説明

光学用成形体

【課題】本発明の目的は、透明性・色相・耐衝撃性が良好で、複屈折の小さい光学用成形体を提供するものである。
【解決手段】スチレン系単量体単位75〜60質量%とブタジエン系単量体単位25〜40質量%とからなるスチレン−ブタジエン系ブロック共重合体を用いた光学用成形体であって、1種以上の耐熱性安定剤0.01〜2質量部若しくは耐光安定剤1種以上の耐光安定剤0.01〜2質量部又はその両方(但し、それぞれスチレン−ブタジエン系ブロック共重合体を100質量部とする)を含有することを特徴とし、その光学用成形体が光学フィルム用ベースフィルムである。。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光学用成形体にはメタクリル樹脂が広く使用されている。しかしながら、メタクリル樹脂は、透明性や低複屈折等の光学特性が良好な反面、耐衝撃性が低く、また吸湿性が高いことから、光学用成形体とした場合に吸湿による変形が課題となっていた。一方ポリスチレンは透明で成形加工性が良好で、吸湿性が低く変形が少ないが、耐衝撃性が低く、また複屈折(率)が高いため、この分野での使用には制限があった。
このような光学用成形体に関する刊行物としては以下のようなものが知られているが、複屈折や耐光性の問題は十分解決されているとは言いがたかった。
【特許文献1】特開2002−242679号公報
【特許文献2】特開2002−243917号公報
【特許文献3】特開2002−284946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、透明性・色相・耐衝撃性が良好で、複屈折の小さい光学用成形体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
即ち本発明は、スチレン系単量体単位75〜60質量%とブタジエン系単量体単位25〜40質量%とからなるスチレン−ブタジエン系ブロック共重合体を用いた光学用成形体であって、ヒンダードフェノール系化合物、ラクトン系化合物、リン系化合物及びイオウ系化合物から選ばれた1種以上の耐熱性安定剤0.01〜2質量部若しくはヒンダードアミン系化合物及びベンゾトリアゾール系化合物から選ばれた耐光安定剤1種以上の耐光安定剤0.01〜2質量部又はその両方(但し、それぞれスチレン−ブタジエン系ブロック共重合体を100質量部とする)を含有することを特徴とし、その光学用成形体が光学フィルム用ベースフィルムである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の光学用成形体は、透明性・色相・耐衝撃性が良好で、かつ複屈折の小さことから、例えば、位相差フィルムや反射防止フィルム等の光学フィルムのベースフィルム適しており有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明に使用するスチレン−ブタジエン系ブロック共重合体は、スチレン系単量体とブタジエン系単量体からリビングアニオン重合で得られるものであれば、特に制限はない。ブロック部が、スチレン系単量体を主体とするブロック部とブタジエン系単量体を主体とするブロック部からなるブロック共重合体でもよく、また各ブロック部がスチレン系単量体とブタジエン系単量体の組成比がなだらかに変化するいわゆるテーパー型のブロック部であるブロック共重合体でもよく、更には各ブロックがスチレン系単量体とブタジエン系単量体の組成比が一定の比率であるいわゆるランダムブロック部であるブロック共重合体でもよい。またこれらのブロック部が同一のものが複数するブロック共重合体でも、異種のブロック部が複数存在するブロック共重合体でもよく、その分子構造が直鎖状でもいわゆるスター状でもよい。
【0007】
スチレン−ブタジエン系ブロック共重合樹脂のマトリックスの重量平均分子量(Mw)は、特に制限はないが5万〜30万、より好ましいのは7万〜25万である。なお、本発明の重量平均分子量(Mw)はGPCにて測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)であり、下記記載の測定条件で測定した。
装置名:SYSTEM−21 Shodex(昭和電工社製)
カラム:PL gel MIXED−Bを3本直列
温度:40℃
検出:示差屈折率
溶媒:テトラハイドロフラン
濃度:2質量%
検量線:標準ポリスチレン(PS)(PL社製)を用いて作製し、重量平均分子量はPS換算値で表した。
【0008】
本発明で用いられるスチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等を挙げることができるが、好ましくはスチレンである。これらのスチレン系単量体は、単独でもよいが二種以上を併用してもよい。
【0009】
本発明で用いられるブタジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン等が挙げられるが、この中では1,3−ブタジエンが好ましい。
更に、スチレン−ブタジエンブロック系共重合体のポリマー鎖中のブタジエン系単量体に基づく1,2−ビニル不飽和結合の割合が、全ブタジエン系単量体量に対して20モル%以下が好ましく、15モル%以下がより好ましい。この1,2−ビニル不飽和結合の割合は重合溶媒の選択でコントロールすることが可能で、無極性溶媒を使用すれば少なくすることができる。
【0010】
スチレン−ブタジエンブロック系共重合体は、構成する単量体の比率がスチレン系単量体単位75〜60質量%、ブタジエン系単量体単位25〜40質量%であることを特徴とする。単量体の比率がスチレン系単量体単位73〜62質量%、ブタジエン系単量体単位27〜38質量%であると好ましく、スチレン系単量体単位71〜64質量%、ブタジエン系単量体単位29〜36質量%であるとより好ましい。共重合樹脂の組成がこのより好ましい範囲のある場合、得られる樹脂組成物は軟質の光学成形体用として特に優れている。
スチレン系単量体単位が60%未満では、得られる光学成形体が柔らかすぎて使用しづらく変形が問題となる場合があり、75質量%を超えると、複屈折が大きくなるので好ましくない。
【0011】
スチレン−ブタジエンブロック系共重合体は、耐熱安定剤を含んでもよく、また耐光安定剤を含んでもよい。また両者を含むとより好ましい。
耐熱安定剤は、その効果を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ラクトン系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物などの耐熱安定剤が挙げられる。これらは一種のみ用いてもよく、2種以上組み合わせて用いても良い。その配合量は、共重合樹脂100質量部に対して0.01〜2質量部が好ましく、より好ましいくは0.01〜1質量部である。
【0012】
耐光安定剤は、その効果を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ヒンダードアミン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物が挙げられる。これらは一種のみ用いてもよく、2種以上組み合わせて用いても良い。その配合量は、共重合樹脂100質量部に対して0.01〜2質量部が好ましく、より好ましいのは0.01〜1質量部である。
なお、樹脂組成物にはこれ以外に滑剤や可塑剤、着色剤、帯電防止剤、鉱油等の添加剤を含んでも差し支えないが、透明性を阻害する可能性もあり、その添加量は少ない方が好ましい。
【0013】
樹脂組成物の配合や造粒方法は特に制限はされず、公知の方法を採用することができる。例えば、スチレン−ブタジエンブロック系共重合体、耐熱安定剤、耐光安定剤および必要に応じて使用する添加剤をあらかじめタンブラーやヘンシェルミキサー等で均一に混合して、単軸押出機または二軸押出機等に供給して溶融混練する方法や、重合後に脱溶媒と造粒を同一ライン上で行う場合は、その最終段階で耐熱安定剤、耐光安定剤および必要に応じて使用する添加剤を系内に添加・混合後に造粒する方法がある。
【実施例】
【0014】
以下、詳細な内容について実施例を用いて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0015】
[実施例1]
(1)内径1.0m、容積1.3mでマックスブレンド翼(住友重工社製−撹拌数は60rpm)を有する密閉可能な耐圧容器に150ppmのテトラヒドロフランを含むシクロヘキサン480kgをとり、次いでn−ブチルリチウムを10質量%含むシクロヘキサン溶液(以後開始剤と呼ぶ)1490mLを添加し、液温を外気温度(約20〜30℃)に保った。
(2)この中にスチレンモノマー16.0kgを添加後、缶内温度70℃を目標に昇温させスチレンモノマーをアニオン重合させた。その後、缶内温度を40℃まで冷却させた。
(3)次いで、スチレンモノマー96.0kgとブタジエン48.0kgを同時に添加し、再び昇温させ、反応を継続させた。なお、アニオン重合反応では水が存在すると重合活性末端が失活するため、水分を5ppm以下に保った溶剤と原料モノマーを使用した。
(4)反応終了後、缶内温度を70℃まで冷却したのち、重合液を別の容器に移して水を110g添加して失活させ参考例1の重合体を含む溶液を得た。
(5)参考例1の重合溶液に、全仕込みモノマー(即ちスチレンモノマーとブタジエン)の合計100質量部あたり耐熱安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製IRGANOX1076)0.2質量部を溶解させた。これらの重合溶液はそれぞれ予備濃縮し、さらに減圧ベント付き2軸押出機で脱揮押出しして、それぞれペレット状のブロック共重合体を得た。
【0016】
[実施例及び比較例]
実施例1と同じ装置を用い、表1に示したスチレンとブタジエンの量になるように重合した。なお、初期のスチレンの仕込み量はいずれも実施例1と同じとした。
また、実施例1〜4及び比較例1、2には、スチレン−ブタジエンブロック系共重合体100質量部に、更に耐光安定剤としてヒンダードアミン系化合物としてビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ベンゾトリアゾール系化合物として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−t−ペンチルフェノールを各0.1質量部ヘンシェルミキサーで混合した後、二軸押出機(東芝機械(株)社製 TEM−35B)を用いシリンダー温度220℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。
以上のように調整した樹脂を名機社製射出成形機MDM−Iにて成形温度250℃、金型温度60℃で射出成形することにより、直径180mm、センターホール15mm、厚み1.2mmの光ディスク基板を得た。次に得られた光ディスク基板の特性評価を行った。その評価結果を表1に示した。
【0017】
【表1】

