光学用途向けのフィルムおよびそのようなフィルムの作製方法
光学用途向けのフィルム、そのようなフィルムを含む物品、そのようなフィルムの作製方法およびそのようなフィルムを用いるシステムが、開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、光学用途向けのフィルム、そのようなフィルムを含む物品、そのようなフィルムの作製方法およびそのようなフィルムを用いるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
光の操作が望ましい場合には、光学デバイスおよび光学システムが一般に用いられる。光学デバイスの例としては、レンズ、偏光子、光学フィルタ、反射防止フィルム、リターダ(たとえば、4分の1波長板)およびビームスプリッタ(たとえば、偏光ビームスプリッタおよび非偏光ビームスプリッタ)が挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
概要
本発明は、光学用途向けのフィルム、そのようなフィルムを含む物品、そのようなフィルムの作製方法およびそのようなフィルムを用いるシステムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様において、本発明は、基板の上にフィルムを形成するための方法であって、第1の材料からなる複数の単層を順次蒸着させることによって、第1の材料からなる層を形成する工程を含み、第1の材料からなる単層のうちの1層は基板の第1の面の上に蒸着され、フィルムが第1の材料からなる層を含み、基板がポリマーを含むことを特徴とする。
【0005】
別の態様において、本発明は、光学部品の上に多層フィルムを形成するための方法であって、第1の材料からなる複数の単層を順次蒸着させることによって、第1の材料からなる層を形成する工程を含み、第1の材料からなる単層のうちの1層は光学部品の光学部品の第1の面の上に蒸着され、第2の材料からなる複数の単層を順次蒸着させることによって、第2の材料からなる層を形成する工程を含み、第2の材料からなる単層のうちの1層は第1の材料からなる層の面の上に蒸着され、多層フィルムは第1の材料からなる層および第2の材料からなる層を含み、光学部品はレンズであることを特徴とする。
【0006】
別の態様において、本発明は、基板の第1の面および第2の面の上にフィルムを同時に蒸着するために原子層蒸着を用いる工程を含み、第1の面は第2の面に対向していることを含む方法を特徴とする。
【0007】
別の態様において、本発明は、光学基板の第1の面および第2の面の上に第1の材料からなる層を同時に蒸着するために原子層蒸着を用い、第1の面が第2の面に対向していることを含む方法を特徴とする。
【0008】
別の態様において、本発明は、ポリマーを含む基板の面の上に多層フィルムを蒸着するために原子層蒸着を用いる工程を含む方法を特徴とする。
【0009】
別の態様において、本発明は、基板の上にフィルムを形成するための方法であって、第1の材料からなる複数の単層を順次蒸着させることによって、第1の材料からなる層を形成する工程を含み、第1の材料からなる単層のうちの1層は基板の第1の面の上に蒸着され、フィルムは第1の材料からなる層を含み、基板はレンズを含むことを特徴とする。
【0010】
別の態様において、本発明は、曲面を含む基板の上にフィルムを形成するための方法であって、第1の材料からなる複数の単層を順次蒸着させることによって、第1の材料からなる層を形成する工程を含み、第1の材料からなる単層のうちの1層は基板の曲面の上に蒸着され、フィルムは第1の材料からなる層を含むことを特徴とする。
【0011】
別の態様において、本発明は、基板の上にフィルムを形成するための方法であって、第1の材料からなる複数の単層を順次蒸着させることによって、第1の材料からなる層を形成する工程を含み、第1の材料からなる単層のうちの1層は基板の第1の面および第2の面の上に同時に蒸着され、フィルムは第1の材料からなる層を含み、第1の面は第2の面に対向することを特徴とする。
【0012】
別の態様において、本発明は、基板の上にフィルムを形成するための方法であって、第1の材料からなる複数の単層を順次蒸着させることによって、第1の材料からなる層を形成する工程を含み、第1の材料からなる単層のうちの1層は基板の第1の非共面および第2の非共面の上に同時に蒸着され、フィルムは第1の材料からなる層を含み、第1の面は第2の面に隣接していることを特徴とする。
【0013】
別の態様において、本発明は、レンズの面の上に多層フィルムを蒸着するために原子層蒸着を用いる工程を含む方法を特徴とする。
【0014】
別の態様において、本発明は、曲面または構造面の上に多層フィルムを蒸着するために原子層蒸着を用いる工程を含む方法を特徴とする。
【0015】
実施形態は、以下の特徴を1つ以上含むことができる。
【0016】
第1の材料からなる複数の単層を蒸着する工程は、前駆物質からなる単層を蒸着する工程と、前駆物質からなる単層を試薬にさらして、第1の材料からなる単層を形成する工程と、を含むことができる。試薬は、前駆物質と化学的に反応して、第1の材料を形成することができる。たとえば、試薬は、前駆物質を酸化して第1の材料を形成することができる。前駆物質からなる単層を蒸着する工程は、基板を収容する室の中に前駆物質を含む第1のガスを導入する工程を含むことができる。室における第1のガスの圧力は、約0.01〜約100トールであってもよい。前駆物質からなる単層を試薬にさらす工程は、室の中に試薬を含む第2のガスを導入する工程を含むことができる。室における第2のガスの圧力は、約0.01〜約100トールであってもよい。第1のガスが導入された後であって、第2のガスを導入する前に、第3のガスを室の中に導入することができる。第3のガスは、前駆物質に対して不活性であってもよい。第3のガスとしては、ヘリウム、アルゴン、窒素、ネオン、クリプトンおよびキセノンからなる群から選択される少なくとも1つのガスを挙げることができる。前駆物質は、トリス(tert−ブトキシ)シラノール、(CH3)3Al、TiCl4、SiCl4、SiH2Cl2、TaCl3、AlCl3、Hf−エタオキシド(ethaoxide)およびTa−エタオキシド(ethaoxide)からなる群から選択されることができる。第1の材料は、誘電材料であってもよい。
【0017】
本方法は、第2の材料からなる複数の単層を順次蒸着させることによって、第2の材料からなる層を形成する工程を含み、第2の材料からなる単層のうちの1層は第1の材料からなる層の上に蒸着され、第2の材料は第1の材料とは異なり、フィルムは第2の材料からなる層を含むことができる。第2の材料からなる複数の単層を蒸着する工程は、前駆物質からなる単層を蒸着する工程と、前駆物質からなる単層を試薬にさらして、第2の材料からなる単層を形成する工程とを含むことができる。試薬は、前駆物質と化学的に反応して、第2の材料を形成することができる。たとえば、試薬は、前駆物質を酸化して第2の材料を形成することができる。前駆物質からなる単層を蒸着する工程は、基板を収容する室の中に前駆物質を含む第1のガスを導入する工程を含むことができる。室における第1のガスの圧力は、約0.01〜約100トールであってもよい。前駆物質からなる単層を試薬にさらす工程は、室の中に試薬を含む第2のガスを導入する工程を含むことができる。室における第2のガスの圧力は、約0.01〜約100トールであってもよい。第1のガスが導入された後であって、第2のガスを導入する前に、室は、パージガスでパージすることができる。パージガスは、第1の前駆物質に対して不活性であってもよい。パージガスとしては、ヘリウム、アルゴン、窒素、ネオン、クリプトンおよびキセノンからなる群から選択される少なくとも1つのガスを挙げることができる。前駆物質は、トリス(tert−ブトキシ)シラノール、(CH3)3Al、TiCl4、SiCl4、SiH2Cl2、TaCl3、AlCl3、Hf−エタオキシド(ethaoxide)およびTa−エタオキシド(ethaoxide)からなる群から選択されることができる。第2の材料は、誘電材料であってもよい。
【0018】
本方法は、第2の材料からなる層の面の上に第3の材料からなる層を形成する工程をさらに含み、第3の材料は第2の材料とは異なり、フィルムは第3の材料からなる層を含むことができる。第3の材料は、第1の材料と同一であってもよい。第3の材料からなる層は、原子層蒸着を用いて蒸着されることができる。本方法はまた、第3の材料からなる層の面の上に第4の材料からなる層を形成する工程をさらに含み、第4の材料は第3の材料とは異なり、フィルムは第4の材料からなる層を含むことができる。第4の材料は、第2の材料と同一であってもよい。第4の材料からなる層は、原子層蒸着を用いて蒸着されることができる。本方法は、第4の材料からなる層によって支持される別の層を形成する工程を含むことができる。別の層は、原子層蒸着を用いて形成されることができる。
【0019】
基板は、光学部品であってもよい。本方法は、基板の第2の面の上に第1の材料からなる層を形成し、同時に、第1の面の上に第1の材料からなる層を形成する工程を含み、第2の面は第1の面と対向するか、または第1の面と隣接することができる。第1の材料からなる層は、第1の材料からなる複数の単層を順次蒸着することによって、第2の面の上に形成されることができ、第1の材料からなる単層のうちの1層は基板の第2の面の上に蒸着される。
【0020】
本方法は、基板の第2の面の上に蒸着される第1の材料からなる層の上に第2の材料からなる層を形成し、同時に、第1の面の上の第1の材料からなる層の上に第2の材料からなる層を形成する工程を含み、第2の面は第1の面と対向するか、または第1の面と隣接することができる。第2の材料からなる層は、第2の材料からなる複数の単層を順次蒸着することによって、第2の面の上に蒸着される第1の材料からなる層の上に形成されることができ、第2の材料からなる単層のうちの1層は第2の面の上に蒸着される第1の材料からなる層の面の上に蒸着されることができる。
【0021】
第1の材料からなる層を形成している間、基板は約500℃以下(たとえば、約300℃以下、約200℃以下、約150℃以下、約100℃以下、約80℃以下、約70℃以下、約60℃以下、約50℃以下)の温度であってもよい。
【0022】
基板がポリマーを含む実施形態において、ポリマーは熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーであってもよい。
【0023】
さらなる態様において、本発明は、第1の面および第1の面に隣接する第2の面を有する基板を備え、第1の面および第2の面は非共面であり、第1の面の上に蒸着される第1の多層フィルムと、第2の面の上に蒸着される第2の多層フィルムと、を備え、第2の多層フィルムは第1の多層フィルムと隣接する物品を特徴とする。
【0024】
別の態様において、本発明は、第1の面および第1の面に対向する第2の面を有する光学部品と、第1の面の上に蒸着される第1の材料からなる層と、第2の面の上に蒸着される第1の材料からなる層と、を備え、第1の面の上の位置における第1の材料からなる層の垂直光学厚さは、第2の面の上の対応する位置における第1の材料からなる層の垂直光学厚さの約5%以内である物品を特徴とする。
【0025】
別の態様において、本発明は、約10m以下の曲率半径を有する面を有し、面が第1の位置および第2の位置を有し、第1の位置における面法線と第2の位置における面法線との間の角度が約2°以上である基板と、面の上に蒸着されるフィルムと、を備え、フィルムは第1の材料からなる層を含み、第1の位置における層の垂直光学厚さは第2の位置における層の垂直光学厚さの約1%以内である物品を特徴とする。
【0026】
別の態様において、本発明は、第1の面および第1の面に対向する第2の面を有する基板と、第1の面の上に蒸着される第1のフィルムと、第2の面の上に蒸着される第2のフィルムと、を備え、第1の面の上の位置における第1のフィルムの垂直光学厚さは、第2の面の対応する位置における第2のフィルムの垂直光学厚さの約5%以内である物品を特徴とする。
【0027】
別の態様において、本発明は、ポリマーを含む基板および基板の第1の面の上に蒸着される多層フィルムを備える物品を特徴とする。
【0028】
別の態様において、本発明は、光軸を画定する多層フィルムを備える光学フィルタであって、光学フィルタは光軸に沿って伝搬する波長λ1を有する光の50%を透過し、光軸に対して30°の角度で多層フィルムに入射する波長λ2を有する光の50%を透過し、|λ1−λ2|は約30nm以上であることを特徴とする。
【0029】
実施形態は、以下の特徴を1つ以上含んでもよい。
【0030】
第1の多層フィルムおよび第2の多層フィルムは、第1の材料からなる隣接層を含むことができる。第1の多層フィルムおよび第2の多層フィルムは、第2の材料からなる隣接層を含むことができ、第2の材料は第1の材料とは異なり、第2の材料からなる隣接層は第1の材料からなる隣接層によって支持される。第1の多層フィルムおよび第2の多層フィルムは、3層以上の隣接層を含むことができ、近接層は異なる材料から形成される。
【0031】
基板は、光学部品(たとえば、フレネルレンズ、オプティカルフラットなどのレンズ)であってもよい。基板は、ガラスを含むことができる。ガラスは、ホウケイ酸ガラス、ガラスセラミック、石英、溶融シリカおよびソーダ石灰ガラスからなる群から選択されることができる。あるいはまたはさらに、基板は、ポリマー(たとえば、熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマー)を含むことができる。ポリマーは、ポリカーボネート、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルおよびポリメチルメタクリレートからなる群から選択されることができる。基板は、約250℃以下(約200℃以下、約150℃以下、約100℃以下、約80℃以下)のガラス転移温度を有する材料を含むことができる。基板は、約0℃〜300℃の温度では第1の材料の熱膨張係数の10%以内の熱膨張係数を有する基板材料を含むことができる。面は、約100m以下の曲率半径を有することができる。あるいは、面は、実質的に平面であってもよい。面は、構造面であってもよい。第1の材料は、誘電材料であってもよい。第1の材料は、酸化物であってもよい。たとえば、酸化物は、金属酸化物であってもよい。一部の実施形態において、金属酸化物は、SiO2、Al2O3、Nb2O5、TiO2、ZrO2、HfO2およびTa2O5からなる群から選択される。
【0032】
隣接層は、約1nm以上(たとえば、約10nm以上、約20nm以上)の垂直光学厚さを有することができる。一部の実施形態において、隣接層は、約5,000nm以下(たとえば、約1,000nm以下、約500nm以下)の垂直光学厚さを有することができる。
【0033】
第1の多層フィルムおよび第2の多層フィルムは、反射防止フィルムである。一部の実施形態において、物品は、光学フィルタである。光学フィルタは、赤外フィルタであってもよい。赤外フィルタは、物品を通過する約650nm〜約1,100nmの波長を有する光の透過率を低減することができる。光学フィルタは、紫外フィルタであってもよい。紫外フィルタは、物品を通過する約400nm未満の波長を有する光の透過率を低減することができる。
【0034】
第1の材料の屈折率は、第2の材料の屈折率とは異なっていてもよい。第1の材料からなる隣接層の垂直光学厚さは、第2の材料からなる隣接層の垂直光学厚さと同一であってもよい。あるいは、第1の材料からなる隣接層の垂直光学厚さは、第2の材料からなる隣接層の垂直光学厚さとは異なっていてもよい。物品は、基板の第3の面の上に蒸着される第3の多層フィルムを含むことができ、第3の面は第1の面と対向する。第1の多層フィルム、第2の多層フィルムおよび第3の多層フィルムは、同一であってもよい。
【0035】
一部の実施形態において、λ1は約650nmである。
【0036】
さらなる態様において、本発明は、物体からの光を画像平面に結像するためのレンズと、光学フィルタがない同一の光学システムに比して、画像平面で波長λの集束光の量を約20%以上減少させるようレンズに対して位置決めされる複数の層を含む光学フィルタと、を備え、層のうちの1層がレンズの第1の面の上に蒸着される光学システムを特徴とする。
【0037】
別の態様において、本発明は、レンズおよび画像平面に対して位置決めされる光学フィルタを備え、光学フィルタは第1の面および第2の面を有する基板を備え、第1の面は第2の面に対向し、第1の面および第2の面の上に蒸着される第1の多層フィルムおよび第2の多層フィルムをそれぞれ備え、第1の多層フィルムは第2の多層フィルムと同一である光学システムを特徴とする。
【0038】
別の態様において、本発明は、光学システムの1つを含むディジタルカメラを特徴とする。
【0039】
さらなる態様において、本発明は、ディジタルカメラを含む携帯電話を特徴とする。
【0040】
実施形態は、以下の特徴を1つ以上含むことができる。
【0041】
第1の面は、約2m以下の曲率半径を有することができる。画像平面は、レンズから約5cm以下(たとえば、約1cm以下、約0.5cm以下)であってもよい。光学システムは、画像平面に位置決めされる検出器を備えることができる。検出器は、電荷結合素子(CCD)アレイまたは相補型金属酸化物半導体(CMOS)アレイであってもよい。光学フィルタは、検出器の面の上に蒸着されてもよい。
【0042】
複数の層は、複数の誘電層を含むことができる。複数の層からなる交互の層は、異なる屈折率を有することができる。複数の層は、第1の面に対向するレンズの第2の面の上に蒸着される層を含むことができる。λは、約650nm以上であってもよい。たとえば、λは、約650nm〜1,100nmであってもよい。光学フィルタは、画像平面で波長λの集束光を約50%以上(たとえば、約80%以上、約90%以上、約95%以上)減少させることができる。
【0043】
光学システムは、物体からの光を画像平面に結像するための第2のレンズを含むことができる。光学フィルタの層のうち1層は、第2のレンズの面の上に蒸着されてもよい。結像される光の光線は、第1の面で約20°以下(たとえば、約15°以下、約10°以下)の最大発散を有することができる。光学フィルタは、レンズと画像平面との間に位置してもよい。
【0044】
本発明の実施形態は、以下の利点を1つ以上含んでもよい。
【0045】
一部の実施形態において、フィルムは、きわめて均一(たとえば、きわめて均一な厚さ、きわめて均一な屈折率)である1層以上の層を含むことができ、たとえば、それ自体がきわめて均一(たとえば、きわめて均一な厚さ、きわめて均一な屈折率)であるフィルムを生じることができる。1つ以上のそのようなフィルムを含む光学デバイスなどの物品は、強化した性能を呈することができる。一例として、1つ以上のそのようなフィルムを含む光学フィルタは、望ましくない波長の遮断にきわめて効果的であり、所望の波長の透過についてもきわめて効果的であってもよい。
【0046】
きわめて均一な層は、蒸着から蒸着まで反復可能に蒸着して、きわめて均一な(たとえば、きわめて均一な厚さ、きわめて均一な屈折率)多層フィルムを形成し、きわめて均一な(たとえば、きわめて均一な厚さ、きわめて均一な屈折率)層を有する異なる基板の上にフィルムを形成してもよい。そのようなフィルムを含む光学デバイスなどの物品は、厳格な均一性の仕様に適合するように製造され得る。一例として、そのようなフィルムを含む光学フィルタは、厳密な光学性能の仕様の範囲内で機能することができる。たとえば、そのようなフィルムを含む一群の光学フィルタに関する透過率帯域端の位置は、各フィルタに関して実質的に同一であってもよい。
【0047】
ある実施形態において、フィルムは、基板によって支持される等角層である1層以上の層を含むことができる。等角層はまた、きわめて均一であってもよい(たとえば、きわめて均一な厚さを有する)。1つ以上のそのような光学フィルムを含んでいる光学デバイスなどの物品は、強化した性能を呈することができる。一例として、フレネルレンズの構造面は、反射防止(AR)フィルムによって被覆され、レンズの強化した性能を提供してもよい。そのようなレンズにおけるARフィルムは、レンズの構造面における望ましくない反射のために生じ得る「ゴースト」を低減することができる。別の例として、きわめて均一なフィルム(たとえば、きわめて均一な厚さ、きわめて均一な屈折率)は、ボールレンズの面または積分球の内面などの曲面の上に蒸着されてもよい。
【0048】
一部の実施形態において、本方法は、基板の複数の(たとえば対向する)面を同時に蒸着することを可能にすることができる。これにより、フィルムの蒸着に関連する費用および/または複雑さを低減することができる。これはまた、複数の実質的に同一のフィルムを基板の異なる面の上に形成し、蒸着時間を短縮し、および/または基板の過剰な取扱いを減少させることを可能にすることができる。そのような方法を用いて形成される光学デバイスなどの物品は、厳格な光学性能の仕様を満たすことができる。一例として、ARフィルムは、1回の蒸着実行中に、基板(たとえば、レンズ、プリズムまたはオプティカルフラット)の複数の面の上に被覆されてもよい。
【0049】
ある実施形態において、本方法は、基板を部分的または完全に封止するために用いられてもよい。これは、たとえば、基板をその環境から保護することが望ましい場合(たとえば、基板を環境にさらすと、基板の性能特性に有害となりうる場合)には、好都合となりうる。
【0050】
一部の実施形態において、本方法は、温度的に不安定な基板(たとえば、約300℃以下のガラス転移温度のポリマー基板)に対応する。
【0051】
ある実施形態において、本方法は、集積光学部品(たとえば、光学フィルタを形成するフィルムなどの1つ以上のフィルム用の基板としても機能するレンズ)を形成するために用いられてもよい。そのような集積構成要素は、特定の目的向けに設計された光学システムに存在する個別の構成要素の数を減少させるために用いられてもよい。これにより、たとえば、光学システムのサイズ、費用および/または複雑さを低減することができる。
【0052】
本発明の他の特徴および利点は、詳細および図面、特許請求の範囲から明白となるであろう。
【0053】
種々の図面における類似の参照符号は、類似の要素を指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
詳細な説明
図1Aを参照すると、光学フィルタ10は、基板20(たとえば、ガラス製のオプティカルフラット)の対向する面21および22の上に蒸着される2つの多層フィルム11および12から構成される。光学フィルタ10は、軸50に沿って伝搬するフィルタに当たる一定の波長の光を実質的に反射し、実質的に他の波長の光を透過する。光学フィルタ10はまた、軸50に対して一定の角度でフィルタに当たる一定の波長の光を反射し、他の波長の光を透過する。多層フィルム11および12はいずれも、誘電材料から形成される多数の交互に配置される高屈折率層および低屈折率層を含む。
【0055】
多層フィルム11の構造が、図1Bに示される。多層フィルム11は、7層の高屈折率層30および7層の低屈折率層32から構成される。多層フィルム12の組成および構造は、多層フィルム11と同一である。言い換えれば、両方の多層フィルムは同数の誘電層を含み、フィルムにおける対応する層の組成および厚さは同一である。本願明細書で用いられるとき、対応する層は、多層フィルム内の同一の相対的な位置にある多層フィルム11および12中の層を指す。
【0056】
多層フィルム11および12中の各層の厚さおよび組成は、光学フィルタ10の所望のスペクトル特性に左右される。場合によっては、各層の厚さは、約0.25λ/nである。尚、λはフィルタによって反射されるべき波長であり、nは層の屈折率である。当然のことながら、所与の層の厚さは、層を形成するために用いられる材料の屈折率に応じて変化する。
【0057】
一部の実施形態において、各層の厚さは、光学フィルタの所望の光学特性に基づく層厚を最適化するアルゴリズムを用いて決定されることができる。たとえば、スペクトルの一定の部分にわたる最大反射率が所望である場合には、アルゴリズムは反射率が最高である構造の中に収束するように、層厚の異なる組み合わせ向けのフィルタの反射率を決定することができる。そのような計算を実行するために用いることができる市販のソフトウェアの例としては、カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad,CA)のサイエンティフィック・コンピューティング・インターナショナル(Scientific Computing International)から市販されている「フィルムウィザード(Film Wizard)TMおよびオレゴン州ポートランド(Portland,OR)のソフトウェア・スペクトラ・インコーポレィテッド(Software Spectra,Inc.)から市販されている「ティエフカルク(TFCalc)」が挙げられる。
【0058】
