光学的情報読取装置
【課題】 光学的情報の周囲にノイズとなる明暗パターンが存在する場合であっても、光学的情報の読取り時間が短く、かつ、光学的情報の位置を誤認識するおそれのない光学的情報読取装置を実現する。
【解決手段】 前処理回路32は、暗色(黒)で記録された光学的情報の撮像画像を収縮処理し、暗色で塗り潰された収縮処理画像に変換する。これにより、光学的情報は矩形の暗色の塊に変化するが、元画像に含まれる配線パターンは矩形を呈さない。このため、収縮処理画像の中から矩形の領域を検出すれば、光学的情報が記録されている領域を容易に検出することができる。
【解決手段】 前処理回路32は、暗色(黒)で記録された光学的情報の撮像画像を収縮処理し、暗色で塗り潰された収縮処理画像に変換する。これにより、光学的情報は矩形の暗色の塊に変化するが、元画像に含まれる配線パターンは矩形を呈さない。このため、収縮処理画像の中から矩形の領域を検出すれば、光学的情報が記録されている領域を容易に検出することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バーコード、QRコード(登録商標)およびデータマトリクスなど、複数種類の光学的情報を読取ることのできる光学的情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の光学的情報読取装置として、特許文献1に記載のものが知られている。このものは、光学的情報が有するファインダパターンの特徴を画像処理で自動的に検出し、その検出したファインダパターンに基づいて光学的情報の種類を判定するものである。具体的には、QRコードのファインダパターンは、明暗(たとえば、白黒)の比率が1:1:3:1:1と定められているため、明暗の比率が1:1:3:1:1のファインダパターンを検出したときは、その光学的情報はQRコードであると判定する。また、データマトリクスのファインダパターンは、暗色(たとえば、黒色)のL字型パターンと定められているため、そのL字型パターンを検出したときは、その光学的情報はデータマトリクスであると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−318997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述した従来のものは、光学的情報の周囲に暗色のノイズ領域が存在すると、光学的情報の読取りに時間がかかるという問題がある。たとえば、プリント基板の基板面に記録された光学的情報を読取る場合、プリント基板の配線パターンやランドなどが撮像範囲に入る場合がある。この場合、配線パターンやランド形状が明暗パターンを形成していると、それらもファインダパターンの検出対象に入るので、目的のファインダパターンを検出するまでに時間がかかるため、光学的情報の読取り時間が長くなってしまう。また、それらがファインダパターンに近似していると、光学的情報の位置を誤認識するおそれがある。
【0005】
そこでこの発明は、上述の諸問題を解決するためになされたものであり、光学的情報の周囲にノイズとなる明暗パターンが存在する場合であっても、光学的情報の読取り時間が短く、かつ、光学的情報の位置を誤認識するおそれのない光学的情報読取装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、この発明の第1の特徴は、光学的情報(C)が記録された記録領域を含む領域を撮像する撮像手段(24)と、前記撮像手段から出力された元画像をフィルタ処理する画像処理手段(32)と、前記画像処理手段により前記フィルタ処理された処理画像の中から、前記記録領域の処理画像と推定される特定の処理画像の位置を検出する第1の位置検出手段(S15)と、前記第1の位置検出手段により検出された位置の前記元画像における位置を検出する第2の位置検出手段(S16)と、前記元画像のうち、前記第2の位置検出手段により検出された位置と略同じ位置にある前記記録領域に基づいて前記光学的情報を読取る読取手段(S18)と、を備えることにある。
【0007】
光学的情報が記録された記録領域の周縁形状は、矩形などの特定の形状を有する。一方、光学的情報が記録されたプリント基板の配線パターンやランドなど、光学的情報の周囲に存在するノイズが記録された領域の周縁形状は、不特定である。
そこで、元画像をフィルタ処理することにより、光学的情報が記録された記録領域およびノイズ領域における明暗領域を明暗のいずれかのみで形成された領域に変換する。
【0008】
また、フィルタ処理には、収縮処理と膨張処理とがある。収縮処理は、明領域を暗領域に変換する処理であり、膨張処理は、暗領域を明領域に変換する処理である。たとえば、プリント基板の基板面が明色(明度の高い色)であり、光学的情報およびノイズが暗色(明度の低い色)で基板面に形成されている場合に、それらを撮像した元画像を収縮処理すると、光学的情報が記録された領域およびノイズの領域内の明色部分が暗色に変換される。また、逆に、プリント基板の基板面が暗色であり、光学的情報およびノイズが明色で基板面に形成されている場合に、それらを撮像した元画像を膨張処理すると、光学的情報およびノイズの領域内の暗色部分が明色に変換される。
【0009】
この発明の第2の特徴は、前述の第1の特徴において、前記フィルタ処理は、少なくとも前記光学的情報を塗り潰すことで所定形状の塊にする処理であることにある。
【0010】
この発明の第3の特徴は、前述の第2の特徴において、前記第1の位置検出手段(S15)は、前記フィルタ処理された処理画像の中から、周縁形状が前記所定形状を呈する領域の位置を検出することにある。
【0011】
この発明の第4の特徴は、前述の第3の特徴において、前記第1の位置検出手段(S15)は、前記フィルタ処理された処理画像を微分することにより、前記処理画像の周縁形状を検出し、その検出した周縁形状の中から、前記所定形状を呈する領域の位置を検出することにある。
【0012】
この発明の第5の特徴は、前述の第3または第4の特徴において、前記第1の位置検出手段(S15)は、前記フィルタ処理された処理画像と学習データとを比較することにより、周縁形状が前記所定形状を呈する領域の位置を検出することにある。
【0013】
この発明の第6の特徴は、前述の第5の特徴において、前記所定形状に対応した周縁形状を有する画像が学習データとして記憶された学習データ記憶手段(52)を備えており、前記第1の位置検出手段(S15)は、前記フィルタ処理された処理画像と、前記学習データ記憶手段に記憶されている学習データとをテンプレートマッチングすることにより、周縁形状が前記所定形状を呈する領域の位置を検出することにある。
【0014】
この発明の第7の特徴は、前述の第5の特徴において、前記所定形状に対応した周縁形状を有する画像が学習データとして記憶された学習データ記憶手段(52)を備えており、前記第1の位置検出手段(S15)は、前記フィルタ処理された処理画像と、前記学習データ記憶手段に記憶されている学習データとを固有空間法に基いて比較することにより、周縁形状が前記所定形状を呈する領域の位置を検出することにある。
【0015】
この発明の第8の特徴は、前述の第2ないし第7の特徴のいずれか1つにおいて、前記所定形状は、矩形であることにある。
なお、矩形とは、一般的な矩形の他、一部が変形しているが全体として見れば矩形と識別できる形状を含む意味である。
【0016】
この発明の第9の特徴は、前述の第8の特徴において、前記矩形は、1辺に2つの分岐を有し、かつ、4つの辺で閉ループを構成してなる形状であることにある。
【0017】
この発明の第10の特徴は、前述の第1ないし第9の特徴のいずれか1つにおいて、前記読取手段(S18)は、前記元画像のうち、前記第2の位置検出手段により検出された位置と略同じ位置にある前記記録領域に対して、直交する少なくとも2方向を走査した結果に基づいて前記光学的情報の種類を判定し、その判定結果に基づいて前記光学的情報を読取ることにある。
【0018】
この発明の第11の特徴は、前述の第1ないし第9の特徴のいずれか1つにおいて、前記読取手段(S18)は、前記元画像のうち、前記第2の位置検出手段により検出された位置と略同じ位置にある前記記録領域の周縁形状が略正方形である場合は、2次元コードに限定して前記光学的情報を読取ることにある。
なお、略正方形とは、正確な正方形の他、一部が変形しているが全体として見れば正方形と識別できる形状を含む意味である。
【0019】
この発明の第12の特徴は、前述の第1ないし第9の特徴のいずれか1つにおいて、前記読取手段(S18)は、前記元画像のうち、前記第2の位置検出手段により検出された位置と略同じ位置にある前記記録領域の周縁形状が略長方形である場合は、長方形の2次元コードおよび1次元コードに限定して前記光学的情報を読取ることにある。
なお、略長方形とは、正確な長方形の他、一部が変形しているが全体として見れば長方形と識別できる形状を含む意味である。
【0020】
この発明の第13の特徴は、前述の第1ないし第12の特徴のいずれか1つにおいて、前記画像処理手段(32)は、前記撮像手段(24)から出力された元画像を所定の領域単位でフィルタ処理することにある。
【0021】
この発明の第14の特徴は、前述の第13の特徴において、前記画像処理手段(32)は、前記元画像と、前記フィルタ処理された処理画像とをそれぞれ所定の領域単位で略同時に前記読取手段(S18)へ送出することにある。
【0022】
この発明の第15の特徴は、前述の第1ないし第14の特徴のいずれか1つにおいて、前記光学的情報は暗色で記録されており、前記フィルタ処理は収縮処理であることにある。
【0023】
この発明の第16の特徴は、前述の第1ないし第14の特徴のいずれか1つにおいて、前記光学的情報は明色で記録されており、前記撮像手段(24)から出力された元画像の明暗を反転する明暗反転手段を備えており、前記画像処理手段(32)は、前記明暗反転手段により明暗の反転された元画像を収縮処理し、前記読取手段(S18)は、前記明暗反転手段により明暗の反転された元画像のうち、前記第2の位置検出手段(S16)により検出された位置と略同じ位置にある前記記録領域に基づいて前記光学的情報(C)を読取ることにある。
【0024】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0025】
この発明の第1の特徴によれば、元画像をフィルタ処理することにより、光学的情報が記録された記録領域(以下、光学的情報記録領域という)およびノイズ領域を明暗のどちらかが強調された領域に変換し、その変換後の領域に基づいて光学的情報記録領域の位置を検出することができる。
したがって、明暗パターンの数を少なくすることができるため、明暗の判定処理を少なくすることができるので、元画像の明暗パターンに基づいて光学的情報記録領域の位置を検出する手法よりも光学的情報記録領域の位置の検出時間を短縮することができる。
また、明暗のどちらかが強調された記録領域は特定の形状を呈するため、光学的情報記録領域をノイズ領域と容易に識別することができる。
したがって、光学的情報の位置を誤認識するおそれが少ない。
【0026】
特に、第2の特徴によれば、フィルタ処理は、少なくとも光学的情報を塗り潰すことで所定形状の塊にするため、明暗パターンの判定処理をより一層少なくすることができる。
したがって、光学的情報記録領域の位置の検出時間をより一層短縮することができる。
しかも、光学的情報記録領域を塗り潰すことにより、光学的情報記録領域とノイズ領域とをより一層容易に識別することができる。
したがって、光学的情報の位置を誤認識するおそれがより一層少ない。
【0027】
また、光学的情報記録領域の周縁形状は、第8の特徴のように矩形などの所定形状を呈するため、第3の特徴のように、フィルタ処理された処理画像の中から、周縁形状が所定形状を呈する領域の位置を検出すれば、光学的情報記録領域の位置を短時間で検出することができる。
【0028】
特に、第4の特徴によれば、フィルタ処理された処理画像を微分することにより、明暗の境界を検出することができるため、処理画像の周縁形状を検出し、その検出した周縁形状に基づいて、光学的情報記録領域の位置を検出することができる。
【0029】
たとえば、第5の特徴のように、フィルタ処理された処理画像と学習データとを比較することにより、光学的情報記録領域の位置を検出することができる。
