説明

光学積層体

【課題】 有機フィラーを用いても、高い耐擦傷性を有する光学積層体の提供。
【解決手段】 透光性基体の片面又は両面に、直接又は他の層を介して、光学機能層を少なくとも設けた光学積層体であって、前記光学機能層が、マトリックスとしての透光性樹脂と、前記透光性樹脂に分散した透光性有機フィラーと、粒径が1〜100nmであり、配合量が0.1〜10重量%である金属酸化物微粒子と、を含有し、ここで、前記金属酸化物微粒子は、前記透光性有機フィラーの表面に偏在していることを特徴とする、光学積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)等のディスプレイ表面に設ける光学積層体に関し、特に画面の視認性を改善するための光学積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LCDやPDP等のディスプレイが発達し、携帯電話から大型テレビまで、数多くの用途に様々なサイズの製品が製造・販売されるようになってきた。
【0003】
これらのディスプレイは、表示装置表面に蛍光燈などの室内照明、窓からの太陽光の入射、操作者の影などの写り込みにより、画像の視認性が妨げられる。そのため、ディスプレイ表面には、画像の視認性を向上するために、表面反射光を拡散し、外光の正反射を抑え、外部環境の写り込みを防ぐことができる(防眩性を有する)微細凹凸構造を形成させた防眩フィルムなどの、機能性フィルムが最表面に設けられている(従来AG)。
【0004】
これら機能性フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という。)やトリアセチルセルロース(以下、「TAC」という。)等の透光性基体上に、微細凹凸構造を形成させた防眩層を一層設けたものや、光拡散層上に低屈折率層を積層したものが、一般に製造販売されており、層構成の組み合わせにより所望の機能を提供する機能性フィルムの開発が進められている。
【0005】
しかしながら、近年ディスプレイの大型化、高精細化、高コントラスト化が進み機能性フィルムに求められる性能の向上の要求が出てきた。
【0006】
最表面に防眩フィルムを用いた場合には、明るい部屋での使用の際に、光の拡散により黒表示の画像が白っぽくなり、コントラストの低下する問題が有った。このため、防眩性を低減させてでも、高コントラストが達成できる防眩フィルムが求められている(高コントラストAG)。
【0007】
高コントラストの達成のために、防眩フィルムの上層に低反射層を一層もしくは多層設ける方法が用いられてきた(低反射層つきAG)。
【0008】
一方で、防眩フィルムを最表面に用いた場合には、微細凹凸構造に起因すると思われるギラツキ(輝度の強弱の部分)が表面に発生し視認性を低下させる問題がある。このギラツキは、ディスプレイの画素数の増加に伴う画素の精細化、及び画素分割方式などのディスプレイの技術の向上に伴い発生しやすくなり、ギラツキ防止効果を持った防眩フィルムが求められている(高精細AG)。
【0009】
ギラツキ防止効果を達成するためには、特許文献1のように、機能性フィルム表面の平均山間隔(Sm)、中心線平均表面粗さ(Ra)及び十点平均表面粗さ(Rz)を細かく規定したり、また画面への外光の写り込み、ギラツキ現象や白味のバランスを調整する方法として、特許文献2及び特許文献3のように表面ヘイズと内部ヘイズの範囲を細かく規定したりする方法も開発が進められている。このため、高精細LCDに用いられる光拡散性シートの設計では、ギラツキ防止効果を奏するための内部拡散性と、白ぼけ防止効果を奏するために表面拡散性を制御することが行われている。
【特許文献1】特開2002−196117号公報
【特許文献2】特開平11−305010号公報
【特許文献3】特開2002−267818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来、透光性フィラーとしては、シリカが一般的であったが、ディスプレイの画質に対する要求(コントラスト、防眩性、ギラツキ)が厳しくなるにつれ、屈折率や粒径等を容易に操作可能な有機系のフィラーが好まれるようになってきた。この透光性有機フィラーは、シリカなどの無機系フィラーに比べ、一般的に柔らかいため、フィラーで凸に形成された表面部分(樹脂がフィラーに覆いかぶさるように盛り上がる。)が擦れにより選択的に削れ、傷になったり、周辺部とのコントラストに差が生じたりする問題があった。そこで、本発明は、有機フィラーを用いても、コントラスト、防眩性及びギラツキに対する要求特性を満足した上で、高い耐擦傷性を有する光学積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明(1)は、透光性基体の片面又は両面に、直接又は他の層を介して、光学機能層を少なくとも設けた光学積層体であって、
前記光学機能層が、
マトリックスとしての透光性樹脂と、
前記透光性樹脂に分散した透光性有機フィラーと、
粒径が1〜100nmであり、配合量が0.1〜10重量%である金属酸化物微粒子と、を含有し、
ここで、前記金属酸化物微粒子は、前記透光性有機フィラーの表面に偏在していることを特徴とする、光学積層体である。
【0012】
本発明(1−2)は、透光性基体の片面又は両面に、直接又は他の層を介して、光学機能層を少なくとも設けた光学積層体であって、
前記光学機能層が、
透光性基体の片面又は両面に、直接又は他の層を介して、少なくともエネルギー硬化型樹脂組成物と透光性有機フィラーと金属酸化物ゾルとを混合してなる塗料を適用した後、エネルギーを印加することにより前記エネルギー硬化型樹脂組成物を硬化させることにより形成された層であることを特徴とする、光学積層体である。
【0013】
本発明(1−3)は、透光性基体の片面又は両面に、直接又は他の層を介して、光学機能層を少なくとも設けた光学積層体であって、
前記光学機能層が、
マトリックスとしての透光性樹脂と、
前記透光性樹脂に分散した透光性有機フィラーと、
粒径が1〜100nmの範囲の金属酸化物微粒子と、を含有し、
ここで、前記金属酸化物微粒子が、前記透光性有機フィラーの表面全体にまぶされていることを特徴とする、光学積層体である。
【0014】
本発明(2)は、前記金属酸化物微粒子が、アルミナ微粒子である、前記発明(1)の光学積層体である。
【0015】
本発明(3)は、 透光性基体の片面又は両面に、直接又は他の層を介して、少なくともエネルギー硬化型樹脂組成物と透光性有機フィラーと金属酸化物ゾルとを混合してなる塗料を適用する適用工程と、
