説明

光学用複合材料、及び光学素子

【課題】本発明の目的は、屈折率、アッベ数等の光学特性だけでなく、成型加工性など、実用特性の要求される用途にも適用可能な光学用複合材料とそれを用いた光学素子を提供することにある。
【解決手段】波長589nmの光線の屈折率が1.6以上である無機粒子と樹脂とからなる光学用複合材料であって、該光学用複合材料が1質量%以上のフッ素を含有し、波長589nmの光線の屈折率が1.48以上、1.6以下であり、かつアッベ数が55以上であることを特徴とする光学用複合材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ、フィルター、グレーティング、光ファイバー、平板光導波路などの光学素子に適用が可能な新規な光学用複合材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノ粒子と樹脂を用いる複合材料の研究が盛んに行われている。特に、ナノ粒子の粒子径を小さくし、樹脂中への分散性を高めることで、複合材料の透明性が高まり、光学素子への適用も可能となる。一方、光学素子用の無機材料には、高屈折率、低線膨張率といった、樹脂には無い特性を有する材料が多いが、その反面、成型加工性が低いため、適用できる用途が限られているのが現状である。そのため、無機材料と樹脂との複合化により、成型加工性を改良し、無機材料の優れた光学特性を生かす試みがなされている。
【0003】
特に、高屈折率の無機材料を用いると、複合材料の屈折率を上げることが可能になり、そのメリットは大きい。他方重要な光学特性である波長分散性とその程度を表すアッベ数の制御に関する提案は比較的少ないが、下記のようなものがある。
【0004】
特許文献1では、有機ポリマーからなる高アッベ数材料の提案がなされている。係る発明では、主として異常分散性を有する無機粒子(アルミナ)を用いて高アッベ数化を達成しているが、実際に適用可能な粒子の種類が限られることで、粒子表面に施せる表面処理にも制約があり、たとえば吸水性が劣化することが避けられない。
【0005】
特許文献2では、ジルコニアを有するコンポジットでのアッベ数、屈折率に関する提案がなされている。しかし、母材の樹脂に一般的アクリル樹脂を用いているため、屈折率は高いもののアッベ数の上限が60以下、特に屈折率が1.5以上ではアッベ数が55以下になっている。さらにアッベ数を積極的に向上させる意図は見られない。
【0006】
特許文献3では、ジルコニア等を含有する屈折率1.6以上の複合材料が提案されている。しかし、高屈折率化を達成するため、粒子の充填率を増やす必要があり(体積比25%以上)、樹脂のメリットである、成型加工性に懸念があり、必ずしも実用的ではない。
【0007】
複合材料の屈折率が低くなると、例えばレンズとして用いる場合には曲率が極端に大きくなったり、厚みが増すという問題が発生する。汎用的な光学材料用樹脂として知られている、PMMA(ポリメチルメタクリレート)の屈折率は約1.49で、同等の屈折率であれば光学デバイスの設計は比較的容易であるが、1.48を切るような低屈折率複合材料の場合、これまでと同様な光学設計が難しくなる。現実的には、複合材料としての屈折率は1.48以上であることが必要である。
【0008】
このように、実用上重要な物性である、屈折率、アッベ数、成型加工性などの特性を同時に満足する複合材料について、これまで具体的な提案はなされてこなかった。
【特許文献1】特開2001−183501号公報
【特許文献2】特開2005−316219号公報
【特許文献3】国際公開第2007−032217号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、屈折率、アッベ数等の光学特性だけでなく、成型加工性など、実用特性の要求される用途にも適用可能な光学用合材料とそれを用いた光学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記課題は以下の構成により達成される。
【0011】
1.波長589nmの光線の屈折率が1.6以上である無機粒子と樹脂とからなる光学用複合材料であって、該光学用複合材料が1質量%以上のフッ素を含有し、波長589nmの光線の屈折率が1.48以上、1.6以下であり、かつアッベ数が55以上であることを特徴とする光学用複合材料。
【0012】
2.前記樹脂の波長589nmの光線の屈折率が1.4以上であることを特徴とする前記1に記載の光学用複合材料。
【0013】
3.前記樹脂が3質量%以上、60質量%以下のフッ素を含有する樹脂であることを特徴とする前記1または2に記載の光学用複合材料。
【0014】
4.前記1〜3のいずれか1項に記載の光学用樹脂材料を用いて成型されたことを特徴とする光学素子。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、屈折率、アッベ数等の光学特性、並びに成型加工性などに優れた実用性の高い新規な光学用複合材料と、それを用いた光学素子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
本発明の光学用複合材料は、波長589nmの光線の屈折率が1.6以上である無機粒子と樹脂とからなる光学用複合材料であって、該光学用複合材料が1質量%以上のフッ素を含有し、波長589nmの光線の屈折率が1.48以上、1.6以下であり、かつアッベ数が55以上であることを特徴とする。
【0018】
最初にアッベ数の測定、無機粒子、樹脂、光学用複合材料の屈折率の測定法について以下説明する。
【0019】
<測定条件>
(1)アッベ数の測定は以下の方法に従って行うことができる。
【0020】
アッベ数の測定は、光学用複合材料を硬化させ、加工研磨し、自動屈折計(カルニュー光学工業製KPR−200)を用いて、フラウンホーファーのC線(656.3nm)、D線(589.3nm)、F線(486.1nm)におけるそれぞれの屈折率、nc、nd、nfを測定し、下記式より算出する。
【0021】
アッベ数(νd)=(nd−1)/(nf−nc)
(2)無機粒子の屈折率
無機粒子を、屈折率を調整した種々の溶媒に分散させて分散液の波長589nmの光線に対する吸光度を測定し、その値が最小になる溶媒の屈折率を測定することにより、該無機粒子の屈折率を決定する。
(3)樹脂、及び光学用複合材料の屈折率
屈折率の測定方法としては、例えば、エリプソメトリ、分光反射率法、光導波路法、Abbe法、最小偏角法等から、光学用樹脂材料の形態に応じて好ましい方法を選択することができる。
【0022】
例えば、樹脂、もしくは光学用複合材料を硬化させ、加工研磨し、自動屈折計(カルニュー光学工業製KPR−200)を用いて、当該樹脂の温度を25℃、波長589nmの光線の屈折率を測定し樹脂、もしくは光学用複合材料の屈折率とする。
【0023】
《複合材料の光学特性》
光学特性として特にアッベ数が重要である光学素子等の用途では、波長589nmの光線の屈折率が1.6以下であっても、例えば下記フッ素原子の含有量を増やしアッベ数を増大させることが望ましい場合がある。そのためこのような場合は、硬化前の流動性を含めた成型加工性を犠牲にしない程度に高屈折率な粒子の添加量を高め、樹脂と複合化することが好ましい。
【0024】
