説明

光学的情報記録再生装置

【課題】 多次元のトレリス符号化変調を適応した多値データ処理において、学習テーブルを簡便にし、装置の簡素化を図る。また学習テーブルが簡便となることで、同時に学習時間の低減させる
【解決手段】 再生信号の振幅を多段階にすることによる3以上のレベルの多値情報をセルで記録または/かつ再生する光学的情報記録再生装置において、
前記セルでサンプリングされた再生信号のレベル補正を行う再生信号補正回路と、
前記再生信号補正回路から出力された再生信号と前記セルの各レベルにおける理想値との差に基づいてエラーパワーを算出するエラーパワー算出回路と、
前記エラーパワー算出回路により得られた値に基づいて復号する復号器とを備えた光学的情報記録再生装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ディスク等の情報記録媒体に多値情報を記録又は再生する光学的情報記録再生装置に関するものである。特にトレリス符号化変調を適応した多値データ処理においてデータ処理を簡便にできる多値データ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光ディスクにおいては渦巻状又は同心円状のトラック上に2値のデジタルデータが、エンボス加工等による凹凸のピット(ROMディスク)や無機・有機記録膜への穴形成(追記型ディスク)・結晶状態の違い(相変化ディスク)等によって記録されている。これらの記録データを再生する際には、トラック上にレーザビームを照射して、その反射光の強度差や磁気カー効果による偏光方向の差等を検出し、再生RF信号を得ている。そして、得られた再生RF信号から2値のデータを検出している。
【0003】
近年、これら光ディスクの記録容量の高密度化を図る研究開発が進められており、情報の記録再生に関わる光スポットを微小化する技術として、光源の波長は赤色(650nm)から、青紫色(405nm)になりつつある。また、対物レンズの開口数も0.6や0.65から0.85へと高められようとしている。一方では、同じ光スポットの大きさを用いて、より効率のよい多値記録再生の技術も提案されている。
【0004】
例えば、本願出願人は、特開平5−128530号公報において、次のような多値情報の記録再生方法を提案している。(特許文献1)
多値情報の記録は、光学的情報記録媒体の情報トラック上に情報ピットのトラック方向の幅と、その情報ピットの再生用光スポットに対するトラック方向のシフト量の組み合わせによって行う。また、前記多値記録した情報ピットを再生する際、予め学習しておいた検出信号と光スポットから得られた検出信号との相関より多値情報を再生する。
【0005】
また、光ディスク分野の研究における国際学会であるISOM2003(Write−once Disks for Multi−level Optical Recording:予稿集Fr−Po−04)において、次のような発表がなされている。(非特許文献1)上記発表では、青紫色の光源(405nm)とNA0.65の光学系を用いている。さらに前記光学系によって、トラックピッチが0.46μmの光ディスクに対して、仮想的に設けた一つの情報ピットを記録する領域(以下、セルと記述する)のトラック方向の幅を0.26μmとし、8レベルの多値記録再生を行っている。
【0006】
8レベルの情報ピットは、情報記録媒体に記録する時に、2値データから8レベルに変換された後に各セルに記録される。8値記録の場合、1つのセルが3ビットの2値データに対応していることになる。
【0007】
例えば、3ビットの情報に対して、(0,0,0)は0レベルに対応させている。
また(0,0,1)は1レベルに対応させている。
また(0,1,0)は2レベルに対応させている。
また(0,1,1)は3レベルに対応させている。
また(1,1,0)は4レベルに対応させている。
また(1,1,1)は5レベルに対応させている。
また(1,0,0)は6レベルに対応させている。
また(1,0,1)は7レベルに対応させている。
【0008】
上記8レベルの情報ピットの選択は、例えば、図1のようにセルのトラック方向の幅を16等分し、レベル0を何も情報ピットを記録しない、レベル1を2/16セル分の幅とする。
またレベル2を4/16セル分の幅とする。
またレベル3を6/16セル分の幅とする。
またレベル4を8/16セル分の幅とする。
またレベル5を10/16セル分の幅とする。
またレベル6を12/16セル分の幅とする。
またレベル7を14/16セル分の幅とする。
【0009】
