説明

光学用コート材

【解決手段】
熱可塑エラストマー(A)と、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)と、有機溶媒(C)とからなり、共重合性モノマー(B)が官能基を有しないモノマーを少なくとも1種含有することを特徴とする光学用コート材。
【効果】
本発明により、スプレーでの塗装、コーターでの塗工が可能な光学用コート材であり、UV硬化をさせることもでき、更に活性水素および/または水酸基を有するものは分子内にイソシアナート基を有する硬化剤を併用することもでき、塗膜にした際には塗膜表面にベタツキがなく、優れた光学特性を有するものであって、極性の高いトリアセチルセルロース及び極性の低い脂環式構造含有重合体フィルムやシート、あるいは成形物へ優れた密着性を示す光学用コート材を提供することが可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑エラストマー、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー、有機溶媒からなる光学用コート材に関する。詳しくは、光学特性に優れ、極性の高いトリアセチルセルロース及び極性の低い脂環式構造含有重合体のフィルム、シート、或いは成形物等に、幅広い密着性を発現する光学用コート材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビ、パソコン等の各種ディスプレイは、プラスチックやガラス等の光を透過できる透明な材料が用いられている。とりわけ、透明フィルムでは、透明性、不透湿性の面から、トリアセチルセルロース(以下TACと略記する)が広く用いられており、近年では脂環式構造含有重合体からなるフィルムも使用されてきている。
しかしながら、両フィルムともに耐擦傷性、耐薬品性に乏しいため、各種表面処理を行い性能の向上を図っている。これらの方法として例えば、紫外線硬化型樹脂をハードコート層に使用する方法(特許文献1)等が挙げられる。
一般的に、各種表面処理に使用される光学用コート材には、コート材の作業性、透明性、基材との密着性等が要求される。
また近年、更なる高機能化、とりわけ耐久性の向上が要求されるとともに、極性の高いトリアセチルセルロース及び極性の低い脂環式構造含有重合体の両方に密着するものがないという問題点がある。
【特許文献1】特開平1−105738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来の上述した問題点を解消する光学用コート材を提供するものである。すなわち、本発明は、スプレーでの塗装、コーターでの塗工が可能な、光学用コート材であり、更にはUV硬化をさせることもでき、分子内にイソシアナート基を有する硬化剤を併用することもでき、塗膜にした際には塗膜表面にベタツキがなく、透明性など優れた光学特性を有するものであって、極性の高いトリアセチルセルロース及び極性の低い脂環式構造含有重合体フィルム、シート、或いは成形物へ優れた密着性を示す光学用コート材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記目的の達成の為に鋭意研究及び検討を重ねてきた結果、熱可塑エラストマー(A)と、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)と、有機溶媒(C)とからなる光学用コート材が、上記課題を解決する上で極めて有用なものとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、本発明は、熱可塑エラストマー(A)と、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)と、有機溶媒(C)とからなり、共重合性モノマー(B)が官能基を有しないモノマーを少なくとも1種含有することを特徴とする光学用コート材である。
また、熱可塑エラストマー(A)に少なくとも一部が官能基で変性されたものを含む光学用コート材が好ましい。さらに前記の光学用コート材に、光重合性不飽和結合を有する共重合性モノマー(D)と光重合開始剤(E)とを含有することを特徴とする光学用コート材である。さらに、活性水素および/または水酸基を有する光学用コート材を含有する主剤と、活性水素および/または水酸基と反応可能な硬化剤を含有する光学用コート材である。前記記載の光学用コート材を塗布したトリアセチルセルロース、及び脂環式構造含有重合体成形物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、スプレーでの塗装、コーターでの塗工が可能な光学用コート材であり、UV硬化をさせることもでき、更に活性水素および/または水酸基を有するものは分子内にイソシアナート基を有する硬化剤を併用することもでき、塗膜にした際には塗膜表面にベタツキがなく、透明性など優れた光学特性を有するものであって、極性の高いトリアセチルセルロース及び極性の低い脂環式構造含有重合体フィルム、シート、あるいは成形物へ優れた密着性を示す光学用コート材を得ることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明の詳細を説明する。
<熱可塑エラストマー(A)>
本発明に用いられる熱可塑性エラストマー(A)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ペンテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体で代表される、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等のα−オレフィンの単独または2種類以上の共重合体の熱可塑性エラストマ−が挙げられる。前記の中でも、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−オクテン共重合体が好ましい。
また、その重量平均分子量(以下、Mwと略記する。重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準として測定可能である。)は通常、10,000〜700,000の範囲、好ましくは30,000〜500,000、さらに好ましくは50,000〜400,000である。
【0008】
その他、熱可塑性エラストマー(A)としては、スチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物、スチレン−共役ジエンランダム共重合体の水素添加物等が挙げられ、スチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物の構成としてはスチレン−共役ジエンのジブロック共重合体の水素添加物、スチレン−共役ジエン−スチレンのトリブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。ここで用いられる共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。前記の中でも、スチレン−イソプレン−スチレンのトリブロック共重合体の水素添加物、スチレン−ブタジエンのランダム共重合体の水素添加物が好ましい。ここで用いられる熱可塑性エラストマーは、そのスチレンの含有量が通常2〜60重量%、より好ましくは3〜45重量%の範囲のものである。
また、その重量平均分子量は、10,000〜700,000の範囲が好ましく、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体の水素添加物では15,000〜500,000、さらには20,000〜400,000が好ましい。また、スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物では10,000〜700,000、さらには50,000〜500,000が好ましい。
【0009】