例えば、高アッベ数を付与する材料として、フッ素を含有する非晶質樹脂が知られている。旭硝子社製サイトップや、デュポン社製テフロン(登録商標)AFは、アッベ数は90以上ときわめて大きな値を示し、屈折率の波長依存性が非常に小さい。しかし、屈折率があまりに低いため、レンズとして使用する場合には厚みが極端に増えるデメリットが発生する。さらに、これらの樹脂に高屈折率の粒子を複合化して波長589nmの光線の屈折率を1.48以上にしようとすると粒子の充填率を高くする必要があるが、この時得られる複合材料は、非常に脆く、成型時のひび割れが顕著に発生しやすくなり、実用性が損なわれることが多い。また、粒子の充填率を高くする(たとえば30体積%以上)と、成型加工性で重要な要素の一つである、複合材料の硬化前での流動性が下がり、成型コストの増大につながる。波長589nmの光線の屈折率は、光学用複合材料の場合、更に好ましくは1.5以上であるため、アッベ数と屈折率、成型加工性は性能の取り合いになる場合が多い。
【0025】
そこで、本発明者は鋭意検討した結果、樹脂としての屈折率が極端に低下しない、すなわち屈折率が1.4以上で、アッベ数が60以上となるフッ素原子含有樹脂母材を作成し、このような樹脂母材に対し、10〜20体積%になるよう高屈折率の粒子をコンポジット化することで、実用的な光学特性である、屈折率>=1.48、と高いアッベ数(55以上)を達成することができることを見出したものである。光学用複合材料の波長589nmの光線の屈折率は1.6を超えない程度に高屈折率粒子の充填率を抑えることで、実用的な光学特性を得つつ、樹脂の優れた成型加工性を生かした、低コストな光学用複合材料の作成が可能になることを見出したものである。
【0026】
本発明の光学用複合材料は、可視領域波長における透明性を有することが好ましい。本発明の光学用複合材料の透明性は、可視領域波長での光線透過率が光路長3mmにおいて、通常は60%以上、好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、最も好ましくは85%以上であるのが望ましい。かかる測定は、例えば、ASTM D−1003(3mm厚)規格での試験により行われる。ここで言う可視領域とは、400〜650nmの波長領域を意味する。
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0028】
《フッ素の含有形態》
本発明の光学用複合材料には、1質量%以上のフッ素が含有される。フッ素の含有には、下記のような形態が可能である。
(1)樹脂に含有される形態
フッ素含有樹脂として、各種の熱可塑、熱硬化性樹脂に含有させることが可能である。一般にフッ素は炭素に直接結合した状態で導入される。フッ素含有樹脂は、部分フッ素樹脂とパーフルオロ樹脂に大別され、それぞれが結晶性、非晶性樹脂に大別される。透明性を得るためには、樹脂が非晶性であることが必要であり、特に、波長589nmの光線の屈折率が1.4以上であることが好ましく、その為には部分フッ素化であることが好ましい。
【0029】
上記非晶性フッ素含有樹脂として、既に幾つかのものが知られている。透明性が高くアッベ数が大きな樹脂として、サイトップ(旭硝子製)、テフロン(登録商標)AF(デュポン製)などが知られている。これらの樹脂を用いることは可能であるが、これらの樹脂は、通常C−H結合の状態で樹脂中に含まれる水素がすべてフッ素に置き換えられているパーフルオロ樹脂のためフッ素の含有率が大きい(60質量%以上)。そのため、屈折率が1.4以下と非常に低く、高屈折率の粒子とのコンポジット化によっても比較的少量(20体積%以下)の添加では屈折率を1.48以上にすることは困難である。すなわち成型加工性を保ちつつ、必要な屈折率を得ることが難しい。
【0030】
従って、本発明では部分フッ素化樹脂のように、一部C−H結合を残し、フッ素含有率を下げた樹脂を用いることが好ましい。またフッ素含有率は、重合前のモノマーにおけるHのフッ素による置換率を変えることで調整できるほか、全てフッ素化されたモノマー、モノマー中の水素が全く、ないし、一部フッ素化されていないモノマーとの共重合比を変えることで調整することが可能である。たとえば、アクリル系モノマーを用いる場合、メチルメタクリレートモノマーに対し、メタクリル酸トリフルオロエチル、2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート、パーフルオロアダマンタンメタクリレートのような含フッ素モノマーを共重合させることで適当な割合でフッ素を含有する樹脂を作成することが可能である。
(2)粒子の表面処理剤に含有される形態
無機粒子の表面処理は、粒子を樹脂中に均一に含有させるため好ましい。粒子表面の表面処理剤(粒子表面への物理吸着、化学吸着を伴う)にフッ素を含有させることで光学用複合材料中にフッ素を含有させることが可能である。表面処理については後述するが、フッ素を含有するシランカップリング剤、フッ素を含有するカルボン酸、アミン、アミドなど、各種の化合物が適用可能である。
(3)無機粒子表面がフッ素原子を含有する形態
たとえば無機粒子として各種金属酸化物粒子を用いる場合、表面の酸素原子をフッ素イオンで置換することで、無機粒子の一部として光学用複合材料にフッ素を含有させることができる。たとえば、金属酸化物(MOx)を気相中でHFガスと接触させることで、粒子表面にMFx結合を作成し、粒子表面の酸素をフッ素に置換することができる。このようにして適当な割合で光学用複合材料中にフッ素原子を含有させることが可能である。
(4)フッ素を含有する添加剤を加える形態
フッ素を含有する化合物を添加剤として加えることで光学用複合材料中に含有させることが可能である。フッ素を含有する添加剤として、ナノ粒子状のフッ素樹脂の他、パーフルオロカルボン酸、およびその塩や、フルオロアミド、TFSIのようなアニオンおよびその塩、など、粒子表面と直接の作用(表面処理剤的働き)が無い場合でも単体で光学用複合材料中に適宜混合することでフッ素を含有させることが可能である。
【0031】
本発明においては、光学用複合材料中に1質量%以上のフッ素を含有することが必須である。それを満たす限り、たとえば(1)で樹脂に含有させるフッ素量は特に制限はない。しかしフッ素が少なすぎるとアッベ数増大効果があまり期待できず、多すぎる場合は樹脂の屈折率の低下が大きくなりすぎ光学材料への適用が制限されるため、3〜60質量%が好ましく、さらに好ましくは、10〜50質量%である。
【0032】
《樹脂》
次いで、本発明に係る樹脂について説明する。
【0033】
本発明の光学用複合材料においては、上記の無機粒子は熱可塑性樹脂、(エネルギー線による)硬化性樹脂のどちらとも複合化することは可能である。樹脂としては特に限定されるものではないが、前述の通り、樹脂がフッ素を官能基として含有することも好ましい。その場合、該樹脂は3質量%以上、60質量%以下のフッ素を含有する樹脂であることが好ましい。樹脂中のフッ素含有量が上記範囲内であると、光学用複合材料の屈折率とアッベ数の両立を図るという本発明の効果を得る上で好ましい態様である。
【0034】
熱可塑性樹脂としては、光学材料として一般的に用いられる透明の熱可塑性樹脂材料あるいは、その一部がフッ素置換された樹脂であれば特に制限はないが、光学素子としての加工性を考慮すると、アクリル樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、またはポリイミド樹脂であることが好ましく、特に好ましくは環状オレフィン構造(アダマンチル基を含む)を有する樹脂である。これらの樹脂は該してC−H構造を有するので、その一部をC−F結合に置き換えることで所望の割合でフッ素原子を樹脂中に導入することができる。
【0035】
