説明

光学素子、光学素子への光の入射方法、及び、スーパープリズム

【課題】 フォトニック結晶構造を有する光学素子の光透過効率を向上させる。
【解決手段】 光学素子10は、第1の媒質からなる通常媒質領域11と、第1の媒質中に円孔15が二次元的に配列された、第2の屈折率から成る平均屈折率を有するフォトニック結晶領域12と、通常媒質領域11からフォトニック結晶領域12に向かって屈折率が第1の屈折率から第2の屈折率に徐々に変化する中間領域13とを有する。中間領域13には、突起付き円孔16が周期的に形成され、突起付き円孔の突起の角度は、中間領域13とフォトニック結晶領域12との境界面14から20度傾いている。光は、境界面14の垂線に関して突起の傾き方向とは逆の方向に、境界面14の垂線から10度傾いて入射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均一な媒質中に、屈折率が異なる別の媒質を、対象とする光の波長と同じ程度の周期で二次元的に配列したフォトニック結晶を用いた光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の超小型光集積回路を実現するためのキーテクノロジーとして、フォトニック結晶が注目を集めており、多くの研究機関により、理論及び実験の両面から精力的な研究が行われている。フォトニック結晶は、光の波長と同程度の周期で屈折率が変調された構造を有し、周期場中のマックスウェル方程式の解に従って、通常の固体結晶中の電子に対するエネルギーバンドと同様に、光に対するフォトニックバンドが形成される構造体である。
【0003】
フォトニック結晶では、その特殊な構造の結果として現れる特異な光の分散特性を利用して、光偏向素子や光スイッチなどへの利用が提案されており、例えば非特許文献1には、その特性に関する詳細な記述がある。この文献には、フォトニック結晶を、スーパープリズム効果と呼ばれ、フォトニック結晶に入射する光の波長または角度が僅かに変化しただけで光の伝搬方向を大きく変えることできる光学素子に適用する旨の記載がある。
【0004】
しかし、フォトニック結晶を利用した光学素子では、実際にフォトニック結晶に光を入射させると、入射光は、通常媒質とフォトニック結晶との境界面で、そのほとんどが反射されてしまい、フォトニック結晶内を透過して所望の方向へ伝搬される光量が非常に少ないという問題があった。この反射損失の問題を解決するために、通常媒質とフォトニック結晶との境界領域に反射防止のための構造を設けた技術が、例えば非特許文献2や特許文献1に記載されている。
【0005】
例えば特許文献1に記載された導波路は、図6に示すように、第1の屈折率を有する第1媒質からなる通常媒質領域51と、第1の媒質中に光の入射方向と直交方向に延びる円筒形状を持つ第2の媒質55を光の波長程度の周期で二次元的に配列し、第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を等価屈折率(平均屈折率)として有するフォトニック結晶領域52と、これら双方の領域51、52の境界部分に形成され、光の入射方向と直交方向に延びる筒形状を持ち横断面が半円とその半円から延びる三角形状の突起とから成る第2の媒質56を第1の媒質中に配列した構造の中間領域53とを備える。
【0006】
中間領域53では、突起の向きが、フォトニック結晶領域52(又は通常媒質領域51)と中間領域53との境界面と垂直になるように媒質56を配列している。これによって、中間領域53の屈折率は、通常媒質領域51からフォトニック結晶領域52に向かって第1の屈折率から第2の屈折率へと徐々に変化する。中間領域53は、通常媒質領域51とフォトニック結晶領域52の境界領域に垂直に入射する光に対して、通常媒質領域51とフォトニック結晶領域52との間で異なるインピーダンス不整合を解消し、これによって反射損失を改善する効果を実現している。
【0007】
【特許文献1】特開2002−71981号公報
【非特許文献1】H.Kosaka等の「Superprism phenomena in photonic crystals」(Physical Review B,Vol.58,No.16,p.R10096,1998年)