本願明細書で用いられるとき、層の部分の垂直厚さは、層の部分に最も近い基板面の部分の法線方向における層の部分の厚さを指す。一般に、層厚(たとえば、垂直層厚)は、電子顕微鏡検査法、偏光法を用いて層の断面を研究することによって、または計算データを分光分析データに変数調整することによって決定されてもよい。
【0059】
本願明細書で用いられるとき、層の部分の垂直光学厚さは、層の部分に最も近い基板面の部分の法線方向における層の部分の光学厚さを指す。
【0060】
本願明細書で用いられるとき、層の部分の光学厚さは、層の部分の厚さおよび部分の屈折率の積を指す。層の部分が光学的に非一様である(すなわち屈折率は、厚さが測定される方向に沿って層を通して変化する)場合には、光学厚さは厚さに対して積分される屈折率を指す。光学的に一様な層の場合には、この積分は前の定義に変形する。
【0061】
各多層フィルムにおいて、各層の垂直光学厚さは、他の層と同一であってもよく、他の層と異なっていてもよい。たとえば、光学フィルタ10が狭帯域の波長(たとえば、約10nm)を反射するように設計されている実施形態において、各層の垂直光学厚さは0.25λ0であってもよい。尚、λ0は反射帯域の中心波長である。あるいは、光学フィルタ10が広帯域の波長(たとえば、約100nm以上、約150nm以上、約200nm以上)を反射するように設計されている場合には、層の垂直光学厚さは変化してもよい。この実施例において、各多層フィルムにおける異なる群の層は、所望の波長帯域の中の異なる波長λiに関して、0.25λiに等しい垂直光学厚さを有することができる。一部の実施形態において、各層の垂直光学厚さは、約20nm〜約1,000nmの範囲にあってもよい。たとえば、各層の垂直光学厚さは、約50nm以上(たとえば、約100nm以上、約150nm以上、約200nm以上、約250nm以上、約300nm以上)であってもよい。実施形態において、層の垂直光学厚さは、約800nm以下(たとえば、約600nm以下、約500nm以下)であってもよい。
【0062】
一般に、多層フィルムにおける各層の垂直厚さは、実質的に均一であってもよい。たとえば、所与の層の垂直厚さは、層の異なる部分の間で約2%以下(たとえば約1%以下、約0.5%以下、約0.2%以下、約0.1%以下、約0.05%以下、約0.02%以下、約0.01%以下、0.001%以下)だけ変化してもよい。一部の実施形態において、多層フィルムにおける各層の垂直厚さは、層の異なる部分の間で約10nm以下(たとえば、約8nm以下、約5nm以下、約3nm以下、約2nm以下、約1nm以下、約0.5nm以下)だけ変化してもよい。
【0063】
一般に、多層フィルム11および12における各層の垂直光学厚さは、実質的に均一であってもよい。一部の実施形態において、層は、層の異なる部分の間で約2%以下(たとえば約1%以下、約0.5%以下、約0.2%以下、約0.1%以下、約0.05%以下、約0.02%以下、約0.01%以下、0.001%以下)だけ変化する垂直光学厚さを有することができる。1層以上の蒸着された層の垂直光学厚さは、層の異なる部分の間で約20nm以下(たとえば、約10nm以下、約5nm以下、約3nm以下、約2nm以下、約1nm以下、約0.5nm以下)だけ変化してもよい。
【0064】
前述したように、多層フィルム11および12における対応する層の厚さおよび組成は、実質的に同一である。たとえば、基板面に隣接する各多層フィルムにおける層は、対応する層である。一部の実施形態において、対応する層の垂直層厚は、各多層フィルムにおける対応する位置(たとえば、光軸50が各多層フィルムと交差する場所)で約2%以下(たとえば約1%以下、約0.5%以下、約0.2%以下、約0.1%以下、約0.05%以下、約0.02%以下、約0.01%以下、0.001%以下)だけ変化してもよい。一部の実施形態において、1層以上の対応する層の垂直厚さは、多層フィルム11および多層フィルム12における対応する位置で、約10nm以下(たとえば、約8nm以下、約5nm以下、約3nm以下、約2nm以下、約1nm以下、約0.5nm以下)だけ変化してもよい。
【0065】
さらに、多層フィルム11および多層フィルム12における対応する層の垂直光学厚さは、実質的に均一であってもよい。一部の実施形態において、多層フィルムにおける対応する層の垂直光学厚さは、対応する層の間で約2%以下(たとえば約1%以下、約0.5%以下、約0.2%以下、約0.1%以下、約0.05%以下、約0.02%以下、約0.01%以下、0.001%以下)だけ変化する垂直光学厚さを有することができる。対応する層の垂直光学厚さは、多層フィルム11および多層フィルム12における対応する位置で、約15nm以下(たとえば、約10nm以下、約5nm以下、約3nm以下、約2nm以下、約1nm以下、約0.5nm以下)だけ変化してもよい。
【0066】
多層フィルム11および12の層を形成するために用いられる誘電材料は、その光学特性(たとえばフィルムが機能することになっている波長におけるその屈折率およびこれらの波長における吸収)、互いに対する適合性および基板に対する適合性、光学フィルタを作成するために用いられる工程との適合性に基づいて選択される。一部の実施形態において、誘電材料としては、酸化物(たとえば、金属酸化物)、フッ化物(たとえば、金属フッ化物)、硫化物および/または窒化物(たとえば、金属窒化物)が挙げられる。酸化物の例としては、SiO2、Al2O3、Nb2O5、TiO2、ZrO2、HfO2、SnO2、ZnO、ErO2、Sc2O3およびTa2O5が挙げられる。フッ化物の例としては、MgF2が挙げられる。他の例としては、ZnS、SiNx、AlN、TiNおよびHfNが挙げられる。あるいはまたはさらに、材料は、金属(たとえば、Al、Pt、Cu)などの非誘電材料を含むことができる。
【0067】
高屈折率材料の例としては、632nmで屈折率が約2.35のTiO2、632nmで屈折率が約2.15のTa2O5が挙げられる。低屈折率材料の例としては、632nmで屈折率がそれぞれ1.45および1.65のSiO2およびAl2O3が挙げられる。
【0068】
一部の実施形態において、誘電材料は、実質的に非晶質(たとえば、約95%以上、約98%以上、約99%以上の非晶質)状態である。通常、非晶質材料は、光学的に等方性であり、部分的または大部分が結晶質である誘電層より良好に光を透過することができる。しかし、一部の実施形態において、誘電材料の一方または両方の一部またはすべては、結晶質であってもよい。
【0069】
フィルタ10の光透過率特性は、各多層フィルムにおける層の数、各層の光学厚さ、異なる層の相対的な光学厚さおよび各層の屈折率をはじめとする複数の設計変数に応じて変化してもよい。一部の実施形態において、フィルタは、光軸50に対する入射角の円錐の中でフィルタに当たる波長の帯域の中の実質的にすべての光を透過し、その帯域以外の実質的にすべての紫外波長、可視波長および/または赤外波長(たとえば、約200nm〜約2,000nmの透過帯域以外のすべて)を反射するように設計されてもよい。フィルタによって実質的に透過される波長は「通過波長」と呼ばれ、反射波長は「遮断波長」と呼ばれる。通過波長の帯域幅は、比較的広帯域(たとえば、約200nm〜約300nm以上)であってもよく、または狭帯域(たとえば、約0.4nm〜約20nm以下)であってもよい。
【0070】
図1Cは、光学フィルタの具体的な透過率スペクトルを示す。曲線C1は、光軸50に対して平行に光学フィルタに入射する光の透過率に対応する。この実施例では、軸上の光に関する通過波長は、λ1〜λ2の波長に対応し、光学フィルタが入射光の50%を透過する波長に対応する。一部の実施形態において、通過波長の帯域は、電磁スペクトルの可視部分(たとえば、約400nm〜約700nm)に対応することができる。遮断される波長は、赤外波長(たとえば、約700nm〜約2,000nm)を含むことができる。
【0071】
一部の実施形態において、光学フィルタ10は、通過波長の一部またはすべてで高い透過率を有することができる。たとえば、通過波長における透過率は、約95%以上(たとえば、約97%以上、約98%以上、約99%以上、約99.5%以上)であってもよい。一般に、通過波長における透過率は、光学フィルタを形成するために用いられる材料の吸収率および一様性、多層フィルムにおける層厚の精度に左右される。たとえば、通過波長で比較的高い吸収率を有する材料は、フィルタに当たる光を吸収することによって透過率を低減することができる。フィルタにおける非一様性(たとえば、不純物領域および/または結晶質領域)は、当たる光を散乱することによって透過率を低減することができる。層厚のずれは、通過波長において当たる光の可干渉反射を生じ、その透過率を低減することができる。透過率は、光学フィルタと大気との間の界面における反射損失を減少させることによってさらに向上される。多層フィルムが基板の対向する面の上に蒸着される実施形態において、唯一の面が多層フィルムによって被覆される光学フィルタに比べて、透過波長における光の反射率を低減することができる。
【0072】
遮断波長のすべてまたは一部における透過率は、比較的低く、約5%以下(たとえば、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下)などであってもよい。これらの波長における光学フィルタの反射率および/または吸収率を増大することにより、遮断波長における透過率を低減させることができる。各多層フィルムにおける層の数の増大および/または低屈折率層と高屈折率層との間の屈折率の差の増大により、遮断波長の反射率を増大することができる。
【0073】
一部の実施形態において、光学フィルタ10は、非垂直な角度でフィルタに入射する光に関する透過率帯域端では小さな青色シフトを有することができる。透過率帯域端の位置は、光学フィルタがそれに当たる光の50%を透過する波長に対応する。図1Cにおいて、これらは、曲線C1の場合の波長λ1およびλ2に対応する。これらの波長は通常、軸外の光に関する各多層フィルムにおける層の光学厚さの変動のために光の入射角に応じて変化する。帯域端の公称の位置は、垂直入射光に対応する。帯域端は、入射角が増大するとより短い波長にシフトすることから、「青色シフト」なる語が用いられる。たとえば、図1Cにおける曲線C2は、軸50に対して非平行である角度でフィルタに入射する光に関するフィルタの透過率スペクトルを示す。この実施例において、帯域端の位置は、λ1からλ1’にλ2からλ2’にシフトした。尚、λ1’<λ1であり、λ2’<λ2である。
【0074】
青色シフトの振幅は、光学フィルタ10における層を形成するために比較的高い屈折率(たとえば、約1.7以上、約1.8以上、約1.9以上、約2.0以上の屈折率)の材料を選択することによって低減してもよい。一部の実施形態において、青色シフトは、軸50に対して30°で入射する光の場合には、約30nm以下(たとえば、約25nm以下、約23nm以下、約20nm以下、約18nm以下、約15nm以下)であってもよい。
【0075】
一般に、多層フィルムは、必要に応じて調製されてもよい。一部の実施形態において、多層フィルム11および12は、原子層蒸着(ALD)を用いて調製されてもよい。図2Aを参照すると、ALDシステム100は、基板20の面21および22の上にそれぞれ多層フィルム11および12を蒸着するために用いられる。別の多層フィルム101が、露出面102の上に蒸着される。任意に、光学フィルタ10を形成するために(図1A参照)、一旦、蒸着工程が終了すると、多層フィルム101は基板20から除去されてもよい。多層フィルム11、12および101の蒸着は、単層ごとに生じ、フィルムの組成および厚さに関する実質的な制御を行う。単層の蒸着中、前駆物質の蒸気が室の中に導入され、基板面11、12および102の上またはこれらの面に隣接する既に蒸着された層に吸収される。続いて、反応物質が、室に導入され、吸着された前駆物質と化学的に反応し、所望の材料からなる単層を形成する。面における自己制御性により、蒸着される層のフィルム厚さおよび広い面積の均一性を正確に制御することができる。さらに、露出面への前駆物質の無指向性吸着は、室110に対して異なる向きを有する面の上に材料の一様な蒸着を提供する。
【0076】
ALDシステム100は反応室110を備え、反応室110は、マニホルド130によって源150、160、170、180および190に連結される。源150、160、170、180および190はそれぞれ、供給管路151、161、171、181および191によってマニホルド130に連結される。弁152、162、172、182および192はそれぞれ、源150、160、170、180および190からのガスの流れを調整する。源150および180はそれぞれ第1の前駆物質および第2の前駆物質を収容し、源160および190はそれぞれ第1の試薬および第2の試薬を備える。源170はキャリアガスを収容し、キャリアガスは蒸着工程中に、室110を常に貫流して、基板20に前駆物質および試薬を運搬すると同時に、基板から反応副生成物を運搬する。前駆物質および試薬は、マニホルド130においてキャリアガスと混合することによって、室110の中に導入される。ガスは、出口ポート145によって室110から排出される。ポンプ140は、出口ポート145によって室110からガスを排出する。ポンプ140は、管146によって出口ポート145に連結される。
【0077】
ALDシステム100は温度制御装置195を備え、温度制御装置195は室110の温度を制御する。蒸着中、温度制御装置195は、基板101の温度を、室温を上回るまで上昇させる。一般に、基板温度は、前駆物質と試薬との間の急速な反応を促進するほど十分に高い必要があるが、基板を損傷すべきではない。一部の実施形態において、基板温度は、約500℃以下(たとえば、約400℃以下、約300℃以下、約200℃以下、約150℃以下、約125℃以下、約100℃以下)であってもよい。
【0078】
通常、基板温度は、基板20の異なる部分の間で著しく変化すべきではない。大きな温度変動は、基板の異なる部分における前駆物質と試薬との間の反応速度の変動を生じる可能性があり、蒸着される層の厚さおよび/またはモルフォロジに変動を生じる可能性がある。一部の実施形態において、蒸着面の異なる部分の間の温度は、約40℃以下(たとえば約30℃以下、約20℃以下、約10℃以下、約5℃以下)だけ変化してもよい。
【0079】
蒸着工程変数は、電子制御装置199によって制御および同期される。電子制御装置199は、温度制御装置195、ポンプ140および弁152、162、172、182および192と通信する。電子制御装置199はまた、ユーザインターフェイスを備え、ユーザインターフェイスを通じて作業者が蒸着工程変数を設定し、蒸着工程を監視し、システム100とその他の相互作用を行うことができる。
【0080】
図2Bを参照すると、ALD工程が開始され(1010)、システム100が源170からのキャリアガスと混合することによって、第1の前駆物質を源150から室110に導入する(1020)。第1の前駆物質からなる単層が、基板20の面21、22および102の上に吸着され、残る前駆物質が室を通過するキャリアガスの連続流れによって、室110からパージされる(1030)。次に、システムは、マニホルド130によって源160から室110に第1の試薬を導入する(1040)。第1の試薬は、第1の前駆物質からなる単層と反応し、第1の材料からなる単層を形成する。第1の前駆物質に関して言えば、キャリアガスの流れは、残る試薬を室からパージする(1050)。ステップ1020〜1060は、第1の材料からなる層が所望の厚さに達するまで繰り返される(1060)。
【0081】
フィルムが材料からなる1つの層である実施形態では、一旦、第1の材料からなる層が所望の厚さに達すると、工程は停止する(1070)。しかし、蒸着されるフィルムが多層フィルムである場合には、システムは、マニホルド130を介して室110に第2の前駆物質を導入することができる(1080)。第2の前駆物質からなる単層は、第1の材料からなる蒸着された層の露出面の上に吸着され、キャリアガスは残る前駆物質を室からパージする(1090)。システムは、その後で、マニホルド130によって源180から室110に第2の試薬を導入する。第2の試薬は、第2の前駆物質からなる単層と反応し、第2の材料からなる単層を形成する(1100)。室を通るキャリアガスの流れは、残る試薬をパージする(1110)。ステップ1080〜1110は、第2の材料からなる層が所望の厚さに達するまで繰り返される(1120)。
【0082】
第1の材料および第2の材料からなる別の層が、ステップ1020〜1130を繰り返すことによって蒸着される。一旦、所望の数の層が形成されると、工程は終了し(1140)、被覆された基板が室110から排除される。
【0083】
上述した工程では各サイクル中に試薬の前に前駆物質が室に導入されるが、他の実施例では試薬が前駆物質の前に導入されてもよい。前駆物質および試薬が順序は、露出面との相互作用に基づいて選択されることができる。たとえば、前駆物質と面との間の結合エネルギが試薬と面との間の結合エネルギより高い場合には、前駆物質は試薬の前に導入されてもよい。あるいは、試薬の結合エネルギが高い場合には、試薬は前駆物質の前に導入されてもよい。
【0084】
各単層の厚さは一般に、複数の要因に左右される。たとえば、各単層の厚さは、蒸着されることになっている材料の種類に左右されうる。より大きな分子から構成される材料は、より小さな分子から構成される材料に比べて、より厚い単層を生じる可能性がある。
【0085】
基板の温度はまた、単層の厚さに影響を及ぼす可能性がある。たとえば、一部の前駆物質では、より高い温度は、蒸着サイクル中に面への前駆物質の吸着を低減する可能性があり、基板温度がさらに低い場合に形成されるものより薄い単層を生じる。
【0086】
前駆物質の種類および試薬の種類のほか、前駆物質および試薬の投与量もまた、単層の厚さに影響を及ぼす可能性がある。一部の実施形態において、材料の単層は、特定の前駆物質によって蒸着されてもよいが、異なる試薬を用い、各組み合わせに関して異なる単層の厚さを生じてもよい。同様に、異なる前駆物質から形成される材料の単層は、異なる前駆物質では異なる単層の厚さを生じることができる。
【0087】
単層の厚さに影響を及ぼす可能性がある他の要因の例としては、パージ期間、被覆された面における前駆物質の滞留時間、反応炉中の圧力、反応炉の物理的幾何構成および、副生成物から蒸着される材料に及ぼすと思しき影響が挙げられる。副生成物がフィルムの厚さに影響する場合の例は、副生成物が蒸着された材料を溶蝕する場合である。たとえば、HCLはTiCl4前駆物質および試薬として水を用いてTiO2を蒸着した場合の副生成物である。HClは、排出される前に蒸着されたTiO2を溶蝕する可能性がある。溶蝕は、蒸着された単層の厚さを減少させ、基板の一定の部分が他の部分よりHClに長くさらされている場合には、基板にわたって単層の厚さに変化が生じる可能性がある(たとえば、排気により近い基板の部分は、排気から遠い基板の部分より長く副生成物にさらされる可能性がある)。
【0088】
通常、単層の厚さは、約0.1nm〜約5nmである。たとえば、1層以上の蒸着される単層の厚さは、約0.2nm以上(たとえば、約0.3nm以上、約0.5nm以上)であってもよい。一部の実施形態において、1層以上の蒸着される単層の厚さは、約3nm以下(たとえば、約2nm、約1nm以下、約0.8nm以下、約0.5nm以下)であってもよい。
【0089】
平均的な蒸着される単層の厚さは、材料の層を形成するために、基板に予め設定された数の単層を蒸着することによって、決定されてもよい。続いて、蒸着される層の厚さが、(たとえば、偏光法、電子顕微鏡検査法または何らかの他の方法によって)測定される。次に、蒸着サイクルの数で除算される測定層厚として、平均的な蒸着される単層の厚さを決定することができる。平均的な蒸着される単層の厚さは、理論的な単層の厚さに対応してもよい。理論的な単層の厚さは、材料の嵩密度および分子の分子量から計算されてもよい単層を構成する分子の特性寸法を指す。たとえば、SiO2の場合の単層の厚さの推定値は、〜0.37nmである。厚さは、密度2.0g・cm−3の非晶質SiO2の式単位の立方根として推定される。
【0090】
一部の実施形態において、平均的な蒸着される単層の厚さは、理論的な単層の厚さの分率(たとえば、理論的な単層の厚さの約0.2、理論的な単層の厚さの約0.3、理論的な単層の厚さの約0.4、理論的な単層の厚さの約0.5、理論的な単層の厚さの約0.6、理論的な単層の厚さの約0.7、理論的な単層の厚さの約0.8、理論的な単層の厚さの約0.9)に対応することができる。あるいは、平均的な蒸着される単層の厚さは、2つ以上の理論的な単層の厚さから理論的な単層の厚さの約30倍まで(たとえば、理論的な単層の厚さの約2倍以上、理論的な単層の厚さの約3倍以上、理論的な単層の厚さの約5倍以上、理論的な単層の厚さの約8倍以上、理論的な単層の厚さの約10倍以上、理論的な単層の厚さの約20倍以上)に対応することができる。
【0091】
蒸着工程中、室110内の圧力は、実質的に一定の圧力に維持されてもよく、または変化してもよい。室を通るキャリアガスの流速を制御することは一般に、圧力を制御する。一般に、圧力は、前駆物質が面を化学吸着される種で飽和させ、試薬が前駆物質によって残された面の種と完全に反応し、前駆物質の次のサイクルのために反応点を残すことができるほど十分に高い必要がある。前駆物質および/または試薬の投与量が低すぎる場合および/またはポンプ速度が高すぎる場合に生じる可能性があるように、室の圧力が低すぎる場合には、面は前駆物質によって飽和されず、反応は自己制御されない可能性がある。これは、蒸着される層に不均等な厚さを生じる可能性がある。さらに、室の圧力は、前駆物質および試薬の反応によって生成される反応生成物の除去を妨げるほど高くすべきではない。前駆物質の次の投与が室に導入されるときに、残る副生成物が面の飽和と相互に作用し得る。一部の実施形態において、室の圧力は、約0.01トール〜約100トール(たとえば、約0.1トール〜約20トール、約0.5トール〜10トール、約1トール程度)で維持される。
【0092】
一般に、各サイクル中に導入される前駆物質および/または試薬の量は、室のサイズ、露出される基板面の面積および/または室の圧力に基づいて選択されてもよい。各サイクル中に導入される前駆物質および/または試薬の量は、経験的に決定されてもよい。
【0093】
各サイクル中に導入される前駆物質および/または試薬の量は、弁152,162、182および192の開閉のタイミングによって制御されてもよい。導入される前駆物質および/または試薬の量は、サイクルごとに各弁が開放している時間の量に対応する。弁は、基板面の適切な単層適用範囲を形成するために、十分な前駆物質を導入するほど十分に長く開放する必要がある。同様に、各サイクル中に導入される試薬の量は、露出された面に蒸着される実質的にすべての前駆物質と反応するほど十分である必要がある。必要以上に多い前駆物質および/または試薬を導入することは、サイクル時間を長引かせるか、および/または前駆物質および/または試薬を浪費する可能性がある。一部の実施形態において、前駆物質の投与は、サイクルごとに約0.1秒〜約5秒(たとえば、約0.2秒以上、約0.3秒以上、約0.4秒以上、約0.5秒以上、約0.6秒以上、約0.8秒以上、約1秒以上)の間、適切な弁を解放することに対応する。同様に、試薬の投与は、サイクルごとに約0.1秒〜約5秒(たとえば、約0.2秒以上、約0.3秒以上、約0.4秒以上、約0.5秒以上、約0.6秒以上、約0.8秒以上、約1秒以上)の間、適切な弁を解放することに対応してもよい。
【0094】
前駆物質の投与と試薬の投与との間の時間は、パージに対応する。各パージ期間は、残りの前駆物質または試薬を室から除去するほど十分に長い必要があるが、これより長い場合にはいたずらにサイクル時間を増大する可能性がある。各サイクルにおいて異なるパージ期間は、同一であってもよく、変化してもよい。一部の実施形態において、パージ期間は、約0.1秒以上(たとえば、約0.2秒以上、約0.3秒以上、約0.4秒以上、約0.5秒以上、約0.6秒以上、約0.8秒以上、約1秒以上、約1.5秒以上、約2秒以上)である。一般に、パージ期間は、約10秒以下(たとえば、約8秒以下、約5秒以下、約4秒以下、約3秒以下)である。
【0095】
前駆物質の順次の投与を導入する間の時間は、サイクル時間に対応する。サイクル時間は、異なる材料からなる単層を蒸着するサイクルでは、同一であってもよく、異なっていてもよい。さらに、サイクル時間は、同一材料からなる単層を蒸着するが、異なる前駆物質および/または異なる試薬を用いるサイクルでは、同一であってもよく、異なっていてもよい。一部の実施形態において、サイクル時間は、約20秒以下(たとえば、約15秒以下、約12秒以下、約10秒以下、約8秒以下、約7秒以下、約6秒以下、約5秒以下、約4秒以下、約3秒以下)であってもよい。サイクル時間を短縮することにより、蒸着工程の時間を短縮することができる。
【0096】
