説明

光学積層体、偏光板及び画像表示装置

【課題】高温低湿度環境下に置かれた場合であっても、優れた帯電防止性能を維持でき、極めて優れた耐熱性を有する光学積層体を提供する。
【解決手段】光透過性基材上に、ハードコート層を有する光学積層体であって、上記ハードコート層は、第4級アンモニウム塩と半極性構造を有する化合物とを含有し、上記ハードコート層における、上記半極性構造を有する化合物の含有量が0.1〜5質量%であり、上記第4級アンモニウム塩と半極性構造を有する化合物との合計含有量が1〜20質量%であり、更に、上記第4級アンモニウム塩と前記半極性構造を有する化合物との合計100質量%中、上記半極性構造を有する化合物の含有割合が、1質量%以上、35質量%未満であることを特徴とする光学積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体、偏光板及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等の画像表示装置の最表面には、反射防止性、ハード性や透明性等の種々の機能を有する機能層からなる光学積層体が設けられている。
これらの機能層の基材としては、透明性や硬度性に優れるアクリル樹脂等が使用されている。しかし、このような機能層の基材は、絶縁特性が高いため帯電しやすく、埃等の付着による汚れが生じ、使用する場合のみならずディスプレイ製造工程においても、帯電してしまうことにより障害が発生するといった問題があった。
【0003】
このような帯電を防止するために、光学積層体の一部に導電性の帯電防止剤を含有した帯電防止層を設けることが従来から行われている(例えば、特許文献1、2参照)。
帯電防止剤に添加する帯電防止剤の帯電防止機能を発現するタイプとしては、従来、電子がソリトンやポーラロンといったキャリアを介して移動する電子伝導タイプと、イオン自体が系内を移動するイオン伝導タイプの2種類に分類される。
電子伝導タイプの帯電防止剤としては、例えば、各種金属酸化物や導電性ポリマー等が知られており、一方、イオン伝導タイプの帯電防止剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩や、リチウム塩等が知られている。
なかでも、帯電防止層に添加する帯電防止剤としては、カチオン界面活性剤である第4級アンモニウム塩が好ましく用いられていた。
【0004】
ところで、近年、光学積層体には極めて高度な耐熱性が要求されるようになってきている。しかしながら、帯電防止剤として第4級アンモニウム塩を用いてなる帯電防止層を供えた光学積層体は、高温低湿度環境下に長時間置かれると帯電防止層の帯電防止機能が低下してしまうという問題があった。特に、帯電防止剤として第4級アンモニウム塩を用いてなる帯電防止層を供えた光学積層体を設けたVA方式の液晶表示ディスプレイを、高温低湿度環境下に長時間置いた直後に表面を指で擦る、あるいは高温低湿度環境下にて、表面を擦ると、ディスプレイ表面が帯電し、黒表示状態で液晶が垂直配向に戻り難くなり、指で擦った箇所が白く残り、視認性が悪化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−126808号公報
【特許文献2】特開2005−31282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みて、高温低湿度環境下に置かれた場合であっても、優れた帯電防止性能を維持でき、極めて優れた耐熱性を有する光学積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光透過性基材上に、ハードコート層を有する光学積層体であって、上記ハードコート層は、第4級アンモニウム塩と半極性構造を有する化合物とを含有し、上記ハードコート層における、上記半極性構造を有する化合物の含有量が0.1〜5質量%であり、上記第4級アンモニウム塩と半極性構造を有する化合物との合計含有量が1〜20質量%であり、更に、前記第4級アンモニウム塩と前記半極性構造を有する化合物との合計100質量%中、前記半極性構造を有する化合物の含有割合が、1質量%以上、35質量%未満であるすることを特徴とする光学積層体である。
【0008】
上記半極性構造を有する化合物は、有機ホウ素化合物であることが好ましい。
また、上記半極性構造を有する化合物は、下記化学式(1)〜(3)で表される群から選択される構造を有する少なくと1種であることが好ましい。
【0009】
【化1】

化学式(1)中、pは、5〜2000である。
【0010】
【化2】

化学式(2)中、qは0又は1〜20であり、q=1〜20のとき、Aは、−(X)a−(Y)b−(Z)c−基を表す。X及びZは、それぞれ少なくとも1個の末端エーテル残基を有する炭素原子数100以下の含酸素炭化水素基を表し、Yは、−O−CO−R−CO−基(但し、Rは、炭素原子数1〜82の炭化水素基を表す)、又は、−O−CO−NH−R’−NHCO−基(但し、R’は、炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す)を表す。a、b及びcは、それぞれ0又は1である。rは、0又は1である。pは、5〜2000である。
【0011】
【化3】

化学式(3)中、qは0又は1であり、q=1のとき、Bは、−(X)l−(Y)m−(Z)n−基を表す。X及びZは、それぞれ1個の末端エーテル残基を有する炭素原子数の合計が200以下の含酸素炭化水素基を表し、Yは、−O−CO−R−CO−(但し、Rは、炭素原子数1〜82の炭化水素基を表す)、又は、−O−CO−NH−R’−NHCO−(但し、R’は、炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す)を表す。また、l、m及びnは、それぞれ独立して0又は1である。R及びRは、それぞれ水素原子又は炭素原子数15以下の置換基である。m及びnはそれぞれ1〜3の整数であり、m及びnが各々2以上のとき、R及びRは、各々同じでも異なっていてもよい。pは5〜2000である。
【0012】
また、上記第4級アンモニウム塩は、重量平均分子量が1000〜5万の分子中に光反応性不飽和結合を有する化合物であることが好ましい。
また、本発明の光学積層体は、高温低湿度環境下に置かれる前において、温度23℃、湿度50%RHの条件における表面抵抗率が5×1010Ω/□以下、かつ、飽和帯電圧が0.5kV以下であることが好ましい。
また、本発明の光学積層体は、高温低湿度環境下で24時間放置後、該高温低湿度環境から取り出し、1分以内に温度23〜24℃、湿度50%RH以下の条件の下で、表面抵抗率が1×1011Ω/□以下、かつ、飽和帯電圧が0.8kV以下であることが好ましい。
また、本発明の光学積層体は、温度30℃以上、湿度30%RH以下の条件における表面抵抗率が1×1011Ω/□以下、飽和帯電圧が0.8kV以下であることが好ましい。
【0013】
本発明はまた、偏光素子を備えてなる偏光板であって、上記偏光板は、偏光素子表面に上述の光学積層体を備えることを特徴とする偏光板でもある。
本発明はまた、最表面に上述の光学積層体、又は、上述の偏光板を備えることを特徴とする画像表示装置でもある。
以下に、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明では、特別な記載がない限り、モノマー、オリゴマー、プレポリマー等の硬化性樹脂前駆体を、“樹脂”と記載する。
【0014】
本発明者らは、従来の帯電防止剤として第4級アンモニウム塩を用いてなる帯電防止層を備えた光学積層体について鋭意検討した結果、第4級アンモニウム塩は、帯電防止機能を発現させるためにはその周囲に水の存在が不可欠であり、光学積層体が高温低湿度環境下に置かれると、第4級アンモニウム塩の周囲の水分量が減り、その結果、第4級アンモニウム塩の帯電防止機能が低下していることを見出した。そこで、更に鋭意検討した結果、第4級アンモニウム塩に加えて、更に半極性材料を添加することで、光学積層体の耐熱性が飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
本明細書において、「耐熱性」とは、光学積層体を高温低湿度環境下に置いた場合であっても、後述するような優れた表面抵抗率及び飽和帯電圧を維持する性能を意味する。
【0015】
本発明の光学積層体は、光透過性基材上に、ハードコート層を有する。
上記ハードコート層は、第4級アンモニウム塩と半極性構造を有する化合物とを含有する。これらの化合物は、帯電防止剤として機能するものであり、本発明の光学積層体は、2種類の帯電防止剤をハードコート層に含有することで、温度に影響されず高温低湿度環境下に長時間置かれた場合であっても安定な帯電防止性能を発揮することができる。
なお、以下の説明において、第4級アンモニウム塩と半極性構造を有する化合物とをまとめて「帯電防止剤」ともいう。
【0016】
上記半極性構造を有する化合物としては、その構造中に半極性結合を有する化合物であれば特に限定されないが、なかでも有機ホウ素化合物が好適に用いられる。
【0017】
上記有機ホウ素化合物としては、例えば、ポリエーテル、ポリアルデヒド又はポリケトンとホウ素とのイオン結合体であることが好ましい。
具体的には、例えば、上記化学式(1)〜(3)で表される群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0018】
このような有機ホウ素化合物としては、市販品を用いることができ、具体的には、例えば、ハイボロンシリーズ(ボロンインターナショナル社製)等が挙げられる。
【0019】
本発明の光学積層体において、上記半極性構造を有する化合物は、オリゴマー又はポリマーであることが好ましく、重量平均分子量が1000〜10万であることが好ましい。1000未満であると、第4級アンモニウム塩と有機ホウ素化合物とが反応して電荷移動型錯体となりやすく、該電荷移動錯体は、上記ハードコート層を形成する際に用いるハードコート層用組成物への溶解性が悪く、該ハードコート層用組成物が白化したり、場合によっては、沈降したりすることがある。また、例えば、上記ハードコート層用組成物を後述する活性エネルギー線照射により硬化させた後に光学積層体とした場合、耐薬品性が悪く有機ホウ素化合物自体が脱落してしまう恐れがある。一方、10万を超えると、上記ハードコート層用組成物の粘度が上昇し塗工性の悪化が起こる。また、上記ハードコート層用組成物が後述する電離放射線硬化型樹脂を含有する場合、該電離放射線硬化型樹脂との溶解性が悪くなるだけでなく、溶剤への溶解性も悪化するので好ましくない。
上記重量平均分子量のより好ましい下限は2000、より好ましい上限は5万である。
【0020】
上記第4級アンモニウム塩は、オリゴマー又はポリマーであることが好ましく、重量平均分子量が1000〜5万であることが好ましい。1000未満であると、充分な帯電防止性能を発揮できないことがあり、5万を超えると、上記ハードコート層を形成する際に用いるハードコート層用組成物の粘度が高くなり塗工性が悪化することがある。上記重量平均分子量のより好ましい下限は1500であり、より好ましい上限は3万である。