【0030】
また、第6の特徴のように、フィルタ処理された処理画像と、学習データ記憶手段に記憶されている学習データとをテンプレートマッチングすることにより、光学的情報記録領域の位置を検出することができる。
【0031】
さらに、第7の特徴のように、フィルタ処理された処理画像と、学習データ記憶手段に記憶されている学習データとを固有空間法に基いて比較することにより、光学的情報記録領域の位置を検出することができる。
【0032】
また、第9の特徴によれば、1辺に2つの分岐を有し、かつ、4つの辺で閉ループを構成してなる形状を検索することにより、矩形、つまり、光学的情報記録領域の位置を検出することができる。
特に、光学的情報がプリント基板に記録されている場合にフィルタ処理を行うと、光学的情報記録領域は矩形に塗り潰されるが、配線パターンは矩形に塗り潰されないため、光学的情報の位置を検出することができる。
【0033】
また、第10の特徴によれば、直交する少なくとも2方向を走査した結果に基づいて光学的情報の種類を判定し、その判定結果に基づいて光学的情報を読取ることができるため、光学的情報の種類を判定しないで総ての種類の光学的情報について順次読取りを行う手法と比較して、光学的情報の読取りに要する時間を短縮することができる。
また、殆どの光学的情報は、直交する少なくとも2方向にファインダパターンなどの特徴部分を有するため、直交する少なくとも2方向を走査することにより、大抵の光学的情報の種類を判定することができる。
【0034】
特に、第11の特徴によれば、記録領域の周縁形状が略正方形である場合は、2次元コードに限定して光学的情報を読取ることができるため、2次元コードの読取り時間を短縮することができる。
【0035】
また、第12の特徴によれば、記録領域の周縁形状が略長方形である場合は、長方形の2次元コードおよび1次元コードに限定して光学的情報を読取ることができるため、長方形の2次元コードおよび1次元コードの読取り時間を短縮することができる。
【0036】
また、第13の特徴によれば、画像処理手段は、撮像手段から出力された元画像を所定の領域単位でフィルタ処理するため、この光学的情報読取装置を制御するコンピュータの処理がフィルタ処理に集中してしまい、他の処理が遅延するおそれがない。
【0037】
特に、第14の特徴によれば、画像処理手段は、元画像と、フィルタ処理されたフィルタ処理画像とをそれぞれ所定の領域単位で略同時に読取手段へ送出することができるため、光学的情報記録領域の位置の検出時間を短縮することができる。
【0038】
また、第15の特徴によれば、光学的情報が暗色で記録されている場合に、元画像を収縮処理することにより、光学的情報が記録されている記録領域を暗色で強調された領域に変換し、その変換後の領域に基づいて、光学的情報記録領域の位置を検出することができる。
【0039】
また、第16の特徴によれば、光学的情報が暗色の領域内に明色で記録されている場合に、元画像の明暗を反転し、その反転された元画像を収縮処理することができるため、光学的情報が明色で記録されている場合であっても、その記録領域の位置を検出することができる。
【0040】
たとえば、プリント基板の基板面にレーザ光を照射し、基板面に塗布されたソルダーレジストを除去することによって銅箔層を露出させて光学的情報を記録する場合、光学的情報が明色となり、その周囲が暗色になるため、暗色で記録された一般的な光学的情報と比較して明暗が反転する。このため、暗色で記録された光学的情報の位置を検出する処理では、明暗の反転した光学的情報の位置を検出することができない。
【0041】
しかし、上記の第16の特徴によれば、元画像を反転し、その反転された元画像を収縮処理するため、光学的情報が記録された明色領域を暗色領域に変換し、その周囲を明色に変換することができるので、暗色で記録された光学的情報の位置を検出する処理内容を変更することなく、光学的情報記録領域の位置を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】プリント基板の基板面の平面説明図であり、(a)はプリント基板の全体を示す平面説明図、(b)は(a)において破線で囲んだ部分の拡大図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係る光学的情報読取装置の主な電気的構成を示す説明図である。
【図3】元画像および変換後の画像を示す説明図であり、(a)は元画像の平面図、(b)は(a)に示す元画像の明暗を反転させた明暗反転画像の平面図、(c)は(b)に示す明暗反転画像を収縮処理した収縮処理画像の平面図である。
【図4】明暗反転画像の一部を示す説明図である。
【図5】明暗反転画像の各画素と輝度値との関係を示す説明図であり、(a)は収縮処理前の説明図、(b)は収縮処理後の説明図である。
【図6】QRコードの説明図である。
【図7】図6に示すQRコードのファインダパターンの拡大説明図である。
【図8】データマトリクスの一部を示す説明図である。
【図9】バーコードの説明図である。
【図10】Maxiコードの一部を示す説明図である。
【図11】デコード処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
〈第1実施形態〉
この発明に係る第1実施形態について図を参照して説明する。なお、この実施形態では、この発明に係る光学的情報読取装置として、レーザ光によりプリント基板にマーキングされた光学的情報を読取る光学的情報読取装置を例に挙げて説明する。
【0044】
[光学的情報]
最初に、プリント基板に記録された光学的情報について図を参照して説明する。図1は、プリント基板の基板面の平面説明図であり、(a)はプリント基板の全体を示す平面説明図、(b)は(a)において破線で囲んだ部分の拡大図である。なお、図1では、プリント基板に形成された配線パターンを省略している。
【0045】
図1に示すように、プリント基板Pには、光学的情報Cが記録されている。図1に示す例では、光学的情報CとしてQRコードがプリント基板Pに記録されている。プリント基板Pは、銅箔層の上にソルダーレジスト層を積層して形成されており、ソルダーレジスト層が表面に露出している。この実施形態では、ソルダーレジスト層は緑色(暗色)であり、銅箔層は銅色(明色)である。
【0046】
光学的情報Cは、ソルダーレジスト層を除去して露出する銅箔層の表面が明色であることを利用し、それをパターニングすることにより形成されている。図1(b)において、グレーの領域がソルダーレジスト層であり、白抜きの領域が露出した銅箔層の表面である。この実施形態では、レーザ光の照射によってソルダーレジスト層を除去して銅箔層を露出させる。このため、光学的情報Cは、緑色(暗色)の領域内に銅色(明色)で記録されており、明色の領域内に暗色で記録された一般的な光学的情報とは、明暗パターンが反転している。
【0047】
[電気的構成]
次に、この第1実施形態に係る光学的情報読取装置の主な電気的構成について図を参照して説明する。図2は、この第1実施形態に係る光学的情報読取装置の主な電気的構成を示す説明図である。
【0048】
図2に示すように、光学的情報読取装置20は、照明光源21、フィルタ22、結像レンズ23および受光センサ24などの光学系と、メイン回路50、制御回路40、操作スイッチ42、液晶表示器45などのマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)系と、電源スイッチ41、電池47などの電源系とを備える。なお、これらは、図示しないプリント基板に実装あるいはハウジング内に内装されている。
【0049】
照明光源21は、光学的情報Cが記録された領域を照明するための光源である。この実施形態では、照明光源21は、受光センサ24を挟んだ両側にそれぞれ配置されている。照明光源21から出射された照明光Lfは、図示しないハウジングの読取口を介して出射される。この実施形態では、照明光源21は、赤色光を発光するLEDと、このLEDの出射側に設けられた拡散レンズおよび集光レンズなどから構成されている。
【0050】
フィルタ22は、光学的情報Cおよびその周囲で反射した反射光Lrの波長相当以下の光の通過を許容し、当該波長相当を超える光の通過を遮断する光学的なローパスフィルタであり、ハウジングの読取口と結像レンズ23との間に設けられている。これにより、反射光Lrの波長相当を超える不要な光が受光センサ24に入射することを抑制している。
【0051】
結像レンズ23は、フィルタ22を通過した反射光Lrを集光して受光センサ24の受光面24aに像を結像する結像光学系として機能する。この実施形態では、結像レンズ23は、鏡筒とこの鏡筒内に収容される複数の集光レンズとにより構成されている。
【0052】
受光センサ24は、照明光源21から照射され、光学的情報Cおよびその周囲にて反射した反射光Lrを受光する。受光センサ24は、その受光面24aに結像された画像の輝度に対応するアナログの画像信号を増幅回路30へ出力する。この実施形態では、受光センサ24は、C−MOSやCCDなどの受光素子を2次元に配列してなるエリアセンサである。以下、受光センサ24によって得られた画像を元画像という。
【0053】
次に、マイコン系の構成概要を説明する。マイコン系は、増幅回路30、A/D変換回路31、前処理回路32、同期信号発生回路33、アドレス発生回路34、制御回路40、操作スイッチ42、LED43、ブザー44、液晶表示器45、通信インターフェース46およびメイン回路50などから構成されている。
【0054】
このマイコン系は、マイコンとして機能する制御回路40およびメイン回路50を中心に構成されるもので、受光センサ24から出力された画像信号をハードウェア的およびソフトウェア的に信号処理するものである。
【0055】
増幅回路30は、受光センサ24から入力した画像信号を所定のゲインで増幅し、その増幅信号をA/D変換回路31へ出力する。A/D変換回路31は、入力した増幅信号を2値化する。A/D変換回路31は、入力した増幅信号を微分処理し、その微分処理された信号が閾値を超えたときに2値データ「1」を発生し、閾値以下のときに2値データ「0」を発生する。つまり、元画像をグレースケール画像(白黒の濃淡画像)に変換する。2値データ「1」は、元画像のうち明色の領域に対応し、2値データ「0」は暗色の領域に対応する。
【0056】
また、A/D変換回路31は、入力した増幅信号が閾値を超えたか否かの判定を所定の周期で行い、2値データ「1」の発生数を計数し、その計数値、つまり輝度値を示す輝度データを画素単位で前処理回路32へ出力する。輝度値が大きい程、明度が高い(白っぽい)ことを表し、輝度値が小さい程、明度が低い(黒っぽい)ことを表す。
【0057】
前処理回路32は、A/D変換回路31から入力した輝度データに対して明暗反転処理および収縮処理を行う。明暗反転処理は、元画像の明暗パターンの明暗を反転する処理である。この実施形態では、A/D変換回路31から入力した輝度データにより示される輝度値を所定の領域単位(所定の画素数単位)で変更することにより、元画像の明暗パターンの明暗を反転させる。たとえば、A/D変換回路31が、8bitで元画像をグレースケール化したときの輝度値が、たとえば「0」、「128」、「255」であった場合は、それらを「255」、「128」、「0」の輝度値に変更する。
【0058】
このように明暗の反転処理を行うと、図3(a)に示す光学的情報Cの元画像は、同図(b)に示すように、明暗パターンの反転した反転画像に変換される。以下、明暗パターンの反転された元画像を明暗反転画像という。生成された明暗反転画像は、所定の領域単位(所定の画素数単位)でメイン回路50へ出力され、メモリ54に記憶アドレス(以下、第1の記憶アドレスという)と対応付けて記憶される。メモリ54は、明暗反転画像の総て(総ての画素)を第1の記憶アドレスと対応付けて記憶するだけの記憶領域を有し、その記憶された明暗反転画像は、後のデコード処理において参照される。
【0059】
この実施形態では、メモリ54は、半導体メモリ装置であり、たとえば、RAM(DRAM、SRAMなど)やフラッシュROM(EPROM、EEPROMなど)のデータ書換え可能なメモリである。
【0060】
