説明

光学測定装置

【課題】試験片3の移動速度を検知し、試験片3に測定光を照射して発生する反射光または散乱光のデータサンプリング間隔を試験片3の移動速度に応じて変更することのできる光学測定装置を提供する。
【解決手段】ステージ4の下部にラック13とラック13に噛み合って回転する回転ギア14を設け、回転ギア14の同軸上にエンコーダを設置する。試験片3をセットしたアタッチメント2をステージに設置し、試験片3が走査したときの移動速度を所定時間中のエンコーダ出力波形18のパルス数をカウントして求める。試験片3の移動速度からデータサンプリング間隔を計算することにより、ADC11のサンプリング間隔を移動速度に応じて変更することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験片上に点着した液体試料に含まれる被測定物質と特異的に結合する抗体を固体化した呈色部を有する試験片の光学特性を、試験片に測定光を照射しながら走査させて測定し、被測定物質の濃度を定量的に測定する光学測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図11に従来の光学測定装置で使用する試験片3を示す。試験片3はメンブレンなどの多孔質な基材上に第一呈色部31及び第二呈色部32を形成する。これらの呈色部には被測定物質と特異的に結合する抗体を予め基材上に固定化している。標識部33は、標識物質に被測定物質と特異的に結合する抗体を結合させて塗布している。被測定物質を含む液体試料を標識部33に点着すると、メンブレン上を図11に示す方向に展開して、第一呈色部31及び第二呈色部32にて、被測定物質が標識化された抗体と結合して固定化される。この試験片3に光を照射して反射光、散乱光または透過光などの光学特性を測定する。標識化された被測定物質が固定化している第一呈色部31及び第二呈色部32とメンブレンの他の部分との光学特性とが異なるので、この光学特性の差を利用して被測定物質の濃度測定を行う。
【0003】
従来例1の光学測定装置を図12に示す。従来の光学測定装置1はアタッチメント2に試験片3をセットし、液体試料を試験片3に点着する。アタッチメント2は装置内部でステージ4によって固定され、ステージ4はアタッチメントの挿入検出用にスイッチ5を設置し、その上部には測定光が入射して試験片3に照射できるように開口を設けている。光学部6は発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)などの光源と、それが出射するビームを整形するレンズ群及びマイコン12からの指令を受けて光源の光出力を制御する光源制御器7で構成している。
【0004】
スイッチ5にてアタッチメント2の挿入を検知すると光源を点灯して測定光を試験片3に照射し、その状態でアタッチメント2とステージ4を使用者が光学測定装置1の内部に押し込むことで測定光が試験片3上を走査する。このときの試験片3で発生する反射光、散乱光または透過光を試験片3の光学特性として検出部8で検出する。検出部8はフォトトランジスタ、CCD、フォトダイオード(PD)、アバランシェフォトダイオード(APD)、光電子増倍管(PMT)のいずれかで構成する受光素子9と、受光素子9で発生する光電流を電圧に変換するI−V変換10で構成している。電圧変換した光学特性をADコンバータ(ADC)11に入力してデジタルデータに変換し、マイコン12に入力して被測定物質の濃度計算を行う。このときのADC11のサンプリング間隔とサンプリング数は予めマイコン12によって設定されている。
【0005】
しかしながら、前記従来例1の光学測定装置の構成では、試験片3の走査速度は使用者のアタッチメント2を押す速度によって変化する。したがって、マイコン12にて予め設定しているADC11のサンプリング間隔では、速度の大小によってADC11でサンプリングしたデータ間の試験片3上の距離にばらつき生じ、データサンプル数が不足して測定誤差が大きくなる課題が生じる。そのために、次に示す従来例2の技術が考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