【0021】
なお、上記4級アンモニウム塩の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算により求めることができる。GPC移動相の溶剤には、テトラヒドロフランやクロロホルムを使用することができる。測定用カラムは、テトラヒドロフラン用又はクロロホルム用のカラムの市販品カラムを組み合わせて使用するとよい。上記市販品カラムとしては、例えば、Shodex GPC KF−801、GPC KF−802、GPC KF−803、GPC KF−804、GPC KF−805 GPC−KF800D(いずれも、商品名、昭和電工社製)等を挙げることができる。検出器には、RI(示差屈折率)検出器及びUV検出器を使用するとよい。このような溶剤、カラム、検出器を使用して、例えば、Shodex GPC−101(昭和電工社製)等のGPCシステムにより、上記重量平均分子量を適宜測定することができる。
【0022】
上記4級アンモニウム塩は、光反応性不飽和結合を有する化合物であることが好ましい。上記光反応性不飽和結合を有することにより、形成するハードコート層を高硬度とすることが可能となる。上記光反応性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル基を有する化合物等が挙げられる。
【0023】
上記4級アンモニウム塩としては市販品を用いることもできる。上記4級アンモニウム塩の市販品としては、例えば、ユピマーH6100、H6100M、H0600X、H0635X、H6500(商品名、三菱化学社製)、UVASHD01、NJ90201AS(日本化成社製)、Z833(商品名、アイカ工業社製)、LAS1211(商品名、東洋インキ社製)、ユニレジンAS−10/M、ユニレジンAS−12/M、ユニレジンAS−15/M、ユニレジンASH26(商品名、新中村化学社製)等が挙げられる。
【0024】
上記ハードコート層において、上記帯電防止剤(第4級アンモニウム塩及び半極性構造を有する化合物)の含有量としては、1〜20質量%である。1質量%未満であると、所望の帯電防止性能が得られない。20質量%を超えると、ハードコート層の透明性が低下し本発明の光学積層体のヘイズが上昇して光透過性が低下し、また、硬度の低下が生じてしまう。また、帯電防止性能自体の良化は見られなくなってコスト高となり、上記ハードコート層の上に別層(例えば、別のハードコート層、防汚層、低屈折層、高屈折率層、帯電防止層、防眩層等)を積層する場合、これらの層と上記ハードコート層との密着性が悪化してしまう。更に、上記帯電防止剤の含有量が20質量%を超えると、該ハードコート層を形成するための後述するハードコート層用組成物の段階で吸湿しやすくなり、製造する光学積層体のヘイズが悪化してしまう。
上記帯電防止剤の含有量の好ましい下限は、5質量%、好ましい上限は16質量%である。
【0025】
また、上記ハードコート層における半極性構造を有する化合物の含有量としては、0.1〜5質量%である。0.1質量%未満であると、本発明の光学積層体の耐熱性が不充分となり、5質量%を超えると、硬度の低下が起こる。また、帯電防止性能自体の良化は見られなくなりコスト高となり、上記ハードコート層の上に別層(例えば、別のハードコート層、防汚層、低屈折層、高屈折率層、帯電防止層、防眩層等)を積層する場合、密着性が悪化してしまう。更に、上記半極性構造を有する化合物の含有量が10質量%を超える場合、該半極性構造を有する化合物と、第4級アンモニウム塩との化学反応又は物理吸着が起こり、複合体(コンプレックス)が形成され、得られる光学積層体の透過率、ヘイズが悪化してしまう。また、上記複合体(コンプレックス)が異物の原因となり品質の悪化も起こる。
更に、上記半極性構造を有する化合物は、後述するハードコート層用組成物に含まれる溶剤及び樹脂(バインダー)に対する溶解性が悪いものである。このため、上記半極性構造を有する化合物の含有量が5質量%を超えると、上記ハードコート層用組成物中に半極性構造を有する化合物の未溶解分が生じ、得られる光学積層体の異物の原因となることからも好ましくはない。
上記半極性構造を有する化合物の含有量の好ましい下限は0.5質量%、好ましい上限は3質量%である。
【0026】
本発明の光学積層体においては、上記半極性構造を有する化合物は、上記第4級アンモニウム塩の性能面で欠けている部分(低湿度環境下での帯電防止性能)を補助するという役割も果たしている。
このような理由より、本発明の光学積層体では、上記ハードコート層における、上記第4級アンモニウム塩と上記半極性構造を有する化合物との合計100質量%中、上記半極性構造を有する化合物の含有割合が、1質量%以上、35質量%未満となる。1質量%未満であると、上述の第4級アンモニウム塩の性能面で欠けている部分を補助するという役割を充分に果たすことができず、35質量%以上であると、本発明の光学積層体の帯電防止性能が不充分となる。上記半極性構造を有する化合物は、上記第4級アンモニウム塩との合計100質量%中、2〜25質量%であることが好ましい。
【0027】
なお、本発明の光学積層体において、上記半極性構造を有する化合物及び第4級アンモニウム塩は、いずれも上述したオリゴマー又はポリマーであると互いに反応し難く、上記電荷移動型錯体を形成し難くなるが、更に、オリゴマー又はポリマーである半極性構造を有する化合物及び第4級アンモニウム塩の含有量が、上述した各関係をいずれも満たすものであると、上記電荷移動型錯体の形成をより好適に防止することができるため、好ましい。
【0028】
上記ハードコート層は、上述した第4級アンモニウム塩と半極性構造を有する化合物とを含有するハードコート層用組成物を用いることで形成することができる。
上記ハードコート層用組成物は、形成するハードコート層が透明性を有する限り特に限定されないが、更に樹脂を含有することが好ましい。
【0029】
上記樹脂としては特に限定されず、例えば、紫外線若しくは電子線により硬化する樹脂である電離放射線硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂と溶剤乾燥型樹脂(塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂)との混合物、又は、熱硬化型樹脂の三種類が挙げられ、好ましくは電離放射線硬化型樹脂が挙げられる。また、本発明の好ましい態様によれば、電離放射線硬化型樹脂と熱硬化型樹脂とを少なくとも含んでなる樹脂を用いることができる。
【0030】
上記電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、アクリレート系の官能基を有する化合物等の1又は2以上の不飽和結合を有する化合物を挙げることができる。1の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等を挙げることができる。2以上の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能化合物と(メタ)アルリレート等の反応生成物(例えば多価アルコールのポリ(メタ)アクリレートエステル)、等を挙げることができる。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及びアクリレートを指すものである。
【0031】
上記化合物のほかに、不飽和二重結合を有する比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も上記電離放射線硬化型樹脂として使用することができる。
【0032】
電離放射線硬化型樹脂を紫外線硬化型樹脂として使用する場合には、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミノキシムエステル、チオキサントン類、プロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、アシルホスフィンオキシド類が挙げられる。また、光増感剤を混合して用いることが好ましく、その具体例としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等が挙げられる。
【0033】
光重合開始剤としては、ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等を単独又は混合して用いることが好ましい。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤として、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独又は混合物として用いることが好ましい。光重合開始剤の添加量は、電離放射線硬化性組成物100質量部に対し、0.1〜10質量部であることが好ましい。
【0034】
電離放射線硬化型樹脂に混合して使用される溶剤乾燥型樹脂としては、主として熱可塑性樹脂が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂としては一般的に例示されるものが利用される。上記溶剤乾燥型樹脂の添加により、塗布面の塗膜欠陥を有効に防止することができる。好ましい熱可塑性樹脂の具体例としては、上記熱可塑性樹脂は、一般的に例示されるものが利用される。
上記溶剤乾燥型樹脂の添加により、塗布面の塗膜欠陥を有効に防止することができる。
好ましい熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂、及び、ゴム又はエラストマー等が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂としては、通常、非結晶性であり、かつ有機溶剤(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶剤)に可溶な樹脂を使用することが好ましい。特に、成形性又は製膜性、透明性や耐候性の高い樹脂、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
【0035】
本発明の好ましい態様によれば、光透過性基材の材料がトリアセチルセルロース「TAC」等のセルロース系樹脂の場合、熱可塑性樹脂の好ましい具体例として、セルロース系樹脂、例えば、ニトロセルロース、アセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、エチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。セルロース系樹脂を用いることにより、光透過性基材とハードコート層との密着性及び透明性を向上させることができる。
【0036】