このように選択した情報ピットをランダムに記録し、その反射光量を光検出器で受光した場合、得られた多値情報ピットからの再生信号の振幅は図2のような分布となる。
【0010】
ここでサンプリングを行うタイミングは光スポットの中心が、セルのトラック方向の幅の中央に来た時である。
【0011】
また、情報ピットが何も書かれていないレベル0が続く時の再生信号出力を『1』、レベル7の情報ピットが連続して記録されている時の再生信号出力を『0』として規格化している。
【0012】
各レベルに対応する再生信号の値が幅を持つのは、注目している情報ピットの前後に書かれている情報ピットからの影響(符号間干渉)を受けるからである。
【0013】
図2のように隣のレベルと再生信号の振幅分布が重なっていると、固定した閾値では分離検出できないことが分かる。
【0014】
ISOM2003の発表の例ではまず注目している情報ピットの値と、その前後の情報ピットの値とが予め分かっているピット列からの再生信号を読み取って記憶する。(学習)
次に実際の情報ピットからの再生信号と記録しておいた値とを比べて(相関をみる)、分離検出する方式によって上記符号間干渉の問題を解決している。
【0015】
また、本願出願人は、特願2005−253542号において、符号間干渉の影響、または/かつ非線形性の影響を補正する光学的情報記録再生装置を提案している。
【0016】
上記光学的情報記録再生装置においては、連続する3つのセルの全ての組合せの再生信号、または、一部の再生信号から得た補正値計数を用いて、中央セルに対する前後のセルのレベルの合計に従った補正量で中央セルの再生信号を中央セルのレベルに従った理想値に近づけるように補正する。
【0017】
また、各レベルの理想値が等間隔になるように、さらに補正を行うことで、多値情報の符号間干渉の影響、または/かつ非線形性の影響を補正することができ、各レベルの分布の分離度を上げて、再生の確度を向上させている。
【0018】
また一方で、光ディスクにおいては、符号間干渉以外にも、各種光ディスク間の反射率の違いや、1つの光ディスク内における内周側と外周側での再生周波数特性の違い等様様な要因でレベル変動や振幅変動が発生する。そのため、上記のような分離検出方式を用いても、再生信号を誤った値で検出してしまうことがある。特登録3475627号公報(特許文献2)ではランダムノイズと符号間干渉のような信号の歪みの両者が存在するような場合でも、記録されているデータを正しく再生することが可能な再生装置が述べられている。
【0019】
上記の再生装置では、多値情報の一部にトレリス符号化変調がなされたデータの一部分のみを仮判定する複数の記録データ仮定手段によって仮定記録データを求める。そして、該仮定記録データを基に、再生データを推定して基準値との距離を求めることで復号を行っている。
【0020】
図3にその復号回路のブロック図を示している。入力信号は、8つの2次元復号器301に入力されて、記録データが仮定される。それぞれの仮定記録データを基に、理想的な再生データである基準値を用いて、推定再生データが推定値演算302によって推定され、さらに実際の再生データとの距離が加算器303求められている。そして該距離(差分)から二乗回路304でエラーパワーが求められて、ビタビ復号回路305で演算され、多値データの復号が行われる。このようにして再生信号中にランダムノイズと信号のひずみ、またはその両方が存在するような場合においても、高い復号性能が得られるとある。
【特許文献1】特開平5−128530号公報
【特許文献2】特登録3475627号公報
【非特許文献1】ISOM2003(Write−once Disks for Multi−level Optical Recording:予稿集Fr−Po−04)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、上記の多値情報の一部にトレリス符号化変調を適応して、データの一部分のみを仮判定する複数の記録データ仮定手段によって仮定記録データを求める。そして、該仮定記録データを基に、再生データを推定して基準値との距離を求めることで復号する方式には以下のような課題がある。
【0022】
上記の従来例では復号器に入力される信号は2つのシンボルからの信号であり、記録データ仮定手段は8つの2次元復号器から構成されていて、2次元復号器の基準値は2次元復号器で各々8個、計64個である。これに対して、入力される信号が4つのシンボルからの信号、すなわち4次元であれば記録データ仮定手段は4次元復号器であって、その基準値の数は8値の記録データでは8=4096個と高次元であればあるほど指数関数的に増えていくこととなる。
