説明

光学用粘着シート

【課題】生産性に優れ、光学部材の貼り合わせにおいて、オートクレーブ処理後の気泡の残存やディレイバブルの発生が抑制された光学用粘着シートを提供する。
【解決手段】アクリル系粘着剤層を有する粘着シートであって、前記アクリル系粘着剤層が活性エネルギー線重合により形成され、前記アクリル系粘着剤層のゲル分率が80重量%以下であり、かつ前記アクリル系粘着剤層のゾル分中の分子量が5万以下の成分の含有量が20重量%以下であることを特徴する光学用粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用粘着シートに関する。より詳しくは、光学部材の貼り合わせや光学製品の製造等に用いられる光学用粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置や、このような表示装置と組み合わせて用いられるタッチパネルなどの入力装置が広く用いられるようになってきた。これらの表示装置や入力装置の製造等においては、光学部材を貼り合わせる用途に透明な粘着シート(粘着テープ)が使用されている。例えば、タッチパネルと各種表示装置や光学部材(保護板等)の貼り合わせには、透明な粘着シートが使用されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
粘着シートを用いて光学部材を貼り合わせる際には、通常、光学部材と上記粘着シートとの界面に気泡が混入してしまう。一般に、上記気泡は、粘着シートを用いて光学部材を貼り合わせた後、オートクレーブ中において加圧処理(「オートクレーブ処理」と称する場合がある)を施すことによって、微細に散らされ除去されている。
【0004】
しかしながら、このオートクレーブ処理を施した後にも、なお気泡が残存してしまうという問題が生じていた。また、オートクレーブ処理によって気泡を除去した場合であっても、経時で粘着シートと光学部材の界面に再び気泡(いわゆるディレイバブル)が現れるという問題も生じていた。このような問題は、特に、剛性が高く、たわみにくいガラス製の光学部材同士を貼り合わせる際に顕著となる傾向があった。上述の気泡の残存やディレイバブルの発生は、光学部材や該光学部材を用いた製品の生産において、歩留まりを低下させる原因となっていた。なお、本明細書では、オートクレーブ処理後に経時で再度現れる気泡を、特に「ディレイバブル」と称する場合がある。
【0005】
機能性フィルムを表示装置に接着固定するための粘着シートであって、高温ないし高温多湿下といった過酷な環境下に長時間晒されたときでも、接着界面において浮きや気泡などが発生することのない感圧性接着シート類(粘着シート類)が知られている(特許文献4参照)。しかしながら、上記粘着シート類は、粘着剤層を構成するアクリル系ポリマーをいったん得た後、該アクリル系ポリマーから低分子量成分を除去するための操作を施す必要があるため、製造工程が煩雑であり、生産性低下の問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−238915号公報
【特許文献2】特開2003−342542号公報
【特許文献3】特開2004−231723号公報
【特許文献4】特許第3819661号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、生産性に優れ、光学部材の貼り合わせにおいて、オートクレーブ処理後の気泡の残存(気泡残り)やディレイバブルの発生が抑制された光学用粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、アクリル系粘着剤層を有する粘着シートにおいて、上記アクリル系粘着剤層を活性エネルギー線重合により形成し、さらに、上記アクリル系粘着剤層のゲル分率、及びゾル分中の分子量が5万以下の成分の含有量を特定範囲に制御することにより、生産性に優れ、光学部材の貼り合わせにおいて、オートクレーブ処理後の気泡の残存やディレイバブルの発生が抑制された光学用粘着シートが得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、アクリル系粘着剤層を有する粘着シートであって、前記アクリル系粘着剤層が活性エネルギー線重合により形成され、前記アクリル系粘着剤層のゲル分率が80重量%以下であり、かつ前記アクリル系粘着剤層のゾル分中の分子量が5万以下の成分の含有量が20重量%以下であることを特徴とする光学用粘着シートを提供する。
【0010】
さらに、前記の光学用粘着シートにおいては、前記アクリル系粘着剤層が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルを必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤層であることが好ましい。
【0011】
さらに、前記の光学用粘着シートは、全光線透過率が87%以上であり、ヘイズが3.0%以下であることが好ましい。
【0012】
さらに、前記の光学用粘着シートは、前記アクリル系粘着剤層のみからなることが好ましい。
【0013】
さらに、前記の光学用粘着シートは、総厚みが25〜500μmであることが好ましい。
【0014】
さらに、前記の光学用粘着シートは、光学部材貼り合わせ用粘着シートであることが好ましい。
【0015】
さらに、前記の光学用粘着シートにおいては、前記光学部材がガラス製の光学部材であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光学用粘着シートは、上記構成を有しているので、該粘着シートを用いて光学部材を貼り合わせ、オートクレーブ処理を施した後には、上記粘着シートと光学部材の界面において気泡が残存しにくい。また、オートクレーブ処理後、経時(例えば、室温で24時間放置後や、85℃で24時間放置後など)でのディレイバブルの発生も抑制される。また、本発明の光学用粘着シートは、低分子量成分の除去操作等の煩雑な工程を経ることなく製造することができるため、生産性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の光学用粘着シート(単に「本発明の粘着シート」と称する場合がある)は、活性エネルギー線重合により形成され、ゲル分率が80重量%以下であり、ゾル分中の分子量が5万以下の成分の含有量が20重量%以下であるアクリル系粘着剤層(「本発明の粘着剤層」と称する場合がある)を少なくとも有する。
【0018】
本発明の粘着シートは、シートの両面が粘着剤層表面(粘着面)となっている両面粘着シートであってもよいし、シートの片面のみが粘着剤層表面(粘着面)となっている片面粘着シートであってもよい。中でも、二つの部材同士を貼り合わせる観点からは、両面粘着シートであることが好ましい。なお、本発明において、「粘着シート」という場合には、テープ状のもの、即ち、「粘着テープ」も含まれるものとする。また、粘着シートの「粘着剤層表面」を「粘着面」と称する場合がある。
【0019】
本発明の粘着シートは、基材(基材層)を有しない、いわゆる「基材レスタイプ」の粘着シート(「基材レス粘着シート」と称する場合がある)であってもよいし、基材を有するタイプの粘着シートであってもよい。上記基材レス粘着シートとしては、例えば、本発明の粘着剤層のみからなる両面粘着シートや、本発明の粘着剤層と本発明の粘着剤層以外の粘着剤層(「他の粘着剤層」と称する場合がある)からなる両面粘着シート等が挙げられる。基材を有するタイプの粘着シートとしては、基材の少なくとも片面側に本発明の粘着剤層を有していればよい。中でも、粘着シートの薄膜化、透明性などの光学物性向上の観点からは、基材レス粘着シート(基材レス両面粘着シート)が好ましく、本発明の粘着剤層のみからなる基材レス両面粘着シートが特に好ましい。なお、上記の「基材(基材層)」には、粘着シートの使用(貼付)時に剥離されるセパレータ(剥離ライナー)は含まない。
【0020】
[本発明の粘着剤層]
本発明の粘着剤層のゲル分率は、80重量%(%)以下(例えば、30〜80重量%)であり、好ましくは50〜80重量%、より好ましくは55〜75重量%である。上記ゲル分率(溶剤不溶成分の割合)は、酢酸エチル不溶分として求めることができ、具体的には、粘着剤層を酢酸エチル中に23℃で7日間浸漬した後の不溶成分の、浸漬前の粘着剤層に対する重量分率として求められる。
【0021】
上記ゲル分率は、具体的には、例えば、以下の「ゲル分率の測定方法」により算出される値である。
(ゲル分率の測定方法)
本発明の粘着シートから本発明の粘着剤層:約0.1gを採取し、平均孔径0.2μmの多孔質テトラフルオロエチレンシート(商品名「NTF1122」、日東電工(株)製)に包んだ後、凧糸で縛り、その際の重量を測定し、該重量を浸漬前重量とする。なお、該浸漬前重量は、本発明の粘着剤層(上記で採取した粘着剤層)と、テトラフルオロエチレンシートと、凧糸との総重量である。また、テトラフルオロエチレンシートと凧糸との合計重量も測定しておき、該重量を包袋重量とする。