前記適用工程後、エネルギーを印加して前記エネルギー硬化型樹脂組成物を硬化させて光学機能層を形成させる硬化工程と
を含む、光学積層体の製造方法である。
【0016】
本発明(4)は、前記金属酸化物ゾルが、アルミナゾルである、前記発明(3)の光学積層体の製造方法である。
【0017】
ここで、本特許請求の範囲及び本明細書における各用語の定義を説明する。「透光性有機フィラーの表面に」とは、透光性有機フィラーの表面に金属酸化物微粒子が付着している場合のみならず、透光性有機フィラーの表面に金属酸化物微粒子が付着していないが透光性有機フィラーの表面付近(表面から径の10%までの距離以内)に存在している場合、を指す。「エネルギー」とは、エネルギー線(例えば、電子線や紫外線)又は熱を指す。「塗料を適用する」とは、塗布、吹付け、浸漬等を包含する概念である。
【発明の効果】
【0018】
本発明(1)によれば、透光性有機フィラーの表面が金属酸化物微粒子で保護されることでフィラーが硬く・強靭化するため、フィラーの変形に伴う傷つきが防止され、耐擦傷性が向上するという効果を奏する。また、透光性有機フィラーの表面に金属酸化物微粒子が偏在することにより透光性有機フィラーと透光性樹脂との密着性が増すため、耐擦傷性が更に向上するという効果を奏する。更に、金属酸化物微粒子の粒径が小さいため、光学的な影響を最小限とすることができ、ヘイズ上昇、透過率ダウン、コントラストダウンといった問題が発生しにくくなるという効果を奏する。
【0019】
本発明(2)によれば、前記効果に加え、更に、耐擦傷性と表面硬度が大きく向上する。
【0020】
本発明(3)、(4)によれば、金属酸化物微粒子源として金属酸化物ゾルを用いることにより、樹脂との相溶性が向上するため塗料化しやすくなる。また、金属酸化物微粒子が凝集しにくくなるため、光学的な機能を均一に付与させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
まず、本最良形態に係る光学積層体の各構成要素を詳述する。本最良形態に係る光学積層体は、透光性基体の片面又は両面に、少なくとも透光性微粒子(透光性有機フィラー)を含有した光学機能層を必須的に有する。更に、本最良形態に係る光学積層体は、光学積層体の上や透光性基体と光学積層体との間に、低反射層、防汚層、帯電防止層、赤外線反射(NIR)層(赤外線カット層)、偏光層を有していてもよい。以下、必須層である透光性基体及び光学機能層を説明し、次に任意層について説明する。
【0022】
《透光性基体》
はじめに、本最良形態に係る透光性基体としては、透光性である限り特に限定されず、石英ガラスやソーダガラス等のガラスも使用可能であるが、PET、TAC、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルスルホン、セロファン、芳香族ポリアミド等の各種樹脂フィルムを好適に使用することができる。なお、PDP、LCDに用いる場合は、PET、TACフィルムがより好ましい。
【0023】
これら透光性基体の透明性は高いものほど良好であるが、全光線透過率(JIS K7105)としては80%以上、より好ましくは90%以上が良い。また、透光性基体の厚さとしては、軽量化の観点からは薄い方が好ましいが、その生産性やハンドリング性を考慮すると、1〜700μmの範囲のもの、好ましくは25〜250μmを使用することが好適である。
【0024】
また、透光性基体に、アルカリ処理、コロナ処理、プラズマ処理、スパッタ処理等の表面処理や、界面活性剤、シランカップリング剤等の塗布、又はSi蒸着などの表面改質処理を行うことにより、透光性基体と光学機能層との密着性を向上させることができるため、当該光学機能層における耐スクラッチ性が向上する。
【0025】
《透光性樹脂》
次に、本最良形態に係る光学機能層について詳述する。本最良形態に係る光学機能層は、透光性樹脂に透光性微粒子(透光性有機フィラー)と、金属酸化物微粒子が分散している構成を有する。ここで、「透光性樹脂」とは、塗料中の透光性微粒子を除く全固形成分である(マトリックス成分)。透光性樹脂は、熱や放射線等のエネルギーにより硬化するエネルギー硬化型樹脂をエネルギーにより硬化することにより形成されたものであることが好ましく、放射線硬化型樹脂組成物を放射線で硬化することにより形成されたものであることがより好ましいが、特に限定されない。ここで、当該透光性樹脂を構成する放射線硬化型樹脂組成物としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等のラジカル重合性官能基や、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン基等のカチオン重合性官能基を有するモノマー、オリゴマー、プレポリマーを単独で、又は適宜混合した組成物が用いられる。モノマーの例としては、アクリル酸メチル、メチルメタクリレート、メトキシポリエチレンメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等を挙げることができる。オリゴマー、プレポリマーとしては、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、多官能ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、アルキットアクリレート、メラミンアクリレート、シリコーンアクリレート等のアクリレート化合物、不飽和ポリエステル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルや各種脂環式エポキシ等のエポキシ系化合物、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル等のオキセタン化合物を挙げることができる。これらは単独、もしくは複数混合して使用することができる。
【0026】
上記放射線硬化型樹脂組成物は、そのままで電子線照射により硬化可能であるが、紫外線照射による硬化を行う場合は、光重合開始剤の添加が必要である。用いられる放射線としては、紫外線、可視光線、赤外線、電子線のいずれであってもよい。また、これらの放射線は、偏光であっても無偏光であってもよい。光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のラジカル重合開始剤、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物等のカチオン重合開始剤を単独又は適宜組み合わせて使用することができる。
【0027】