上記樹脂として使用できる熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラニン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。熱硬化性樹脂を用いる場合、必要に応じて、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤等を併用して使用することもできる。
【0037】
本発明の光学積層体における上記ハードコート層は、上述の帯電防止剤、樹脂及び必要に応じて添加剤(例えば、重合開始剤、防眩剤、防汚剤、レベリング剤等)を溶剤に溶解又は分散してなる溶液又は分散液を、ハードコート層用組成物として用い、上記組成物による塗膜を形成し、上記塗膜を硬化させることにより得ることができる。
上記溶剤としては、樹脂の種類及び溶解性に応じて選択し使用することができ、少なくとも固形分(複数のポリマー及び硬化性樹脂前駆体、反応開始剤、その他添加剤)を均一に溶解できる溶媒であればよい。そのような溶剤としては、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、水、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)等が例示でき、これらの混合溶媒であってもよい。
【0038】
上記ハードコート層用組成物は、光透過性基材に対して浸透性のある浸透性溶剤を含有することが好ましい。本発明において、浸透性溶剤の「浸透性」とは、光透過性基材に対する浸透性、膨潤性、湿潤性等のすべての概念を包含する意である。このような浸透性溶剤が光透過性基材を膨潤、湿潤することによって、ハードコート層用組成物の一部が光透過性基材まで浸透する挙動をとる。これによって、高い強度を得ることができる。更に、ハードコート層用組成物に含まれる帯電防止剤がハードコート層中において凝集せずに、充分な分散状態で存在することができ、優れた帯電防止性能を維持することができるものである。
【0039】
更に、上記溶剤は、ハードコート層中の樹脂が光透過性基材に対して密着性を有するか否かに応じて決定することができる。
例えば、上記樹脂が光透過性基材に対して密着性がない場合は、光透過性基材に対して浸透性を持つ溶剤を使用することが好ましい。例えば、光透過性基材がTACである場合、浸透性溶剤の具体例としては、ケトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、エステル類;蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、含窒素化合物;ニトロメタン、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、グリコール類;メチルグリコール、メチルグリコールアセテート、エーテル類;テトラヒドロフラン、1,4―ジオキサン、ジオキソラン、ジイソプロピルエーテル、ハロゲン化炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロルエタン、グリコールエーテル類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート、その他、ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレンが挙げられ、またはこれらの混合物が挙げられ、好ましくはエステル類、ケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン等が挙げられる。その他、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール等のアルコール類や、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類も、上記浸透性溶剤と混合して用いることができる。
また、ハードコート層用組成物中において、上記浸透性溶剤は、溶剤全量中10〜100質量%、特に50〜100質量%となることが望ましい。
【0040】
上記ハードコート層用組成物中における原料の含有割合(固形分)として特に限定されないが、通常は5〜70質量%、特に25〜60質量%とすることが好ましい。
上記ハードコート層用組成物には、ハードコート層の硬度を高くする、硬化収縮を抑える、屈折率を制御する、防眩性を付与する等の目的に応じて、樹脂、分散剤、界面活性剤、上述した帯電防止剤とは別のその他の公知の帯電防止剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、易滑剤等を添加していてもよい。
【0041】
上記ハードコート層用組成物の調製方法としては各成分を均一に混合できれば特に限定されず、例えば、ペイントシェーカー、ビーズミル、ニーダー、ミキサー等の公知の装置を使用して行うことができる。
【0042】
上記ハードコート層を形成する工程は、具体的には、上記ハードコート層用組成物を光透過性基材上に塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を硬化することによって行われる。
上記塗布の方法としては特に限定されず、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ピードコーター法等の公知の方法を挙げることができる。
【0043】
上記塗膜の硬化としては特に限定されないが、必要に応じて乾燥し、そして加熱、活性エネルギー線照射等により硬化させて形成することが好ましい。
【0044】
ハードコート層の膜厚(硬化時)は0.1〜100μm、好ましくは0.8〜20μmの範囲である。上記ハードコート層の膜厚は、断面を電子顕微鏡(SEM、TEM、STEM)で観察し、測定した値である。
【0045】
上記活性エネルギー線照射としては、紫外線又は電子線による照射が挙げられる。上記紫外線源の具体例としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等の光源が挙げられる。また、紫外線の波長としては、190〜380nmの波長域を使用することができる。電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。
【0046】
本発明の光学積層体は光透過性基材を有する。
上記光透過性基材としては、平滑性、耐熱性を備え、機械的強度に優れたものが好ましい。
光透過性基材は、平滑性、耐熱性を備え、機械的強度とに優れたものが好ましい。光透過性基材を形成する材料の具体例としては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、又は、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂が挙げられ、好ましくはポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、セルローストリアセテートが挙げられる。
【0047】
上記光透過性基材は、上記熱可塑性樹脂を柔軟性に富んだフィルム状体として使用することが好ましいが、硬化性が要求される使用態様に応じて、これら熱可塑性樹脂の板を使用することも可能であり、又は、ガラス板の板状体のものを使用してもよい。
【0048】
その他、上記光透過性基材としては、脂環構造を有した非晶質オレフィンポリマー(Cyclo−Olefin−Polymer:COP)フィルムも挙げられる。これは、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体等が用いられる基材で、例えば、日本ゼオン(株)製のゼオネックスやゼオノア(ノルボルネン系樹脂)、住友ベークライト(株)製のスミライトFS−1700、JSR(株)製 アートン(変性ノルボルネン系樹脂)、三井化学(株)製 のアペル(環状オレフィン共重合体)、Ticona社製のTopas(環状オレフィン共重合体)、日立化成(株)製のオプトレッツOZ−1000シリーズ(脂環式アクリル樹脂)等が挙げられる。
また、トリアセチルセルロースの代替基材として旭化成ケミカルズ(株)製のFVシリーズ(低複屈折率、低光弾性率フィルム)も好ましい。
【0049】
上記光透過性基材の厚さとしては、20〜300μmであることが好ましく、より好ましくは上限が200μmであり、下限が30μmである。上記光透過性基材が板状体の場合には、これらの厚さを超える厚さであってもよい。
上記光透過性基材は、その上に上述したハードコート層等を形成するのに際して、接着性向上のために、コロナ放電処理、酸化処理等の物理的な処理のほか、アンカー剤若しくはプライマーと呼ばれる塗料の塗布を予め行ってもよい。
【0050】
本発明の光学積層体は、ハードコート層が上述のような第4級アンモニウム塩と半極性構造を有する化合物とを含有するため、極めて耐熱性が優れたものとなり、高温低湿度環境下に長時間、具体的には、70℃、湿度12〜13%RHの環境下に96時間置いた後においても、好適な帯電防止性能を維持することができる。
【0051】
本発明の光学積層体は、また、光透過性等が損なわれない範囲内で、必要に応じて他の層(防眩層、低屈折率層、防汚層、接着剤層、他のハードコート層等)の1層又は2層以上を適宜形成することができる。なかでも、防眩層、低屈折率層及び防汚層のうち少なくとも一層を有することが好ましい。これらの層は、公知の反射防止用積層体と同様のものを採用することもできる。また、このような他の層を形成することで、本発明の光学積層体の製造過程でけん化処理(アルカリ浸漬)をした場合に、上記ハードコート層の帯電防止性能が低下することを防止することもできる。
【0052】
具体的には、例えば、上記光透過性基材の上に、防眩層及びハードコート層をこの順に形成してなる構造が挙げられる。
以下、任意の層について説明する。
【0053】
防眩層
上記防眩層は、例えば、上記光透過性基材とハードコート層又は低屈折率層(後記)との間に形成されて良い。上記防眩層は、樹脂及び防眩剤を含む防眩層用組成物から形成されて良い。
【0054】
上記樹脂としては特に限定されず、例えば、上述したハードコート層用組成物における樹脂から適宜選択して使用することができる。
【0055】
上記防眩剤としては特に限定されず、公知の無機系又は有機系の各種微粒子を用いることができる。
上記微粒子の平均粒径としては特に限定されないが、一般的には、0.01〜20μm程度とすれば良い。
また、上記微粒子の形状は、真球状、楕円状等のいずれであっても良く、好ましくは真球状のものが挙げられる。
【0056】
上記微粒子は、防眩性を発揮するものであり、好ましくは透明性の微粒子である。このような微粒子の具体例としては、無機系であれば、例えば、シリカビーズ、有機系であれば、例えば、プラスチックビーズが挙げられる。
上記プラスチックビーズの具体例としては、例えば、スチレンビーズ(屈折率1.60)、メラミンビーズ(屈折率1.57)、アクリルビーズ(屈折率1.49)、アクリル−スチレンビーズ(屈折率1.54)、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ等が挙げられる。