前駆物質は一般に、ALD工程と適合性があり、試薬との反応時に、所望の蒸着材料を形成するように選択される。さらに、前駆物質および材料は、蒸着される材料(たとえば、基板材料または既に蒸着された層を形成する材料)との適合性がある必要がある。前駆物質の例としては、TiCl4、SiCl4、SiH2Cl2、TaCl3、HfCl3、InCl3およびAlCl3などの塩化物(たとえば、金属塩化物)が挙げられる。一部の実施形態において、有機化合物が、前駆物質として用いられてもよい(たとえば、Ti−エタオキシド(ethaOxide)、Ta−エタオキシド(ethaOxide)、Nb−エタオキシド(ethaOxide))。有機化合物の前駆物質の別の例は、(CH3)3Alである。
【0097】
試薬もまた一般に、ALD工程と適合性があり、前駆物質および材料の化学反応に基づき選択される。たとえば、材料が酸化物である場合には、試薬は、酸化剤であってもよい。適切な酸化剤の例としては、水、過酸化水素、酸素、オゾン、(CH3)3Alおよび種々のアルコール(たとえばエチルアルコールCH3OH)が挙げられる。たとえば、水は、TiCl4などの前駆物質を酸化してTiO2を得るため、AlCl3を酸化してAl2O3を得るため、Ta−エタオキシド(ethaoxide)を酸化してTa2O5を得るため、Nb−エタオキシド(ethaoxide)を酸化してNb2O5を得るため、HfCl3を酸化してHfO2を得るため、ZrCl4を酸化してZrO2を得るため、InCl3を酸化してIn2O3を得るために適した試薬である。いずれの場合にも、HClが、副生成物として生成される。一部の実施形態において、シラノールを酸化してSiO2を形成するために、(CH3)3Alを用いてもよい。
【0098】
図3を参照すると、既に説明したように、ALD工程は、面21および22の上の多層フィルム11および12にそれぞれ加えて、基板20の縁面101に多層フィルムを形成する。ALD工程の性質のために、多層フィルム101は、多層フィルム11および12と同一の組成および厚さを有し、多層フィルム11および12と隣接している。さらに、多層フィルム101における各層は、多層フィルム11および12における対応する層と隣接している。このような層の一層である、層303が、図3に示されている。層303は、多層フィルム11の対応する層301および多層フィルム12の層302と同一の組成および厚さを有する。
【0099】
一部の実施形態において、ALDを用いて、基板のすべての面を実質的に被覆し、基板を封止してもよい。これは、最初のALD実行中に、基板の表面積の一部を露出させ、予めカバーされていた表面を露出させるために室における基板の向きが変更される2回目のALD実行で残る表面積を被覆することによって行われてもよい。任意に、実質的に同量の材料がそのたびに蒸着されるように、より早いALD実行で被覆された面は、2回目の実行でカバーされてもよい。あるいは、1回目のALD実行中に被覆されなかった表面は、何か別の被覆方法を用いて密閉されてもよい。基板材料が環境的な損傷を受けやすい場合および/またはフィルムを形成する材料が特に環境的な危険に対する耐性がある場合には、基板を封止することが好都合である場合がある。
【0100】
一定の実施形態が示されているが、他の実施形態も可能である。
【0101】
一例として、ALDを用いる赤外フィルタフィルムの調製について述べてきたが、ALDを用いて、他の種類のフィルム、たとえば、反射防止フィルム、紫外遮断フィルタ、狭帯域フィルタ、高密度波長分割多重(DWDM)フィルタ、位相補償器、高反射ミラーおよび/または導波路層などを形成してもよい。
【0102】
別の例として、一定数の層を有するフィルムについて述べてきたが、さらに一般に、フィルムは1層以上(たとえば2層、3層、4層、5層、6層、7層、8層、9層、10層、11層、12層、13層、14層、15層)の層を有することができる。通常、多層フィルムの層の数は、フィルムの所望の光学特性に基づいて選択される。一部の実施形態において、(たとえば、多層フィルムが異なる熱機械的特性(たとえば、異なる熱膨張係数)を有する材料を含む場合には、熱サイクルにさらされるのであれば、多くの層からなるフィルムは、より少数の層を有する匹敵するフィルムより大きな機械的応力を受ける可能性がある。一部の実施形態において、多層フィルムは、16層以上(たとえば、約20層以上、約30層以上、約40層以上、約50層以上)を含んでもよい。
【0103】
多層フィルム11および12における層厚の範囲は約20nm〜1,000nmであるが、ALDを用いて、これらの値より厚いか、または薄いフィルム層を蒸着してもよい。層は、1つの単層程度に薄くてもよく(たとえば、約0.3nm〜約2nm)、数千nmの厚さ(たとえば、約2,000nm以上、約3,000nm以上、約5,000nm以上)であってもよい。たとえば、一部の実施形態において、1層以上の層の厚さは、実質的に光波長未満(たとえば、実質的に200nm未満)であってもよい。たとえば、一定の層は、約20nm以下(たとえば、約15nm以下、約10nm以下、約8nm以下、約5nm以下、約2nm以下)の厚さを有することができる。一部の実施形態において、層の厚さは、材料の約20層の単層以下(たとえば、約15層の単層以下、約10層の単層以下、約8層の単層以下、約5層の単層以下、3層の単層以下、2層の単層、1層の単層)に対応することができる。尚、単層の厚さは、既に述べた理論的な単層の厚さを指す。フィルムにおける層の厚さが実質的に光波長未満である場合には、フィルムの光学特性は、フィルムを構成する材料の光学特性(たとえば、屈折率)の平均である。実質的に光波長未満の材料の層を含むフィルムは、ナノ積層と呼ばれる。一部の実施形態において、フィルムの1つ以上の部分は、ナノ積層であってもよい。ナノ積層部分は、ナノ積層部分を形成する材料の屈折率の有効平均である一様な屈折率を有する層のように機能することができる。一部の実施形態において、ナノ積層を用いて、多層フィルムにおける屈折率勾配部分を形成してもよい。ナノ積層部分の例としては、SiO2単層およびTiO2単層、またはSiO2単層およびTa2O5単層から構成される部分が挙げられる。
【0104】
さらに、多層フィルム11および12はそれぞれ、2つの異なる材料の層から構成されるが、一般にフィルムは3つ以上の異なる誘電材料からなる層を含んでもよい。たとえば、記載された実施形態ではすべての高屈折率層が同一の材料から形成されるが、一般に、高屈折率層は同一の材料から形成されてもよく、異なる材料から形成されてもよい。同様に、低屈折率材料の層は、同一の材料から形成されてもよく、異なる材料から形成されてもよい。一般に、多層フィルムにおける異なる材料層の数は、必要に応じて変化してもよい。
【0105】
さらに、多層フィルム11および12を形成する単層はそれぞれ、1つの誘電材料から形成されるが、一部の実施形態において、蒸着される層の組成は、2つ以上の材料を含むことができる。たとえば、2つ以上の前駆物質を室110に同時に導入することによって、2つ以上の異なる材料からなる単層が形成されてもよい。層における各単層の組成は、フィルムの屈折率分布に合わせて変化してもよい。
【0106】
フィルム11および12は面21および22の上で連続的であるが、一部の実施形態において、ALDを用いて調製される面の上のフィルムは不連続(たとえば、パターン形成)であってもよい。パターン形成は、ALD工程中またはALD工程後に行われてもよい。ALD工程中にパターン形成が行われる実施形態において、基板の部分は、前駆物質および/または試薬を接着しない材料で処理されてもよい。これらの部分に蒸着される材料はなく、ALD工程は未処理部分に材料の層を蒸着する。面の上に吸着される水を少なくするために、面の部分の上にたとえば、疎水性材料、テフロン噴霧などを被覆することも可能である。あるいはまたはさらに、基板面の部分を蒸着後に除去される材料によって隠して、その上に蒸着されたフィルムの部分を除去してもよい。
【0107】
フィルムは、フォトリソグラフィなどの技術を用いて、蒸着後にパターン形成されてもよい。たとえば、光学フィルタは、次にフィルムの部分を露出させるためにパターン形成され、エッチングされるレジストで被覆されてもよい。露出部分をエッチングし、残るレジストを次に除去することにより、パターンを施したフィルムを結果として生じる。
【0108】
基板10はガラスから構成されるオプティカルフラットであるが、一般に、基板の組成および形状は、変化してもよい。一般に、基板は、蒸着される材料、前駆物質、試薬および蒸着状態に適合する任意の材料から形成されてもよい。適切な基板材料としては、ガラス(たとえば、ホウケイ酸ガラス、石英、ソーダ石灰ガラス、ガラスセラミック)、金属(たとえば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、銅)、半導体(たとえば、ケイ素、ゲルマニウム)および/または熱硬化性ポリマーおよび熱可塑性ポリマーなどのポリマーが挙げられる。ポリマーの例としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル、液晶ポリマー、ポリエチルテレフタレート、ポリアミド、ポリ塩化ビニルおよびポリエチレンが挙げられる。
【0109】
基板は、高温に弱い材料を含む可能性があり、高温にさらされると損傷を受ける可能性がある。そのような状況において、基板温度は、蒸着工程中に基板を損傷すると推測される温度まで上昇すべきではない。一部の実施形態において、基板材料は、約150℃以上(たとえば、約170℃以上、約200℃以上、約300℃以上、約400℃以上、約500℃以上)の温度では不安定である可能性がある。たとえば、基板材料は、一定の温度を超えると、望ましくない物理的変化および/または化学的変化を被る可能性がある。望ましくない物理的変化の例は、位相変化である。たとえば、液晶ポリマー基板は、一定の温度を超えると、等方性になる可能性がある。一部の基板材料(たとえば、一部のポリマー)は、一定の温度を超えると、ガラス転移を被る可能性がある。たとえば、基板は、約150℃以上(たとえば、約200℃以上、約300℃以上、約400℃以上、約500℃以上)のガラス転移温度を有する材料を含む可能性がある。化学的変化の例は、基板材料の酸化(たとえば、銅基板の酸化)である。
【0110】
基板材料は、フィルムを形成するために用いられる1つ以上の材料に類似の熱機械的特性を有することができる。たとえば、基板材料の熱膨張係数(CTE)は、フィルムを形成するために用いられる1つ以上の材料のCTEに類似であってもよい。一部の実施形態において、基板材料のCTEは、フィルムの形成中に基板が循環される温度の範囲(たとえば、約0℃〜約300℃)にわたって、フィルムを形成するために用いられる材料のCTEの約10%以下(たとえば、約8%以下、約5%以下)の範囲内であってもよい。基板およびフィルムにおける材料の熱機械的特性を整合することにより、熱サイクルに伴って起こりうるフィルムの機械的応力を低減することができる。そうでなければ、フィルムの亀裂または他の損傷を生じる可能性がある。
【0111】
一部の実施形態において、基板は、光学素子または光学素子の部分であってもよい。光学素子としては、屈折素子(たとえば、レンズ)、拡散素子(たとえば、拡散回折格子)、反射体(たとえば、ミラー)および発光素子(たとえば、発光ダイオード、レーザ)が挙げられる。
【0112】
一部の実施形態において、ALDを用いて被覆される基板面は、基板10の面21および22などの実質的に平面であってもよい。本願明細書で用いられるとき、実質的に平面とは、100m以上の曲率半径を有する。あるいは、被覆面は湾曲していてもよい。曲面は、100m未満の曲率半径を有する。一部の実施形態において、面は、構造面であってもよい。構造面は、面法線において不連続性を有する面を指す。構造面は、平面である部分および/または湾曲している部分を有することができる。曲面を有する基板の例は、レンズであり、図4のレンズ401などである。レンズ401の曲面411および421は、ALDを用いて、それぞれフィルム410および420で被覆される。フィルム410および420は、各面にわたって均一な厚さを有する面411および421に適合する。フィルム410および420は、異なる組成からなる1つの層または複数の層を含んでもよい。フィルム410および420が多層フィルムである実施形態において、多層フィルムにおける各層は、フィルムにわたって均一な厚さを有することができる。フィルム410および420は、同一であってもよく、異なっていてもよい。たとえば、フィルムはいずれも、既に説明したフィルム11および12に類似の光学フィルタを形成することができる。別の実施例において、フィルム10は光学フィルタであり、フィルム420は反射防止フィルムであってもよい。フィルムが同一である実施形態において、これらはALD工程中に両方の面411および421を露出させることによって同時に形成されてもよい。
【0113】
一般に、ALDを用いて被覆される面の曲率は変化してもよい。一部の実施形態において、基板は中程度の曲面を有してもよく、約1m以上(たとえば、約2m以上、約3m以上、約5m以上、約10m以上、約20m以上)などの比較的大きい曲率半径を有してもよい。曲率の小さい基板面の例としては、眼鏡に用いられる一定のレンズなどの一部のレンズが挙げられる。あるいは、場合によっては、基板面は、大きな曲率を有してもよく、約10cm以下(たとえば、約8cm以下、約5cm以下、約3cm以下、約2cm以下、約1cm以下、約0.5cm以下、約0.1cm以下)などの比較的小さい曲率半径を有してもよい。大きな曲率を有する基板面の例としては、ボールレンズなどの種々のレンズが挙げられる。
【0114】
一部の実施形態において、基板は、ALDを用いてフィルムで被覆される1つ以上の構造面を含むことができる。図5を参照すると、構造面の例は、フレネルレンズ501の面520である。ALDを用いて、面520の傾斜521およびドラフト522の上にフィルム510(たとえば、1層のフィルムまたは多層フィルム)を蒸着してもよい。ALD工程の等角性は、傾斜521およびドラフト522の両方の上に実質的に均一な厚さを有するフィルム510を結果として生じる。一部の実施形態において、フィルム510は反射防止フィルムであり、そうでなければレンズの使用中に経験する可能性があるゴースト効果を低減(たとえば、排除)することができる。
【0115】
ALDを用いて被覆されてもよい構造面の他の例としては、機械刻線回折格子およびレリーフ型回折格子などの回折格子構造、光ファイバの面または中空導波路(たとえば、円形断面、正方形断面または矩形断面を有する)の内面などの円筒面などが挙げられる。別の例は、光ファイバの劈開面である。たとえば、一部の遠距離通信用途は、劈開されたファイバがレンズまたは光学部品のきわめて近くに位置決めされる設計方式を用いる。ALDを用いてARフィルムを劈開面の上に被覆することにより、面における反射を低減することができる。1回のALD実行で、複数の劈開面が被覆されてもよい。
【0116】
本願明細書に開示される方法を用いて形成される光学部品を種々の光学システムで用いてもよい。図6を参照すると、一部の実施形態において、ALD技術を用いて形成される赤外フィルタ610は、イメージングシステム600において用いられる。イメージングシステムは、アパーチャ640を通って画像平面にある検出器650(たとえば、電荷結合素子(CCD)または相補型金属酸化物半導体(CMOS)検出器)の上に入る軸660に対して伝搬する光を結像するレンズ620および630を備える。赤外フィルタ610は、レンズ620と検出器650との間に位置決めされる。赤外フィルタ610は、多層フィルム611および612を備え、検出器650に当たるアパーチャ640を通って入る赤外光の量を低減(たとえば、実質的に排除)することができる。たとえば、赤外フィルタは、遮断波長で光の量を約20%以上(たとえば、約50%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上)減少させることができる。一部の実施形態において、赤外フィルタ610は、図1Cに示されるスペクトルに類似の透過率スペクトルを有する。
【0117】
一部の実施形態において、ALDを用いて、光学システムに光学部品を集積してもよい。たとえば、イメージングシステム600における別個の赤外フィルタ610は、イメージングシステムにおいてレンズの1つ以上の面の上に直接被覆されるフィルタで置き換えてもよい。たとえば、図7を参照すると、イメージングシステム700は、アパーチャ740を通って検出器750の上に入る軸760に対して伝搬する光を結像する1対のレンズ720および730を備える。光学フィルタ710は、レンズ720および730の面721、722、731および732の上にそれぞれ蒸着される多層フィルム713、714、711および712を備える。図6に示される赤外フィルタ610のように、光学フィルタ710は、検出器750に当たるアパーチャ740を通って入る赤外光の量を低減(たとえば、実質的に排除)することができる。
【0118】
さらなる実施形態において、図8は、レンズ820の1つの面821の上に蒸着される赤外フィルタ810を備えるイメージングシステム800を示す。イメージングシステム800はまた、第2のレンズ830、検出器850およびアパーチャ840を備える。レンズ820および830は、アパーチャ840を通って検出器850の上に入る光を結像する。結像される光線の発散が最小である場合には、面821はレンズ面に対応する。言い換えれば、結像される光線の伝搬方向の最大差は、レンズ720および730の他の面における結像される光線の伝搬方向の最大差より小さい。したがって、フィルタが面810に位置している場合には、フィルタの帯域幅に関連する最大の青色シフトは、フィルタがイメージングシステム800における他の面に位置している場合より小さい。
【0119】
光線の発散は、光線860および870によって示され、共通の源点から発せられ、検出器850上の共通の点851に結像される。イメージングシステム800の光軸899に対する光線860および870の伝搬角はそれぞれ、φ1およびφ2である。光線の発散は、φ1とφ2との差である。一部の実施形態において、結像光の光線は、赤外フィルタ810で約20°以下(たとえば、約15°以下、約10°以下、約8°以下)の最大発散を有する。したがって、軸899に沿って伝搬する光線に比べて、システムの周辺光線によって経験される青色シフトは、約20nm以下(たとえば、約15nm以下、約12nm以下、約10nm以下)であってもよい。
【0120】
他の実施形態において、図9は、検出器950(たとえば、CCDまたはCMOS検出器)の面951の上に蒸着される赤外フィルタ910を備えるイメージングシステム900を示す。イメージングシステム900はまた、レンズ920、第2のレンズ930およびアパーチャ940を備える。レンズ920および930は、アパーチャ940を通って検出器950の上に入る光を結像する。
【0121】
既に説明したようなイメージングシステムは、ディジタルカメラおよびディジタルカムコーダなどの電子装置に用いられてもよい。一部の実施形態において、イメージングシステムは、携帯電話におけるディジタルカメラに用いられてもよい。
【実施例】
【0122】
以下の実施例は、例示であり、限定するものを意味するわけではない。
【0123】
実施例I
光学フィルタは、カリフォルニア州サンタポーラ(Santa Paula,CA)のアブリサ(Abrisa)から入手されたBK7オプティカルフラット(直径100mm)の対向する側面の上に多層フィルムを蒸着することによって形成された。オプティカルフラットは、H2O:H2O2:NH4OH溶液によって不溶性の有機汚染物質を除去し、H2O:H2O2:HCl溶液を用いてイオンおよび重金属原子の汚染物質を除去することによって、清浄にした。高屈折率材料はTiO2であり、低屈折率材料はAl2O3であった。高屈折率材料用の前駆物質は、ミズーリ州セントルイス(St.Louis,MO)のシグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)から入手されたTi−エタオキシド(ethaoxide)(等級純度99.999%)であった。低屈折率材料用の前駆物質は、ミズーリ州セントルイス(St.Louis,MO)のシグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)から入手された(CH3)3Al(等級純度99.999%)であった。いずれの材料の場合も、試薬は脱イオン水であり、コネチカット州ダンブリー(Danbury,CT)のアライド・ウォーター・テクノロジーズ(Allied Water Technologies)から市販されている純水製造装置を用いて形成された。
【0124】
多層フィルムを蒸着するために、オプティカルフラットは、オレゴン州ビーヴァートン(Beaverton、OR)のプラナー・システムズ・インコーポレイテッド(Planar Systems,Inc.)から入手されたP400A ALD反応室に配置された。空気は、室からパージされた。窒素は、室を貫流し、約1トールで室の圧力を維持した。室の温度は、170℃に設定され、基板を熱的に平衡状態に保つために、約7時間放置された。一旦、熱平衡に達すると、水蒸気の初期パルスが0.7秒間給水のために、弁を開放することによって室に導入された。給水用の弁が閉鎖された後、室は、3秒間の窒素の流れによってパージされた。次に、(CH3)3Al用の弁が0.8秒間、開放され、室に(CH3)3Alを導入した。水蒸気の別の投与が導入される前に、室は、1.5秒間、の窒素の流れによってパージされた。水蒸気(0.7秒)および(CH3)3Al(0.8秒)の交互の投与が、パージの間に導入され、基板の露出面の上にAl2O3の層が形成される結果となった。総サイクル時間は、7秒であった。このサイクルが95回繰り返され、厚さ9.56nmのAl2O3層を結果として生じた。
【0125】
Al2O3層を蒸着した後、水蒸気が2秒のパルスで室の中に導入された。この後に、2秒のパージ、Ti−エタオキシド(ethaoxide)の1秒のパルス、さらに2秒のパージが行われた。このサイクルは、172回繰り返され、Al2O3層の上に厚さ6.48nmのTiO2層を結果として形成した。
【0126】
Al2O3およびTiO2の別の層が、露出された基板面の上に多層フィルムを形成するための、上記で概要を説明したステップを用いて蒸着された。各層の厚さおよび各層を蒸着するために用いられる蒸着サイクルの回数が、表Iにまとめられている。
【0127】
図10を参照すると、光学フィルタの性能は、マサチューセッツ州ウェルズリー(Wellesley,MA)のパーキン・エルマー(Perkin−Elmer)から入手されるラムダ14紫外・可視分光光度計(Lambda 14 UV/Vis spectrometer)を用いて調査された。光学フィルタの透過率スペクトルは、0°および30°の入射で測定された。0°では、通過帯域は、約380nm〜約680nmに及んだ。これらの波長の透過率は、約90%であった。光学フィルタは、約690nm〜約1,100nmの波長の光を実質的に遮断した。680nmの帯域端は、30°で入射する光の場合には約20nmだけシフトして約650nmであった。
【0128】
実施例II
光学フィルタは、実施例Iで記載した方法を用いて形成された。高屈折率材料ははTiO2であり、低屈折率材料はAl2O3である。高屈折率材料用の前駆物質はTi−エタオキシド(ethaoxide)であり、低屈折率材料用の前駆物質はTMAであった。いずれの材料の場合も、試薬は脱イオン水である。
【0129】
最初に、厚さ307.7nmのAl2O3緩衝層が蒸着される。この層は、3045回のALDサイクルによって形成される。それぞれの追加層の厚さおよび各層を蒸着するために用いられる蒸着サイクルの回数が、表Iにまとめられている。サイクル時間は、実施例Iに記載されたものと同一である。
【0130】
図11を参照すると、光学フィルタの性能が、分光光度計を用いて調査される。光学フィルタの透過率スペクトルは、0°で測定された。0°の入射では、通過帯域は、約390nm〜約650nmに及んだ。これらの波長の透過率は、約92%〜約94%であった。光学フィルタは、約670nm〜約1,100nmの波長の光を実質的に遮断した。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
他の実施形態は、冒頭の特許請求の範囲に属している。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1A】光学フィルタの断面図である。
【図1B】図1Aに示される光学フィルタの一部の断面図である。
【図1C】軸上入射および軸外入射に関する透過率を示す光学フィルタに関する透過率スペクトルのグラフである。
【図2A】原子層蒸着システムの概略図である。
【図2B】原子層蒸着工程を要約するフローチャートである。
【図3】基板の隣接面に蒸着される隣接する多層フィルムの断面図である。
【図4】対向する面にあるフィルムを備えたレンズの断面図である。
【図5】構造面にあるフィルムを備えたフレネルレンズの一部の断面図である。
【図6】光学フィルタを備えたイメージングシステムの概略図である。