次に、上記粘着剤層をテトラフルオロエチレンシートで包み凧糸で縛ったもの(「サンプル」と称する)を、酢酸エチルで満たした50mL容器に入れ、23℃にて7日間静置する。その後、容器からサンプル(酢酸エチル処理後)を取り出して、アルミニウム製カップに移し、130℃で2時間、乾燥機中で乾燥して酢酸エチルを除去した後、重量を測定し、該重量を浸漬後重量とする。
そして、下記の式からゲル分率を算出する。
ゲル分率(重量%)=(A−B)/(C−B) × 100
(上記式において、Aは浸漬後重量であり、Bは包袋重量であり、Cは浸漬前重量である。)
【0022】
本発明の粘着剤層のゲル分率を80重量%以下とすることによって、オートクレーブ処理後の粘着シートと光学部材の界面における気泡の残存が抑制される。これは、主に、ゲル分率を80重量%以下とすることにより、粘着剤層の柔軟性が向上し、光学部材に対する貼り合わせが容易となって、貼り合わせ時の粘着シートと光学部材の界面へ気泡が混入しにくくなることに起因する効果である。なお、ゲル分率を80重量%以下とすることによって、粘着剤層の応力緩和性が向上し、気泡が抜けやすくなることに起因して、オートクレーブ処理後に気泡が残存しにくくなるという効果も得られる。
【0023】
なお、上記ゲル分率は、例えば、多官能性モノマーの使用量(含有量)等により制御することができる。
【0024】
本発明の粘着剤層の、ゾル分中の分子量が5万以下の成分の含有量(割合)は、ゾル分全量(100重量%)に対し、20重量%以下(例えば、3〜20重量%)であり、好ましくは3〜17重量%、より好ましくは3〜15重量%である。上記「ゾル分」とは、粘着剤層のクロロホルム抽出における可溶成分を表す。上記「ゾル分中の分子量が5万以下の成分の含有量」は、例えば、GPC測定(GPC法による分子量測定)により測定することができる。より詳しくは、例えば、以下の方法により測定される。
(ゾル分中の分子量が5万以下の成分の含有量の測定方法)
本発明の粘着シートから本発明の粘着剤層:約0.1gを採取し、平均孔径0.2μmの多孔質テトラフルオロエチレンシート(商品名「NTF1122」、日東電工(株)製)に包んだ後、凧糸で縛る。
次に、上記粘着剤層をテトラフルオロエチレンシートで包み凧糸で縛ったものを、クロロホルムで満たした50mL容器に入れ、23℃にて7日間静置する。その後、容器中のクロロホルム(抽出されたゾル分を含む)を取り出して、減圧乾燥させて、クロロホルムを揮発させ、ゾル分を得る。
上記ゾル分中の分子量が5万以下の成分の含有量を、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定により算出する。具体的には、例えば、上記ゾル分をテトラヒドロフラン(THF)(溶離液)に溶解させ、上記ゾル分の濃度が約2.0g/Lの溶液を調製し、一晩放置した後、上記溶液を0.45μmメンブレンフィルターでろ過し、ろ液について下記の測定装置、測定条件にてGPC測定を行うことによって、算出できる。
GPC測定装置
測定装置:商品名「HLC−8120GPC」(東ソー(株)製)
GPCの測定条件
カラム:商品名「TSKgel,SuperAWM−H+superAW4000+superAW2500」(東ソー(株)製)
カラムサイズ:各6.0mmI.D.×150mm
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.4mL/min
検出器:示差屈折計(RI)
カラム温度(測定温度):40℃
注入量:20μL
標準:ポリスチレン
【0025】
なお、粘着シートの粘着剤層の構成単位(アクリル系ポリマーを構成するモノマー単位)としてカルボキシル基含有モノマー(例えば、アクリル酸)を含む場合には、以下の方法にて試料(ゾル分)のメチル化を行い、メチル化したゾル分について上記GPC測定を行うものとする。
(ゾル分のメチル化)
上記ゾル分をクロロホルムに溶解させ、2.0g/Lのクロロホルム溶液を調製した後、これを一晩攪拌する。次いで、上記クロロホルム溶液10mLに、メタノール0.5mL、及び2.0Mトリメチルシリルジアゾメタン(ヘキサン溶液)0.5mLを加えて軽く振り、室温で半日放置する。その後、減圧乾燥によりクロロホルムを揮発させて、メチル化したゾル分を得る。
【0026】
本発明の粘着シートにおいては、本発明の粘着剤層のゾル分中の分子量が5万以下の成分の含有量を20重量%以下とすることにより、ディレイバブルの発生が抑制される。上記ディレイバブルは、貼り合わせの際に粘着シートと光学部材の界面に混入した気泡が、いったんオートクレーブ処理によって微細に散らされた後、時間の経過とともに再度凝集(再凝集)することによって生じるものと推測される。粘着剤層のゾル分中の分子量が5万以下の成分が多い場合、即ち、低分子量成分の量が多い場合には、粘着剤層中の低分子量成分の「引き抜き」(粘着剤層からの低分子量成分の脱離)が起こりやすい。このような場合には、粘着剤層と光学部材の界面に存在する気泡によって、光学部材から粘着剤層が持ち上げられやすく、気泡の再凝集が起こりやすくなって、ディレイバブルの生成が促進されるものと考えられる。これに対し、本発明においては、ゾル分中の分子量が5万以下の成分の含有量を20重量%以下に制御することによって、上述の低分子量成分の引き抜きが抑制され、気泡の再凝集が抑制された結果、ディレイバブルの発生が抑制されたものと推測される。
【0027】
なお、上記ゾル分中の分子量が5万以下の成分の含有量は、例えば、光重合開始剤の使用量(特に、後述のプレポリマー組成物の形成時の使用量)、後述の粘着剤組成物から粘着剤層を形成する際に照射する活性エネルギー線(特に、紫外線)の照度等により制御することができる。
【0028】
本発明の粘着剤層は、アクリル系ポリマーを必須成分として含むアクリル系粘着剤層である。本発明の粘着剤層(100重量%)におけるアクリル系ポリマーの含有量は、特に限定されないが、臭気の観点から、96〜100重量%が好ましく、より好ましくは98〜100重量%である。
【0029】
上記アクリル系ポリマーは、特に限定されないが、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルを必須のモノマー成分(単量体成分)として構成されたアクリル系ポリマーであることが好ましい。なお、上記「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」(「アクリル」及び「メタクリル」のうち、いずれか一方又は両方)を表し、他も同様である。
【0030】
また、上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分としては、さらに、極性基含有モノマーや多官能性モノマーを含有することが好ましい。さらに、上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分として、上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、極性基含有モノマー、及び多官能性モノマー以外のモノマー(「その他の共重合性モノマー」と称する場合がある)を含有していてもよい。
【0031】
上記直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(単に「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」と称する場合がある)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル((メタ)アクリル酸n−ブチル)、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどのアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、低Tgの観点で、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)、アクリル酸イソオクチル(i−OA)、アクリル酸ブチル(BA)が好ましい。
【0032】
上記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4−エトキシブチルなどが挙げられる。上記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、アクリル酸アルコキシアルキルエステルが好ましい。
【0033】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの含有量は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、50〜98重量%が好ましく、より好ましくは50〜95重量%である。含有量を50重量%以上とすることにより、応力緩和性が向上し、オートクレーブ処理後の気泡の残存やディレイバブルの発生が抑制される。含有量を98重量%以上とすると、接着力が低くなりディレイバブルの発生が起こりやすくなる場合がある。なお、モノマー成分として(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの両方が用いられている場合は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量と(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの含有量の合計量(合計含有量)が上記の範囲を満たせばよい。