また、熱可塑性エラストマー(A)としては、脂環式構造含有重合体が挙げられ、重合体の繰返し単位中に脂環式構造を含有するものであり、主鎖および側鎖のいずれに脂環式構造を有していてもよい。脂環式構造としては、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造などが挙げられるが、膜にした際の熱安定性等の観点からシクロアルカン構造が好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子数は、制限されないが通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲である。
脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰返し単位の割合が過度に少ないと耐熱性が低下し好ましくない。なお、脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰返し単位以外の残部は限定されず、使用目的に応じ適宜選択される。
【0010】
脂環式構造を含有する重合体の具体例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、およびこれらの水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、膜にしたときの寸法安定性、酸素透過率、透湿度、耐熱性、機会強度等の観点から、ノルボルネン系重合体の水素添加物、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体およびその水素化物などが好ましい。
【0011】
(1)ノルボルネン系重合体
本発明で使用されるノルボルネン系重合体としては、例えばノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、およびそれらの水素添加物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。これらの中でも、膜の耐熱性、機械強度等の観点からノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物、およびノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体が最も好ましい。
【0012】
ノルボルネン系モノマーとしては、ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン、5−エチル−ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン、5−オクチル−ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン、5−オクタデシル−ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン、5−プロペニル−ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン、5−メトキシ−カルボニル−ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン、5−シアノ−ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン、5−メチル−メトキシカルボニル−ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン、5−メトキシカルボニル−ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン、5−エトキシカルボニル−ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン、5−メチル−5−エトキシカルボニル−ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン、ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−5−エニル−2−メチルプロピオネイト、ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−5−エニル−2−メチルオクタネイト、ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、5−ヒドロキシメチル−ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン、5,6−ジ(ヒドロキシエチル)−ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシ−i−プロピル−ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン、5,6−ジカルボキシ−ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン、ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸イミド、5−シクロペンチル−ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン、5−シクロヘキセニル−ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン、5−フェニル−ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン、トリシクロ〔4.3.12,5.01,6〕−デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、トリシクロ〔4.3.12,5.01,6〕−デカ−3−エン、トリシクロ〔4.4.12,5.01,6〕−ウンデカ−3,7−ジエン、トリシクロ〔4.4.12,5.01,6〕−ウンデカ−3,8−ジエン、トリシクロ〔4.4.12,5.01,6〕−ウンデカ−3−エン、テトラシクロ〔7.4.110,13.01,9.02,7〕−トリデカ−2,4,6−11−テトラエン(別名:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ〔8.4.111,14.01,10.03,8〕−テトラデカ−3,5,7,12−11−テトラエン(別名:1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン)、テトラシクロ〔4.4.12,5.17,10.0〕−ドデカ−3−エン(別名:テトラシクロドデセン)、8−メチル−テトラシクロ〔4.4.12,5.17,10.0〕−ドデカ−3−エン、8−エチル−テトラシクロ〔4.4.12,5.17,10.0〕−ドデカ−3−エン、8−メチリデン−テトラシクロ〔4.4.12,5.17,10.0〕−ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ〔4.4.12,5.17,10.0〕−ドデカ−3−エン、8−ビニル−テトラシクロ〔4.4.12,5.17,10.0〕−ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ〔4.4.12,5.17,10.0〕−ドデカ−3−エン、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔4.4.12,5.17,10.0〕−ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔4.4.12,5.17,10.0〕−ドデカ−3−エン、8−ヒドロキシメチル−テトラシクロ〔4.4.12,5.17,10.0〕−ドデカ−3−エン、8−カルボキシ−テトラシクロ〔4.4.12,5.17,10.0〕−ドデカ−3−エン、8−シクロペンチル−テトラシクロ〔4.4.12,5.17,10.0〕−ドデカ−3−エン、8−シクロヘキシル−テトラシクロ〔4.4.12,5.17,10.0〕−ドデカ−3−エン、8−シクロヘキセニル−テトラシクロ〔4.4.12,5.17,10.0〕−ドデカ−3−エン、8−フェニル−テトラシクロ〔4.4.12,5.17,10.0〕−ドデカ−3−エン、ペンタシクロ〔6.5.11,8.13,6.02,7.09,13〕−ペンタデカ−3.10−ジエン、ペンタシクロ〔7.4.13,6.110,13.01,9.02,7〕−ペンタデカ−4.11−ジエン、6−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレンなどが挙げられる。これらのノルボルネン系モノマーは、それぞれ単独であるいは2種以上組合わせて用いられる。