【図7】光学フィルタを備えた別のイメージングシステムの概略図である。
【図8】光学フィルタを備えた他のイメージングシステムの概略図である。
【図9】光学フィルタを備えた別のイメージングシステムの概略図である。
【図10】0°および30°で入射する光に関する光学フィルタの透過率スペクトルである。
【図11】0°で入射する光に関する別の光学フィルタの透過率スペクトルである。
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、光学用途向けのフィルム、そのようなフィルムを含む物品、そのようなフィルムの作製方法およびそのようなフィルムを用いるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
光の操作が望ましい場合には、光学デバイスおよび光学システムが一般に用いられる。光学デバイスの例としては、レンズ、偏光子、光学フィルタ、反射防止フィルム、リターダ(たとえば、4分の1波長板)およびビームスプリッタ(たとえば、偏光ビームスプリッタおよび非偏光ビームスプリッタ)が挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
概要
本発明は、光学用途向けのフィルム、そのようなフィルムを含む物品、そのようなフィルムの作製方法およびそのようなフィルムを用いるシステムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様において、本発明は、基板の上にフィルムを形成するための方法であって、第1の材料からなる複数の単層を順次蒸着させることによって、第1の材料からなる層を形成する工程を含み、第1の材料からなる単層のうちの1層は基板の第1の面の上に蒸着され、フィルムが第1の材料からなる層を含み、基板がポリマーを含むことを特徴とする。
【0005】
別の態様において、本発明は、光学部品の上に多層フィルムを形成するための方法であって、第1の材料からなる複数の単層を順次蒸着させることによって、第1の材料からなる層を形成する工程を含み、第1の材料からなる単層のうちの1層は光学部品の光学部品の第1の面の上に蒸着され、第2の材料からなる複数の単層を順次蒸着させることによって、第2の材料からなる層を形成する工程を含み、第2の材料からなる単層のうちの1層は第1の材料からなる層の面の上に蒸着され、多層フィルムは第1の材料からなる層および第2の材料からなる層を含み、光学部品はレンズであることを特徴とする。
【0006】
別の態様において、本発明は、基板の第1の面および第2の面の上にフィルムを同時に蒸着するために原子層蒸着を用いる工程を含み、第1の面は第2の面に対向していることを含む方法を特徴とする。
【0007】
別の態様において、本発明は、光学基板の第1の面および第2の面の上に第1の材料からなる層を同時に蒸着するために原子層蒸着を用い、第1の面が第2の面に対向していることを含む方法を特徴とする。
【0008】
別の態様において、本発明は、ポリマーを含む基板の面の上に多層フィルムを蒸着するために原子層蒸着を用いる工程を含む方法を特徴とする。
【0009】
別の態様において、本発明は、基板の上にフィルムを形成するための方法であって、第1の材料からなる複数の単層を順次蒸着させることによって、第1の材料からなる層を形成する工程を含み、第1の材料からなる単層のうちの1層は基板の第1の面の上に蒸着され、フィルムは第1の材料からなる層を含み、基板はレンズを含むことを特徴とする。
【0010】
別の態様において、本発明は、曲面を含む基板の上にフィルムを形成するための方法であって、第1の材料からなる複数の単層を順次蒸着させることによって、第1の材料からなる層を形成する工程を含み、第1の材料からなる単層のうちの1層は基板の曲面の上に蒸着され、フィルムは第1の材料からなる層を含むことを特徴とする。
【0011】
別の態様において、本発明は、基板の上にフィルムを形成するための方法であって、第1の材料からなる複数の単層を順次蒸着させることによって、第1の材料からなる層を形成する工程を含み、第1の材料からなる単層のうちの1層は基板の第1の面および第2の面の上に同時に蒸着され、フィルムは第1の材料からなる層を含み、第1の面は第2の面に対向することを特徴とする。
【0012】
別の態様において、本発明は、基板の上にフィルムを形成するための方法であって、第1の材料からなる複数の単層を順次蒸着させることによって、第1の材料からなる層を形成する工程を含み、第1の材料からなる単層のうちの1層は基板の第1の非共面および第2の非共面の上に同時に蒸着され、フィルムは第1の材料からなる層を含み、第1の面は第2の面に隣接していることを特徴とする。
【0013】
別の態様において、本発明は、レンズの面の上に多層フィルムを蒸着するために原子層蒸着を用いる工程を含む方法を特徴とする。
【0014】
別の態様において、本発明は、曲面または構造面の上に多層フィルムを蒸着するために原子層蒸着を用いる工程を含む方法を特徴とする。
【0015】
実施形態は、以下の特徴を1つ以上含むことができる。
【0016】
第1の材料からなる複数の単層を蒸着する工程は、前駆物質からなる単層を蒸着する工程と、前駆物質からなる単層を試薬にさらして、第1の材料からなる単層を形成する工程と、を含むことができる。試薬は、前駆物質と化学的に反応して、第1の材料を形成することができる。たとえば、試薬は、前駆物質を酸化して第1の材料を形成することができる。前駆物質からなる単層を蒸着する工程は、基板を収容する室の中に前駆物質を含む第1のガスを導入する工程を含むことができる。室における第1のガスの圧力は、約0.01〜約100トールであってもよい。前駆物質からなる単層を試薬にさらす工程は、室の中に試薬を含む第2のガスを導入する工程を含むことができる。室における第2のガスの圧力は、約0.01〜約100トールであってもよい。第1のガスが導入された後であって、第2のガスを導入する前に、第3のガスを室の中に導入することができる。第3のガスは、前駆物質に対して不活性であってもよい。第3のガスとしては、ヘリウム、アルゴン、窒素、ネオン、クリプトンおよびキセノンからなる群から選択される少なくとも1つのガスを挙げることができる。前駆物質は、トリス(tert−ブトキシ)シラノール、(CH3)3Al、TiCl4、SiCl4、SiH2Cl2、TaCl3、AlCl3、Hf−エタオキシド(ethaoxide)およびTa−エタオキシド(ethaoxide)からなる群から選択されることができる。第1の材料は、誘電材料であってもよい。
【0017】
本方法は、第2の材料からなる複数の単層を順次蒸着させることによって、第2の材料からなる層を形成する工程を含み、第2の材料からなる単層のうちの1層は第1の材料からなる層の上に蒸着され、第2の材料は第1の材料とは異なり、フィルムは第2の材料からなる層を含むことができる。第2の材料からなる複数の単層を蒸着する工程は、前駆物質からなる単層を蒸着する工程と、前駆物質からなる単層を試薬にさらして、第2の材料からなる単層を形成する工程とを含むことができる。試薬は、前駆物質と化学的に反応して、第2の材料を形成することができる。たとえば、試薬は、前駆物質を酸化して第2の材料を形成することができる。前駆物質からなる単層を蒸着する工程は、基板を収容する室の中に前駆物質を含む第1のガスを導入する工程を含むことができる。室における第1のガスの圧力は、約0.01〜約100トールであってもよい。前駆物質からなる単層を試薬にさらす工程は、室の中に試薬を含む第2のガスを導入する工程を含むことができる。室における第2のガスの圧力は、約0.01〜約100トールであってもよい。第1のガスが導入された後であって、第2のガスを導入する前に、室は、パージガスでパージすることができる。パージガスは、第1の前駆物質に対して不活性であってもよい。パージガスとしては、ヘリウム、アルゴン、窒素、ネオン、クリプトンおよびキセノンからなる群から選択される少なくとも1つのガスを挙げることができる。前駆物質は、トリス(tert−ブトキシ)シラノール、(CH3)3Al、TiCl4、SiCl4、SiH2Cl2、TaCl3、AlCl3、Hf−エタオキシド(ethaoxide)およびTa−エタオキシド(ethaoxide)からなる群から選択されることができる。第2の材料は、誘電材料であってもよい。
【0018】
本方法は、第2の材料からなる層の面の上に第3の材料からなる層を形成する工程をさらに含み、第3の材料は第2の材料とは異なり、フィルムは第3の材料からなる層を含むことができる。第3の材料は、第1の材料と同一であってもよい。第3の材料からなる層は、原子層蒸着を用いて蒸着されることができる。本方法はまた、第3の材料からなる層の面の上に第4の材料からなる層を形成する工程をさらに含み、第4の材料は第3の材料とは異なり、フィルムは第4の材料からなる層を含むことができる。第4の材料は、第2の材料と同一であってもよい。第4の材料からなる層は、原子層蒸着を用いて蒸着されることができる。本方法は、第4の材料からなる層によって支持される別の層を形成する工程を含むことができる。別の層は、原子層蒸着を用いて形成されることができる。
【0019】
基板は、光学部品であってもよい。本方法は、基板の第2の面の上に第1の材料からなる層を形成し、同時に、第1の面の上に第1の材料からなる層を形成する工程を含み、第2の面は第1の面と対向するか、または第1の面と隣接することができる。第1の材料からなる層は、第1の材料からなる複数の単層を順次蒸着することによって、第2の面の上に形成されることができ、第1の材料からなる単層のうちの1層は基板の第2の面の上に蒸着される。
【0020】
本方法は、基板の第2の面の上に蒸着される第1の材料からなる層の上に第2の材料からなる層を形成し、同時に、第1の面の上の第1の材料からなる層の上に第2の材料からなる層を形成する工程を含み、第2の面は第1の面と対向するか、または第1の面と隣接することができる。第2の材料からなる層は、第2の材料からなる複数の単層を順次蒸着することによって、第2の面の上に蒸着される第1の材料からなる層の上に形成されることができ、第2の材料からなる単層のうちの1層は第2の面の上に蒸着される第1の材料からなる層の面の上に蒸着されることができる。
【0021】
第1の材料からなる層を形成している間、基板は約500℃以下(たとえば、約300℃以下、約200℃以下、約150℃以下、約100℃以下、約80℃以下、約70℃以下、約60℃以下、約50℃以下)の温度であってもよい。
【0022】
基板がポリマーを含む実施形態において、ポリマーは熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーであってもよい。
【0023】
さらなる態様において、本発明は、第1の面および第1の面に隣接する第2の面を有する基板を備え、第1の面および第2の面は非共面であり、第1の面の上に蒸着される第1の多層フィルムと、第2の面の上に蒸着される第2の多層フィルムと、を備え、第2の多層フィルムは第1の多層フィルムと隣接する物品を特徴とする。
【0024】
別の態様において、本発明は、第1の面および第1の面に対向する第2の面を有する光学部品と、第1の面の上に蒸着される第1の材料からなる層と、第2の面の上に蒸着される第1の材料からなる層と、を備え、第1の面の上の位置における第1の材料からなる層の垂直光学厚さは、第2の面の上の対応する位置における第1の材料からなる層の垂直光学厚さの約5%以内である物品を特徴とする。
【0025】
別の態様において、本発明は、約10m以下の曲率半径を有する面を有し、面が第1の位置および第2の位置を有し、第1の位置における面法線と第2の位置における面法線との間の角度が約2°以上である基板と、面の上に蒸着されるフィルムと、を備え、フィルムは第1の材料からなる層を含み、第1の位置における層の垂直光学厚さは第2の位置における層の垂直光学厚さの約1%以内である物品を特徴とする。
【0026】
別の態様において、本発明は、第1の面および第1の面に対向する第2の面を有する基板と、第1の面の上に蒸着される第1のフィルムと、第2の面の上に蒸着される第2のフィルムと、を備え、第1の面の上の位置における第1のフィルムの垂直光学厚さは、第2の面の対応する位置における第2のフィルムの垂直光学厚さの約5%以内である物品を特徴とする。
【0027】
別の態様において、本発明は、ポリマーを含む基板および基板の第1の面の上に蒸着される多層フィルムを備える物品を特徴とする。
【0028】
別の態様において、本発明は、光軸を画定する多層フィルムを備える光学フィルタであって、光学フィルタは光軸に沿って伝搬する波長λ1を有する光の50%を透過し、光軸に対して30°の角度で多層フィルムに入射する波長λ2を有する光の50%を透過し、|λ1−λ2|は約30nm以上であることを特徴とする。
【0029】
実施形態は、以下の特徴を1つ以上含んでもよい。
【0030】
第1の多層フィルムおよび第2の多層フィルムは、第1の材料からなる隣接層を含むことができる。第1の多層フィルムおよび第2の多層フィルムは、第2の材料からなる隣接層を含むことができ、第2の材料は第1の材料とは異なり、第2の材料からなる隣接層は第1の材料からなる隣接層によって支持される。第1の多層フィルムおよび第2の多層フィルムは、3層以上の隣接層を含むことができ、近接層は異なる材料から形成される。
【0031】
基板は、光学部品(たとえば、フレネルレンズ、オプティカルフラットなどのレンズ)であってもよい。基板は、ガラスを含むことができる。ガラスは、ホウケイ酸ガラス、ガラスセラミック、石英、溶融シリカおよびソーダ石灰ガラスからなる群から選択されることができる。あるいはまたはさらに、基板は、ポリマー(たとえば、熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマー)を含むことができる。ポリマーは、ポリカーボネート、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルおよびポリメチルメタクリレートからなる群から選択されることができる。基板は、約250℃以下(約200℃以下、約150℃以下、約100℃以下、約80℃以下)のガラス転移温度を有する材料を含むことができる。基板は、約0℃〜300℃の温度では第1の材料の熱膨張係数の10%以内の熱膨張係数を有する基板材料を含むことができる。面は、約100m以下の曲率半径を有することができる。あるいは、面は、実質的に平面であってもよい。面は、構造面であってもよい。第1の材料は、誘電材料であってもよい。第1の材料は、酸化物であってもよい。たとえば、酸化物は、金属酸化物であってもよい。一部の実施形態において、金属酸化物は、SiO2、Al2O3、Nb2O5、TiO2、ZrO2、HfO2およびTa2O5からなる群から選択される。
【0032】
隣接層は、約1nm以上(たとえば、約10nm以上、約20nm以上)の垂直光学厚さを有することができる。一部の実施形態において、隣接層は、約5,000nm以下(たとえば、約1,000nm以下、約500nm以下)の垂直光学厚さを有することができる。
【0033】
第1の多層フィルムおよび第2の多層フィルムは、反射防止フィルムである。一部の実施形態において、物品は、光学フィルタである。光学フィルタは、赤外フィルタであってもよい。赤外フィルタは、物品を通過する約650nm〜約1,100nmの波長を有する光の透過率を低減することができる。光学フィルタは、紫外フィルタであってもよい。紫外フィルタは、物品を通過する約400nm未満の波長を有する光の透過率を低減することができる。
【0034】
第1の材料の屈折率は、第2の材料の屈折率とは異なっていてもよい。第1の材料からなる隣接層の垂直光学厚さは、第2の材料からなる隣接層の垂直光学厚さと同一であってもよい。あるいは、第1の材料からなる隣接層の垂直光学厚さは、第2の材料からなる隣接層の垂直光学厚さとは異なっていてもよい。物品は、基板の第3の面の上に蒸着される第3の多層フィルムを含むことができ、第3の面は第1の面と対向する。第1の多層フィルム、第2の多層フィルムおよび第3の多層フィルムは、同一であってもよい。
【0035】
一部の実施形態において、λ1は約650nmである。
【0036】
さらなる態様において、本発明は、物体からの光を画像平面に結像するためのレンズと、光学フィルタがない同一の光学システムに比して、画像平面で波長λの集束光の量を約20%以上減少させるようレンズに対して位置決めされる複数の層を含む光学フィルタと、を備え、層のうちの1層がレンズの第1の面の上に蒸着される光学システムを特徴とする。
【0037】
別の態様において、本発明は、レンズおよび画像平面に対して位置決めされる光学フィルタを備え、光学フィルタは第1の面および第2の面を有する基板を備え、第1の面は第2の面に対向し、第1の面および第2の面の上に蒸着される第1の多層フィルムおよび第2の多層フィルムをそれぞれ備え、第1の多層フィルムは第2の多層フィルムと同一である光学システムを特徴とする。
【0038】
別の態様において、本発明は、光学システムの1つを含むディジタルカメラを特徴とする。
【0039】
さらなる態様において、本発明は、ディジタルカメラを含む携帯電話を特徴とする。
【0040】
実施形態は、以下の特徴を1つ以上含むことができる。
【0041】
第1の面は、約2m以下の曲率半径を有することができる。画像平面は、レンズから約5cm以下(たとえば、約1cm以下、約0.5cm以下)であってもよい。光学システムは、画像平面に位置決めされる検出器を備えることができる。検出器は、電荷結合素子(CCD)アレイまたは相補型金属酸化物半導体(CMOS)アレイであってもよい。光学フィルタは、検出器の面の上に蒸着されてもよい。
【0042】
複数の層は、複数の誘電層を含むことができる。複数の層からなる交互の層は、異なる屈折率を有することができる。複数の層は、第1の面に対向するレンズの第2の面の上に蒸着される層を含むことができる。λは、約650nm以上であってもよい。たとえば、λは、約650nm〜1,100nmであってもよい。光学フィルタは、画像平面で波長λの集束光を約50%以上(たとえば、約80%以上、約90%以上、約95%以上)減少させることができる。
【0043】
光学システムは、物体からの光を画像平面に結像するための第2のレンズを含むことができる。光学フィルタの層のうち1層は、第2のレンズの面の上に蒸着されてもよい。結像される光の光線は、第1の面で約20°以下(たとえば、約15°以下、約10°以下)の最大発散を有することができる。光学フィルタは、レンズと画像平面との間に位置してもよい。
【0044】
本発明の実施形態は、以下の利点を1つ以上含んでもよい。
【0045】
一部の実施形態において、フィルムは、きわめて均一(たとえば、きわめて均一な厚さ、きわめて均一な屈折率)である1層以上の層を含むことができ、たとえば、それ自体がきわめて均一(たとえば、きわめて均一な厚さ、きわめて均一な屈折率)であるフィルムを生じることができる。1つ以上のそのようなフィルムを含む光学デバイスなどの物品は、強化した性能を呈することができる。一例として、1つ以上のそのようなフィルムを含む光学フィルタは、望ましくない波長の遮断にきわめて効果的であり、所望の波長の透過についてもきわめて効果的であってもよい。
【0046】
きわめて均一な層は、蒸着から蒸着まで反復可能に蒸着して、きわめて均一な(たとえば、きわめて均一な厚さ、きわめて均一な屈折率)多層フィルムを形成し、きわめて均一な(たとえば、きわめて均一な厚さ、きわめて均一な屈折率)層を有する異なる基板の上にフィルムを形成してもよい。そのようなフィルムを含む光学デバイスなどの物品は、厳格な均一性の仕様に適合するように製造され得る。一例として、そのようなフィルムを含む光学フィルタは、厳密な光学性能の仕様の範囲内で機能することができる。たとえば、そのようなフィルムを含む一群の光学フィルタに関する透過率帯域端の位置は、各フィルタに関して実質的に同一であってもよい。
【0047】
ある実施形態において、フィルムは、基板によって支持される等角層である1層以上の層を含むことができる。等角層はまた、きわめて均一であってもよい(たとえば、きわめて均一な厚さを有する)。1つ以上のそのような光学フィルムを含んでいる光学デバイスなどの物品は、強化した性能を呈することができる。一例として、フレネルレンズの構造面は、反射防止(AR)フィルムによって被覆され、レンズの強化した性能を提供してもよい。そのようなレンズにおけるARフィルムは、レンズの構造面における望ましくない反射のために生じ得る「ゴースト」を低減することができる。別の例として、きわめて均一なフィルム(たとえば、きわめて均一な厚さ、きわめて均一な屈折率)は、ボールレンズの面または積分球の内面などの曲面の上に蒸着されてもよい。
【0048】
一部の実施形態において、本方法は、基板の複数の(たとえば対向する)面を同時に蒸着することを可能にすることができる。これにより、フィルムの蒸着に関連する費用および/または複雑さを低減することができる。これはまた、複数の実質的に同一のフィルムを基板の異なる面の上に形成し、蒸着時間を短縮し、および/または基板の過剰な取扱いを減少させることを可能にすることができる。そのような方法を用いて形成される光学デバイスなどの物品は、厳格な光学性能の仕様を満たすことができる。一例として、ARフィルムは、1回の蒸着実行中に、基板(たとえば、レンズ、プリズムまたはオプティカルフラット)の複数の面の上に被覆されてもよい。
【0049】
ある実施形態において、本方法は、基板を部分的または完全に封止するために用いられてもよい。これは、たとえば、基板をその環境から保護することが望ましい場合(たとえば、基板を環境にさらすと、基板の性能特性に有害となりうる場合)には、好都合となりうる。
【0050】
一部の実施形態において、本方法は、温度的に不安定な基板(たとえば、約300℃以下のガラス転移温度のポリマー基板)に対応する。
【0051】
ある実施形態において、本方法は、集積光学部品(たとえば、光学フィルタを形成するフィルムなどの1つ以上のフィルム用の基板としても機能するレンズ)を形成するために用いられてもよい。そのような集積構成要素は、特定の目的向けに設計された光学システムに存在する個別の構成要素の数を減少させるために用いられてもよい。これにより、たとえば、光学システムのサイズ、費用および/または複雑さを低減することができる。
【0052】
本発明の他の特徴および利点は、詳細および図面、特許請求の範囲から明白となるであろう。
【0053】
種々の図面における類似の参照符号は、類似の要素を指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
詳細な説明
図1Aを参照すると、光学フィルタ10は、基板20(たとえば、ガラス製のオプティカルフラット)の対向する面21および22の上に蒸着される2つの多層フィルム11および12から構成される。光学フィルタ10は、軸50に沿って伝搬するフィルタに当たる一定の波長の光を実質的に反射し、実質的に他の波長の光を透過する。光学フィルタ10はまた、軸50に対して一定の角度でフィルタに当たる一定の波長の光を反射し、他の波長の光を透過する。多層フィルム11および12はいずれも、誘電材料から形成される多数の交互に配置される高屈折率層および低屈折率層を含む。
【0055】
多層フィルム11の構造が、図1Bに示される。多層フィルム11は、7層の高屈折率層30および7層の低屈折率層32から構成される。多層フィルム12の組成および構造は、多層フィルム11と同一である。言い換えれば、両方の多層フィルムは同数の誘電層を含み、フィルムにおける対応する層の組成および厚さは同一である。本願明細書で用いられるとき、対応する層は、多層フィルム内の同一の相対的な位置にある多層フィルム11および12中の層を指す。
【0056】
多層フィルム11および12中の各層の厚さおよび組成は、光学フィルタ10の所望のスペクトル特性に左右される。場合によっては、各層の厚さは、約0.25λ/nである。尚、λはフィルタによって反射されるべき波長であり、nは層の屈折率である。当然のことながら、所与の層の厚さは、層を形成するために用いられる材料の屈折率に応じて変化する。
【0057】
一部の実施形態において、各層の厚さは、光学フィルタの所望の光学特性に基づく層厚を最適化するアルゴリズムを用いて決定されることができる。たとえば、スペクトルの一定の部分にわたる最大反射率が所望である場合には、アルゴリズムは反射率が最高である構造の中に収束するように、層厚の異なる組み合わせ向けのフィルタの反射率を決定することができる。そのような計算を実行するために用いることができる市販のソフトウェアの例としては、カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad,CA)のサイエンティフィック・コンピューティング・インターナショナル(Scientific Computing International)から市販されている「フィルムウィザード(Film Wizard)TMおよびオレゴン州ポートランド(Portland,OR)のソフトウェア・スペクトラ・インコーポレィテッド(Software Spectra,Inc.)から市販されている「ティエフカルク(TFCalc)」が挙げられる。