【0023】
すなわちnレベル多値記録データのm次元復号器の記録データ仮定手段を含む再生装置では推定値演算302の学習テーブルの数はn個となり、復号特性を向上させるためにはmを大きくする必要がある一方で、メモリICの規模が大きくなってしまう。またランダムなデータの再生を行いつつ、メモリICの更新(学習)を行う場合にも、適合するデータの数が少なくメモリICの更新は頻繁に行われず、復号特性が低下する問題が起こる。特定のテストデータを用いてメモリICの更新(学習)を行う場合も、学習の時間が多く必要となる問題がある。
【0024】
本発明の目的は、多次元のトレリス符号化変調を適応した多値データ処理において、学習テーブルを簡便にすると共に学習時間の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記目的を達成するために以下を提供する。
光スポットを用いて情報の記録再生を行う光学的情報媒体のトラック上に、仮想的に一定間隔のセルを設けて、トラック方向の情報ピットの幅、または、情報ピットの面積を変え、再生信号の振幅を多段階にすることによる3以上のレベルの多値情報を記録または/かつ再生する光学的情報記録再生装置において、
前記セルでサンプリングされた再生信号のレベル補正を行う再生信号補正回路と、
前記再生信号補正回路から出力された再生信号と前記セルの各レベルにおける理想値との差に基づいてエラーパワーを算出するエラーパワー算出回路と、
前記エラーパワー算出回路により得られた値に基づいて復号する復号器とを備えることを特徴とする光学的情報記録再生装置。
【発明の効果】
【0026】
本発明によって、多次元のトレリス符号化変調を適応した多値データ処理において、学習テーブルを簡便にでき、装置の簡素化が可能となる。また学習テーブルが簡便となることで、同時に学習時間の低減が実現可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
図4は本発明に係る多値情報記録再生装置の一実施形態を示す概略ブロック図である。
【0029】
図4において、1は螺旋状または同心円状のトラックが形成された情報記録媒体であるところの光ディスク、2は光ディスク1を回転駆動するスピンドルモータである。
【0030】
この光ディスク1に図1で説明したようにトラック方向に仮想的に一定間隔のセルを設け、そのセルに情報ピットの幅(又は情報ピットの面積)を変えることによって多値情報を記録再生するものである。
【0031】
3は光ディスク1に対して多値情報を記録或いは再生するための光ヘッドであり、光源の半導体レーザからのレーザ光を対物レンズで集光して光ディスク1上に光スポットを照射する。また、その光スポットの光ディスク1からの反射光は光ヘッド3内の光検出器で検出され、演算増幅回路4に送られる。
【0032】
演算増幅回路4は光ヘッド3の光検出器の信号を処理することで光スポットを光ディスク1の所望のトラック上に沿って走査するように制御するためのフォーカスエラー信号/トラッキングエラー信号を検出する。
【0033】
サーボ回路5はその信号に基づいて光ヘッド3内のフォーカスアクチュエータ/トラッキングアクチュエータを制御することでフォーカス制御及びトラッキング制御を行う。
【0034】
また、サーボ回路4はスピンドルモータ2を制御し、線速度一定或いは角速度一定等の光ディスク1の回転制御を行う。
【0035】
光ディスク1に多値情報を記録する場合には、2値データ入力6を多値化回路7により多値データに変換し、変調回路8により多値データに応じた信号を出力する。
【0036】
レーザ駆動回路9はその信号に応じて光ヘッド3内の半導体レーザを駆動し、光ディスク1のトラック上に多値情報に従ったマークを記録する。
【0037】
また、多値情報を再生する場合には、光ヘッド3から再生用の光スポットを光ディスク1上に照射し、光検出器でその反射光を受光する。その検出信号を演算増幅回路4によって信号処理し、得られた信号をAD変換回路10によりデジタル信号に変換する。
【0038】
これらの処理はPLL回路11によって作成されたクロックを用いて行う。AD変換された値は等化回路12により波形等化処理がなされる。そして、後述するように再生信号補正回路13では学習用メモリ15に基づいて再生信号の補正を行う。そして多値データ判定回路14は多値レベルを判定する。また判定された多値レベルは学習用メモリ15の更新に用いることができる。最後に多値データは多値−2値変換回路16により2値データに変換され、2値データ出力17として出力する。