一方、硬化性樹脂としては、紫外線及び電子線照射、あるいは加熱処理の何れかの操作によって硬化し得るもので、無機粒子と未硬化の状態で混合させた後、硬化させることによって透明な樹脂組成物を形成する物であれば特に制限なく使用でき、例えば、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、シリコーン樹脂、アクリル系樹脂、アリルエステル系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂も該してC−H構造を有するので、その一部をC−F結合に置き換えることで所望の割合でフッ素原子を樹脂中に導入することができる。該硬化性樹脂は、紫外線や電子線等の照射を受けて硬化する活性光線硬化性樹脂であっても良いし、加熱処理によって硬化する熱硬化性樹脂であっても良く、例えば下記に列記したような種類の樹脂を好ましく使用することができる。
【0036】
(アクリル樹脂)
本発明において用いられるアクリル樹脂は、一般的な構造を有する樹脂が使用可能であるが、特に脂環式炭化水素骨格を有することが好ましい。脂環式炭化水素骨格のうち、多環式炭化水素系化合物が更に好ましい。具体例としては、脂肪族の多環構造を有し、3次元的な架橋構造を含むものが好ましく、特に好ましい化合物としては、一般式(1)で表される化合物、例えば、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートや、一般式(2)で表される化合物、例えば、アダマンチルメタクリレート、アダマンチルアクリレート等や、一般式(3)で表される化合物、例えば、イソボロニルメタクリレート、イソボロニルアクリレート、ビニルノルボルネン等が挙げられる。
【0037】
【化1】

【0038】
(シリコーン系樹脂)
シリコーン系樹脂は、ケイ素(Si)と酸素(O)とが交互に結合したシロキサン結合−Si−O−を主鎖としている樹脂である。
【0039】
当該シリコーン樹脂として、所定量のポリオルガノシロキサン樹脂よりなるシリコーン系樹脂が使用可能である(例えば特開平6−9937号公報参照)。
【0040】
熱硬化性のポリオルガノシロキサン樹脂は、加熱による連続的加水分解−脱水縮合反応によって、シロキサン結合骨格による三次元網状構造となるものであれば、特に制限はなく、一般に高温、長時間の加熱で硬化性を示し、一度硬化すると再加熱しても軟化し難い性質を有する。
【0041】
このようなポリオルガノシロキサン樹脂は、下記一般式(A)が構成単位として含まれ、その形状は鎖状、環状、網状形状のいずれであってもよい。
【0042】
一般式(A)
(R1・R2・SiO)n
上記一般式(A)において、R1及びR2は各々同種又は異種の置換もしくは非置換の一価炭化水素基を示す。具体的には、R1及びR2としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;シクロヘキシル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基、またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子をハロゲン原子、シアノ基、アミノ基などで置換した基、例えば、クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノメチル基、γ−アミノプロピル基、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピル基などを挙げることができる。R1及びR2は各々水酸基およびアルコキシ基から選択される基であってもよい。また、上記一般式(A)中のnは、50以上の整数を示す。
【0043】
ポリオルガノシロキサン樹脂は、通常、トルエン、キシレン、石油系溶剤のような炭化水素系溶剤、またはこれらと極性溶剤との混合物に溶解して用いられる。また、相互に溶解しあう範囲で、組成の異なるものを配合して用いても良い。
【0044】
ポリオルガノシロキサン樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法も用いることができる。例えば、オルガノハロゲノシランの一種または二種以上の混合物を加水分解ないしアルコリシスすることによって得ることができ、ポリオルガノシロキサン樹脂は、一般にシラノール基またはアルコキシ基等の加水分解性基を含有し、これらの基をシラノール基に換算して1〜10質量%含有する。
【0045】
これらの反応は、オルガノハロゲノシランを溶融しうる溶媒の存在下に行うのが一般的である。また、分子鎖末端に水酸基、アルコキシ基またはハロゲン原子を有する直鎖状のポリオルガノシロキサンを、オルガノトリクロロシランと共加水分解して、ブロック共重合体を合成する方法によっても得ることができる。このようにして得られるポリオルガノシロキサン樹脂は一般に残存するHClを含むが、本実施形態の組成物においては、保存安定性が良好なことから、10ppm以下、好ましくは1ppm以下のものを使用するのが良い。
【0046】
シリコーン樹脂として、シルセスキオキサンのような構造を有するものも好ましい。ラダー型、籠型等各種のシルセスキオキサン構造を有することが可能である。
【0047】
本発明に係る熱可塑および硬化性樹脂材料は、芳香環を有すると屈折率は向上させられるもののフッ素含有によるアッベ数向上効果を相殺してしまうため、樹脂の30質量%以下が好ましく、更に好ましくは10質量%以下である。
【0048】
本発明に係る熱可塑性、硬化性樹脂材料においては、吸水率が0.2質量%以下であることが好ましい。吸水率が0.2質量%以下の樹脂としては、例えば熱可塑樹脂では、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テフロン(登録商標)AF(デュポン社製)、サイトップ(旭硝子社製)等)、環状オレフィン樹脂(例えば、ZEONEX(日本ゼオン社製)、アートン(JSR社製)、アペル(三井化学社製)、TOPAS(ポリプラスチック社製)等)、インデン/スチレン系樹脂、ポリカーボネートなどが挙げられるが、これらに限るものではなく、これらの樹脂のうち、部分フッ素化構造を有する樹脂が好ましい。また、これらの樹脂と相溶性のある他の樹脂を併用することも好ましい。2種以上の樹脂を用いる場合、その吸水率は、個々の樹脂の吸水率の平均値にほぼ等しいと考えら、その平均の吸水率が0.2%以下になればよい。硬化性樹脂の場合、脂環式構造を有するアクリル樹脂、アダマンチル基を有する樹脂などが低吸水性の観点から好ましい。また、硬化性樹脂を構成するモノマーのうち一部または全部を、部分フッ素化されたモノマーや、パーフルオロモノマーを使用することも好ましい。
【0049】
耐熱性の観点からは、アダマンタン骨格を有する樹脂を用いることが好ましい。アダマンタン骨格を有する硬化性樹脂として、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート(特開2002−193883号公報参照)、3,3′−ジアルコキシカルボニル−1,1′−ビアダマンタン(特開2001−253835号公報参照)、1,1′−ビアダマンタン化合物(米国特許第3,342,880号明細書参照)、テトラアダマンタン(特開2006−169177号公報参照)、2−アルキル−2−ヒドロキシアダマンタン、2−アルキレンアダマンタン、1,3−アダマンタンジカルボン酸ジ−tert−ブチル等の芳香環を有しないアダマンタン骨格を有する硬化性樹脂(特開2001−322950号公報参照)、ビス(ヒドロキシフェニル)アダマンタン類やビス(グリシジルオキシフェニル)アダマンタン(特開平11−35522号公報、特開平10−130371号公報参照)等を使用することができる。
【0050】