【0034】
上記極性基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー(無水マレイン酸などの酸無水物基含有モノマーも含むものとする);(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、ビニルアルコール、アリルアルコールなどのヒドロキシル基(水酸基)含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのエポキシ基含有モノマー;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー;N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリンの他、ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール等の複素環含有ビニル系モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェートなどのリン酸基含有モノマー;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有モノマー;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマーなどが挙げられる。上記極性基含有モノマーは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、ガラスへの粘着特性の観点で、カルボキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、水酸基含有モノマーが好ましく、より好ましくはアクリル酸(AA)、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)、アクリル酸4−ヒドロキシブチル(4HBA)、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)である。
【0035】
上記極性基含有モノマーの含有量は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、2〜50重量%が好ましく、より好ましくは5〜50重量%である。含有量を2重量%以上とすることにより、粘着力が高くなり、ディレイバブルの発生が抑制される。一方、含有量を50重量%以下とすることにより、応力緩和性が向上し、オートクレーブ処理後の気泡の残存やディレイバブルの発生が抑制される。
【0036】
上記多官能性モノマーとは、一分子中に2以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーをいう。上記エチレン性不飽和基としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ビニルエーテル基(ビニルオキシ基)、アリルエーテル基(アリルオキシ基)などのラジカル重合性官能基が挙げられる。なお、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、極性基含有モノマー、及びその他の共重合性モノマーは、一分子中にエチレン性不飽和基を1つのみ有するモノマー(単官能性モノマー)である。
【0037】
上記多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。上記多官能性モノマーは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、応力緩和性の観点から、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)が好ましい。
【0038】
上記多官能性モノマーの含有量(使用量)は、特に限定されないが、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、0.01〜0.3重量%が好ましく、より好ましくは0.03〜0.15重量%である。含有量を0.01重量%未満とすると、架橋が進まず、低粘着力となりディレイバブルが発生しやすくなる場合がある。含有量を0.3重量%以下とすることにより、応力緩和性が向上し、気泡の残存やディレイバブルの発生が抑制される。
【0039】
また、上記その他の共重合性モノマーとしては、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルやフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどの、上述の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、極性基含有モノマー、及び多官能性モノマー以外の(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン類又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニルなどが挙げられる。
【0040】
本発明の粘着剤層は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。これにより、ガラスに対する接着性が向上し、特に、ガラスを貼り合わせる際にディレイバブルの発生が抑制される。なお、上記「シランカップリング剤を含有する」には、シランカップリング剤そのものを含有する場合のほか、シランカップリング剤が粘着剤層の構成成分(例えば、アクリル系ポリマー)と結合した状態で含まれる場合も含むものとする。上記シランカップリング剤としては、特に限定されないが、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−アミノプロピルトリメトキシシランなどが好ましく例示される。中でも、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。なお、上記シランカップリング剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記シランカップリング剤としては、例えば、商品名「KBM−403」(信越化学工業(株)製)などの市販品を利用することもできる。
【0041】
上記シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、ガラスに対する接着性向上によりディレイバブル発生を抑制する観点で、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量部)に対して、0.01〜1.0重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜0.5重量部である。
【0042】
さらに、本発明の粘着剤層は、必要に応じて、架橋剤(例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤など)、架橋促進剤、粘着付与樹脂(例えば、ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノールなど)、老化防止剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤などの公知の添加剤を、本発明の特性を損なわない範囲で含有していてもよい。
【0043】
本発明の粘着剤層の特に好ましい具体的構成としては、例えば、下記の(1)や(2)の粘着剤層などが挙げられる。ただし、これに限定されるものではない。
(1)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)を84〜94重量%、アクリル酸(AA)を5〜15重量%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を0.03〜0.15重量%含有するモノマー成分から構成されたアクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤層。
(2)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、アクリル酸イソオクチル(i−OA)84〜94重量%、アクリル酸(AA)5〜15重量%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を0.03〜0.15重量%含有するモノマー成分から構成されたアクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤層。