【0057】
上記防眩層の乾燥膜厚(硬化時)は、一般的には0.1〜100μm程度、特に0.8〜10μmの範囲とすることが好ましい。膜厚がこの範囲にあることにより、防眩層としての機能を充分に発揮することができる。
【0058】
上記防眩層の膜厚は、以下の方法により測定することができる。
共焦点レーザー顕微鏡(LeicaTCS−NT:ライカ社製:倍率「300〜1000倍」)にて、光学積層体の断面を透過観察し、界面の有無を判断し下記の測定基準により測定することができる。具体的には、ハレーションのない鮮明な画像を得るため、共焦点レーザー顕微鏡に、湿式の対物レンズを使用し、かつ、光学積層体の上に屈折率1.518のオイルを約2ml乗せて観察し判断する。オイルの使用は、対物レンズと光学積層体との間の空気層を消失させるために用いる。
測定手順
1:レーザー顕微鏡観察により平均層厚を測定した。
2:測定条件は、上記の通りであった。
3:1画面につき 凹凸の最大凸部、最小凹部の基材からの層厚を1点ずつ計2点測定し、それを5画面分、計10点測定し、平均値を算出し、これを、防眩層の膜厚とする。このレーザー顕微鏡は、各層に屈折率差があることによって非破壊断面観察をすることができる。また、各層の組成の違いで観察できるSEM及びTEM断面写真の観察を用いて、5画面分の観察を行うことで同様に求めることができる。
【0059】
低屈折率層
上記低屈折率層は、外部からの光(例えば蛍光灯、自然光等)が本発明の光学積層体の表面にて反射する際、その反射率を低くするという役割を果たす層である。これらの低屈折率層は、その屈折率が1.45以下、特に1.42以下であることが好ましい。
また、低屈折率層の乾燥厚みは限定されないが、通常は30nm〜1μm程度の範囲内から適宜設定すれば良い。
【0060】
上記低屈折率層としては、好ましくは(1)シリカ又はフッ化マグネシウムを含有する樹脂、(2)低屈折率樹脂であるフッ素系樹脂、(3)シリカ又はフッ化マグネシウムを含有するフッ素系樹脂、(4)シリカ又はフッ化マグネシウムの薄膜等のいずれかにより構成される。
上記フッ素系樹脂以外の樹脂については、上記ハードコート層用組成物を構成する樹脂と同様の樹脂を用いることができる。
【0061】
上記フッ素系樹脂としては、少なくとも分子中にフッ素原子を含む重合性化合物又はその重合体を用いることができる。
上記重合性化合物としては特に限定されず、例えば、電離放射線硬化性基、熱硬化性極性基等の硬化反応性基を有するものが好ましい。また、これらの反応性基を同時に併せ持つ化合物でもよい。この重合性化合物に対し、上記重合体とは、上記のような反応性基等を一切もたないものである。
【0062】
上記電離放射線硬化性基を有する重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有するフッ素含有モノマーを広く用いることができる。より具体的には、フルオロオレフィン類(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロブタジエン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)が挙げられる。また、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するものとして、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、α−トリフルオロメタクリル酸メチル、α−トリフルオロメタクリル酸エチルのような、含フッ素(メタ)アクリレート化合物;分子中に、フッ素原子を少なくとも3個持つ炭素数1〜14のフルオロアルキル基、フルオロシクロアルキル基又はフルオロアルキレン基と、少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル化合物等も挙げられる。
【0063】
上記熱硬化性極性基として好ましいものとしては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基等の水素結合形成基が挙げられる。これらは、塗膜との密着性だけでなく、シリカ等の無機超微粒子との親和性にも優れている。
上記熱硬化性極性基を持つ重合性化合物としては、例えば、4−フルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体;フルオロエチレン−炭化水素系ビニルエーテル共重合体;エポキシ、ポリウレタン、セルロース、フェノール、ポリイミド等の各樹脂のフッ素変性品等が挙げられる。
【0064】
上記電離放射線硬化性基と熱硬化性極性基とを併せ持つ重合性化合物としては、例えば、アクリル又はメタクリル酸の部分及び完全フッ素化アルキル、アルケニル、アリールエステル類、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類、完全又は部分フッ素化ビニルエステル類、完全または部分フッ素化ビニルケトン類等が挙げられる。
【0065】
また、フッ素系樹脂としては、例えば、上記電離放射線硬化性基を有する重合性化合物の含フッ素(メタ)アクリレート化合物を少なくとも1種類含むモノマー又はモノマー混合物の重合体;上記含フッ素(メタ)アクリレート化合物の少なくとも1種類と、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートの如き分子中にフッ素原子を含まない(メタ)アクリレート化合物との共重合体;フルオロエチレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン、1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンのような含フッ素モノマーの単独重合体又は共重合体等も挙げられる。
これらの共重合体にシリコーン成分を含有させたシリコーン含有フッ化ビニリデン共重合体も使うこともできる。
【0066】
上記シリコーン成分としては特に限定されず、例えば、(ポリ)ジメチルシロキサン、(ポリ)ジエチルシロキサン、(ポリ)ジフェニルシロキサン、(ポリ)メチルフェニルシロキサン、アルキル変性(ポリ)ジメチルシロキサン、アゾ基含有(ポリ)ジメチルシロキサン、ジメチルシリコーン、フェニルメチルシリコーン、アルキル・アラルキル変性シリコーン、フルオロシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、脂肪酸エステル変性シリコーン、メチル水素シリコーン、シラノール基含有シリコーン、アルコキシ基含有シリコーン、フェノール基含有シリコーン、メタクリル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボン酸変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。なかでも、ジメチルシロキサン構造を有するものが好ましい。
【0067】
上記ジメチルシロキサン構造としてより具体的には、例えば、末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン等のポリアルキル、ポリアルケニル、又は、ポリアリールシロキサンに各種架橋剤、例えば、テトラアセトキシシラン、テトラアルコキシシラン、テトラエチルメチルケトオキシムシラン、テトライソプロペニルシラン等の四官能シラン、更にはアルキル又はアルケニルトリアセトキシシラン、トリケトオキシムシラン、トリイソプロペニルシラントリアルコキシシラン等の3官能シラン等を添加混合したもの、場合によっては予め反応させたものが挙げられる。
【0068】
更には、以下のような化合物からなる非重合体又は重合体も、フッ素系樹脂として用いることができる。すなわち、分子中に少なくとも1個のイソシアナト基を有する含フッ素化合物と、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基のようなイソシアナト基と反応する官能基を分子中に少なくとも1個有する化合物とを反応させて得られる化合物;フッ素含有ポリエーテルポリオール、フッ素含有アルキルポリオール、フッ素含有ポリエステルポリオール、フッ素含有ε−カプロラクトン変性ポリオールのようなフッ素含有ポリオールと、イソシアナト基を有する化合物とを反応させて得られる化合物等を用いることができる。
【0069】
また、上記したフッ素原子を持つ重合性化合物や重合体とともに、ハードコート層用組成物に記載したような各樹脂成分を混合して使用することもできる。
更に、反応性基等を硬化させるための硬化剤、塗工性を向上させたり、防汚性を付与させたりするために、各種添加剤、溶剤を適宜使用することができる。
【0070】
上記低屈折率層の形成にあっては、例えば、原料成分を含む組成物(低屈折率層用組成物)を用いて形成することができる。より具体的には、原料成分(樹脂等)及び必要に応じて添加剤(例えば、後述の「空隙を有する微粒子」、重合開始剤、帯電防止剤、防眩剤等)を溶剤に溶解又は分散してなる溶液又は分散液を、低屈折率層用組成物として用い、上記組成物による塗膜を形成し、上記塗膜を硬化させることにより低屈折率層を得ることができる。なお、重合開始剤、帯電防止剤、防眩剤等の添加剤としては特に限定されず、公知のものが挙げられる。
【0071】
なかでも、上記低屈折率層用組成物としては、(1)空隙を有する微粒子、(2)2個以上の電離放射線硬化性基を有するフッ素含有モノマー、(3)3個以上の電離放射線硬化性基を有するフッ素原子不含多官能モノマー、の各成分を任意に組み合わせて含むことが好ましい。ただし、上記(1)成分と(2)成分との組み合わせのみ含む場合は、形成する低屈折率層の硬度が低くなってしまうため好ましくない。
また、上記(1)成分のみを含む場合、低屈折率層を形成すること自体が困難であり、上記(2)成分のみを含む場合、形成する低屈折率層の硬度が弱くなり、上記(3)成分のみを含む場合、屈折率が充分に低い低屈折率層を形成することができない。
なお、上記(1)成分としては、後述するものが挙げられ、上記(2)成分としては、上述したエチレン性不飽和結合を有するフッ素含有モノマーから電離放射線硬化性基を2個以上有するものが挙げられ、上記(3)成分としては、ハードコート層用組成物において説明した電離放射線硬化型樹脂から、電離放射線効果性基を3個以上有するものが挙げられる。また、上記低屈折率層用組成物は、必要に応じて、上記分子中にフッ素原子を含む重合性化合物の重合体(フッ素含有ポリマー)を更に含有していてもよい。
【0072】
上記低屈折率層においては、低屈折率剤として、「空隙を有する微粒子」を利用することが好ましい。「空隙を有する微粒子」は低屈折率層の層強度を保持しつつ、その屈折率を下げることができる。