従来例2の光学測定装置を図13に示す。光学測定装置34は、試験紙ホルダー35、往復運動可能な試験紙保持テーブル36、試験紙37、試験紙保持テーブル36を導入する区画を装置内部に設けると共にピン39を取り付けた仕切り板38を設置している。このピン39によって装置内部で固定される試験紙ホルダー35は、解除スイッチ44を押すことで固定が解除される。仕切り板38には試験紙37を光学測定するための窓40が開けられている。また、試験紙保持テーブル36の片側にはラック43が形成されており、それと噛み合うようにアイドルギア42及び、アイドルギア42と噛み合うように駆動ギア41が光学測定装置34に設けられている。アイドルギア42には粘性ダンパ(不図示)を装着しており、駆動ギア41はねじりコイルバネにより、試験紙保持テーブル36を装置内部に押し込んだときに装置外部に押し出すように作用する。
【0007】
予め試験紙ホルダー35にセットされている試験紙37に被測定物質を含む液体試料を点着した後に、試験紙ホルダー35を試験紙保持テーブル36にセットする。その状態で試験紙保持テーブル36を装置内部に押し入れると、ラック43によって駆動ギアが回転することでコイルバネが巻き取られる。ピン39によって固定されるまで試験紙保持テーブル36を押し込んだ後に解除スイッチ44を押すと、窓40から測定光を照射して測定動作が開始されると共に、コイルバネによって駆動ギア41が回転して試験紙保持テーブル36が装置の外に向かって押し出される。このときの試験紙保持テーブル36の速度は、アイドルギア42に粘性ダンパが設置されているのでほぼ等速にすることができる。
【特許文献1】特開2001−215223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来例2の光学測定装置34では、コイルバネ及び粘性ダンパの性能ばらつきで移動速度に差が生じやすく、またそれらの性能の経時変化でも移動速度が変化するために、従来例1の光学測定装置と同様にADC11でサンプリングされたデータ間の試験片3上の実距離に差が生じるために測定誤差が大きくなるという課題を有していた。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、試験片3の移動速度を検知してそれに応じてADC11のサンプリング間隔を変更することとした光学測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明の光学測定装置は、被測定物質と特異的に結合する呈色部を設けた試験片と、前記試験片を保持して水平移動するステージと、前記走査中に前記試験片に対して測定光を照射する光源を持つ光学部と、前記試験片の光学特性を測定して電気信号に変換する検出部と、
前記電気信号をサンプリングするADコンバータと、前記ADコンバータによりサンプリングされた信号を利用して被測定物質の濃度を計算する濃度計算手段と、前記ステージの移動速度を検知するステージ速度検出手段と、前記速度検出手段で検知された移動速度に応じて前記ADコンバータのサンプリング時間を制御するサンプリング時間制御手段を有することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の光学測定装置によれば、検知した試験片3の移動速度に応じたADC11のサンプリング間隔が設定できるので、ADC11でサンプリングを行ったデータ間の試験片3上での距離が等しいために、被測定物質の測定ばらつきを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の光学測定装置の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1に本発明の第一の実施の形態における光学測定装置の構成図を示す。試験片3は図11で示す試験片3を使用する。光学測定装置1は、試験片3をセットするアタッチメント2、装置内部でアタッチメント2を固定するステージ4、アタッチメント2のステージ4への挿入を検知するスイッチ5、ステージ4の移動速度を検出するステージ速度検出手段15、試験片3に測定光を照射する光学部6、試験片3からの反射光を検出する検出部8、検出部8からの出力電圧をサンプリング時間制御手段52により指示されるサンプリング間隔でサンプリングするADコンバータ(以下ADCと表現)11の出力より試験片3の非測定物質の濃度を計算する濃度計算手段51とから構成される。
【0013】
