説明

光学用フィルム

PDP、CRT、LCDなどの画像表示素子の表面の光の反射を効果的に防止し、かつ耐擦傷性及び光線透過性に優れる上、層間密着性が良好で、しかも製造コストの低い光学用フィルムが開示されている。そのフィルムは基材フィルムの少なくとも一方の面に、(A)(a)長軸平均粒子径が0.05〜10μmであり、かつ平均アスペクト比が3〜100である針状のアンチモンドープ酸化錫と、(b)他の少なくとも1種の金属酸化物と、(c)電離放射線による硬化物とを含み、屈折率が1.60〜1.75の範囲にある厚さ2〜20μmの高屈折率ハードコート層、及び(B)屈折率が1.30〜1.45の範囲にある厚さ40〜200nmの低屈折率層を順次積層してなる光学用フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は光学用フィルムに関し、さらに詳しくは、プラズマディスプレイ(PDP)、ブラウン管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)などの画像表示素子の表面の光の反射を効果的に防止し、かつ耐擦傷性に優れる上、簡単な層構成を有する製造コストの低い光学用フィルムに関するものである。
【背景技術】
PDP、CRT、LCDなどのディスプレイにおいては、画面に外部から光が入射し、この光が反射して表示画像を見づらくすることがあり、特に近年、フラットパネルディスプレイの大型化に伴い、上記問題を解決することが、ますます重要な課題となってきている。
このような問題を解決するために、これまで種々のディスプレイに対して、様々な反射防止処置や防眩処置がとられている。その一つとして反射防止フィルムを各種のディスプレイに使用することが行われている。
この反射防止フィルムは、従来、蒸着やスパッタリングなどのドライプロセス法により、基材フィルム上に、低屈折率の物質(MgF)を薄膜化する方法や、屈折率の高い物質[ITO(錫ドープ酸化インジウム)、TiOなど]と屈折率の低い物質(MgF、SiOなど)を交互に積層する方法などで作製されている。しかしながら、このようなドライプロセス法で作製された反射防止フィルムは、製造コストが高くつくのを免れないという問題があった。
そこで、近年、ウエットプロセス法、すなわちコーティングにより反射防止フィルムを作製することが試みられている。しかしながら、このウェットプロセス法により作製された反射防止フィルムにおいては、前記のドライプロセス法による反射防止フィルムに比べて、表面の耐擦傷性に劣るという問題が生じる。
そこで、このような耐擦傷性に劣る問題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を重ね、先に基材フィルムの少なくとも一方の側に、電離放射線による硬化樹脂を含む厚さ2〜20μmのハードコート層、電離放射線による硬化樹脂と、アンチモンドープ酸化錫(ATO)を含む少なくとも2種の金属酸化物を含み、屈折率が1.65〜1.80の範囲にある厚さ60〜160nmの高屈折率層、及びシロキサン系ポリマーを含み、屈折率が1.37〜1.47の範囲にある厚さ80〜180nmの低屈折率層を、基材フィルム側から順次設けてなる光学用フィルムを出願した(例えば、特許文献1参照)。
このような構成の光学用フィルムにおいては、高屈折率層は、光線透過率が高く、かつ上層に形成される低屈折率層中のシロキサン系ポリマーとの密着性が良好であることが望まれる。前記特許文献1に記載の光学用フィルムにおいて、高屈折率層はATOを含むため、シロキサン系ポリマーとの密着性が良好であるが、該ATOは球状粒子であるために、密着性を保ちながら、高屈折率層の厚さを厚くすると光線透過率が低下するといった問題が生じることから、密着性と光線透過率の両方を十分に満足し得ない場合があった。
なお、金属酸化物の1種である五酸化アンチモンもシロキサン系ポリマーとの密着性が良好であるが、該五酸化アンチモンは屈折率があまり高くないため、多量に含有させると、密着性は向上するものの、高屈折率層の屈折率が所望の値にならないといった問題が生じる。
また、前記構成の光学用フィルムにおいて、シロキサン系ポリマーを含む低屈折率層に、屈折率を低下させる目的で、多孔性シリカを含有させるのが有利であるが、この場合、実用的には、さらに該低屈折率層の上層に防汚層を設けることが必要となる。したがって、防汚層を設けなくても、多孔性シリカ及びシロキサン系ポリマーを含む低屈折率層に防汚性能を付与することができれば、生産効率が上がり経済的に有利となる。