また、前処理回路32は、メイン回路50へ出力した明暗反転画像と同じ画像に対して収縮処理を行う。収縮処理は、明暗反転画像のうち、暗領域中の明領域を暗領域に変換することにより、明瞭域を暗色で塗り潰し、明暗パターンを暗色の塊に変換する処理である。この実施形態では、収縮処理は収縮フィルタを用いて行い、明暗反転画像に対して所定の領域単位(画素単位)で行う。このように所定の領域単位で収縮処理を行うため、前処理回路32を制御するCPUの処理負荷が収縮処理に集中することがないので、他の処理が遅延するおそれがない。
【0061】
また、収縮処理は、所定の領域の中心画素の輝度値を、所定の領域の中で最も小さい輝度値に置換える処理を行う。
たとえば、5×5の計25画素単位で収縮フィルタを通過させて収縮処理を行うものとし、通過する前の明暗反転画像が図4に示す画像であるとする。図5(a)は図4に示す明暗反転画像を構成する各画素に輝度値を対応付けて表した説明図である。同図において明暗反転画像の中心に位置する画素C1の輝度値は「9」であり、画像中における輝度値の最小値は「5」である。したがって、図5(a)に示す領域を収縮処理すると、図5(b)に示すように、中心に位置する画素C1の輝度値は「9」から「5」に置き換わる。
【0062】
つまり、明暗反転画像を収縮処理して高い輝度値を低い輝度値に置き換えることにより、明暗反転画像の明瞭域を暗色で塗り潰し、明暗反転画像を暗色の塊に変換することができる。たとえば、図3(b)に示すQRコードの明暗反転画像を収縮処理すると、同図(c)に示すように、暗色(黒)で塗り潰された四角形の塊が生成される。以下、収縮処理された明暗反転画像を収縮処理画像という。
【0063】
前処理回路32は、収縮処理を行った単位で収縮処理画像をメイン回路50へ出力する。この出力された収縮処理画像は、メモリ54に記憶アドレス(以下、第2の記憶アドレスという)と対応付けて記憶される。メモリ54は、収縮処理画像の総て(総ての画素)を第2の記憶アドレスと対応付けて記憶するだけの記憶領域を有し、その記憶された収縮処理画像は、光学的情報記録領域の検出に用いられる。なお、前処理回路32は、明暗反転処理を行う前に膨張処理を行い、元画像に含まれる暗色のノイズ領域を除去し、その後明暗反転処理を行うように構成することもできる。
【0064】
また、前述した明暗反転画像に対応付けられた第1の記憶アドレスは、収縮処理画像に対応付けられた第2の記憶アドレスと対応関係にあり、第1の記憶アドレスから特定の第1の記憶アドレスを選択した場合、その選択した第1の記憶アドレスと対応関係にある第2の記憶アドレスを検出することができるようになっている。
つまり、収縮処理画像における光学的情報記録領域の位置(第1の記憶アドレス)を検出すれば、その検出した位置と対応する明暗反転画像における位置(第2の記憶アドレス)を検出することができるため、その検出した位置に基づいて光学的情報を特定することができる。
【0065】
同期信号発生回路33は、受光センサ24およびアドレス発生回路34に対する同期信号を発生する。アドレス発生回路34は、同期信号発生回路33から供給される同期信号に基づいて、メモリ54に記憶される明暗反転画像および収縮処理画像の各第1および第2記憶アドレスを発生する。
【0066】
メイン回路50のCPU51は、メモリ54に記憶されている収縮処理画像の中から光学的情報記録領域の位置を検出する第1の位置検出処理を実行する。この第1の検出処理は、明暗の境界線を検出し、その検出された境界線のうち、矩形領域を形成する境界線を検出することにより、光学的情報記録領域の位置を検出する。明暗の境界点は、輝度値が所定値以上変化する変化点を検索することにより検出する。
【0067】
この実施形態では、上記の変化点は、収縮処理画像を構成する各画素の輝度値を微分処理し、その微分値が所定値以上になった点を変化点として検出する。そして、その検出した変化点間を結んだ線を境界線に設定する。
【0068】
そして、収縮処理画像における光学的情報記録領域の位置は、上記の検出した境界線によって囲まれた領域が矩形であるか否かを判定することによって検出する。
ところで、元画像の中には、光学的情報Cの周囲に存在する配線パターンなども含まれているため、収縮処理画像の中には、光学的情報Cを暗色で塗り潰した塊の他、配線パターンを暗色で塗り潰した塊も存在する。
【0069】
しかし、光学的情報Cを暗色で塗り潰した塊は、配線パターンを暗色で塗り潰した塊とは異なり、略矩形を呈するため、略矩形の暗色の塊を検索すれば、光学的情報記録領域の位置を検出することができる。
この実施形態では、1辺に2つの分岐を有し、4つの辺で閉ループをなす形状を検索し、その形状が検索されたときに、その形状の位置を光学的情報記録領域の位置として検出する。
【0070】
また、CPU51は、上記の検索された矩形が略長方形であるか否かを判定し、略長方形であると判定した場合は、デコード対象を長方形の1次元コードおよび2次元コードに限定し、略長方形ではない、つまり略正方形であると判定した場合は、デコード対象を2次元コードに限定する。このようにデコード対象を限定することにより、デコード処理時間を短縮することができる。
【0071】
前述したように、収縮処理画像は、第2の記憶アドレスと対応付けてメモリ54に記憶されているため、光学的情報記録領域の位置は、その第2の記憶アドレスによって特定する。また、CPU51は、上記の第1の位置検出処理によって検出された位置の明暗反転画像における位置を検出する第2の位置検出処理を実行する。この第2の位置検出処理は、第1の検出処理によって検出された第1の記憶アドレスに対応する第2の記憶アドレスを、メモリ54に記憶されている明暗反転画像に対応付けられている第2の記憶アドレスの中から検索することにより行う。
【0072】
また、CPU51は、上記の第2の位置検出処理によって検出された位置と略同じ位置にある明暗反転画像に基づいて光学的情報Cのコード種を判定するコード種判定処理を実行する。この実施形態では、上記の第2の位置検出処理によって検出された明暗反転画像を縦方向および横方向に走査し、各コードの特徴を検出することにより、コード種を判定する。
【0073】
たとえば、図3(b)に示したQRコードの明暗反転画像の場合は、3つの角部に2重四角のファインダパターンを有する。また、そのファインダパターンは、図7に示すように、明暗の幅D1〜D5の比率が、1:1:3:1:1と規定されている。そこで、図6に示すように、明暗反転画像を直交する少なくとも2方向F1,F2に走査し、上記の比率を有する領域が検出されれば、その領域を有する明暗反転画像は、QRコードであると判定する。
【0074】
また、コード種がデータマトリクスである場合は、図8に示すように、1つの角部の縁に暗色のL字型パターンを有するため、明暗反転画像を直交する少なくとも2方向F1,F2に走査した結果、そのL字型パターンが検出されれば、そのL字型パターンを有する明暗反転画像は、データマトリクスであると判定する。
【0075】
また、コード種がバーコードである場合は、図9に示すように、縦方向F1に沿った一端に暗色のバーが配置され、かつ、そのバーと交差する横方向F2には、明暗の不連続領域が配置されたパターンを形成している。したがって、明暗反転画像を直交する少なくとも2方向F1,F2に走査した結果、そのパターンが検出されれば、そのパターンを有する明暗反転画像は、バーコードであると判定する。
【0076】
また、コード種がMaxiコードである場合は、図10に示すように、3重丸のファインダパターンを有するため、明暗反転画像を直交する少なくとも2方向F1,F2に走査し、そのファインダパターンが検出されれば、そのファインダパターンを有する明暗反転画像は、Maxiコードであると判定する。
【0077】
メイン回路50のROM52には、CPU51が上記の各処理を実行するためのコンピュータプログラム、光学的情報の種類を判別する際に参照するデータ、光学的情報をデコード処理する際に参照する明暗パターンデータ、照明光源21、受光センサ24などの各ハードウェアを制御するためのシステムプログラムなどが読出し可能に記憶されている。上記の明暗パターンデータは、明暗の反転していない一般的な明暗パターンデータである。また、RAM53は、CPU51がROM52から一時的に読出したデータや処理結果などを一時的に記憶する。
【0078】
制御回路40は、光学的情報読取装置20全体を制御可能なマイコンで、CPU、システムバス、入出力インタフェースなどから構成されている。この制御回路40は、内蔵された入出力インタフェースを介して種々の入出力装置(周辺装置)と接続可能に構成されており、この実施形態では、電源スイッチ41、操作スイッチ42、LED43、ブザー44、液晶表示器45、通信インターフェース46などが接続されている。
【0079】
操作スイッチ42は、光学的情報の読取りを開始させるための読取り開始スイッチなど、この光学的情報読取装置20を操作するための各種スイッチから構成されている。LED43は、光学的情報Cの読取り成功や失敗などをその点灯・消灯によって報知する。ブザー44は、光学的情報Cの読取り成功や失敗などをビープ音やアラーム音などを発生して報知する。
【0080】
液晶表示器45は、読取った光学的情報Cのコード内容や光学的情報読取装置20の動作状態などを液晶画面に表示する。通信インターフェース46は、光学的情報読取装置20の上位システムに相当するホストコンピュータHSTなどの外部装置との通信を可能にするためのものである。
電源系は、電源スイッチ41および電池47などにより構成されており、電池47は、電源スイッチ41のオンにより、上述した各装置や各回路へ駆動電源を供給する。
【0081】
[デコード処理]
次に、CPU51が実行するデコード処理の流れを説明する。図11は、デコード処理の流れを示すフローチャートである。
【0082】
CPU51は、電源スイッチ41のオンを検出すると、受光センサ24の露出条件の設定、収縮処理に用いるフィルタサイズの設定などの初期設定を行う(ステップ(以下、Sと略す)1)。続いて、CPU51は、読取開始スイッチがオンしたか否かを判定し(S2)、オンしたと判定すると(S2:Yes)、照明光源21を駆動して照明を点灯し(S3)、撮像画像、つまり前処理回路32が出力した収縮処理画像および明暗反転画像を取込む(S4)。
【0083】
続いて、CPU51は、照明を消灯し(S5)、収縮処理画像を微分して明暗の境界を検出し(S6)、その検出した境界に基づいて矩形領域を検索する(S7)。
【0084】
続いて、CPU51は、矩形領域を検出したか否かを判定し(S8)、検出された場合は(S8:Yes)、その検出された矩形領域が略長方形であるか否かを判定する(S9)。ここで、略長方形であると判定した場合は(S9:Yes)、デコード範囲を長方形の1次元コードおよび2次元コードに限定し(S10)、略長方形ではない、つまり略正方形であると判定した場合は(S9:No)、デコード範囲を2次元コードに限定する(S11)。
【0085】
続いて、CPU51は、先のS7において検出した矩形領域の位置(第1の記憶アドレス)を検出し(S12)、明暗反転画像で、矩形領域と同じ位置(第2の記憶アドレス)を検索する(S13)。続いて、CPU51は、検出した位置の明暗反転画像を走査してコード種を判定し(S14)、その判定結果の対象となった明暗反転画像とROM52に記憶されている明暗パターンデータとを照合して光学的情報Cをデコードし(S15)、デコード結果を液晶表示器45などで報知する(S16)。また、CPU51は、矩形領域を検出できなかった場合は(S8:No)、再度、露出条件の変更、フィルタサイズの拡大などの初期設定を行い、S2〜S16を実行する。
【0086】
[第1実施形態の効果]
(1)上述した第1実施形態の光学的情報読取装置20を実施すれば、受光センサ24から出力された元画像の明暗を反転して明暗反転画像を生成し、その明暗反転画像を収縮処理することにより、明暗反転パターンを暗色で塗り潰した塊の収縮処理画像に変換し、その収縮処理画像に基づいて光学的情報記録領域の位置を検出することができる。
したがって、明暗パターンの数を少なくすることができるため、明暗の判定処理を少なくすることができるので、総ての明暗パターンに基づいて光学的情報記録領域の位置を検出する手法よりも光学的情報記録領域の位置の検出時間を短縮することができる。
また、光学的情報記録領域の収縮処理画像は、矩形を呈するため、配線パターンの収縮処理画像と容易に識別することができる。