光学部6は、LEDまたはLDなどの光源から発するビームを整形するレンズ群と、光源の光量を制御する光源制御器7とから構成されている。制御手段12は、光源制御器7に対し光学部6の光源を点灯する指令信号を出力する。また検出部8は、フォトトランジスタ、CCD、PD、APD、PMTなどの受光素子9と、受光素子9からの出力電流を電圧に変換するI−V変換器10とから構成されている。また、ステージ4にはラック13が取り付けられ、ラック13と噛み合って回転する回転ギア14を設けることで水平移動出来るように構成されている。回転ギア14には、その回転軸上にエンコーダが設けられており、ステージ4の走査によって得られる回転速度はエンコーダ出力信号に変換されてステージ速度検出手段15内部のエンコーダ出力手段に送られて波形整形された後、サンプリング時間制御手段52に送られる。サンプリング時間制御手段52では、ステージ速度検出手段15より送られてきた信号に応じてADC11へのサンプリングクロックを供給する。
【0014】
次に本発明の動作について説明する。試験片3をアタッチメント2にセットした状態で液体試料を標識部33に点着する。試験片3上を液体試料が十分に展開したことを確認した後にステージ4にアタッチメント2をセットし、スイッチ5にてアタッチメント2の挿入を検知すると測定動作を開始する。
【0015】
制御手段12は光源制御器7に指令を送り、所定の光出力で光源を点灯させて試験片3に測定光を照射し、試験片3からの散乱光または反射光は受光素子9で受光してI−V変換器10で電圧変換した後にADC11に入力して濃度計算手段51のための濃度データ測定データを出力する。
【0016】
このときのADC11は、サンプリング時間制御手段12で予め設定された初期サンプリング間隔tにてデータのサンプリングを行う。この状態でアタッチメント2をステージ4上で水平移動させることにより測定光を試験片3上で走査させる。このとき、ステージ4の水平移動に伴い回転ギア14が回転するため、エンコーダ出力が得られる。エンコーダ出力とADC11のサンプリング間隔を同期させて測定すると、受光素子9の受光強度は図2のようになる。16は試験片3上の第一呈色部の受光強度、17は第二呈色部の受光強度を示している。
【0017】
測定動作中のサンプリング時間の第一の設定方法について図3を使用して説明する。45は試験片3の移動速度を示し、図3では試験片3を入れたアタッチメント2を手動で移動させたときに、移動速度が途中で変化している様子を現している。18はエンコーダ出力波形、19はADC11のサンプリングクロックである。期間1は始動時であり、期間2〜6はそれ以降の期間を示す。ここでの試験片3の移動速度は、期間1〜3が等速、期間4で減速し、期間5、6では再び等速になっている。期間1〜6のサンプリング時間の決め方を説明する。
【0018】
期間1の始動時のサンプリング時間tは、予め実験などを行って決定する実験値でありサンプリング時間制御手段52に予め記憶しておく。この期間1の間中、エンコーダ出力波形のパルス数n1をパルスの立ち上がりでカウントし、期間1のパルスの平均周期をT1=t/n1として計算する。平均周期が短い場合は、試験片3の移動速度が速いことを示しているので、サンプリング時間は短くてよい。したがって、平均周期とサンプリング時間は比例関係にある。期間2のサンプリング時間t2は期間1の平均周期T1を使用してt2=α・T1(αは任意の定数)とする。この計算を期間1の間中サンプリング時間制御手段52で行い、期間の終了時にサンプリング時間t2のパルスをADC11に出力する。ここで出力するパルスのON幅は少なくともサンプリング時間t2よりも短い幅にする。
【0019】
期間2のサンプリングクロックを出力すると、パルス数n1のカウントをリセットし、期間2のパルス数n2をカウントして平均周期T2=t2/n2を求める。期間1のときと同様にエンコーダパルスのカウント毎にT2および期間3のサンプリング時間t3=α・T2を順次求める。その他の期間のサンプリング時間も同様に求める。期間5は試験片3の移動速度減少によってエンコーダパルス数が減少しているので、期間6のサンプリング時間t6=α・t5/n5は期間2〜5のサンプリング時間に比べて長くなる。
【0020】
以上のようにサンプリング時間制御手段52は、試験片3の移動に同期して回転するエンコーダの出力パルス数を求めて試験片3の移動速度を計算することで、ADC11の次のサンプリング間隔を計算しADC11に出力する。
【0021】