【特許文献1】 特開2002−341103号公報
本発明は、このような事情のもとで、PDP、CRT、LCDなどの画像表示素子の表面の光の反射を効果的に防止し、かつ耐擦傷性及び光線透過性に優れる上、層間密着性が良好で、しかも製造コストの低い光学用フィルムを提供することを目的としてなされたものである。
【発明の開示】
本発明者らは、前記の優れた特性を有する光学用フィルムを開発すべく鋭意研究を重ねた結果、基材フィルム上に、ウエットプロセスにより、特定の形状を有する針状のATOと他の金属酸化物を含み、かつ所定の屈折率と厚さを有する高屈折率ハードコート層、及び所定の屈折率と厚さを有する低屈折率層を順次積層することにより、前記の優れた特性を有する光学用フィルムが得られることを見出した。
また、前記低屈折率層に多孔性シリカとシロキサン系ポリマーを含有させ、さらにシリコーン系ブロックコポリマーを含有させることにより、所定の低屈折率が容易に得られ、しかも該低屈折率層に防汚性能が付与され、別途防汚層を設けなくてもよいことを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)基材フィルムの少なくとも一方の面に、(A)(a)長軸平均粒子径が0.05〜10μmであり、かつ平均アスペクト比が3〜100である針状のアンチモンドープ酸化錫と、(b)他の少なくとも1種の金属酸化物と、(c)電離放射線による硬化物とを含み、屈折率が1.60〜1.75の範囲にある厚さ2〜20μmの高屈折率ハードコート層、及び(B)屈折率が1.30〜1.45の範囲にある厚さ40〜200nmの低屈折率層を順次積層したことを特徴とする光学用フィルム、
(2)(A)層における(b)成分の金属酸化物が、酸化ジルコニウム、アンチモン酸亜鉛及び五酸化アンチモンの中から選ばれる少なくとも1種である第1項記載の光学用フィルム、
(3)(A)層中の全金属酸化物の含有量が50〜80重量%であり、かつ(a)成分と(b)成分との重量比が4:1ないし1:3である第1項又は第2項記載の光学用フィルム、
(4)(B)層が、多孔性シリカとシロキサン系ポリマーを含む層である第1項、第2項又は第3項記載の光学用フィルム、
(5)(B)層が、さらにシリコーン系ブロックコポリマーを含む層である第4項記載の光学用フィルム、
(6)(B)層における多孔性シリカが、比重1.7〜1.9、屈折率1.30〜1.36及び平均粒径20〜100nmのものである第4項又は第5項記載の光学用フィルム、
(7)(B)層中のシリコーン系ブロックコポリマーの含有量が2〜50重量%である第5項又は第6項記載の光学用フィルム、
(8)(A)層のハードコート層が、アンチグレア性ハードコート層である第1項ないし第7項のいずれかに記載の光学用フィルム、及び
(9)(B)層の低屈折率層が、帯電防止性能を有するものである第1項ないし第8項のいずれかに記載の光学用フィルム、
を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の光学用フィルムは、ウエットプロセス法により、基材フィルムの少なくとも一方の面に、(A)高屈折率ハードコート層及び(B)低屈折率層が順次積層された構造を有する反射防止フィルムである。
本発明の光学用フィルムにおける基材フィルムについては特に制限はなく、従来光学用反射防止フィルムの基材として公知のプラスチックフィルムの中から適宜選択して用いることができる。このようなプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム等を挙げることができる。
これらの基材フィルムは、透明、半透明のいずれであってもよく、また、着色されていてもよいし、無着色のものでもよく、用途に応じて適宜選択すればよい。例えば液晶表示体の保護用として用いる場合には、無色透明のフィルムが好適である。
これらの基材フィルムの厚さは特に制限はなく、適宜選定されるが、通常15〜250μm、好ましくは30〜200μmの範囲である。また、この基材フィルムは、その表面に設けられる層との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は基材フィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。また、片面又は両面にプライマー処理を施したものも用いることができる。