【0018】
なお、評価は下記の方法によった。
(1)透明性
ASTM D1003に基づき、ヘーズメーター(日本電色工業社製NDH−1001DP型)を用いてヘーズを測定し、成形品内のヘーズ(単位:%)の最大値で示した。1%以下を合格とした。
(2)色相
色差計(日本電色工業社製Σ―80)を用いてb値を測定し、成形品内のb値の最大値で示した。1以下を合格とした。
(3)複屈折
位相差測定装置(王子計測社製KOBRA−WR)を用いてリタデーション(Re)を測定し、成形品内のRe(単位:nm)の最大値で示した。50nm以下を合格とした。
【0019】
このように、スチレン系単量体とブタジエン系単量体が特定の比率であるスチレン−ブタジエン系ブロック共重合体が好ましく、また特にスチレン系単量体/ブタジエン単量体の比(質量基準)が1.5倍から2.3倍であるとReが小さくなり特に好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系単量体単位75〜60質量%とブタジエン系単量体単位25〜40質量%とからなるスチレン−ブタジエン系ブロック共重合体を用いた光学用成形体。
【請求項2】
ヒンダードフェノール系化合物、ラクトン系化合物、リン系化合物及びイオウ系化合物から選ばれた1種以上の耐熱性安定剤0.01〜2質量部(但し、スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体を100質量部とする)を含有することを特徴とする請求項1記載の光学用成形体。
【請求項3】
ヒンダードアミン系化合物及びベンゾトリアゾール系化合物から選ばれた耐光安定剤1種以上の耐光安定剤0.01〜2質量部(但し、スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体を100質量部とする)を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学用成形体。
【請求項4】
光学用成形体が、光学フィルム用ベースフィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の光学用成形体。


【公開番号】特開2007−224255(P2007−224255A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50390(P2006−50390)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】