洗浄、減圧濃縮することにより、黒褐色油状物5.61gを得た(含量:94.0重量%、不純物として1−ベンソイル−2,5−ジヒドロ−1H−ピロールを3.9重量%含む)。ここにイソプロパノール30mL、濃塩酸2.484g(0.75当量)を加えて減圧濃縮し、残渣にイソプロパノール30mLを加えて再度濃縮した。ここに酢酸エチル50mLを加えて5℃、30分攪拌後、結晶を減圧濾別した。結晶を酢酸エチル20mLで洗浄後、真空乾燥することにより、標題化合物を淡褐色結晶として得た(4.0184g、含量:100重量%、収率:44%)。
1HNMR(400MHz,D2O):δ1.7−2.3(m、5H)、2.3−2.4(m、1H)、2.7−3.3(m、2H)、3.6−4.0(m、7H)、7.38(m、5H)
実施例6(S)−3−(1−ピロリジニル)ピロリジンニ塩酸塩の製造
実施例5で得られた(S)−1−ベンゾイル−3−(1−ピロリジニル)ピロリジン塩酸塩2.642g(9.42mmol)、濃塩酸9.823g(10当量)、水10mLからなる溶液を100℃、16時間攪拌した。反応液をトルエン30mLで2回洗浄した後、水を減圧留去することにより黒褐色固体を得た。ここにイソプロパノール30mLを加えて減圧濃縮し、残渣にメタノール30mLを加えて再度濃縮した。得られたスラリー溶液(約5mL)に酢酸エチル20mLを加えて、20℃、30分攪拌後、結晶を減圧濾別した。結晶を酢酸エチル20mLで洗浄後、真空乾燥することにより、標題化合物を淡褐色結晶として得た(1.7214g、含量:100重量%、収率:86%)。
【0080】
実施例7(R)−3−(1−ピロリジニル)ピロリジンニ塩酸塩の製造
(S)−1−(tert−ブトキシカルボニル)−3−(メタンスルホニルオキシ)ピロリジン10.77g(81.0重量%、32.88mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド33mL、ピロリジン5.846g(2.5当量)、トリエチルアミン8.318g(2.5当量)からなる溶液を80℃、16時間攪拌した。室温まで冷却し、トルエン66mL、水33mLを加えて抽出した。水層を分離後、有機層を水33mLで2回洗浄し、減圧濃縮することにより、(R)−1−(tert−ブトキシカルボニル)−3−(1−ピロリジニル)ピロリジンを橙色油状物として得た(9.03g、含量:70.7重量%、不純物として1−(tert−ブトキシカルボニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロールを3.8重量%含む)。
【0081】
前記油状物、水29mLからなる溶液に、濃塩酸3.53g(1.2当量)を加えて均一溶液とした。酢酸エチル20mLで2回洗浄することにより、不純物である1−(tert−ブトキシカルボニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロールは水層中から完全に除去された。水層に濃塩酸14.7g(5当量)を追加し、80℃、30分攪拌後、水を減圧留去した。得られた黄褐色油状物9.39gにイソプロパノール63mLを加えて再度濃縮した。更にメタノール84mLを加えて再濃縮し、得られたスラリー溶液25.2gに酢酸エチル84mLを加えて5℃に冷却した。30分攪拌後に結晶を減圧濾別し、酢酸エチル40mLで洗浄後、真空乾燥することにより、標題化合物を白色結晶として得た(5.20g、含量:100重量%、収率:74%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1);
【化1】

(式中、R1はアシル型保護基、又はカルバメート型保護基を表す。R2は置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜12のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基を表す。*は不斉炭素原子を表す。)で表される光学活性3−(スルホニルオキシ)ピロリジン誘導体とピロリジンを反応させることにより、下記式(2);
【化2】

(式中、R1は前記に同じ。)で表される光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジン誘導体を製造し、更に脱保護した後、酸との塩を形成させて有機溶媒を用いて晶析することを特徴とする、下記式(3);
【化3】

(式中、*は前記に同じ。)で表される光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジンの塩結晶の製造法。
【請求項2】
1がホルミル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、ベンゾイル基、p−ニトロベンゾイル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジロキシカルボニル基、又はtert−ブトキシカルボニル基である、請求項1に記載の製造法。
【請求項3】
1がベンゾイル基、ベンジロキシカルボニル基、又はtert−ブトキシカルボニル基である、請求項1に記載の製造法。
【請求項4】
2がメチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基、フェニル基、p−メチルフェニル基、p−クロロフェニル基、o−ニトロフェニル基、m−ニトロフェニル基、又はp−ニトロフェニル基である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造法。
【請求項5】
前記酸が塩化水素であり、また前記有機溶媒がメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、トルエン、ヘキサン、塩化メチレン、アセトニトリル、アセトンからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1〜4のいずれかに記載の製造法。
【請求項6】
下記式(2);
【化4】

(式中、R1、*は前記に同じ。)で表される光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジン誘導体と酸から塩を形成させて有機溶媒を用いて晶析することにより、混入している不純物を母液に除去することを特徴とする、下記式(4);
【化5】