本発明において、「空隙を有する微粒子」とは、微粒子の内部に気体が充填された構造及び/又は気体を含む多孔質構造体を形成し、微粒子本来の屈折率に比べて微粒子中の気体の占有率に反比例して屈折率が低下する微粒子を意味する。また、本発明にあっては、微粒子の形態、構造、凝集状態、被膜内部での微粒子の分散状態により、内部及び/又は表面の少なくとも一部にナノポーラス構造の形成が可能な微粒子も含まれる。この微粒子を使用した低屈折率層は、屈折率を1.30〜1.45に調節することが可能である。
【0073】
上記空隙を有する無機系の微粒子としては、例えば、特開2001−233611号公報に記載された方法によって調製されたシリカ微粒子を挙げることができる。また、特開平7−133105号公報、特開2002−79616号公報、特開2006−106714号公報等に記載された製法によって得られるシリカ微粒子であってよい。空隙を有するシリカ微粒子は製造が容易でそれ自身の硬度が高いため、バインダーと混合して低屈折率層を形成した際、その層強度が向上され、かつ、屈折率を1.20〜1.45程度の範囲内に調製することを可能とする。特に、空隙を有する有機系の微粒子の具体例としては、特開2002−80503号公報で開示されている技術を用いて調製した中空ポリマー微粒子が好ましく挙げられる。
【0074】
被膜の内部及び/又は表面の少なくとも一部にナノポーラス構造の形成が可能な微粒子としては先のシリカ微粒子に加え、比表面積を大きくすることを目的として製造され、充填用のカラム及び表面の多孔質部に各種化学物質を吸着させる除放材、触媒固定用に使用される多孔質微粒子又は断熱材や低誘電材に組み込むことを目的とする中空微粒子の分散体や凝集体も挙げられる。そのような具体例としては、市販品として日本シリカ工業株式会社製の商品名NipsilやNipgelの中から多孔質シリカ微粒子の集合体、日産化学工業(株)製のシリカ微粒子が鎖状に繋がった構造を有するコロイダルシリカUPシリーズ(商品名)から、本発明の好ましい粒子径の範囲内のものを利用することが可能である。
【0075】
「空隙を有する微粒子」の平均粒子径は、5〜300nmであり、好ましくは下限が8nm、上限が100nmであり、より好ましくは下限が10nm、上限が80nmである。空隙を有する微粒子の平均粒子径がこの範囲内にあることにより、低屈折率層に優れた透明性を付与することが可能となる。なお、上記平均粒子径は、動的光散乱法等によって測定した値である。「空隙を有する微粒子」は、上記低屈折率層中に樹脂100質量部に対して、通常0.1〜500質量部程度、好ましくは10〜200質量部程度とするのが好ましい。
【0076】
上記溶剤としては特に限定されず、例えば、ハードコート層用組成物で例示したものが挙げられ、好ましくは、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソプロピルアルコール(IPA)、n−ブタノール、t−ブタノール、ジエチルケトン、PGME等である。
【0077】
上記低屈折率層用組成物の調製方法は、成分を均一に混合できれば良く、公知の方法に従って実施すれば良い。例えば、ハードコート層の形成で上述した公知の装置を使用して混合することができる。
【0078】
上記塗膜の形成方法は、公知の方法に従えば良い。例えば、ハードコート層の形成で上述した各種方法を用いることができる。
【0079】
上記低屈折率層の形成においては、上記低屈折率層用組成物の粘度を好ましい塗布性が得られる0.5〜5cps(25℃)、好ましくは0.7〜3cps(25℃)の範囲のものとすることが好ましい。可視光線の優れた反射防止膜を実現でき、かつ、均一で塗布ムラのない薄膜を形成することができ、かつ基材に対する密着性に特に優れた低屈折率層を形成することができる。
【0080】
得られた塗膜の硬化方法は、組成物の内容等に応じて適宜選択すれば良い。例えば、紫外線硬化型であれば、塗膜に紫外線を照射することにより硬化させれば良い。硬化処理のために加熱手段が利用される場合には、加熱により、例えばラジカルを発生して重合性化合物の重合を開始させる熱重合開始剤が添加されることが好ましい。
【0081】
低屈折率層の膜厚(nm)dは、下記式(I):
=mλ/(4n) (I)
(上記式中、nは低屈折率層の屈折率を表し、mは正の奇数を表し、好ましくは1を表し、λは波長であり、好ましくは480〜580nmの範囲の値である)を満たすものが好ましい。
【0082】
防汚層
上記防汚層は、本発明の光学積層体の最表面に汚れ(指紋、水性又は油性のインキ類、鉛筆等)が付着しにくく、又は付着した場合でも容易に拭取ることができるという役割を担う層である。本発明の好ましい態様によれば、低屈折率層の最表面の汚れ防止を目的として防汚層を設けても良く、特に低屈折率層が形成された光透過性基材の一方の面と反対の両側に防汚層が設けることが好ましい。防汚層の形成により、本発明の光学積層体に対して防汚性と耐擦傷性の更なる改善を図ることが可能となる。低屈折率層がない場合でも、最表面の汚れ防止を目的として防汚層を設けても良い。
【0083】
上記防汚層は、一般的には、防汚染剤及び樹脂を含む組成物により形成することができる。
上記防汚染剤は、本発明の光学積層体の最表面の汚れ防止を主目的とするものであり、本発明の光学積層体に耐擦傷性を付与することもできる。
上記防汚染剤としては、例えば、フッ素系化合物、ケイ素系化合物、又は、これらの混合化合物が挙げられる。より具体的には、2−パーフロロオクチルエチルトリアミノシラン等のフロロアルキル基を有するシランカップリング剤等が挙げられ、特に、アミノ基を有するものが好ましくは使用することができる。
上記樹脂としては特に限定されず、上述のハードコート層用組成物で例示した樹脂が挙げられる。
【0084】
上記防汚層は、例えば、上述のハードコート層の上に形成することができる。特に、防汚層が最表面になるように形成することが好ましい。
上記防汚層は、例えばハードコート層自身に防汚性能を付与することにより代替することもできる。
【0085】
上述した構成の本発明の光学積層体は、高温低湿度環境下に置かれる前において(製造直後の初期値として)、温度23℃、湿度50%RHの条件における表面抵抗率が5×1010Ω/□以下、かつ、飽和帯電圧が0.5kV以下であることが好ましい。このような表面抵抗率及び飽和帯電圧を充足しない場合、本発明の光学積層体の耐熱性が不充分であり、高温低湿度環境下に置かれた後における帯電圧性能の維持ができなくなる。
ここで、本明細書における「高温低湿度環境」とは、温度70℃〜100℃、湿度5〜20%RHの環境を意味する。
【0086】
また、本発明の光学積層体は、高温低湿度環境下で24時間放置後、該高温低湿度環境から取り出し、1分以内に温度23〜24℃、湿度50%RHの条件下で、表面抵抗率が1×1011Ω/□以下、飽和帯電圧が0.8kV以下であることが好ましい。このような表面抵抗率及び飽和帯電圧を充足する本発明の光学積層体は、高温低湿度環境下に置かれた場合であっても、優れた帯電圧性能を維持し、極めてすぐた耐熱性を有するものである。
【0087】
更に、本発明の光学積層体は、温度30℃以上、湿度30%RH以下の条件における表面抵抗率が1×1011Ω/□以下、飽和帯電圧が0.8kV以下であることが好ましい。なお、上記温度及び湿度の条件は、上記高温低湿度環境下に置かれる前後のいずれであってもよい。このような表面抵抗率及び飽和帯電圧の条件を充足することで、本発明の光学積層体は、画像表示装置に適用した場合に、優れた耐熱性及び帯電圧性能を好適に維持することができることとなる。
【0088】
また、本発明の光学積層体は、全光線透過率が85%以上であることが好ましい。85%未満であると、本発明の光学積層体を画像表示装置の表面に装着した場合において、色再現性や視認性を損なうおそれがある。上記全光線透過率は、90%以上であることがより好ましく、98%以上であることが更に好ましい。
【0089】
また、本発明の光学積層体は、ヘイズが1%未満であることが好ましく、0.5%未満であることがより好ましい。また、防眩層を形成した場合のように、本発明の光学積層体に防眩性を付与した場合、上記ヘイズは、80%未満であることが好ましい。上記防眩層は、内部拡散によるヘイズ及び/又は最表面の凹凸形状によるヘイズからなってよく、内部拡散によるヘイズは、0.5%以上79%未満であることが好ましく、1%以上50%未満であることがより好ましい。最表面のヘイズは、0.5%以上35%未満であることが好ましく、1%以上20%未満であることがより好ましく、1%以上10%未満であることが更に好ましい。
【0090】
本発明の光学積層体は、JIS K5600−5−4(1999)による鉛筆硬度試験(荷重4.9N)において、2H以上であることが好ましく、3H以上であることがより好ましい。また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0091】
また、本発明の光学積層体は、偏光素子の表面に、本発明による光学積層体を、光透過性基材におけるハードコート層が存在する面と反対側の面に設けることによって、偏光板とすることができる。このような偏光板もまた、本発明の一つである。
【0092】
上記偏光素子としては特に限定されず、例えば、ヨウ素等により染色し、延伸したポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等を使用することができる。
上記偏光素子と本発明の光学積層体とのラミネート処理においては、光透過性基材(好ましくは、トリアセチルセルロースフィルム)にケン化処理を行うことが好ましい。ケン化処理によって、接着性が良好になり帯電防止効果も得ることができる。
【0093】
本発明は、最表面に上記光学積層体又は上記偏光板を備えてなる画像表示装置でもある。上記画像表示装置は、LCD等の非自発光型画像表示装置であっても、PDP、FED、ELD(有機EL、無機EL)、CRT等の自発光型画像表示装置であってもよい。
【0094】
上記非自発光型の代表的な例であるLCDは、透過性表示体と、上記透過性表示体を背面から照射する光源装置とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がLCDである場合、この透過性表示体の表面に、本発明の光学積層体又は本発明の偏光板が形成されてなるものである。
【0095】
本発明が上記光学積層体を有する液晶表示装置の場合、光源装置の光源は光学積層体の下側から照射される。なお、STN型の液晶表示装置には、液晶表示素子と偏光板との間に、位相差板が挿入されてよい。この液晶表示装置の各層間には必要に応じて接着剤層が設けられてよい。
【0096】
上記自発光型画像表示装置であるPDPは、表面ガラス基板(表面に電極を形成)と当該表面ガラス基板に対向して間に放電ガスが封入されて配置された背面ガラス基板(電極および、微小な溝を表面に形成し、溝内に赤、緑、青の蛍光体層を形成)とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がPDPである場合、上記表面ガラス基板の表面、又はその前面板(ガラス基板又はフィルム基板)に上述した光学積層体を備えるものでもある。