また、芳香環を含まない臭素含有(メタ)アリルエステル(特開2003−66201号公報参照)、アリル(メタ)アクリレート(特開平5−286896号公報参照)、アリルエステル樹脂(特開平5−286896号公報、特開2003−66201号公報参照)、アクリル酸エステルとエポキシ基含有不飽和化合物の共重合化合物(特開2003−128725号公報参照)、アクリレート化合物(特開2003−147072号公報参照)、アクリルエステル化合物(特開2005−2064号公報参照)等を好ましく用いることができる。
【0051】
硬化性樹脂を用いて作成する場合、光学用複合材料においては、架橋密度が0.1mmol/cm以上であることが好ましい。
【0052】
ここでで規定する光学用複合材料の架橋密度は、各種の方法に従って求めることが可能である。例えば、粘弾性の測定からE′を測定し、その変化から求める方法などが、容易に適用可能である。また、架橋性のモノマーの含有量から架橋点数を計算から求めることも可能である。たとえば、エチレングリコールジメタクリレート(分子量198)の硬化物で比重が1.2であった場合、1cmあたりのモル数は、
1.2/198×1000=6.06mmol
となり、二重結合が80%が反応し架橋に寄与しているとすれば、架橋密度は、
6.06×0.8=4.85mmol/cm
と求めることができる。二重結合の反応率は、NMRやラマン分光等で求めることができる。
【0053】
さて、本発明に係る架橋密度は、下記のような方法で制御することができる。
【0054】
(多官能のモノマーを用いる制御方法)
一分子内に重合性官能基を複数有するモノマーを用いると架橋密度が上昇する。特に、分子量あたりの架橋性官能基数が大きいと、架橋密度は上昇する。アクリル樹脂の場合は、エチレングリコールジメタクリレートのような2官能のモノマーから、ペンタエリスリトールテトラメタクリレートのように4官能のモノマー、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレートのような6官能のモノマーなど、各種のモノマーが使用可能である。
【0055】
(粒子表面に多くの官能基を設ける制御方法)
粒子表面も架橋点として働くので、粒子表面に架橋点を設けることも好ましい。
【0056】
(架橋剤を用いる制御方法)
例えば、アクリル樹脂の場合、二重結合の鎖延長のほか、イオウ化合物の反応も容易に進行する。例えば、複数のメルカプト基を含有する架橋剤を用いることで架橋点数を増大させることができる。過酸化物なども適用可能である。その他、ポリマータイプの架橋剤など各種の架橋剤が適用可能である。
【0057】
これらの方法により得られた複合体の架橋密度は、更に好ましくは0.2mmol/cm以上である。十分に大きな架橋密度を有する材料では、いわゆるTgが消滅し、熱に対する感度が低下、耐熱性が向上することから好ましい。架橋密度に特に上限は無いが、架橋性官能基の導入可能量の上限から、実質的に10mmol/cm以下の制約を受ける。
【0058】
その他、開始剤量、種類の選択、反応温度、エネルギー線照射状態、酸素、水含有量などにも影響を受ける。
【0059】
《適用可能な無機粒子》
無機粒子としては、波長589nmの光線の屈折率が1.6以上であれば各種の粒子が使用可能である。屈折率は更に1.65以上が好ましく、最も好ましくは1.8以上である。具体的には酸化物粒子、炭酸塩、硫酸塩などの金属塩粒子、硫化物粒子などが好ましく用いられ、この中から、光学素子として使用する波長領域において吸収、発光、蛍光等が生じないものを適宜選択して使用することが好ましい。
【0060】
酸化物粒子としては、金属酸化物を構成する金属が、Li、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Rb、Sr、Y、Nb、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Ta、Hf、W、Ir、Tl、Pb、Bi及び希土類金属からなる群より選ばれる1種または2種以上の金属である金属酸化物を用いることができ、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化鉛、これら酸化物より構成される複酸化物であるニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸リチウム、アルミニウム・マグネシウム酸化物(MgAl)等の粒子および複合粒子の中で、屈折率が1.6以上を満たすものが挙げられる。
【0061】
また、酸化物粒子として、希土類酸化物を用いることもでき、具体的には、酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム等も挙げられる。その他、TiやZrのオキソクラスターなども適用可能である。
【0062】
金属塩粒子としては、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩およびその複合粒子のうち、波長589nmの光線の屈折率が1.6以上であるものが適用可能である。
【0063】
無機粒子の調製方法としては、気相中で無機粒子の原料を噴霧、焼成して微小な粒子を得ることが可能である。更には、プラズマを用いて粒子を調製する方法、原料固体をレーザー等でアブレーションさせ微粒子化する方法、蒸発させた金属ガスを酸化させ微粒子を調製する方法なども好適に用いることができる。また、液相中で調製する方法として、アルコキシドや塩化物溶液を原料としたゾル−ゲル法等を用い、ほぼ一次粒子として分散した無機粒子分散液を調製することが可能である。あるは、溶解度の低下を利用した反応晶析法を用いて粒子径のそろった分散液を得ることが可能である。
【0064】
液相で得られた粒子は、乾燥、焼成することにより、無機粒子の機能を安定に引き出すことは好ましい。乾燥には、凍結乾燥、噴霧乾燥、超臨界乾燥などの手段が適用可能であり、焼成は、単に雰囲気を制御しながら高温にするだけでなく、有機あるいは無機の焼結防止剤を用いて行うことが好ましい。
【0065】
これら粒子のうち、安価で、安全性を考慮するして無機粒子を選択することが可能であり、さらに小粒径化の容易性を考えると、TiO、Al、LiNbO、Nb、ZrO、Y、MgO、ZnO、SnO、Bi、ITO、CeO、AlN、ダイヤモンド、KTaOなどを用いることが特に好ましい。
【0066】
屈折率向上と高アッベ数化の観点からは、ダイヤモンド粒子(屈折率約2.4)の適用が好ましい。ダイヤモンド粒子は、爆発法、衝撃圧縮法、静圧などがあるが、その分散性から、爆発法や衝撃圧縮法で得られた粒子が好ましい。本質的には骨格自体に極性が無く、吸湿性が少ないことから、光学用複合材料として用いる場合には表面に生成しやすい親水性官能基を除去した状態で適用すると吸湿性を低減できるため好ましい。
【0067】
本発明に適用可能な粒子としては、体積平均粒子径で20nm以下であり、更に1nm以上、15nm以下であることがより好ましい。これは、平均粒子径が1nm未満の場合、粒子の分散が困難になり所望の性能が得られないおそれがあるため、平均粒子径は1nm以上であることが好ましい。一方、平均粒子径が15nmを超える場合、屈折率差によっては得られる光学用複合材料が濁るなどして透明性が低下するおそれがあることから、平均粒子径は15nm以下であることが好ましい。ここで、平均粒子径とは、各粒子を同体積の球に換算した時の直径(球換算粒径)の体積平均値をいう。
【0068】