【非特許文献2】T.Baba等の「Interfaces of Photonic Crystals for High Efficiency Light Transmisson」(Japanese Journal of Applied Physics,Vol.40,No.10,p.5920,2001年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1(及び非特許文献2)に記載の方法によって実現できる1つの境界領域あたりの透過率は96%程度と非常に高いものの、その透過率改善の効果は、光が境界領域に対して垂直に入射する場合に限られていた。一方、スーパープリズム効果では、基本的に光を斜め方向から入射させる必要がある。ここで、特許文献1に記載の構造に、例えば境界領域に引いた垂線に対して10°の角度で光を入射させた場合には、その透過率は1つの境界領域あたりで約47%程度に低下してしまう。なお、光の斜め入射では、非特許文献2に記載の手法に従って、図7のように、中間領域53の突起を、境界領域に立てた垂線から10度傾けた光の入射方向に向けることも考えられる。しかし、このように、境界領域に引いた垂線に対して10度の角度で光を入射させ、光の入射方向と突起の向く方向とを同一としても、透過率は1つの境界領域あたり高々25%程度と低い値しか得られない。この場合に、通常媒質領域からフォトニック結晶領域内に入射し、更に、フォトニック結晶領域から別の通常媒質領域に出射する2回の境界領域の通過を考慮すると、入射光量の内の約94%が反射により失われてしまう。さらに、この程度の低反射率特性でさえ、実現される帯域が非常に狭いという問題があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑み、第1の屈折率を有する通常媒質領域と、第2の屈折率を平均屈折率として有するフォトニック結晶領域と、通常媒質領域とフォトニック結晶領域との間に配設され、通常媒質領域からフォトトニック結晶領域に向かって屈折率が第1の屈折率から第2の屈折率へと変化する中間領域とを備える光学素子を改良し、もって光の透過効率が改善できる光学素子、該光学素子への光の入射方法、及び、スーパープリズムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の第1発明の光学素子は、第1の屈折率を有する第1の媒質から成る通常媒質領域と、第2の媒質が前記第1の媒質中に一定の周期で二次元的に配列され、前記第1の屈折率とは異なる平均屈折率を有するフォトニック結晶領域と、前記通常媒質領域と前記フォトニック結晶領域との境界部分に配設される中間領域であって、光の入射方向と直交方向に延びる筒形状を持ち横断面が前記フォトニック結晶領域側の部分で半円形状を有し前記通常媒質領域側の部分で前記半円形状から延びる突起を有する突起付き半円形状を持つ第2の媒質が前記第1の媒質中に周期的に配列される中間領域とを備える光学素子において、
前記突起付き半円形状の突起の向きが、前記中間領域と前記フォトニック結晶領域との間の境界面に垂直な方向から、10度より大きく30度以下傾いていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第2発明の光学素子は、第1の屈折率を有する第1の媒質から成る通常媒質領域と、第2の媒質が前記第1の媒質中に一定の周期で二次元的に配列され、前記第1の屈折率とは異なる平均屈折率を有するフォトニック結晶領域と、前記通常媒質領域と前記フォトニック結晶領域との境界部分に配設され、光の入射方向と直交方向に延びる筒形状を持ち横断面が半円形状を有する第2の媒質が前記第1の媒質中に周期的に配列される中間領域とを備え、前記半円形状の直線部分の向きが、前記中間領域と前記フォトニック結晶領域との間の境界面に平行な方向から所定角度傾いていることを特徴とする。
【0012】
本発明者らは、通常媒質領域とフォトニック結晶領域との境界面に設ける反射防止構造について、様々な形状に対して検討を行ない、その結果、例えば図1に示すように、光の入射方向に沿った横断面が、半円と半円から延びる三角形状の突起とから成る筒形状を有する媒質を、突起の向きが境界方向から一定角度傾くように配置し、且つ、その突起の傾き方向と同一方向ではなく、むしろこの突起の傾きとある一定の角度で傾けて光を入射すること、或いは、図2に示すように、半円筒である媒質を境界面に対して一定角度傾けて配置することによって、境界面における光の反射損失を大幅に低減させることができることを見出した。これら構造を用いることにより、広い帯域の光に対して、特に斜め入射の光に対して、1つの境界面あたりでおよそ90%以上の光を所望の方向へ透過させることが可能になる。
【0013】
上記光学素子は、例えばSOI基板のシリコン層中に形成される。この場合には、中間領域は、シリコン層で構成される第1の媒質と、この第1の媒質中に形成される空孔とから構成することが出来る。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光学素子によると、通常媒質からフォトニック結晶領域への光入射及びその逆方向への光出射の際の反射損失を、特にスーパープリズムにおいて有効な斜め入射光及び出射光に対して、大幅に低減させることが出来る。
【0015】