本最良形態では、上記放射線硬化型樹脂組成物に加えて、その重合硬化を妨げない範囲で高分子樹脂を添加使用することができる。この高分子樹脂は、後述する樹脂層塗料に使用される有機溶剤に可溶な熱可塑性樹脂であり、具体的にはアクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース又はセルロース誘導体等が挙げられ、これらの樹脂中には、カルボキシル基やリン酸基、スルホン酸基等の酸性官能基を有することが好ましい。
【0028】
また、レベリング剤、増粘剤、帯電防止剤等の添加剤を使用することができる。レベリング剤は、塗膜表面の張力均一化を図り塗膜形成前に欠陥を直す働きがあり、上記放射線硬化型樹脂組成物より界面張力、表面張力共に低い物質が用いられる。増粘剤は、上記放射線硬化型樹脂組成物へチキソ性を付与する働きがあり、透光性微粒子や顔料等の沈降防止による樹脂層表面の微細な凹凸形状形成に効果がある。増粘剤は、特に限定されないが、例えば、合成雲母を使用することが好適である。更に、当該増粘剤の表面を4級アンモニウム塩などで有機化処理することが好適である。当該処理を行うことにより樹脂や金属酸化物との親和性が増し、性能が向上するほか、加工性適性も向上する。
【0029】
光学機能層における透光性樹脂は、主に上述の放射線硬化型樹脂組成物の硬化物により構成されるが、その形成方法は、放射線硬化型樹脂組成物と有機溶剤からなる塗料を塗工し、有機溶剤を揮発させた後に電子線又は紫外線照射により硬化せしめるものである。ここで使用される有機溶剤としては、放射線硬化型樹脂組成物を溶解するのに適したものを選ぶ必要がある。具体的には、透光性基体への濡れ性、粘度、乾燥速度といった塗工適性を考慮して、アルコール系、エステル系、ケトン系、エーテル系、芳香族炭化水素から選ばれた単独又は混合溶剤を使用することができる。
【0030】
《分散成分》
次に、本最良形態において、必須に含まれる透光性有機フィラー及び金属酸化物微粒子について詳述する。本最良形態において、金属酸化物微粒子は透光性有機フィラー表面付近に偏在している(まぶされている)。当該構造を有することにより、光学積層体の耐擦傷性が向上する。尚、本特許請求の範囲及び本明細書における「偏在」とは、金属酸化物が透光性有機フィラー表面付近に特に偏って存在している状態を指し、光学機能層の断面をTEMで観察し、透光性有機フィラーの中心付近断面の周囲に観察される金属酸化物微粒子の透光性有機フィラー断面周長1μmあたりの個数([透光性有機フィラー断面周囲(表面)に観測される金属酸化物微粒子の個数]/[透光性有機フィラーの断面周長])が、2個/μm以上のものが好適であり、5個/μm以上がより好適であり、10個/μm以上が更に好適である。上限は特に限定されないが、例えば、100個/μm以下である。尚、前記微粒子の個数は、任意に選択した10個の微粒子の断面の平均値とする。
【0031】
透光性有機フィラー
光学機能層に含まれる透光性有機フィラーとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン系樹脂等よりなる有機透光性微粒子を使用することができる。
【0032】
ここで、光学機能層に含まれる透光性有機フィラーは、放射線硬化型透光性樹脂層との屈折率の差が、0.05以下であることが好適であり、0.03以下であることがより好適であり、0.01以下であることがより好適である。放射線硬化型透光性樹脂層と透光性有機フィラーの屈折率差が0.05より大きい場合は、光散乱の度合いが大きくなりすぎ、高コントラストへの寄与が低下する。透光性有機フィラーの屈折率は、好ましくは1.45〜1.58であり、より好ましくは1.50〜1.57である。「屈折率」は、JIS K−7142に従った測定値を指す
【0033】
次に、透光性有機フィラーの粒径は、0.3〜10μmであることが好適であり、1〜5μmであることがより好適である。粒径が0.3μmより小さい場合は防眩性が低下するため、また10μmより大きい場合は、ギラツキを発生すると共に、表面凹凸の程度が大きくなり過ぎて表面が白っぽくなってしまうため好ましくない。更に、透光性有機フィラーの粒径は、膜厚の20〜80%が好適であり、30〜70%が更に好適である。「粒径」は、電子顕微鏡で実測した100個の粒子の直径の平均値を指す。尚、全個数の内、当該微粒子の製造工程において混入する微細粉及び粗大粉は、5%未満(より好ましくは1%未満)である。上記透光性樹脂中の透光性微粒子の割合は特に限定されないが、光学機能層中の固形成分の1〜50重量%とすることが好適であり、5〜10重量%とすることがより好適である。当該範囲とすると、防眩機能、ギラツキ等の特性を満足する上で好ましく、光学機能層表面の微細な凹凸形状と光拡散をコントロールし易い。
【0034】
金属酸化物微粒子
続いて、光学機能層に含まれる金属酸化物微粒子としては、例えば、アルミナ微粒子、ジルコニア微粒子、チタニア微粒子、水酸化アルミ微粒子、酸化スズ微粒子、酸化亜鉛、酸化セシウムが挙げられる。これらの微粒子は、樹脂によりコーティングされていることが好適である。また、前記金属酸化物微粒子は、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、水酸化アルミゾル、酸化スズゾル等の金属酸化物ゾルの状態で添加したものを使用することが好適である。これらの中でも特にアルミナゾルが好適である。
【0035】
ここで、光学機能層に含まれる金属酸化物微粒子は、粒径が著しく小さく光学的影響が少ないため、基本的にどのような屈折率であってもよい。
【0036】
次に、金属酸化物微粒子の粒径は、1〜100nmであることが好適であり、5〜50nmであることがより好適である。粒径が1nm以下の場合は金属酸化物微粒子及び金属酸化物ゾルの製造コストが高くなる。また、光学機能層形成時、層中で金属酸化物微粒子及び金属酸化物ゾルが動きにくくなるために、偏在化が難しくなる等の問題が発生する。また、粒径が100nm以上である場合は、ヘイズが上昇し、透過率ダウン、コントラストダウンなど光学積層体の光学特性に支障が生じる。ここで、「粒径」は、電子顕微鏡で実測した100個の粒子の直径の平均値を指す。尚、全個数の内、当該微粒子の製造工程において混入する微細粉及び粗大粉は、5%未満(より好ましくは1%未満)である。金属酸化物微粒子の配合量は、光学機能層中の固形成分の0.1〜10重量%が必要であり、0.3〜5.0重量%がより好適であり、0.5〜3.0重量%が更に好適である。配合量が前記範囲より小さい場合は、耐スクラッチ性が悪くなり、多い場合は、上記同様、光学特性に支障が生じる。
【0037】