【0058】
本願明細書で用いられるとき、層の部分の垂直厚さは、層の部分に最も近い基板面の部分の法線方向における層の部分の厚さを指す。一般に、層厚(たとえば、垂直層厚)は、電子顕微鏡検査法、偏光法を用いて層の断面を研究することによって、または計算データを分光分析データに変数調整することによって決定されてもよい。
【0059】
本願明細書で用いられるとき、層の部分の垂直光学厚さは、層の部分に最も近い基板面の部分の法線方向における層の部分の光学厚さを指す。
【0060】
本願明細書で用いられるとき、層の部分の光学厚さは、層の部分の厚さおよび部分の屈折率の積を指す。層の部分が光学的に非一様である(すなわち屈折率は、厚さが測定される方向に沿って層を通して変化する)場合には、光学厚さは厚さに対して積分される屈折率を指す。光学的に一様な層の場合には、この積分は前の定義に変形する。
【0061】
各多層フィルムにおいて、各層の垂直光学厚さは、他の層と同一であってもよく、他の層と異なっていてもよい。たとえば、光学フィルタ10が狭帯域の波長(たとえば、約10nm)を反射するように設計されている実施形態において、各層の垂直光学厚さは0.25λ0であってもよい。尚、λ0は反射帯域の中心波長である。あるいは、光学フィルタ10が広帯域の波長(たとえば、約100nm以上、約150nm以上、約200nm以上)を反射するように設計されている場合には、層の垂直光学厚さは変化してもよい。この実施例において、各多層フィルムにおける異なる群の層は、所望の波長帯域の中の異なる波長λiに関して、0.25λiに等しい垂直光学厚さを有することができる。一部の実施形態において、各層の垂直光学厚さは、約20nm〜約1,000nmの範囲にあってもよい。たとえば、各層の垂直光学厚さは、約50nm以上(たとえば、約100nm以上、約150nm以上、約200nm以上、約250nm以上、約300nm以上)であってもよい。実施形態において、層の垂直光学厚さは、約800nm以下(たとえば、約600nm以下、約500nm以下)であってもよい。
【0062】
一般に、多層フィルムにおける各層の垂直厚さは、実質的に均一であってもよい。たとえば、所与の層の垂直厚さは、層の異なる部分の間で約2%以下(たとえば約1%以下、約0.5%以下、約0.2%以下、約0.1%以下、約0.05%以下、約0.02%以下、約0.01%以下、0.001%以下)だけ変化してもよい。一部の実施形態において、多層フィルムにおける各層の垂直厚さは、層の異なる部分の間で約10nm以下(たとえば、約8nm以下、約5nm以下、約3nm以下、約2nm以下、約1nm以下、約0.5nm以下)だけ変化してもよい。
【0063】
一般に、多層フィルム11および12における各層の垂直光学厚さは、実質的に均一であってもよい。一部の実施形態において、層は、層の異なる部分の間で約2%以下(たとえば約1%以下、約0.5%以下、約0.2%以下、約0.1%以下、約0.05%以下、約0.02%以下、約0.01%以下、0.001%以下)だけ変化する垂直光学厚さを有することができる。1層以上の蒸着された層の垂直光学厚さは、層の異なる部分の間で約20nm以下(たとえば、約10nm以下、約5nm以下、約3nm以下、約2nm以下、約1nm以下、約0.5nm以下)だけ変化してもよい。
【0064】
前述したように、多層フィルム11および12における対応する層の厚さおよび組成は、実質的に同一である。たとえば、基板面に隣接する各多層フィルムにおける層は、対応する層である。一部の実施形態において、対応する層の垂直層厚は、各多層フィルムにおける対応する位置(たとえば、光軸50が各多層フィルムと交差する場所)で約2%以下(たとえば約1%以下、約0.5%以下、約0.2%以下、約0.1%以下、約0.05%以下、約0.02%以下、約0.01%以下、0.001%以下)だけ変化してもよい。一部の実施形態において、1層以上の対応する層の垂直厚さは、多層フィルム11および多層フィルム12における対応する位置で、約10nm以下(たとえば、約8nm以下、約5nm以下、約3nm以下、約2nm以下、約1nm以下、約0.5nm以下)だけ変化してもよい。
【0065】
さらに、多層フィルム11および多層フィルム12における対応する層の垂直光学厚さは、実質的に均一であってもよい。一部の実施形態において、多層フィルムにおける対応する層の垂直光学厚さは、対応する層の間で約2%以下(たとえば約1%以下、約0.5%以下、約0.2%以下、約0.1%以下、約0.05%以下、約0.02%以下、約0.01%以下、0.001%以下)だけ変化する垂直光学厚さを有することができる。対応する層の垂直光学厚さは、多層フィルム11および多層フィルム12における対応する位置で、約15nm以下(たとえば、約10nm以下、約5nm以下、約3nm以下、約2nm以下、約1nm以下、約0.5nm以下)だけ変化してもよい。
【0066】
多層フィルム11および12の層を形成するために用いられる誘電材料は、その光学特性(たとえばフィルムが機能することになっている波長におけるその屈折率およびこれらの波長における吸収)、互いに対する適合性および基板に対する適合性、光学フィルタを作成するために用いられる工程との適合性に基づいて選択される。一部の実施形態において、誘電材料としては、酸化物(たとえば、金属酸化物)、フッ化物(たとえば、金属フッ化物)、硫化物および/または窒化物(たとえば、金属窒化物)が挙げられる。酸化物の例としては、SiO2、Al2O3、Nb2O5、TiO2、ZrO2、HfO2、SnO2、ZnO、ErO2、Sc2O3およびTa2O5が挙げられる。フッ化物の例としては、MgF2が挙げられる。他の例としては、ZnS、SiNx、AlN、TiNおよびHfNが挙げられる。あるいはまたはさらに、材料は、金属(たとえば、Al、Pt、Cu)などの非誘電材料を含むことができる。
【0067】
高屈折率材料の例としては、632nmで屈折率が約2.35のTiO2、632nmで屈折率が約2.15のTa2O5が挙げられる。低屈折率材料の例としては、632nmで屈折率がそれぞれ1.45および1.65のSiO2およびAl2O3が挙げられる。
【0068】
一部の実施形態において、誘電材料は、実質的に非晶質(たとえば、約95%以上、約98%以上、約99%以上の非晶質)状態である。通常、非晶質材料は、光学的に等方性であり、部分的または大部分が結晶質である誘電層より良好に光を透過することができる。しかし、一部の実施形態において、誘電材料の一方または両方の一部またはすべては、結晶質であってもよい。
【0069】
フィルタ10の光透過率特性は、各多層フィルムにおける層の数、各層の光学厚さ、異なる層の相対的な光学厚さおよび各層の屈折率をはじめとする複数の設計変数に応じて変化してもよい。一部の実施形態において、フィルタは、光軸50に対する入射角の円錐の中でフィルタに当たる波長の帯域の中の実質的にすべての光を透過し、その帯域以外の実質的にすべての紫外波長、可視波長および/または赤外波長(たとえば、約200nm〜約2,000nmの透過帯域以外のすべて)を反射するように設計されてもよい。フィルタによって実質的に透過される波長は「通過波長」と呼ばれ、反射波長は「遮断波長」と呼ばれる。通過波長の帯域幅は、比較的広帯域(たとえば、約200nm〜約300nm以上)であってもよく、または狭帯域(たとえば、約0.4nm〜約20nm以下)であってもよい。
【0070】
図1Cは、光学フィルタの具体的な透過率スペクトルを示す。曲線C1は、光軸50に対して平行に光学フィルタに入射する光の透過率に対応する。この実施例では、軸上の光に関する通過波長は、λ1〜λ2の波長に対応し、光学フィルタが入射光の50%を透過する波長に対応する。一部の実施形態において、通過波長の帯域は、電磁スペクトルの可視部分(たとえば、約400nm〜約700nm)に対応することができる。遮断される波長は、赤外波長(たとえば、約700nm〜約2,000nm)を含むことができる。
【0071】
一部の実施形態において、光学フィルタ10は、通過波長の一部またはすべてで高い透過率を有することができる。たとえば、通過波長における透過率は、約95%以上(たとえば、約97%以上、約98%以上、約99%以上、約99.5%以上)であってもよい。一般に、通過波長における透過率は、光学フィルタを形成するために用いられる材料の吸収率および一様性、多層フィルムにおける層厚の精度に左右される。たとえば、通過波長で比較的高い吸収率を有する材料は、フィルタに当たる光を吸収することによって透過率を低減することができる。フィルタにおける非一様性(たとえば、不純物領域および/または結晶質領域)は、当たる光を散乱することによって透過率を低減することができる。層厚のずれは、通過波長において当たる光の可干渉反射を生じ、その透過率を低減することができる。透過率は、光学フィルタと大気との間の界面における反射損失を減少させることによってさらに向上される。多層フィルムが基板の対向する面の上に蒸着される実施形態において、唯一の面が多層フィルムによって被覆される光学フィルタに比べて、透過波長における光の反射率を低減することができる。
【0072】
遮断波長のすべてまたは一部における透過率は、比較的低く、約5%以下(たとえば、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下)などであってもよい。これらの波長における光学フィルタの反射率および/または吸収率を増大することにより、遮断波長における透過率を低減させることができる。各多層フィルムにおける層の数の増大および/または低屈折率層と高屈折率層との間の屈折率の差の増大により、遮断波長の反射率を増大することができる。
【0073】
一部の実施形態において、光学フィルタ10は、非垂直な角度でフィルタに入射する光に関する透過率帯域端では小さな青色シフトを有することができる。透過率帯域端の位置は、光学フィルタがそれに当たる光の50%を透過する波長に対応する。図1Cにおいて、これらは、曲線C1の場合の波長λ1およびλ2に対応する。これらの波長は通常、軸外の光に関する各多層フィルムにおける層の光学厚さの変動のために光の入射角に応じて変化する。帯域端の公称の位置は、垂直入射光に対応する。帯域端は、入射角が増大するとより短い波長にシフトすることから、「青色シフト」なる語が用いられる。たとえば、図1Cにおける曲線C2は、軸50に対して非平行である角度でフィルタに入射する光に関するフィルタの透過率スペクトルを示す。この実施例において、帯域端の位置は、λ1からλ1’にλ2からλ2’にシフトした。尚、λ1’<λ1であり、λ2’<λ2である。
【0074】
青色シフトの振幅は、光学フィルタ10における層を形成するために比較的高い屈折率(たとえば、約1.7以上、約1.8以上、約1.9以上、約2.0以上の屈折率)の材料を選択することによって低減してもよい。一部の実施形態において、青色シフトは、軸50に対して30°で入射する光の場合には、約30nm以下(たとえば、約25nm以下、約23nm以下、約20nm以下、約18nm以下、約15nm以下)であってもよい。
【0075】
一般に、多層フィルムは、必要に応じて調製されてもよい。一部の実施形態において、多層フィルム11および12は、原子層蒸着(ALD)を用いて調製されてもよい。図2Aを参照すると、ALDシステム100は、基板20の面21および22の上にそれぞれ多層フィルム11および12を蒸着するために用いられる。別の多層フィルム101が、露出面102の上に蒸着される。任意に、光学フィルタ10を形成するために(図1A参照)、一旦、蒸着工程が終了すると、多層フィルム101は基板20から除去されてもよい。多層フィルム11、12および101の蒸着は、単層ごとに生じ、フィルムの組成および厚さに関する実質的な制御を行う。単層の蒸着中、前駆物質の蒸気が室の中に導入され、基板面11、12および102の上またはこれらの面に隣接する既に蒸着された層に吸収される。続いて、反応物質が、室に導入され、吸着された前駆物質と化学的に反応し、所望の材料からなる単層を形成する。面における自己制御性により、蒸着される層のフィルム厚さおよび広い面積の均一性を正確に制御することができる。さらに、露出面への前駆物質の無指向性吸着は、室110に対して異なる向きを有する面の上に材料の一様な蒸着を提供する。
【0076】
ALDシステム100は反応室110を備え、反応室110は、マニホルド130によって源150、160、170、180および190に連結される。源150、160、170、180および190はそれぞれ、供給管路151、161、171、181および191によってマニホルド130に連結される。弁152、162、172、182および192はそれぞれ、源150、160、170、180および190からのガスの流れを調整する。源150および180はそれぞれ第1の前駆物質および第2の前駆物質を収容し、源160および190はそれぞれ第1の試薬および第2の試薬を備える。源170はキャリアガスを収容し、キャリアガスは蒸着工程中に、室110を常に貫流して、基板20に前駆物質および試薬を運搬すると同時に、基板から反応副生成物を運搬する。前駆物質および試薬は、マニホルド130においてキャリアガスと混合することによって、室110の中に導入される。ガスは、出口ポート145によって室110から排出される。ポンプ140は、出口ポート145によって室110からガスを排出する。ポンプ140は、管146によって出口ポート145に連結される。
【0077】
ALDシステム100は温度制御装置195を備え、温度制御装置195は室110の温度を制御する。蒸着中、温度制御装置195は、基板101の温度を、室温を上回るまで上昇させる。一般に、基板温度は、前駆物質と試薬との間の急速な反応を促進するほど十分に高い必要があるが、基板を損傷すべきではない。一部の実施形態において、基板温度は、約500℃以下(たとえば、約400℃以下、約300℃以下、約200℃以下、約150℃以下、約125℃以下、約100℃以下)であってもよい。
【0078】
通常、基板温度は、基板20の異なる部分の間で著しく変化すべきではない。大きな温度変動は、基板の異なる部分における前駆物質と試薬との間の反応速度の変動を生じる可能性があり、蒸着される層の厚さおよび/またはモルフォロジに変動を生じる可能性がある。一部の実施形態において、蒸着面の異なる部分の間の温度は、約40℃以下(たとえば約30℃以下、約20℃以下、約10℃以下、約5℃以下)だけ変化してもよい。
【0079】
蒸着工程変数は、電子制御装置199によって制御および同期される。電子制御装置199は、温度制御装置195、ポンプ140および弁152、162、172、182および192と通信する。電子制御装置199はまた、ユーザインターフェイスを備え、ユーザインターフェイスを通じて作業者が蒸着工程変数を設定し、蒸着工程を監視し、システム100とその他の相互作用を行うことができる。
【0080】
図2Bを参照すると、ALD工程が開始され(1010)、システム100が源170からのキャリアガスと混合することによって、第1の前駆物質を源150から室110に導入する(1020)。第1の前駆物質からなる単層が、基板20の面21、22および102の上に吸着され、残る前駆物質が室を通過するキャリアガスの連続流れによって、室110からパージされる(1030)。次に、システムは、マニホルド130によって源160から室110に第1の試薬を導入する(1040)。第1の試薬は、第1の前駆物質からなる単層と反応し、第1の材料からなる単層を形成する。第1の前駆物質に関して言えば、キャリアガスの流れは、残る試薬を室からパージする(1050)。ステップ1020〜1060は、第1の材料からなる層が所望の厚さに達するまで繰り返される(1060)。
【0081】
フィルムが材料からなる1つの層である実施形態では、一旦、第1の材料からなる層が所望の厚さに達すると、工程は停止する(1070)。しかし、蒸着されるフィルムが多層フィルムである場合には、システムは、マニホルド130を介して室110に第2の前駆物質を導入することができる(1080)。第2の前駆物質からなる単層は、第1の材料からなる蒸着された層の露出面の上に吸着され、キャリアガスは残る前駆物質を室からパージする(1090)。システムは、その後で、マニホルド130によって源180から室110に第2の試薬を導入する。第2の試薬は、第2の前駆物質からなる単層と反応し、第2の材料からなる単層を形成する(1100)。室を通るキャリアガスの流れは、残る試薬をパージする(1110)。ステップ1080〜1110は、第2の材料からなる層が所望の厚さに達するまで繰り返される(1120)。
【0082】
第1の材料および第2の材料からなる別の層が、ステップ1020〜1130を繰り返すことによって蒸着される。一旦、所望の数の層が形成されると、工程は終了し(1140)、被覆された基板が室110から排除される。
【0083】
上述した工程では各サイクル中に試薬の前に前駆物質が室に導入されるが、他の実施例では試薬が前駆物質の前に導入されてもよい。前駆物質および試薬が順序は、露出面との相互作用に基づいて選択されることができる。たとえば、前駆物質と面との間の結合エネルギが試薬と面との間の結合エネルギより高い場合には、前駆物質は試薬の前に導入されてもよい。あるいは、試薬の結合エネルギが高い場合には、試薬は前駆物質の前に導入されてもよい。
【0084】
各単層の厚さは一般に、複数の要因に左右される。たとえば、各単層の厚さは、蒸着されることになっている材料の種類に左右されうる。より大きな分子から構成される材料は、より小さな分子から構成される材料に比べて、より厚い単層を生じる可能性がある。
【0085】
基板の温度はまた、単層の厚さに影響を及ぼす可能性がある。たとえば、一部の前駆物質では、より高い温度は、蒸着サイクル中に面への前駆物質の吸着を低減する可能性があり、基板温度がさらに低い場合に形成されるものより薄い単層を生じる。
【0086】
前駆物質の種類および試薬の種類のほか、前駆物質および試薬の投与量もまた、単層の厚さに影響を及ぼす可能性がある。一部の実施形態において、材料の単層は、特定の前駆物質によって蒸着されてもよいが、異なる試薬を用い、各組み合わせに関して異なる単層の厚さを生じてもよい。同様に、異なる前駆物質から形成される材料の単層は、異なる前駆物質では異なる単層の厚さを生じることができる。
【0087】
単層の厚さに影響を及ぼす可能性がある他の要因の例としては、パージ期間、被覆された面における前駆物質の滞留時間、反応炉中の圧力、反応炉の物理的幾何構成および、副生成物から蒸着される材料に及ぼすと思しき影響が挙げられる。副生成物がフィルムの厚さに影響する場合の例は、副生成物が蒸着された材料を溶蝕する場合である。たとえば、HCLはTiCl4前駆物質および試薬として水を用いてTiO2を蒸着した場合の副生成物である。HClは、排出される前に蒸着されたTiO2を溶蝕する可能性がある。溶蝕は、蒸着された単層の厚さを減少させ、基板の一定の部分が他の部分よりHClに長くさらされている場合には、基板にわたって単層の厚さに変化が生じる可能性がある(たとえば、排気により近い基板の部分は、排気から遠い基板の部分より長く副生成物にさらされる可能性がある)。
【0088】
通常、単層の厚さは、約0.1nm〜約5nmである。たとえば、1層以上の蒸着される単層の厚さは、約0.2nm以上(たとえば、約0.3nm以上、約0.5nm以上)であってもよい。一部の実施形態において、1層以上の蒸着される単層の厚さは、約3nm以下(たとえば、約2nm、約1nm以下、約0.8nm以下、約0.5nm以下)であってもよい。
【0089】
平均的な蒸着される単層の厚さは、材料の層を形成するために、基板に予め設定された数の単層を蒸着することによって、決定されてもよい。続いて、蒸着される層の厚さが、(たとえば、偏光法、電子顕微鏡検査法または何らかの他の方法によって)測定される。次に、蒸着サイクルの数で除算される測定層厚として、平均的な蒸着される単層の厚さを決定することができる。平均的な蒸着される単層の厚さは、理論的な単層の厚さに対応してもよい。理論的な単層の厚さは、材料の嵩密度および分子の分子量から計算されてもよい単層を構成する分子の特性寸法を指す。たとえば、SiO2の場合の単層の厚さの推定値は、〜0.37nmである。厚さは、密度2.0g・cm−3の非晶質SiO2の式単位の立方根として推定される。
【0090】
一部の実施形態において、平均的な蒸着される単層の厚さは、理論的な単層の厚さの分率(たとえば、理論的な単層の厚さの約0.2、理論的な単層の厚さの約0.3、理論的な単層の厚さの約0.4、理論的な単層の厚さの約0.5、理論的な単層の厚さの約0.6、理論的な単層の厚さの約0.7、理論的な単層の厚さの約0.8、理論的な単層の厚さの約0.9)に対応することができる。あるいは、平均的な蒸着される単層の厚さは、2つ以上の理論的な単層の厚さから理論的な単層の厚さの約30倍まで(たとえば、理論的な単層の厚さの約2倍以上、理論的な単層の厚さの約3倍以上、理論的な単層の厚さの約5倍以上、理論的な単層の厚さの約8倍以上、理論的な単層の厚さの約10倍以上、理論的な単層の厚さの約20倍以上)に対応することができる。
【0091】
蒸着工程中、室110内の圧力は、実質的に一定の圧力に維持されてもよく、または変化してもよい。室を通るキャリアガスの流速を制御することは一般に、圧力を制御する。一般に、圧力は、前駆物質が面を化学吸着される種で飽和させ、試薬が前駆物質によって残された面の種と完全に反応し、前駆物質の次のサイクルのために反応点を残すことができるほど十分に高い必要がある。前駆物質および/または試薬の投与量が低すぎる場合および/またはポンプ速度が高すぎる場合に生じる可能性があるように、室の圧力が低すぎる場合には、面は前駆物質によって飽和されず、反応は自己制御されない可能性がある。これは、蒸着される層に不均等な厚さを生じる可能性がある。さらに、室の圧力は、前駆物質および試薬の反応によって生成される反応生成物の除去を妨げるほど高くすべきではない。前駆物質の次の投与が室に導入されるときに、残る副生成物が面の飽和と相互に作用し得る。一部の実施形態において、室の圧力は、約0.01トール〜約100トール(たとえば、約0.1トール〜約20トール、約0.5トール〜10トール、約1トール程度)で維持される。
【0092】
一般に、各サイクル中に導入される前駆物質および/または試薬の量は、室のサイズ、露出される基板面の面積および/または室の圧力に基づいて選択されてもよい。各サイクル中に導入される前駆物質および/または試薬の量は、経験的に決定されてもよい。
【0093】
各サイクル中に導入される前駆物質および/または試薬の量は、弁152,162、182および192の開閉のタイミングによって制御されてもよい。導入される前駆物質および/または試薬の量は、サイクルごとに各弁が開放している時間の量に対応する。弁は、基板面の適切な単層適用範囲を形成するために、十分な前駆物質を導入するほど十分に長く開放する必要がある。同様に、各サイクル中に導入される試薬の量は、露出された面に蒸着される実質的にすべての前駆物質と反応するほど十分である必要がある。必要以上に多い前駆物質および/または試薬を導入することは、サイクル時間を長引かせるか、および/または前駆物質および/または試薬を浪費する可能性がある。一部の実施形態において、前駆物質の投与は、サイクルごとに約0.1秒〜約5秒(たとえば、約0.2秒以上、約0.3秒以上、約0.4秒以上、約0.5秒以上、約0.6秒以上、約0.8秒以上、約1秒以上)の間、適切な弁を解放することに対応する。同様に、試薬の投与は、サイクルごとに約0.1秒〜約5秒(たとえば、約0.2秒以上、約0.3秒以上、約0.4秒以上、約0.5秒以上、約0.6秒以上、約0.8秒以上、約1秒以上)の間、適切な弁を解放することに対応してもよい。
【0094】
前駆物質の投与と試薬の投与との間の時間は、パージに対応する。各パージ期間は、残りの前駆物質または試薬を室から除去するほど十分に長い必要があるが、これより長い場合にはいたずらにサイクル時間を増大する可能性がある。各サイクルにおいて異なるパージ期間は、同一であってもよく、変化してもよい。一部の実施形態において、パージ期間は、約0.1秒以上(たとえば、約0.2秒以上、約0.3秒以上、約0.4秒以上、約0.5秒以上、約0.6秒以上、約0.8秒以上、約1秒以上、約1.5秒以上、約2秒以上)である。一般に、パージ期間は、約10秒以下(たとえば、約8秒以下、約5秒以下、約4秒以下、約3秒以下)である。
【0095】
前駆物質の順次の投与を導入する間の時間は、サイクル時間に対応する。サイクル時間は、異なる材料からなる単層を蒸着するサイクルでは、同一であってもよく、異なっていてもよい。さらに、サイクル時間は、同一材料からなる単層を蒸着するが、異なる前駆物質および/または異なる試薬を用いるサイクルでは、同一であってもよく、異なっていてもよい。一部の実施形態において、サイクル時間は、約20秒以下(たとえば、約15秒以下、約12秒以下、約10秒以下、約8秒以下、約7秒以下、約6秒以下、約5秒以下、約4秒以下、約3秒以下)であってもよい。サイクル時間を短縮することにより、蒸着工程の時間を短縮することができる。