本発明の光学用フィルムにおいては、前記基材フィルムの少なくとも一方の面に、まず(A)(a)針状のアンチモンドープ酸化錫と、(b)他の少なくとも1種の金属酸化物と、(c)電離放射線による硬化物とを含む高屈折率ハードコート層が設けられる。
本発明においては、前記(a)成分である針状のアンチモンドープ酸化錫(ATO)として、長軸平均粒子径が0.05〜10μmであり、かつ平均アスペクト比が3〜100の範囲にある形状のものが用いられる。このような針状のATOを用いることにより、ハードコート層に少量含有させても、ハードコート層表面にATOのもつ水酸基が効果的に作用するため、上層に設けられる低屈折率層中のシロキサン系ポリマーとの密着性は良好となり、しかも含有量が少ないことに起因して、該ハードコート層の透過率は高いものとなる。したがって、この針状のATOと(b)成分の金属酸化物との併用で、高透過率、高硬度、高屈折率を有し、かつ上層に設けられる低屈折率層との密着性が良好な高屈折率ハードコート層が得られる。
前記針状のATOの好ましい形状は、長軸平均粒子径が0.1〜5.0μmで、平均アスペクト比が5〜60であり、より好ましい形状は、長軸平均粒子径が0.15〜3.5μmで、平均アスペクト比が10〜40である。また、短軸平均粒子径は、通常0.01〜0.2μm程度である。
このような針状のATOは、従来公知の方法、例えば錫成分、アンチモン成分及びホウ素化合物を含む被焼成処理物を700〜1200℃程度の温度で焼成処理し、次いでこの焼成生成物の可溶性塩類を除去することにより、得ることができる。
なお、前記針状のATOの長軸平均粒子径、短軸平均粒子径及び平均アスペクト比は、以下に示す方法で測定した値である。
透過型電子顕微鏡写真から任意の300個の粒子を抽出して、長軸及び短軸の寸法を測定し、それぞれの平均粒子径を算出し、さらにその値から長軸平均粒子径/短軸平均粒子径(平均アスペクト比)を求める。
(b)成分である他の金属酸化物は、ハードコート層に高屈折率をもたらす金属酸化物が好ましく、このような金属酸化物としては、例えば酸化ジルコニウム、アンチモン酸亜鉛及び五酸化アンチモンなどを用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、この(A)層の高屈折率ハードコート層はアンチグレア性を有することが好ましい。アンチグレア性は、高屈折率ハードコート層に金属酸化物粒子あるいは有機物粒子などを加えることにより付与されるが、金属酸化物粒子を用いることが好ましい。アンチグレア性を付与する金属酸化物粒子としては、従来アンチグレア性を付与するための金属酸化物として知られているものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。このような金属酸化物としては、例えば平均粒径0.5〜10μm程度のシリカゲル粒子や、コロイド状シリカ粒子のアミン化合物による凝集物であって、平均粒径が0.5〜10μm程度のものなどを挙げることができる。ただし、これらは屈折率を低下させるので、高屈折率ハードコート層の屈折率に影響をあまり与えない程度に含有させることが肝要である。
この高屈折率ハードコート層における全金属酸化物の含有量は、得られる光学用フィルムのアンチグレア性、反射防止性、耐擦傷性などを考慮して適宜選定されるが、通常50〜80重量%、好ましくは60〜75重量%の範囲である。さらに、前記(a)成分と(b)成分との重量比は、ハードコート層の透過率、屈折率、上層に設けられる(B)層の低屈折率層との密着性などを考慮すると、4:1ないし1:3の範囲が好ましく、さらに3:1ないし1:1の範囲が好ましい。
本発明における(A)層の高屈折率ハードコート層は、前記の(a)成分である針状のATOと、(b)成分である他の金属酸化物と、電離放射線による硬化物を含むものであって、例えば電離放射線硬化性化合物と、前記の(a)成分及び(b)成分と、所望により光重合開始剤などを含むハードコート層形成用塗工液を、基材フィルムの少なくとも一方の面にコーテイングして塗膜を形成させ、電離放射線を照射して、該塗膜を硬化させることにより、形成することができる。