したがって、光学的情報の位置を誤認識するおそれが少ない。
【0087】
(2)特に、暗色のプリント基板Pに光学的情報Cが明色で記録されている場合であっても、その光学的情報Cの明暗パターンを反転することにより、光学的情報をデコードすることができる。
したがって、明色領域に暗色で記録された光学的情報をデコードするための一般的なデコード処理を用いることができるため、デコード処理における仕様を変更する必要がない。
【0088】
(3)また、明暗反転画像を直交する少なくとも2方向F1,F2に走査した結果に基づいて光学的情報Cの種類を判定し、その判定結果に基づいて光学的情報をデコードすることができるため、光学的情報Cの種類を判定しないで総ての種類の光学的情報について順次読取りを行う手法と比較して、光学的情報の読取りに要する時間を短縮することができる。
また、殆どの光学的情報は、直交する少なくとも2方向にファインダパターンなどの特徴部分を有するため、直交する少なくとも2方向を走査することにより、大抵の光学的情報の種類を判定することができる。
【0089】
(4)また、光学的情報記録領域の周縁形状が略長方形である場合は、長方形の1次元コードおよび2次元コードに限定して光学的情報を読取ることができるため、長方形の2次元コードおよび1次元コードの読取り時間を短くすることができる。
さらに、光学的情報記録領域の周縁形状が略正方形である場合は、2次元コードに限定して光学的情報を読取ることができるため、2次元コードの読取り時間を短縮することができる。
【0090】
〈第2実施形態〉
次に、この発明の第2実施形態について説明する。この実施形態に係る光学的情報読取装置は、収縮処理画像と学習データとを比較することにより光学的情報記録領域の位置を検出することを特徴とする。なお、この実施形態に係る光学的情報読取装置は、光学的情報記録領域の位置を検出するための手法以外は、前述の第1実施形態と同じ構成および機能であるため、その同じ部分の説明を省略する。
【0091】
メイン回路50のROM52には、収縮処理画像の中から光学的情報記録領域を検出するときに参照する学習データが記憶されている。その学習データは、たとえば、長方形および正方形などの矩形を示す学習データであり、正確な形状の他、少し歪んだ形状の学習データなど、光学的情報記録領域の形状として考え得る形状の学習データが含まれている。学習データは、収縮処理画像と同様に2値化された画像であり、暗色で塗り潰した塊を示す。
【0092】
CPU51は、S9(図11)において、収縮処理画像と、ROM52から読出した学習データとを比較する。この実施形態では、学習データをテンプレート画像とし、テンプレートマッチングによって収縮処理画像の中から光学的情報記録領域を検出する。つまり、テンプレート画像によって収縮処理画像上を走査し、両画像が重なっている部分の特徴ベクトルの相関係数を求め、その求めた相関係数が閾値を超えた位置を検出し、その検出した位置を光学的情報記録領域の位置とする。特徴ベクトルとしては、たとえば輝度値または濃度値を用いることができる。
【0093】
また、テンプレートマッチングとして、アクティブ探索法(特開平9−330404号公報)を用いることもできる。この手法は、順次テンプレート画像をずらして参照画像中の位置を探索する際、次回の探索位置における照合が必要かどうかを判断するための上限値を計算し、現在の位置におけるテンプレート画像・参照画像の類似値と次回位置の上限値を比較し、上限値が類似値より低いものであれば次回位置の照合を省くというものであり、この手法を用いれば、光学的情報記録領域を検出する時間を短縮することができる。
上記の第2実施形態に係る光学的情報読取装置を実施した場合も第1実施形態と同じ効果を奏することができる。
【0094】
[変更例]
固有空間法を用いて光学的情報記録領域の位置を検出することもできる。この固有空間法では、暗色で塗り潰された矩形画像を深度方向、仰角方向および傾角方向に振り、それを固有空間に投影して得られる各画像パターンを、固有値および固有ベクトルからなるベクトルデータに変換し、それを学習データとして用いる。そして、収縮処理画像から所定の領域単位で切り出した画像から固有値および固有ベクトルを計算し、その計算結果を固有空間に投影し、どの画像パターンと一致するかを判定する。一致すると判定したときの判定対象となった画像の収縮処理画像における位置が、光学的情報記録領域の位置である。
【0095】
上記の固有空間法を用いれば、学習データがベクトルデータであるため、学習データのデータ量を少なくすることができる。したがって、より多くの学習データを記憶媒体に記憶しておくことができるため、光学的情報記録領域の形状が多少変化した場合であっても、その位置を検出することができる。
【0096】
また、収縮処理画像を構成する各画素の輝度値は、受光センサ24の感度や照明光源21の光量に依存するため、収縮処理画像の輝度値の絶対的な大きさよりも輝度値の分布に意味がある。そこで、収縮処理画像の画像ベクトルの長さを正規化することにより、受光センサ24の感度や照明光源21の光量による依存度を小さくすることができる。したがって、光学的情報記録領域の位置検出の安定性を向上させることができる。
【0097】
〈他の実施形態〉
(1)前述の各実施形態では、この発明の光学的情報読取装置として、暗色の領域中に記録された明色の光学的情報Cを読取る場合を説明したが、明色の領域中に記録された暗色の光学的情報を読取るように光学的情報読取装置の機能を追加または変更することもできる。この場合、前処理回路32は明暗反転処理を行う必要がなく、元画像を収縮処理すればよい。この機能を備える光学的情報読取装置も前述の各実施形態と同じ効果を奏することができる。なお、上記の構成を採用した光学的情報読取装置が、この発明の請求項15に係る光学的情報読取装置に対応する。また、光学的情報が明色か暗色かによって読取り機能を切り替えるスイッチなどの切替手段を設けることもできる。
【0098】
(2)デコード処理するときに参照する明暗パターンとして明暗を反転した明暗パターンを記憶媒体に記憶しておき、明暗パターンの反転した光学的情報記録領域の元画像と、記憶媒体に記憶されている明暗パターンとを照合することにより、光学的情報をデコードするように構成することもできる。この構成を採用すれば、元画像の明暗を反転する処理を省略することができるため、光学的情報のデコード時間を短縮することができる。また、この場合、フィルタ処理として元画像を膨張処理し、明暗パターンの暗色領域を明色で塗り潰した塊に変換し、明色で塗り潰したテンプレートと照合することにより、光学的情報記録領域を検出する。
【符号の説明】
【0099】
20・・光学的情報読取装置、21・・照明光源、24・・受光センサ(撮像手段)、
32・・前処理回路(画像処理手段)、51・・CPU、54・・メモリ、
C・・光学的情報、P・・プリント基板。
【技術分野】
【0001】
この発明は、バーコード、QRコード(登録商標)およびデータマトリクスなど、複数種類の光学的情報を読取ることのできる光学的情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の光学的情報読取装置として、特許文献1に記載のものが知られている。このものは、光学的情報が有するファインダパターンの特徴を画像処理で自動的に検出し、その検出したファインダパターンに基づいて光学的情報の種類を判定するものである。具体的には、QRコードのファインダパターンは、明暗(たとえば、白黒)の比率が1:1:3:1:1と定められているため、明暗の比率が1:1:3:1:1のファインダパターンを検出したときは、その光学的情報はQRコードであると判定する。また、データマトリクスのファインダパターンは、暗色(たとえば、黒色)のL字型パターンと定められているため、そのL字型パターンを検出したときは、その光学的情報はデータマトリクスであると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−318997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述した従来のものは、光学的情報の周囲に暗色のノイズ領域が存在すると、光学的情報の読取りに時間がかかるという問題がある。たとえば、プリント基板の基板面に記録された光学的情報を読取る場合、プリント基板の配線パターンやランドなどが撮像範囲に入る場合がある。この場合、配線パターンやランド形状が明暗パターンを形成していると、それらもファインダパターンの検出対象に入るので、目的のファインダパターンを検出するまでに時間がかかるため、光学的情報の読取り時間が長くなってしまう。また、それらがファインダパターンに近似していると、光学的情報の位置を誤認識するおそれがある。
【0005】
そこでこの発明は、上述の諸問題を解決するためになされたものであり、光学的情報の周囲にノイズとなる明暗パターンが存在する場合であっても、光学的情報の読取り時間が短く、かつ、光学的情報の位置を誤認識するおそれのない光学的情報読取装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、この発明の第1の特徴は、光学的情報(C)が記録された記録領域を含む領域を撮像する撮像手段(24)と、前記撮像手段から出力された元画像をフィルタ処理する画像処理手段(32)と、前記画像処理手段により前記フィルタ処理された処理画像の中から、前記記録領域の処理画像と推定される特定の処理画像の位置を検出する第1の位置検出手段(S15)と、前記第1の位置検出手段により検出された位置の前記元画像における位置を検出する第2の位置検出手段(S16)と、前記元画像のうち、前記第2の位置検出手段により検出された位置と略同じ位置にある前記記録領域に基づいて前記光学的情報を読取る読取手段(S18)と、を備えることにある。
【0007】
光学的情報が記録された記録領域の周縁形状は、矩形などの特定の形状を有する。一方、光学的情報が記録されたプリント基板の配線パターンやランドなど、光学的情報の周囲に存在するノイズが記録された領域の周縁形状は、不特定である。
そこで、元画像をフィルタ処理することにより、光学的情報が記録された記録領域およびノイズ領域における明暗領域を明暗のいずれかのみで形成された領域に変換する。
【0008】
また、フィルタ処理には、収縮処理と膨張処理とがある。収縮処理は、明領域を暗領域に変換する処理であり、膨張処理は、暗領域を明領域に変換する処理である。たとえば、プリント基板の基板面が明色(明度の高い色)であり、光学的情報およびノイズが暗色(明度の低い色)で基板面に形成されている場合に、それらを撮像した元画像を収縮処理すると、光学的情報が記録された領域およびノイズの領域内の明色部分が暗色に変換される。また、逆に、プリント基板の基板面が暗色であり、光学的情報およびノイズが明色で基板面に形成されている場合に、それらを撮像した元画像を膨張処理すると、光学的情報およびノイズの領域内の暗色部分が明色に変換される。
【0009】
この発明の第2の特徴は、前述の第1の特徴において、前記フィルタ処理は、少なくとも前記光学的情報を塗り潰すことで所定形状の塊にする処理であることにある。
【0010】
この発明の第3の特徴は、前述の第2の特徴において、前記第1の位置検出手段(S15)は、前記フィルタ処理された処理画像の中から、周縁形状が前記所定形状を呈する領域の位置を検出することにある。
【0011】
この発明の第4の特徴は、前述の第3の特徴において、前記第1の位置検出手段(S15)は、前記フィルタ処理された処理画像を微分することにより、前記処理画像の周縁形状を検出し、その検出した周縁形状の中から、前記所定形状を呈する領域の位置を検出することにある。
【0012】
この発明の第5の特徴は、前述の第3または第4の特徴において、前記第1の位置検出手段(S15)は、前記フィルタ処理された処理画像と学習データとを比較することにより、周縁形状が前記所定形状を呈する領域の位置を検出することにある。
【0013】
この発明の第6の特徴は、前述の第5の特徴において、前記所定形状に対応した周縁形状を有する画像が学習データとして記憶された学習データ記憶手段(52)を備えており、前記第1の位置検出手段(S15)は、前記フィルタ処理された処理画像と、前記学習データ記憶手段に記憶されている学習データとをテンプレートマッチングすることにより、周縁形状が前記所定形状を呈する領域の位置を検出することにある。