透光性有機フィラーと金属酸化物微粒子の親和性を高めておくことで、偏在化が効率よく行なわれ、少ない配合量で高い耐スクラッチ性を得ることができる。前記親和性を高める方法として、カルボン酸基やOH基などの官能基を有するモノマーと共重合した透光性有機フィラーを用いる方法がある。また、表面改質処理を行う方法もある。当該表面改質処理については後ほど詳述する。その他、透光性有機フィラーと金属酸化物微粒子の双方に親和性を有する中間剤を添加する方法がある。この場合、中間剤として、例えば、合成雲母、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、レベリング剤(例えば、フッ素系)等を用いることができる。ここで、中間剤の含有量は、光学機能層中の固形成分の0.1〜10重量%が好適であり、0.2〜0.5重量%がより好適である。
【0038】
<表面改質処理>
次に、表面改質処理について詳述する。ここで使用する金属酸化物微粒子の製法は特に限定されず、気相法、ゾルゲル法、コロイド沈殿法、溶融金属噴霧酸化法、アーク放電などの、任意の方法で得られたもので構わない。
【0039】
上述のようにして所定の金属酸化物微粒子を準備した後に、この金属酸化物微粒子に対して表面改質剤を用いて表面改質処理を行うことが好適である。この表面改質処理は、前記金属酸化物微粒子を所定の溶媒、具体的には有機溶媒などに分散させるとともに、前記表面改質剤を添加し、縮合反応を生ぜしめて行う。この際、前記表面改質に供している溶液を、前記溶媒の沸点以下の温度に適宜加熱することもできるし、分散混合において、超音波、マイクロビーズミル、攪拌、及び高圧乳化などの手法を用いることもできる。また、前記攪拌の際には、製造スケールに応じて、マグネチックスターラー、攪拌翼付きモーターなど任意のものを用いることができる。なお、前記表面改質剤は、予め有機溶媒を用いて希釈しておくこともできる。
【0040】
前記表面処理剤は特に限定されるものではないが、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、チタンカップリング剤、アルキルリチウム、アルキルアルミニウムなどの有機金属化合物を挙げることができる。これらのうちでも、使い易さ・コストなどの観点から、シランカップリング剤、シリル化剤が特に好ましい。ここで、表面処理剤の配合量は、金属酸化物微粒子又は金属酸化物ゾル中の固形成分の0.1〜10.0重量%が好ましい。0.1%未満では効果が薄く、10.0%より多い場合は塗料化した時の安定性に支障が生じる。
【0041】
シランカップリング剤は、無機材料に対して親和性あるいは反応性を有する加水分解性のシリル基に、有機物に対して親和性或いは反応性を有する有機置換基を化学的に結合させた構造を持つシラン化合物である。ケイ素に結合した加水分解性基としては、アルコキシ基、ハロゲン、アセトキシ基、アルケノキシ基が挙げられるが、通常、アルコキシ基、特にメトキシ基、エトキシ基が用いられる。
【0042】
前記有機置換基としては、アルキル基、アリール基、アミノ基、メタクリル基、アクリル基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基などを挙げることができる。具体的には、アルキルトリクロロシラン、アルキルトリアルコキシシラン、アルキルジアルコキシクロロシラン、ジアルキルアルコキシクロロシラン、トリアルキルクロロシラン、トリアルキルアルコキシシラン、アリールトリクロロシラン、アリールトリアルコキシシラン、ジアリールジクロロシラン、ジアリールジアルコキシシラン、トリアリールクロロシラン、トリアリールアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジアルコキシシラン、(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリアルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−クロロプロピルトリアルコキシシランなどを例示することができる。
【0043】
シリル化剤としては、トリメチルシリル化剤、アルキルシラン類、アリルシラン類を挙げることができる。トリメチルシリル化剤としては、例えば、トリメチルクロロシラン、へキサメチルジシラザン、n−トリメチルシリルイミダゾール、ビス(トリメチルシリル)ウレア、トリメチルシリルアセトアミド、ビストリメチルシリルアセトアミド、トリメチルシリルイソシアネート、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシランなどを例示することができる。アルキルシラン類としては、例えば、1,6−ビス(トリメトキシシリル)へキサン、ジメチルシリルジイソシアネート、メチルシリルトリイノシアネートなどを挙げることができる。アリルシラン類としては、フェニルシリルトリイソシアネートなどを例示することができる。
【0044】
また、前記溶媒としては、金属酸化物微粒子の分散と表面改質剤の溶解とが良好な溶媒を用いることが望ましい。分散性の低い溶媒を用いると、金属酸化物微粒子の凝集が起き、溶解性の低い溶媒を用いると改質剤の分離が生じる。具体的には、上述したオルガノゾルを作製する際に使用する溶媒から適宜選択して使用することができる。
【0045】
<遊離改質剤の除去・精製>
次いで、前記表面改質処理が終了した後の、前記金属酸化物微粒子が残存している溶媒を直接洗浄して、前記金属酸化物微粒子の表面に化学的に結合して表面改質に寄与していない遊離改質剤を除去して精製する。本発明では、前記遊離改質剤が残存している溶媒に対して乾燥処理や固液分離などの手法を施すことなく、前記溶媒を直接洗浄して前記遊離改質剤を除去するようにしている。したがって、前記遊離改質剤の除去精製を効率的に行うことができるようになる。
【0046】
《光学機能層の構造》
光学機能層の膜厚は、3〜25μmの範囲であることが好適であり、5〜15μmの範囲であることがより好適であり、6〜12μmの範囲であることが更に好適である。膜厚が3μmより薄い場合は、比重の異なる微粒子を十分に厚さ方向に分離させることができない。25μmより厚い場合は、光学機能層の硬化収縮によりカールが発生したり、マイクロクラックが発生したり、透光性基体との密着性が低下したり、さらには光透過性が低下したりする。そして、膜厚の増加に伴う必要塗料量の増加によるコストアップの原因ともなる。
【0047】
《低反射層》