前記の電離放射線硬化性化合物としては、例えば光重合性プレポリマー及び/又は光重合性モノマーを挙げることができる。上記光重合性プレポリマーには、ラジカル重合型とカチオン重合型があり、ラジカル重合型の光重合性プレポリマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系などが挙げられる。ここで、ポリエステルアクリレート系プレポリマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシアクリレート系プレポリマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。ウレタンアクリレート系プレポリマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。さらに、ポリオールアクリレート系プレポリマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。これらの光重合性プレポリマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、カチオン重合型の光重合性プレポリマーとしては、エポキシ系樹脂が通常使用される。このエポキシ系樹脂としては、例えばビスフェノール樹脂やノボラック樹脂などの多価フェノール類にエピクロルヒドリンなどでエポキシ化した化合物、直鎖状オレフィン化合物や環状オレフィン化合物を過酸化物などで酸化して得られた化合物などが挙げられる。
また、光重合性モノマーとしては、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能アクリレートが挙げられる。これらの光重合性モノマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、前記光重合性プレポリマーと併用してもよい。
一方、所望により用いられる光重合開始剤としては、ラジカル重合型の光重合性プレポリマーや光重合性モノマーに対しては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロプル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステルなどが挙げられる。また、カチオン重合型の光重合性プレポリマーに対する光重合開始剤としては、例えば芳香族スルホニウムイオン、芳香族オキソスルホニウムイオン、芳香族ヨードニウムイオンなどのオニウムと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネートなどの陰イオンとからなる化合物が挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その配合量は、前記光重合性プレポリマー及び/又は光重合性モノマー100重量部に対して、通常0.2〜10重量部の範囲で選ばれる。
本発明において用いられるこのハードコート層形成用塗工液は、必要に応じ、適当な溶剤中に、前記の電離放射線硬化性化合物と、(a)成分及び(b)成分と、所望により用いられる前記の光重合開始剤、さらには各種添加剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、消泡剤などを、それぞれ所定の割合で加え、溶解又は分散させることにより、調製することができる。
この際用いる溶剤としては、例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤などが挙げられる。
このようにして調製された塗工液の濃度、粘度としては、コーティング可能な濃度、粘度であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。
次に、基材フィルムの少なくとも一方の面に、上記塗工液を、従来公知の方法、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを用いて、コーティングして塗膜を形成させ、乾燥後、これに電離放射線を照射して該塗膜を硬化させることにより、高屈折率ハードコート層が形成される。
電離放射線としては、例えば紫外線や電子線などが挙げられる。上記紫外線は、高圧水銀ランプ、ヒュージョンHランプ、キセノンランプなどで得られる。一方電子線は、電子線加速器などによって得られる。この電離放射線の中では、特に紫外線が好適である。なお、電子線を使用する場合は、重合開始剤を添加することなく、硬化膜を得ることができる。