樹脂への充填率について特に制約は無いが、比表面積の大きな15nm以下の無機粒子を樹脂に充填する場合、成型加工性の確保(流動性、ひび割れなし)を考えた場合には30体積%を超えることは実用的に難しく、25体積%以下である。一方、無機粒子を充填することにより光学特性(屈折率、アッベ数)を獲得するにはある程度の充填率が必要で、5体積%以上、さらには10体積%以上が好ましい。これに伴う、屈折率の増加は、元の樹脂に対して、0.02以上あることがこのましく、更に好ましくは0.05以上である。選択する粒子の屈折率、充填率によっては0.2以上の屈折率向上も見込めるが、高充填化が必要になったり、屈折率差の大きな粒子が必要になり光散乱が生じやすくなったりするため、必ずしも好ましくはない。
【0069】
《表面処理剤》
無機粒子を樹脂と均一に混合する必要があることから、樹脂との親和力を高めるため、粒子の表面処理が必要である。必要な表面処理剤と粒子表面との結合には、下記のような導入手法が考えられるが、それらに限るものではない。
【0070】
A.物理吸着(二次結合性の活性剤処理)
B.表面化学種の利用反応(表面水酸基との共有結合)
C.活性種の表面導入と反応(ラジカル等の活性点導入とグラフト重合、高エネルギー線照射とグラフト重合)
D.樹脂コーティング(カプセル化、プラズマ重合)
E.沈着固定化(難溶性有機酸塩の沈着)
更に具体例を示すと下記のようになる。
(1)シランカップリング剤
シランカップリング剤としては、各種のカップリング剤が適用可能である。芳香環や、硫黄を含有するカップリング剤は屈折率を上げる観点から望ましい。硫黄を含有するカップリング剤は、−SH基、あるいはジスルフィド等の官能基として導入することが可能である。芳香環については、その導入量が多すぎると屈折率が上がってもアッベ数が小さくなるので、その導入量には上限があり、好ましくは、シランカップリング剤全質量のうち10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。また、先に示したように、表面処理剤にフッ素を導入する場合には、シランカップリング剤としてフッ素を含有するものが好適に用いられる。
【0071】
シランカップリング剤の具体例としては、信越化学工業株式会社製KBM−303、KBM−403、KBM−402、KBM−403、KBM−1403、KBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503、KBM−603、KBE−603、KBM−903、KBE−903、KBE−9103、KBM−802、KBM−803、KBM−3103、KBM−7103、等が挙げられる。
【0072】
2種類以上のカップリング剤を併用してもよい。上記に示されるシランカップリング剤に加えて、他のシランカップリング剤を用いてもよい。他のシランカップリング剤には、オルトケイ酸のアルキルエステル(例えば、オルトケイ酸メチル、オルトケイ酸エチル、オルトケイ酸n−プロピル、オルトケイ酸i−プロピル、オルトケイ酸n−ブチル、オルトケイ酸sec−ブチル、オルトケイ酸t−ブチル)及びその加水分解物が挙げられる。
【0073】
(2)その他カップリング剤
チタネート、アルミナート、ジルコネート系のカップリング剤も適用可能である。さらに、ジルコアルミネート、クロメート、ボレート、スタネート、イソシアネート等も使用可能である。ジケトン系のカップリング剤も使用可能である。
(3)表面処理剤
アルコール、ノニオン系界面活性剤、イオン系界面活性剤、カルボン酸類、アミン類などが適用可能である。
(4)樹脂系表面処理
上記(1)〜(3)の手法で粒子表面に活性種を導入後、グラフト重合により表面にポリマー層を設ける手法や、あらかじめ合成したポリマー分散剤を粒子表面に吸着、結合させる手法がある。粒子表面により強固にポリマー層を設けるためにはグラフト重合が好ましく、特に高密度にグラフトさせることが好ましい。
【0074】
《光学素子の製造方法》
本発明の光学素子を製造するにあたっては、はじめに光学素子の原料となる光学用複合材料前駆体(熱可塑性樹脂を用いる場合は溶融状態、硬化性用いる場合は未硬化の状態)を調製する。
【0075】
特に硬化性樹脂を用いる場合、光学用複合材料前駆体は、溶媒に溶解した硬化性樹脂と、本発明に係る粒子とを混合し、その後、有機溶媒を除去することで調製されてもよいし、硬化性樹脂の原料の一つであるモノマー溶液中に本発明に係る粒子を添加、混合した後に重合して調製されても良い。また、モノマーが一部重合したオリゴマーや低分子量のポリマーを溶融し、そこに本発明に係る粒子を添加、混合することで調製されても良い。
【0076】
特に、本発明においては、硬化性樹脂を用い、そのモノマー溶液中に本発明に係る粒子を添加した後に重合させる方法が好ましく、特に、モノマーと本発明に係る粒子を混合した高粘性の溶液を、冷却しながらシェアを与えて混合する方法が好ましい。この時、硬化性樹脂中への本発明に係る粒子の分散が最適になるように粘度を調整することも重要である。粘度調整の方法としては、本発明に係る粒子の粒径、表面状態、添加量の調整や、溶媒や粘度調整剤の添加等が挙げられるが、本発明に係る粒子はその構造により表面修飾が容易なことから、最適な混練状態を得ることが可能である。
【0077】
シェアを与え複合化を行う場合、本発明に係る粒子は粉体ないし凝集状態のまま添加することが可能である。あるいは、希釈液中に分散した状態で添加することも可能である。液中に分散した状態で添加する場合は、混合後に希釈液を脱揮することが好ましい。
【0078】
液中に分散した状態で添加する場合、あらかじめ凝集粒子を一次粒子に分散して添加することが好ましい。分散には各種分散機が使用可能であるが、特にビーズミルが好ましい。ビーズは各種の素材があるがその大きさは小さいものが好ましく、特に直径0.001〜0.5mmのものが好ましい。
【0079】
本発明に係る粒子は表面処理された状態で加えられることが好ましいが、表面処理剤と粒子とを同時に添加し、硬化性樹脂との複合化を行うインテグラルブレンドのような方法を用いることも可能である。
【0080】
〈飽和吸水量〉
環境の変動により光学用複合材料が吸水することがある。吸水は、光学特性変動の原因になるほか、機械的物性も劣化させる原因になるため小さいことが好ましい。例えば、65℃相対湿度90%雰囲気下で測定される飽和吸水量は、3.0質量%以下であることが好ましい。
【0081】
飽和吸水量を制御するには、主として以下の3点が重要である。
(1)樹脂自体の飽和吸水量を下げる
(2)粒子の飽和吸水量を下げる
(3)表面処理剤の吸水量を下げる
樹脂自体の吸水量を下げるには、樹脂の極性を下げることが必要である。そのため、水酸基やエステルなどの含酸素官能基や、酸、塩基等の性質を示す各種官能基、イオウや窒素などの含有量を低減することが好ましい。また、アクリル樹脂やエポキシ樹脂の場合、架橋性官能基は極性を有することが多いので、その数は必要な架橋密度を確保した上でできる限り少なく留め、未反応の官能基を少なくすることが好ましい。
【0082】
粒子の飽和吸水量を低減することも重要である。1.6以上の屈折率を有する粒子は、粒子内部の空隙、ミクロポア等が少なく、結晶構造をとることが好ましいと考えられるので、特に表面に吸着する水分が飽和吸水量に関係すると考えられる。粒子表面に吸着する水分は、その表面の極性官能基に吸着すると考えられる。金属酸化物であれば、主として水酸基であり、硫酸塩や炭酸塩などの塩からなる粒子の場合、表面の分極や、組成の部分的な偏りなどが極性官能基として挙げられる。窒化物や、硫化物粒子でも各種の極性官能基が考えられるが、不純物による水酸基なども原因になりうる。
【0083】
これらを制御するのに有効な手法として、有機官能基による処理、無機材料による処理が考えられる。