サンプリング時間制御手段52を用いることにより、試験片3の移動速度に対応してADC11のサンプリング間隔を変更することが出来るので、測定中の試験片3の水平移動速度のばらつき、すなわち、走査中の速度が変動した場合でも、ADC11のデータサンプリング数が不足せず、正常な測定を行うことが出来る。このため、測定精度を向上させることが出来る。
【0022】
(実施の形態2)
本実施の形態2では、実施の形態1と異なる点のみを説明する。図4は、本発明の実施の形態の2の光学測定装置1の構成図を示す。実施の形態1の光学測定装置1では、ステージ4の移動速度を検出するために、エンコーダを用いたステージ速度検出手段15を設けていたが、本実施の形態2では、回転ギアの回転軸上に発電機を設置したステージ速度検出手段15を用いる。発電機の出力は演算手段20にてアンプなどを介して波形整形したのちにサンプリング時間制御手段52に入力し、サンプリング時間制御手段52の内部に有するクロックにてデータを取得する。
【0023】
次に、本実施例を使用したADC11のサンプリング間隔の設定方法について図5を用いて説明する。21は発電機の出力波形、19は実施例1と同様にサンプリングクロックを示している。
【0024】
発電機14の出力電圧21の大きさは、回転速度に対して比例関係にある。したがって、出力電圧21の振る舞いは試験片3の移動速度の増減と等しい。図5では、試験片3は期間1で加速して一定速度になり、期間5で減速して、期間6で再び一定速度になっている様子を示している。このような速度で移動する試験片3に対して、サンプリング時間制御手段12において、期間1〜6でのサンプリング時間の決め方を説明する。
【0025】
期間1の始動時のサンプリング時間tは、予め実験などを行って決定する実験値でありサンプリング時間制御手段52に予め記憶しておく。このサンプリング時間をn分割し、n分割した1番目の時間での発電機14の電圧をV11、n番目の電圧をV1nとして、期間1での発電機の平均電圧をV1=(V11+V12+・・・+V1n)/nとして計算する。平均電圧V1が高い場合は、試験片3の移動速度が速いことを示しているので、サンプリング時間は短くてよい。したがって、平均電圧とサンプリング時間は反比例関係にある。期間2のサンプリング時間t2は期間1の平均電圧V1を使用してt2=α/V1(αは任意の定数)とする。この計算を期間1のn分割したサンプリング間隔毎にサンプリング制御手段52で行い、期間の終了時にサンプリング時間t2のパルスをADC11に出力する。ここで出力するパルスのON幅は少なくともサンプリング時間t2よりも短い幅にする。
【0026】
期間2のサンプリングクロックを出力すると、平均電圧の計算をリセットし、期間1のときと同様にサンプリング時間t2をn分割したタイミングで発電機14の電圧を演算手段から入手して、平均電圧V2=(V21+V22+・・・+V2n)/nを計算する。期間3)のサンプリング時間はt3=α/V2として求め、その他の期間のサンプリング時間も同様にして求められる。期間5以降は、試験片3の移動速度が期間2〜4から減少しているので、発電機14の電圧が減少する。したがって、期間6、7のサンプリング時間は期間2〜5のサンプリング時間に比べて長くなる。
【0027】
以上のように、本実施の形態2のサンプリング時間制御手段12においては試験片3の移動速度に比例する値としてADC11がデータサンプリング期間中に発電機の出力電圧の平均値を求め、次の期間のサンプリング間隔を決定した。このような構成においても実施例1と同じようなデータサンプリング間隔のばらつきを防止による測定精度の向上が可能である。
【0028】
なお、本実施例においては発電機の出力電圧の平均値を求めるようにしたが、出力電圧の各瞬時値から同様の計算でサンプリング間隔tnを求めて、各期間の最後の値を次の期間のサンプリング間隔とするようにしても同様の効果が得られる。
【0029】
(実施の形態3)
本実施の形態では先の実施の形態1及び2と異なる点のみを説明する。本実施の形態では、図12に示す従来の装置においても、本発明の課題が解決できる試験片3を説明する。
【0030】
図6に本発明の実施の形態3で使用する試験片3の図を示す。図6の試験片は第一呈色部31と第二呈色部32のそれぞれの展開方向前方に第一速度確認ライン22と第二速度確認ライン23を有している。22、23の速度確認ラインは例えば黒の染料など、反射、散乱光がほとんどない染料で予め染色している。また、第一、第二速度確認ライン22,23の各々のライン間の距離はd1=d2=d3=d4=aとなっている。