【0044】
本発明の粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、25〜500μmが好ましく、より好ましくは75〜350μmである。厚さを25μm以上とすることにより、印刷の段差部等の段差を吸収しやすいため、オートクレーブ処理後の気泡残りの発生が抑制される傾向にある。一方、厚さを500μm以下とすることにより、光学用粘着シートとしての優れた外観を保持しやすい。
【0045】
本発明の粘着剤層のヘイズ(JIS K7136に準じる)は、特に限定されないが、3.0%以下が好ましく、より好ましくは1.5%以下である。ヘイズを3.0%以下とすることにより、貼付した光学製品や光学部材の透明性や外観が良好となる。なお、上記ヘイズは、例えば、スライドガラス(例えば、全光線透過率91.8%、ヘイズ0.4%のもの)に本発明の粘着剤層を貼り合わせ、ヘイズメータ((株)村上色彩技術研究所製、商品名「HM−150」)を用いて測定することができる。
【0046】
本発明の粘着剤層の可視光波長領域における全光線透過率(JIS K7361−1に準じる)は、特に限定されないが、87%以上が好ましく、より好ましくは89%以上である。全光線透過率を87%以上とすることにより、貼付した光学製品や光学部材の透明性や外観が良好となる。なお、上記全光線透過率は、例えば、スライドガラス(例えば、全光線透過率91.8%、ヘイズ0.4%のもの)に本発明の粘着剤層を貼り合わせ、ヘイズメータ((株)村上色彩技術研究所製、商品名「HM−150」)を用いて測定することができる。
【0047】
[他の粘着剤層]
本発明の粘着シートは、上述のように、他の粘着剤層(本発明の粘着剤層以外の粘着剤層)を有していてもよい。上記他の粘着剤層としては、特に限定されないが、例えば、ウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤などの公知の粘着剤から形成された公知慣用の粘着剤層が挙げられる。上記粘着剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
[基材]
本発明の粘着シートは、上述のように、基材を有していてもよい(即ち、基材を有するタイプの粘着シートであってもよい)。上記基材としては、特に限定されないが、例えば、プラスチックフィルム、反射防止(AR)フィルム、偏光板、位相差板などの各種光学フィルムが挙げられる。上記プラスチックフィルムなどの素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリサルフォン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、商品名「アートン(環状オレフィン系ポリマー;JSR製)」、商品名「ゼオノア(環状オレフィン系ポリマー;日本ゼオン製)」等の環状オレフィン系ポリマーなどのプラスチック材料が挙げられる。なお、これらのプラスチック材料は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、上記の「基材」とは、粘着シートを被着体(光学部材等)に貼付する際には、粘着剤層とともに被着体に貼付される部分である。粘着シートの使用時(貼付時)に剥離されるセパレータ(剥離ライナー)は「基材」には含まない。
【0049】
中でも、上記基材は、透明であることが好ましい。上記基材の可視光波長領域における全光線透過率(JIS K7361−1に準じる)は、特に限定されないが、85%以上が好ましく、より好ましくは88%以上である。また、上記基材のヘイズ(JIS K7136に準じる)は、特に限定されないが、1.5%以下が好ましく、より好ましくは1.0%以下である。上記基材としては、例えば、PETフィルムや、商品名「アートン」、商品名「ゼオノア」などの無配向フィルムなどが挙げられる。
【0050】
上記基材の厚さは、特に限定されないが、12〜75μmが好ましい。なお、上記基材は単層および複層のいずれの形態を有していてもよい。また、上記基材の表面には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理等の物理的処理、下塗り処理等の化学的処理などの公知慣用の表面処理が適宜施されていてもよい。
【0051】
[光学用粘着シート]
本発明の粘着シートは、本発明の粘着剤層を少なくとも有していればよく、特に限定されないが、上述のように、本発明の粘着剤層のみからなる粘着シート(基材レスタイプの両面粘着シート)であることが好ましい。なお、本発明の粘着シートは、本発明の粘着剤層、他の粘着剤層、基材以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、中間層、下塗り層など)を有していてもよい。
【0052】
本発明の粘着シートの粘着面は、使用時までセパレータ(剥離ライナー)により保護されていてもよい。なお、本発明の粘着シートが両面粘着シートである場合、各粘着面は、2枚のセパレータによりそれぞれ保護されていてもよいし、両面が剥離面となっているセパレータ1枚により、ロール状に巻回される形態で保護されていてもよい。セパレータは粘着剤層の保護材として用いられており、被着体に貼付する際に剥がされる。また、本発明の粘着シートが基材レス粘着シートの場合には、セパレータは粘着剤層の支持体としての役割も担う。なお、セパレータは必ずしも設けられていなくてもよい。上記セパレータとしては、慣用の剥離紙などを使用でき、特に限定されないが、例えば、剥離処理層を有する基材、フッ素ポリマーからなる低接着性基材や無極性ポリマーからなる低接着性基材などを用いることができる。上記剥離処理層を有する基材としては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等が挙げられる。上記フッ素ポリマーからなる低接着性基材におけるフッ素系ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。また、上記無極性ポリマーとしては、例えば、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等が挙げられる。なお、セパレータは公知乃至慣用の方法により形成することができる。また、セパレータの厚さ等も特に限定されない。
【0053】
本発明の粘着シートの厚さ(総厚み)は、特に限定されないが、25〜500μmが好ましく、より好ましくは75〜350μmである。厚さを25μm以上とすることにより、印刷段差を吸収しやすいため、オートクレーブ処理後の気泡残りが抑制される傾向にある。一方、厚さを500μm以下とすることにより、光学用粘着シートとしての優れた外観を保持しやすくなる。なお、本発明の粘着シートの厚さには、粘着面上に設けられるセパレータの厚みは含めないものとし、例えば、本発明の粘着シートが両面粘着シートの場合には、一方の粘着面から他方の粘着面までの厚みをいう。
【0054】
本発明の粘着シートのヘイズ(JIS K7136に準じる)は、特に限定されないが、3.0%以下が好ましく、より好ましくは1.5%以下である。ヘイズを3.0%以下とすることにより、貼付した光学部材や光学製品の透明性や外観が良好となる。なお、上記ヘイズは、例えば、粘着シートがセパレータを有する場合にはこれを剥離し、スライドガラス(例えば、全光線透過率91.8%、ヘイズ0.4%のもの)に貼り合わせ、ヘイズメータ((株)村上色彩技術研究所製、商品名「HM−150」)を用いて測定することができる。
【0055】
本発明の粘着シートの可視光波長領域における全光線透過率(JIS K7361−1に準じる)は、特に限定されないが、87%以上が好ましく、より好ましくは89%以上である。全光線透過率を87%以上とすることにより、貼付した光学部材や光学製品の透明性や外観が良好となる。なお、上記全光線透過率は、例えば、粘着シートがセパレータを有する場合にはこれを剥離し、スライドガラス(例えば、全光線透過率91.8%、ヘイズ0.4%のもの)に貼り合わせ、ヘイズメータ((株)村上色彩技術研究所製、商品名「HM−150」)を用いて測定することができる。
【0056】
本発明の粘着シート(本発明の粘着シートの本発明の粘着剤層表面)の、ガラス板に対する23℃における180°引き剥がし粘着力(「粘着力(23℃)」と称する)は、特に限定されないが、5N/20mm以上が好ましく、より好ましくは8N/20mm以上(上限としては、例えば、30N/20mm以下)である。粘着力(23℃)を5N/20mm以上とすることにより、ディレイバブルの発生が抑制される。なお、上記粘着力(23℃)は、23℃において、ガラス板を被着体とする180°剥離試験(JIS Z0237(2000)に準拠、引張速度:300mm/分)を行うことにより測定することができる。なお、本発明の粘着シートが両面粘着シートの場合には、測定面(ガラス板側の粘着面)に対する反対側の粘着面には、裏打ち材(例えば、厚さ25μmのPETフィルム)を貼付して測定することができる。
【0057】
