説明

光学用熱可塑性樹脂組成物および成形品

【課題】本発明は、環状オレフィン系開環重合体の熱可塑性で成形加工性、生産性、透明性、耐熱性などの優れた特性を損なうことなく、青紫光や紫外光に対する耐性に優れた光学用熱可塑性樹脂組成物、並びにその成形品を提供することを課題としている。
【解決手段】本発明の環状オレフィン系開環重合体の光学用熱可塑性樹脂組成物は、環状オレフィン系開環重合体(A)100重量部に対して、フェノール系酸化防止剤(B)0.1〜3重量部と、耐光安定剤(C)0.1〜5重量部と、式(1)、(2)、(3)、および(4)から選ばれる少なくとも1種の光波長吸収剤であり、390nm以上800nm以下の全波長領域での吸収率が10%以下、且つ200nm以上390nm未満の波長内に最大吸収波長があり、200℃での加熱減量が5質量%以下の化合物である光波長吸収剤(D)0.01〜1重量部と、亜燐酸系熱安定剤(E)0.1〜9重量部とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の光波長に対する耐性を有する環状オレフィン系開環共重合体の光学用熱可塑性樹脂組成物、およびそれを用いた成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン系開環共重合体からなる樹脂、並びにその成形品は、複屈折率が低く、可視光に対する透明性に優れるとともに、比較的に耐熱性に優れ、吸水率が低いことから、各種光学用途に好適に用いられており、例えば、照明部材、光学封止材、光記憶媒体、保護膜、位相差膜、光拡散粒子を混合した拡散膜、表面に導電性層を形成した透明導電膜、特定波長をカットする蒸着などのコート層を形成した光学フィルター、それ自体の表面や表面のコート層に特定形状を形成した波長制御素子などの用途に用いられている。
【0003】
昨今は、光源に用いられる光半導体素子が、エネルギー効率や光制御にすぐれる紫外光や紫外光に近い青紫光などの短波長が用いられつつある。
しかしながら、使用される光の波長が短くなるに伴い、そのエネルギー量が急増すること、並びに有機材料である樹脂が短波長光によって、その分子鎖の切断、酸化、変色などの劣化を生じる問題がある。
【0004】
高エネルギーである短波長光は、樹脂の分子切断による劣化以外に、吸収された短波長光の光エネルギーが熱エネルギーに変換されることで、樹脂を溶融変形させ、更には変色や熱劣化を生じさせる問題が有る。ゆえに短波長光耐性を有する材料は、短波長光に対して透明性が良く、且つ耐熱性が良い必要性がある。
【0005】
短波長光に対して比較的に耐性を有する樹脂として、ポリテトラフルオロエチレンなどの弗素系樹脂やポリメチルメタクリレートがある。前者は分子間の結合力が強く、高エネルギーの短波長で分子鎖が切断しづらいことに起因し、後者は、短波長の透過性が良く、劣化させる吸収光が少ないことに起因している。しかしながら、前者は、耐熱性と透明性で、環状オレフィン系開環共重合体に劣る上に高価であり、後者は硬化性樹脂で熱可塑性の環状オレフィン系開環共重合体と比べ成形性や生産性に劣り、耐熱性に劣る問題があり、耐熱性、透明性、更には成形性、生産性、価格を満足できない問題がある。
【0006】
また、耐熱性、透明性、短波長光に対する耐性を有する石英ガラスなどの透明無機材料は、成形性、量産性が有機系の樹脂に比べ劣ることや、脆く、耐衝撃性に劣りことで生産時や使用時に破損し易い問題がある。
【0007】
一方、樹脂の劣化を防止するために、フェノール系、燐系や硫黄系などの酸化防止剤や劣化防止剤を処方する方法や屋外に使用される樹脂に太陽光中の紫外線などの短波長光に対する劣化を防止するために耐光安定剤や紫外線吸収剤を処方する方法は、従来から汎用的に使用される方法である。短波長光により樹脂の劣化は、樹脂の分子構造、分子骨格に起因するため、一概に汎用酸化防止剤、耐光安定剤や紫外線吸収剤を処方しても、逆に耐性を悪化させる原因となることがある。特に指向性や収束性の高いレーザーや光学半導体などは、特定の波長に対しての耐性が更に要求される為、従来の方法で、満足する有機材料がなかった。
【0008】
光学特性、耐熱性、および耐吸水性の優れる環状オレフィン系開環共重合体からなる樹脂組成物、並びにその成形品は、青紫光や紫外光の高エネルギーの短波長光に対する耐性を付与する方法は知られておらず、短波長光耐性に優れた環状オレフィン系開環共重合体からなる樹脂組成物、並びにその成形品が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−48489
【特許文献2】特開平10−45981
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「高分子の劣化 原理とその応用 1版 」SCHNABLE、相馬純吉、裳華房、1993
【非特許文献2】「高分子材料の劣化と安定化」大澤善次郎 河本圭司 酒井英紀、シ−エムシ−、1990
【非特許文献3】「高分子化合物の劣化と安定性」筏英之 角岡正弘 林寿郎 他、アイピ−シ−、1987
【非特許文献4】「高分子材料の耐久性標準試験方法 2 耐光性・耐オゾン性試験方法 1版」早川浄 国際標準規格研究会、アイピ−シ−、1992
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、環状オレフィン系開環重合体の熱可塑性で成形加工性、生産性、透明性、耐熱性などの優れた特性を損なうことなく、青紫光や紫外光に対する耐性に優れた光学用熱可塑性樹脂組成物、並びにその成形品を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の環状オレフィン系開環重合体の光学用熱可塑性樹脂組成物は、 環状オレフィン系開環重合体(A)100重量部に対して、フェノール系酸化防止剤(B)0.1〜3重量部と、耐光安定剤(C)0.1〜5重量部と、下記式(1)、(2)、(3)、および(4)から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、390nm以上800nm以下の全波長領域での吸収率が10%以下、且つ200nm以上390nm未満の波長内に最大吸収波長があり、200℃での加熱減量が5質量%以下の化合物である光波長吸収剤(D)0.01〜1重量部と、
亜燐酸系熱安定剤(E)0.1〜9重量部とを含むことを特徴とする光学用熱可塑性樹脂組成物。
【0013】
【化1】

[式(1)中のR1〜R6は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜15のアルキル基 、またはアルキル基の置換基を有してもよいアミノ基である。]
【0014】
【化2】

[式(2)中のR7は、炭素数1〜15のアルキル基、または炭素数1〜15のアルコキシル基である。R8、R9は、炭素数1〜15のアルキル基である。]
【0015】
【化3】

[式(3)中のR10〜R13は、炭素数1〜15のアルキル基である。]
【0016】
【化4】

[式(4)中のR14、R15は、炭素数1〜15のアルキル基、またはアルコキシ基である。]
環状オレフィン系開環重合体(A)としては、下記式(5)、式(6)、式(7)で表わされる構造単位を1種、あるいは複数を有する環状オレフィン系開環重合体の熱可塑性樹脂が好ましい。
【0017】
【化5】

【0018】
【化6】

【0019】
【化7】

フェノール系酸化防止剤(B)は、下記式(8)で表され、且つ200℃での加熱減量が1質量%以下の化合物が好ましい。
【0020】
【化8】

式(8)中のR30は、n価の脂肪族炭化水素基である。式(8)中のnは、1〜4の整数である。
【0021】
耐光安定剤(C)は、下記式(9)で表されるテトラメチルピペリジンの単位構造、および下記式(10)で表される1,3,5−トリアジンの単位構造をそれぞれの1以上有し、且つ分子量が1000以上で、200℃での加熱減量が1質量%以下の光安定剤が好ましい。
【0022】
【化9】

