説明

光学測定装置

【課題】 たとえ高感度でないセンサを用いても、時間をかけずに輝度の測定が行なえるようにする。
【解決手段】 光学測定装置1は、光を内部に入れるための開口部17と光を反射可能な内面18とを有する積分球10と、複数の測定スポット14,15,16からそれぞれ進行してきた光を、開口部17に導くための複数の光誘導手段と、内面18によって反射された光を積分球10の内部で受光することによって光量を測定するための測定器11とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルなどの表面輝度や表面輝度の時間変化を測定する際に用いられるような光学測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルの開発において、表示性能の評価項目のひとつとして表面輝度がある。表面輝度の評価のためには、指定条件に沿って液晶表示パネルの表示内容を設定した状態で光学測定装置によって測定を行なう。
【0003】
従来の測定の一例を図3に示す。被測定面2は液晶表示パネルの画面である。光学測定装置51は、レンズ56と測定器11とを備えている。光学測定装置51においては、被測定面2の測定スポット54から出射した光をレンズ56で集光して測定器11で受光する。測定器11は輝度計とも呼ばれるものであり、受光量から輝度を導出する役割を果たす。
【0004】
近年、液晶表示パネルはコントラスト向上および表面輝度増大を目指すことによって表示品位向上を図っている。そのため、表示輝度の範囲は従来に比べて大幅に広がってきており、光学測定装置としても測定範囲が十分に広いことが求められる。特に、画像表現において重要な「輝度が限りなく0に近い黒画面」を測定するときには、たとえば1cd/cm2以下といった輝度を測定することとなり、光学測定装置の受光量がきわめて小さくなるため、測定器としてきわめて高感度のセンサが必要となってしまう。また、感度が十分に高くないセンサを使用せざるを得ない場合、受光される光を積分することで光量の絶対量を増やしてから測定するという方法もあるが、そのようにすればたとえば1回の測定当り数十秒と測定時間が長くなってしまう。
【0005】
光を積分する例として、特開昭58−103624号公報(特許文献1)には、被測定面の輝度分布や色度分布を測定するための技術が開示されている。この文献に開示された装置では、微小孔を有する遮光板が結像面内で移動自在に設けられており、この微小孔を介して結像面から選択的に抽出されて入力された光を積分球によって積分する構成となっている。この装置では、遮光板を移動して微小孔が結像面内を走査することで被測定面の輝度分布や色度分布を求めることとなっている。
【特許文献1】特開昭58−103624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
いずれにしても従来の方法で積分すると1回の測定当りに時間がかかるので、表面輝度の時間変化を測定したい場合には不適当であった。特許文献1の技術においても遮光板を移動させて走査を行なうという点で時間がかかることには変わりない。また、1回の測定当りに時間がかかるということは、測定の利便性が損なわれ、作業効率が低下する。
【0007】
一方、十分に高感度なセンサを調達するためには、センサの新規開発を行なわなければならないので容易ではなかった。
【0008】
そこで、本発明は、たとえ高感度でないセンサを用いても、時間をかけずに輝度の測定が行なえるような光学測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に基づく光学測定装置は、光を内部に入れるための開口部と光を反射可能な内面とを有する積分球と、複数の測定スポットからそれぞれ進行してきた光を、上記開口部に導くための複数の光誘導手段と、上記内面によって反射された光を上記積分球の内部で受光することによって光量を測定するための測定器とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の測定スポットからの光を光誘導手段によって集めて積分球の内部に取り込み十分な光量にしたものを測定器で受光する構成となっているので、さほど高感度でないセンサを用いても、時間をかけずに輝度の測定が行なえるような光学測定装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施の形態1)
(構成)
図1、図2を参照して、本発明に基づく実施の形態1における光学測定装置1について説明する。図1に示すように、この光学測定装置1は、光を内部に入れるための開口部17と光を反射可能な内面18とを有する積分球10と、複数の測定スポット14,15,16からそれぞれ進行してきた光を、開口部17に導くための複数の光誘導手段と、内面18によって反射された光を積分球10の内部で受光することによって光量を測定するための測定器11とを備える。ここでいう複数の光誘導手段は、複数のミラー3,4,5および複数のレンズ6,7,8を含む。複数のミラー3,4,5は、測定スポット14,15,16から進行してきた光を積分球10の側に向けて反射させるためのものである。複数のレンズ6,7,8は、複数のミラー3,4,5でそれぞれ反射して積分球10に向かって進行する光を開口部17に集光するためのものである。ミラー3,4,5から開口部17までの距離は各レンズの焦点距離にほぼ等しくなっている。積分球10の内面18には、拡散反射率が高くかつ光をほぼ吸収しない硫酸バリウムなどの白色塗料が塗られている。
【0012】