【0031】
図7は試験片に測定光を照射することで発生する反射光または散乱光とADC11のサンプリングクロック19の図である。第一速度確認ラインの受光強度24は第一速度確認ラインに対応する受光素子9に入射する反射または散乱光の受光強度、第二速度確認ラインの受光強度25は第二速度確認ラインに対応する反射または散乱光の受光素子9での受光強度を示している。
【0032】
次に本実施例でのADC11におけるデータのサンプリング間隔設定方法について説明する。図7の1の期間で示される測定の初期段階では、マイコン12にて予め設定している初期サンプリング間隔tを使用する。装置が第一速度確認ライン22をスキャンすると、第一速度確認ラインの受光強度24から極小値を検出し、各極小値間の距離d1、d2のサンプリングクロック数m1、m2(=極小値間のデータ数)を求める。クロック数m1を用いてd1をスキャンしたときの試験片3の移動速度はvd1=a/(m1・t)として計算される。同様に、vd2=a/(m2・t)となる。このvd1、vd2から、第一速度確認ライン22をスキャンしたときの試験片3の移動速度の平均値v1をv1=(vd1+vd2)/2として求め、図7の2の期間のサンプリング間隔t2=αv1(αは任意の定数)とする。このサンプリング間隔t2は第一速度確認ライン22の測定が終了した時点で適用し、第一呈色部31の測定はこのサンプリング間隔t2を使用する。試験片3が更に移動して第二速度確認ライン23をスキャンすると、同様にして第二速度確認ライン23の各ラインの距離d3、d4間の移動速度を求める。第二速度確認ライン23をスキャンしたときd3、d4のダンプリングクロック数がそれぞれm3、m4のときd3、d4での試験片3の移動速度vd3、vd4はそれぞれ、vd3=a/(m3・t2)、vd4=a/(m4・t2)となる。第二速度確認ラインでの試験片3の移動速度の平均値v2は同様にしてv2=(vd3+vd4)/2となり、図7の3の期間のサンプリング間隔t3はt3=αv2(αは任意)で計算する。このサンプリング間隔t3は第二速度確認ライン23の測定が終了した時点で適用し、第二呈色部の受光強度17はこのサンプリング間隔を使用して測定する。
【0033】
以上のように、本実施例3においては試験片3上の第一呈色部31、第二呈色部32の手前に、反射または吸光の低い複数のラインで形成する第一速度確認ライン22と第二速度確認ライン23を設けた。各ライン間d1〜d4のサンプリングクロック数試験片3の移動速度を求めて、第一、第二速度確認ライン通過時の平均移動速度v1、v2を計算した。このv1、v2を用いてサンプリング間隔t1、t2を決定し、第一呈色部31と第二呈色部32の測定にそれらのサンプリング間隔を使用した。このように各々の呈色部の測定の手前で試験片3の移動速度を求めてサンプリング間隔を決定することで、実施例1、2と同様に試験片3の移動速度の違いによって生じるデータサンプリング間隔のばらつきを防止することが可能である。
【0034】
本実施例において、試験片上の呈色部と速度確認ラインはそれぞれ2箇所設けているが、呈色部と速度確認ライン共に1箇所以上設けていれば同様の効果が得られる。また、図6の速度確認ラインは2本以上設けて、それぞれの平均速度を求めるようにすれば同様の効果が得られることは言うまでもない。
(実施の形態4)
本実施の形態では実施の形態1から3と異なる点のみを説明する。図8に本発明の実施の形態4の光学測定装置の構成図を示す。ステージ4の下部に反射板26、フォトリフレクタのような反射型の光センサ27を設置し、光センサ27は光センサ制御部28によって制御され、その出力はマイコン12に入力する。図9に示すように反射板26は等間隔に光を反射しないスリットを設け、アルミ、鉄、ステンレスなどの光を反射しやすい素材で構成する。このスリットは貫通穴、反射防止塗料、反射防止シールなどが使用可能である。この光センサ27からの信号は、光センサ検出部を内臓したステージ速度検出手段15に送られ、演算手段により波形整形をした後、サンプリング時間制御手段52に送られる。光センサ出力波形の周期>サンプリング時間であり、光センサの出力波形の周期の方が小さい場合には実施例1と同様の方法で測定が可能である。
【0035】