【0039】
まず光ディスク上に記録されている多値データについて説明する。
4次元多値データのトレリス符号化変調では図8の畳み込み符号によって符号化が行われている。畳み込み符号器はフリップフロップ801とXOR回路802で構成されており、まずD1〜D11の2値データのうちD1〜D3のみを利用して、D0が出力される。
【0040】
次に前記D0〜D3は図9であらわされるようなビット変換でL0〜L3へのマッピングが行なわれる。マッピングはメモリICを使って実現できる。該マッピングによって本実施例の畳み込み符号器に対応した16状態のトレリス線図上で合流するパスの最小距離を離すことが可能となる。
【0041】
続いて2値データL0、L1、L2、L3、D4・・・D11を8値データS1、S2、S3、S4に変換する方法を示す。まず12ビットの2値データを3ビット(X,Y,Z,)=(D11,D7,L3),(D10,D6,L2),(D9,D5,L1),(D8,D4,L0)のように3ビットずつに分割する。次に図10の表に従って(X,Y,Z)の3ビットの2値データは、0〜7の8値データに変換され、S1、S2、S3、S4のシンボルとして出力される。
【0042】
前記の方法によって出力されたシンボルは変調回路8、レーザ駆動回路9を通じて、光ヘッド3により記録される。
【0043】
次に再生信号補正回路13について詳しく説明する。本実施形態では、0〜7の8値の多値データを再生するものとする。
【0044】
図5は再生信号補正回路13の全体的な構成図である。波形等化処理がなされた再生信号は多値データ仮判定回路501に入力され学習用メモリ15内の学習テーブルを用いて0〜7の多値データが仮判定される。続いて、補正量演算回路502によって、再生信号の補正量が演算される。前記補正量と波形等化処理がなされた再生信号の差分を取って再生信号の補正が終了する。
【0045】
前記学習用メモリ15の内容を図7に示す。先行セル、注目セル、後行セルがとりうるすべての組み合わせ、全512パターン(8×8×8)についての再生信号を学習により求め、512通りの基準値をもつ学習テーブルが入力されている。
【0046】
例えば、512パターンの情報は光ディスク1上のユーザデータ領域の先頭部分に記録されており、ユーザデータ領域の情報を再生する前に各パターンの注目セルの再生信号を検出して、そのサンプリング値を学習用メモリ15に基準値として記憶させる。
【0047】
多値記録データ仮判定回路501について図6、図7を用いて詳細に説明する。多値記録データ仮判定回路501は3つの連続セル(先行セル、注目セル、後行セル)から、注目セルの候補値を判定するものである。
【0048】
多値記録データ仮判定回路501に再生信号が入力されると、ステップ1で操作を開始する。
【0049】
次いで、ステップ2で、先行セルの値を決定する。ここでは、前の処理で求めた注目セルの値を用いることにする。
【0050】
例えば、前の処理で判定した注目セルの値が『7』だった場合には、先行セルの値は『7』として選択する(ここで言う「選択」とは最終的な判定ではなく、仮決めを意味する)。
【0051】
或いは、先行セルの値を選択する方法として、再生信号(光スポットが先行セルの中央に位置する時のサンプリング値)を各レベルに応じた複数の閾値でレベルスライスして決定しても良い。
【0052】
次に、ステップ3で、後行セルの値をセル中央値の再生信号(光スポットが後行セルの中央に位置する時のサンプリング値)をレベルスライスして選択する(レベルスライスで最も近い値を選択)。
【0053】
例えば、後行セルの値が『7』として選択されたとする。
ここまでで、3つの連続セルのうち先行セルと後行セルの値が選択されたことになる。
【0054】
次に、ステップ4で、先行セルと後行セルの値を用いて学習用メモリ15(図7)からセル中央値の再生信号に最も近い注目セルの値を選択する。
【0055】
つまりここでは、読み出すテーブルは先行セルと後行セルの値がそれぞれ『7』として選択されたので、全512パターンから8パターン、即ち(7,0,7)〜(7,7,7)の組合せに絞られる。
【0056】
前記8パターンの組合せからセル中央値の再生信号に最も近い注目セルの値を選択する。
ステップ5で判定された注目セルの多値データを出力して多値記録データ仮判定回路501の操作を終了する。
続いて補正量演算回路502を詳細に説明する。