【0096】
前駆物質は一般に、ALD工程と適合性があり、試薬との反応時に、所望の蒸着材料を形成するように選択される。さらに、前駆物質および材料は、蒸着される材料(たとえば、基板材料または既に蒸着された層を形成する材料)との適合性がある必要がある。前駆物質の例としては、TiCl4、SiCl4、SiH2Cl2、TaCl3、HfCl3、InCl3およびAlCl3などの塩化物(たとえば、金属塩化物)が挙げられる。一部の実施形態において、有機化合物が、前駆物質として用いられてもよい(たとえば、Ti−エタオキシド(ethaOxide)、Ta−エタオキシド(ethaOxide)、Nb−エタオキシド(ethaOxide))。有機化合物の前駆物質の別の例は、(CH3)3Alである。
【0097】
試薬もまた一般に、ALD工程と適合性があり、前駆物質および材料の化学反応に基づき選択される。たとえば、材料が酸化物である場合には、試薬は、酸化剤であってもよい。適切な酸化剤の例としては、水、過酸化水素、酸素、オゾン、(CH3)3Alおよび種々のアルコール(たとえばエチルアルコールCH3OH)が挙げられる。たとえば、水は、TiCl4などの前駆物質を酸化してTiO2を得るため、AlCl3を酸化してAl2O3を得るため、Ta−エタオキシド(ethaoxide)を酸化してTa2O5を得るため、Nb−エタオキシド(ethaoxide)を酸化してNb2O5を得るため、HfCl3を酸化してHfO2を得るため、ZrCl4を酸化してZrO2を得るため、InCl3を酸化してIn2O3を得るために適した試薬である。いずれの場合にも、HClが、副生成物として生成される。一部の実施形態において、シラノールを酸化してSiO2を形成するために、(CH3)3Alを用いてもよい。
【0098】
図3を参照すると、既に説明したように、ALD工程は、面21および22の上の多層フィルム11および12にそれぞれ加えて、基板20の縁面101に多層フィルムを形成する。ALD工程の性質のために、多層フィルム101は、多層フィルム11および12と同一の組成および厚さを有し、多層フィルム11および12と隣接している。さらに、多層フィルム101における各層は、多層フィルム11および12における対応する層と隣接している。このような層の一層である、層303が、図3に示されている。層303は、多層フィルム11の対応する層301および多層フィルム12の層302と同一の組成および厚さを有する。
【0099】
一部の実施形態において、ALDを用いて、基板のすべての面を実質的に被覆し、基板を封止してもよい。これは、最初のALD実行中に、基板の表面積の一部を露出させ、予めカバーされていた表面を露出させるために室における基板の向きが変更される2回目のALD実行で残る表面積を被覆することによって行われてもよい。任意に、実質的に同量の材料がそのたびに蒸着されるように、より早いALD実行で被覆された面は、2回目の実行でカバーされてもよい。あるいは、1回目のALD実行中に被覆されなかった表面は、何か別の被覆方法を用いて密閉されてもよい。基板材料が環境的な損傷を受けやすい場合および/またはフィルムを形成する材料が特に環境的な危険に対する耐性がある場合には、基板を封止することが好都合である場合がある。
【0100】
一定の実施形態が示されているが、他の実施形態も可能である。
【0101】
一例として、ALDを用いる赤外フィルタフィルムの調製について述べてきたが、ALDを用いて、他の種類のフィルム、たとえば、反射防止フィルム、紫外遮断フィルタ、狭帯域フィルタ、高密度波長分割多重(DWDM)フィルタ、位相補償器、高反射ミラーおよび/または導波路層などを形成してもよい。
【0102】
別の例として、一定数の層を有するフィルムについて述べてきたが、さらに一般に、フィルムは1層以上(たとえば2層、3層、4層、5層、6層、7層、8層、9層、10層、11層、12層、13層、14層、15層)の層を有することができる。通常、多層フィルムの層の数は、フィルムの所望の光学特性に基づいて選択される。一部の実施形態において、(たとえば、多層フィルムが異なる熱機械的特性(たとえば、異なる熱膨張係数)を有する材料を含む場合には、熱サイクルにさらされるのであれば、多くの層からなるフィルムは、より少数の層を有する匹敵するフィルムより大きな機械的応力を受ける可能性がある。一部の実施形態において、多層フィルムは、16層以上(たとえば、約20層以上、約30層以上、約40層以上、約50層以上)を含んでもよい。
【0103】
多層フィルム11および12における層厚の範囲は約20nm〜1,000nmであるが、ALDを用いて、これらの値より厚いか、または薄いフィルム層を蒸着してもよい。層は、1つの単層程度に薄くてもよく(たとえば、約0.3nm〜約2nm)、数千nmの厚さ(たとえば、約2,000nm以上、約3,000nm以上、約5,000nm以上)であってもよい。たとえば、一部の実施形態において、1層以上の層の厚さは、実質的に光波長未満(たとえば、実質的に200nm未満)であってもよい。たとえば、一定の層は、約20nm以下(たとえば、約15nm以下、約10nm以下、約8nm以下、約5nm以下、約2nm以下)の厚さを有することができる。一部の実施形態において、層の厚さは、材料の約20層の単層以下(たとえば、約15層の単層以下、約10層の単層以下、約8層の単層以下、約5層の単層以下、3層の単層以下、2層の単層、1層の単層)に対応することができる。尚、単層の厚さは、既に述べた理論的な単層の厚さを指す。フィルムにおける層の厚さが実質的に光波長未満である場合には、フィルムの光学特性は、フィルムを構成する材料の光学特性(たとえば、屈折率)の平均である。実質的に光波長未満の材料の層を含むフィルムは、ナノ積層と呼ばれる。一部の実施形態において、フィルムの1つ以上の部分は、ナノ積層であってもよい。ナノ積層部分は、ナノ積層部分を形成する材料の屈折率の有効平均である一様な屈折率を有する層のように機能することができる。一部の実施形態において、ナノ積層を用いて、多層フィルムにおける屈折率勾配部分を形成してもよい。ナノ積層部分の例としては、SiO2単層およびTiO2単層、またはSiO2単層およびTa2O5単層から構成される部分が挙げられる。
【0104】
さらに、多層フィルム11および12はそれぞれ、2つの異なる材料の層から構成されるが、一般にフィルムは3つ以上の異なる誘電材料からなる層を含んでもよい。たとえば、記載された実施形態ではすべての高屈折率層が同一の材料から形成されるが、一般に、高屈折率層は同一の材料から形成されてもよく、異なる材料から形成されてもよい。同様に、低屈折率材料の層は、同一の材料から形成されてもよく、異なる材料から形成されてもよい。一般に、多層フィルムにおける異なる材料層の数は、必要に応じて変化してもよい。
【0105】
さらに、多層フィルム11および12を形成する単層はそれぞれ、1つの誘電材料から形成されるが、一部の実施形態において、蒸着される層の組成は、2つ以上の材料を含むことができる。たとえば、2つ以上の前駆物質を室110に同時に導入することによって、2つ以上の異なる材料からなる単層が形成されてもよい。層における各単層の組成は、フィルムの屈折率分布に合わせて変化してもよい。
【0106】
フィルム11および12は面21および22の上で連続的であるが、一部の実施形態において、ALDを用いて調製される面の上のフィルムは不連続(たとえば、パターン形成)であってもよい。パターン形成は、ALD工程中またはALD工程後に行われてもよい。ALD工程中にパターン形成が行われる実施形態において、基板の部分は、前駆物質および/または試薬を接着しない材料で処理されてもよい。これらの部分に蒸着される材料はなく、ALD工程は未処理部分に材料の層を蒸着する。面の上に吸着される水を少なくするために、面の部分の上にたとえば、疎水性材料、テフロン噴霧などを被覆することも可能である。あるいはまたはさらに、基板面の部分を蒸着後に除去される材料によって隠して、その上に蒸着されたフィルムの部分を除去してもよい。
【0107】
フィルムは、フォトリソグラフィなどの技術を用いて、蒸着後にパターン形成されてもよい。たとえば、光学フィルタは、次にフィルムの部分を露出させるためにパターン形成され、エッチングされるレジストで被覆されてもよい。露出部分をエッチングし、残るレジストを次に除去することにより、パターンを施したフィルムを結果として生じる。
【0108】
基板10はガラスから構成されるオプティカルフラットであるが、一般に、基板の組成および形状は、変化してもよい。一般に、基板は、蒸着される材料、前駆物質、試薬および蒸着状態に適合する任意の材料から形成されてもよい。適切な基板材料としては、ガラス(たとえば、ホウケイ酸ガラス、石英、ソーダ石灰ガラス、ガラスセラミック)、金属(たとえば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、銅)、半導体(たとえば、ケイ素、ゲルマニウム)および/または熱硬化性ポリマーおよび熱可塑性ポリマーなどのポリマーが挙げられる。ポリマーの例としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル、液晶ポリマー、ポリエチルテレフタレート、ポリアミド、ポリ塩化ビニルおよびポリエチレンが挙げられる。
【0109】
基板は、高温に弱い材料を含む可能性があり、高温にさらされると損傷を受ける可能性がある。そのような状況において、基板温度は、蒸着工程中に基板を損傷すると推測される温度まで上昇すべきではない。一部の実施形態において、基板材料は、約150℃以上(たとえば、約170℃以上、約200℃以上、約300℃以上、約400℃以上、約500℃以上)の温度では不安定である可能性がある。たとえば、基板材料は、一定の温度を超えると、望ましくない物理的変化および/または化学的変化を被る可能性がある。望ましくない物理的変化の例は、位相変化である。たとえば、液晶ポリマー基板は、一定の温度を超えると、等方性になる可能性がある。一部の基板材料(たとえば、一部のポリマー)は、一定の温度を超えると、ガラス転移を被る可能性がある。たとえば、基板は、約150℃以上(たとえば、約200℃以上、約300℃以上、約400℃以上、約500℃以上)のガラス転移温度を有する材料を含む可能性がある。化学的変化の例は、基板材料の酸化(たとえば、銅基板の酸化)である。
【0110】
基板材料は、フィルムを形成するために用いられる1つ以上の材料に類似の熱機械的特性を有することができる。たとえば、基板材料の熱膨張係数(CTE)は、フィルムを形成するために用いられる1つ以上の材料のCTEに類似であってもよい。一部の実施形態において、基板材料のCTEは、フィルムの形成中に基板が循環される温度の範囲(たとえば、約0℃〜約300℃)にわたって、フィルムを形成するために用いられる材料のCTEの約10%以下(たとえば、約8%以下、約5%以下)の範囲内であってもよい。基板およびフィルムにおける材料の熱機械的特性を整合することにより、熱サイクルに伴って起こりうるフィルムの機械的応力を低減することができる。そうでなければ、フィルムの亀裂または他の損傷を生じる可能性がある。
【0111】
一部の実施形態において、基板は、光学素子または光学素子の部分であってもよい。光学素子としては、屈折素子(たとえば、レンズ)、拡散素子(たとえば、拡散回折格子)、反射体(たとえば、ミラー)および発光素子(たとえば、発光ダイオード、レーザ)が挙げられる。
【0112】
一部の実施形態において、ALDを用いて被覆される基板面は、基板10の面21および22などの実質的に平面であってもよい。本願明細書で用いられるとき、実質的に平面とは、100m以上の曲率半径を有する。あるいは、被覆面は湾曲していてもよい。曲面は、100m未満の曲率半径を有する。一部の実施形態において、面は、構造面であってもよい。構造面は、面法線において不連続性を有する面を指す。構造面は、平面である部分および/または湾曲している部分を有することができる。曲面を有する基板の例は、レンズであり、図4のレンズ401などである。レンズ401の曲面411および421は、ALDを用いて、それぞれフィルム410および420で被覆される。フィルム410および420は、各面にわたって均一な厚さを有する面411および421に適合する。フィルム410および420は、異なる組成からなる1つの層または複数の層を含んでもよい。フィルム410および420が多層フィルムである実施形態において、多層フィルムにおける各層は、フィルムにわたって均一な厚さを有することができる。フィルム410および420は、同一であってもよく、異なっていてもよい。たとえば、フィルムはいずれも、既に説明したフィルム11および12に類似の光学フィルタを形成することができる。別の実施例において、フィルム10は光学フィルタであり、フィルム420は反射防止フィルムであってもよい。フィルムが同一である実施形態において、これらはALD工程中に両方の面411および421を露出させることによって同時に形成されてもよい。
【0113】
一般に、ALDを用いて被覆される面の曲率は変化してもよい。一部の実施形態において、基板は中程度の曲面を有してもよく、約1m以上(たとえば、約2m以上、約3m以上、約5m以上、約10m以上、約20m以上)などの比較的大きい曲率半径を有してもよい。曲率の小さい基板面の例としては、眼鏡に用いられる一定のレンズなどの一部のレンズが挙げられる。あるいは、場合によっては、基板面は、大きな曲率を有してもよく、約10cm以下(たとえば、約8cm以下、約5cm以下、約3cm以下、約2cm以下、約1cm以下、約0.5cm以下、約0.1cm以下)などの比較的小さい曲率半径を有してもよい。大きな曲率を有する基板面の例としては、ボールレンズなどの種々のレンズが挙げられる。
【0114】
一部の実施形態において、基板は、ALDを用いてフィルムで被覆される1つ以上の構造面を含むことができる。図5を参照すると、構造面の例は、フレネルレンズ501の面520である。ALDを用いて、面520の傾斜521およびドラフト522の上にフィルム510(たとえば、1層のフィルムまたは多層フィルム)を蒸着してもよい。ALD工程の等角性は、傾斜521およびドラフト522の両方の上に実質的に均一な厚さを有するフィルム510を結果として生じる。一部の実施形態において、フィルム510は反射防止フィルムであり、そうでなければレンズの使用中に経験する可能性があるゴースト効果を低減(たとえば、排除)することができる。
【0115】
ALDを用いて被覆されてもよい構造面の他の例としては、機械刻線回折格子およびレリーフ型回折格子などの回折格子構造、光ファイバの面または中空導波路(たとえば、円形断面、正方形断面または矩形断面を有する)の内面などの円筒面などが挙げられる。別の例は、光ファイバの劈開面である。たとえば、一部の遠距離通信用途は、劈開されたファイバがレンズまたは光学部品のきわめて近くに位置決めされる設計方式を用いる。ALDを用いてARフィルムを劈開面の上に被覆することにより、面における反射を低減することができる。1回のALD実行で、複数の劈開面が被覆されてもよい。
【0116】
本願明細書に開示される方法を用いて形成される光学部品を種々の光学システムで用いてもよい。図6を参照すると、一部の実施形態において、ALD技術を用いて形成される赤外フィルタ610は、イメージングシステム600において用いられる。イメージングシステムは、アパーチャ640を通って画像平面にある検出器650(たとえば、電荷結合素子(CCD)または相補型金属酸化物半導体(CMOS)検出器)の上に入る軸660に対して伝搬する光を結像するレンズ620および630を備える。赤外フィルタ610は、レンズ620と検出器650との間に位置決めされる。赤外フィルタ610は、多層フィルム611および612を備え、検出器650に当たるアパーチャ640を通って入る赤外光の量を低減(たとえば、実質的に排除)することができる。たとえば、赤外フィルタは、遮断波長で光の量を約20%以上(たとえば、約50%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上)減少させることができる。一部の実施形態において、赤外フィルタ610は、図1Cに示されるスペクトルに類似の透過率スペクトルを有する。
【0117】
一部の実施形態において、ALDを用いて、光学システムに光学部品を集積してもよい。たとえば、イメージングシステム600における別個の赤外フィルタ610は、イメージングシステムにおいてレンズの1つ以上の面の上に直接被覆されるフィルタで置き換えてもよい。たとえば、図7を参照すると、イメージングシステム700は、アパーチャ740を通って検出器750の上に入る軸760に対して伝搬する光を結像する1対のレンズ720および730を備える。光学フィルタ710は、レンズ720および730の面721、722、731および732の上にそれぞれ蒸着される多層フィルム713、714、711および712を備える。図6に示される赤外フィルタ610のように、光学フィルタ710は、検出器750に当たるアパーチャ740を通って入る赤外光の量を低減(たとえば、実質的に排除)することができる。
【0118】
さらなる実施形態において、図8は、レンズ820の1つの面821の上に蒸着される赤外フィルタ810を備えるイメージングシステム800を示す。イメージングシステム800はまた、第2のレンズ830、検出器850およびアパーチャ840を備える。レンズ820および830は、アパーチャ840を通って検出器850の上に入る光を結像する。結像される光線の発散が最小である場合には、面821はレンズ面に対応する。言い換えれば、結像される光線の伝搬方向の最大差は、レンズ720および730の他の面における結像される光線の伝搬方向の最大差より小さい。したがって、フィルタが面810に位置している場合には、フィルタの帯域幅に関連する最大の青色シフトは、フィルタがイメージングシステム800における他の面に位置している場合より小さい。
【0119】
光線の発散は、光線860および870によって示され、共通の源点から発せられ、検出器850上の共通の点851に結像される。イメージングシステム800の光軸899に対する光線860および870の伝搬角はそれぞれ、φ1およびφ2である。光線の発散は、φ1とφ2との差である。一部の実施形態において、結像光の光線は、赤外フィルタ810で約20°以下(たとえば、約15°以下、約10°以下、約8°以下)の最大発散を有する。したがって、軸899に沿って伝搬する光線に比べて、システムの周辺光線によって経験される青色シフトは、約20nm以下(たとえば、約15nm以下、約12nm以下、約10nm以下)であってもよい。
【0120】
他の実施形態において、図9は、検出器950(たとえば、CCDまたはCMOS検出器)の面951の上に蒸着される赤外フィルタ910を備えるイメージングシステム900を示す。イメージングシステム900はまた、レンズ920、第2のレンズ930およびアパーチャ940を備える。レンズ920および930は、アパーチャ940を通って検出器950の上に入る光を結像する。
【0121】
既に説明したようなイメージングシステムは、ディジタルカメラおよびディジタルカムコーダなどの電子装置に用いられてもよい。一部の実施形態において、イメージングシステムは、携帯電話におけるディジタルカメラに用いられてもよい。
【実施例】
【0122】
以下の実施例は、例示であり、限定するものを意味するわけではない。
【0123】
実施例I
光学フィルタは、カリフォルニア州サンタポーラ(Santa Paula,CA)のアブリサ(Abrisa)から入手されたBK7オプティカルフラット(直径100mm)の対向する側面の上に多層フィルムを蒸着することによって形成された。オプティカルフラットは、H2O:H2O2:NH4OH溶液によって不溶性の有機汚染物質を除去し、H2O:H2O2:HCl溶液を用いてイオンおよび重金属原子の汚染物質を除去することによって、清浄にした。高屈折率材料はTiO2であり、低屈折率材料はAl2O3であった。高屈折率材料用の前駆物質は、ミズーリ州セントルイス(St.Louis,MO)のシグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)から入手されたTi−エタオキシド(ethaoxide)(等級純度99.999%)であった。低屈折率材料用の前駆物質は、ミズーリ州セントルイス(St.Louis,MO)のシグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)から入手された(CH3)3Al(等級純度99.999%)であった。いずれの材料の場合も、試薬は脱イオン水であり、コネチカット州ダンブリー(Danbury,CT)のアライド・ウォーター・テクノロジーズ(Allied Water Technologies)から市販されている純水製造装置を用いて形成された。
【0124】
多層フィルムを蒸着するために、オプティカルフラットは、オレゴン州ビーヴァートン(Beaverton、OR)のプラナー・システムズ・インコーポレイテッド(Planar Systems,Inc.)から入手されたP400A ALD反応室に配置された。空気は、室からパージされた。窒素は、室を貫流し、約1トールで室の圧力を維持した。室の温度は、170℃に設定され、基板を熱的に平衡状態に保つために、約7時間放置された。一旦、熱平衡に達すると、水蒸気の初期パルスが0.7秒間給水のために、弁を開放することによって室に導入された。給水用の弁が閉鎖された後、室は、3秒間の窒素の流れによってパージされた。次に、(CH3)3Al用の弁が0.8秒間、開放され、室に(CH3)3Alを導入した。水蒸気の別の投与が導入される前に、室は、1.5秒間、の窒素の流れによってパージされた。水蒸気(0.7秒)および(CH3)3Al(0.8秒)の交互の投与が、パージの間に導入され、基板の露出面の上にAl2O3の層が形成される結果となった。総サイクル時間は、7秒であった。このサイクルが95回繰り返され、厚さ9.56nmのAl2O3層を結果として生じた。
【0125】
Al2O3層を蒸着した後、水蒸気が2秒のパルスで室の中に導入された。この後に、2秒のパージ、Ti−エタオキシド(ethaoxide)の1秒のパルス、さらに2秒のパージが行われた。このサイクルは、172回繰り返され、Al2O3層の上に厚さ6.48nmのTiO2層を結果として形成した。
【0126】
Al2O3およびTiO2の別の層が、露出された基板面の上に多層フィルムを形成するための、上記で概要を説明したステップを用いて蒸着された。各層の厚さおよび各層を蒸着するために用いられる蒸着サイクルの回数が、表Iにまとめられている。
【0127】
図10を参照すると、光学フィルタの性能は、マサチューセッツ州ウェルズリー(Wellesley,MA)のパーキン・エルマー(Perkin−Elmer)から入手されるラムダ14紫外・可視分光光度計(Lambda 14 UV/Vis spectrometer)を用いて調査された。光学フィルタの透過率スペクトルは、0°および30°の入射で測定された。0°では、通過帯域は、約380nm〜約680nmに及んだ。これらの波長の透過率は、約90%であった。光学フィルタは、約690nm〜約1,100nmの波長の光を実質的に遮断した。680nmの帯域端は、30°で入射する光の場合には約20nmだけシフトして約650nmであった。
【0128】
実施例II
光学フィルタは、実施例Iで記載した方法を用いて形成された。高屈折率材料ははTiO2であり、低屈折率材料はAl2O3である。高屈折率材料用の前駆物質はTi−エタオキシド(ethaoxide)であり、低屈折率材料用の前駆物質はTMAであった。いずれの材料の場合も、試薬は脱イオン水である。
【0129】
最初に、厚さ307.7nmのAl2O3緩衝層が蒸着される。この層は、3045回のALDサイクルによって形成される。それぞれの追加層の厚さおよび各層を蒸着するために用いられる蒸着サイクルの回数が、表Iにまとめられている。サイクル時間は、実施例Iに記載されたものと同一である。
【0130】
図11を参照すると、光学フィルタの性能が、分光光度計を用いて調査される。光学フィルタの透過率スペクトルは、0°で測定された。0°の入射では、通過帯域は、約390nm〜約650nmに及んだ。これらの波長の透過率は、約92%〜約94%であった。光学フィルタは、約670nm〜約1,100nmの波長の光を実質的に遮断した。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
他の実施形態は、冒頭の特許請求の範囲に属している。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1A】光学フィルタの断面図である。
【図1B】図1Aに示される光学フィルタの一部の断面図である。
【図1C】軸上入射および軸外入射に関する透過率を示す光学フィルタに関する透過率スペクトルのグラフである。
【図2A】原子層蒸着システムの概略図である。
【図2B】原子層蒸着工程を要約するフローチャートである。
【図3】基板の隣接面に蒸着される隣接する多層フィルムの断面図である。