本発明の光学素子への光入射方法によると、光の入射方向を、フォトニック結晶領域(又は通常媒質領域)と中間領域との間の境界面と垂直な方向に関して、前記突起の向きとは逆側に傾けることで、特に良好な光透過率が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の第1発明の一実施形態例に係る光学素子の構造と、その光学素子に光を入射する方向及びその進行方向とを模式的に示している。光学素子10は、例えば一様なシリコン層からなる通常媒質領域11と、光の入射方向と直交方向に延びる円筒形状の空孔15が、光の波長程度の周期でシリコン層中に二次元的に配列されたフォトニック結晶領域12と、通常媒質領域11とフォトニック結晶領域12との間に配設される中間領域とを有する。中間領域12では、光の入射方向と直交方向に延びる筒形状を持ち横断面が半円及び半円から延びる三角形状の突起からなる突起付き半円を有する空孔16が、通常媒質領域11とフォトニック結晶領域12との境界方向に沿って通常媒質中に周期的に配列されている。
【0017】
フォトニック結晶領域12は、正方格子状に周期的に配列された空孔15が45度回転して得られた空孔配列を有する。中間領域13の空孔16は、フォトニック結晶構造の最上段の円孔の半円部分を三角状の突起に変えた構造を有する。中間領域13の各空孔16は、横断面における三角形状の突起が、通常媒質領域11とフォトニック結晶領域12との境界方向と垂直な方向から約20度傾けて形成されている。この傾き角は、好ましくは、10度よりも大きく且つ30度以下の範囲、より好ましくは、15度以上25度以下の範囲から選択される。
【0018】
入射光は、例えば1550nmの波長を有し、境界方向と垂直な方向(例えば、フォトニック結晶12と中間領域13との境界面14に引いた垂線方向)に関して、突起付き半円孔16の突起が傾いた方向とは逆の方向に、その垂直方向から約10度傾けて入射される。入射光は、中間領域13でその方向が変わり、フォトニック結晶領域12中を、境界面14の垂線に関して入射光と同じ側で且つ垂線と45度よりも幾らか大きな角度を成して透過する。中間領域13は、屈折率が光の進行方向に向かって徐々に変化する低反射構造部として機能する。
【0019】
図2は、本発明の第二発明の一実施形態例に係る光学素子の構造と、その光学素子に光を入射する方向及びその進行方向とを模式的に示している。この光学素子20は、例えば一様なシリコンからなる通常媒質領域21と、光の入射方向と直交方向に延びる円筒形状の空孔25が光の波長程度の周期で二次元的に配列されたフォトニック結晶領域22と、半円筒形状の空孔26が通常媒質領域21とフォトニック結晶領域22の境界方向に沿って周期的に配列された中間領域23とから構成される。空孔26の横断面で見て半円の直線状の縁部は、つまり、半円筒の側壁平面部分は、境界方向から約15度傾いた方向に延びている。
【0020】
本実施形態例のフォトニック結晶領域22の構造は、先の実施形態例のフォトニック結晶領域12と同様であるが、通常媒質領域21とフォトニック結晶領域22の境界領域である中間領域23は、先の実施形態例とは45度異なる方向を向いている。中間領域23は、第1発明の中間領域と同様に、通常媒質領域21が持つ第1の屈折率から、フォトニック結晶領域22が持つ平均屈折率に徐々に変化する低反射構造部として機能する。
【実施例1】
【0021】
図3は、本発明の第1発明を適用して作製した、本発明の第1の実施例に係る光学素子の構造を平面図で示している。同図には、部分拡大図を併せて示した。本実施例の光学素子30は、第1発明の光学素子の2つを、双方のフォトニック結晶領域12が共通の領域によって構成された構造を有する。本実施例の光学素子は、例えばSOI(Silicon-On-Insulator)基板上に以下のように形成される。
【0022】
SOI基板は、Si基板上に厚さ約3μm程度のSiO2、及び、0.3μm程度のSiが順次に積層された構造を有する。最上層のSi薄膜層に、電子線ビームリ・ソグラフィーとリアクティブイオン・エッチング(RIE)とによって、直径(2r)が270nm程度の空孔を周期a=450nm程度で正方格子状に配列した空孔列を45度回転した形状としたフォトニック結晶領域12を形成する。また、フォトニック結晶領域12の双方の終端部を成す中間領域13、18には、図3に示すように、フォトニック結晶領域12の円孔15と同じ直径を有する円孔の半分を三角形状の突起に置き換えた形状の空孔16を、フォトニック結晶領域12と同様の周期で境界方向に沿って形成する。ここで、突起の向く方向が、この中間領域13とフォトニック結晶構造との境界面に垂直な方向から約20度傾いた方向としている。双方の中間領域13、18の突起16は、隣接する通常媒質領域11、17を向き、従って、互いに逆方向を向いている。
【0023】