【0014】
この発明の第7の特徴は、前述の第5の特徴において、前記所定形状に対応した周縁形状を有する画像が学習データとして記憶された学習データ記憶手段(52)を備えており、前記第1の位置検出手段(S15)は、前記フィルタ処理された処理画像と、前記学習データ記憶手段に記憶されている学習データとを固有空間法に基いて比較することにより、周縁形状が前記所定形状を呈する領域の位置を検出することにある。
【0015】
この発明の第8の特徴は、前述の第2ないし第7の特徴のいずれか1つにおいて、前記所定形状は、矩形であることにある。
なお、矩形とは、一般的な矩形の他、一部が変形しているが全体として見れば矩形と識別できる形状を含む意味である。
【0016】
この発明の第9の特徴は、前述の第8の特徴において、前記矩形は、1辺に2つの分岐を有し、かつ、4つの辺で閉ループを構成してなる形状であることにある。
【0017】
この発明の第10の特徴は、前述の第1ないし第9の特徴のいずれか1つにおいて、前記読取手段(S18)は、前記元画像のうち、前記第2の位置検出手段により検出された位置と略同じ位置にある前記記録領域に対して、直交する少なくとも2方向を走査した結果に基づいて前記光学的情報の種類を判定し、その判定結果に基づいて前記光学的情報を読取ることにある。
【0018】
この発明の第11の特徴は、前述の第1ないし第9の特徴のいずれか1つにおいて、前記読取手段(S18)は、前記元画像のうち、前記第2の位置検出手段により検出された位置と略同じ位置にある前記記録領域の周縁形状が略正方形である場合は、2次元コードに限定して前記光学的情報を読取ることにある。
なお、略正方形とは、正確な正方形の他、一部が変形しているが全体として見れば正方形と識別できる形状を含む意味である。
【0019】
この発明の第12の特徴は、前述の第1ないし第9の特徴のいずれか1つにおいて、前記読取手段(S18)は、前記元画像のうち、前記第2の位置検出手段により検出された位置と略同じ位置にある前記記録領域の周縁形状が略長方形である場合は、長方形の2次元コードおよび1次元コードに限定して前記光学的情報を読取ることにある。
なお、略長方形とは、正確な長方形の他、一部が変形しているが全体として見れば長方形と識別できる形状を含む意味である。
【0020】
この発明の第13の特徴は、前述の第1ないし第12の特徴のいずれか1つにおいて、前記画像処理手段(32)は、前記撮像手段(24)から出力された元画像を所定の領域単位でフィルタ処理することにある。
【0021】
この発明の第14の特徴は、前述の第13の特徴において、前記画像処理手段(32)は、前記元画像と、前記フィルタ処理された処理画像とをそれぞれ所定の領域単位で略同時に前記読取手段(S18)へ送出することにある。
【0022】
この発明の第15の特徴は、前述の第1ないし第14の特徴のいずれか1つにおいて、前記光学的情報は暗色で記録されており、前記フィルタ処理は収縮処理であることにある。
【0023】
この発明の第16の特徴は、前述の第1ないし第14の特徴のいずれか1つにおいて、前記光学的情報は明色で記録されており、前記撮像手段(24)から出力された元画像の明暗を反転する明暗反転手段を備えており、前記画像処理手段(32)は、前記明暗反転手段により明暗の反転された元画像を収縮処理し、前記読取手段(S18)は、前記明暗反転手段により明暗の反転された元画像のうち、前記第2の位置検出手段(S16)により検出された位置と略同じ位置にある前記記録領域に基づいて前記光学的情報(C)を読取ることにある。
【0024】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0025】
この発明の第1の特徴によれば、元画像をフィルタ処理することにより、光学的情報が記録された記録領域(以下、光学的情報記録領域という)およびノイズ領域を明暗のどちらかが強調された領域に変換し、その変換後の領域に基づいて光学的情報記録領域の位置を検出することができる。
したがって、明暗パターンの数を少なくすることができるため、明暗の判定処理を少なくすることができるので、元画像の明暗パターンに基づいて光学的情報記録領域の位置を検出する手法よりも光学的情報記録領域の位置の検出時間を短縮することができる。
また、明暗のどちらかが強調された記録領域は特定の形状を呈するため、光学的情報記録領域をノイズ領域と容易に識別することができる。
したがって、光学的情報の位置を誤認識するおそれが少ない。
【0026】
特に、第2の特徴によれば、フィルタ処理は、少なくとも光学的情報を塗り潰すことで所定形状の塊にするため、明暗パターンの判定処理をより一層少なくすることができる。
したがって、光学的情報記録領域の位置の検出時間をより一層短縮することができる。
しかも、光学的情報記録領域を塗り潰すことにより、光学的情報記録領域とノイズ領域とをより一層容易に識別することができる。
したがって、光学的情報の位置を誤認識するおそれがより一層少ない。
【0027】
また、光学的情報記録領域の周縁形状は、第8の特徴のように矩形などの所定形状を呈するため、第3の特徴のように、フィルタ処理された処理画像の中から、周縁形状が所定形状を呈する領域の位置を検出すれば、光学的情報記録領域の位置を短時間で検出することができる。
【0028】
特に、第4の特徴によれば、フィルタ処理された処理画像を微分することにより、明暗の境界を検出することができるため、処理画像の周縁形状を検出し、その検出した周縁形状に基づいて、光学的情報記録領域の位置を検出することができる。
【0029】
たとえば、第5の特徴のように、フィルタ処理された処理画像と学習データとを比較することにより、光学的情報記録領域の位置を検出することができる。
【0030】
また、第6の特徴のように、フィルタ処理された処理画像と、学習データ記憶手段に記憶されている学習データとをテンプレートマッチングすることにより、光学的情報記録領域の位置を検出することができる。
【0031】
さらに、第7の特徴のように、フィルタ処理された処理画像と、学習データ記憶手段に記憶されている学習データとを固有空間法に基いて比較することにより、光学的情報記録領域の位置を検出することができる。
【0032】
また、第9の特徴によれば、1辺に2つの分岐を有し、かつ、4つの辺で閉ループを構成してなる形状を検索することにより、矩形、つまり、光学的情報記録領域の位置を検出することができる。
特に、光学的情報がプリント基板に記録されている場合にフィルタ処理を行うと、光学的情報記録領域は矩形に塗り潰されるが、配線パターンは矩形に塗り潰されないため、光学的情報の位置を検出することができる。
【0033】
また、第10の特徴によれば、直交する少なくとも2方向を走査した結果に基づいて光学的情報の種類を判定し、その判定結果に基づいて光学的情報を読取ることができるため、光学的情報の種類を判定しないで総ての種類の光学的情報について順次読取りを行う手法と比較して、光学的情報の読取りに要する時間を短縮することができる。
また、殆どの光学的情報は、直交する少なくとも2方向にファインダパターンなどの特徴部分を有するため、直交する少なくとも2方向を走査することにより、大抵の光学的情報の種類を判定することができる。
【0034】
特に、第11の特徴によれば、記録領域の周縁形状が略正方形である場合は、2次元コードに限定して光学的情報を読取ることができるため、2次元コードの読取り時間を短縮することができる。
【0035】
また、第12の特徴によれば、記録領域の周縁形状が略長方形である場合は、長方形の2次元コードおよび1次元コードに限定して光学的情報を読取ることができるため、長方形の2次元コードおよび1次元コードの読取り時間を短縮することができる。
【0036】
また、第13の特徴によれば、画像処理手段は、撮像手段から出力された元画像を所定の領域単位でフィルタ処理するため、この光学的情報読取装置を制御するコンピュータの処理がフィルタ処理に集中してしまい、他の処理が遅延するおそれがない。
【0037】
特に、第14の特徴によれば、画像処理手段は、元画像と、フィルタ処理されたフィルタ処理画像とをそれぞれ所定の領域単位で略同時に読取手段へ送出することができるため、光学的情報記録領域の位置の検出時間を短縮することができる。
【0038】
また、第15の特徴によれば、光学的情報が暗色で記録されている場合に、元画像を収縮処理することにより、光学的情報が記録されている記録領域を暗色で強調された領域に変換し、その変換後の領域に基づいて、光学的情報記録領域の位置を検出することができる。
【0039】
また、第16の特徴によれば、光学的情報が暗色の領域内に明色で記録されている場合に、元画像の明暗を反転し、その反転された元画像を収縮処理することができるため、光学的情報が明色で記録されている場合であっても、その記録領域の位置を検出することができる。
【0040】
たとえば、プリント基板の基板面にレーザ光を照射し、基板面に塗布されたソルダーレジストを除去することによって銅箔層を露出させて光学的情報を記録する場合、光学的情報が明色となり、その周囲が暗色になるため、暗色で記録された一般的な光学的情報と比較して明暗が反転する。このため、暗色で記録された光学的情報の位置を検出する処理では、明暗の反転した光学的情報の位置を検出することができない。
【0041】
しかし、上記の第16の特徴によれば、元画像を反転し、その反転された元画像を収縮処理するため、光学的情報が記録された明色領域を暗色領域に変換し、その周囲を明色に変換することができるので、暗色で記録された光学的情報の位置を検出する処理内容を変更することなく、光学的情報記録領域の位置を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】プリント基板の基板面の平面説明図であり、(a)はプリント基板の全体を示す平面説明図、(b)は(a)において破線で囲んだ部分の拡大図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係る光学的情報読取装置の主な電気的構成を示す説明図である。
【図3】元画像および変換後の画像を示す説明図であり、(a)は元画像の平面図、(b)は(a)に示す元画像の明暗を反転させた明暗反転画像の平面図、(c)は(b)に示す明暗反転画像を収縮処理した収縮処理画像の平面図である。
【図4】明暗反転画像の一部を示す説明図である。
【図5】明暗反転画像の各画素と輝度値との関係を示す説明図であり、(a)は収縮処理前の説明図、(b)は収縮処理後の説明図である。
【図6】QRコードの説明図である。
【図7】図6に示すQRコードのファインダパターンの拡大説明図である。
【図8】データマトリクスの一部を示す説明図である。
【図9】バーコードの説明図である。
【図10】Maxiコードの一部を示す説明図である。
【図11】デコード処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
〈第1実施形態〉
この発明に係る第1実施形態について図を参照して説明する。なお、この実施形態では、この発明に係る光学的情報読取装置として、レーザ光によりプリント基板にマーキングされた光学的情報を読取る光学的情報読取装置を例に挙げて説明する。
【0044】
[光学的情報]
最初に、プリント基板に記録された光学的情報について図を参照して説明する。図1は、プリント基板の基板面の平面説明図であり、(a)はプリント基板の全体を示す平面説明図、(b)は(a)において破線で囲んだ部分の拡大図である。なお、図1では、プリント基板に形成された配線パターンを省略している。
【0045】
図1に示すように、プリント基板Pには、光学的情報Cが記録されている。図1に示す例では、光学的情報CとしてQRコードがプリント基板Pに記録されている。プリント基板Pは、銅箔層の上にソルダーレジスト層を積層して形成されており、ソルダーレジスト層が表面に露出している。この実施形態では、ソルダーレジスト層は緑色(暗色)であり、銅箔層は銅色(明色)である。
【0046】