【0023】
【化10】

式(9)中のMeはメチル基であり、R31、R32は、水素、もしくは、炭素、窒素、酸素、アルキレン基などの脂肪族炭化水素基、アミノ基、アミド基、イミノ基、アゾ基、カルボニル基などの連結基、もしくは式(9)の単位構造と式(10)の単位構造が連結基を介さず、直接結合していても良い。
【0024】
光波長吸収剤(D)は、下記式(1)、(2)、(3)および(4)から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、390nm以上800nm以下の波長の吸収率が10%以下、且つ200nm以上390nm未満の波長内に最大吸収波長があり、200℃での加熱減量が5質量%の化合物(以下、「特定光波長吸収剤(D)」ともいう。)である。
【0025】
【化11】

[式(1)中のR1〜R6は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜15のアルキル基 、またはアルキル基の置換基を有してもよいアミノ基である。]
【0026】
【化12】

[式(2)中のR7は、炭素数1〜15のアルキル基、または炭素数1〜15のアルコキシル基である。R8、R9は、炭素数1〜15のアルキル基である。]
【0027】
【化13】

[式(3)中のR10〜R13は、炭素数1〜15のアルキル基である。]
【0028】
【化14】

[式(4)中のR14、R15は、炭素数1〜15のアルキル基、またはアルコキシ基である。]
亜燐酸系熱安定剤(E)は、下記式(11)で示される亜燐酸エステルであり、分子量が600以上で、200℃での加熱減量が5質量%以下の化合物が好ましい。
【0029】
【化15】

式(11)中のR33〜R35 は、水素、水酸基、アリール基、アリル基、アルキル基、シクロアルキル基、ナフチル基、ビニル基、フェニル基、ベンジル基、ハロゲン基、アシル基、アセチル基、アルデヒド基、カルボキシル基、アジド−アジ基、アジ基、アミノ基、イソシアネート基、シアノ基、チオイソシアネート基、ニトロ基、ニトロソ基、硝酸エステル、ヒドロキシ基、スルホ基、イミノ基、ケトン基、チオキシ基などの極性基、メルカプト基、チオール基、アルキレン基、エステル結合、カルボニル基、ケテン、チオエステル、ウレタン結合、アゾ基、イソニトリル基、オキシム結合、ジイミド結合、エーテル結合、ジスルフィド結合、スルフィド結合、アミド結合、チオアミド結合、イミド結合、リン酸エステル、スルホニル結合、アレン、アミジン結合、チオ尿素などの連結基であり、これらの極性基や連結基を1種、或いは2種以上含んでもよく、複数の連結基が結合しても良い。また、式(11)で示される構造単位が1個でも複数個含んでもよい。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明について具体的に説明する。
<環状オレフィン系開環重合体(A)>
本発明で使用される環状オレフィン系開環重合体としては、例えば特許文献1〜6に記載のものなどが挙げられる。
〔特許文献1〕特開平1−132625号公報
〔特許文献2〕特開平1−132626号公報
〔特許文献3〕特開昭63−218726号公報
〔特許文献4〕特開平2−133413号公報
〔特許文献5〕特開昭61−120816号公報
〔特許文献6〕特開昭61−115912号公報
本発明で使用される環状オレフィン系開環重合体とは、ノルボルネン骨格を有する環状オレフィン系単量体を単独重合あるいは共重合して得られる重合体であり、たとえば以下のものが挙げられる。
【0031】
(I)環状オレフィン系単量体の開環重合体。
(II)環状オレフィン系単量体と共重合性単量体との開環共重合体。
(III)上記(I)又は(II)の開環(共)重合体の水素添加(共)重合体。
(IV)上記(I)又は(II)の開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化したのち、水素添加した(共)重合体。
(V)環状オレフィン系単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和重合体。
(VI)環状オレフィン系単量体の付加型(共)重合体及びその水素添加(共)重合体。
(VII)環状オレフィン系単量体とメタクリレート、またはアクリレートとの交互共重合体。
【0032】
本発明に係る環状オレフィン系開環重合体(以下、「環状オレフィン系樹脂」ともいう。)としては、このうち上記(I)、(II)、(III)が好ましく、上記(III)がより好ましい。
【0033】
本発明に係る好ましい環状オレフィン系樹脂としては、下記式(5)、式(6)、式(7)で表わされる構造単位を有するものが挙げられる。このような環状オレフィン系樹脂は、式(5)で表わされる構造単位のみ、式(6)で表わされる構造単位のみ、式(7)で表わされる構造単位のみを含む樹脂でも、式(5)と式(6)、式(6)と式(7)、式(5)と式(7)のそれぞれの構造単位を含む共重合体でも、式(5)と式(6)と式(7)のそれぞれの構造単位を含む共重合体でもよい。好ましくは、式(5)の構造体のみ、または式(5)と式(6)の両者の構造単位を含む共重合体の樹脂である。
【0034】
【化16】