図5に、断面が突起付き半円形状を有する空孔16の突起部及び半円の寸法関係を定めるパラメータであるアスペクト比の定義を示す。同図において、突起部を成す三角形の頂点から、半円の円弧中心点までの距離をbとし、円弧の直径を2rとして、アスペクト比をb/2rと定義する。本実施例では、アスペクト比として約3を選定している。このアスペクト比に関しては、2.5から4.0の間で、ほぼ同等の反射防止効果が得られることが実験により確かめられた。
【0024】
その後、フッ酸系のエッチャントにより、Si層の導波路を構成する光透過領域に隣接するSiO2層の部分をその端面からエッチングし、光透過領域に隣接するSiO2層の部分を溝状に除去する。次いで、この基板と、溝状に除去したSiO2層の部分とSi層の光透過領域を挟んで対向する表面部分に空気層を持ち、その他の表面部分にSiO2層を形成したSi基板とを貼り合わせる。これによって、フォトニック結晶領域を含むSi層を空気クラッド層で挟んだ構造の、所謂エアブリッジ型と呼ばれる導波路構造が得られる。
【0025】
ここで、上記実施形態例に係る光学素子の作製に用いる材料については、SOI基板に限定する必要はなく、InGaAsP系やGaAs系、AlGaInAs系、GaInNAs系、GaN系などの半導体材料が好適に利用できる。これら半導体材料を用いる場合には、屈折率の違いなどを考慮した計算により、円孔の周期や円孔の径、或いは、光の入射角度などについて適切な設計を行なう必要がある。また、光学素子の動作波長帯についても、1550nm帯に限る必要はなく、同様に適切な設計を行なうことにより、例えば可視光波長帯で動作する光学素子も実現できる。
【0026】
上記のように作製した図3の光学素子のサンプルに光を入射し、その透過光の強度を測定して透過率を評価した。その結果、入射角度をフォトニック結晶と中間領域の境界面に垂直な方向に対して約10度とした場合に、波長1500nm〜1600nmの広い波長範囲の光に対して、通常媒質領域から入射した光のうちの90%以上がフォトニック結晶領域側に入射し、且つ、フォトニック結晶領域側に入射した光のうちの90%以上が、対向する通常媒質側に透過することが確認された。
【0027】
本実施例の光学素子は、1550nm帯で動作するスーパープリズム、例えば、波長によって伝搬方向を変化させる光分波器として機能する。
【実施例2】
【0028】
図4は、本発明の第1発明及び第2発明を適用して作製された、本発明の第2実施例に係る光学素子の構造を平面図で示す。同図には、同様に部分拡大図を併せて示した。本実施例の光学素子は、例えば、第1実施例の光学素子と同様にSiO基板上に形成される。本実施例の光学素子40は、平面形状が台形構造を有し、光入射側端面41、及び、この光入射側端面41と45度の角度を成す光出射側端面42のそれぞれに、通常媒質領域11、21及び中間領域13、23を有する。フォトニック結晶領域12は、双方の中間領域13、23の間に形成される。
【0029】
光入射側端面41に隣接する中間領域13は、フォトニック結晶領域12の円孔15を突起付き円孔16に変えた低反射構造を有する。また、台形の斜辺に相当する、入射側端面41と45度の角度を成す光出射側端面42に隣接する中間領域2では、フォトニック結晶領域12の円孔15を半円孔26に変えた低反射構造を有する。
【0030】
本実施例の光学素子は、以下のようにして形成される。円孔等の形成方法に関しては、先の第1実施例の光学素子と同様に作製する。光入射側端面41に隣接する中間領域13の低反射構造は、突起付き半円孔16の三角の突起形状を、光入射側端面41に立てた垂線から20度傾けて配置しておく。
【0031】
一方、光出射側端面42に隣接する中間領域23の低反射構造は、図4に示すように、半円孔23の半円の直線部を光出射側端面42から傾けて配置する。傾ける角度は、円弧の直径に相当する直線部(平面部分)に立てた垂線が、光の入射側端面41に引いた垂線と60度の角度を成すようにしている。換言すると、フォトニック結晶領域12からの光の入射角を、実際にフォトニック結晶素子12と中間領域23の境界面に光が入射する入射角よりも、半円形状の直線部に対して考えた入射角の方が小さくなるような方向へ、半円の直線部を約15度傾けている。この傾斜角は、例えば0度よりも大きく30度以下の範囲から、より好ましくは、10度以上で20度以下の範囲から選択できる。
【0032】
半円形状の空孔26を有する中間領域23は、光出射側端面42から浅い角度で出射する光に対して、有効な反射防止構造として作用し、1境界領域あたりで80%近い透過率が確認できた。
【0033】