本最良形態においては、コントラストを向上させるために、光学機能層上に低反射層を設けることができる。この場合、低反射層の屈折率が光学機能層の屈折率より低いことが必要であり、1.45以下であることが好ましい。これらの特徴を有する材料としては、例えばLiF(屈折率n=1.4)、MgF(n=1.4)、3NaF・AlF(n=1.4)、AlF(n=1.4)、NaAlF(n=1.33)、等の無機材料を微粒子化し、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂等に含有させた無機系低反射材料、フッ素系、シリコーン系の有機化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、放射線硬化型樹脂等の有機低反射材料を挙げることができる。その中で、特に、フッ素系の含フッ素材料が汚れの防止の点において好ましい。また、低反射層は、臨界表面張力が20dyne/cm以下であることが好ましい。臨界表面張力が20dyne/cmより大きい場合は、低反射層に付着した汚れが取れにくくなる。
【0048】
上記含フッ素材料としては、有機溶剤に溶解し、その取り扱いが容易であるフッ化ビニリデン系共重合体や、フルオロオレフィン/炭化水素共重合体、含フッ素エポキシ樹脂、含フッ素エポキシアクリレート、含フッ素シリコーン、含フッ素アルコキシシラン、等を挙げることができる。これらは単独でも複数組み合わせて使用することも可能である。
【0049】
また、2−(パーフルオロデシル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチルメタクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルデシル)エチルメタクリレート、3−(パーフルオロ−8−メチルデシル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の含フッ素メタクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシルプロピルアクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルデシル)エチルアクリレート等の含フッ素アクリレート、3−パーフルオロデシル−1,2−エポキシプロパン、3−(パーフルオロ−9−メチルデシル)−1,2−エポキシプロパン等のエポキサイド、エポキシアクリレート等の放射線硬化型の含フッ素モノマー、オリゴマー、プレポリマー等を挙げることができる。これらは単独若しくは複数種類混合して使用することも可能である。
【0050】
更に、5〜30nmのシリカ超微粒子を水若しくは有機溶剤に分散したゾルとフッ素系の皮膜形成剤を混合した低反射材料を使用することもできる。5〜30nmのシリカ超微粒子を水若しくは有機溶剤に分散したゾルは、ケイ酸アルカリ塩中のアルカリ金属イオンをイオン交換等で脱アルカリする方法や、ケイ酸アルカリ塩を鉱酸で中和する方法等で知られた活性ケイ酸を縮合して得られる公知のシリカゾル、アルコキシシランを有機溶媒中で塩基性触媒の存在下に加水分解と縮合することにより得られる公知のシリカゾル、さらには上記の水性シリカゾル中の水を蒸留法等により有機溶剤に置換することにより得られる有機溶剤系のシリカゾル(オルガノシリカゾル)が用いられる。これらのシリカゾルは水系及び有機溶剤系のどちらでも使用することができる。有機溶剤系シリカゾルの製造に際し、完全に水を有機溶剤に置換する必要はない。上記シリカゾルは、SiOとして0.5〜50重量%濃度の固形分を含有する。シリカゾル中のシリカ超微粒子の構造は、球状、針状、板状等様々なものが使用可能である。
【0051】
また、皮膜形成剤としては、アルコキシシラン、金属アルコキシドや金属塩の加水分解物や、ポリシロキサンをフッ素変性したものなどを用いることができる。上記のような皮膜形成剤の中でも、特にフッ素化合物を用いることにより、低反射層の臨界表面張力が低下して油分の付着を抑制することができるので好ましい。本発明の低反射層は、上記で述べた材料を例えば溶剤で希釈し、スピンコーター、ロールコーター、印刷等の方法で放射線硬化型樹脂層上に設けて乾燥後、熱や放射線(紫外線の場合は上記の光重合開始剤を使用する)等により硬化させることによって得ることができる。放射線硬化型の含フッ素モノマー、オリゴマー、プレポリマーは耐汚染性には優れているが、濡れ性が悪いため、組成によっては放射線硬化型樹脂層上で低反射層をはじくという問題や、低反射層が放射線硬化型樹脂層から剥がれるという問題が生じるおそれがあるため、放射線硬化型樹脂層に使用する前述の放射線硬化型樹脂として説明した、アクリロイル系、メタクリロイル系、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等重合性不飽和結合を有するモノマー、オリゴマー、プレポリマーを適宜混合し、使用することが望ましい。
【0052】
尚、熱によるダメージを受けやすいPET、TAC等のプラスチック系フィルムを透光性基体に使用する場合は、これら低反射層の材料としては、放射線硬化型樹脂を選択することが好ましい。
【0053】
低反射層が良好な反射防止機能を発揮するための厚さについては、公知の計算式で算出することができる。入射光が低反射層に垂直に入射する場合に、低反射層が光を反射せず、且つ100%透過するための条件は次の関係式を満たせばよいとされている。なお、式中Nは低反射層の屈折率、Nは放射線硬化型樹脂層の屈折率、hは低反射層の厚さ、λは光の波長を示す。
【0054】
【数1】

【0055】
上記(1)式によれば、光の反射を100%防止するためには、低反射層の屈折率が下層(放射線硬化型樹脂層)の屈折率の平方根になるような材料を選択すればよいことが分かる。ただし、実際は、この数式を完全に満たす材料は見出し難く、限りなく近い材料を選択することになる。上記(2)式では(1)式で選択した低反射層の屈折率と、光の波長から低反射層の反射防止膜としての最適な厚さが計算される。例えば、放射線硬化型樹脂層、低反射層の屈折率をそれぞれ1.50、1.38、光の波長を550nm(視感度の基準)とし、これらの値を上記(2)式に代入すると、低反射層の厚さは0.1μm前後の光学膜厚、好ましくは0.1±0.01μmの範囲が最適であると計算される。
【0056】
《防汚層》