【0035】
【化17】

【0036】
【化18】

式(5)、式(6)並びに、式(7)中のm、p、q、s、tは、0以上の整数である。式(7)において、s=0且つt=0は、除く。
【0037】
式(5)、式(6)並びに、式(7)中のX、Y、並びにZは、独立に式:−CH=CH−で表される基または式:−CH2CH2−で表される基であり、
16〜R29は、それぞれ下記(i)〜(vii)で表されるものである。
(i)水素原子、
(ii)ハロゲン原子、
(iii)酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくは珪素原子を含む連結基を含む置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(iv)置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(v)極性基、
(vi)式5中のR16とR17、R17とR18、またはR18とR19、式6の構造単位中のR20
21、R21とR22、R22とR23、R23とR24、またはR24とR25、式7中のR26とR27、R27とR28、またはR28とR29が、相互に結合して形成された芳香環あるいは非芳香環の単環もしくは多環の炭素環、または複素環を表し、前記結合に関与しないR1〜R14は相互に独立に前記(i)〜(v)より選ばれるもの、
(vii)前記(iv)炭化水素基または前記(vi) 炭素環、または複素環の一つ以上が前記(
ii)のハロゲン原子、または(v)の極性基で置換されたもの、もしくは(ii)のハロゲ
ン原子と(v)の極性基で置換されたものを表す。
【0038】
(ii)のハロゲン原子としては、弗素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子などが挙げ
られる。
(iii) 酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくは珪素原子を含む連結基を含む置換、もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基などのアルケニル基などが挙げられる。また、置換または非置換の炭化水素基は直接環構造に結合していてもよいし、あるいは連結基を介して結合していてもよい。連結基としては、炭素原子数1〜10の2価の炭化水素基として、たとえばアルキレン基(−CH2−)、ビニル基(−CH=CH−);酸素、窒素、イオウまたはケイ素を含む連結基としては、たとえばエーテル結合(−O−)、ジエーテル結合(−O−O−)、カルボニル基(−CO−)、オキシカルボニル基(−O(CO)−)、スルフィド結合(−S−)、ジスルフィド結合(−S−S−)、スルホン基(−SO2−)、アゾ基(−N=N−)、イミノ基(−NH−)、アミド結合(−NHCO−,−CONH−)、シリル基(−Si(R)2−(式中、Rはメチル、エチルなどのアルキル基))、シロキサン結合(−OSi(R)2−(式中、Rはメチル、エチルなどのアルキル基))などが挙げられ、これらの複数を含む連結基であってもよい。
【0039】
(iv) 置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、メチル基、エ
チル基、プロピル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基などのアルケニル基、フェニル基などが挙げられる。また、置換または非置換の炭化水素基は直接環構造に結合していてもよいし、あるいは連結基を介して結合していてもよい。連結基としては、炭素原子数1〜10の2価の炭化水素基として、たとえばアルキレン基(−CH2−)、ビニル基(−CH=CH−);酸素、窒素、イオウまたはケイ素を含む連結基としては、たとえばエーテル結合(−O−)、ジエーテル結合(−O−O−)、カルボニル基(−CO−)、オキシカルボニル基(−O(CO)−)、スルフィド結合(−S−)、ジスルフィド結合(−S−S−)、スルホン基(−SO2−)、アゾ基(−N=N−)、イミノ基(−NH−)、アミド結合(−NHCO−,−CONH−)、シリル基(−Si(R)2−(式中、Rはメチル、エチルなどのアルキル基))、シロキサン結合(−OSi(R)2−、(式中、Rはメチル、エチルなどのアルキル基))などが挙げられ、これらの複数を含む連結基であってもよい。
【0040】
(v)の極性基としては、たとえば水酸基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、カル
ボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、シアノ基、アミド基、イミド基、トリオルガノシロキシ基、トリオルガノシリル基、アミノ基、アシル基、アルコキシシリル基、スルホニル基、およびカルボキシル基などが挙げられる。さらに具体的には、前記アルコキシ基としては、たとえばメトキシ基、エトキシ基などが挙げられ;カルボニルオキシ基としては、たとえばアセトキシ基、プロピオニルオキシ基などのアルキルカルボニルオキシ基、およびベンゾイルオキシ基などのアリールカルボニルオキシ基が挙げられ;アルコキシカルボニル基としては、たとえばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられ;アリーロキシカルボニル基としては、たとえばフェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基、ビフェニリルオキシカルボニル基などが挙げられ;トリオルガノシロキシ基としては、たとえばトリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基などが挙げられ;トリオルガノシリル基としてはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基などが挙げられ;アミノ基としては第1級アミノ基が挙げられ、アルコキシシリル基としては、たとえばトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基などが挙げられる。
【0041】
式(5)で表す構造単位において、式(5)のR16〜R19の内、少なくとも一つは、(v)の極性を有し、且つ(v)の極性基を有さない他のR16〜R19は水素原子又は炭素数1〜2の炭化水素基であることが好ましい。式(5)中のmは、0〜3の整数であり、好ましくは、0〜1の整数である。式(5)中のmの数が同一の式(5)で表す構造単位の重合体でも、式(5)中のmの数が異なる式(5)で表す構造単位の共重合体でもよい。
【0042】
構造単位(6)において、式(6)のR20〜R25は水素原子又は炭素数1〜2の炭化水素基であることが好ましい。式(6)中のp及びqは0〜3の整数であり、好ましくは、p+q=0〜4、さらに好ましくは0〜2、特に好ましくはp=0、q=0である。式(65)中のpおよびにqの数が同一の式(6)で表す構造単位の重合体でも、式(6)中のpおよびにqの数が異なる式(6)で表す構造単位の共重合体でもよい。
【0043】
構造単位(7)において、式(7)のR26〜R29は水素原子又は炭素数1〜2の炭化水素基であることが好ましい。式(7)中のs及びtは0〜3の整数であり、s+tは1以上の整数である。好ましくは、s+t=1〜4、さらに好ましくは1〜3、特に好ましくはs+t=1である。式(7)中のsおよびにtの数が同一の式(7)で表す構造単位の重合体でも、式(7)中のsおよびにtの数が異なる式(7)で表す構造単位の共重合体でもよい。
【0044】
前記構造単位で表す重合体の環状オレフィン系樹脂において、式(5)で表す構造単位/式(6)で表す構造単位/式(7)で表す構造単位の重量比は、好ましくは100〜50/0〜30/0〜20重量%、さらに好ましくは100〜60/0〜30/0〜10重量%、特に好ましくは100〜70/0〜25/0〜5重量%である。
【0045】
≪環状オレフィン系樹脂の製造≫
本発明に係る環状オレフィン系樹脂は、前記式(5)、式(6)、式(7)で表される繰り返し単位を有する。
【0046】
前記式(5)、式(6)、およびに式(7)で表される繰り返し単位は、それぞれ下記式(5’)、式(6’)、およびに式(7’)で表される環状オレフィン系単量体から開環(共)重合により、誘導される。これら単量体を特定単量体と記す。
【0047】
【化19】

【0048】
【化20】

【0049】
【化21】

前記式(5’)、式(6’)、式(7’)中のm、p、q、s、t、およびR16〜R29は、それぞれ前記式(5)、式(6)、式(7)と同様である。
【0050】
前記式(5’)、式(6’)、式(7’)で表される環状オレフィン系単量体としては、ノルボルネン骨格を有する化合物を特に制限なく用いることができ、たとえば、以下のような化合物を用いることができる。
5,5,6,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,5,6,6−テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,5,6−トリス(フルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−ヘプタフルオロプロポキシビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,5,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,5−ジフルオロ−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,5−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,5−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,6−ジクロロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5−ヘプタフルオロ−イソプロピル−6−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,6−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−クロロ−5,6,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−フルオロ−5−ペンタフルオロエチル−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−ヘプタデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−ヘプチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−ペンタデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−ペンタフルオロエチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−ペンチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−メチル−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−メトキシカルボニル−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
6−エチリデン−2−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラキス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
【0051】
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメトキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−ペンタフルオロプロポキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロ−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジクロロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8−ヘプタフルオロイソプロピル−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−クロロ−8,9,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−シアノ−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−シアノテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−ジフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロ−8−ペンタフルオロエチル−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−ペンタフルオロエチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
トリシクロ[4.3.0.12,5]−8−デセン、
トリシクロ[5.2.1.02,6 ]−8−デセン、
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン、
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセンなどが挙げられる。
【0052】
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。好ましくは、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンであり、更に好ましくは、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンである。
【0053】
本発明では、前記式(5)で表される繰り返し単位が極性基を有することが好ましく、その極性基が、下記式(12)で表される基であることが好ましい。すなわち、前記式(5)で表される繰り返し単位あるいは前記式(5)で表される環状オレフィン系単量体は、R16〜R19の少なくとも一つが、下記式(12)で表される基であることが好ましい。
【0054】
【化22】