次に、本実施の形態4に使用したサンプリング時間制御手段52における、ADC11のサンプリング時間の設定方法について図10を用いて説明する。45は試験片3の移動速度を示し、図10では試験片3を入れたアタッチメント2を手動で移動させたときに、移動速度が途中で変化している様子を現している。30は演算手段から得られる光センサ出力波形、19はADCのサンプリングクロックである。期間1は始動時であり、期間2〜7はそれ以降のサンプリングクロックの期間を示す。ここでの試験片3の移動速度は、期間1〜3が等速、期間4、5で減速し、期間6、7では再び等速になっている。期間1〜6のサンプリング時間の決め方を説明する。
【0036】
サンプリング時間制御手段52では、ADC11にサンプリングクロックを出力すると同時に光センサ出力波形30の周期を測定する。光センサ出力波形30の周期が短い場合は、試験片3の移動速度が速いことを示しているので、サンプリング時間は短くてよい。したがって、周期TAの光センサ出力に対応するサンプリング時間はtA=α・TA(αは任意の定数)とする。期間1の始動時のサンプリング時間tは予め実験などを行って決定する実験値であり、サンプリング時間制御手段52に予め記憶しておく。期間2のサンプリングクロック立ち上がり時には、光センサ出力30の期間Aが終了していないので、期間1と同様に予め記憶しているサンプリング時間tのクロックを出力する。
【0037】
期間2の途中で期間Aが終了するので、サンプリング時間tAが求められ、サンプリング時間tと置き換えられる。期間3のサンプリングクロック立ち上がり時には、サンプリング時間はtからtAに置き換えられているので、サンプリング時間tAのクロックを出力する。期間4〜7でも同様にして、期間4:tB、期間5:tC、期間6:tC、期間7:tDに、サンプリング時間がそれぞれ設定される。
【0038】
以上のように、本実施の形態4のサンプリング時間制御手段52においては試験片3の移動速度に反比例する値としてADC11のデータサンプリング中の光センサ出力波形30の周期を測定し、サンプリング間隔を決定した。このような構成にすることで実施例1〜3と同様にデータサンプリング間隔のばらつきを防止できる。
【0039】
なお、本実施の形態では反射板26と光センサ27をステージ4の底部に設けたが、光センサ出力波形30が得られる箇所であればステージのいかなる部分にも取り付け可能である。また、ステージ4に直接に反射部と被反射部のパターンを設けて、反射材26を設置しない場合でも同様の効果が得られることは言うまでもない。また、本実施の形態では光センサ30として反射型のセンサを使用しているが、反射材26のスリット29を貫通穴とすれば透過型の光センサも使用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明にかかる光学測定装置は、試験片を装置内部で走査して光学特性を測定する際に、走査速度のばらつきによる測定制度低下の改善効果を有し、試験上の被測定物質の濃度を光学的に測定する分野等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例1における光学測定装置の断面図
【図2】本発明の実施例1における受光強度の図
【図3】本発明の実施例1におけるエンコーダ出力波形とサンプリングクロックの図
【図4】本発明の実施例2における光学測定装置の断面図
【図5】本発明の実施例2におけるエンコーダ出力波形とサンプリングクロックの図
【図6】本発明の実施例3における試験片の図
【図7】本発明の実施例3における試験片の光学特性の図
【図8】本発明の実施例4における光学測定装置の断面図
【図9】本発明の実施例4における反射板の図
【図10】本発明の実施例4における光センサ出力波形とサンプリングクロックの図
【図11】従来の試験片の図
【図12】従来例1の光学測定装置の図
【図13】従来例2の光学測定装置の図
【符号の説明】
【0042】
1 光学測定装置
2 アタッチメント
3 試験片
4 ステージ
5 スイッチ
6 光学部
7 光源制御器
8 検出部
9 受光素子
10 I−V変換器
11 ADコンバータ(ADC)
12 マイコン
13 ラック
14 回転ギア
15 ステージ速度検出手段
16 第一呈色部の受光強度
17 第二呈色部の受光強度
18 エンコーダ出力波形
19 サンプリングクロック
20 演算手段
21 発電機出力波形