複数の測定スポット14,15,16は、平坦な被測定面2の中の複数の領域であり、それぞれ直径数cm程度の領域である。好ましいことに、複数のミラー3,4,5は、複数の測定スポット14,15,16から見て被測定面2の法線方向にそれぞれ配置されている。被測定面2から法線方向に数十cm離れたところにミラー3,4,5が配置されている。測定スポット14から法線方向に出射した光はミラー3で反射して、レンズ6を透過して開口部17に入る。測定スポット15から法線方向に出射した光はミラー4で反射して、レンズ7を透過して開口部17に入る。測定スポット16から法線方向に出射した光はミラー5で反射して、レンズ8を透過して開口部17に入る。これら3通りの光路がそれぞれ確保されており、ミラー3,4,5およびレンズ6,7,8は他の光路を妨げない位置にそれぞれ配置されている。
【0013】
さらに好ましいことに、光学測定装置1は、開口部17の外側に配置された遮光板9を備え、遮光板9は開口部17と重なる位置に開口部17より小さい微小孔9aを有する。図1における開口部17近傍の断面を拡大したところを図2に示す。遮光板9は積分球10の開口部17に密着している。微小孔9aは、直径数mm以下の貫通孔である。光学測定装置1がこのような遮光板9を備える場合、上述の光誘導手段は微小孔9aを介して開口部17に光を導くためのものとなる。したがって、光誘導手段は、各測定スポットからの測定に必要な光がちょうど微小孔9aを通過するように位置関係を調整しておくべきである。レンズ6,7,8から微小孔9aまでの距離はそれぞれ各レンズの焦点距離になるようにしておくとよい。
【0014】
(作用・効果)
本実施の形態における光学測定装置1では、複数の測定スポットの光を光誘導手段によって積分球10内に同時に取り込み、これらの光を積分球10によって加算ないし積分した結果を測定器11によって受光することができるので、被測定面2自体の放射する光が微弱であっても、測定器11に入射する光量を増やすことが可能となる。本実施の形態では、測定スポットの数を3とし、ミラー、レンズをそれぞれ3ずつ用意したが、測定スポットの数は2以上であれば3以外の数であってもよい。数を多くするほど、多くの光を積分球10内に導くことができるので測定器11に入射する光量を増やすことができて好ましい。
【0015】
本実施の形態では、開口部17より小さい微小孔9aを有する遮光板9を備えているので、測定に不要な光は微小孔9aの位置から外れて遮光板9に遮られ、測定に真に必要な光のみが微小孔9aを通過して開口部17から積分球10の内部に入射する。
【0016】
均一に面発光するような被測定面の輝度を測定しようとする場合、本発明によれば、測定スポットの面積を容易に拡大することが可能である。被測定物の放射光が微弱な低輝度測定においても、本発明によれば、センサが受光する光量をセンサにとって検出可能なレベルまで大きくすることが容易にでき、たとえセンサそのものの感度が従来どおりであったとしても、測定下限を下げることが可能となる。しかも、センサが受光する光量を大きくする過程には時間が余計にかかるわけでもない。
【0017】
被測定面から放射される光が偏光されていても、本発明では積分球の中で光が乱反射することで偏光誤差を抑えることができる。
【0018】
一般に、センサを高感度にすると、ノイズが増大してしまうが、本発明によればセンサのノイズが増大することは回避することができる。
【0019】
本明細書の冒頭では、光学測定装置の使用目的の一例として液晶表示パネルの輝度測定について説明したが、本発明に基づく光学測定装置は、液晶表示パネルの輝度測定に限らず、面積的広がりをもつ対象物の面が放射する光量を測定する一般的用途に広く使用することができる。
【0020】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に基づく実施の形態1における光学測定装置の概念図である。
【図2】本発明に基づく実施の形態1における光学測定装置の部分拡大断面図である。
【図3】従来技術に基づく輝度測定の概念図である。
【符号の説明】
【0022】
1,51 光学測定装置、2 被測定面、3,4,5 ミラー、6,7,8,56 レンズ、9 遮光板、9a 微小孔、10 積分球、11 測定器、14,15,16,54 測定スポット、17 (積分球の)開口部、18 (積分球の)内面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を内部に入れるための開口部と光を反射可能な内面とを有する積分球と、
複数の測定スポットからそれぞれ進行してきた光を、前記開口部に導くための複数の光誘導手段と、
前記内面によって反射された光を前記積分球の内部で受光することによって光量を測定するための測定器とを備える、光学測定装置。
【請求項2】
前記光誘導手段は測定スポットから進行してきた光を前記積分球の側に向けて反射させるための複数のミラーを含む、請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項3】
前記光誘導手段は前記ミラーで反射して前記積分球に向かって進行する光を前記開口部に集光するためのレンズを含む、請求項2に記載の光学測定装置。
【請求項4】
前記複数の測定スポットは、平坦な被測定面の中の複数の領域であり、前記複数のミラーは、前記複数の測定スポットから見て前記被測定面の法線方向にそれぞれ配置されている、請求項2または3に記載の光学測定装置。
【請求項5】
前記開口部の外側に配置された遮光板を備え、前記遮光板は前記開口部と重なる位置に前記開口部より小さい微小孔を有し、前記光誘導手段は前記微小孔を介して前記開口部に光を導くためのものである、請求項1から4のいずれかに記載の光学測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−24763(P2007−24763A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−209938(P2005−209938)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】