前記式(12)中のuは0または、1以上の整数であり、R36 は炭素原子1〜30の炭化水素基である。前記式(12)中のuは、好ましくは、0または1〜5の整数であり、R36 は炭素原子数1〜15の炭化水素基であり、更に好ましくは、uは、0または1であり、R36 は、炭素原子数1〜3のアルキル基である。
【0055】
<他重合単量体との共重合>
前記式(5’)、式(6’)、および式(7’)で表す環状オレフィン系単量体の他に、本発明の目的を損なわない範囲でその他の環状オレフィン系単量体あるいは共重合可能な他の重合体モノマーを共重合原料として用いることもできる。他の重合体モノマーとしては、たとえばシクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエンなどのシクロオレフィン系単量体、スチレン、メチルスチレン、エチレン、クロロエチレン、フルオロエチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ブチレン、イソブレン、イソプレン、ブタジエン、プロピレン、プロパジエン、ヘキサジエン、ヘプタジエン、ペンタジエン、ジアリルジスルフィド、アリルアミン、アクリロニトリル、アクリルアミドなどの共役、非共役ジエン系単量体とともに開環共重合することにより共重合体を形成することができる。
【0056】
<重合体との共重合>
前記式(5’)、式(6’)、および式(7’)で表す環状オレフィン系単量体に、本発明の目的を損なわない範囲で、共重合可能な不飽和重合体を加えて共重合することにより共重合体を形成することができる。不飽和重合体としては、たとえば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、アクリロニトリルブタジエン共重合体、エチレン−非共役ジエン共重合体、ポリノルボルネンなどの不飽和炭化水素系ポリマーなどとともに開環共重合することにより共重合体を形成することができる。
【0057】
<重合体の分子量>
本発明の環状オレフィン系樹脂の分子量としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が、通常3×103〜5×105、好ましくは5×103〜3×105、さらに好ましくは1×104〜2×105であり、また、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、通常5×103〜1×106、好ましくは1×104〜5×105、さらに好ましくは2×104〜4×105の範囲であるのが好ましい。
【0058】
分子量が過小である場合には、得られるフィルムの強度が低いものとなったり、耐熱変形性が低下したりすることがある。一方、分子量が過大である場合には、溶液粘度や溶融粘度が高くなり、本発明の重合体の生産性や加工性が悪化することがある。また、本発明に係る環状オレフィン系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、通常1.5〜10、好ましくは2〜8、さらに好ましくは2〜7であるのが望ましい。
【0059】
<重合体のガラス転移温度>
本発明における環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、通常70〜300℃であり、好ましくは90〜250℃、さらに好ましくは100〜180℃である。Tgが120℃以上である場合には、優れた耐熱性を有するため好ましい。Tgが70℃未満である場合には、耐熱性が低く、熱変形や熱による光学特性の変化が大きくなるという問題が生じることがある。一方、Tgが300℃を超える場合には、生産性、加工性に劣り、また加工温度が高くなることによる本発明の環状オレフィン系樹脂の熱劣化や変色を生じることがある。
【0060】
本明細書において、環状オレフィン系樹脂のTgとは、示差走査熱量計(DSC)を用い、昇温速度20℃/分、窒素雰囲気にて測定した際に得られる微分示差走査熱量曲線の最大ピーク温度(A点)及び最大ピーク温度より−20℃の温度(B点)を示差走査熱量曲線上にプロットし、B点を起点とするベースライン上の接線とA点を起点とする接線との交点として求められる。
本発明に係る環状オレフィン系樹脂は透明性および耐熱性を有することが好ましく、ガラス転移温度が120℃以上、線膨張係数が7.0×10-5/℃以下であることが好ましい。
【0061】
<重合触媒>
本発明に係る環状オレフィン系樹脂の製造に用いる触媒としては、たとえば、
Olefin Metathesis and Metathesis Polymerization(K.J.IVIN, J.C.MOL, Academic Press 1997)に記載されている触媒等が好ましく用いられる。
【0062】
このような触媒としては、たとえば、(a)W、Mo、Re、VおよびTiの化合物から選ばれた少なくとも1種と、(b)Li、Na、K、Ru、Csなどのアルカリ金属元素、Mg、Ca、Sr、Baなどのアルカリ土類金属元素、Zn、Cd、Hgなどの第12族元素、B、Al、Ga,Inなどの第13族元素、Si、Ge、Sn、Pbなどの第14族元素などの化合物であって、少なくとも1つの当該元素−炭素結合または当該元素−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種との組み合わせからなるメタセシス触媒が挙げられる。該触媒の活性を高めるために、後述の(c)添加剤が添加されたものであってもよい。
【0063】
これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。(a)成分としては、たとえばWCl6、MoCl5、ReOCl3などの化合物が挙げられる。(b)成分としては、たとえばn−C49Li、(C253Al 、(C252AlCl、(C251.5AlCl1.5、(C25)AlCl2、メチルアルモキサン、LiHなどが挙げられる。(c)成分の添加剤としては、たとえば、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類等を好適に用いることができ、さらに、特開平1−240517号公報に記載の化合物を使用することができる。
【0064】
メタセシス触媒の使用量としては、上記(a)成分と前記式(5’)、式(6’)、および式(7’)で表す単量体の合計とのモル比で(a)成分:単量体が、通常1:500〜1:50000、好ましくは1:1000〜1:10000である。(a)成分と(b)成分との割合は、金属原子比で(a)成分:(b)成分が1:1〜1:50、好ましくは1:2〜1:30である。(a)成分と(c)成分との割合は、モル比で(c):(a)が0.005:1〜15:1、好ましくは0.05:1〜7:1である。
【0065】
<重合溶媒>
開環共重合反応において用いられる単量体、開環重合触媒、分子量調節剤などを溶解する溶媒としては、たとえば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナンなどのシクロアルカン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素、クロロブタン、ブロムヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素化合物類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチルなどの飽和カルボン酸エステル類;ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を挙げることができ、これらは単独であるいは2種以上を併用して用いることができる。これらの中でも、上記芳香族炭化水素類が好ましい。溶媒の使用量としては、溶媒:前記式(5’)、式(6’)、および式(7’)で表す単量体の重量比が、1:1〜10:1であり、好ましくは1:1〜5:1となる量である。
【0066】
<水素添加>
前記の環状オレフィン系単量体を重合しただけの重合体は、そのまま本発明の樹脂として用いることもできるが、その分子内に不飽和結合を有していることから、熱、光、並びに酸素などの活性により、変色や劣化を生じやすいる恐れが有ることから、重合体中の不飽和結合を水素添加することによって不飽和結合を低減させることが好ましい。水素添加反応は公知の方法を適用できる。たとえば、特開昭63−218726号公報、特開平1−132626号公報、特開平1−240517号公報、特開平2−10221号公報などに記載された触媒や溶媒および温度条件などを適用することで水素添加反応を実施することで本発明の環状オレフィン系樹脂を得ることができる。
【0067】
水素添加反応の方法としては、たとえば、共重合体の溶液に水素添加触媒を添加し、これに常圧〜300気圧、好ましくは3〜200気圧の水素ガスを0〜200℃、好ましくは20〜180℃で作用させることによって行われる。水素添加触媒としては、前記の公知の触媒が使用できる。たとえばパラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属類を、カーボン、シリカ、アルミナ、チタニアなどの担体に担持させた固体不均一系触媒、ナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n−ブチルリチウム、チタノセンジクロリド/ジエチルアルミニウムモノクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムなど均一系触媒を挙げることができる。触媒の形態は粉末でも粒状でもよい。これらの水素添加触媒は、共重合体:水素添加触媒(重量比)が、1:1×10-6〜1:2となる割合で使用される。
【0068】
前記環状オレフィン系樹脂の水素添加率としては、通常80モル%以上、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、特に好ましくは99モル%以上である。
【0069】
<フィルタリング>
前記の特定重合体、共重合体、触媒、並びに添加剤中の巨大粒子、化学ゲル、並びに未溶解物などの異物を濾過フィルターで除去することが好ましい。濾過は、原料の段階、それを溶媒に溶解した段階、重合後の段階、溶媒除去後の段階、再度溶媒に溶解した段階、成形直前の段階に拘らず、各段階で行なうことができる。好ましくは、重合後の段階、溶媒除去後の段階、並びに成形直前の段階で行うことが好ましく、濾過回数は、1回でも複数回に行っても良い。濾過に用いるフィルターは、金属フィルター、ポリマーフィルター、無機フィルターなど、溶媒、ポリマー溶液、樹脂、エラストマーで用いられるものが使用できる。濾過フィルターの孔径は、0.01〜600μmが好ましく、更には0.1〜300μmが好ましい。
【0070】
<フェノール系酸化防止剤>
フェノール系酸化防止剤(B)は、下記式(8)で表され、且つ200℃での加熱減量が1質量%以下の化合物(以下、「特定フェノール系酸化防止剤(B)」ともいう。)が好ましい。
【0071】
【化23】