(式中、R1、*は前記に同じ。An-は対陰イオンを表す。nは1又は2の整数を表す。)で表される光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジン塩の単離精製法。
【請求項7】
前記酸が塩化水素、臭化水素、硫酸、酢酸、ピバル酸、シュウ酸、L−酒石酸、D−酒石酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、又はカンファースルホン酸である、請求項6に記載の単離精製法。
【請求項8】
前記酸が塩化水素である、請求項6に記載の単離精製法。
【請求項9】
前記有機溶媒がメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、トルエン、ヘキサン、塩化メチレン、アセトニトリル、アセトンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項6〜8のいずれかに記載の単離精製法。
【請求項10】
前記式(2)で表される光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジン誘導体が、下記式(1);
【化6】

(式中、R1はアシル型保護基、又はカルバメート型保護基を表す。R2は置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜12のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基を表す。*は不斉炭素原子を表す。)で表される光学活性3−(スルホニルオキシ)ピロリジン誘導体とピロリジンを反応させて得られたものである、請求項6〜9のいずれかに記載の単離精製法。
【請求項11】
2がメチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基、フェニル基、p−メチルフェニル基、p−クロロフェニル基、o−ニトロフェニル基、m−ニトロフェニル基、又はp−ニトロフェニル基である、請求項10に記載の単離精製法。
【請求項12】
前記混入している不純物が、下記式(5);
【化7】

(式中、R1は前記に同じ。)で表される2,5−ジヒドロ−1H−ピロール誘導体である、請求項6〜11のいずれかに記載の単離精製法。
【請求項13】
1がホルミル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、ベンゾイル基、p−ニトロベンゾイル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジロキシカルボニル基、又はtert−ブトキシカルボニル基である、請求項6〜12のいずれかに記載の単離精製法。
【請求項14】
1がベンゾイル基、ベンジロキシカルボニル基、又はtert−ブトキシカルボニル基である、請求項6〜12のいずれかに記載の単離精製法。
【請求項15】
請求項6〜14のいずれかに記載の方法で得た下記式(4);
【化8】

(式中、R1、*は前記に同じ。An-は対陰イオンを表す。nは1又は2の整数を表す。)で表される光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジン塩を、更に脱保護することを特徴とする、下記式(3);
【化9】

(式中、*は前記に同じ。)で表される光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジン、又はその塩の製造法。
【請求項16】
1がベンゾイル基、ベンジロキシカルボニル基、又はtert−ブトキシカルボニル基であり、An-が塩素陰イオンである前記化合物(4)を脱保護することにより、前記式(3)で表される光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジンを一塩酸塩、又はニ塩酸塩として取得することを特徴とする、請求項15に記載の製造法。
【請求項17】
下記式(1);
【化10】

(式中、R1はアシル型保護基、又はカルバメート型保護基を表す。R2は置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜12のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基を表す。*は不斉炭素原子を表す。)で表される光学活性3−(スルホニルオキシ)ピロリジン誘導体とピロリジンを反応させることにより、下記式(2);
【化11】

(式中、R1、*は前記に同じ。)で表される光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジン誘導体を製造し、続いて酸との塩を形成させて水に溶解させ、混入している不純物を有機溶媒で抽出して除去した後、更に脱保護することを特徴とする、下記式(3);
【化12】

(式中、*は前記に同じ。)で表される光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジン、又はその塩の製造法。
【請求項18】
1がホルミル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、ベンゾイル基、p−ニトロベンゾイル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジロキシカルボニル基、又はtert−ブトキシカルボニル基である、請求項17に記載の製造法。
【請求項19】
1がベンゾイル基、ベンジロキシカルボニル基、又はtert−ブトキシカルボニル基である、請求項17に記載の製造法。
【請求項20】
2がメチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基、フェニル基、p−メチルフェニル基、p−クロロフェニル基、o−ニトロフェニル基、m−ニトロフェニル基、又はp−ニトロフェニル基である、請求項17〜19のいずれかに記載の製造法。
【請求項21】
前記混入している不純物が、下記式(5);
【化13】

(式中、R1は前記に同じ。)で表される2,5−ジヒドロ−1H−ピロール誘導体である、請求項17〜20のいずれかに記載の製造法。
【請求項22】
前記酸が塩化水素、臭化水素、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、又はメタンスルホン酸であり、前記有機溶媒が酢酸エチル、又はトルエンである請求項17〜21のいずれかに記載の製造法。
【請求項23】
下記式(3);
【化14】

(式中、*は不斉炭素原子を表す。)で表される光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジンの塩を有機溶媒を用いて晶析することにより、化学純度の向上した光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジンの塩を結晶として取得する単離精製法。
【請求項24】
前記光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジンの塩が、光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジン一塩酸塩、又は光学活性3−(1−ピロリジニル)ピロリジンニ塩酸塩である、請求項23に記載の単離精製法。
【請求項25】
前記有機溶媒がメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、トルエン、ヘキサン、塩化メチレン、アセトニトリル、アセトンからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項23又は24に記載の単離精製法。

【公開番号】特開2007−297306(P2007−297306A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125087(P2006−125087)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】