【0084】
有機官能基による処理としては、先の表面処理における、表面水酸基の利用反応が考えられる。ヘキサメチルジシラザンに代表される、シリコン系の反応剤を用いることは特に好ましいが、それに限らず、有機フッ素化合物や炭化水素系の処理剤等、各種の処理剤が適用可能である。
【0085】
無機材料による処理として、シリコーンやフッ素を用いた処理が考えられる。シリコーンとしては、モノメチルポリシロキサンやジメチルポリシロキサン、環状ジメチルシロキサン化合物などが挙げられる。特にモノメチルポリシロキサンのようにSiH基を有するシリコーンが好ましい。
【0086】
フッ素を用いた処理として、前述のように粒子表面のフッ素化が挙げられる。ふっ化水素酸のような非常に強い酸は強力に無機粒子を溶解するが、その量を減らし徐々に反応させれば最表面のみをフッ素化させることが可能な場合がある。あるいは、その他のフッ素含有化合物(ふっ化アンモニウム等)と粒子を混合し適当な条件で加熱することで、粒子表面にフッ素を導入し、水酸基を減らすことで吸水の低減が可能になる。
【0087】
その他、カチオン性の表面を有する粒子に対しては、1,1,1−トリフルオロメタンスルホンイミドのように、塩を形成した時に疎水性となるアニオンを添加することで、吸水性を低減させられることがある。
【0088】
《光学素子のその他の添加剤》
本発明の光学素子には、硬化性樹脂と本発明に係る粒子の他に、それぞれの用途に応じて、光学用複合材料の調製時や光学素子の作製時において、各種添加剤を添加してもよい。当該添加剤としては、可塑剤等の樹脂改良剤、酸化防止剤、耐光安定剤、熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤及び近赤外線吸収剤等の安定剤、滑剤や、軟質重合体や、アルコール性化合物等の白濁防止剤、染料や、顔料等の着色剤、その他帯電防止剤や、難燃剤等が挙げられる。単独で又は組み合わせて用いられてもよい。
【0089】
〈可塑剤〉
可塑剤としては、特に限定はないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤等を挙げることができる。
【0090】
リン酸エステル系可塑剤では、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤では、例えば、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤では、例えば、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコレート系可塑剤では、例えば、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤では、例えば、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を挙げることができる。
【0091】
〈酸化防止剤〉
本発明の光学素子に適用可能な酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤及びイオウ系酸化防止剤等が挙げられる。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、光学用樹脂材料の成型時の酸化劣化等によるレンズの着色や強度低下を防止できる。
【0092】
フェノール系酸化防止剤としては、従来公知のものが適用可能であり、例えば、特開昭63−179953号公報に記載の2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレート等や、特開平1−168643号公報に記載のオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のアクリレート系化合物や、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニルプロピオネート))メタン、すなわち、ペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート))、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)等のアルキル置換フェノール系化合物や、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン基含有フェノール系化合物等が挙げられる。
【0093】
リン系酸化防止剤としては、一般の樹脂工業において通常使用される物であれば、特に限定されるものではなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のモノホスファイト系化合物や、4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)等のジホスファイト系化合物等が挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等が特に好ましい。
【0094】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
【0095】
さらに、上述したフェノール系、リン酸系及びイオウ系酸化防止剤の他に、ジフェニルアミン誘導体等のアミン系酸化防止剤や、ニッケル又は亜鉛のチオカルバメート等も酸化防止剤として適用可能である。
【0096】
上述した酸化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることが可能であって、その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、光学用樹脂材料100質量部に対して0.001〜20質量部の範囲内であることが好ましく、0.01〜10質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0097】
〈白濁防止剤〉
本発明の光学素子に適用可能な白濁防止剤としては、最も低いガラス転移温度が30℃以下である化合物を配合することが好ましい。これにより、透過率、耐熱性、機械的強度などの諸特性を低下させることなく、長時間の高温高湿環境下で保存した際の光学素子の白濁を防止できる。
【0098】
〈耐光安定剤〉
本発明の光学素子に適用可能な耐光安定剤(光安定剤)としては、クエンチャーと、ラジカル捕捉剤に大きく分けられる。ベンゾフェノン系耐光安定剤、ベンゾトリアゾール系耐光安定剤、トリアジン系の光安定剤はクエンチャーとして分類され、ヒンダードアミン系耐光安定剤はラジカル捕捉剤に分類される。本発明においては、光学素子の透明性、耐着色性等の観点から、ヒンダードアミン系耐光安定剤(HALS)を用いるのが好ましい。このようなHALSは具体例には、低分子量のものから中分子量、樹脂量の中から選ぶことができる。
【0099】
例えば、比較的分子量の小さいものとして、LA−77((株)ADEKA製)、Tinuvin765(チバ・ジャパン(株)製、以下、CJ製と略記する)、Tinuvin123(CJ製)、Tinuvin440(CJ製)、Tinuvin144(CJ製)、HostavinN20(ヘキスト社製)中程度の分子量として、LA−57((株)ADEKA製)、LA−52((株)ADEKA製)、LA−67((株)ADEKA製)、LA−62((株)ADEKA製)、さらに分子量の大きいものとして、LA−68((株)ADEKA製)、LA−63((株)ADEKA製)、HostavinN30(ヘキスト社製)、Chimassorb944(CJ製)、Chimassorb2020(CJ製)、Chimassorb119(CJ製)、Tinuvin622(CJ製)、CyasorbUV−3346(Cytec製)、CyasorbUV−3529(Cytec製)、Uvasil299(GLC製)などが挙げられる。特に、光学用樹脂材料の成型体(光学素子)には、低、中分子量のHALSを、膜状の光学用樹脂材料には樹脂量のHALSを用いることが好ましい。