本発明の粘着シートの粘着力(23℃)は、例えば、ゾル分の分子量(例えば、ゾル分中の分子量5万以下の成分の含有量など)によって、制御することができる。
【0058】
本発明の粘着シート(本発明の粘着シートの本発明の粘着剤層表面)の、ガラス板に対する80℃における180°引き剥がし粘着力(「粘着力(80℃)」と称する)は、特に限定されないが、3〜25N/10mmが好ましく、より好ましくは5〜25N/10mmである。粘着力(80℃)を3N/10mm以上とすることにより、ディレイバブルの発生が抑制される。なお、上記粘着力(80℃)は、80℃において、ガラス板を被着体とする180°剥離試験(JIS Z0237(2000)に準拠、引張速度:60mm/分)を行うことにより測定することができる。なお、本発明の粘着シートが両面粘着シートの場合には、測定面(ガラス板側の粘着面)に対する反対側の粘着面には、裏打ち材(例えば、厚さ25μmのPETフィルム)を貼付して測定することができる。
【0059】
従来の光学用粘着シートは、貼り合わせ時に粘着シートと光学部材の界面に混入した気泡を除去するためにオートクレーブ処理を施した場合であっても、特に、粘着シートの粘着剤層の応力緩和性が低いと、依然として気泡が残存するという問題を有していた。また、オートクレーブ処理によっていったん気泡が除去された場合であっても、時間の経過とともに再度気泡(ディレイバブル)が発生するという問題も生じていた。
【0060】
これに対して、本発明の粘着シートは、本発明の粘着剤層のゲル分率が80重量%以下に制御されているため、優れた応力緩和性を発揮し、その結果、オートクレーブ処理後の気泡の残存が抑制される。また、本発明の粘着シートは、本発明の粘着剤層のゾル分中の分子量が5万以下の成分の含有量が20重量%以下に制御されているため、ディレイバブルの発生が抑制される。
【0061】
[本発明の粘着シートの製造方法]
本発明の粘着シートにおける粘着剤層(本発明の粘着剤層)は、活性エネルギー線重合により形成された粘着剤層である。従って、本発明の粘着シートの製造方法は、活性エネルギー線重合により粘着剤層を形成する工程を少なくとも含む。具体的には、例えば、本発明の粘着シートの製造方法は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分又はその部分重合物、及び光重合開始剤を含む組成物を、適宜な支持体(基材やセパレータなど)上に塗工(塗布)し、活性エネルギー線を照射して粘着剤層を形成する工程を少なくとも含むことが好ましい。即ち、本発明の粘着剤層は、光重合開始剤由来の成分(構成単位)を含むことが好ましい。
【0062】
(光重合開始剤)
上記光重合開始剤としては、特に限定されないが、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等を用いることができる。上記光重合開始剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0063】
上記ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。上記アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。上記α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。上記芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。上記光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。上記ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインなどが挙げられる。上記ベンジル系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルなどが挙げられる。上記ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。上記ケタール系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。上記チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが挙げられる。
【0064】
(活性エネルギー線、活性エネルギー線照射装置)
上記活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられる。中でも、特に紫外線が好ましい。また、上記活性エネルギー線を照射するための装置(活性エネルギー線照射装置)としては、特に限定されず、公知乃至慣用の活性エネルギー線照射装置を使用できるが、例えば、紫外線発生用ランプ(UVランプ)、EB(電子線)照射装置などが挙げられる。上記UVランプとしては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプなどの高圧放電ランプや、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、捕虫用蛍光ランプなどの低圧放電ランプ等が好ましい。
【0065】
(塗工装置)
上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分又はその部分重合物、及び光重合開始剤を含む組成物の塗工(塗布)には、公知のコーティング法を用いることが可能であり、慣用の塗工装置(コーター)、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーターなどを用いることができる。
【0066】
以下に、本発明の粘着シートの製造方法の具体的態様を説明する。但し、本発明の粘着シートの製造方法は、これに限定されるものではない。
【0067】
(プレポリマー組成物の形成)
まず、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分(「モノマー成分A」と称する)と、光重合開始剤とを混合して組成物(「プレポリマー形成用組成物」と称する)を得る。次いで、上記プレポリマー形成用組成物に活性エネルギー線を照射して、モノマー成分Aを部分重合(予備重合)させ、プレポリマー組成物を形成する。
【0068】
上記モノマー成分Aは、特に限定されないが、上述のアクリル系ポリマーを構成するモノマー成分のうち、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、極性基含有モノマー、及び必要に応じてその他の共重合性モノマーを必須成分として構成されたモノマー成分であることが好ましい。
【0069】
上記プレポリマー組成物を形成する際の光重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、上述の光重合開始剤を用いることができる。
【0070】
上記プレポリマー形成用組成物中の上記光重合開始剤の含有量(使用量)は、特に限定されないが、モノマー成分A(100重量部)に対して、0.01〜0.5重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜0.3重量部である。光重合開始剤の含有量を0.5重量部以下とすることにより、粘着剤層のゾル分中の分子量が5万以下の成分の含有量を上記範囲に制御しやすくなる。光重合開始剤の含有量を0.01重量部未満とすると、重合反応が進行せず、又は進行しにくく、プレポリマー組成物を作成するまでの活性エネルギー線の照射時間が長くなる。
【0071】
また、上記プレポリマー形成用組成物に活性エネルギー線(特に、紫外線)を照射する時間(照射時間)は、アクリル系粘着剤層を構成するモノマー組成により異なり、特に限定されないが、例えば、90秒以上が好ましく、より好ましくは120秒以上である。より具体的には、本発明の粘着剤層が2EHA、AA、及びDPHAを必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマー、又は、i−OA、AA、及びDPHAを必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーを含有する粘着剤層の場合、上記活性エネルギー線(特に、紫外線)の照射時間は、特に限定されないが、120秒以上が好ましく、より好ましくは150秒以上である。
【0072】
上記プレポリマー組成物は、上記モノマー成分Aの一部が重合(活性エネルギー線重合)した組成物である。上記プレポリマー組成物の重合率は、特に限定されないが、取り扱いやすい粘度とする観点から、3〜15重量%が好ましく、より好ましくは5〜10重量%である。なお、上記プレポリマー組成物の重合率は、該プレポリマー組成物を130℃で3時間加熱した際の加熱(乾燥)前後の重量から、下記式により算出される。
プレポリマー組成物の重合率(%)=乾燥後の重量/乾燥前の重量 × 100
【0073】