【0013】
ノルボルネン系モノマーの開環重合体、またはノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体は、モノマー成分を開環重合触媒の存在下で重合して得ることができる。開環重合触媒としては、例えばルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などの金属のハロゲン化物と、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物、および還元剤とからなる触媒、或いはチタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物、またはアセチルアセトン化合物、有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いることができる。重合反応は炭化水素中または無溶媒で、通常−50℃〜100℃の重合温度、0〜50kg/cmの重合圧力で行われる。ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとしては、例えばシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体などを挙げることができる。
【0014】
ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物は、通常、前述開環重合体の重合溶液に水素添加触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素添加することにより得ることができる。水素化触媒としては、特に限定されないが、通常、不均一系触媒や均一系触媒が用いられる。ノルボルネン系モノマー、またはノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加(共)重合体は、例えばモノマー成分を溶媒中または無溶媒で、チタン、ジルコニウム、またはバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒の存在下で、通常−50℃〜100℃の重合温度、0〜50kg/cmの重合圧力で(共)重合させて得ることができる。
【0015】
ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとしては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが用いられる。これらの中でも、α−オレフィン、特にエチレンが望ましい。
【0016】
これらのノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーは、それぞれ単独で、或いは2種以上を組合わせて使用することができる。ノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとを付加共重合する場合は、付加共重合体中のノルボルネン系モノマー由来の構造単位と共重合可能なその他のモノマー由来の構造単位との割合が、重量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
【0017】
(2)単環の環状オレフィン系重合体
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えばシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなど、単環の環状オレフィン系単量体の付加重合体を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
(3)環状共役ジエン系重合体
環状共役ジエン系重合体としては、例えばシクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの環状共役ジエン系単量体を1,2−または1,4−付加重合した重合体およびその水素添加物などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明で使用されるノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体または環状共役ジエン系重合体の分子量は使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法で測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量で通常5000〜50万、好ましくは8000〜20万、より好ましくは1万〜10万の範囲であるときに、成形体の機械的強度および成形加工性とが高度にバランスされて好適な場合が多い。
【0019】
(4)ビニル脂環式炭化水素重合体
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えばビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体およびその水素添加物;スチレン、α−メチルスチレンなどのビニル芳香族系単量体の重合体の芳香環部分の水素添加物;などを用いることができる。この場合、ビニル脂環式炭化水素重合体やビニル芳香族系単量体とこれらの単量体と共重合可能な他の単量体とのランダム共重合体、ブロック共重合体などの共重合体およびその水素添加物であってもよい。ブロック共重合体としては、ジブロック、トリブロック、またはそれ以上のマルチブロックや傾斜ブロック共重合体などが挙げられ、特に制限はない。
【0020】
本発明で使用されるビニル脂環式炭化水素重合体の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法で測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量で通常1万〜30万、好ましくは1.5万〜25万、より好ましくは2万〜20万の範囲であるときに、成形体の機械的強度および成形加工性とが高度にバランスされて好適な場合が多い。
本発明で使用される脂環式構造含有重合体樹脂のDSC測定におけるガラス転移温度(Tg)は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常40℃以上、好ましくは50℃〜200℃、より好ましくは60℃〜180℃の範囲である。この範囲において、耐熱性と成形加工性とが高度にバランスされ好適である。前記の熱可塑性エラストマーは、単独或いは2種以上併用して用いることができる。
【0021】
<熱可塑エラストマー(A)に少なくとも一部が官能基で変性されたもの>
本発明に、熱可塑エラストマー(A)に少なくとも一部が官能基で変性されたものを含むと極性材料との相溶性が向上するで好ましい。
本発明に用いられる熱可塑エラストマー(A)に、少なくとも一部が官能基で変性されたものは、前記記載の熱可塑性エラストマー(A)、またはこれら2種以上の混合物に、以下記載の官能基を含有したα,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B1)を反応させて得られるが、一部に反応しないものを含んでも何ら問題ない。
【0022】