本発明においては、(A)高屈折率ハードコート層の厚さは2〜20μmの範囲である。この厚さが2μm未満では得られる光学用フィルムの耐擦傷性が十分に発揮されないおそれがあるし、また20μmを超えるとハードコート層にクラックが発生することがある。このハードコート層の好ましい厚さは3〜15μmの範囲であり、特に5〜10μmの範囲が好適である。
本発明の光学用フィルムにおいては、この(A)高屈折率ハードコート層の屈折率は、1.60〜1.75の範囲である。この屈折率が1.60未満では反射防止性能に優れる光学用フィルムが得られない。また、該屈折率が1.75を超えるハードコート層は形成しにくい。
本発明の光学用フィルムにおいては、前記高屈折率ハードコート層上に、(B)低屈折率層が形成される。
この低屈折率層は、屈折率が1.30〜1.45の範囲にあり、かつ厚さが40〜200nmの範囲である。該屈折率や厚さが上記範囲を逸脱すると反射防止性能に優れる光学用フィルムが得られにくい。
この(B)層は、多孔性シリカとシロキサン系ポリマーを含む層であることが好ましい。前記多孔性シリカとしては、比重が1.7〜1.9、屈折率が1.30〜1.36及び平均粒径が20〜100nmの範囲にある多孔性シリカ微粒子が好ましく用いられる。当該(B)層中の上記多孔性シリカ微粒子の量としては、(B)層の屈折率が前記範囲内であればよく、特に制限はないが、成膜性や耐擦傷性などの点から、通常シロキサン系ポリマーに対し、1〜2倍重量の範囲で選ばれる。
一方、当該(B)層に含まれるシロキサン系ポリマーとしては、例えば無機シリカ系化合物(ポリケイ酸も含む)、ポリオルガノシロキサン系化合物、あるいはこれらの混合系を挙げることができる。前記無機シリカ系化合物やポリオルガノシロキサン系化合物は従来公知の方法によって製造することができる。
例えば、一般式[1]

[式中のRは非加水分解性基であって、アルキル基、置換アルキル基(置換基:ハロゲン原子、水酸基、チオール基、エポキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基など)、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基、Rは低級アルキル基であり、nは0又は1〜3の整数である。R及びORがそれぞれ複数ある場合、複数のRは同一でも異なっていてもよく、また複数のORは同一でも異なっていてもよい。]
で表されるアルコキシシラン化合物を、塩酸や硫酸などの無機酸、シュウ酸や酢酸などの有機酸を用いて部分又は完全加水分解し、重縮合させる方法が好ましく用いられる。
この場合、nが0の化合物、すなわちテトラアルコキシシランを完全加水分解すれば無機シリカ系の化合物が得られるし、部分加水分解すれば、ポリオルガノシロキサン系化合物又は無機シリカ系化合物とポリオルガノシロキサン系化合物との混合系が得られる。一方、nが1〜3の化合物では、非加水分解性基を有するので、部分又は完全加水分解により、ポリオルガノシロキサン系化合物が得られる。この際、加水分解を均一に行うために、適当な有機溶媒を用いてもよい。
前記一般式[1]で表されるアルコキシシラン化合物の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、トリビニルメトキシシラン、トリビニルエトキシシランなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、この際、必要ならば、アルミニウム化合物、例えば塩化アルミニウムやトリアルコキシアルミニウムなどを適当量添加することができる。
さらに、別の方法として、原料のケイ素化合物にメタケイ酸ナトリウム、オルソケイ酸ナトリウム又は水ガラス(ケイ酸ナトリウム混合物)を用い、塩酸、硫酸、硝酸などの酸又は塩化マグネシウム、硫酸カルシウムなどの金属化合物を作用させ、加水分解処理する方法を用いることができる。この加水分解処理により、遊離のケイ酸が生成するが、このものは重合しやすく、原料の種類によって異なるが、鎖状、環状、網目状のものの混合物である。水ガラスから得られたポリケイ酸は、一般式[2]

(式中のmは重合度を示し、Rは水素原子、ケイ素又はマグネシウムやアルミニウムなどの金属である。)
で表される鎖状構造のものが主体となる。
このようにして、完全な無機シリカ系化合物が得られる。なお、無機シリカ系化合物として、シリカゲル(SiO・nHO)も使用することができる。