本最良形態に係る光学積層体は、光学機能層の上方に防汚層を設けることができる。防汚層は、少なくともパーフルオロアルキルエーテル化合物を含有するもので、かかる化合物が実質的に防汚性を発揮する防汚成分として機能するものであって、パーフルオロアルキルエーテル基を有する化合物が適宜用いられ、中でもその末端に後述のシリカ膜と親和性の高い官能基及び/又は化学結合可能な官能基を1つ以上有する化合物が好ましい。使用されるパーフルオロアルキルエーテル化合物は、1種類に限定されるものではなく、2種類以上を混合して使用することも可能である。更にこれらの化合物の分子量は、500〜10000が好ましく、更に好ましくは500〜4000である。分子量が500以下では、充分な防汚性や耐久性を発揮出来ず、また、10000以上では溶剤に対する溶解性が低下して均一な防汚層を形成することが困難となるからである。
【0057】
《帯電防止層》
本最良形態に係る光学積層体は、光学機能層の上方及び下方(光学機能層と透光性基体との間)に帯電防止層を設けることができる。帯電防止層は、アルミ、錫等の金属、ITO等の金属酸化膜を蒸着、スパッタ等で極めて薄く設ける方法、アルミ、錫等の金属微粒子やウイスカー、酸化錫等の金属酸化物にアンチモン等をドープした微粒子やウイスカー、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンと金属イオンや有機カチオン等の電子供与体(ドナー)との間でできた電荷移動錯体をフィラー化したもの等をポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等に分散し、ソルベントコーティング等により設ける方法、ポリピロール、ポリアニリン等にカンファースルホン酸等をドープしたものをソルベントコーティング等により設ける方法等により設けることができる。帯電防止層の透過率は光学用途の場合、80%以上が好ましい。
【0058】
《近赤外線カット層》
本最良形態に係る光学積層体は、光学機能層の上方及び下方(光学機能層と透光性基体との間)に近赤外線カット層を設けることができる。近赤外線カット層は、近赤外線カット色素を含有することで形成できる。近赤外線カット色素は、780nm以上の波長をもつ近赤外線に極大吸収値を有する色素であり、フタロシアニン系色素、アルミニウム系色素、アントラキノン系色素、ナフタロシアニン系色素、ジチオール錯体系色素、ポリメチン系色素、ピリリウム系色素、チオピリリウム系色素、スクアアリリウム系色素、クロコニウム系色素、アズレニウム系色素、テトラデヒドロコリン系色素、トリフェニルメタン系色素、ジインモニウム系色素等が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を混合して使用される。近赤外線カット色素の具体例としては、イーエックスカラー802K、イーエックスカラー803K、イーエックスカラー814K(以上いずれも日本触媒社製の商品名)、IR−750、IRG−002、IRG−003、IRG−022、IRG−023、IRG−820、CY−2、CY−4、CY−9、CY−20(以上いずれも日本化薬社製の商品名)、PA−001、PA−1005、PA−1006、SIR−114、SIR−128、SIR−130、SIR−159(以上いずれも三井東圧化学社製の商品名)が挙げられる。
【0059】
《偏光層》
また、本最良形態に係る光学積層体を偏光フィルム化してもよい。この場合、当該偏光フィルムは、第1の保護材の片面に、直接又は他の層を介して、少なくとも透明微粒子を含有する光学機能層(前述した面積分散バラツキが所定範囲である層)を設け、表面層とは反対面に、偏光層を介して第2の保護材を積層してなる構成を採る。当該偏光層は、特定の偏光のみを透過し他の光を吸収する光吸収型の偏光フィルムや、特定の偏光のみを透過し他の光を反射する光反射型の偏光フィルムを使用することが出来る。光吸収型の偏光フィルムとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニレン等を延伸させて得られるフィルムが使用可能であり、例えば、2色性素子として沃素または染料を吸着させたポリビニルアルコールを一軸延伸して得られたポリビニルアルコール(PVA)フィルムが挙げられる。光反射型の偏光素子としては、例えば、延伸した際に延伸方向の屈折率が異なる2種類のポリエステル樹脂(PEN及びPEN共重合体)を、押出成形技術により数百層交互に積層し延伸した構成の3M社製「DBEF」や、コレステリック液晶ポリマー層と1/4波長板とを積層してなり、コレステリック液晶ポリマー層側から入射した光を互いに逆向きの2つの円偏光に分離し、一方を透過、他方を反射させ、コレステリック液晶ポリマー層を透過した円偏光を1/4波長板により直線偏光に変換させる構成の日東電工社製「ニポックス」やメルク社製「トランスマックス」等が挙げられる。
【0060】
更に、当該光学積層体は、透過像鮮明度が5.0〜70.0の範囲(JIS K7105に従い0.5mm光学くしを用いて測定した値)が好ましく、20.0〜65.0がより好ましい。透過像鮮明度が5.0未満ではコントラストが悪化し、70.0を超えると防眩性が悪化するため、ディスプレイ表面に用いる光学積層体に適さなくなる。
【0061】
当該光学積層体は、次式(1)〜(4)を充足する内部ヘイズ値(X)と全ヘイズ値(Y)を有することが好適である。ここで、「全ヘイズ値」は、光学積層体のヘイズ値を指し、「内部ヘイズ値」は、光学積層体の微細凹凸形状表面に、粘着剤付透明性シートを貼り合わせた状態のもののヘイズ値から粘着剤付透明性シートのヘイズ値を引いた値を指す。尚、いずれのヘイズ値も、JIS K7105に従い測定した値を指す。
【0062】
Y>X (1)
Y≦X+7 (2)
X≦15 (3)
X≧1 (4)
【0063】
ここで、Y>X+7、X≦15、X≧1の範囲では、表面での光拡散効果が大きくなることにより表面が白っぽくなり、コントラストが低下する。特に明室でのコントラストが悪くなる。Y>X、Y≦X+7、X>15の範囲では、光学積層体(特に光学機能層)内部の光拡散効果が大きくなることで、コントラストが低下する。特に暗室でのコントラストが低下する。Y>X、X<1、Y≦X+7の範囲では、光学積層体内部の光拡散効果が小さくなるため、ギラツキが発現する。好ましい範囲は、Y>X、Y≦X+7、3<X≦15である。
【0064】
《光学積層体の性質》
次に、最良形態に係る光学積層体の性質を詳述する。本最良形態に係る光学積層体は、以下の耐擦傷性能を有する。透光性有機フィラーの表面が金属酸化物微粒子で保護されることでフィラーが硬く・強靭化すること、また、フィラーと樹脂の密着性が増すことで、フィラー上の樹脂(光学機能層表面で凸の部分)が削れにくくなる。
【0065】
《製造方法》