光学的情報Cは、ソルダーレジスト層を除去して露出する銅箔層の表面が明色であることを利用し、それをパターニングすることにより形成されている。図1(b)において、グレーの領域がソルダーレジスト層であり、白抜きの領域が露出した銅箔層の表面である。この実施形態では、レーザ光の照射によってソルダーレジスト層を除去して銅箔層を露出させる。このため、光学的情報Cは、緑色(暗色)の領域内に銅色(明色)で記録されており、明色の領域内に暗色で記録された一般的な光学的情報とは、明暗パターンが反転している。
【0047】
[電気的構成]
次に、この第1実施形態に係る光学的情報読取装置の主な電気的構成について図を参照して説明する。図2は、この第1実施形態に係る光学的情報読取装置の主な電気的構成を示す説明図である。
【0048】
図2に示すように、光学的情報読取装置20は、照明光源21、フィルタ22、結像レンズ23および受光センサ24などの光学系と、メイン回路50、制御回路40、操作スイッチ42、液晶表示器45などのマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)系と、電源スイッチ41、電池47などの電源系とを備える。なお、これらは、図示しないプリント基板に実装あるいはハウジング内に内装されている。
【0049】
照明光源21は、光学的情報Cが記録された領域を照明するための光源である。この実施形態では、照明光源21は、受光センサ24を挟んだ両側にそれぞれ配置されている。照明光源21から出射された照明光Lfは、図示しないハウジングの読取口を介して出射される。この実施形態では、照明光源21は、赤色光を発光するLEDと、このLEDの出射側に設けられた拡散レンズおよび集光レンズなどから構成されている。
【0050】
フィルタ22は、光学的情報Cおよびその周囲で反射した反射光Lrの波長相当以下の光の通過を許容し、当該波長相当を超える光の通過を遮断する光学的なローパスフィルタであり、ハウジングの読取口と結像レンズ23との間に設けられている。これにより、反射光Lrの波長相当を超える不要な光が受光センサ24に入射することを抑制している。
【0051】
結像レンズ23は、フィルタ22を通過した反射光Lrを集光して受光センサ24の受光面24aに像を結像する結像光学系として機能する。この実施形態では、結像レンズ23は、鏡筒とこの鏡筒内に収容される複数の集光レンズとにより構成されている。
【0052】
受光センサ24は、照明光源21から照射され、光学的情報Cおよびその周囲にて反射した反射光Lrを受光する。受光センサ24は、その受光面24aに結像された画像の輝度に対応するアナログの画像信号を増幅回路30へ出力する。この実施形態では、受光センサ24は、C−MOSやCCDなどの受光素子を2次元に配列してなるエリアセンサである。以下、受光センサ24によって得られた画像を元画像という。
【0053】
次に、マイコン系の構成概要を説明する。マイコン系は、増幅回路30、A/D変換回路31、前処理回路32、同期信号発生回路33、アドレス発生回路34、制御回路40、操作スイッチ42、LED43、ブザー44、液晶表示器45、通信インターフェース46およびメイン回路50などから構成されている。
【0054】
このマイコン系は、マイコンとして機能する制御回路40およびメイン回路50を中心に構成されるもので、受光センサ24から出力された画像信号をハードウェア的およびソフトウェア的に信号処理するものである。
【0055】
増幅回路30は、受光センサ24から入力した画像信号を所定のゲインで増幅し、その増幅信号をA/D変換回路31へ出力する。A/D変換回路31は、入力した増幅信号を2値化する。A/D変換回路31は、入力した増幅信号を微分処理し、その微分処理された信号が閾値を超えたときに2値データ「1」を発生し、閾値以下のときに2値データ「0」を発生する。つまり、元画像をグレースケール画像(白黒の濃淡画像)に変換する。2値データ「1」は、元画像のうち明色の領域に対応し、2値データ「0」は暗色の領域に対応する。
【0056】
また、A/D変換回路31は、入力した増幅信号が閾値を超えたか否かの判定を所定の周期で行い、2値データ「1」の発生数を計数し、その計数値、つまり輝度値を示す輝度データを画素単位で前処理回路32へ出力する。輝度値が大きい程、明度が高い(白っぽい)ことを表し、輝度値が小さい程、明度が低い(黒っぽい)ことを表す。
【0057】
前処理回路32は、A/D変換回路31から入力した輝度データに対して明暗反転処理および収縮処理を行う。明暗反転処理は、元画像の明暗パターンの明暗を反転する処理である。この実施形態では、A/D変換回路31から入力した輝度データにより示される輝度値を所定の領域単位(所定の画素数単位)で変更することにより、元画像の明暗パターンの明暗を反転させる。たとえば、A/D変換回路31が、8bitで元画像をグレースケール化したときの輝度値が、たとえば「0」、「128」、「255」であった場合は、それらを「255」、「128」、「0」の輝度値に変更する。
【0058】
このように明暗の反転処理を行うと、図3(a)に示す光学的情報Cの元画像は、同図(b)に示すように、明暗パターンの反転した反転画像に変換される。以下、明暗パターンの反転された元画像を明暗反転画像という。生成された明暗反転画像は、所定の領域単位(所定の画素数単位)でメイン回路50へ出力され、メモリ54に記憶アドレス(以下、第1の記憶アドレスという)と対応付けて記憶される。メモリ54は、明暗反転画像の総て(総ての画素)を第1の記憶アドレスと対応付けて記憶するだけの記憶領域を有し、その記憶された明暗反転画像は、後のデコード処理において参照される。
【0059】
この実施形態では、メモリ54は、半導体メモリ装置であり、たとえば、RAM(DRAM、SRAMなど)やフラッシュROM(EPROM、EEPROMなど)のデータ書換え可能なメモリである。
【0060】
また、前処理回路32は、メイン回路50へ出力した明暗反転画像と同じ画像に対して収縮処理を行う。収縮処理は、明暗反転画像のうち、暗領域中の明領域を暗領域に変換することにより、明瞭域を暗色で塗り潰し、明暗パターンを暗色の塊に変換する処理である。この実施形態では、収縮処理は収縮フィルタを用いて行い、明暗反転画像に対して所定の領域単位(画素単位)で行う。このように所定の領域単位で収縮処理を行うため、前処理回路32を制御するCPUの処理負荷が収縮処理に集中することがないので、他の処理が遅延するおそれがない。
【0061】
また、収縮処理は、所定の領域の中心画素の輝度値を、所定の領域の中で最も小さい輝度値に置換える処理を行う。
たとえば、5×5の計25画素単位で収縮フィルタを通過させて収縮処理を行うものとし、通過する前の明暗反転画像が図4に示す画像であるとする。図5(a)は図4に示す明暗反転画像を構成する各画素に輝度値を対応付けて表した説明図である。同図において明暗反転画像の中心に位置する画素C1の輝度値は「9」であり、画像中における輝度値の最小値は「5」である。したがって、図5(a)に示す領域を収縮処理すると、図5(b)に示すように、中心に位置する画素C1の輝度値は「9」から「5」に置き換わる。
【0062】
つまり、明暗反転画像を収縮処理して高い輝度値を低い輝度値に置き換えることにより、明暗反転画像の明瞭域を暗色で塗り潰し、明暗反転画像を暗色の塊に変換することができる。たとえば、図3(b)に示すQRコードの明暗反転画像を収縮処理すると、同図(c)に示すように、暗色(黒)で塗り潰された四角形の塊が生成される。以下、収縮処理された明暗反転画像を収縮処理画像という。
【0063】
前処理回路32は、収縮処理を行った単位で収縮処理画像をメイン回路50へ出力する。この出力された収縮処理画像は、メモリ54に記憶アドレス(以下、第2の記憶アドレスという)と対応付けて記憶される。メモリ54は、収縮処理画像の総て(総ての画素)を第2の記憶アドレスと対応付けて記憶するだけの記憶領域を有し、その記憶された収縮処理画像は、光学的情報記録領域の検出に用いられる。なお、前処理回路32は、明暗反転処理を行う前に膨張処理を行い、元画像に含まれる暗色のノイズ領域を除去し、その後明暗反転処理を行うように構成することもできる。
【0064】
また、前述した明暗反転画像に対応付けられた第1の記憶アドレスは、収縮処理画像に対応付けられた第2の記憶アドレスと対応関係にあり、第1の記憶アドレスから特定の第1の記憶アドレスを選択した場合、その選択した第1の記憶アドレスと対応関係にある第2の記憶アドレスを検出することができるようになっている。
つまり、収縮処理画像における光学的情報記録領域の位置(第1の記憶アドレス)を検出すれば、その検出した位置と対応する明暗反転画像における位置(第2の記憶アドレス)を検出することができるため、その検出した位置に基づいて光学的情報を特定することができる。
【0065】
同期信号発生回路33は、受光センサ24およびアドレス発生回路34に対する同期信号を発生する。アドレス発生回路34は、同期信号発生回路33から供給される同期信号に基づいて、メモリ54に記憶される明暗反転画像および収縮処理画像の各第1および第2記憶アドレスを発生する。
【0066】
メイン回路50のCPU51は、メモリ54に記憶されている収縮処理画像の中から光学的情報記録領域の位置を検出する第1の位置検出処理を実行する。この第1の検出処理は、明暗の境界線を検出し、その検出された境界線のうち、矩形領域を形成する境界線を検出することにより、光学的情報記録領域の位置を検出する。明暗の境界点は、輝度値が所定値以上変化する変化点を検索することにより検出する。
【0067】
この実施形態では、上記の変化点は、収縮処理画像を構成する各画素の輝度値を微分処理し、その微分値が所定値以上になった点を変化点として検出する。そして、その検出した変化点間を結んだ線を境界線に設定する。
【0068】
そして、収縮処理画像における光学的情報記録領域の位置は、上記の検出した境界線によって囲まれた領域が矩形であるか否かを判定することによって検出する。
ところで、元画像の中には、光学的情報Cの周囲に存在する配線パターンなども含まれているため、収縮処理画像の中には、光学的情報Cを暗色で塗り潰した塊の他、配線パターンを暗色で塗り潰した塊も存在する。
【0069】
しかし、光学的情報Cを暗色で塗り潰した塊は、配線パターンを暗色で塗り潰した塊とは異なり、略矩形を呈するため、略矩形の暗色の塊を検索すれば、光学的情報記録領域の位置を検出することができる。
この実施形態では、1辺に2つの分岐を有し、4つの辺で閉ループをなす形状を検索し、その形状が検索されたときに、その形状の位置を光学的情報記録領域の位置として検出する。
【0070】
また、CPU51は、上記の検索された矩形が略長方形であるか否かを判定し、略長方形であると判定した場合は、デコード対象を長方形の1次元コードおよび2次元コードに限定し、略長方形ではない、つまり略正方形であると判定した場合は、デコード対象を2次元コードに限定する。このようにデコード対象を限定することにより、デコード処理時間を短縮することができる。
【0071】
前述したように、収縮処理画像は、第2の記憶アドレスと対応付けてメモリ54に記憶されているため、光学的情報記録領域の位置は、その第2の記憶アドレスによって特定する。また、CPU51は、上記の第1の位置検出処理によって検出された位置の明暗反転画像における位置を検出する第2の位置検出処理を実行する。この第2の位置検出処理は、第1の検出処理によって検出された第1の記憶アドレスに対応する第2の記憶アドレスを、メモリ54に記憶されている明暗反転画像に対応付けられている第2の記憶アドレスの中から検索することにより行う。
【0072】
また、CPU51は、上記の第2の位置検出処理によって検出された位置と略同じ位置にある明暗反転画像に基づいて光学的情報Cのコード種を判定するコード種判定処理を実行する。この実施形態では、上記の第2の位置検出処理によって検出された明暗反転画像を縦方向および横方向に走査し、各コードの特徴を検出することにより、コード種を判定する。
【0073】
たとえば、図3(b)に示したQRコードの明暗反転画像の場合は、3つの角部に2重四角のファインダパターンを有する。また、そのファインダパターンは、図7に示すように、明暗の幅D1〜D5の比率が、1:1:3:1:1と規定されている。そこで、図6に示すように、明暗反転画像を直交する少なくとも2方向F1,F2に走査し、上記の比率を有する領域が検出されれば、その領域を有する明暗反転画像は、QRコードであると判定する。