22 第一速度確認ライン
23 第二速度確認ライン
24 第一速度確認ラインの受光強度
25 第二速度確認ラインの受光強度
26 反射板
27 光センサ
28 スリット
29 光センサ制御部
30 光センサ出力波形
31 第一呈色部
32 第二呈色部
33 標識部
34 光学測定装置
35 試験紙ホルダー
36 試験紙保持テーブル
37 試験紙
38 試験紙保持テーブル
39 ピン
40 窓
41 駆動ギア
42 アイドルギア
43 ラック
44 解除スイッチ
45 移動速度
51 濃度計算手段
52 サンプリング時間制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物質と特異的に結合する呈色部を設けた試験片と、
前記試験片を保持して水平移動するステージと、
前記走査中に前記試験片に対して測定光を照射する光源を持つ光学部と、
前記試験片の光学特性を測定して電気信号に変換する検出部と、
前記電気信号をサンプリングするADコンバータと、
前記ADコンバータによりサンプリングされた信号を利用して被測定物質の濃度を計算する濃度計算手段と、
前記ステージの移動速度を検知するステージ速度検出手段と、
前記速度検出手段で検知された移動速度に応じて前記ADコンバータのサンプリング時間を制御するサンプリング時間制御手段を有する、
光学測定装置。
【請求項2】
前記光源は、半導体レーザまたは発光ダイオードを用いて構成する請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項3】
前記検出部は、フォトトランジスタ、CCD、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、光電子増倍管のいずれかを用いた受光素子と、前記受光素子から出力する光電流を電圧に変換するためのI−V変換素子からなる請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項4】
前記ステージ速度検出手段は、前記ステージの移動速度を検出する回転エンコーダを有し、前記回転エンコーダからの出力波形の周期、あるいは所定時間内における前記出力波形のパルス数を計測して、前記ステージの移動速度を検出する演算手段を有する請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項5】
前記ステージ速度検出手段は、前記ステージの移動に応じて回転する発電機を有し、前記発電機の出力電圧を用いて前記ステージの移動速度を検出する演算手段を有する請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項6】
前記試験片は、その片側に標識部を持つとともに所定の間隔を設けて被測定物質と特異的に結合する一つ以上の呈色部とを有し、前記標識部と前記呈色部との間に複数のラインから成る速度確認ラインとを持つ請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項7】
前記ステージ速度検出手段は、前記試験片を水平移動させる際に、前記速度確認ラインに含まれる複数のラインの間隔を光学的に読み取ることで前記ステージの移動速度を検出する請求項5に記載の光学測定装置。
【請求項8】
前記光学測定装置内の前記ステージが水平移動するための収納部の底部は、複数のスリットを有する反射板から構成され、かつ前記反射板の下部に光照射部と光センサとを有している請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項9】
前記ステージ速度検出手段は、前記試験片を水平移動させる際に、前記光照射部から前記反射板に光を照射し、前記反射板を通過して前記ステージから反射された光を前記光センサで検出して前記スリットの間隔を光学的に読み取ることで前記ステージの移動速度を検出する請求項7に記載の光学測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−203114(P2008−203114A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−40226(P2007−40226)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】