ここで用いられる、官能基を含有したα,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B1)としては、ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等の水酸基含有ビニル類、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有ビニル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチロールアクリルアミド、メチロールメタクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の窒素化合物、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等の無水カルボン酸類が挙げられ、これらは単独でも、2種以上でも使用できる。
前記官能基を含有したα,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマーの添加量は通常、熱可塑性エラストマーの0.5〜20重量%の範囲、より好ましくは1〜15重量%である。
【0023】
<共重合性モノマー(B)>
本発明に用いられる、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)を以下に例示する。
α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウロイル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等の水酸基含有ビニル類、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有ビニル類およびこれらのモノエステル化物、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル類、ビニルイソシアナート、イソプロペニルイソシアナート等のイソシアナート基含有ビニル類、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド等のアミド類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、N、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジエチルアミノエチル(メタアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N、N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ソーダ、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、モノ(2−メタクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート等の不飽和リン酸類、その他アクリロニトリル、メタクリルニトリル、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、エチレン、プロピレン、C〜C20のα−オレフィン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。また、前記単量体、或いはその共重合体をセグメントに有し、末端にビニル基を有するマクロモノマー類等も使用できる。
【0024】
また、本発明に用いられるその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマーとしては、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等の無水カルボン酸類等が挙げられる。
また、ここに記載されたメチル(メタ)アクリレートのような記載は、メチルアクリレート及びメチルメタアクリレートを示す。
これらは、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体を主成分として用いることが好ましい。また、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体を主成分に、その他共重合可能な単量体を併用することもできる。
本発明において、本発明に用いられる熱可塑エラストマー(A)に、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)の割合は、重量比で(A)/(B)=90/10〜20/80が好ましく、(A)/(B)=85/15〜25/75がさらに好ましい。
【0025】
熱可塑エラストマー(A)の含有量が少なくなる、或いはα,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)の含有量が多くなると脂環式構造含有重合体への密着性が低下し、熱可塑エラストマー(A)の含有量が多くなる、或いはα,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)の含有量が少なくなるとトリアセチルセルロースへの密着性、或いは他のコート材との密着性が低下しするため、前記範囲が好ましい。また、共重合性モノマー(B)が官能基を有しないモノマーを少なくとも1種含有することが好ましい。
【0026】
<有機溶媒(C)>
本発明で使用する有機溶媒(C)は、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素や、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素や、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素等の炭化水素系有機溶剤、酢酸エチル、n−酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3メトキシブチルアセテート等のエステル系や、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系や、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のエーテル系溶媒等の極性有機溶剤を用いることができ、これらの2種以上からなる混合物であっても構わない。
【0027】
<光重合性不飽和結合を有する共重合性モノマー(D)>
本発明では、光重合性不飽和結合を有する共重合性モノマー(D)を使用することにより、UV等の光で硬化させることができる。光重合性モノマー(D)としては、アクリル基を有する化合物である。例えば、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス((メタ)アクリロキシエチル)ビスフェノールA、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート、その他活性二重結合を持つアクリロイルモルホリン、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルジビニルエーテル、スチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0028】
さらには、フタル酸、アジピン酸等の多塩基酸と、エチレングリコール、ブタジオール等の多価アルコールと、(メタ)アクリル酸化合物との反応で得られるポリエステルポリ(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸化合物との反応で得られるエポキシポリ(メタ)アクリレート、ポリシロキサンと(メタ)アクリル酸化合物との反応によって得られるポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート、ポリアミドと(メタ)アクリル酸化合物との反応によって得られるポリアミドポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
本発明においては、前記光重合性モノマー(D)を1種以上適用するが、ウレタンアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジトリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0030】