【0097】
上記自発光型画像表示装置は、電圧をかけると発光する硫化亜鉛、ジアミン類物質:発光体をガラス基板に蒸着し、基板にかける電圧を制御して表示を行うELD装置、又は、電気信号を光に変換し、人間の目に見える像を発生させるCRTなどの画像表示装置であってもよい。この場合、上記のような各表示装置の最表面又はその前面板の表面に上述した光学積層体を備えるものである。
【0098】
本発明の画像表示装置は、いずれの場合も、テレビジョン、コンピュータ、ワードプロセッサなどのディスプレイ表示に使用することができる。特に、CRT、液晶パネル、PDP、ELD、FED等の高精細画像用ディスプレイの表面に好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0099】
本発明は、上述した構成からなるものであるため、ハードコート層の耐熱性が極めて優れたものとなり、高温低湿度環境下に置かれた場合であっても、優れた帯電防止性能を維持できる。このため、本発明の光学積層体は、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等に好適に適用することができ、特に、VA方式の液晶ディスプレイに好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】実施例1及び比較例1で得られた光学積層体のハードコート層の放置時間に対する帯電圧の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0101】
本発明の内容を下記の実施例により説明するが、本発明の内容はこれらの実施態様に限定して解釈されるものではない。また、特別に断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0102】
<製造例1 ハードコート層用組成物1>
ポリエステルトリアクリレート(M9050:東亜合成社製、重量平均分子量400〜430) 49.8部
ウレタンアクリレート(BS577:荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 25部
帯電防止剤(H6500:三菱化学社製、固形分50%、4級アンモニウム塩成分を20%含有) 50部(固形としては25部)
帯電防止剤(ハイボロンKB212:ボロンインターナショナル社製、半極性成分を100%含有、固形分10%) 2部(固形としては0.2部)
重合開始剤(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 4部
メチルエチルケトン 75部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に5%存在し、有機ホウ素化合物は全固形分中に0.2%存在する)
【0103】
<製造例2 ハードコート層用組成物2>
ポリエステルトリアクリレート(M9050:東亜合成社製、重量平均分子量400〜430) 23部
ウレタンアクリレート(BS577:荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 25部
帯電防止剤(H6500:三菱化学社製、固形分50%、4級アンモニウム塩成分を20%含有) 100部(固形としては50部)
帯電防止剤(ハイボロンKB212:ボロンインターナショナル社製、半極性成分を100%含有、固形分10%) 20部(固形としては2部)
重合開始剤(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 4部
メチルエチルケトン 50部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に10%存在し、有機ホウ素化合物は全固形分中に2%存在する)
【0104】
<製造例3 ハードコート層用組成物3>
ポリエステルトリアクリレート(M9050:東亜合成社製、重量平均分子量400〜430) 54.85部
ウレタンアクリレート(BS577:荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 30部
帯電防止剤(H6500:三菱化学社製、固形分50%、4級アンモニウム塩成分を20%含有) 30部(固形としては15部)
帯電防止剤(ハイボロンKB212:ボロンインターナショナル社製、半極性成分を100%含有、固形分10%) 1.5部(固形としては0.15部)
重合開始剤(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 4部
メチルエチルケトン 85部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に3%存在し、有機ホウ素化合物は全固形分中に0.15%存在する)
【0105】
<製造例4 ハードコート層用組成物4>
ポリエステルトリアクリレート(M9050:東亜合成社製、重量平均分子量400〜430) 14.8部
ウレタンアクリレート(BS577:荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 10部
帯電防止剤(H6500:三菱化学社製、固形分50%、4級アンモニウム塩成分を20%含有) 150部(固形としては75部)
帯電防止剤(ハイボロンKB212:ボロンインターナショナル社製、半極性成分を100%含有、固形分10%) 2部(固形としては0.2部)
重合開始剤(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 4部
メチルエチルケトン 25部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に15%存在し、有機ホウ素化合物は全固形分中に0.2%存在する)
【0106】
<製造例5 ハードコート層用組成物5>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA:日本化薬) 49.8部
ウレタンアクリレート(UV7640:日本合成社製、6官能、重量平均分子量Mw1500) 25部
帯電防止剤(H6500:三菱化学社製、固形分50%、4級アンモニウム塩成分を20%含有) 50部(固形としては25部)
帯電防止剤(ハイボロンKB212:ボロンインターナショナル社製、半極性成分を100%含有、固形分10%) 2部(固形としては0.2部)
重合開始剤(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 4部
メチルエチルケトン 75部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に5%存在し、有機ホウ素化合物は全固形分中に0.2%存在する)
【0107】
<製造例6 ハードコート層用組成物6>
ポリエステルトリアクリレート(M9050:東亜合成社製、重量平均分子量400〜430) 49.8部
ウレタンアクリレート(BS577:荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 25部
帯電防止剤(H6500:三菱化学社製、固形分50%、4級アンモニウム塩成分を20%含有) 50部(固形としては25部)
帯電防止剤(ハイボロンASA501:ボロンインターナショナル社製、有機ホウ素成分100%、固形分100%) 0.2部(固形としては0.2部)
重合開始剤(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 4部
メチルエチルケトン 75部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に5%存在し、有機ホウ素化合物は全固形分中に0.2%存在する)
【0108】
<製造例7 ハードコート層用組成物7>
ポリエステルトリアクリレート(M9050:東亜合成社製、重量平均分子量400〜430) 49.8部
ウレタンアクリレート(BS577:荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 25部
帯電防止剤(H6100M:三菱化学社製、固形分50%、4級アンモニウム塩成分を20%含有) 50部(固形としては25部)
帯電防止剤(ハイボロンKB212:ボロンインターナショナル社製、半極性成分を100%含有、固形分10%) 2部(固形としては0.2部)
重合開始剤(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 4部
メチルエチルケトン 75部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に5%存在し、有機ホウ素化合物は全固形分中に0.2%存在する)
【0109】
<製造例8 ハードコート層用組成物8>
ポリエステルトリアクリレート(M9050:東亜合成社製、重量平均分子量400〜430) 49.8部
ウレタンアクリレート(BS577:荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 25部
帯電防止剤(1SX−3000、大成ファインケミカル社製、4級アンモニウム塩成分100%、固形分30%) 17部(固形としては5部)
帯電防止剤(ハイボロンKB212:ボロンインターナショナル社製、半極性成分を100%含有、固形分10%) 2部(固形としては0.2部)
重合開始剤(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 4部
メチルエチルケトン 75部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に5%存在し、有機ホウ素化合物は全固形分中に0.2%存在する)
【0110】
<製造例9 ハードコート層用組成物9>
ポリエステルトリアクリレート(M9050:東亜合成社製、重量平均分子量400〜430) 50部
ウレタンアクリレート(BS577:荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 25部
帯電防止剤(H6500:三菱化学社製、固形分50%、4級アンモニウム塩成分を20%含有) 50部(固形としては25部)
重合開始剤(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 4部
メチルエチルケトン 75部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に5%存在する)
【0111】
<製造例10 ハードコート層用組成物10>
ポリエステルトリアクリレート(M9050:東亜合成社製、重量平均分子量400〜430) 49.8部
ウレタンアクリレート(BS577:荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 50部