上記プレポリマー組成物の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、100万〜1000万が好ましく、より好ましくは200万〜1000万である。上記重量平均分子量を100万以上とすることにより、粘着剤層のゾル分中の分子量が5万以下の成分の含有量を上記範囲に制御しやすく、ディレイバブルの発生が抑制される。一方、上記重量平均分子量を1000万以下とすることにより、光学用粘着シートとしての外観を失わずシートを作成できる。なお、上記プレポリマー組成物の重量平均分子量は、例えば、プレポリマー組成物を測定サンプルとして用いた上記GPC測定により、測定することができる。
【0074】
上記プレポリマー組成物の重量平均分子量は、主に、プレポリマー形成用組成物中の光重合開始剤の含有量、及び、プレポリマー形成用組成物に照射する活性エネルギー線の照度及び照射時間によって制御することができる。
【0075】
(粘着剤組成物の形成)
次いで、上記プレポリマー組成物に、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分(「モノマー成分B」と称する)、シランカップリング剤、及び必要に応じて光重合開始剤を混合して粘着剤組成物を形成する。なお、本明細書において「粘着剤組成物」とは、「粘着剤層を形成するための組成物」を意味する。
【0076】
上記モノマー成分Bとしては、特に限定されないが、ゲル分率の制御の観点から、上述のアクリル系ポリマーを構成するモノマー成分のうち、多官能性モノマーを必須成分として構成されたモノマー成分であることが好ましい。
【0077】
上記粘着剤組成物を形成する際の光重合開始剤としては、例えば、上述の光重合開始剤を用いることができる。上記粘着剤組成物における上記光重合開始剤の含有量(使用量)は、特に限定されないが、ゾル分中の分子量が5万以下の成分の含有量制御の観点で、モノマー成分A(100重量部)に対して、0〜0.15重量部が好ましく、より好ましくは0〜0.1重量部である。
【0078】
(粘着剤層、粘着シートの形成)
上記粘着剤組成物を適宜な支持体上に塗工(塗布)し、活性エネルギー線を照射して粘着剤層を形成する。
【0079】
上記支持体としては、例えば、セパレータや基材等が挙げられる。本発明の粘着シートが本発明の粘着剤層のみからなる粘着シート(基材レス粘着シート)の場合には、例えば、上記粘着剤組成物をセパレータ上に塗工して粘着剤層を形成することによって、本発明の粘着シートが得られる。一方、本発明の粘着シートが基材を有する粘着シートの場合には、例えば、上記粘着剤組成物を基材上に塗工し粘着剤層を形成することによって本発明の粘着シートを得てもよいし(直写法)、上記粘着剤組成物をセパレータ上に塗工して形成した粘着剤層を、基材に貼り合わせることで本発明の粘着シートを得てもよい(転写法)。
【0080】
上記粘着剤組成物に照射する活性エネルギー線(特に、紫外線)の照度は、特に限定されないが、1〜19mW/cm2が好ましく、より好ましくは1〜15mW/cm2である。上記活性エネルギー線の照度を上記範囲とすることにより、粘着剤層のゾル分中の分子量が5万以下の成分の含有量を上記範囲に制御しやすい。
【0081】
本発明の粘着シートの製造方法における、上述のプレポリマー組成物形成時の光重合開始剤の含有量(使用量)、及び粘着剤組成物に照射する活性エネルギー線の照度は、生産性の観点で、従来の粘着シートの製造においては通常選択されるものではなかった。本発明の粘着シートの製造においては、上記光重合開始剤の含有量及び活性エネルギー線の照度を上記範囲に制御することによって、粘着剤層のゾル分中の分子量が5万以下の成分(低分子量成分)を少なくし、ディレイバブル抑制の効果が得られることが明らかとなった。
【0082】
上述のように、本発明の粘着シートは、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分及び光重合開始剤を含むプレポリマー形成用組成物に活性エネルギー線を照射してプレポリマー組成物を得、次いで、該プレポリマー組成物にアクリル系ポリマーを構成するモノマー成分、及び必要に応じて光重合開始剤を添加して粘着剤組成物を得た後、該粘着剤組成物を支持体に塗工し、活性エネルギー線を照射して粘着剤層を形成することにより、製造することができる。このように、本発明の粘着シートは、粘着剤層を構成するアクリル系ポリマーをいったん得た後、該アクリル系ポリマーから低分子量成分を除去するための操作を施すことなく製造できるため、生産性に優れる。
【0083】
本発明の粘着シートは、光学用途に用いられる光学用粘着シートである。より具体的には、光学部材を貼り合わせる用途(光学部材貼り合わせ用)や光学製品の製造用途などに用いられる光学用粘着シートである。中でも、本発明の粘着シートは、光学部材貼り合わせ用粘着シートであることが好ましい。
【0084】
上記光学部材とは、光学的特性(例えば、偏光性、光屈折性、光散乱性、光反射性、光透過性、光吸収性、光回折性、旋光性、視認性など)を有する部材をいう。上記光学部材としては、光学的特性を有する部材であれば特に限定されないが、例えば、表示装置(画像表示装置)、入力装置等の機器(光学機器)を構成する部材又はこれらの機器に用いられる部材が挙げられ、例えば、偏光板、波長板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、透明導電フィルム(ITOフィルム)、意匠フィルム、装飾フィルム、表面保護板、プリズム、レンズ、カラーフィルター、透明基板や、さらにはこれらが積層されている部材(これらを総称して「機能性フィルム」と称する場合がある)などが挙げられる。なお、上記の「板」及び「フィルム」は、それぞれ板状、フィルム状、シート状等の形態を含むものとし、例えば、「偏光フィルム」は、「偏光板」、「偏光シート」を含むものとする。
【0085】
上記表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなどが挙げられる。また、上記入力装置としては、タッチパネルなどが挙げられる。
【0086】
上記光学部材としては、特に限定されないが、例えば、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、金属薄膜などからなる部材(例えば、シート状やフィルム状、板状の部材など)などが挙げられる。なお、本発明における「光学部材」には、上記の通り、被着体である表示装置や入力装置の視認性を保ちながら加飾や保護の役割を担う部材(意匠フィルム、装飾フィルムや表面保護フィルム等)も含むものとする。
【0087】
本発明の粘着シートは、ガラス製の部材(例えば、ガラス基板、ITOを蒸着させたガラス、ガラス製のウインドウレンズ等のガラス製の光学部材など)を貼り合わせる用途に用いられることが好ましい。特に、本発明の粘着シートは、ガラス製の部材(特に、光学部材)同士を貼り合わせる用の粘着シート(ガラス貼り合わせ用粘着シート)として好ましく使用できる。本発明の粘着シートは、特に、剛性が高いために界面に気泡が混入しやすいガラス製の部材(特に、光学部材)同士を貼り合わせる際に、本発明の効果(オートクレーブ処理後の気泡の残存及びディレイバブル発生の抑制)を顕著に発揮できる。
【0088】
本発明の粘着シートによる光学部材の貼り合わせの態様としては、特に限定されないが、例えば、(1)本発明の粘着シートを介して光学部材同士を貼り合わせる態様、(2)本発明の粘着シートを介して光学部材を光学部材以外の部材に貼り合わせる態様であってもよいし、(3)光学部材を含む本発明の粘着シートを、光学部材又は光学部材以外の部材に貼り合わせる態様であってもよい。なお、上記(3)の態様においては、本発明の粘着シートは、基材が光学部材(例えば、光学フィルムなど)である両面粘着シートであることが好ましい。
【実施例】
【0089】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0090】
実施例1
(プレポリマー組成物の形成)
アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)90重量部、アクリル酸(AA)10重量部が混合されたモノマー混合物に、光重合開始剤として商品名「IRGACURE 651」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.1重量部を配合し、粘度(BH粘度計No.5ローター、10rpm、測定温度30℃)が約20Pa・sになるまで、ブラックライト(東芝(株)製)を用いて照度5.0mW/cm2の紫外線を120秒間照射し、上記モノマー成分の一部が重合したプレポリマー組成物(重合率:7%)を形成(調製)した。なお、上記プレポリマー組成物の重量平均分子量は、6.84×106であった。
(粘着剤組成物の形成)