【0074】
また、コード種がデータマトリクスである場合は、図8に示すように、1つの角部の縁に暗色のL字型パターンを有するため、明暗反転画像を直交する少なくとも2方向F1,F2に走査した結果、そのL字型パターンが検出されれば、そのL字型パターンを有する明暗反転画像は、データマトリクスであると判定する。
【0075】
また、コード種がバーコードである場合は、図9に示すように、縦方向F1に沿った一端に暗色のバーが配置され、かつ、そのバーと交差する横方向F2には、明暗の不連続領域が配置されたパターンを形成している。したがって、明暗反転画像を直交する少なくとも2方向F1,F2に走査した結果、そのパターンが検出されれば、そのパターンを有する明暗反転画像は、バーコードであると判定する。
【0076】
また、コード種がMaxiコードである場合は、図10に示すように、3重丸のファインダパターンを有するため、明暗反転画像を直交する少なくとも2方向F1,F2に走査し、そのファインダパターンが検出されれば、そのファインダパターンを有する明暗反転画像は、Maxiコードであると判定する。
【0077】
メイン回路50のROM52には、CPU51が上記の各処理を実行するためのコンピュータプログラム、光学的情報の種類を判別する際に参照するデータ、光学的情報をデコード処理する際に参照する明暗パターンデータ、照明光源21、受光センサ24などの各ハードウェアを制御するためのシステムプログラムなどが読出し可能に記憶されている。上記の明暗パターンデータは、明暗の反転していない一般的な明暗パターンデータである。また、RAM53は、CPU51がROM52から一時的に読出したデータや処理結果などを一時的に記憶する。
【0078】
制御回路40は、光学的情報読取装置20全体を制御可能なマイコンで、CPU、システムバス、入出力インタフェースなどから構成されている。この制御回路40は、内蔵された入出力インタフェースを介して種々の入出力装置(周辺装置)と接続可能に構成されており、この実施形態では、電源スイッチ41、操作スイッチ42、LED43、ブザー44、液晶表示器45、通信インターフェース46などが接続されている。
【0079】
操作スイッチ42は、光学的情報の読取りを開始させるための読取り開始スイッチなど、この光学的情報読取装置20を操作するための各種スイッチから構成されている。LED43は、光学的情報Cの読取り成功や失敗などをその点灯・消灯によって報知する。ブザー44は、光学的情報Cの読取り成功や失敗などをビープ音やアラーム音などを発生して報知する。
【0080】
液晶表示器45は、読取った光学的情報Cのコード内容や光学的情報読取装置20の動作状態などを液晶画面に表示する。通信インターフェース46は、光学的情報読取装置20の上位システムに相当するホストコンピュータHSTなどの外部装置との通信を可能にするためのものである。
電源系は、電源スイッチ41および電池47などにより構成されており、電池47は、電源スイッチ41のオンにより、上述した各装置や各回路へ駆動電源を供給する。
【0081】
[デコード処理]
次に、CPU51が実行するデコード処理の流れを説明する。図11は、デコード処理の流れを示すフローチャートである。
【0082】
CPU51は、電源スイッチ41のオンを検出すると、受光センサ24の露出条件の設定、収縮処理に用いるフィルタサイズの設定などの初期設定を行う(ステップ(以下、Sと略す)1)。続いて、CPU51は、読取開始スイッチがオンしたか否かを判定し(S2)、オンしたと判定すると(S2:Yes)、照明光源21を駆動して照明を点灯し(S3)、撮像画像、つまり前処理回路32が出力した収縮処理画像および明暗反転画像を取込む(S4)。
【0083】
続いて、CPU51は、照明を消灯し(S5)、収縮処理画像を微分して明暗の境界を検出し(S6)、その検出した境界に基づいて矩形領域を検索する(S7)。
【0084】
続いて、CPU51は、矩形領域を検出したか否かを判定し(S8)、検出された場合は(S8:Yes)、その検出された矩形領域が略長方形であるか否かを判定する(S9)。ここで、略長方形であると判定した場合は(S9:Yes)、デコード範囲を長方形の1次元コードおよび2次元コードに限定し(S10)、略長方形ではない、つまり略正方形であると判定した場合は(S9:No)、デコード範囲を2次元コードに限定する(S11)。
【0085】
続いて、CPU51は、先のS7において検出した矩形領域の位置(第1の記憶アドレス)を検出し(S12)、明暗反転画像で、矩形領域と同じ位置(第2の記憶アドレス)を検索する(S13)。続いて、CPU51は、検出した位置の明暗反転画像を走査してコード種を判定し(S14)、その判定結果の対象となった明暗反転画像とROM52に記憶されている明暗パターンデータとを照合して光学的情報Cをデコードし(S15)、デコード結果を液晶表示器45などで報知する(S16)。また、CPU51は、矩形領域を検出できなかった場合は(S8:No)、再度、露出条件の変更、フィルタサイズの拡大などの初期設定を行い、S2〜S16を実行する。
【0086】
[第1実施形態の効果]
(1)上述した第1実施形態の光学的情報読取装置20を実施すれば、受光センサ24から出力された元画像の明暗を反転して明暗反転画像を生成し、その明暗反転画像を収縮処理することにより、明暗反転パターンを暗色で塗り潰した塊の収縮処理画像に変換し、その収縮処理画像に基づいて光学的情報記録領域の位置を検出することができる。
したがって、明暗パターンの数を少なくすることができるため、明暗の判定処理を少なくすることができるので、総ての明暗パターンに基づいて光学的情報記録領域の位置を検出する手法よりも光学的情報記録領域の位置の検出時間を短縮することができる。
また、光学的情報記録領域の収縮処理画像は、矩形を呈するため、配線パターンの収縮処理画像と容易に識別することができる。
したがって、光学的情報の位置を誤認識するおそれが少ない。
【0087】
(2)特に、暗色のプリント基板Pに光学的情報Cが明色で記録されている場合であっても、その光学的情報Cの明暗パターンを反転することにより、光学的情報をデコードすることができる。
したがって、明色領域に暗色で記録された光学的情報をデコードするための一般的なデコード処理を用いることができるため、デコード処理における仕様を変更する必要がない。
【0088】
(3)また、明暗反転画像を直交する少なくとも2方向F1,F2に走査した結果に基づいて光学的情報Cの種類を判定し、その判定結果に基づいて光学的情報をデコードすることができるため、光学的情報Cの種類を判定しないで総ての種類の光学的情報について順次読取りを行う手法と比較して、光学的情報の読取りに要する時間を短縮することができる。
また、殆どの光学的情報は、直交する少なくとも2方向にファインダパターンなどの特徴部分を有するため、直交する少なくとも2方向を走査することにより、大抵の光学的情報の種類を判定することができる。
【0089】
(4)また、光学的情報記録領域の周縁形状が略長方形である場合は、長方形の1次元コードおよび2次元コードに限定して光学的情報を読取ることができるため、長方形の2次元コードおよび1次元コードの読取り時間を短くすることができる。
さらに、光学的情報記録領域の周縁形状が略正方形である場合は、2次元コードに限定して光学的情報を読取ることができるため、2次元コードの読取り時間を短縮することができる。
【0090】
〈第2実施形態〉
次に、この発明の第2実施形態について説明する。この実施形態に係る光学的情報読取装置は、収縮処理画像と学習データとを比較することにより光学的情報記録領域の位置を検出することを特徴とする。なお、この実施形態に係る光学的情報読取装置は、光学的情報記録領域の位置を検出するための手法以外は、前述の第1実施形態と同じ構成および機能であるため、その同じ部分の説明を省略する。
【0091】
メイン回路50のROM52には、収縮処理画像の中から光学的情報記録領域を検出するときに参照する学習データが記憶されている。その学習データは、たとえば、長方形および正方形などの矩形を示す学習データであり、正確な形状の他、少し歪んだ形状の学習データなど、光学的情報記録領域の形状として考え得る形状の学習データが含まれている。学習データは、収縮処理画像と同様に2値化された画像であり、暗色で塗り潰した塊を示す。
【0092】
CPU51は、S9(図11)において、収縮処理画像と、ROM52から読出した学習データとを比較する。この実施形態では、学習データをテンプレート画像とし、テンプレートマッチングによって収縮処理画像の中から光学的情報記録領域を検出する。つまり、テンプレート画像によって収縮処理画像上を走査し、両画像が重なっている部分の特徴ベクトルの相関係数を求め、その求めた相関係数が閾値を超えた位置を検出し、その検出した位置を光学的情報記録領域の位置とする。特徴ベクトルとしては、たとえば輝度値または濃度値を用いることができる。
【0093】
また、テンプレートマッチングとして、アクティブ探索法(特開平9−330404号公報)を用いることもできる。この手法は、順次テンプレート画像をずらして参照画像中の位置を探索する際、次回の探索位置における照合が必要かどうかを判断するための上限値を計算し、現在の位置におけるテンプレート画像・参照画像の類似値と次回位置の上限値を比較し、上限値が類似値より低いものであれば次回位置の照合を省くというものであり、この手法を用いれば、光学的情報記録領域を検出する時間を短縮することができる。
上記の第2実施形態に係る光学的情報読取装置を実施した場合も第1実施形態と同じ効果を奏することができる。
【0094】
[変更例]
固有空間法を用いて光学的情報記録領域の位置を検出することもできる。この固有空間法では、暗色で塗り潰された矩形画像を深度方向、仰角方向および傾角方向に振り、それを固有空間に投影して得られる各画像パターンを、固有値および固有ベクトルからなるベクトルデータに変換し、それを学習データとして用いる。そして、収縮処理画像から所定の領域単位で切り出した画像から固有値および固有ベクトルを計算し、その計算結果を固有空間に投影し、どの画像パターンと一致するかを判定する。一致すると判定したときの判定対象となった画像の収縮処理画像における位置が、光学的情報記録領域の位置である。
【0095】
上記の固有空間法を用いれば、学習データがベクトルデータであるため、学習データのデータ量を少なくすることができる。したがって、より多くの学習データを記憶媒体に記憶しておくことができるため、光学的情報記録領域の形状が多少変化した場合であっても、その位置を検出することができる。
【0096】
また、収縮処理画像を構成する各画素の輝度値は、受光センサ24の感度や照明光源21の光量に依存するため、収縮処理画像の輝度値の絶対的な大きさよりも輝度値の分布に意味がある。そこで、収縮処理画像の画像ベクトルの長さを正規化することにより、受光センサ24の感度や照明光源21の光量による依存度を小さくすることができる。したがって、光学的情報記録領域の位置検出の安定性を向上させることができる。
【0097】
〈他の実施形態〉
(1)前述の各実施形態では、この発明の光学的情報読取装置として、暗色の領域中に記録された明色の光学的情報Cを読取る場合を説明したが、明色の領域中に記録された暗色の光学的情報を読取るように光学的情報読取装置の機能を追加または変更することもできる。この場合、前処理回路32は明暗反転処理を行う必要がなく、元画像を収縮処理すればよい。この機能を備える光学的情報読取装置も前述の各実施形態と同じ効果を奏することができる。なお、上記の構成を採用した光学的情報読取装置が、この発明の請求項15に係る光学的情報読取装置に対応する。また、光学的情報が明色か暗色かによって読取り機能を切り替えるスイッチなどの切替手段を設けることもできる。
【0098】
(2)デコード処理するときに参照する明暗パターンとして明暗を反転した明暗パターンを記憶媒体に記憶しておき、明暗パターンの反転した光学的情報記録領域の元画像と、記憶媒体に記憶されている明暗パターンとを照合することにより、光学的情報をデコードするように構成することもできる。この構成を採用すれば、元画像の明暗を反転する処理を省略することができるため、光学的情報のデコード時間を短縮することができる。また、この場合、フィルタ処理として元画像を膨張処理し、明暗パターンの暗色領域を明色で塗り潰した塊に変換し、明色で塗り潰したテンプレートと照合することにより、光学的情報記録領域を検出する。