帯電防止剤(ハイボロンKB212:ボロンインターナショナル社製、半極性成分を100%含有、固形分10%) 2部(固形としては0.2部)
重合開始剤(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 4部
メチルエチルケトン 75部
(※有機ホウ素化合物は全固形分中に0.2%存在する)
【0112】
<製造例11 ハードコート層用組成物11>
ポリエステルトリアクリレート(M9050:東亜合成社製、重量平均分子量400〜430) 47.49部
ウレタンアクリレート(BS577:荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 50部
帯電防止剤(H6500:三菱化学社製、固形分50%、4級アンモニウム塩成分を20%含有) 5部(固形としては2.5部)
帯電防止剤(ハイボロンKB212:ボロンインターナショナル社製、半極性成分を100%含有、固形分10%) 0.1部(固形としては0.01部)
重合開始剤(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 4部
メチルエチルケトン 75部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に0.5%存在し、有機ホウ素化合物は全固形分中に0.01%存在する)
【0113】
<製造例12 ハードコート層用組成物12>
ポリエステルトリアクリレート(M9050:東亜合成社製、重量平均分子量400〜430) 29.8部
ウレタンアクリレート(BS577:荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 30部
帯電防止剤(1SX−3000、大成ファインケミカル社製、4級アンモニウム塩成分100%、固形分30%) 133部(固形としては40部)
帯電防止剤(ハイボロンKB212:ボロンインターナショナル社製、半極性成分を100%含有、固形分10%) 2部(固形としては0.2部)
重合開始剤(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 4部
メチルエチルケトン 60部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に40%存在し、有機ホウ素化合物は全固形分中に0.2%存在する)
【0114】
<製造例13 ハードコート層用組成物13>
ポリエステルトリアクリレート(M9050:東亜合成社製、重量平均分子量400〜430) 30部
ウレタンアクリレート(BS577:荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 25部
帯電防止剤(H6500:三菱化学社製、固形分50%、4級アンモニウム塩成分を20%含有) 50部(固形としては25部)
帯電防止剤(ハイボロンASA501:ボロンインターナショナル社製、有機ホウ素成分100%、固形分100%) 20部(固形としては20部)
重合開始剤(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 4部
メチルエチルケトン 75部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に5%存在し、有機ホウ素化合物は全固形分中に20%存在する)
【0115】
<製造例14 ハードコート層用組成物14>
ポリエステルトリアクリレート(M9050:東亜合成社製、重量平均分子量400〜430) 50部
ウレタンアクリレート(BS577:荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 50部
重合開始剤(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 4部
メチルエチルケトン 100部
【0116】
<製造例15 ハードコート層用組成物15>
ポリエステルトリアクリレート(M9050:東亜合成社製、重量平均分子量400〜430) 49.99部
ウレタンアクリレート(BS577:荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 25部
帯電防止剤(H6500:三菱化学社製、固形分50%、4級アンモニウム塩成分を20%含有) 50部(固形としては25部)
帯電防止剤(ハイボロンKB212:ボロンインターナショナル社製、半極性成分を100%含有、固形分10%) 0.1部(固形としては0.01部)
重合開始剤(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 4部
メチルエチルケトン 75部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に5%存在し、有機ホウ素化合物は全固形分中に0.01%存在する)
【0117】
<製造例16 ハードコート層用組成物16>
ポリエステルトリアクリレート(M9050:東亜合成社製、重量平均分子量400〜430) 47.5部
ウレタンアクリレート(BS577:荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 25部
帯電防止剤(H6500:三菱化学社製、固形分50%、4級アンモニウム塩成分を20%含有) 25部(固形としては12.5部)
帯電防止剤(ハイボロンKB212:ボロンインターナショナル社製、半極性成分を100%含有、固形分10%) 150部(固形としては15部)
重合開始剤(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 4部
メチルエチルケトン 75部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に2.5%存在し、有機ホウ素化合物は全固形分中に15%存在する)
【0118】
<製造例17 ハードコート層用組成物17>
ポリエステルトリアクリレート(M9050:東亜合成社製、重量平均分子量400〜430) 69.98部
ウレタンアクリレート(BS577:荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 22.5部
帯電防止剤(H6500:三菱化学社製、固形分50%、4級アンモニウム塩成分を20%含有) 15部(固形としては7.5部)
帯電防止剤(ハイボロンASA501:ボロンインターナショナル社製、有機ホウ素成分100%、固形分100%) 0.02部(固形としては0.02部)
重合開始剤(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 4部
メチルエチルケトン 75部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に1.5%存在し、有機ホウ素化合物は全固形分中に0.02%存在する)
【0119】
<製造例18 ハードコート層用組成物18>
ポリエステルトリアクリレート(M9050:東亜合成社製、重量平均分子量400〜430) 4.5部
ウレタンアクリレート(BS577:荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 27.5部
帯電防止剤(H6500:三菱化学社製、固形分50%、4級アンモニウム塩成分を20%含有) 125部(固形としては62.5部)
帯電防止剤(ハイボロンASA501:ボロンインターナショナル社製、有機ホウ素成分100%、固形分100%) 5.5部(固形としては5.5部)
重合開始剤(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 4部
メチルエチルケトン 75部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に12.5%存在し、有機ホウ素化合物は全固形分中に5.5%存在する)
【0120】
<製造例19 ハードコート層用組成物19>
ポリエステルトリアクリレート(M9050:東亜合成社製、重量平均分子量400〜430) 69.8部
ウレタンアクリレート(BS577:荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 27部
帯電防止剤(H6500:三菱化学社製、固形分50%、4級アンモニウム塩成分を20%含有) 6部(固形としては3部)
帯電防止剤(ハイボロンASA501:ボロンインターナショナル社製、有機ホウ素成分100%、固形分100%) 0.2部(固形としては0.2部)
重合開始剤(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 4部
メチルエチルケトン 75部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に0.6%存在し、有機ホウ素化合物は全固形分中に0.2%存在する)
【0121】
<製造例20 ハードコート層用組成物20>
ポリエステルトリアクリレート(M9050:東亜合成社製、重量平均分子量400〜430) 1部
ウレタンアクリレート(BS577:荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 1部
帯電防止剤(H6500:三菱化学社製、固形分50%、4級アンモニウム塩成分を20%含有) 190部(固形としては95部)
帯電防止剤(ハイボロンASA501:ボロンインターナショナル社製、有機ホウ素成分100%、固形分100%) 3部(固形としては3部)
重合開始剤(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 4部
メチルエチルケトン 75部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に19%存在し、有機ホウ素化合物は全固形分中に3%存在する)
【0122】
<製造例21 ハードコート層用組成物21>
ポリエステルトリアクリレート(M9050:東亜合成社製、重量平均分子量400〜430) 4.85部
ウレタンアクリレート(BS577:荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 10部
帯電防止剤(H6500:三菱化学社製、固形分50%、4級アンモニウム塩成分を20%含有) 170部(固形としては85部)
帯電防止剤(ハイボロンASA501:ボロンインターナショナル社製、有機ホウ素成分100%、固形分100%) 0.15部(固形としては0.15部)
重合開始剤(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 4部
メチルエチルケトン 75部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に17%存在し、有機ホウ素化合物は全固形分中に0.15%存在する)