当該(B)層においては、前記多孔性シリカとシロキサン系ポリマーと共に、必要に応じ、シリコーン系ブロックコポリマーを含有させることができる。このシロキサン系ブロックコポリマーを含有させることにより、当該(B)層に防汚性能が付与されるので、本発明の光学用フィルムは良好な防汚性を有するものとなる。前記シリコーン系ブロックコポリマーを含有させない場合、光学用フィルムに防汚性能が要求される場合には、通常当該(B)層の上に、別途防汚層を設ける処置が講ぜられる。
前記シリコーン系ブロックコポリマーとしては、例えばポリオルガノシロキサンの少なくとも片末端にラジカル重合性官能基が結合してなる単量体から得られた(共)重合体であるセグメントAと、(メタ)アクリル酸エステルなどのラジカル重合性単量体から得られた(共)重合体であるセグメントBとからなるA−B型ブロック共重合体を挙げることができる。そして、前記セグメントAを形成するポリオルガノシロキサンの少なくとも片末端に結合してなるラジカル重合性官能基及びセグメントBを形成するラジカル重合性単量体を適宜選択することにより、得られるA−B型ブロック共重合体に、有機溶剤に対する溶解性や水性媒体に対する分散性などの性質を付与することができる。
このようなシリコーン系ブロックコポリマーを(B)層に含有させる場合には、(B)層中の該シリコーン系ブロックコポリマーの含有量は、通常2〜50重量%の範囲で選定される。この含有量が2重量%未満では防汚性能の付与効果が十分に発揮されないおそれがあり、一方50重量%を超えると所望の屈折率を有する(B)層が得られない場合がある。該シリコーン系ブロックコポリマーの好ましい含有量は、5〜40重量%であり、特に10〜30重量%の範囲が好ましい。
本発明においては、(B)層の低屈折率層は、前記の多孔性シリカとシロキサン系ポリマー又はその前駆体と必要に応じてシリコーン系ブロックコポリマーを含む塗工液を、従来公知の方法、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを用いて、(A)高屈折率ハードコート層上にコーティングし、塗膜を形成させ、80〜150℃程度の温度で加熱処理することにより、形成することができる。
このようにして形成された多孔性シリカとシロキサン系ポリマーと必要に応じてシリコーン系ブロックコポリマーを含む低屈折率層において、該シロキサン系ポリマーが、シラノール基やその他親水性基を有する場合には、帯電防止性能が付与され、得られる光学用フィルムにほこりなどが付着しにくくなり、好ましい。
本発明の光学用フィルムにおいては、前記(B)層にシリコーン系ブロックコポリマーを含有させない場合には、所望により、該(B)層上に(C)防汚コート層を設けることができる。この防汚コート層は、一般にフッ素系樹脂を含む塗工液を、従来公知の方法、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを用いて、(B)低屈折率層上にコーティングし、塗膜を形成させ、乾燥処理することにより、形成することができる。
この防汚コート層の厚さは、通常1〜10nm、好ましくは3〜8nmの範囲である。該防汚コート層を設けることにより、得られる光学用フィルムは、表面の滑り性が良くなると共に、汚れにくくなる。
本発明の光学用フィルムにおいては、基材フィルムの一方の面に高屈折率ハードコート層が設けられている場合、該ハードコート層とは反対側の面に、液晶表示体などの被着体に貼着させるための粘着剤層を形成させることができる。この粘着剤層を構成する粘着剤としては、光学用途用のもの、例えばアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤が好ましく用いられる。この粘着剤層の厚さは、通常5〜100μm、好ましくは10〜60μmの範囲である。
さらに、この粘着剤層の上に、剥離フィルムを設けることができる。この剥離フィルムとしては、例えばグラシン紙、コート紙、ラミネート紙などの紙及び各種プラスチックフィルムに、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗付したものなどが挙げられる。この剥離フィルムの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。また、本発明の光学用フィルムの全光線透過率は85%以上が好ましく、90%以上が特に好ましい。