ウレタンアクリレートは、ジイソシアネート化合物とグリコール種の付加反応により重合を行い、残存するイソシアネート基にさらに水酸基等の活性水素基を有する(メタ)アクリレートを付加することで合成される。
ジイソシアネート化合物は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(H6 XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)等が挙げられる。
【0031】
グリコール種は、例えば、ピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、ポリカプロラクトンポリオール等のポリエステルポリオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートグリコール等のポリカーボネートポリオール;エチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3,3−ジメチロールヘプタン、炭素数が7〜22のアルカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、炭素数が17〜20のアルカン−1,2−ジオール、水素化ビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、ビスフェノールA、グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノール、その他の炭素数が8〜24の脂肪族トリオール、テトラメチロールメタン、D−ソルビトール、キシリトール、D−マンニトール、D−マンニット等である。
水酸基等の活性水素基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有ビニル類が挙げられる。
【0032】
<光重合開始剤(E)>
本発明の光重合開始剤(E)としては、紫外線、電子線、放射線等でラジカルを発生することが可能な化合物であり、具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4−ビス(ジメチルアミノベンゾフェノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン等のカルボニル類、ジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等のスルフィド類、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ類、ベンゾキノン、アントラキノン、クロロアントラキノン、エチルアントラキノン、ブチルアントラキノン等のキノン類、ベンゾイルパーオキシド、ジターシャリーブチルパーオキシド等のパーオキシド類、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類等を挙げることができるが、これらは単独あるいは2種以上で併用してもよい。また、これらに、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ピリジン、キノリン、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等のアミン類、トリフェニルホスフィン等のアリルホスフィン類、β−チオジグリコール等のチオールエーテル類等を併用しても良い。
【0033】
前記の中でも、ベンゾフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドが好ましく、これらを単独あるいは2種以上併用してもよい。
前記光重合開始剤(E)の使用量は、熱可塑性エラストマー(A)とα,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)に対して、通常0.1〜15重量%、好ましくは1〜10重量%であり、更に好ましくは1〜8重量%である。
【0034】
本発明のコート材を得る方法として、(1)有機溶媒中、熱可塑エラストマー(A)に、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)と重合開始剤をフィードしながら重合せしめた後、或いは(2)有機溶媒中、熱可塑エラストマー(A)とα,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)に、重合開始剤をフィードしながら重合せしめた後に、更にラジカルを発生させ反応を行なう方法で製造することができる。また、(3)有機溶媒中、熱可塑エラストマー(A)と、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)で構成された重合体をラジカルを発生させ反応を行う方法でも製造することができる。
【0035】
同様にして、熱可塑エラストマー(A)の一部が官能基で変性されたものに、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)と重合開始剤をフィードしながら重合せしめた後、或いは熱可塑エラストマー(A)の一部が官能基で変性されたものとα,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)に、重合開始剤をフィードしながら重合せしめる方法、或いはその後に更にラジカルを発生させ反応を行なう方法で製造することができる。また、熱可塑エラストマー(A)の一部が官能基で変性されたものと、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)で構成された重合体とをラジカルを発生させ反応を行なう方法でも製造することができる。
【0036】
上記樹脂を製造するにあたり、油脂類、油脂類の誘導体、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、石油系炭化水素樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つ以上を第3成分として用いることができる。
第3成分として用いられる油脂類としては、アマニ油、大豆油、ヒマシ油およびこれらの精製物が挙げられる。
第3成分として用いられる油脂類の誘導体としては、無水フタル酸等の多塩基酸とグリセリン、ペンタエリスリトール、エチレングリコール等の多価アルコールを骨格としたものを油脂(脂肪酸)で変性した短油アルキッド樹脂、中油アルキッド樹脂、長油アルキッド樹脂等、或いはこれにさらに天然樹脂、合成樹脂および重合性モノマーで変性したロジン変性アルキッド樹脂、フェノール変性アルキッド樹脂、エポキシ変性アルキッド樹脂、アクリル化アルキド樹脂、ウレタン変性アルキッド樹脂等が挙げられる。
【0037】
また、第3成分として用いられるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ノボラック等をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂、ビスフェノールAにプロピレンオキサイド、またはエチレンオキサイドを付加しグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂等を挙げることができる。また、多官能アミンをエポキシ基に付加したアミン変性エポキシ樹脂等を用いても良い。さらに、脂肪族エポキシ樹脂、脂環エポキシ樹脂、ポリエーテル系エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0038】
また、第3成分として用いられるポリエステル樹脂は、カルボン酸成分とアルコール成分を縮重合したものであり、カルボン酸成分として例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、1,10−デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸、マレイン酸、フマル酸等の多価カルボン酸およびその低級アルコールエステル、パラオキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸、および安息香酸等の1価カルボン酸等を用いる事ができ、また2種類以上併用する事も可能である。