上記プレポリマー組成物(100重量部)に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(日本化薬製、商品名「KAYARAD DPHA」)0.07重量部と、シランカップリング剤(信越化学工業(株)製、商品名「KBM−403」)0.3重量部と、商品名「IRGACURE 651」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.04重量部とを加え、混合し、粘着剤組成物(活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物)を形成(調製)した。
(粘着シート(粘着剤層)の形成)
上記粘着剤組成物を、ポリエチレンテレフタレートセパレータ(PETセパレータ)(三菱樹脂(株)製、商品名「MRF75」)上に塗工(塗布)し、塗布層(塗布層厚み:175μm)を形成した。次いで、上記塗布層上に、PETセパレータ(三菱樹脂(株)製、「MRF38」)を設け、上記塗布層を被覆して酸素を遮断した。その後、この「MRF75/塗布層/MRF38」の積層体の上面(MRF38側)からブラックライト(東芝(株)製)を用いて、照度8mW/cm2の紫外線を100秒間照射した。さらに130℃の乾燥機で2分間乾燥処理を行って、アクリル系粘着剤層を形成し、厚さ175μmの両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を作製した。
【0091】
実施例2
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)の配合量をプレポリマー組成物100重量部に対して0.05重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ175μmの両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。なお、実施例2におけるプレポリマー組成物の重合率は7.0%であり、重量平均分子量は6.84×106であった。
【0092】
実施例3
表1に示すように、プレポリマー組成物の形成時に用いたモノマー混合物を、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)86重量部、アクリル酸(AA)14重量部が混合されたモノマー混合物に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ175μmの両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。なお、実施例3におけるプレポリマー組成物の重合率は7.5%であり、重量平均分子量は7.11×106であった。
【0093】
実施例4
表1に示すように、プレポリマー組成物の形成時に用いたモノマー混合物を、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)80重量部、アクリル酸2−メトキシエチル(2MEA)11.5重量部、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)7重量部、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)1.5重量部が混合されたモノマー混合物に変更し、プレポリマー組成物の形成時の紫外線の照射時間を250秒に変更し、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)の配合量をプレポリマー組成物100重量部に対して0.05重量部に変更し、粘着剤組成物の形成時に商品名「IRGACURE 651」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ175μmの両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。なお、実施例4におけるプレポリマー組成物の重合率は6.8%であり、重量平均分子量は5.21×106であった。
【0094】
実施例5
表1に示すように、プレポリマー組成物の形成時に用いたモノマー混合物を、アクリル酸ブチル(BA)57重量部、アクリル酸シクロヘキシル(CHA)12重量部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル(4HBA)23重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)8重量部が混合されたモノマー混合物に変更し、プレポリマー組成物の形成時の紫外線の照射時間を330秒に変更し、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)の配合量をプレポリマー組成物100重量部に対して0.05重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ175μmの両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。なお、実施例5におけるプレポリマー組成物の重合率は7.5%であり、重量平均分子量は3.34×106であった。
【0095】
実施例6
表1に示すように、プレポリマー組成物の形成時に用いたモノマー混合物を、アクリル酸イソオクチル(i−OA)87重量部、アクリル酸(AA)13重量部が混合されたモノマー混合物に変更し、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)の配合量をプレポリマー組成物100重量部に対して0.08重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ175μmの両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。なお、実施例6におけるプレポリマー組成物の重合率は7.0%であり、重量平均分子量は6.48×106であった。
【0096】
比較例1
表1に示すように、プレポリマー組成物の形成時に用いたモノマー混合物を、アクリル酸ブチル(BA)57重量部、アクリル酸シクロヘキシル(CHA)12重量部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル(4HBA)23重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)8重量部が混合されたモノマー混合物に変更し、プレポリマー組成物の形成時の紫外線の照射時間を330秒に変更し、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)の配合量をプレポリマー組成物100重量部に対して0.1重量部に変更し、粘着剤組成物の形成時に商品名「IRGACURE 651」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ175μmの両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。なお、比較例1におけるプレポリマー組成物の重合率は7.5%であり、重量平均分子量は3.34×106であった。
【0097】
比較例2
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)の配合量をプレポリマー組成物100重量部に対して0.13重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ175μmの両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。なお、比較例2におけるプレポリマー組成物の重合率は7.0%であり、重量平均分子量は6.84×106であった。
【0098】
比較例3
プレポリマー組成物の形成時の商品名「IRGACURE 651」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)の配合量を0.3重量部に変更し、プレポリマー組成物の形成時の紫外線の照射時間を90秒に変更し、粘着シートの形成時に照射する紫外線の照度を20mW/cm2に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ175μmの両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。なお、比較例3におけるプレポリマー組成物の重合率は8.0%であり、重量平均分子量は3.21×106であった。
【0099】
比較例4
表1に示すように、プレポリマー組成物の形成時に用いたモノマー混合物を、アクリル酸イソオクチル(i−OA)87重量部、アクリル酸(AA)13重量部が混合されたモノマー混合物に変更し、プレポリマー組成物の形成時の商品名「IRGACURE 651」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)の配合量を0.3重量部に変更し、プレポリマー組成物の形成時の紫外線の照射時間を90秒に変更し、粘着シートの形成時に照射する紫外線の照度を20mW/cm2に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ175μmの両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。なお、比較例4におけるプレポリマー組成物の重合率は7.8%であり、重量平均分子量は2.88×106であった。