【実施例】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で得られた光学用フィルムの物性は、以下に示す方法に従って測定した。
(1)波長550nmにおける反射率
分光光度計[(株)島津製作所製「UV−3101PC」]により波長550nmにおける反射率を測定した。
(2)全光線透過率
日本電色工業(株)製ヘイズメーター「NDH−2000」を使用して測定した。
(3)耐擦傷性
スチールウール#0000を用い、低屈折率層表面を荷重9.8×10−3N/mmで5往復擦った後に目視観察し、下記の判定基準で評価した。
○:傷が付かない
×:傷が付く
(4)アンチグレア性能(60°光沢度)
日本電色工業(株)製グロスメーターを使用し、JIS K 7105に準拠して60°光沢度を測定した。
(5)防汚性能(水の接触角)
23℃、相対湿度50%の環境下において、低屈折率層表面に10μlの純水を滴下し、1分後の水の接触角を、接触角計[協和界面科学(株)製「CA−X型」]を用いて測定した。
(6)帯電防止性能
光学用フィルムを室内に1ケ月間放置し、ほこりの付着の有無を観察し、下記の判定基準で評価した。
○:ほこりの付着なし
×:ほこりの付着あり
(7)屈折率
(株)アタゴ製アッベ屈折率計により測定した。
【実施例1】
(1)基材フィルムとして厚さ188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム[東洋紡績(株)製、商品名「A4100」]の易接着コート面に、光重合開始剤及び酸化ジルコニウム含有紫外線硬化型アクリル系ハードコート剤(電離放射線硬化性化合物)[ジェイエスアール(株)製、商品名「デソライトKZ7252C」、固形分濃度46重量%、全固形分中の酸化ジルコニウム含有率68重量%]100重量部と、光重合開始剤含有アクリル系ハードコート剤(電離放射線硬化性化合物)[荒川化学(株)製、商品名「ビームセット575CB」、固形分濃度100重量%]46重量部と、さらに針状ATOのトルエン分散体[石原テクノ(株)製、商品名「FSS−10T」、固形分濃度30重量%、ATO形状;長軸平均粒子径0.23μm、短軸平均粒子径0.015μm、平均アスペクト比約15]310重量部を混合したハードコート層形成用塗工液を、完全硬化後の厚さが5μmになるようにマイヤーバーNo.12にて塗布し、80℃で3分間乾燥したのち、これに紫外線を光量500mJ/cmで照射して硬化させ、屈折率1.66の高屈折率ハードコート層を形成した。得られた高屈折率ハードコート層中の全金属酸化物(酸化ジルコニウムとATO)の含有量は約67重量%、ATOと酸化ジルコニウムの重量比は3:1である。
(2)シロキサン系ポリマー(帯電防止剤)[コルコート(株)製、商品名「コルコートP」、固形分濃度2重量%]100重量部と、多孔性シリカ(比重1.8〜1.9、屈折率1.34〜1.36、平均粒径約50nm)の溶剤分散液[触媒化成工業(株)製、商品名「ELCOM P−特殊品3」、固形分濃度10重量%]30重量部、シリコーン系ブロックコポリマー[日本油脂(株)製、商品名「モディパーFS720」、固形分濃度15重量%]15重量部を混合し、さらに全体の固形分濃度が2重量%になるようにイソブチルアルコールで希釈して、コート剤を調製した。
次いで、上記(1)の工程で形成されたハードコート層上に、マイヤーバーNo.4で加熱処理後の厚さが100nmになるように塗布し、130℃で2分間加熱処理して、多孔性シリカとシリコーン系ブロックコポリマーとシロキサン系ポリマーを含む屈折率1.40の低屈折率層を形成した。
このようにして得られた光学用フィルムの物性を第1表に示す。
【実施例2】
実施例1の高屈折率ハードコート層の形成において、ハードコート層形成用塗工液の光開始剤含有アクリル系ハードコート剤(電離放射線硬化性化合物)「ビームセット575CB」の量を23重量部とし、針状ATOのトルエン分散体「FSS−10T」(前出)の量を200重量部とした以外は実施例1と同様にして光学用フィルムを作製した。この光学用フィルムの高屈折率層中の全金属酸化物含有量は約70重量%、ATOと酸化ジルコニウムの重量比は、約2:1である。
得られた光学用フィルムの物性を第1表に示す。
【実施例3】