【0057】
補正量演算回路502に入力される信号は、学習用メモリ15のテーブルと多値記録データ仮判定回路501で判定された多値記録データと波形等化がなされた再生信号の3つである。そして連続した3セルの多値記録データから、該3セルに相当する学習用メモリ15のテーブルから対応する値を抽出し、実際の再生信号と比較して、学習用メモリ15のテーブルとの差分をとることで補正量を演算する。
【0058】
最後に加算器503によって再生信号から前記補正量を加算して、再生信号補正回路13による補正を終了する。
【0059】
次に多値データ判定回路14について詳しく説明する。本実施形態では、4次元(4セル)の多値データを再生するものとする。
【0060】
図11は多値データ判定回路14の全体的な構成図である。
最初に多値データ判定回路14に入力された補正後の再生信号はエラーパワー算出回路1101において、8つの理想値を用いてそれぞれエラーパワーE0〜E7が算出される。
【0061】
次に同じ最下位ビットを有する4次元復号器において、最小のエラーパワーを選択して、ブランチメトリックE0000〜E1111が計算される。
【0062】
そしてビタビ復号回路1108に前記ブランチメトリックが入力されて、多値データが復号される。
エラーパワー算出回路1101について図12を用いて詳細に説明する。
【0063】
エラーパワー算出回路1101に入力される再生信号は、再生信号補正回路13により補正がかけられているために、先行セル、後行セルの値にかかわらず、注目セルに従った理想値に近い値を取るようになっている。
【0064】
エラーパワー算出回路1101では、図12のようにセルの各レベルの理想値Offset0〜Offset7を用いて、前記再生信号補正回路13により補正された値から理想値までの距離を計算することでエラーパワーE0〜E7を算出する。なお、この距離を計算するために、セルの各レベルの理想値と上記補正された値との差分を2乗している。
【0065】
ここでOffset0〜Offset7の理想値の求め方を具体的に述べる。
例として、図7の学習テーブルの値からOffset0は(先行セル、注目セル、後行セル)=(0,0,0)の組合せ時の注目セルの基準値。Offset1は(先行セル、注目セル、後行セル)=(1,1,1)の組合せ時の注目セルの基準値。Offset2は(先行セル、注目セル、後行セル)=(2,2,2)の組合せ時の注目セルの基準値。Offset3は(先行セル、注目セル、後行セル)=(3,3,3)の組合せ時の注目セルの基準値。Offset4は(先行セル、注目セル、後行セル)=(4,4,4)の組合せ時の注目セルの基準値。Offset5は(先行セル、注目セル、後行セル)=(5,5,5)の組合せ時の注目セルの基準値。Offset6は(先行セル、注目セル、後行セル)=(6,6,6)の組合せ時の注目セルの基準値。Offset7は(先行セル、注目セル、後行セル)=(7,7,7)の組合せ時の注目セルの基準値。これら基準値をセルの各レベルの理想値として用いた。
【0066】
また、前記理想値Offset0〜Offset7の決め方はこの限りではなく、同じ注目セルの値を持つ64通りのテーブル値の平均でもよく、特に限定されない。
【0067】
上記構成のエラーパワー算出回路1101では理想値を8つだけ用いているために、その構成は図12に示すように非常に単純なものとなっている。
【0068】
次に4次元復号器1102〜1107について説明する。本実施例では畳み込み符号器の拘束長が5であるため、状態数は16状態、4次元復号器も16個である。
【0069】
4次元復号器1102では4つの連続する再生データのLSB(L0,L1,L2,L3)が(0,0,0,0)であると仮定してエラーパワーを算出する。LSBが「0」であるシンボルは図10からも分かるように「0」「2」「4」「6」に絞られる。すなわち4つの連続するセルのシンボルS1,S2,S3,S4は図13の左側に書かれているような256通りになる。該256通りのシンボルに対するメトリックは図13の右側のように前記エラーパワーE0、E2、E4、E6の加算のみで学習用メモリを参照することなく計算される。この計算された256通りのメトリックの中から最小の値であるものを(L0,L1,L2,L3)、すなわち(D0,D1,D2,D3)のブランチメトリックE0000として出力する。また同時に前記メトリックのうち最小値であったシンボルから上位ビットD4〜D11が仮復号される。後述するビタビ復号回路1108でパスが(D0,D1,D2,D3)=(0,0,0,0)に確定した場合に、該D4〜D11が最終的に出力される。