次に、本最良形態に係る光学積層体の製造方法について詳述する。まず、本最良形態に係る光学積層体の光学機能層の製造方法について説明する。本光学機能層は、特に限定されないが、例えば、透光性樹脂組成物、透光性有機フィラー、溶剤、レベリング剤、増粘剤のプレミックスに金属酸化物ゾルを添加し、ディスパー等で攪拌、作製した塗料を、透明基体上に塗布し、ドライヤー乾燥、UV照射することで所望のものが得られる。この際、前述したいずれかの手法で透光性有機フィラーと金属酸化物微粒子との間に親和性を持たせることで、透光性有機フィラー表面に金属酸化物微粒子を偏在させることが可能になる。尚、塗料の粘度は、10〜2000cpが偏在化に好適である。乾燥温度は50〜130℃が偏在化に好適である。乾燥スピードは、10〜50m/分で比較的ゆっくり乾燥させることが偏在化に好適である。また、作製した塗料を透明基体上に塗布して塗工膜を形成させた直後から、ドライヤー乾燥を行う工程に入る前に予備乾燥工程を設けることが好ましい。これによって、塗工膜の乾燥をさらにゆっくり行うことができるため、透光性有機フィラーの表面に金属酸化物微粒子が偏在しやすくなる。当該予備乾燥工程は、当該塗工膜平面略垂直方向から、当該塗工膜に対して微弱な気流を均一に吹き付ける工程をいう。微弱な気流の風量は0.01〜1.0m/secであることが好ましい。当該風量は、風速計(KANOMAX CLIMO MASTER(商標))の風速検知孔を塗工膜から1cm離した状態において測定すればよい。また、予備乾燥工程における気流の温度は20〜60℃に設定すればよい。
【0066】
本最良形態に係る光学積層体のその他の構成については、従来の光学積層体の製造方法により製造され得る。例えば、透光性基体上に光学機能層を形成する方法に特に制限はなく、例えば、透光性基体上に、透光性微粒子を含む放射線硬化型樹脂組成物が含有される塗料を塗工し、乾燥後、硬化処理して表面に微細な凹凸形状を有する光学機能層を作成することにより行う。透光性基体上に塗料を塗工する手法としては、通常の塗工方式や印刷方式が適用される。具体的には、エアドクターコーティング、バーコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、リバースコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアロールコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、スプレーコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、ダムコーティング、ディップコーティング、ダイコーティング等のコーティングや、グラビア印刷等の凹版印刷、スクリーン印刷等の孔版印刷等の印刷等が使用できる。
【実施例】
【0067】
<実施例1>
金属酸化物微粒子の分散液として、シーアイ化成(株)製「ナノテックアルミナ・アルコール分散品」(粒径31nm、全固形分濃度15%)を500部を用い、表面改質剤として信越化学工業(株)製「KBE−903」(=γ−アミノキシプロピルトリエトキシシラン)5部を添加し、ホモジナイザーにより室温で10分間攪拌、混合した。その後、攪拌を続けながら、トリエチルアミン0.2部をメタノールにて10倍に希釈したのち滴下し、60℃で12時間攪拌を続け、表面改質剤を十分反応させた。次に、この分散液を限外濾過装置(ダイセンメンブレン・システムズ製「MQLSEP」FSIO−FUS1582:膜面積5m,ポリエーテルサルホン製、分画分子量15万,長さ1129mm×径89mm)に移して、未反応の表面改質剤の洗浄を行った。濾過圧が1.6kg/mとなるようにポンプで送液し、膜の外側には純イソプロパノールを送入した。濾過されずに通過したゾルを戻しつつ連続的に濾過を行い、ゾルが初期の6〜7割程度の量になったら純イソプロパノールを加えて濃度を維持した。次に、上記で調整した分散液(15%)を200部とTPGDA(トリプロピレングリコールジアクリレート)を70部を攪拌翼とスリーワンモーター(へイドン社製BL300R)で攪拌しながら、アルコール成分を留去し、本発明の金属酸化物微粒子のゾル(A液)を得た。ここで、A液の固形分うち30重量%が金属酸化物微粒子である。
次に、前記A液を含む表1記載の所定の混合物をディスパーにて30分間攪拌することによって得られた光学機能層用の塗料を、膜厚80μm、全光線透過率92%からなる透明基体のTAC(富士フィルム;TD80UL)の片面上にロールコーティング方式にて塗布(ラインスピード;20m/分)し、風量0.5m/sec、30〜50℃で20秒間予備乾燥を経た後、100℃で1分間乾燥し、窒素雰囲気(窒素ガス置換)中で紫外線照射(ランプ;集光型高圧水銀灯、ランプ出力;120W/m、灯数:4灯、照射距離:20cm)を行うことで塗工膜を硬化させた。このようにして、厚さ6.0μmの光学機能層を有する実施例1の光学積層体を得た。
<実施例2>
光学機能層用塗料を表1記載の所定の混合液に変更し、光学機能層の膜厚を9.0μmとした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の光学積層体を得た。
<実施例3>
金属酸化物微粒子の分散液にビックケミージャパン(株)製「酸化亜鉛微粒子NANOBYK3841」(粒径40nm、40%分散液;メトキシプロピルアセテート希釈)を使用し、実施例1と同様にして、金属酸化物微粒子のゾル(B液)を得た。ここで、B液の固形分うち40重量%が金属酸化物微粒子である。次に、前記B液を含む表1記載の所定の混合物を、ディスパーにて30分間攪拌することによって得られた光学機能層用塗料を、膜厚40μm、全光線透過率92%からなる透明基体のTAC(コニカミノルタオプト社製;KC4UYW)の片面上にマイクログラビアコーティング方式にて塗布(ラインスピード;20m/分)し、風量0.5m/sec、30〜50℃で20秒間予備乾燥を経た後、80℃で1分間乾燥し、窒素雰囲気(窒素ガス置換)中で紫外線照射(ランプ;集光型高圧水銀灯、ランプ出力;100W/cm、灯数;4灯、照射距離;20cm)を行うことで塗工膜を硬化させた。このようにして、厚さ8.0μmの光学機能層を有する実施例3の光学積層体を得た。
<比較例1>
光学機能層用塗料を表1記載の所定の混合液に変更し、光学機能層の膜厚を5.0μmとした以外は、実施例1と同様にして、比較例1光学積層体を得た。
<比較例2>
光学機能層用塗料を表1記載の所定の混合液に変更し、光学機能層の膜厚を7.0μmとした以外は、実施例1と同様にして、比較例2光学積層体を得た。
<比較例3>
光学機能層用塗料を表1記載の所定の混合液に変更し,光学機能層の膜厚を4.0μmとした以外は、実施例1と同様にして、比較例3光学積層体を得た。
<比較例4>