【0100】
(評価)
実施例及び比較例で得られた粘着シートについて、180°引き剥がし粘着力(粘着力(23℃)及び粘着力(80℃))を測定した。また、上記粘着シートについて、オートクレーブ処理後の気泡残りの有無及びディレイバブル特性を評価し、これらの評価結果に基づいて光学用粘着シートとしての総合評価を行った。なお、上記粘着シートにおける粘着剤層のゲル分率、ゾル分中の分子量が5万以下の成分の含有量、上記粘着シートのヘイズ及び全光線透過率は、上述の方法により測定した。
【0101】
(1)粘着力(23℃)
実施例及び比較例で得られた粘着シートからセパレータを剥離し、一方の粘着面にPETフィルム(厚み:25μm)を貼り合わせて裏打ちし、幅20mm×長さ100mmのサイズに切り出して、評価用サンプルを作製した。次いで、上記評価用サンプルの粘着面(粘着シートの他方の粘着面)を、2kgのゴムローラーを一往復させてガラス板(松浪硝子工業(株)製、商品名「スライドガラス 品番S」、幅50mm×長さ100mm、厚み1.3mm)に圧着し、23℃、50%RHの雰囲気下で30分間エージングした。
その後、JIS Z0237(2000)に準拠して、23℃、50%RHの雰囲気下、引張試験機(ミネベア(株)製、商品名「TG−1kN」)を用いて、引張速度300mm/分、剥離角度180°の条件で、ガラス板から評価用サンプルを引き剥がし、180°引き剥がし粘着力(単位:N/20mm)を測定した。なお、試験回数(n数)は3回とし、平均値を算出して、結果を表1の「粘着力(23℃)」の欄に示した。
【0102】
(2)粘着力(80℃)
実施例及び比較例で得られた粘着シートからセパレータを剥離し、一方の粘着面にPETフィルム(厚み:25μm)を貼り合わせて裏打ちし、幅10mm×長さ100mmのサイズに切り出して、評価用サンプルを作製した。次いで、上記評価用サンプルの粘着面(粘着シートの他方の粘着面)を、2kgのゴムローラーを一往復させてガラス板(松浪硝子工業(株)製、商品名「スライドガラス 品番S」、幅50mm×長さ100mm、厚み1.3mm)に圧着し、23℃、50%RHの雰囲気下で30分間エージングした。
その後、JIS Z0237(2000)に準拠して、80℃の雰囲気下、引張試験機(ミネベア(株)製、商品名「TG−1kN」)を用いて、引張速度60mm/分、剥離角度180°の条件で、ガラス板から評価用サンプルを引き剥がし、180°引き剥がし粘着力(単位:N/10mm)を測定した。なお、試験回数(n数)は3回とし、平均値を算出して、結果を表1の「粘着力(80℃)」の欄に示した。
【0103】
(3)オートクレーブ処理後の気泡残りの有無
実施例及び比較例で得られた粘着シートを幅50mm×長さ100mmのサイズに切り出し、セパレータを剥離した後、両側の粘着面にガラス板(松浪硝子工業(株)製、商品名「青板切断品」、幅50mm×長さ100mm、厚み0.7mm)を貼り合わせ、評価用サンプルを作製した(圧着条件:面圧0.4MPa、真空度30Pa、貼り付け時間2秒)。次いで、上記評価用サンプルをオートクレーブに入れ、50℃、0.5MPaの条件で15分間オートクレーブ処理を行った。その後、オートクレーブから取り出した評価用サンプルを目視で観察し、気泡の有無を確認した。オートクレーブ処理後の評価用サンプルに気泡が見られなかった場合を○(オートクレーブ処理後の気泡残り無し)、オートクレーブ処理後の評価用サンプルに気泡が見られた場合を×(オートクレーブ処理後の気泡残り有り)として、評価を行った。
なお、結果は表1の「オートクレーブ後の気泡残り」の欄に示した。
【0104】
(4)ディレイバブル特性
実施例及び比較例で得られた粘着シートを幅50mm×長さ100mmのサイズに切り出し、セパレータを剥離した後、両側の粘着面にガラス板(松浪硝子工業(株)製、商品名「青板切断品」、幅50mm×長さ100mm、厚み0.7mm)を貼り合わせた(圧着条件:面圧0.4MPa、真空度30Pa、貼り付け時間2秒)。次いで、上記貼り合わせ体をオートクレーブに入れ、50℃、0.5MPaの条件で15分間オートクレーブ処理を行い、評価用サンプル(粘着シートあたり5枚作製した)を作製した。
上記評価用サンプルを、23℃、50±5%RHの雰囲気下に24時間静置し、該評価用サンプルを目視で観察した。その後、評価用サンプルを80℃で24時間加熱した後、評価用サンプルを目視で観察し、加熱前の状態から新たに発生した気泡(ディレイバブル)の有無及びその数を確認し、以下の基準により、ディレイバブル特性の評価を行った。
なお、結果は表1の「ディレイバブル特性」の欄に示した。
5点:評価用サンプル5枚中1枚もディレイバブルの発生なし
4点:評価用サンプル5枚中1枚又は2枚にディレイバブルが発生した
3点:評価用サンプル5枚中3枚以上にディレイバブルが発生し、かつディレイバブルが発生した評価用サンプル1枚あたりの平均個数が4個未満であった
2点:評価用サンプル5枚中3枚以上にディレイバブルが発生し、かつディレイバブルが発生した評価用サンプル1枚あたりの平均個数が4個以上10個未満であった
1点:評価用サンプル5枚中3枚以上にディレイバブルが発生し、ディレイバブルが発生した評価用サンプル1枚あたりの平均個数が10個以上であった
なお、結果は表1の「ディレイバブル特性」の欄に示した。
【0105】
(5)総合評価
実施例及び比較例で得られた粘着シートの、「(3)オートクレーブ処理後の気泡残りの有無」と「(4)ディレイバブル特性」の評価結果に基づいて、下記の基準で総合評価を行った。
(評価基準)
○(光学用粘着シートとして適している):オートクレーブ処理後の気泡残りが無く、かつディレイバブル特性の評価が4点以上である。
×(光学用粘着シートとして不適である):オートクレーブ処理後の気泡残りが有り、又は、ディレイバブル特性の評価が4点未満である。
なお、結果は表1の「総合評価」の欄に示した。
【0106】
【表1】

【0107】
表1中の略語は以下の通りである。
2EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
AA:アクリル酸
2MEA:アクリル酸2−メトキシエチル
NVP:N−ビニル−2−ピロリドン
HEAA:N−ヒドロキシエチルアクリルアミド
BA:アクリル酸ブチル
CHA:アクリル酸シクロヘキシル
4HBA:アクリル酸4−ヒドロキシブチル
HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル
i−OA:アクリル酸イソオクチル
【0108】
表1の結果から明らかなように、本発明の粘着シート(実施例)は、オートクレーブ処理後に気泡が残ることなく、また、ディレイバブルの発生も抑制されており、光学用粘着シートとして適するものであった。一方、アクリル系粘着剤層のゲル分率が高すぎる場合(比較例1、2)には、オートクレーブ処理後に気泡が残存し、また、アクリル系粘着剤層のゾル分中の分子量が5万以下の成分の含有量が多すぎる場合(比較例3、4)には、ディレイバブルの発生が顕著であり、いずれも光学用粘着シートとして適するものではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系粘着剤層を有する粘着シートであって、前記アクリル系粘着剤層が活性エネルギー線重合により形成され、前記アクリル系粘着剤層のゲル分率が80重量%以下であり、かつ前記アクリル系粘着剤層のゾル分中の分子量が5万以下の成分の含有量が20重量%以下であることを特徴とする光学用粘着シート。
【請求項2】
前記アクリル系粘着剤層が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルを必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤層である請求項1に記載の光学用粘着シート。
【請求項3】
全光線透過率が87%以上であり、ヘイズが3.0%以下である請求項1又は2に記載の光学用粘着シート。
【請求項4】
前記アクリル系粘着剤層のみからなる請求項1〜3のいずれかの項に記載の光学用粘着シート。
【請求項5】
総厚みが25〜500μmである請求項1〜4のいずれかの項に記載の光学用粘着シート。
【請求項6】
光学部材貼り合わせ用粘着シートである請求項1〜5のいずれかの項に記載の光学用粘着シート。
【請求項7】
前記光学部材がガラス製の光学部材である請求項6に記載の光学用粘着シート。

【公開番号】特開2012−153788(P2012−153788A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13479(P2011−13479)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】