実施例1の高屈折率ハードコート層の形成において、ハードコート層形成用塗工液を光開始剤含有アクリル系ハードコート剤(電離放射線硬化性化合物)[大日精化工業(株)製、商品名「セイカビームEXF−01L(NS)」、固形分濃度100重量%]100重量部とアンチモン酸亜鉛の分散液[日産化学工業(株)製、商品名「セルナックスCX−Z610M−FA」、固形分濃度60重量%]100重量部と、さらにATOのトルエン分散体「FSS−10T」(前出)500重量部を混合して調製した以外は実施例1と同様にして光学用フィルムを作製した。この光学用フィルムの高屈折率ハードコート層中の全金属酸化物含有量は約68重量%、ATOとアンチモン酸亜鉛の重量比は、2.5:1である。
得られた光学用フィルムの物性を第1表に示す。
【実施例4】
実施例1の高屈折率ハードコート層の形成において、ハードコート層形成用塗工液にさらに開始剤及びシリカゲル含有アクリル系ハードコート剤(電離放射線硬化性化合物)[大日精化工業(株)製、商品名「セイカビームEXF−01L(BS)」、固形分濃度100重量%、シリガゲル含有量10重量%、シリカゲルの平均粒径約1.5μm]25重量部を添加した以外は、実施例1と同様にして光学用フィルムを作製した。この光学用フィルムの高屈折率ハードコート層中の全金属酸化物含有量は約60重量%、ATOと他の金属酸化物(酸化ジルコニウムとシリカゲル)の重量比は、約2.75:1である。
得られた光学用フィルムの物性を第1表に示す。
比較例1
実施例1において針状ATOのトルエン分散体「FSS−10T」(前出)を球状ATO(平均粒径100nm)のメチルエチルケトン分散液[石原テクノ(株)製、商品名「SN−100P(MEK)」固形分濃度30重量%]に変えた以外は実施例1と同様にして光学用フィルムを作製した。
得られた光学用フィルムの物性を第1表に示す。

【産業上の利用可能性】
本発明によれば、PDP、CRT、LCDなどの画像表示素子の表面の光の反射を効果的に防止し、かつ耐擦傷性及び光線透過性に優れる上、層間密着性が良好で、しかも製造コストの低い光学用フィルムを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも一方の面に、(A)(a)長軸平均粒子径が0.05〜10μmであり、かつ平均アスペクト比が3〜100である針状のアンチモンドープ酸化錫と、(b)他の少なくとも1種の金属酸化物と、(c)電離放射線による硬化物とを含み、屈折率が1.60〜1.75の範囲にある厚さ2〜20μmの高屈折率ハードコート層、及び(B)屈折率が1.30〜1.45の範囲にある厚さ40〜200nmの低屈折率層を順次積層したことを特徴とする光学用フィルム。
【請求項2】
(A)層における(b)成分の金属酸化物が、酸化ジルコニウム、アンチモン酸亜鉛及び五酸化アンチモンの中から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の光学用フィルム。
【請求項3】
(A)層中の全金属酸化物の含有量が50〜80重量%であり、かつ(a)成分と(b)成分との重量比が4:1ないし1:3である請求項1又は2記載の光学用フィルム。
【請求項4】
(B)層が、多孔性シリカとシロキサン系ポリマーを含む層である請求項1、2又は3記載の光学用フィルム。
【請求項5】
(B)層が、さらにシリコーン系ブロックコポリマーを含む層である請求項4記載の光学用フィルム。
【請求項6】
(B)層における多孔性シリカが、比重1.7〜1.9、屈折率1.30〜1.36及び平均粒径20〜100nmのものである請求項4又は5記載の光学用フィルム。
【請求項7】
(B)層中のシリコーン系ブロックコポリマーの含有量が2〜50重量%である請求項5又は6記載の光学用フィルム。
【請求項8】
(A)層のハードコート層が、アンチグレア性ハードコート層である請求項1ないし7のいずれかに記載の光学用フィルム。
【請求項9】
(B)層の低屈折率層が、帯電防止性能を有するものである請求項1ないし8のいずれかに記載の光学用フィルム。

【国際公開番号】WO2004/088364
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【発行日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504212(P2005−504212)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004361
【国際出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】