式(8)中のR30は、n価の脂肪族炭化水素基であり、好ましくは、炭素数が4以上の2価以上の脂肪族炭化水素基であり、更に好ましくは、炭素数4もしくは5の脂肪族炭化水素基である。式(8)中のnは、1〜4の整数である。
【0072】
精製純度は、90質量%が好ましく、更に好ましくは95質量%以上である。純度が低く、不純物が多いと、光学的損失が大きくなり、目的とする耐性を得ることが出来ない。
【0073】
特定フェノール系酸化防止剤(B)の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](分子量: 1178、加熱減量:0.1質量%以下)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(分子量:531、加熱減量:0.4質量%)、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロキオネート(分子量:639、加熱減量:0.1質量%以下)などが挙げられる。好ましくは、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]である。
【0074】
<耐光安定剤(C)>
耐光安定剤(C)は、下記式(9)で表されるテトラメチルピペリジンの単位構造、および下記式(10)で表される1,3,5−トリアジンの単位構造をそれぞれの1以上有する化合物(以下、「特定耐光安定剤(C)」ともいう。)が好ましい。
【0075】
【化24】

【0076】
【化25】

式(9)中のMeはメチル基であり、R31、R32は、水素、もしくは、炭素、窒素、酸素、アルキレン基などの脂肪族炭化水素基、アミノ基、アミド基、イミノ基、アゾ基、カルボニル基などの連結基、もしくは式(9)の単位構造と式(10)の単位構造が連結基を介さず、直接結合していても良い。
【0077】
分子量は、1000以上、好ましくは1500以上、更に好ましくは、2000以上である。分子量が1000未満の場合、樹脂への混合や成形加工時に、分離や移行を生じるなどの不具合を生じやすい。
【0078】
200℃での加熱減量が1質量%以下、好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上である。加熱減量が1質量%を超える場合、樹脂への混合や成形加工時に、分離や移行を生じるなどの不具合を生じやすい。
【0079】
特定耐光安定剤(C)の具体例としては、
ポリ[{6−[(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ}−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]](分子量:2000〜3000、加熱減量:0.7%)、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}](分子量:2000〜3100、加熱減量:0.1質量%以下)、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ペンタメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}](分子量:2000〜3500、加熱減量:0.1質量%以下)、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}オクタメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}](分子量:2000〜3000、加熱減量:0.1質量%)、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘプタメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}](分子量:2000〜3000、加熱減量:0.1質量%以下)、N,N’,N”,N”’−テトラキス(4,6−ビス(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン/コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン=90/10(分子量:2286、加熱減量:0.7質量%)、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(1,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミン重縮合体(分子量:2600〜3400、加熱減量:0.1質量%以下)が挙げられる。好ましくは、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]である。
【0080】
<特定光波長吸収剤(D)>
特定光波長吸収剤(D)は、下記式(1)、(2)、(3)、および(4)から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、390nm以上800nm以下の波長の吸収率が10%以下、且つ200nm以上390nm未満の波長内に最大吸収波長があり、200℃での加熱減量が5質量%の化合物である。
【0081】
【化26】

[式(1)中のR1〜R6は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜15のアルキル基 、またはアルキル基の置換基を有してもよいアミノ基である。]
炭素数1〜15のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプ ロピル基、ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられ、メチル基、エチル基が好 ましい。アルキル基の置換基を有してもよいアミノ基としては、アミノ基、ジメチル アミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロキルアミノ基、ジブチルアミノ基が挙げられ、 ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基が好ましい。
【0082】
【化27】

[式(2)中のR7は、炭素数1〜15のアルキル基、または炭素数1〜15のアルコキシル基である。R8、R9は、炭素数1〜15のアルキル基である。]
炭素数1〜15のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられ、メチル基、エチル基が好ましい。炭素数1〜15のアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0083】
【化28】

[式(3)中のR10〜R13は、炭素数1〜15のアルキル基である。]
炭素数1〜15のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられ、メチル基、エチル基が好ましい。
【0084】
【化29】

[式(4)中のR14、R15は、炭素数1〜15のアルキル基、またはアルコキシ基である。]
炭素数1〜15のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基などが挙げられ、メチル基、エチル基が好ましい。炭素数1〜15のアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0085】
特定光波長吸収剤(D)の390nm以上800nm以下の波長吸収率が10%以下、好ましくは6%以下、更に好ましくは5%以下である。
特定光波長吸収剤(D)の最大吸収波長は、200nm以上390nm未満にあり、好ましくは、250nm以上380nm未満、更に好ましくは、270nm以上370未満である。
【0086】
特定光波長吸収剤(D)の200℃での加熱減量が5質量%以下であり、好ましくは、3質量%以下である。
特定光波長吸収剤(D)の具体例としては、ジメチル(p−メトキシベンジリデン)マロネート、テトラ−エチル−2,2’−(1,4−フェニレン−ジメチリデン)−ビスマロネート、下記式(13)、および式(14)で表される化合物などが挙げられる。
【0087】
【化30】

【0088】
【化31】

<亜燐酸系熱安定剤(E)>
亜燐酸系熱安定剤(E)は、下記式(11)で示される亜燐酸エステルであり、分子量が600以上で、200℃での加熱減量が5質量%以下の化合物(以下、「特定亜燐酸系熱安定剤(E)」ともいう。)が好ましい。
【0089】
【化32】