【0100】
HALSは、ベンゾトリアゾール系の耐光安定剤などと組み合わせて用いられることも好ましい。例えば、アデカスタブLA−32、LA−36、LA−31(以上、(株)ADEKA製)、Tinuvin326、Tinuvin571、Tinuvin234、Tinuvin1130(以上、チバ・ジャパン(株)製)などが挙げられる。
【0101】
またHALSは、前記各種酸化防止剤と併用されることが好ましい。HALSと酸化防止剤の組み合わせに特に制約は無く、フェノール系、リン系、硫黄系などとの組み合わせが可能であるが、特にリン系とフェノール系との組み合わせが好ましい。
【0102】
〈その他の添加剤〉
本発明の光学素子に適用可能な添加剤としては、上記酸化防止剤、耐光安定剤以外に、熱安定剤、耐候安定剤、近赤外線吸収剤などの安定剤;滑剤、可塑剤などの樹脂改質剤;軟質重合体、アルコール性化合物等の白濁防止剤;染料や顔料などの着色剤;帯電防止剤、難燃剤、などが挙げられる。これらの添加剤は、単独で、あるいは2種以上を組み合せて用いることができ、その添加量は本発明に記載の効果を損なわない範囲で適宜選択される。
【0103】
《光学素子の応用分野》
本発明の光学用複合材料は、その成型物として、球状、棒状、板状、円柱状、筒状、チューブ状、繊維状、フィルムまたはシート形状など種々の形態で使用することができ、また、低複屈折性、透明性、機械強度、耐熱性、低吸水性に優れるため、各種光学素子への適用が好適である。
【0104】
例えば、光学レンズや光学プリズムとしては、カメラの撮像系レンズ;顕微鏡、内視鏡、望遠鏡レンズなどのレンズ;眼鏡レンズなどの全光線透過型レンズ;CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)などの光ディスクのピックアップレンズ;レーザビームプリンターのfθレンズ、センサー用レンズなどのレーザ走査系レンズ;カメラのファインダー系のプリズムレンズなどが挙げられる。
【0105】
光ディスク用途としては、CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)などが挙げられる。その他の光学用途としては、液晶ディスプレイなどの導光板;偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルムなどの光学フィルム;光拡散板;光カード;液晶表示素子基板などが挙げられる。
【0106】
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る光学素子(光学用複合材料製レンズ)の一例を示す概略図である。
【0107】
(撮像装置)
電子モジュールとしての撮像装置100は、携帯電話などの移動情報端末機器の電子回路を構成する電子部品が実装される回路基板1を有しており、回路基板1には撮像モジュール2が実装されている。撮像モジュール2はCCDイメージセンサとレンズを組み合わせた小型の基板実装用カメラであり、電子部品が実装された回路基板1をカバーケース3内に組み込んだ完成状態では、カバーケース3に設けられた撮像用開口4を介して撮像対象の画像取込ができるようになっている。
【0108】
図2に示す通り、撮像モジュール2は基板モジュール5とレンズモジュール6より構成され、基板モジュール5を回路基板1に実装することにより、撮像モジュール2全体が回路基板1に実装される。基板モジュール5は、撮像用の電子部品であるCCDイメージセンサ11をサブ基板10上に実装した受光モジュールであり、CCDイメージセンサ11上面は樹脂12で封止されている。
【0109】
CCDイメージセンサ11の上面には、光電変換を行う画素が多数格子状に配列された受光部(図示略)が形成されており、この受光部に光学画像を結像させることにより各画素に蓄電された電荷を画像信号として出力する。サブ基板10は導電性材料18によって回路基板1に実装され、これによりサブ基板10が回路基板1に固定されるとともに、サブ基板10の接続用電極(図示略)と回路基板1上面の回路電極(図示略)とが電気的に導通する。
【0110】
レンズモジュール6はレンズ16を支持するレンズケース15を備えている。レンズケース15の上部にはレンズ16が保持されており、レンズケース15の上部はレンズ16を保持するホルダ部15aとなっている。レンズケース15の下部はサブ基板10に設けられた装着孔10a内に挿通されてレンズモジュール6をサブ基板10に固定する装着部15bとなっている。この固定には、装着部15bを装着孔10aに圧入して固定する方法や、接着材によって接着する方法などが用いられる。
【0111】
レンズ16は撮像光学系に用いられる撮像素子(光学素子)であり、本発明の光学用複合材料によって形成されている。
【実施例】
【0112】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0113】
<無機粒子の調製>
(表面処理ジルコニア粒子の調製)
オキシ塩化ジルコニウム8水塩の2600gを純水40L(リットル)に溶解させたジルコニウム塩溶液に、28%アンモニア水を340g、純水を20L溶解させた希アンモニア水を攪拌しながら加え、ジルコニア前駆体スラリーを調製した。
【0114】
次いで、このジルコニア前駆体スラリーに、硫酸ナトリウム400gを5Lの純水に溶解させた硫酸ナトリウム水溶液を攪拌しながら加えた。
【0115】
次いで、この混合物を、乾燥器を用いて、大気中、120℃にて24時間、乾燥させて固形物を得た。
【0116】
次いで、この固形物を自動乳鉢等により粉砕した後、電気炉を用いて、大気中、500℃にて1時間焼成した。この焼成物を純水中に投入し、攪拌してスラリー状とした後、遠心分離器を用いて洗浄を行い、添加した硫酸ナトリウムを十分に除去した後、乾燥器にて乾燥させ、ジルコニア粒子を調製した。TEM観察の結果、平均粒子径は5nmであった。XRDから粒子がZrO結晶であることが確認された。
【0117】
上記のジルコニア粒子1:10gを、各々の表面処理剤3gを含むトルエン100mlに加え、0.03mmジルコニアビーズを用い、分散機(ウルトラアペックスミル、寿工業製)で、液温20度で2時間分散した。その後窒素下とし、攪拌しながら100℃まで加熱し、5時間加熱還流して各々表面処理済ジルコニア粒子のトルエン分散液を得た。得られた分散液から遠心分離により粒子を沈降させ上澄中の未反応物を除去し、50℃で24時間真空乾燥して、表面処理済ジルコニア粉体を得た。
【0118】
(表面処理アルミナ粒子の調製)
大明化学製アルミナ(TM−300)10gを、アンモニア1gを含む水500gに分散した。分散機はウルトラアペックスミル(寿工業製)で、0.03mmジルコニアビーズを用い、液温20度で2時間分散した。得られた粒子を乾燥機にて乾燥させ、TEM観察し、凝集の少ない平均粒子径7nmのアルミナ粒子である事を確認した。
【0119】
上記のアルミナ粒子1:6.7gを、各々の表面処理剤3gを含むトルエン100mlに加え、0.03mmジルコニアビーズを用い、分散機(ウルトラアペックスミル、寿工業製)で、液温20度で2時間分散した。その後窒素下とし、攪拌しながら100℃まで加熱し、5時間加熱還流して各々表面処理済アルミナ粒子のトルエン分散液を得た。得られた分散液から遠心分離により粒子を沈降させ上澄中の未反応物を除去し、50℃で24時間真空乾燥して、表面処理済アルミナ粉体を得た。