【0039】
また、アルコール成分として例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、3−メチル−ペンタンジオール、2,2’−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールAのエチレノキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等を用いることができ、また2種類以上併用する事も可能である。
【0040】
また、水酸基を有する上記ポリエステル樹脂に、分子内に重合性不飽和結合を有する無水カルボン酸を付加させることによって得られた分子内に重合性不飽和結合を含有させた樹脂も使用可能である。
また、第3成分として用いられる石油系炭化水素樹脂としては、例えば、タールナフサのC5留分を主原料とする脂肪族系石油樹脂、C9留分を主原料とする芳香族系石油樹脂およびそれらの共重合系脂環族である。C5系石油樹脂(ナフサ分解油のC5留分を重合した樹脂)、C9系石油樹脂(ナフサ分解油のC9留分を重合した樹脂)、C5C9共重合石油樹脂(ナフサ分解油のC5留分とC9留分を共重合した樹脂)が挙げられ、タールナフサ留分のスチレン類、インデン類、クマロン、その他ジシクロペンタジエン等を含有しているクマロンインデン系樹脂、ρ−ターシャリブチルフェノールとアセチレンの縮合物に代表されるアルキルフェノール類樹脂、ο−キシレン、ρ−キシレン、m−キシレンをホルマリンと反応させたキシレン系樹脂等も挙げられる。これらは単独または2種類以上で組み合わせて使用することができる。これらの中でも、GPCによる測定で重量平均分子量が1,000〜50,000の石油系炭化水素樹脂が好ましく、なかでも1,500〜30,000が好ましい。また、これらの樹脂に極性基を有するものはさらに好ましい。
【0041】
また、第3成分として用いられるロジン系樹脂(E)としては、天然ロジン、重合ロジン、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸等で変性した変性ロジンが挙げられる。また、ロジン誘導体としては、前記のロジン類のエステル化物、フェノール変性物およびそのエステル化物等が挙げられ、これらの水素添加物が好ましい。
【0042】
また、第3成分として用いられるテルペン系樹脂としては、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、ジペンテン、テルペンフェノール、テルペンアルコール、テルペンアルデヒド等からなる樹脂が挙げられ、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、ジペンテン等にスチレン等の芳香族モノマーを重合させた芳香族変性のテルペン系樹脂等が挙げられ、これらの水素添加物も挙げることができる。中でもテルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂で、これらの水素添加物が好ましい。
【0043】
上記、第3成分は、1種類でも使用できるし、2種類以上で併用しても何ら構わない。また、反応器中へフィードしながら添加することも、また最初に反応器内に仕込んで使用することも可能である。また第3成分の添加量は、樹脂成分に対し通常0.5〜60重量%、好ましくは2〜40重量%で用いる。
【0044】
本発明の光学用コート材のうちで、構成単位としてヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタアクリル酸等を含む、活性水素及び/又は水酸基を持つものは、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を用いることができる。例えば、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤の一つである分子内にイソシアナート基を有する硬化剤と混合することで、ウレタン結合を有する光学用コート材として用いることができる。
【0045】
活性水素及び/又は水酸基と反応可能な分子内にイソシアナート基を有する硬化剤としては、フェニレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート等の芳香族ジイソシアナート類、ヘキサメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、リジンジイソシアナート等の脂肪族ジイソシアナート類、イソホロンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート等の脂環族ジイソシアナート類、その他イソシアナート化合物の一種又は二種以上と、エチレングリコール、プロピレングリコール、キシリレングリコール、ブチレングリコール等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の3価アルコール等の多価アルコールを付加物、イソシアナート基と反応可能な官能基を有する低分子量ポリエステル樹脂または水等の付加物、またはビュレット体、ジイソシアナート同士の重合体、さらに低級1価アルコール、メチルエチルケトオキシム等公知のブロック剤でイソシアナート基をブロックしたもの等が使用できる。イソシアナートプレポリマーを使用する場合についても、例えば、ジブチルチンジラウレート、トリエチルアミン等の外部触媒を添加することができる。
【0046】
また、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、グリコールウリル等の少なくとも1種とホルムアルデヒドから合成される樹脂であって、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等の低級アルコールによってメチロール基の1部または全部をアルキルエーテル化したようなアミノ樹脂も硬化剤として使用することができる。
【0047】
本発明の光学用コート材と活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤は任意の割合で使用する事ができる。
活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤がイソシアナート基を有する硬化剤である場合の配合割合は、活性水素とイソシアナート基の当量比で0.5:1.0〜1.0:0.5の範囲が好ましく、0.8:1.0〜1.0:0.8の範囲が更に好ましい。
また、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤がアミノ樹脂である場合は、本発明の光学用コート材/アミノ樹脂のソリッドの重量比で95/5〜20/80の範囲で用いるのが好ましく、90/10〜60/40の範囲が更に好ましい。
上記に記載の硬化剤を混合したものは、そのままでも塗工し硬化させることもできるが、必要に応じて反応性触媒を併用することもできる。
上記で得られる本発明の光学用コート材は、そのままでも使用できるが、更には必要に応じて酸化防止剤や耐候安定剤、耐熱防止剤等の各種安定剤、透明性を損なわない無機材料等の成分を含有させることができる。
【0048】
本発明の光学用コート材の塗布方法は特に限定するものではないが、噴霧やロールコーター、スピンコートにより塗工することが好ましく、例えば、スプレーガンで被塗装表面に吹きつけ塗工を行ったり、凸版、平版、グラビア、スクリーン印刷機で塗工を行ったり、スピンコーターで塗工を行うことができる。塗工は通常、常温にて容易に行うことができ、また塗工後の乾燥方法についても特に限定はなく、自然乾燥や加熱強制乾燥等、適宜の方法で乾燥することができる。