【0070】
4次元復号器1103〜1107の場合も仮定する(L0,L1,L2,L3)が(0,0,0,1)・・・・(1,1,1,1)の15通りで異なるだけである。いずれの場合も上記4次元復号器1102と同様にエラーパワ―E0〜E7のうちの4つのみの加算だけで各々のブランチメトリックE0000〜E1111が計算される。
【0071】
最後にビタビ復号回路1108において前記ブランチメトリックE0000〜E1111の16値を用いて、ビタビアルゴリズムを使用し、パスメトリックを順次計算していく。これにより、取りうる可能性のあるパスの中から最も確からしいパスが選ばれて復号が終了する。
【0072】
以上詳細に述べたように、再生信号補正回路13による処理を多次元復号器1102による処理より前に行うことによって、学習用メモリ15内の学習テーブルの基準値の数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】多値情報ピットのレベルの違いによるトラック方向の幅とそれに対応する3ビットの組合せを説明する図である。
【図2】多値情報の再生信号の振幅分布を説明する図である。
【図3】従来例による多値データ復号回路のブロック図である。
【図4】本発明に係る光ディスク装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図5】本発明に係る再生信号補正回路の一実施形態を示すブロック図である。
【図6】再生信号補正回路で行われる処理のフローチャートである。
【図7】発明に係る学習用メモリ上の学習テーブルの一実施形態を示すである。
【図8】本発明に係る畳み込み符号演算回路の一実施形態を示す図である。
【図9】本発明に係るマッピング回路で行われるビット変換を示す表である。
【図10】本発明に係る多値化回路の2値データを8値データに変換する表である。
【図11】本発明に係る多値データ判定回路の概略図である。
【図12】本発明に係るエラーパワー算出回路を示す図である。
【図13】本発明に係るメトリックとエラーパワーの組み合わせ示した図である。
【符号の説明】
【0074】
13 再生信号補正回路
14 多値データ判定回路
15 学習用メモリ
301 2次元復号器
302 推定値演算
303 加算器
304 二乗回路
305 ビタビ復号回路
501 多値記録データ仮判定回路
502 補正量演算回路
503 加算器
801 フリップフロップ
802 XOR回路
1101 エラーパワー算出回路
1102〜1107 4次元復号器
1108 ビタビ復号回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光スポットを用いて情報の記録再生を行う光学的情報媒体のトラック上に、仮想的に一定間隔のセルを設けて、トラック方向の情報ピットの幅、または、情報ピットの面積を変え、再生信号の振幅を多段階にすることによる3以上のレベルの多値情報を記録または/かつ再生する光学的情報記録再生装置において、
前記セルでサンプリングされた再生信号のレベル補正を行う再生信号補正回路と、
前記再生信号補正回路から出力された再生信号と前記セルの各レベルにおける理想値との差に基づいてエラーパワーを算出するエラーパワー算出回路と、
前記エラーパワー算出回路により得られた値に基づいて復号する復号器とを備えることを特徴とする光学的情報記録再生装置。
【請求項2】
更に、再生対象である注目セルとそのセルに隣接するセルの値を前記再生信号を用いて仮判定する多値記録データ判定回路と、前記連続する3つのセルの取り得る全ての値の組み合わせに対応した理想レベル値を予め記憶している学習メモリとを有し、前記再生信号補正回路は、前記仮判定された連続する3つのセルの値の組み合わせに対応した理想レベル値を前記学習メモリから読み出し、その読み出した理想レベル値と前記再生信号のレベルとの差分を算出し、その算出で前記再生信号のレベル補正を行なうことを特徴とする請求項1に記載の光学的情報記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−257780(P2007−257780A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82975(P2006−82975)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】