【0120】
(表面処理シリカの調製)
日本アエロジル社製シリカ(A−300)10gを、アンモニア1gを含む水500gに分散した。分散機はウルトラアペックスミル(寿工業製)で、0.03mmジルコニアビーズを用い、液温20度で2時間分散した。得られた粒子を乾燥機にて乾燥させ、TEM観察し、凝集の少ない平均粒子径9nmのシリカ粒子である事を確認した。
【0121】
上記のシリカ粒子1:3.1gを、各々の表面処理剤3gを含むトルエン100mlに加え、0.03mmジルコニアビーズを用い、分散機(ウルトラアペックスミル、寿工業製)で、液温20度で2時間分散した。その後窒素下とし、攪拌しながら100℃まで加熱し、5時間加熱還流して各々表面処理済シリカ粒子のトルエン分散液を得た。得られた分散液から遠心分離により粒子を沈降させ上澄中の未反応物を除去し、50℃で24時間真空乾燥して、表面処理済シリカ粉体を得た。
【0122】
【表1】

【0123】
<実施例1〜4、6、8、9、比較例1〜5の成型体の作製>
表2に示す各種のモノマーに対し、表1記載の表面処理済無機粒子を、バッチ式ミキサー(KF−6V、東洋精機製)を用いて、30℃で混合した後、金型に入れ、真空脱気しながら10MPaでプレスしたまま、150度に加熱し成型体を得た。
【0124】
<実施例5>
表2に示す添加量で樹脂と表1記載の表面処理済無機粒子をバッチミキサー(KF−6V、東洋精機製)を用いて、180℃で溶融混練した後金型に入れ、100℃で真空脱気後160℃に加熱、10MPaに加圧プレスして、成型体を得た。
【0125】
<実施例7>
(部分フッ素化ジルコニア粒子の作製)
表面処理済ジルコニア粒子の作製において、表面処理前のジルコニア粒子10gに対し、0.4gのHFを含む水溶液10gを加え、12時間攪拌し、遠心分離で十分に水洗した後乾燥し、部分フッ素化ジルコニア粒子を得た。この粒子を用いた以外は、実施例1〜4等と同様にして成型体を得た。
【0126】
表1、及び下記表2に示した樹脂、表面処理剤、添加剤は以下の通りである。
(1)モノマー
MAF−ADE :1−アダマンチル−α−トリフルオロメチルアクリレート、東ソー製
p−F−AdMA:パーフルオロアダマンチルジメタクリレート、出光興産製
DCP :トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、新中村化学製
Ad−dMA :アダマンチルジメタクリレート、出光興産製
サイトップ :非晶性フッ素樹脂、旭硝子製
(2)表面処理剤、添加剤詳細
KBM−3103:デシルトリメトキシシラン、信越化学製
KBM−503 :3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学製
KBM−7103:トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、信越化学製
含フッ素添加剤 :N−プロピル−N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ペルフルオロオクタンスルホンアミド、ダイキン製
パーロイルL :ジラウロイルパーオキサイド、日油製
<光学特性、成型加工性の評価>
(屈折率、アッベ数の測定)
無機粒子を、屈折率を調整した種々の溶媒に分散させて分散液の波長589nmの光線に対する吸光度を島津製作所製分光光度計UV−3150を用いて測定し、その値が最小になる溶媒の屈折率を測定することにより、該無機粒子の屈折率を決定した。
【0127】
樹脂、もしくは光学用複合材料を硬化させ、加工研磨し、自動屈折計(カルニュー光学工業製KPR−200)を用いて、当該樹脂の温度を25℃、波長589nmの光線の屈折率を測定し樹脂、もしくは光学用複合材料の屈折率とした。
【0128】
アッベ数の測定は、光学用複合材料を硬化させ、加工研磨し、自動屈折計(カルニュー光学工業製KPR−200)を用いて、フラウンホーファーのC線(656.3nm)、D線(589.3nm)、F線(486.1nm)におけるそれぞれの屈折率、nc、nd、nfを測定し、下記式より算出した。
【0129】
アッベ数(νd)=(nd−1)/(nf−nc)
(光線透過率の測定)
島津製作所製分光光度計UV−3150を用いて、波長589.2nmの光に対する透過率を測定した。成型体サンプル(光学素子)を適宜加工し、光路長3mmとなるようにしての外部透過率を透過率とした。
【0130】
(成型性評価)
「割れ」は、光学面1cmあたりのひび割れ数を目視で数え評価した。
【0131】
なし :0
多少あり :1〜3本
多い :4〜10本
非常に多い:10本以上
割れが多い場合、特に光線透過率の測定精度が下がるため、幾つかのサンプルについては透過率測定が行えなかった。
【0132】
表2で、アルミナを用いた光学用複合材料で、成型体の割れが多いのは、加熱成型中のアルミナからの水分揮発が多く、成型体内部にひび割れ生じやすかったことが原因と考えられる。
【0133】
【表2】

【0134】
表2に記載の結果より明らかな様に、本発明の光学用複合材料より形成した評価用成型体サンプル(光学素子)は、適度な屈折率とアッベ数を有すると共に、優れた成型性、透明性を兼ね備え、光学素子形成材料として極めて有効であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明の好ましい実施形態で使用される撮像装置の概略斜視図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態で使用される撮像装置の一部を拡大した概略的な断面図である。
【符号の説明】
【0136】
100 撮像装置
1 回路基板
2 撮像モジュール
3 カバーケース
4 撮像用開口
5 基板モジュール
6 レンズモジュール
10 サブ基板
10a 装着孔
11 CCDイメージセンサ
12 樹脂
15 レンズケース
15a ホルダ部
15b 装着部
16 レンズ
17 カラー部材
18 導電性材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長589nmの光線の屈折率が1.6以上である無機粒子と樹脂とからなる光学用複合材料であって、該光学用複合材料が1質量%以上のフッ素を含有し、波長589nmの光線の屈折率が1.48以上、1.6以下であり、かつアッベ数が55以上であることを特徴とする光学用複合材料。
【請求項2】
前記樹脂の波長589nmの光線の屈折率が1.4以上であることを特徴とする請求項1に記載の光学用複合材料。
【請求項3】
前記樹脂が3質量%以上、60質量%以下のフッ素を含有する樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学用複合材料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学用樹脂材料を用いて成型されたことを特徴とする光学素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−251093(P2009−251093A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95993(P2008−95993)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】