そして、本発明の光学用コート材は、光学用途に用いられる基材へのコート材として使用する事ができる。例えば、トリアセチルセルロース及びポリノルボルネン、エチレン−トリシクロデカン、エチレン−テトラシクロドデセン、エチレン−プロピレン−ヘキサジエン、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン、エチレン−プロピレン−シクロペンタジエン等からなる脂環式構造含有重合体、ポリカーボネート、ポリエステル等のフィルムやシート、あるいは成形物の光学用コート材として好適に用いることができる。特に、極性の高い基材から極性の低い基材に幅広く密着する光学用コート材である。
また、本発明の光学用コート材は、その特徴から上記以外にも、溶剤型熱可塑性アクリル樹脂、溶剤型熱硬化性アクリル樹脂、アクリル変性アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、及びメラミン樹脂等に添加して使用することができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の樹脂分散体の製法および各種試験例を挙げ、更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
熱可塑エラストマー(A)の製造例1
充分に窒素置換した2リットルのオートクレーブに、ヘキサンを950cm3、1−ブテンを60g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル加え、70℃に昇温した後、プロピレンとエチレンとを供給して全圧0.69MPaGにし、メチルアルミノキサン0.30ミリモル、rac−ジメチルシリレン−ビス{1−(2−n−プロピル−4−(9−フェナントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリドをZr原子に換算して0.001ミリモル加え、プロピレンとエチレンとをモル比が95:5となるように連続的に供給して全圧を0.69MPaGに保ちながら30分間重合を行った。重合後、脱気して大量のメタノール中でポリマーを回収し、110℃で12時間減圧乾燥し、熱可塑エラストマー(A)を24.1g得た。尚、重合活性は48kg・ポリマー/ミリモルZr・hrであった。
【0050】
[実施例1]
攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、熱可塑エラストマー(A)であるダイナロン1320P(JSR(株)製)を160部と、有機溶剤としてメチルシクロヘキサンを740部仕込み、窒素置換しながら95℃に加熱昇温した。次いでこの中に、重合可能な単量体としてスチレン2部、メチルメタアクリレート8部、ブチルアクリレート21.3部、ヒドロキシエチルメタクリレート6.7部、メタクリル酸2部と重合開始剤としてtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(以下、PBOと略記する)0.4部の混合液を4時間かけてフィードした。フィード終了より1時間後と2時間後にPBOをそれぞれ0.4部添加した。更に1時間後にPBOを1部添加し反応させた。PBOの添加後より2時間放置して反応させ光学用コート材を得た。
【0051】
[実施例2]
攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、熱可塑エラストマー(A)であるダイナロン1320Pを100部と、有機溶剤としてメチルシクロヘキサンを600部仕込み、窒素置換しながら95℃に加熱昇温した。次いでこの中に、重合可能な単量体としてメチルメタアクリレート45部、ブチルアクリレート34部、ヒドロキシエチルアクリレート20部、メタクリル酸1部とPBOを3部の混合液を4時間かけてフィードした。フィード終了より1時間後と2時間後にPBOをそれぞれ1部添加した。更に1時間後にPBOを2部添加し反応させた。PBOの添加後より2時間放置して反応させ光学用コート材を得た。
【0052】
[実施例3]
攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、熱可塑エラストマー(A)であるダイナロン1320Pを60部と、有機溶剤としてアイソパーE(エクソン化学社製)を400部仕込み、窒素置換しながら110℃に加熱昇温した。次いでこの中に、重合可能な単量体としてメチルメタアクリレート63部、ブチルアクリレート47.6部、ヒドロキシエチルアクリレート28部、メタクリル酸1.4部とPBOを4.2部の混合液を4時間かけてフィードした。フィード終了より1時間後と2時間後にPBOをそれぞれ1.4部添加した。更に1時間後にPBOを2.8部添加し反応させた。PBOの添加後より2時間放置して反応させ光学用コート材を得た。
[実施例4]
熱可塑エラストマー(A)をセプトン2002(クラレ(株)製)に、有機溶剤をメチルシクロヘキサン250部に変更した以外は実施例2と同様の方法で光学用コート材を得た。
【0053】
[実施例5]
攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、熱可塑エラストマー(A)の製造例1で得た樹脂100部と、有機溶剤としてアイソパーEを340部仕込み、窒素置換しながら110℃に加熱昇温した。次いでこの中に、重合可能な単量体として、メチルメタアクリレート45部、ブチルアクリレート34部、ヒドロキシエチルアクリレート20部、メタクリル酸1部とPBOを3部の混合液を4時間かけてフィードした。フィード終了より1時間後と2時間後にPBOをそれぞれ1部添加した。更に1時間後にPBOを2部添加し反応させた。PBOの添加後より2時間放置して反応させた後、メチルシクロヘキサン320部を添加、混合して光学用コート材を得た。
【0054】
[実施例6]
攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、熱可塑エラストマー(A)であるアペル8008T(三井化学(株)製)200部と、メチルシクロヘキサンを800部仕込み、窒素置換しながら95℃に加熱昇温した。次いでこの中に、重合可能な単量体として、メチルメタアクリレート10部、ブチルアクリレート19.5部、ヒドロキシエチルアクリレート20部、メタクリル酸0.5部とPBOを0.5部の混合液を4時間かけてフィードした。フィード終了より1時間後と2時間後にPBOをそれぞれ0.25部添加した。更に1時間後にPBOを0.5部添加し反応させた。PBOの添加後より2時間放置して反応させ光学用コート材を得た。
【0055】
[実施例7]
攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、熱可塑エラストマー(A)であるアペル8008Tを100部と、メチルシクロヘキサンを567部仕込み、窒素置換しながら95℃に加熱昇温した。次いでこの中に、重合可能な単量体として、メチルメタアクリレート26部、ブチルアクリレート56部、ヒドロキシエチルアクリレート17部、メタクリル酸1部とPBOを1部の混合液を4時間かけてフィードした。フィード終了より1時間後と2時間後にPBOをそれぞれ0.5部添加した。更に1時間後にPBOを1部添加し反応させた。PBOの添加後より2時間放置して反応させ光学用コート材を得た。
[実施例8]
熱可塑エラストマー(A)をゼオノア750R(日本ゼオン(株)製)に変更した以外は実施例7と同様の方法で光学用コート材を得た。
【0056】
[実施例9]
攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、熱可塑エラストマー(A)であるダイナロン1320Pを100部と、メチルシクロヘキサンを600部仕込み、窒素置換しながら95℃に加熱昇温した。次いでこの中に、官能基を含有した共重合性モノマーとして、無水マレイン酸5部とPBOを添加し2時間重合した後、メチルメタアクリレート45部、ブチルアクリレート34部、ヒドロキシエチルアクリレート20部、メタクリル酸1部とPBOを3部の混合液を4時間かけてフィードした。フィード終了より1時間後と2時間後にPBOをそれぞれ1部添加した。更に1時間後にPBOを2部添加し反応させた。PBOの添加後より2時間放置して反応させ光学用コート材を得た。