式(11)中のR33〜R35 は、水素、水酸基、アリール基、アリル基、アルキル基、シクロアルキル基、ナフチル基、ビニル基、フェニル基、ベンジル基、ハロゲン基、アシル基、アセチル基、アルデヒド基、カルボキシル基、アジド−アジ基、アジ基、アミノ基、イソシアネート基、シアノ基、チオイソシアネート基、ニトロ基、ニトロソ基、硝酸エステル、ヒドロキシ基、スルホ基、イミノ基、ケトン基、チオキシ基などの極性基、メルカプト基、チオール基、アルキレン基、エステル結合、カルボニル基、ケテン、チオエステル、ウレタン結合、アゾ基、イソニトリル基、オキシム結合、ジイミド結合、エーテル結合、ジスルフィド結合、スルフィド結合、アミド結合、チオアミド結合、イミド結合、リン酸エステル、スルホニル結合、アレン、アミジン結合、チオ尿素などの連結基であり、これらの極性基や連結基を1種、或いは2種以上含んでもよく、複数の連結基が結合しても良い。また、式(11)で示される構造単位が1個でも複数個含んでもよい。
【0090】
特定亜燐酸系熱安定剤(E)の200℃での加熱減量は、5質量%以下、好ましくは3質量%以下である。
特定亜燐酸系熱安定剤(E)の具体例としては、
トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(加熱減量:0.4質量%)、トリス(2,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(加熱減量:0.4質量%)、2,2’,2”−ニトリロ[トリエチル−トリス(3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル)]ホスファイト(加熱減量:0.1質量%以下)、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(加熱減量:0.1質量%以下)、トリイソデシルホスファイト(加熱減量:1.4質量%) 、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト(加熱減量:0.1質量%)、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(加熱減量:0.1質量%)、ビス(2,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(加熱減量:0.1質量%)、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト(加熱減量:0.1質量%)、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜燐酸(加熱減量:0.1質量%以下)、3,9−ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(加熱減量:0.1質量%以下)、1,1′‐ビフェニル‐4,4′‐ジイルビス[亜ホスホン酸ビス(2,4‐ジ‐tert‐ブチルフェニル)](加熱減量:0.1質量%以下)、3,9−ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(加熱減量:0.1質量%以下)等が挙げられる。
【0091】
<添加量>
環状オレフィン系開環重合体(A)100重量部に対して、フェノール系酸化防止剤(B)の添加量は、0.1重量部以上3重量部以下、好ましくは、0.3重量部以上2重量部以下、更に好ましくは、0.5重量部以上1重量部以下である。0.1重量部未満では、耐光性能を得られず、3重量部を超えると表面移行や内部凝集による光散乱等の不具合を生じる可能性がある。
【0092】
耐光安定剤(C)の添加量は、環状オレフィン系開環重合体(A)100重量部に対して、0.1重量部以上5重量部以下、更に好ましくは、0.5重量部以上1重量部以下である。0.1重量部未満では、耐光性能を得られず、3重量部を超えると表面移行や内部凝集による光散乱等の不具合を生じる可能性がある。
【0093】
光波長吸収剤(D)の添加量は、0.01重量部以上1重量部以下、好ましくは、0.03重量部以上0.5重量部以下、更に好ましくは0.05重量部以上0.3重量部以下である。0.01重量部未満では、耐光性能を得られず、1重量部を超えると表面移行や可視光領域の吸収による着色が生じる可能性がある。
【0094】
亜燐酸系熱安定剤(E)の添加量は、環状オレフィン系開環共重合体(A)100重量部に対して、0.1重量部以上9重量部以下、好ましくは、0.2重量部以上6重量部以下、更に好ましくは、0.6重量部以上4重量部以下である。
【0095】
また、亜燐酸系熱安定剤(E)は、フェノール系酸化防止剤(B)の変色を抑える効果があり、結果として光学用熱可塑性樹脂組成物の耐光性を改善する。フェノール系酸化防止剤(B)を構成する前記式(7)で示す構造単位が100モルに対して、亜燐酸系熱安定剤(E)を構成する前記式(10)で示す構造単位が30モル以上70モル以下、好ましくは、40モル以上60モル以下、更に好ましくは50モルとなる比で添加することで、より耐光性の効果を発揮する。
【0096】
<他添加剤>
本発明の光学用熱可塑性樹脂組成物には、特性を損なわない限り、耐候剤、老化防止剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、無機系充填剤、有機系充填材、有機シランカップリング剤や有機チタンカップリング剤などの表面処理剤、濡れ性改良剤、撥水剤、撥油剤、防汚剤、難燃剤、抗菌剤、結露防止剤、塗面改良剤、帯電防止剤、有機もしくは無機導電剤、放熱剤などの公知の樹脂およびエラストマーに使用される添加剤を添加することが出来る。また、本発明の光学用熱可塑性樹脂組成物の特性を損なわない限り、光学設計を行う上で、必要に応じて紫外線散乱剤、可視光散乱剤、赤外線散乱剤などの光散乱剤や光拡散剤、ベンズイミダゾール、ベンズインドール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ロダニン、シアニン、メロシアニン、ローダシアニン、スチリル、ベーススチリル、オキソノールなどの誘導体や、微細無機粒子などの赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、増感色素、蛍光増白剤等を添加することができる。
【0097】
<混合方法>
環状オレフィン系開環重合体(A)、フェノール系酸化防止剤(B)、耐光安定剤(C)、光波長吸収剤(D)、並びに亜燐酸系熱安定剤(E)の混合方法は、汎用の樹脂やエラストマーで使用される公知の混合方法が用いることが出来る。例えば、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダー、エクストルーダーなどを用い加熱混合方法、有機溶媒に溶解攪拌して混合する溶液混合法を用いることが出来る。また、環状オレフィン系開環共重合体(A)製造時の重合終了後の重合体溶液へ添加攪拌することで混合することも出来る。
【0098】
各成分を混練りすることにより得られる。加熱混合を行う場合の混練り温度は、好ましくは100〜350℃、さらに好ましくは150〜300℃である。また、各成分を混練りするに際しては、各成分を一括して混練りしてもよく、数回に分けて添加混練りしてもよい。混練りは、押し出し機を用い多段添加式で混練りしてもよく、溶液混合の場合は、環状オレフィン系開環重合体(A)、フェノール系酸化防止剤(B)、耐光安定剤(C)、特定光波長吸収剤(D)、並びに亜燐酸系熱安定剤(E)が溶解する有機溶媒であればよく、例えば、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素系の有機溶媒、塩化メチレン、塩化エチレン、四塩化炭素などのハロゲン系有機溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶媒を用いることが出来る。また、1種、または2種以上の混合方法を用いても良い。
【0099】
<成形方法>
掛かる光学用熱可塑性樹脂組成物の成形方法としては、樹脂やエラストマーで使用される公知の成形方法を用いることが出来、例えば、過熱プレス成形、一軸押出成形、二軸押出成形、Tダイ押出成形、異形押出成形、多層押出成形、溶融キャスト成形、カレンダー成形、ロール成形、ロールプレス成形、吹き込み成形、インフレーション成形、スプレーアップ成形、パウダースラッシュ成形、フラッシュ成形、射出成形、射出圧縮成形、真空射出成形、溶融キャスト成形などの加熱成形、溶液注入成形、溶液キャスト成形などが挙げられる。
【0100】
<二次加工>
掛かる光学用熱可塑性樹脂組成物の成形品は、樹脂やエラストマーで使用される公知の二次加工を用いることが出来、例えば、一軸延伸加工、二軸延伸加工、切削加工、打抜加工、貼合加工、ボール加工、加熱プレス加工、ラミネート加工、溶接加工、磁性加工、二次プレス加工、スタンプ加工、絞加工、折曲加工などが使用できる。
【0101】
<成形品の表面処理>
本光学用熱可塑性樹脂組成物の成形品は、樹脂やエラストマーで使用される公知の表面処理を行うことが出来、例えば、コロナ処理、低温プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、グロー放電処理などの放電処理、イトロ処理、火炎処理、イトロ処理、超音波処理、レーザーアブレージョン処理、サンドブラスト処理、薬液腐食処理、バフ処理、プライマー処理、コーティング処理、染色処理、鍍金処理、蒸着処理、印刷処理、スパッタ処理など表面処理を行うことができる。
【0102】
また、目的とする特性を損なうことない限り、鍍金、物理蒸着、化学蒸着、真空蒸着、反応性蒸着、スパッタ蒸着、CDV処理、イオンプレーティング、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理アンチグレア処理、アンチリフレクション処理、腐食処理、サンドブラスト処理、ハードコート処理などの表面処理やディッピングコ−ト、スプレーコート、フローコート、シャワーコート、ロールコート、スピンコート、グラビアコート、マイクログラビアコート、コンマロールコート、メイヤーバーコート、スロットバイコート、エアーナイフコート、リップコート、キスコート、刷毛塗り等を行うことが出来る。
【0103】
<実施例>
<環状オレフィン系開環重合体(A)>
<合成例1>
特定単量体として8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10 ]−3−ドデセン(単量体1−a)100部、分子量調節剤である1−ヘキセン 3.6部とトルエン200部を、窒素置換した反応容器に仕込み、80℃に加熱した。これに、重合触媒としてトリエチルアルミニウム((C253Al)1.5モル/lのトルエン溶液 0.17部と、t−ブタノ−ルおよびメタノールで変性した六塩化タングステン(WCl6 )を変性し、t−ブタノールとメタノールおよびタングステンのモル比が0.35:0.3:1とされたWCl6 溶液(濃度0.05モル/l)1.0部を加え、80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合反応させて重合体溶液(A−1)を得た。この重合反応における重合転化率は97%であった。
【0104】
得られた重合体溶液(A−1)の4000部をオートクレーブに入れ、これの重合体溶液(A−1)にRuHCl(CO)[P(C6533を0.48部加え、水素ガス圧を10MPa、反応温度165℃の条件で3時間加熱攪拌して水素添加反応を行った。
【0105】
得られた反応溶液を冷却した後、水素ガスを放圧し、この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収した。回収した凝固物を乾燥して、水素添加重合体(A−1)を得た。
【0106】
このようにして得られた水素添加重合体(A−1)を400MHz 1H−NMRを用いて水素添加率を測定したところ、99.9%であった。
得られた重合体について、30℃のクロロホルム中で測定した固有粘度(ηinh)は0.85dl/gであった。
【0107】
この水素添加重合体をDSC法にて、ガラス転移温度(Tg)を測定したところ168℃であった。また、GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン)により、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定したところ、数平均分子量(Mn)は54500、重量平均分子量(Mw)は158000、分子量分布(Mw/Mn)は2.90であった。
【0108】
<合成例2>
特定単量体として8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10 ]−3−ドデセン(単量体1−a)225部と、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(単量体1−b)25部と、分子量調整剤として1−ヘキセン18部と、トルエン750部とを窒素置換した反応容器に仕込み、60℃に加熱した。これに、重合触媒としてトリエチルアルミニウム((C253Al)1.5モル/lのトルエン溶液0.62部と、t−ブタノールおよびメタノールで変性した六塩化タングステン(WCl6)を変性し、t−ブタノールとメタノールおよびタングステンのモル比が0.35:0.3:1とされたWCl6 溶液(濃度0.05モル/l)3.7部を加え、80℃で3時間加熱攪拌することにより開環共重合反応させて開環共重合体溶液(A−2)を得た。この重合反応における重合転化率は97%であった。
【0109】