【0123】
<製造例22 ハードコート層用組成物22>
ポリエステルトリアクリレート(M9050:東亜合成社製、重量平均分子量400〜430) 41部
ウレタンアクリレート(BS577:荒川化学社製、6官能、重量平均分子量Mw1000) 50部
帯電防止剤(H6500:三菱化学社製、固形分50%、4級アンモニウム塩成分を20%含有) 10部(固形としては5部)
帯電防止剤(ハイボロンASA501:ボロンインターナショナル社製、有機ホウ素成分100%、固形分100%) 4部(固形としては4部)
重合開始剤(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 4部
メチルエチルケトン 75部
(※4級アンモニウム塩成分は全固形分中に1%存在し、有機ホウ素化合物は全固形分中に4%存在する)
【0124】
実施例1〜8 光学積層体の製造
光透過性基材(商品名:TF80UL、厚み80μm、トリアセチルセルロース樹脂フィルム、富士写真フィルム社製)を準備し、フィルムの片面に、ハードコート層用組成物1〜8をそれぞれ塗布し、温度70℃の熱オーブン中で60秒間乾燥して塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が200mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、15g/m(乾燥時)の帯電防止性ハードコート層を形成し、実施例1〜8の光学積層体を製造した。
【0125】
比較例1〜14 光学積層体の製造
ハードコート層用組成物1に代えてハードコート層用組成物9〜22をそれぞれ使用した以外は、実施例1と同様にして比較例1〜14の光学積層体を製造した。
【0126】
各実施例及び比較例で得られた光学積層体を以下の方法により評価した。
【0127】
(帯電圧測定)
実施例及び比較例で得られた光学積層体を、温度70℃、湿度12〜13%RHに設定したエージングルーム内に5分間設置した。その後、1分以内に光学積層体を温度23.9℃、湿度50%の環境下に取り出し、ハードコート層の放置時間に対する帯電圧の変化を、スタティックオネストメーター(シシド静電気社製)を用いて測定した。
また、実施例1及び比較例1で得られた光学積層体を、温度100℃、湿度12〜13%RHに設定したエージングルーム内に24時間設置した以外は、上記と同様にして、ハードコート層の放置時間に対する帯電圧の変化を測定した。それぞれの結果を図1に示す。
なお、上記各温度に加熱する前にそれぞれ測定した各光学積層体の帯電圧を図1の右下部分に示した。また、図示はしていないが、他の実施例は、図1に示した実施例1と同様の傾向を示し、帯電防止剤の含有量が少ない比較例2、3、6、7、9、11、13及び14は、図1に示した比較例1と同様の傾向を示した。
【0128】
(耐熱性評価)
実施例及び比較例で製造した光学積層体のハードコート層と反対側の面を、粘着剤付フィルム(大日本印刷社製)を用いて、ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光素子フィルム上に、ドライラミネートして偏光板を作製した。
液晶表示装置(商品名:ブラビア、40インチ、ソニー社製)のガラス面を露出させ、該ガラス面に上記で得られた偏光板を貼合し、評価用画像表示装置を作製した。得られた評価用画像表示装置を表1に示した条件で加熱処理した。そして、表面(ハードコート層側の表面)を指で擦って液晶分子の配向を乱し、液晶分子の配向が元に戻るまでの時間を測定した(5箇所測定の平均値)。結果を表1に示す。
【0129】
(表面抵抗率及び飽和帯電圧測定)
実施例及び比較例で得られた光学積層体の表面抵抗率と飽和帯電圧とを、下記評価1〜3の条件でそれぞれ測定した。結果を表2に示す。
【0130】
(評価1)
実施例及び比較例で得られた直後の光学積層体を、温度23℃、湿度50%RHの条件下で、表面抵抗率を抵抗率計(ハイレスタ・UP、三菱化学社製)を用いて測定し、更に、同条件下で飽和帯電圧をスタティックオネストメーター(シシド静電気社製)を用いて測定した。
【0131】
(評価2)
実施例及び比較例で得られた光学積層体を、温度70℃、湿度12〜13%RHに設定したエージングルーム内に24時間設置した。その後、各光学積層体をエージングルームから取り出し、1分以内に温度23.9℃、湿度50%RHの条件下で、表面抵抗率を抵抗率計(ハイレスタ・UP、三菱化学社製)を用いて測定し、更に、同条件下で飽和帯電圧をスタティックオネストメーター(シシド静電気社製)を用いて測定した。
【0132】
(評価3)
実施例及び比較例で得られた光学積層体を、温度70℃、湿度12〜13%RHに設定したエージングルーム内に24時間設置した。その後、各光学積層体をエージングルームから取り出し、70℃、湿度30%RHの条件下で、表面抵抗率を抵抗率計(ハイレスタ・UP、三菱化学社製)を用いて測定し、更に、同条件下で飽和帯電圧をスタティックオネストメーター(シシド静電気社製)を用いて測定した。
【0133】
【表1】

【0134】
【表2】

【0135】
表1及び表2より、帯電防止剤として4級アンモニウム塩と半極性構造を有する化合物とを所定量含有するハードコート層を備えた実施例に係る光学積層体は、高温低湿度環境下に長時間置かれた場合であっても、帯電圧が低く優れた帯電防止性能を維持でき、耐熱性に優れるものであった。また、該光学積層体を用いてなる画像表示装置は、乱れた液晶分子の配向が迅速に戻るものであった。
一方、帯電防止剤として4級アンモニウム塩と半極性構造を有する化合物とを所定量含有しないハードコート層を備えた比較例に係る光学積層体は、高温低湿度環境下に長時間置かれた場合、帯電圧が高く帯電防止性能に劣り、耐熱性に劣るものであった。
また、比較例1〜3、6、7、9、11、13及び14に係る光学積層体を用いてなる画像表示装置は、乱れた液晶分子の配向が元に戻るのに長時間を要した。また、4級アンモニウム塩と半極性構造を有する化合物との合計含有量が多い比較例4及び5に係る画像表示装置、半極性構造を有する化合物の含有量が多い比較例8、10に係る画像表示装置、並びに、帯電防止剤の含有量が多い比較例12に係る画像表示装置は、いずれも乱れた液晶分子の配向が迅速に戻ったが、ハードコート層の透明性が低下してヘイズが悪化(1.0以上)した。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明の光学積層体は、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等に好適に適用することができ、特にVA方式の液晶ディスプレイに好適に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性基材上に、ハードコート層を有する光学積層体であって、
前記ハードコート層は、第4級アンモニウム塩と半極性構造を有する化合物とを含有し、
前記ハードコート層における、
前記半極性構造を有する化合物の含有量が0.1〜5質量%であり、
前記第4級アンモニウム塩と半極性構造を有する化合物との合計含有量が1〜20質量%であり、更に、
前記第4級アンモニウム塩と前記半極性構造を有する化合物との合計100質量%中、前記半極性構造を有する化合物の含有割合が、1質量%以上、35質量%未満である
ことを特徴とする光学積層体。
【請求項2】
半極性構造を有する化合物は、有機ホウ素化合物である請求項1記載の光学積層体。
【請求項3】
半極性構造を有する化合物は、下記化学式(1)〜(3)で表される群から選択される構造を有する少なくとも1種である請求項1又は2記載の光学積層体。
【化1】

化学式(1)中、pは、5〜2000である。
【化2】

化学式(2)中、qは0又は1〜20であり、q=1〜20のとき、Aは、−(X)a−(Y)b−(Z)c−基を表す。X及びZは、それぞれ少なくとも1個の末端エーテル残基を有する炭素原子数100以下の含酸素炭化水素基を表し、Yは、−O−CO−R−CO−基(但し、Rは、炭素原子数1〜82の炭化水素基を表す)、又は、−O−CO−NH−R’−NHCO−基(但し、R’は、炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す)を表す。a、b及びcは、それぞれ0又は1である。rは、0又は1である。pは、5〜2000である。
【化3】

化学式(3)中、qは0又は1であり、q=1のとき、Bは、−(X)l−(Y)m−(Z)n−基を表す。X及びZは、それぞれ1個の末端エーテル残基を有する炭素原子数の合計が200以下の含酸素炭化水素基を表し、Yは、−O−CO−R−CO−(但し、Rは、炭素原子数1〜82の炭化水素基を表す)、又は、−O−CO−NH−R’−NHCO−(但し、R’は、炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す)を表す。また、l、m及びnは、それぞれ独立して0又は1である。R及びRは、それぞれ水素原子又は炭素原子数15以下の置換基である。m及びnはそれぞれ1〜3の整数であり、m及びnが各々2以上のとき、R及びRは、各々同じでも異なっていてもよい。pは5〜2000である。
【請求項4】
第4級アンモニウム塩は、重量平均分子量が1000〜5万の分子中に光反応性不飽和結合を有する化合物である請求項1、2又は3記載の光学積層体。
【請求項5】
高温低湿度環境下に置かれる前において、温度23℃、湿度50%RHの条件における表面抵抗率が5×1010Ω/□以下、かつ、飽和帯電圧が0.5kV以下である請求項1、2、3又は4記載の光学積層体。
【請求項6】
高温低湿度環境下で24時間放置後、該高温低湿度環境から取り出し、1分以内に温度23〜24℃、湿度50%RHの条件下で、表面抵抗率が1×1011Ω/□以下、かつ、飽和帯電圧が0.8kV以下である請求項1、2、3、4又は5記載の光学積層体。
【請求項7】
温度30℃以上、湿度30%RH以下の条件における表面抵抗率が1×1011Ω/□以下、かつ、飽和帯電圧が0.8kV以下である請求項1、2、3、4、5又は6記載の光学積層体。
【請求項8】
偏光素子を備えてなる偏光板であって、
前記偏光板は、偏光素子表面に請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の光学積層体を備えることを特徴とする偏光板。
【請求項9】
最表面に請求項1、2、3、4、5、6若しくは7記載の光学積層体、又は、請求項8記載の偏光板を備えることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−81266(P2011−81266A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234555(P2009−234555)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】