【0057】
[実施例10〜13]
実施例1、2、3、7で得られたコート材に、光重合性モノマーであるアロニックスM400(東亞合成(株)製)を樹脂の重量比で100/30となるように混合し、更に光重合開始剤であるイルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)をこれらの樹脂分に対し3%添加して光学用コート材を得た。
【0058】
[実施例14〜15]
実施例2、7で得られたコート材に、硬化剤としてD−177N(三井武田ケミカル(株)製)をそれぞれOH/NCO=0.95となるよう混合して光学用コート材を得た。
【0059】
[比較例1]
ダイナロン1320Pを100部と、有機溶剤としてメチルシクロヘキサンを500部仕込み、95℃に加熱しコート材を得た。
[比較例2]
アペル8008Tを100部と、有機溶剤としてメチルシクロヘキサンを500部仕込み、95℃に加熱しコート材を得た。
[比較例3]
攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、有機溶剤としてトルエンを300部、酢酸ブチルを100部仕込み、窒素置換しながら100℃に加熱昇温した。次いでこの中に、重合可能な単量体としてメチルメタアクリレート26部、エチルアクリレート56部、ヒドロキシエチルアクリレート17部、メタクリル酸1部と重合開始剤としてPBOを1部の混合液を4時間かけてフィードした。フィード終了より1時間後と2時間後にPBOをそれぞれ0.3部添加した。PBOの添加後より2時間放置して反応させコート材を得た。
【0060】
<<評価>>
<樹脂溶液の貯蔵安定性>
実施例1〜9、比較例1〜3で得られたコート材を、40℃の条件で1ヶ月静置し、溶液の状態を評価した。1ヶ月の経過後、このコート材につき、分離および沈殿がともに確認されなかったものを○、分離および/または沈殿の観察されたもので攪拌にて容易に分散できるものを△、分離および/または沈殿の観察された攪拌にて容易に分散できないものを×とし、結果を表−1に記載した。尚、実施例10〜15については、室温のみで評価を行った。
<樹脂溶液のスプレー適性>
塗装ガンを使用し、塗装ブース内の温度30℃にて、実施例1〜15、比較例1〜3で得られた樹脂分散体をスプレーし、糸曳きが発生するか否かを観察し、発生しなかったものを○、1本でも発生したものを×とし、結果を表−1に記載した。
【0061】
<塗膜評価>
1.TACフィルムでの評価
実施例1〜15、比較例1〜3で得られたコート材をメチルイソブチルケトンで100%希釈し、基材であるTACフィルムに乾燥膜厚が2μmとなるよう塗工し、70℃、5分の条件で乾燥し、更にオレスターQ186(三井化学(株)製)とMTオレスターNM89−50G(三井化学ポリウレタン(株)製)をOH/NCO=0.95に混合したものに紫外線吸収剤であるTINUVIN327(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を樹脂分に対し3%添加したものを乾燥膜厚が3μmとなるように塗工し、80℃15分の条件で乾燥したものについて以下の評価を行った。
(1)乾燥後、24時間後の試験
・剥離試験:粘着テープにて剥離試験を行った。
・透明性:前記評価で剥離のなかったものについて、波長550nmの単色光の透過率を塗工前後で測定し、透過率の差異を評価した。
(2)耐久性試験後の試験
前記評価で剥離のなかったものについて、50℃、90%RH、240時間の耐久性試験を行い、前記と同様の剥離試験と透明性の試験を行った。
【0062】
2.TACフィルムでの評価
実施例1〜15、比較例1〜3で得られたコート材をメチルイソブチルケトンで100%希釈し、基材であるTACフィルムに乾燥膜厚が2μmとなるよう塗工し、70℃、5分の条件で乾燥し、更にオレスターRA1573(三井化学(株)製)に光重合開始剤であるイルガキュア184を樹脂分で3%混合したものを酢酸エチルで80%に希釈し乾燥膜厚が3μmとなるように塗工、室温にて10分間放置した後、80W/cmの高圧水銀灯1灯を通過方向に垂直に設置した紫外線照射装置(日本電池(株)製、EPSH−600−3S型)を用い、光源下15cmの位置に置いてコンベアスピードを10m/分の速度で移動させ紫外線を照射したものについて塗膜評価1の方法と同じ方法で評価を行った。
【0063】
3.けん化処理TACフィルムでの評価
基材をけん化処理TACフィルムに変更した以外は、塗膜評価1の方法と同じ方法で評価を行った。
4.けん化処理TACフィルムでの評価
基材をけん化処理TACフィルムに変更した以外は、塗膜評価2の方法と同じ方法で評価を行った。
5.アペルフィルムでの評価
希釈する溶剤をメチルシクロヘキサンに、基材をアペル8008Tのフィルムに変更した以外は、塗膜評価1の方法と同じ方法で評価を行った。
6.アペルフィルムでの評価
希釈する溶剤をメチルシクロヘキサンに、基材をアペル8008Tのフィルムに変更した以外は、塗膜評価2の方法と同じ方法で評価を行った。
7.アペル成形物での評価
基材をアペル6015の成形物に変更した以外は、塗膜評価5の方法と同じ方法で評価を行った。
8.アペル成形物での評価
基材をアペル6015の成形物に変更した以外は、塗膜評価6の方法と同じ方法で評価を行った。
9.ゼオノア成形物での評価
基材をゼオノア1020Rの成形物に変更した以外は、塗膜評価5の方法と同じ方法で評価を行った。
10.ゼオノア成形物での評価
基材をゼオノア1020Rの成形物に変更した以外は、塗膜評価6の方法と同じ方法で評価を行った。
【0064】
<初期物性>
成膜後24時間後に以下の試験を行った。
剥離試験:粘着テープを塗膜に貼付け、90℃方向に勢い良く剥離し、剥離しない場合を○、剥離する場合を×として結果を表−1に記載した。
透明性:分光光度計を用いて波長550nmの単色光の透過率を塗工前後で測定した。塗工前後の透過率の差異が2%以下の場合を○、2%より大きく5%以下の場合を△、5%より大きい場合を×として結果を表−1に記載した。
<耐久性>
50℃、90%RH、240時間後の耐湿試験を行い、以下の試験を行った。
剥離試験:24時間後と同じ方法で評価を行った。
透明性:分光光度計を用いて波長550nmの単色光の透過率を試験前後で測定した。塗工前後の透過率の差異が2%以下の場合を○、2%より大きく5%以下の場合を△、5%より大きい場合を×として結果を表−1に記載した。
【0065】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑エラストマー(A)と、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)と、有機溶媒(C)とからなり、共重合性モノマー(B)が官能基を有しないモノマーを少なくとも1種含有することを特徴とする光学用コート材。
【請求項2】
熱可塑エラストマー(A)に少なくとも一部が官能基で変性されたものを含む請求項1に記載の光学用コート材。
【請求項3】
更に、光重合性不飽和結合を有する共重合性モノマー(D)と光重合開始剤(E)とを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学用コート材。
【請求項4】
活性水素及び/又は水酸基を有する請求項1〜3の何れかに記載のコート材を含有する主剤と、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を含有する光学用コート材。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のコート材で塗布されたトリアセチルセルロース成形物。
【請求項6】
請求項1〜4の何れかに記載のコート材で塗布された脂環式構造含有重合体の成形物。

【公開番号】特開2007−302735(P2007−302735A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130271(P2006−130271)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】