【符号の説明】
【0099】
20・・光学的情報読取装置、21・・照明光源、24・・受光センサ(撮像手段)、
32・・前処理回路(画像処理手段)、51・・CPU、54・・メモリ、
C・・光学的情報、P・・プリント基板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的情報が記録された記録領域を含む領域を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段から出力された元画像をフィルタ処理する画像処理手段と、
前記画像処理手段により前記フィルタ処理された処理画像の中から、前記記録領域の処理画像と推定される特定の処理画像の位置を検出する第1の位置検出手段と、
前記第1の位置検出手段により検出された位置の前記元画像における位置を検出する第2の位置検出手段と、
前記元画像のうち、前記第2の位置検出手段により検出された位置と略同じ位置にある前記記録領域に基づいて前記光学的情報を読取る読取手段と、
を備えることを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項2】
前記フィルタ処理は、
少なくとも前記光学的情報を塗り潰すことで所定形状の塊にする処理であることを特徴とする請求項1に記載の光学的情報読取装置。
【請求項3】
前記第1の位置検出手段は、
前記フィルタ処理された処理画像の中から、周縁形状が前記所定形状を呈する領域の位置を検出することを特徴とする請求項2に記載の光学的情報読取装置。
【請求項4】
前記第1の位置検出手段は、
前記フィルタ処理された処理画像を微分することにより、前記処理画像の周縁形状を検出し、その検出した周縁形状の中から、前記所定形状を呈する領域の位置を検出することを特徴とする請求項3に記載の光学的情報読取装置。
【請求項5】
前記第1の位置検出手段は、
前記フィルタ処理された処理画像と学習データとを比較することにより、周縁形状が前記所定形状を呈する領域の位置を検出することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の光学的情報読取装置。
【請求項6】
前記所定形状に対応した周縁形状を有する画像が学習データとして記憶された学習データ記憶手段を備えており、
前記第1の位置検出手段は、
前記フィルタ処理された処理画像と、前記学習データ記憶手段に記憶されている学習データとをテンプレートマッチングすることにより、周縁形状が前記所定形状を呈する領域の位置を検出することを特徴とする請求項5に記載の光学的情報読取装置。
【請求項7】
前記所定形状に対応した周縁形状を有する画像が学習データとして記憶された学習データ記憶手段を備えており、
前記第1の位置検出手段は、
前記フィルタ処理された処理画像と、前記学習データ記憶手段に記憶されている学習データとを固有空間法に基いて比較することにより、周縁形状が前記所定形状を呈する領域の位置を検出することを特徴とする請求項5に記載の光学的情報読取装置。
【請求項8】
前記所定形状は、矩形であることを特徴とする請求項2ないし請求項7のいずれか1つに記載の光学的情報読取装置。
【請求項9】
前記矩形は、1辺に2つの分岐を有し、かつ、4つの辺で閉ループを構成してなる形状であることを特徴とする請求項8に記載の光学的情報読取装置。
【請求項10】
前記読取手段は、
前記元画像のうち、前記第2の位置検出手段により検出された位置と略同じ位置にある前記記録領域に対して、直交する少なくとも2方向を走査した結果に基づいて前記光学的情報の種類を判定し、その判定結果に基づいて前記光学的情報を読取ることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1つに記載の光学的情報読取装置。
【請求項11】
前記読取手段は、
前記元画像のうち、前記第2の位置検出手段により検出された位置と略同じ位置にある前記記録領域の周縁形状が略正方形である場合は、2次元コードに限定して前記光学的情報を読取ることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1つに記載の光学的情報読取装置。
【請求項12】
前記読取手段は、
前記元画像のうち、前記第2の位置検出手段により検出された位置と略同じ位置にある前記記録領域の周縁形状が略長方形である場合は、長方形の2次元コードおよび1次元コードに限定して前記光学的情報を読取ることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1つに記載の光学的情報読取装置。
【請求項13】
前記画像処理手段は、
前記撮像手段から出力された元画像を所定の領域単位でフィルタ処理することを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか1つに記載の光学的情報読取装置。
【請求項14】
前記画像処理手段は、
前記元画像と、前記フィルタ処理された処理画像とをそれぞれ所定の領域単位で略同時に前記読取手段へ送出することを特徴とする請求項13に記載の光学的情報読取装置。
【請求項15】
前記光学的情報は暗色で記録されており、
前記フィルタ処理は収縮処理であることを特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれか1つに記載の光学的情報読取装置。
【請求項16】
前記光学的情報は明色で記録されており、
前記撮像手段から出力された元画像の明暗を反転する明暗反転手段を備えており、
前記画像処理手段は、前記明暗反転手段により明暗の反転された元画像を収縮処理し、
前記読取手段は、前記明暗反転手段により明暗の反転された元画像のうち、前記第2の位置検出手段により検出された位置と略同じ位置にある前記記録領域に基づいて前記光学的情報を読取ることを特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれか1つに記載の光学的情報読取装置。
【請求項1】
光学的情報が記録された記録領域を含む領域を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段から出力された元画像をフィルタ処理する画像処理手段と、
前記画像処理手段により前記フィルタ処理された処理画像の中から、前記記録領域の処理画像と推定される特定の処理画像の位置を検出する第1の位置検出手段と、
前記第1の位置検出手段により検出された位置の前記元画像における位置を検出する第2の位置検出手段と、
前記元画像のうち、前記第2の位置検出手段により検出された位置と略同じ位置にある前記記録領域に基づいて前記光学的情報を読取る読取手段と、
を備えることを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項2】
前記フィルタ処理は、
少なくとも前記光学的情報を塗り潰すことで所定形状の塊にする処理であることを特徴とする請求項1に記載の光学的情報読取装置。
【請求項3】
前記第1の位置検出手段は、
前記フィルタ処理された処理画像の中から、周縁形状が前記所定形状を呈する領域の位置を検出することを特徴とする請求項2に記載の光学的情報読取装置。
【請求項4】
前記第1の位置検出手段は、
前記フィルタ処理された処理画像を微分することにより、前記処理画像の周縁形状を検出し、その検出した周縁形状の中から、前記所定形状を呈する領域の位置を検出することを特徴とする請求項3に記載の光学的情報読取装置。
【請求項5】
前記第1の位置検出手段は、
前記フィルタ処理された処理画像と学習データとを比較することにより、周縁形状が前記所定形状を呈する領域の位置を検出することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の光学的情報読取装置。
【請求項6】
前記所定形状に対応した周縁形状を有する画像が学習データとして記憶された学習データ記憶手段を備えており、
前記第1の位置検出手段は、
前記フィルタ処理された処理画像と、前記学習データ記憶手段に記憶されている学習データとをテンプレートマッチングすることにより、周縁形状が前記所定形状を呈する領域の位置を検出することを特徴とする請求項5に記載の光学的情報読取装置。
【請求項7】
前記所定形状に対応した周縁形状を有する画像が学習データとして記憶された学習データ記憶手段を備えており、
前記第1の位置検出手段は、
前記フィルタ処理された処理画像と、前記学習データ記憶手段に記憶されている学習データとを固有空間法に基いて比較することにより、周縁形状が前記所定形状を呈する領域の位置を検出することを特徴とする請求項5に記載の光学的情報読取装置。
【請求項8】
前記所定形状は、矩形であることを特徴とする請求項2ないし請求項7のいずれか1つに記載の光学的情報読取装置。
【請求項9】
前記矩形は、1辺に2つの分岐を有し、かつ、4つの辺で閉ループを構成してなる形状であることを特徴とする請求項8に記載の光学的情報読取装置。
【請求項10】
前記読取手段は、
前記元画像のうち、前記第2の位置検出手段により検出された位置と略同じ位置にある前記記録領域に対して、直交する少なくとも2方向を走査した結果に基づいて前記光学的情報の種類を判定し、その判定結果に基づいて前記光学的情報を読取ることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1つに記載の光学的情報読取装置。
【請求項11】
前記読取手段は、
前記元画像のうち、前記第2の位置検出手段により検出された位置と略同じ位置にある前記記録領域の周縁形状が略正方形である場合は、2次元コードに限定して前記光学的情報を読取ることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1つに記載の光学的情報読取装置。
【請求項12】
前記読取手段は、
前記元画像のうち、前記第2の位置検出手段により検出された位置と略同じ位置にある前記記録領域の周縁形状が略長方形である場合は、長方形の2次元コードおよび1次元コードに限定して前記光学的情報を読取ることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1つに記載の光学的情報読取装置。
【請求項13】
前記画像処理手段は、
前記撮像手段から出力された元画像を所定の領域単位でフィルタ処理することを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか1つに記載の光学的情報読取装置。
【請求項14】
前記画像処理手段は、
前記元画像と、前記フィルタ処理された処理画像とをそれぞれ所定の領域単位で略同時に前記読取手段へ送出することを特徴とする請求項13に記載の光学的情報読取装置。
【請求項15】
前記光学的情報は暗色で記録されており、
前記フィルタ処理は収縮処理であることを特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれか1つに記載の光学的情報読取装置。
【請求項16】
前記光学的情報は明色で記録されており、
前記撮像手段から出力された元画像の明暗を反転する明暗反転手段を備えており、
前記画像処理手段は、前記明暗反転手段により明暗の反転された元画像を収縮処理し、
前記読取手段は、前記明暗反転手段により明暗の反転された元画像のうち、前記第2の位置検出手段により検出された位置と略同じ位置にある前記記録領域に基づいて前記光学的情報を読取ることを特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれか1つに記載の光学的情報読取装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−250408(P2010−250408A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96745(P2009−96745)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】
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