【図4】対向する面にあるフィルムを備えたレンズの断面図である。
【図5】構造面にあるフィルムを備えたフレネルレンズの一部の断面図である。
【図6】光学フィルタを備えたイメージングシステムの概略図である。
【図7】光学フィルタを備えた別のイメージングシステムの概略図である。
【図8】光学フィルタを備えた他のイメージングシステムの概略図である。
【図9】光学フィルタを備えた別のイメージングシステムの概略図である。
【図10】0°および30°で入射する光に関する光学フィルタの透過率スペクトルである。
【図11】0°で入射する光に関する別の光学フィルタの透過率スペクトルである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面および前記第1の面に隣接する第2の面を有し、前記第1の面および前記第2の面が非共面である基板と、
前記第1の面の上に載置される第1の多層フィルムと、
前記第2の面の上に載置される第2の多層フィルムと、を備え、前記第2の多層フィルムは前記第1の多層フィルムに隣接する物品。
【請求項2】
前記第1の多層フィルムおよび前記第2の多層フィルムは、第1の材料からなる隣接層を含む請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記第1の多層フィルムおよび前記第2の多層フィルムは、第2の材料からなる隣接層を含み、前記第2の材料は前記第1の材料とは異なり、前記第2の材料からなる前記隣接層は、前記第1の材料からなる前記隣接層によって支持される請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記第1の多層フィルムおよび前記第2の多層フィルムは3層以上の隣接層を含み、近接層は異なる材料から形成される請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記基板は光学部品である請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記光学部品はレンズである請求項5に記載の物品。
【請求項7】
前記レンズはフレネルレンズである請求項6に記載の物品。
【請求項8】
前記光学部品はオプティカルフラットである請求項5に記載の物品。
【請求項9】
前記基板はガラスを含む請求項1に記載の物品。
【請求項10】
前記ガラスは、ホウケイ酸ガラス、ガラスセラミック、石英、溶融シリカおよびソーダ石灰ガラスからなる群から選択される請求項9に記載の物品。
【請求項11】
前記基板はポリマーを含む請求項1に記載の物品。
【請求項12】
前記ポリマーは熱硬化性ポリマーである請求項11に記載の物品。
【請求項13】
前記ポリマーは熱可塑性ポリマーである請求項11に記載の物品。
【請求項14】
前記ポリマーは、ポリカーボネート、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルおよびポリメチルメタクリレートからなる群から選択される請求項11に記載の物品。
【請求項15】
前記基板は、約80℃以下のガラス転移温度を有する材料を含む請求項1に記載の物品。
【請求項16】
前記基板は、約100℃以下のガラス転移温度を有する材料を含む請求項1に記載の物品。
【請求項17】
前記基板は、約150℃以下のガラス転移温度を有する材料を含む請求項1に記載の物品。
【請求項18】
前記基板は、約200℃以下のガラス転移温度を有する材料を含む請求項1に記載の物品。
【請求項19】
前記基板は、約250℃以下のガラス転移温度を有する材料を含む請求項1に記載の物品。
【請求項20】
前記基板は、約0℃〜300℃の温度では前記第1の材料の熱膨張係数の10%以内の熱膨張係数を有する基板材料を含む請求項1に記載の物品。
【請求項21】
前記面は約100m以下の曲率半径を有する請求項1に記載の物品。
【請求項22】
前記面は実質的に平面である請求項1に記載の物品。
【請求項23】
前記面は構造面である請求項1に記載の物品。
【請求項24】
前記第1の材料は誘電材料である請求項1に記載の物品。
【請求項25】
前記第1の材料は酸化物である請求項1に記載の物品。
【請求項26】
前記酸化物は金属酸化物である請求項25に記載の物品。
【請求項27】
前記金属酸化物は、SiO2、Al2O3、Nb2O5、TiO2、ZrO2、HfO2およびTa2O5からなる群から選択される請求項26に記載の物品。
【請求項28】
前記隣接層は、約1nm以上の垂直光学厚さを有する請求項2に記載の物品。
【請求項29】
前記隣接層は、約10nm以上の垂直光学厚さを有する請求項2に記載の物品。
【請求項30】
前記隣接層は、約20nm以上の垂直光学厚さを有する請求項2に記載の物品。
【請求項31】
前記隣接層は、約5,000nm以下の垂直光学厚さを有する請求項2に記載の物品。
【請求項32】
前記隣接層は、約1,000nm以下の垂直光学厚さを有する請求項2に記載の物品。
【請求項33】
前記隣接層は、約500nm以下の垂直光学厚さを有する請求項2に記載の物品。
【請求項34】
前記第1の多層フィルムおよび前記第2の多層フィルムは、反射防止フィルムである請求項1に記載の物品。
【請求項35】
前記物品は光学フィルタである請求項1に記載の物品。
【請求項36】
前記光学フィルタは赤外フィルタである請求項35に記載の物品。
【請求項37】
前記赤外フィルタは、前記物品を通過する約650nm〜約1,100nmの波長を有する光の透過率を低減する請求項36に記載の物品。
【請求項38】
前記光学フィルタは紫外フィルタである請求項35に記載の物品。
【請求項39】
前記紫外フィルタは、前記物品を通過する約400nm未満の波長を有する光の透過率を低減する請求項38に記載の物品。
【請求項40】
前記第1の材料の屈折率は、前記第2の材料の屈折率とは異なる請求項3に記載の物品。
【請求項41】
前記第1の材料からなる前記隣接層の垂直光学厚さは、前記第2の材料からなる前記隣接層の垂直光学厚さと同一である請求項3に記載の物品。
【請求項42】
前記第1の材料からなる前記隣接層の垂直光学厚さは、前記第2の材料からなる前記隣接層の垂直光学厚さとは異なる請求項3に記載の物品。
【請求項43】
前記基板の第3の面の上に載置される第3の多層フィルムをさらに含み、前記第3の面は前記第1の面に対向する請求項1に記載の物品。
【請求項44】
前記第1の多層フィルム、前記第2の多層フィルムおよび前記第3の多層フィルムは、同一である請求項43に記載の物品。
【請求項45】
第1の面および前記第1の面に対向する第2の面を有する光学部品と、
前記第1の面の上に載置される第1の材料からなる層と、
前記第2の面の上に載置される第1の材料からなる層と、を備え、
前記第1の面の位置における前記第1の材料からなる前記層の垂直光学厚さが、前記第2の面の対応する位置の上の前記第1の材料からなる前記層の垂直光学厚さの約5%以内である物品。
【請求項46】
約10m以下の曲率半径を有する面を有し、前記面が第1の位置および第2の位置を有し、前記第1の位置における面法線と前記第2の位置における面法線との間の角度が約2°以上である基板と、
前記面の上に載置されるフィルムと、を含み、
前記フィルムは第1の材料からなる層を含み、前記第1の位置における前記層の垂直光学厚さは前記第2の位置における前記層の垂直光学厚さの約1%以内である物品。
【請求項47】
第1の面および前記第1の面に対向する第2の面を有する基板と、
前記第1の面の上に載置される第1のフィルムと、
前記第2の面の上に載置される第2のフィルムと、を有し、
前記第1の面の位置における前記第1のフィルムの垂直光学厚さは、前記第2の面の対応する位置における前記第2のフィルムの垂直光学厚さの約5%以内である物品。
【請求項48】
ポリマーを含む基板および
前記基板の第1の面の上に載置される多層フィルムを含む物品。
【請求項49】
光軸を画定する多層フィルムを含む光学フィルタであって、
前記光学フィルタは、前記光軸に沿って伝搬する波長λ1を有する光の50%を透過し、
前記光学フィルタは、前記光軸に対して30°の角度で前記多層フィルムに入射する波長λ2を有する光の50%を透過し、|λ1−λ2|は約30nm以下である光学フィルタ。
【請求項50】
λ1は約650nmである請求項49に記載の光学フィルタ。
【請求項51】
基板の上にフィルムを形成するための方法であって、
第1の材料からなる複数の単層を順次載置させることによって、第1の材料からなる層を形成し、前記第1の材料からなる前記単層のうちの1層を前記基板の前記第1の面の上に載置させる工程を含み、
前記フィルムは前記第1の材料からなる前記層を含み、前記基板はポリマーを含む方法。
【請求項52】
前記第1の材料からなる前記複数の単層を載置する工程は、前駆物質からなる単層を載置する工程と、前記前駆物質からなる前記単層を試薬にさらして、前記第1の材料からなる単層を形成する工程とを含む請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記試薬は、前記前駆物質と化学的に反応して、前記第1の材料を形成する請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記試薬は、前記前駆物質を酸化して、前記第1の材料を形成する請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記前駆物質からなる前記単層を載置する工程は、前記前駆物質を含む第1のガスを、前記基板を収容する室に導入する工程を含む請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記室における前記第1のガスの圧力は、約0.01〜約100トールである請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記前駆物質からなる前記単層を前記試薬にさらす工程は、前記試薬を含む第2のガスを前記室に導入する工程を含む請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記室における前記第2のガスの圧力は、約0.01〜約100トールである請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記第1のガスが導入された後であって、前記第2のガスが導入される前に、第3のガスが前記室に導入される請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記第3のガスは、前記前駆物質に対して不活性である請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記第3のガスは、ヘリウム、アルゴン、窒素、ネオン、クリプトンおよびキセノンからなる群から選択される少なくとも1つのガスを含む請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記前駆物質は、トリス(tert−ブトキシ)シラノール、(CH3)3Al、TiCl4、SiCl4、SiH2Cl2、TaCl3、AlCl3、Hf−エタオキシド(ethaoxide)およびTa−エタオキシド(ethaoxide)からなる群から選択される請求項52に記載の方法。
【請求項63】
前記第1の材料は誘電材料である請求項51に記載の方法。
【請求項64】
第2の材料からなる複数の単層を順次載置させることによって、前記第2の材料からなる層を形成する工程をさらに含み、前記第2の材料からなる前記単層のうちの1層を前記第1の材料からなる前記層の上に載置させ、前記第2の材料は前記第1の材料とは異なり、前記フィルムは前記第2の材料からなる前記層を含む請求項51に記載の方法。
【請求項65】
前記第2の材料からなる前記複数の単層を載置する工程は、前駆物質からなる単層を載置する工程と、前記前駆物質からなる前記単層を試薬にさらして、前記第2の材料からなる単層を形成する工程とを含む請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記試薬は、前記前駆物質と化学的に反応して、前記第2の材料を形成する請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記試薬は、前記前駆物質を酸化して、前記第2の材料を形成する請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記前駆物質からなる前記単層を載置する工程は、前記前駆物質を含む第1のガスを、前記基板を収容する室に導入する工程を含む請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記室における前記第1のガスの圧力は、約0.01〜約100トールである請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記前駆物質からなる前記単層を前記試薬にさらす工程は、前記試薬を含む第2のガスを前記室に導入する工程を含む請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記室における前記第2のガスの圧力は、約0.01〜約100トールである請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記第1のガスが導入された後であって、前記第2のガスが導入される前に、前記室はパージガスによってパージされる請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記パージガスは、前記第1の前駆物質に対して不活性である請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記パージガスは、ヘリウム、アルゴン、窒素、ネオン、クリプトンおよびキセノンからなる群から選択される少なくとも1つのガスを含む請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記前駆物質は、トリス(tert−ブトキシ)シラノール、(CH3)3Al、TiCl4、SiCl4、SiH2Cl2、TaCl3、AlCl3、Hf−エタオキシド(ethaoxide)およびTa−エタオキシド(ethaoxide)からなる群から選択される請求項65に記載の方法。
【請求項76】
前記第2の材料は誘電材料である請求項64に記載の方法。
【請求項77】
前記第2の材料からなる前記層の面の上に第3の材料からなる層を形成する工程をさらに含み、前記第3の材料は前記第2の材料とは異なり、前記フィルムは前記第3の材料からなる前記層を含む請求項64に記載の方法。
【請求項78】
前記第3の材料は、前記第1の材料と同一である請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記第3の材料からなる前記層は、原子層蒸着を用いて蒸着される請求項77に記載の方法。
【請求項80】
前記第3の材料からなる前記層の面の上に第4の材料からなる層を形成する工程をさらに含み、前記第4の材料は前記第3の材料とは異なり、前記フィルムは前記第4の材料の前記層を含む請求項77に記載の方法。
【請求項81】
前記第4の材料は、前記第2の材料と同一である請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記第4の材料からなる前記層は、原子層蒸着を用いて蒸着される請求項80に記載の方法。
【請求項83】
前記第4の材料からなる前記層によって支持される別の層を形成する工程をさらに含む請求項80に記載の方法。
【請求項84】
前記別の層の少なくとも一部は、前記第1の材料または前記第2の材料を含む請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記別の層は、原子層蒸着を用いて形成される請求項83に記載の方法。
【請求項86】
前記基板は光学部品である請求項51に記載の方法。
【請求項87】
前記基板の第2の面の上に第1の材料からなる層を形成すると同時に、前記第1の面の上に前記第1の材料からなる前記層を形成する工程を含み、前記第2の面が前記第1の面に対向するか、または隣接する請求項51に記載の方法。
【請求項88】
前記第1の材料からなる前記層は、前記第1の材料からなる複数の単層が順次載置されることによって、前記第2の面の上に形成され、前記第1の材料からなる前記単層のうちの1層が前記基板の前記第2の面の上に載置される請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記基板の第2の面の上に載置される前記第1の材料からなる前記層の上に前記第2の材料からなる層を形成すると同時に、前記第1の面の上に前記第1の材料からなる前記層の上に前記第2の材料からなる前記層を形成する工程をさらに含み、前記第2の面が前記第1の面に対向するか、または隣接する請求項64に記載の方法。
【請求項90】
前記第2の材料からなる前記層は、前記第2の材料からなる複数の単層が順次載置されることによって、前記第2の面の上に載置される前記第1の材料からなる前記層の上に形成され、前記第2の材料からなる前記単層のうちの1層が、前記第2の面の上に載置される前記第1の材料からなる前記層の面の上に載置される請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記第1の材料からなる前記層を形成する間、前記基板は約500℃以下の温度を有する請求項51に記載の方法。
【請求項92】
前記第1の材料からなる前記層を形成する間、前記基板は約300℃以下の温度を有する請求項51に記載の方法。
【請求項93】
前記第1の材料からなる前記層を形成する間、前記基板は約200℃以下の温度を有する請求項51に記載の方法。
【請求項94】
前記第1の材料からなる前記層を形成する間、前記基板は約150℃以下の温度を有する請求項51に記載の方法。
【請求項95】
前記第1の材料からなる前記層を形成する間、前記基板は約80℃以下の温度を有する請求項51に記載の方法。
【請求項96】
前記ポリマーは熱硬化性ポリマーである請求項51に記載の方法。
【請求項97】
前記ポリマーは熱可塑性ポリマーである請求項51に記載の方法。
【請求項98】
光学部品の上に多層フィルムを形成する方法であって、
第1の材料からなる複数の単層を順次載置させることによって、第1の材料からなる層を形成する工程であって、前記第1の材料からなる前記単層のうちの1層を前記光学部品の第1の面の上に載置させる工程と、
第2の材料からなる複数の単層を順次載置させることによって、第2の材料からなる層を形成する工程であって、前記第2の材料からなる前記単層のうちの1層を前記第1の材料からなる前記層の面の上に載置させる工程とを含み、
前記多層フィルムは、前記第1の材料および前記第2の材料からなる前記層を含み、前記光学部品はレンズである方法。
【請求項99】
基板の第1の面および第2の面の上にフィルムを同時に蒸着するために原子層蒸着を用いる工程を含み、前記第1の面は前記第2の面に対向する方法。
【請求項100】
光学基板の第1の面および第2の面の上に第1の材料からなる層を同時に蒸着するために原子層蒸着を用いる工程を含み、前記第1の面は前記第2の面に対向する方法。
【請求項101】
ポリマーを含む基板の面の上に多層フィルムを蒸着するために原子層蒸着を用いる工程を含む方法。
【請求項102】
基板の上にフィルムを形成するための方法であって、
第1の材料からなる複数の単層を順次載置させることによって、第1の材料からなる層を形成する工程を含み、前記第1の材料からなる前記単層のうちの1層を前記基板の第1の面の上に載置させ、
前記フィルムは前記第1の材料からなる前記層を含み、前記基板はレンズを含む方法。
【請求項103】
曲面を含む基板の上にフィルムを形成するための方法であって、
第1の材料からなる複数の単層を順次載置させることによって、第1の材料からなる層を形成する工程を含み、前記第1の材料からなる前記単層のうちの1層を前記基板の曲面の上に載置させ、
前記フィルムは前記第1の材料からなる前記層を含む方法。
【請求項104】
基板の上にフィルムを形成するための方法であって、
第1の材料からなる複数の単層を順次載置させることによって、第1の材料からなる層を形成する工程を含み、前記第1の材料からなる前記単層のうちの1層を前記基板の第1の面および第2の面の上に同時に載置させ、
前記フィルムは前記第1の材料からなる前記層を含み、前記第1の面は前記第2の面に対向する方法。
【請求項105】
基板の上にフィルムを形成するための方法であって、
第1の材料からなる複数の単層を順次載置させることによって、第1の材料からなる層を形成する工程を含み、前記第1の材料からなる前記単層のうちの1層を前記基板の第1の非共面および第2の非共面の上に同時に載置させ、
前記フィルムは前記第1の材料からなる前記層を含み、前記第1の面は前記第2の面に隣接する方法。
【請求項106】
レンズの面の上に多層フィルムを蒸着するために、原子層蒸着を用いる工程を含む方法。
【請求項107】
曲面または構造面の上に多層フィルムを蒸着するために、原子層蒸着を用いる工程を含む方法。
【請求項108】
物体からの光を画像平面に結像するためのレンズおよび
光学フィルタであって、前記光学フィルタがない場合の同一の光学システムに比して、前記画像平面において波長λの集束光の量を約20%以上減少させるよう前記レンズに対して位置決めされる複数の層を含む光学フィルタを含み、前記層のうちの1層が前記レンズの第1の面の上に載置される光学システム。
【請求項109】
前記第1の面は約2m以下の曲率半径を有する請求項108に記載の光学システム。
【請求項110】
前記画像平面は前記レンズから約5cm以下である請求項108に記載の光学システム。
【請求項111】
前記画像平面は前記レンズから約1cm以下である請求項108に記載の光学システム。
【請求項112】
前記画像平面は前記レンズから約0.5cm以下である請求項108に記載の光学システム。
【請求項113】
前記画像平面において位置決めされる検出器をさらに備える請求項108に記載の光学システム。
【請求項114】
前記検出器は、電荷結合素子アレイまたは相補型金属酸化物半導体アレイである請求項113に記載の光学システム。
【請求項115】
前記光学フィルタは、前記検出器の面の上に載置される請求項113に記載の光学システム。
【請求項116】
前記複数の層は、複数の誘電層を含む請求項113に記載の光学システム。
【請求項117】
前記複数の層からなる交互の層は、異なる屈折率を有する請求項108に記載の光学システム。
【請求項118】
前記複数の層は、前記第1の面に対向する前記レンズの第2の面の上に載置される層を含む請求項108に記載の光学システム。
【請求項119】
λは約650nm以上である請求項108に記載の光学システム。
【請求項120】
λは約650nm〜1,100nmである請求項108に記載の光学システム。
【請求項121】
前記光学フィルタは、前記画像平面において波長λの集束光を約50%以上減少させる請求項108に記載の光学システム。
【請求項122】
前記光学フィルタは、前記画像平面において波長λの集束光を約80%以上減少させる請求項108に記載の光学システム。
【請求項123】
前記光学フィルタは、前記画像平面において波長λの集束光を約90%以上減少させる請求項108に記載の光学システム。
【請求項124】
前記光学フィルタは、前記画像平面において波長λの集束光を約95%以上減少させる請求項108に記載の光学システム。
【請求項125】
物体からの光を画像平面に結像するための第2のレンズをさらに含み、前記光学フィルタの前記層の1層が前記第2のレンズの面の上に載置される請求項108に記載の光学システム。
【請求項126】
結像光の光線が、前記第1の面において約20°以下の最大発散を有する請求項108に記載の光学システム。
【請求項127】
結像光の光線が、前記第1の面において約15°以下の最大発散を有する請求項108に記載の光学システム。
【請求項128】
結像光の光線が、前記第1の面において約10°以下の最大発散を有する請求項108に記載の光学システム。
【請求項129】
前記光学フィルタは、前記レンズと前記画像平面との間に位置決めされる請求項108に記載の光学システム。
【請求項130】
請求項108に記載の光学システムを含むディジタルカメラ。
【請求項131】
請求項130に記載のディジタルカメラを含む携帯電話。
【請求項132】
レンズおよび画像平面に対して位置決めされる光学フィルタを含み、前記光学フィルタは、
第1の面および第2の面を有し、前記第1の面が前記第2の面に対向する基板と、
前記第1の面および前記第2の面の上にそれぞれ載置される第1の多層フィルムおよび第2の多層フィルムと、を含み、
前記第1の多層フィルムは、前記第2の多層フィルムと同一である光学システム。
【請求項1】
第1の面および前記第1の面に隣接する第2の面を有し、前記第1の面および前記第2の面が非共面である基板と、
前記第1の面の上に載置される第1の多層フィルムと、