金属酸化物微粒子を粒径が120nmのアルミナゾル(C液)とした以外は、実施例1と同様にして、比較例4光学積層体を得た。ここで、C液の固形分うち30重量%が金属酸化物微粒子である。
【0068】
【表1】

【0069】
密着性
JIS K5600のクロスカット法に従い、行った。
尚、カットの間隔は1mmとし、カット数は11個とする。評価はクロスカットした格子の剥がれていない個数の割合を、%で表示する。例えば、5個剥がれていれば、95/100と表示する。
全光線透過率
JIS K7105に従い、へイズメーター(商品名:NDH2000、日本電色社製)を用いて測定した。
へイズ値
へイズ値は、JIS K7105に従い、へイズメーター(商品名:NDH2000、日本電色社製)を用いて測定した。
「内部へイズ値」は、光学積層フィルムの微細凹凸形状表面に、粘着剤付透明性シートを貼り合わせた状態のもののへイズ値から粘着剤付透明性シートのへイズ値を引いた値である。
内部へイズを測定する際に使用した粘着剤付透明性シートは、以下の通りである。
透明性シート:成分 ポリエチレンテレフタラート(PET) 厚さ38μm
粘着材層 :成分 アクリル系粘着剤 厚さ10μm
粘着剤付透明性シートのへイズ 3.42
「外部へイズ値」は、「へイズ値」および「内部へイズ値」を用い以下の式により算出した。「外部へイズ値」=「へイズ値」−「内部へイズ値」
透過像鮮明度(画鮮)
JIS K7105に従い、写像性測定器(商品名:ICM−IDP、スガ試験機社製)を用い、測定器を透過モードに設定し、光学くし幅0.5mmにて測定。
耐スクラッチ性
日本スチールウール社製のスチールウール#0000を耐磨耗試験機(Fu Chien社製Abrasion Tester,Model:339)に取り付け、光学機能層面を荷重250g/cmにて10回往復させた。その後、摩耗部分の傷を蛍光灯下で確認した。傷の数が0本のとき◎、傷の数が1〜10本未満のとき0、傷の数が10〜30本未満のとき△、傷の数が30本以上のとき×とした。
表面硬度(鉛筆硬度)
鉛筆硬度計(ヨシミツ精機社製)を用い、JIS 5400に準拠して、測定した。測定回数は5回とし、傷がついてない本数を力ウントした。例えば、3Hの鉛筆で、3本傷がなければ、3/5(3H)というようにした。鉛筆硬度は4/5(3H)以上を良好とした。
防眩性
防眩性は、透過画像鮮明度の値が0〜30のとき◎、31〜70のとき○、71〜100のとき×とした。
コントラスト(C/R)
コントラストは各実施例及び各比較例の光学積層体形成面と反対面に、無色透明な粘着層を介して液晶ディスプレイ(商品名:LC−37GX1W、シャープ社製)の画面表面に貼り合せ、液晶ディスプレイ画面の正面上方60°の方向から蛍光灯(商品名:HH4125GL、ナショナル社製)にて液晶ディスプレイ表面の照度が200ルクスとなるようにした後、液晶ディスプレイを白表示及び黒表示としたときの輝度を色彩輝度計(商品名:BM−5A、トプコン社製)にて測定し、得られた黒表示時の輝度(cd/m)と白表示時の輝度(cd/m)を以下の式にて算出した時の値が、600〜800のとき×、801〜1000のとき○、1001〜1200のとき◎とした。コントラスト=白表示の輝度/黒表示の輝度
ギラツキ
ギラツキは、各実施例及び各比較例の光学積層体形成面と反対面に、無色透明な粘着層を介して解像度が50ppiの液晶ディスプレイ(商品名:LC−32GD4、シャープ社製)と、解像度が100ppiの液晶ディスプレイ(商品名:LL−T1620−B、シャープ社製)と、解像度が120ppiの液晶ディスプレイ(商品名:LC−37GX1W、シャープ社製)と、解像度が140ppiの液晶ディスプレイ(商品名:VGN−TX72、ソニー社製)と、解像度が150ppiの液晶ディスプレイ(商品名:nw8240−PM780、日本ヒューレットパッカード社製)と、解像度が200ppiの液晶ディスプレイ(商品名:PC−CV50FW、シャープ社製)の画面表面にそれぞれ貼り合わせ、暗室にて液晶ディスプレイを緑表示とした後、各液晶TVの法線方向から解像度200ppiのCCDカメラ(CV−200C、キーエンス社製)にて撮影した画像において、輝度バラツキが確認されない時の解像度の値が、0〜50ppiのとき×、51〜140ppiのとき○、141〜200ppiのとき◎とした。
偏在
光学積層体を構成する光学機能層の切片を作成し、その断面をTEMで観察した。透光性有機フィラーの断面の周囲観察される金属酸化物微粒子の透光性有機フィラー断面周長1μmあたりの個数([透光性有機フィラー断面周囲(表面)に観測される金属酸化物微粒子の個数]/[透光性有機フィラーの断面周長])を計算した。実施例1に係る光学機能層の断面のTEM写真を図1に示した。比較例1に係るTEM写真を図2に示した。
【0070】
表2に評価結果をまとめた。
【0071】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、実施例1に係る光学機能層断面のTEM写真である。
【図2】図2は、比較例1に係る光学機能層断面のTEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基体の片面又は両面に、直接又は他の層を介して、光学機能層を少なくとも設けた光学積層体であって、
前記光学機能層が、
マトリックスとしての透光性樹脂と、
前記透光性樹脂に分散した透光性有機フィラーと、
粒径が1〜100nmであり、配合量が0.1〜10重量%である金属酸化物微粒子と、を含有し、
ここで、前記金属酸化物微粒子は、前記透光性有機フィラーの表面に偏在していることを特徴とする、光学積層体。
【請求項2】
前記金属酸化物微粒子が、アルミナ微粒子である、請求項1記載の光学積層体。
【請求項3】
透光性基体の片面又は両面に、直接又は他の層を介して、少なくともエネルギー硬化型樹脂組成物と透光性有機フィラーと金属酸化物ゾルとを混合してなる塗料を適用する適用工程と、
前記適用工程後、エネルギーを印加して前記エネルギー硬化型樹脂組成物を硬化させて光学機能層を形成させる硬化工程と
を含む、光学積層体の製造方法。
【請求項4】
前記金属酸化物ゾルが、アルミナゾルである、請求項3記載の光学積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−79111(P2010−79111A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249341(P2008−249341)
【出願日】平成20年9月27日(2008.9.27)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】