得られた開環共重合体溶液4000部をオートクレーブに入れ、この共重合体溶液に(A−1)にRuHCl(CO)[P(C6533を0.48部加え、水素ガス圧10MPa、反応温度165℃の条件下で3時間加熱攪拌して水素添加反応を行った。
【0110】
得られた反応溶液を冷却した後、水素ガスを放圧し、この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収した。回収した凝固物を乾燥して、水素添加重合体(A−2)を得た。
【0111】
このようにして得られた水素添加共重合体(A−2)を400MHz 1H−NMRを用いて水素添加率を測定したところ、99.9%であった。
また、400MHz 1 H−NMRを用いてビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(単量体1−b)に起因する構造単位の割合を測定したところ、10.2%であった。
【0112】
得られた共重合体について、30℃のクロロホルム中で測定した固有粘度(ηinh )は0.67dl/gであった。
この水素添加共重合体をDSC法にて、ガラス転移温度(Tg)を測定したところ130℃であった。また、GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン)により、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定したところ、数平均分子量(Mn)は39000、重量平均分子量(Mw)は116000、分子量分布(Mw/Mn)は2.97であった。
【0113】
<合成例3>
特定単量体として8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10 ]−3−ドデセン(単量体1−a)71部と、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(単量体1−b)1部、およびトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(単量体2−a)15質量部と分子量調節剤としてへキセン18部、トルエン 200質量部とともに、窒素置換した反応容器に仕込み、100℃に加熱した。これに、トリエチルアルミニウム 0.005部、メタノール: フェニルホスホン酸ジクロリド(PhPOCl2):六塩化タングステン(WCl6)=103:630:427 質量比のメタノール変性した六塩化タングステン0.005部を加えて1分反応させ、次いで、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(単量体2−a)10部とビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(単量体1−b)3部を5分で追加添加して、さらに45分反応させた。次いで、得られた共重合体の溶液をオートクレーブに入れ、さらにトルエンを200部加えた。次に、反応調整剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを1部と水素添加触媒であるRuHCl(CO)[P(C6533を0.006質量部添加し、155℃まで過熱した後、水素ガスを反応器へ投入し、水素ガス圧を10MPaとした。その後、圧力を10MPaに保ったまま、165℃、3時間の反応を行った。反応終了後、トルエン100質量部、蒸留水3質量部、乳酸0.72質量部、過酸化水素0.00214質量部を加え60℃で30分加熱した。その後、メタノール200質量部を加え60℃で30分加熱し、これを25℃まで冷却すると2層に分離した。上澄み液500質量部を除去し、再びトルエン350質量部、水3質量部を加え60℃で30分加熱し、その後メタノール240質量部を加え60℃で30分加熱して25℃まで冷却し、2層に分離した。上澄み液500質量部を除去し、さらにトルエン350質量部、水3質量部を加え60℃で30分加熱し、その後メタノール240質量部を加え60℃で30分加熱して25℃まで冷却し、2層に分離した。最後に上澄み液500質量部を除去後、残ったポリマー溶液を、2.0μm、1.0μm、0.2μmのそれぞれのフィルターを用いて濾過した。その後、ポリマー固形分量を55%まで濃縮し、250℃、4torr、滞留時間1時間で脱溶媒処理を行い、10μmのポリマーフィルターを通過させて、共重合体(A−3)を得た。このようにして得られた水素添加共重合体(A−3)を400MHz1H−NMRにより測定した水素添加率は99.9%であった。また、400MHz 1 H−NMRを用いて各単量体に起因する構造単位の割合を測定したところ、8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12.5 .17. 10 ]−3−ドデセン(単量体1−a)起因の重合体/ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(単量体1−b)起因の重合体/トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(単量体2−a)起因の重合体=69.77/4.23/26.01重量%であった。DSC法により測定したTgは131℃、GPC法により測定したポリスチレン換算によるMnは16000、Mwは61000およびMw/Mnは3.81、30℃におけるクロロホルム中での固有粘度(ηinh )は0.52dl/gであった。
前記、ガラス転移温度、水素添加率、重量平均分子量、分子量分布、並びに相対粘度は、下記方法にて評価を行なった。
【0114】
ガラス転移温度(Tg
セイコーインスツルメンツ社製DSC6200を用いて、昇温速度を毎分20℃、窒素気流下で測定を行った。Tgは、微分示差走査熱量の最大ピーク温度(A点)及び最大ピーク温度より−20℃の温度(B点)を示差走査熱量曲線上にプロットし、B点を起点とするベースライン上の接線とA点を起点とする接線との交点として求めた。
【0115】
水素添加率
核磁気共鳴分光計(NMR)はBruker社製AVANCE500を用い、測定溶媒はd−クロロホルムで1H−NMRを測定した。5.1〜5.8ppmのビニレン基、3.7ppmのメトキシ基、0.6〜2.8ppmの脂肪族プロトンの積分値より、単量体の組成を算出後、水素添加率を算出した。
【0116】
重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー(株)製HLC−8220GPC、カラム:東ソー(株)製ガードカラムHXL−H、TSK gel G7000HXL、TSKgel GMHXL2本、TSK gel G2000HXLを順次連結、溶媒:テトラヒドロフラン、流速:1mL/min、サンプル濃度:0.7〜0.8質量%、注入量:70μL、測定温度:40℃とし、検出器:RI(40℃)、標準物質:東ソー(株)製TSKスタンダードポリスチレン)を用い、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を測定した。なお、前記Mnは数平均分子量である。
【0117】
対数粘度
ウベローデ型粘度計を用いて、環状オレフィン樹脂についてはクロロホルム中(試料濃度:0.5g/dL)、30℃で測定した。可溶性ポリイミドについては、N−メチル−2−ピロリドン中(試料濃度:0.5g/dL)、30℃で測定した。
【0118】
特定フェノール系酸化防止剤(B)として、
(B-1)(株)アデカ製ADEKSTAB AO60:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、分子量1178、200℃での加熱減量0.001質量%以下。
(B-2)チバ・ジャパン(株)製IRGANOX1076:オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、分子量531、200℃での加熱減量0.4質量%。
【0119】
特定耐光安定剤(C)として、
(C-1)チバ・ジャパン(株)製CHIMASSORB 944LD: ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、分子量2000〜3100、200℃での加熱減量0.001質量%。
(C-2)チバ・ジャパン(株)CHIMASSORB 119FL:N,N’,N”,N”’−テトラキス(4,6−ビス(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン/コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン=90/10、分子量2286、200℃での加熱減量0.7質量%。
【0120】
特定光波長吸収剤(D)として、
(D-1)クラリアン製Hostavin PR−25:ジメチル(p−メトキシベンジリデン)マロネート、分子量250.25、200℃での加熱減量0.14質量%、最大吸収波長310nm、400nmでの吸収率0.5%。
(D-2)クラリアント製Hostavin B−CAP:テトラ−エチル−2,2’−(1,4−フェニレン−ジメチリデン)−ビスマロネート、分子量:428.44、200℃での加熱減量1.6質量%、最大吸収波長320nm、400nmの吸収率0.5%。
(D-3)クラリアント製Hostavin VSU:2−エチル−2’−エトキシ−オキサアニリド、分子量312.37、200での加熱減量0.1質量%以下、最大吸収波長282nm、400nmでの吸収率0.7%。
【0121】
特定亜燐酸系熱安定剤(E)として、
(E-1)チバ・ジャパン(株)製IRGANOX 168:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、分子量647、200℃での加熱減量0.4質量%。
(E-2)チバ・ジャパン(株)製IRGANOX 12:2,2’,2”−ニトリロ[トリエチル−トリス(3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル)]ホスファイト、分子量1463、200℃での加熱減量0.1質量%以下。
(E-3)(株)アデカ製ADEKSTAB 3010:トリイソデシルホスファイト、分子量503、200℃での加熱減量1.4質量%。
【0122】
<比較例>
光波長吸収剤(D’)として、
(D'- 4)住友精化(株)製TBO:2,5−ビス(5−tert−ブチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、分子量431、200℃での加熱減量0.1質量%以下、最大吸収波長376nm、400nmでの吸収率59%。
【0123】
<評価サンプルの調整>
環状オレフィン系開環共重合体(A)2gに対して、特定フェノール系酸化防止剤(B)、特定耐光安定剤(C)、特定光波長吸収剤(D)、並びに特定亜燐酸系熱安定剤を表1に示す配合比で調合し、塩化メチレン80gに溶解、3時間攪拌後、平滑な基材ガラスに溶液キャストし、室温8時間乾燥、50℃×8時間真空乾燥を行い、フィルム厚み100μm±5μmの評価用サンプルを得た。サンプル中の残留溶媒量は、全て0.01質量%以下であった。
【0124】
<評価方法>
(1)最大吸収波長、並びに吸収率
最大吸収波長は、(株)日立ハイテクノロジーズ製U−3010分光光度計を用い、測定を行った。
(2)吸収率
吸収率は、(株)日立ハイテクノロジーズ製U−3010分光光度計を用い、トルエンに原料を1質量%濃度で溶解したサンプルを用いて測定を行い、トルエン並びにサンプル容器のみでの吸収反射を測定値から除去し、算出した。
【0125】
(3)加熱減量
200℃での加熱減量は、ブルカー・エイエックスエス(株)製の熱重量測定装置TG−DTA2000SRを用い、約10mgの測定サンプルを前記装置専用アルミ製パンに設置し、空気流量=100ml/分、昇温速度=10℃/分の設定条件にて、室温から400℃までの測定をおこない、加熱前の測定サンプルに対する200℃までの加熱減少率を読み取った。
【0126】
(4)耐光性評価
ネオアーク(株)製の温度安定型ペリテェ付LDプロジェクターTC20型に日亜化学工業製の半導体レーザー素子NDHV310APCを組み込み、405±5nmの波長を、単位面積あたり、50mW/mm2の照射を行い、初期の透過エネルギー量と1000時間後の透過エネルギー量から、低下率を算出した。
○:低下率が5%未満
×:低下率が5%以上
また、5%低下までの時間とは、前記の低下率が5%を超える時間を意味する。
【0127】
(5)全光線透過率
(株)東洋精機製作所製のHAZE−GARD(株)を用い、JIS K7361−1:1997「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験法:第1部シングルビーム法」に準拠し、測定を行った。
【0128】
(6)405nmでの透過率
(株)東洋精機製作所製のHAZE−GARD(株)を用い、405nm波長での透過率を測定した。
【0129】
<評価結果>
【0130】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィン系開環重合体(A)100重量部に対して、
フェノール系酸化防止剤(B)0.1〜3重量部と、
耐光安定剤(C)0.1〜5重量部と、
下記式(1)、(2)、(3)、および(4)から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、390nm以上800nm以下の波長の吸収率が10%以下、且つ200nm以上390nm未満の波長内に最大吸収波長があり、200℃での加熱減量が5質量%以下の化合物である光波長吸収剤(D)0.01〜1重量部と、
亜燐酸系熱安定剤(E)0.1〜9重量部と
を含むことを特徴とする光学用熱可塑性樹脂組成物。
【化1】