前記第2の面の上に載置される第2の多層フィルムと、を備え、前記第2の多層フィルムは前記第1の多層フィルムに隣接する物品。
【請求項2】
前記第1の多層フィルムおよび前記第2の多層フィルムは、第1の材料からなる隣接層を含む請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記第1の多層フィルムおよび前記第2の多層フィルムは、第2の材料からなる隣接層を含み、前記第2の材料は前記第1の材料とは異なり、前記第2の材料からなる前記隣接層は、前記第1の材料からなる前記隣接層によって支持される請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記第1の多層フィルムおよび前記第2の多層フィルムは3層以上の隣接層を含み、近接層は異なる材料から形成される請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記基板は光学部品である請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記光学部品はレンズである請求項5に記載の物品。
【請求項7】
前記レンズはフレネルレンズである請求項6に記載の物品。
【請求項8】
前記光学部品はオプティカルフラットである請求項5に記載の物品。
【請求項9】
前記基板はガラスを含む請求項1に記載の物品。
【請求項10】
前記ガラスは、ホウケイ酸ガラス、ガラスセラミック、石英、溶融シリカおよびソーダ石灰ガラスからなる群から選択される請求項9に記載の物品。
【請求項11】
前記基板はポリマーを含む請求項1に記載の物品。
【請求項12】
前記ポリマーは熱硬化性ポリマーである請求項11に記載の物品。
【請求項13】
前記ポリマーは熱可塑性ポリマーである請求項11に記載の物品。
【請求項14】
前記ポリマーは、ポリカーボネート、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルおよびポリメチルメタクリレートからなる群から選択される請求項11に記載の物品。
【請求項15】
前記基板は、約80℃以下のガラス転移温度を有する材料を含む請求項1に記載の物品。
【請求項16】
前記基板は、約100℃以下のガラス転移温度を有する材料を含む請求項1に記載の物品。
【請求項17】
前記基板は、約150℃以下のガラス転移温度を有する材料を含む請求項1に記載の物品。
【請求項18】
前記基板は、約200℃以下のガラス転移温度を有する材料を含む請求項1に記載の物品。
【請求項19】
前記基板は、約250℃以下のガラス転移温度を有する材料を含む請求項1に記載の物品。
【請求項20】
前記基板は、約0℃〜300℃の温度では前記第1の材料の熱膨張係数の10%以内の熱膨張係数を有する基板材料を含む請求項1に記載の物品。
【請求項21】
前記面は約100m以下の曲率半径を有する請求項1に記載の物品。
【請求項22】
前記面は実質的に平面である請求項1に記載の物品。
【請求項23】
前記面は構造面である請求項1に記載の物品。
【請求項24】
前記第1の材料は誘電材料である請求項1に記載の物品。
【請求項25】
前記第1の材料は酸化物である請求項1に記載の物品。
【請求項26】
前記酸化物は金属酸化物である請求項25に記載の物品。
【請求項27】
前記金属酸化物は、SiO2、Al2O3、Nb2O5、TiO2、ZrO2、HfO2およびTa2O5からなる群から選択される請求項26に記載の物品。
【請求項28】
前記隣接層は、約1nm以上の垂直光学厚さを有する請求項2に記載の物品。
【請求項29】
前記隣接層は、約10nm以上の垂直光学厚さを有する請求項2に記載の物品。
【請求項30】
前記隣接層は、約20nm以上の垂直光学厚さを有する請求項2に記載の物品。
【請求項31】
前記隣接層は、約5,000nm以下の垂直光学厚さを有する請求項2に記載の物品。
【請求項32】
前記隣接層は、約1,000nm以下の垂直光学厚さを有する請求項2に記載の物品。
【請求項33】
前記隣接層は、約500nm以下の垂直光学厚さを有する請求項2に記載の物品。
【請求項34】
前記第1の多層フィルムおよび前記第2の多層フィルムは、反射防止フィルムである請求項1に記載の物品。
【請求項35】
前記物品は光学フィルタである請求項1に記載の物品。
【請求項36】
前記光学フィルタは赤外フィルタである請求項35に記載の物品。
【請求項37】
前記赤外フィルタは、前記物品を通過する約650nm〜約1,100nmの波長を有する光の透過率を低減する請求項36に記載の物品。
【請求項38】
前記光学フィルタは紫外フィルタである請求項35に記載の物品。
【請求項39】
前記紫外フィルタは、前記物品を通過する約400nm未満の波長を有する光の透過率を低減する請求項38に記載の物品。
【請求項40】
前記第1の材料の屈折率は、前記第2の材料の屈折率とは異なる請求項3に記載の物品。
【請求項41】
前記第1の材料からなる前記隣接層の垂直光学厚さは、前記第2の材料からなる前記隣接層の垂直光学厚さと同一である請求項3に記載の物品。
【請求項42】
前記第1の材料からなる前記隣接層の垂直光学厚さは、前記第2の材料からなる前記隣接層の垂直光学厚さとは異なる請求項3に記載の物品。
【請求項43】
前記基板の第3の面の上に載置される第3の多層フィルムをさらに含み、前記第3の面は前記第1の面に対向する請求項1に記載の物品。
【請求項44】
前記第1の多層フィルム、前記第2の多層フィルムおよび前記第3の多層フィルムは、同一である請求項43に記載の物品。
【請求項45】
第1の面および前記第1の面に対向する第2の面を有する光学部品と、
前記第1の面の上に載置される第1の材料からなる層と、
前記第2の面の上に載置される第1の材料からなる層と、を備え、
前記第1の面の位置における前記第1の材料からなる前記層の垂直光学厚さが、前記第2の面の対応する位置の上の前記第1の材料からなる前記層の垂直光学厚さの約5%以内である物品。
【請求項46】
約10m以下の曲率半径を有する面を有し、前記面が第1の位置および第2の位置を有し、前記第1の位置における面法線と前記第2の位置における面法線との間の角度が約2°以上である基板と、
前記面の上に載置されるフィルムと、を含み、
前記フィルムは第1の材料からなる層を含み、前記第1の位置における前記層の垂直光学厚さは前記第2の位置における前記層の垂直光学厚さの約1%以内である物品。
【請求項47】
第1の面および前記第1の面に対向する第2の面を有する基板と、
前記第1の面の上に載置される第1のフィルムと、
前記第2の面の上に載置される第2のフィルムと、を有し、
前記第1の面の位置における前記第1のフィルムの垂直光学厚さは、前記第2の面の対応する位置における前記第2のフィルムの垂直光学厚さの約5%以内である物品。
【請求項48】
ポリマーを含む基板および
前記基板の第1の面の上に載置される多層フィルムを含む物品。
【請求項49】
光軸を画定する多層フィルムを含む光学フィルタであって、
前記光学フィルタは、前記光軸に沿って伝搬する波長λ1を有する光の50%を透過し、
前記光学フィルタは、前記光軸に対して30°の角度で前記多層フィルムに入射する波長λ2を有する光の50%を透過し、|λ1−λ2|は約30nm以下である光学フィルタ。
【請求項50】
λ1は約650nmである請求項49に記載の光学フィルタ。
【請求項51】
基板の上にフィルムを形成するための方法であって、
第1の材料からなる複数の単層を順次載置させることによって、第1の材料からなる層を形成し、前記第1の材料からなる前記単層のうちの1層を前記基板の前記第1の面の上に載置させる工程を含み、
前記フィルムは前記第1の材料からなる前記層を含み、前記基板はポリマーを含む方法。
【請求項52】
前記第1の材料からなる前記複数の単層を載置する工程は、前駆物質からなる単層を載置する工程と、前記前駆物質からなる前記単層を試薬にさらして、前記第1の材料からなる単層を形成する工程とを含む請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記試薬は、前記前駆物質と化学的に反応して、前記第1の材料を形成する請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記試薬は、前記前駆物質を酸化して、前記第1の材料を形成する請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記前駆物質からなる前記単層を載置する工程は、前記前駆物質を含む第1のガスを、前記基板を収容する室に導入する工程を含む請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記室における前記第1のガスの圧力は、約0.01〜約100トールである請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記前駆物質からなる前記単層を前記試薬にさらす工程は、前記試薬を含む第2のガスを前記室に導入する工程を含む請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記室における前記第2のガスの圧力は、約0.01〜約100トールである請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記第1のガスが導入された後であって、前記第2のガスが導入される前に、第3のガスが前記室に導入される請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記第3のガスは、前記前駆物質に対して不活性である請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記第3のガスは、ヘリウム、アルゴン、窒素、ネオン、クリプトンおよびキセノンからなる群から選択される少なくとも1つのガスを含む請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記前駆物質は、トリス(tert−ブトキシ)シラノール、(CH3)3Al、TiCl4、SiCl4、SiH2Cl2、TaCl3、AlCl3、Hf−エタオキシド(ethaoxide)およびTa−エタオキシド(ethaoxide)からなる群から選択される請求項52に記載の方法。
【請求項63】
前記第1の材料は誘電材料である請求項51に記載の方法。
【請求項64】
第2の材料からなる複数の単層を順次載置させることによって、前記第2の材料からなる層を形成する工程をさらに含み、前記第2の材料からなる前記単層のうちの1層を前記第1の材料からなる前記層の上に載置させ、前記第2の材料は前記第1の材料とは異なり、前記フィルムは前記第2の材料からなる前記層を含む請求項51に記載の方法。
【請求項65】
前記第2の材料からなる前記複数の単層を載置する工程は、前駆物質からなる単層を載置する工程と、前記前駆物質からなる前記単層を試薬にさらして、前記第2の材料からなる単層を形成する工程とを含む請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記試薬は、前記前駆物質と化学的に反応して、前記第2の材料を形成する請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記試薬は、前記前駆物質を酸化して、前記第2の材料を形成する請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記前駆物質からなる前記単層を載置する工程は、前記前駆物質を含む第1のガスを、前記基板を収容する室に導入する工程を含む請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記室における前記第1のガスの圧力は、約0.01〜約100トールである請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記前駆物質からなる前記単層を前記試薬にさらす工程は、前記試薬を含む第2のガスを前記室に導入する工程を含む請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記室における前記第2のガスの圧力は、約0.01〜約100トールである請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記第1のガスが導入された後であって、前記第2のガスが導入される前に、前記室はパージガスによってパージされる請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記パージガスは、前記第1の前駆物質に対して不活性である請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記パージガスは、ヘリウム、アルゴン、窒素、ネオン、クリプトンおよびキセノンからなる群から選択される少なくとも1つのガスを含む請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記前駆物質は、トリス(tert−ブトキシ)シラノール、(CH3)3Al、TiCl4、SiCl4、SiH2Cl2、TaCl3、AlCl3、Hf−エタオキシド(ethaoxide)およびTa−エタオキシド(ethaoxide)からなる群から選択される請求項65に記載の方法。
【請求項76】
前記第2の材料は誘電材料である請求項64に記載の方法。
【請求項77】
前記第2の材料からなる前記層の面の上に第3の材料からなる層を形成する工程をさらに含み、前記第3の材料は前記第2の材料とは異なり、前記フィルムは前記第3の材料からなる前記層を含む請求項64に記載の方法。
【請求項78】
前記第3の材料は、前記第1の材料と同一である請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記第3の材料からなる前記層は、原子層蒸着を用いて蒸着される請求項77に記載の方法。
【請求項80】
前記第3の材料からなる前記層の面の上に第4の材料からなる層を形成する工程をさらに含み、前記第4の材料は前記第3の材料とは異なり、前記フィルムは前記第4の材料の前記層を含む請求項77に記載の方法。
【請求項81】
前記第4の材料は、前記第2の材料と同一である請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記第4の材料からなる前記層は、原子層蒸着を用いて蒸着される請求項80に記載の方法。
【請求項83】
前記第4の材料からなる前記層によって支持される別の層を形成する工程をさらに含む請求項80に記載の方法。
【請求項84】
前記別の層の少なくとも一部は、前記第1の材料または前記第2の材料を含む請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記別の層は、原子層蒸着を用いて形成される請求項83に記載の方法。
【請求項86】
前記基板は光学部品である請求項51に記載の方法。
【請求項87】
前記基板の第2の面の上に第1の材料からなる層を形成すると同時に、前記第1の面の上に前記第1の材料からなる前記層を形成する工程を含み、前記第2の面が前記第1の面に対向するか、または隣接する請求項51に記載の方法。
【請求項88】
前記第1の材料からなる前記層は、前記第1の材料からなる複数の単層が順次載置されることによって、前記第2の面の上に形成され、前記第1の材料からなる前記単層のうちの1層が前記基板の前記第2の面の上に載置される請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記基板の第2の面の上に載置される前記第1の材料からなる前記層の上に前記第2の材料からなる層を形成すると同時に、前記第1の面の上に前記第1の材料からなる前記層の上に前記第2の材料からなる前記層を形成する工程をさらに含み、前記第2の面が前記第1の面に対向するか、または隣接する請求項64に記載の方法。
【請求項90】
前記第2の材料からなる前記層は、前記第2の材料からなる複数の単層が順次載置されることによって、前記第2の面の上に載置される前記第1の材料からなる前記層の上に形成され、前記第2の材料からなる前記単層のうちの1層が、前記第2の面の上に載置される前記第1の材料からなる前記層の面の上に載置される請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記第1の材料からなる前記層を形成する間、前記基板は約500℃以下の温度を有する請求項51に記載の方法。
【請求項92】
前記第1の材料からなる前記層を形成する間、前記基板は約300℃以下の温度を有する請求項51に記載の方法。
【請求項93】
前記第1の材料からなる前記層を形成する間、前記基板は約200℃以下の温度を有する請求項51に記載の方法。
【請求項94】
前記第1の材料からなる前記層を形成する間、前記基板は約150℃以下の温度を有する請求項51に記載の方法。
【請求項95】
前記第1の材料からなる前記層を形成する間、前記基板は約80℃以下の温度を有する請求項51に記載の方法。
【請求項96】
前記ポリマーは熱硬化性ポリマーである請求項51に記載の方法。
【請求項97】
前記ポリマーは熱可塑性ポリマーである請求項51に記載の方法。
【請求項98】
光学部品の上に多層フィルムを形成する方法であって、
第1の材料からなる複数の単層を順次載置させることによって、第1の材料からなる層を形成する工程であって、前記第1の材料からなる前記単層のうちの1層を前記光学部品の第1の面の上に載置させる工程と、
第2の材料からなる複数の単層を順次載置させることによって、第2の材料からなる層を形成する工程であって、前記第2の材料からなる前記単層のうちの1層を前記第1の材料からなる前記層の面の上に載置させる工程とを含み、
前記多層フィルムは、前記第1の材料および前記第2の材料からなる前記層を含み、前記光学部品はレンズである方法。
【請求項99】
基板の第1の面および第2の面の上にフィルムを同時に蒸着するために原子層蒸着を用いる工程を含み、前記第1の面は前記第2の面に対向する方法。
【請求項100】
光学基板の第1の面および第2の面の上に第1の材料からなる層を同時に蒸着するために原子層蒸着を用いる工程を含み、前記第1の面は前記第2の面に対向する方法。
【請求項101】
ポリマーを含む基板の面の上に多層フィルムを蒸着するために原子層蒸着を用いる工程を含む方法。
【請求項102】
基板の上にフィルムを形成するための方法であって、
第1の材料からなる複数の単層を順次載置させることによって、第1の材料からなる層を形成する工程を含み、前記第1の材料からなる前記単層のうちの1層を前記基板の第1の面の上に載置させ、
前記フィルムは前記第1の材料からなる前記層を含み、前記基板はレンズを含む方法。
【請求項103】
曲面を含む基板の上にフィルムを形成するための方法であって、
第1の材料からなる複数の単層を順次載置させることによって、第1の材料からなる層を形成する工程を含み、前記第1の材料からなる前記単層のうちの1層を前記基板の曲面の上に載置させ、
前記フィルムは前記第1の材料からなる前記層を含む方法。
【請求項104】
基板の上にフィルムを形成するための方法であって、
第1の材料からなる複数の単層を順次載置させることによって、第1の材料からなる層を形成する工程を含み、前記第1の材料からなる前記単層のうちの1層を前記基板の第1の面および第2の面の上に同時に載置させ、
前記フィルムは前記第1の材料からなる前記層を含み、前記第1の面は前記第2の面に対向する方法。
【請求項105】
基板の上にフィルムを形成するための方法であって、
第1の材料からなる複数の単層を順次載置させることによって、第1の材料からなる層を形成する工程を含み、前記第1の材料からなる前記単層のうちの1層を前記基板の第1の非共面および第2の非共面の上に同時に載置させ、
前記フィルムは前記第1の材料からなる前記層を含み、前記第1の面は前記第2の面に隣接する方法。
【請求項106】
レンズの面の上に多層フィルムを蒸着するために、原子層蒸着を用いる工程を含む方法。
【請求項107】
曲面または構造面の上に多層フィルムを蒸着するために、原子層蒸着を用いる工程を含む方法。
【請求項108】
物体からの光を画像平面に結像するためのレンズおよび
光学フィルタであって、前記光学フィルタがない場合の同一の光学システムに比して、前記画像平面において波長λの集束光の量を約20%以上減少させるよう前記レンズに対して位置決めされる複数の層を含む光学フィルタを含み、前記層のうちの1層が前記レンズの第1の面の上に載置される光学システム。
【請求項109】
前記第1の面は約2m以下の曲率半径を有する請求項108に記載の光学システム。
【請求項110】
前記画像平面は前記レンズから約5cm以下である請求項108に記載の光学システム。
【請求項111】
前記画像平面は前記レンズから約1cm以下である請求項108に記載の光学システム。
【請求項112】
前記画像平面は前記レンズから約0.5cm以下である請求項108に記載の光学システム。
【請求項113】
前記画像平面において位置決めされる検出器をさらに備える請求項108に記載の光学システム。
【請求項114】
前記検出器は、電荷結合素子アレイまたは相補型金属酸化物半導体アレイである請求項113に記載の光学システム。
【請求項115】
前記光学フィルタは、前記検出器の面の上に載置される請求項113に記載の光学システム。
【請求項116】
前記複数の層は、複数の誘電層を含む請求項113に記載の光学システム。
【請求項117】
前記複数の層からなる交互の層は、異なる屈折率を有する請求項108に記載の光学システム。
【請求項118】
前記複数の層は、前記第1の面に対向する前記レンズの第2の面の上に載置される層を含む請求項108に記載の光学システム。
【請求項119】
λは約650nm以上である請求項108に記載の光学システム。
【請求項120】
λは約650nm〜1,100nmである請求項108に記載の光学システム。
【請求項121】
前記光学フィルタは、前記画像平面において波長λの集束光を約50%以上減少させる請求項108に記載の光学システム。
【請求項122】
前記光学フィルタは、前記画像平面において波長λの集束光を約80%以上減少させる請求項108に記載の光学システム。
【請求項123】
前記光学フィルタは、前記画像平面において波長λの集束光を約90%以上減少させる請求項108に記載の光学システム。
【請求項124】
前記光学フィルタは、前記画像平面において波長λの集束光を約95%以上減少させる請求項108に記載の光学システム。
【請求項125】
物体からの光を画像平面に結像するための第2のレンズをさらに含み、前記光学フィルタの前記層の1層が前記第2のレンズの面の上に載置される請求項108に記載の光学システム。
【請求項126】
結像光の光線が、前記第1の面において約20°以下の最大発散を有する請求項108に記載の光学システム。
【請求項127】
結像光の光線が、前記第1の面において約15°以下の最大発散を有する請求項108に記載の光学システム。
【請求項128】
結像光の光線が、前記第1の面において約10°以下の最大発散を有する請求項108に記載の光学システム。
【請求項129】
前記光学フィルタは、前記レンズと前記画像平面との間に位置決めされる請求項108に記載の光学システム。
【請求項130】
請求項108に記載の光学システムを含むディジタルカメラ。
【請求項131】
請求項130に記載のディジタルカメラを含む携帯電話。
【請求項132】
レンズおよび画像平面に対して位置決めされる光学フィルタを含み、前記光学フィルタは、
第1の面および第2の面を有し、前記第1の面が前記第2の面に対向する基板と、
前記第1の面および前記第2の面の上にそれぞれ載置される第1の多層フィルムおよび第2の多層フィルムと、を含み、
前記第1の多層フィルムは、前記第2の多層フィルムと同一である光学システム。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−534007(P2007−534007A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553167(P2006−553167)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/003655
【国際公開番号】WO2005/079233
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(504462803)ナノオプト コーポレーション (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/003655
【国際公開番号】WO2005/079233
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(504462803)ナノオプト コーポレーション (7)
【Fターム(参考)】
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