[式(1)中のR1〜R6は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜15のアルキル基 、またはアルキル基の置換基を有してもよいアミノ基である。]
【化2】

[式(2)中のR7は、炭素数1〜15のアルキル基、または炭素数1〜15のアルコキシル基である。R8、R9は、炭素数1〜15のアルキル基である。]
【化3】

[式(3)中のR10〜R13は、炭素数1〜15のアルキル基である。]
【化4】

[式(4)中のR14、R15は、炭素数1〜15のアルキル基、またはアルコキシ基である。]
【請求項2】
前記フェノール系酸化防止剤(B)が、下記式(8)で表され、且つ200℃での加熱減量が1質量%以下の化合物である請求項1に記載の光学用熱可塑性樹脂組成物。
【化5】

[式(8)中のR30は、n価の脂肪族炭化水素基である。式(8)中のnは、1〜4の整数である。]
【請求項3】
前記耐光安定剤(C)が、下記式(9)で表されるテトラメチルピペリジンの単位構造、および下記式(10)で表される1,3,5−トリアジンの単位構造をそれぞれの1以上有し、且つ分子量が1000以上で、200℃での加熱減量が1質量%以下の化合物である請求項1または2に記載の光学用熱可塑性樹脂組成物。
【化6】

【化7】

[式(9)中のMeはメチル基であり、R31、R32は、水素、もしくは、炭素、窒素、酸素、アルキレン基などの脂肪族炭化水素基、アミノ基、アミド基、イミノ基、アゾ基、カルボニル基などの連結基、もしくは式(9)の単位構造と式(10)の単位構造が連結基を介さず、直接結合していても良い。]
【請求項4】
前記亜燐酸系熱安定剤(E)が、下記式(11)で示される亜燐酸エステルであり、分子量が600以上で、200℃での加熱減量が5質量%以下の化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の光学用熱可塑性樹脂組成物。
【化8】

[式(11)中のR33〜R35は、水素、水酸基、アリール基、アリル基、アルキル基、シクロアルキル基、ナフチル基、ビニル基、フェニル基、ベンジル基、ハロゲン基、アシル基、アセチル基、アルデヒド基、カルボキシル基、アジド−アジ基、アジ基、アミノ基、イソシアネート基、シアノ基、チオイソシアネート基、ニトロ基、ニトロソ基、硝酸エステル、ヒドロキシ基、スルホ基、イミノ基、ケトン基、チオキシ基などの極性基、メルカプト基、チオール基、アルキレン基、エステル結合、カルボニル基、ケテン、チオエステル、ウレタン結合、アゾ基、イソニトリル基、オキシム結合、ジイミド結合、エーテル結合、ジスルフィド結合、スルフィド結合、アミド結合、チオアミド結合、イミド結合、リン酸エステル、スルホニル結合、アレン、アミジン結合、チオ尿素などの連結基であり、これらの極性基や連結基を1種、或いは2種以上含んでもよく、複数の連結基が結合しても良い。また、式(11)で示される構造単位が1個でも複数個含んでもよい。]
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の光学用熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品。

【公開番号】特開2011−195623(P2011−195623A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61077(P2010−61077)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】