上記のように作製した、本発明の第2実施例のフォトニック結晶素子40のサンプルに、波長が1550nmの光、及び、波長が1585nmの光を、それぞれ、境界面14に立てた垂線に関して突起の向きの傾きとは異なる方向に傾けて、入射角10度で入射した。その結果、出射方向が波長によって、図4のように分離され、本実施例の光学素子がスーパープリズム(光分波器)として有効に機能することが確認された。更に、双方の波長成分について、光学素子の透過率として、70%以上が実現できた。この入射角は、好ましくは5度から15度の範囲から選択される。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の光学素子は、波長によって伝搬方向を変化させるスーパープリズム、例えば光分波器として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1発明の一実施形態例に係る光学素子を光の透過方向と共に示す平面図。
【図2】本発明の第2発明の一実施形態例に係る光学素子を光の透過方向と共に示す平面図。
【図3】本発明の第1の実施例の光学素子を光の透過方向と共に示す平面図。
【図4】本発明の第2の実施例の光学素子を光の透過方向と共に示す平面図。
【図5】突起付き半円のアスペクト比を定義するための平面図。
【図6】従来の光学素子の平面図。
【図7】別の従来の光学素子の平面図。
【符号の説明】
【0036】
10:光学素子
11:通常媒質領域
12:フォトニック結晶領域
13:中間領域
14:境界面
15:円孔
16:突起付き半円孔
17:通常媒質領域
18:中間領域
19:境界面
20:光学素子
21:通常媒質領域
22:フォトニック結晶領域
23:中間領域
24:境界面
25:円孔
26:半円孔
40:光学素子
41:光入射側端面
42:光出射側端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の屈折率を有する第1の媒質から成る通常媒質領域と、第2の媒質が前記第1の媒質中に一定の周期で二次元的に配列され、前記第1の屈折率とは異なる平均屈折率を有するフォトニック結晶領域と、前記通常媒質領域と前記フォトニック結晶領域との境界部分に配設される中間領域であって、光の入射方向と直交方向に延びる筒形状を持ち横断面が前記フォトニック結晶領域側の部分で半円形状を有し前記通常媒質領域側の部分で前記半円形状から延びる突起を有する突起付き半円形状を持つ第2の媒質が前記第1の媒質中に周期的に配列される中間領域とを備える光学素子において、
前記突起付き半円形状の突起の向きが、前記中間領域と前記フォトニック結晶領域との間の境界面に垂直な方向から、10度より大きく30度以下傾いていることを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記突起の向きと、前記境界面に垂直な方向との成す角度が15度以上で25度以下であることを特徴とする、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記突起の頂点と前記半円の円弧との間の最大距離bと前記半円の直径2rとの比で定められるアスペクト比(b/2r)が2.5以上4.0以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光学素子への光の入射方法。
【請求項4】
前記フォトニック結晶領域は、前記第1の媒質内に、光の入射方向と直交方向に延びる複数の円筒形状の第2の媒質が、二次元の格子状に配列されて形成されることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一に記載の光学素子。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一に記載の光学素子に光を入射する方法であって、光の入射方向を、前記境界面に垂直な方向に関して前記突起の向きとは逆方向に、前記境界面に垂直な方向から5度以上で15度以下の範囲の角度傾けることを特徴とする、光学素子への光の入射方法。
【請求項6】
それぞれが第1の屈折率を有する第1の媒質から成る第1及び第2の通常媒質領域と、
前記第1の通常媒質領域と前記第2の通常媒質領域との間に配設され、第2の媒質が前記第1の媒質中に一定の周期で二次元的に配列され、前記第1の屈折率とは異なる平均屈折率を有するフォトニック結晶領域と、
前記第1の通常媒質領域と前記フォトニック結晶領域との境界部分、及び、前記第2の通常媒質領域と前記フォトニック結晶領域との境界部分にそれぞれ配設される第1及び第2の中間領域であって、光の入射方向と直交方向に延びる筒形状を持ち横断面が前記フォトニック結晶領域側の部分で半円形状を有し前記通常媒質領域側の部分で前記半円形状から延びる突起を有する突起付き半円形状を持つ第2の媒質が前記第1の媒質中に周期的に配列される第1及び第2の中間領域とを備え、
前記突起付き半円形状の突起の向きが、前記中間領域のそれぞれと前記フォトニック結晶領域との間の境界面に垂直な方向から10度よりも大きく30度以下傾いていることを特徴とする光学素子。
【請求項7】
前記突起の向きと、前記境界面に垂直な方向との成す角度が20度であることを特徴とする、請求項6に記載の光学素子。
【請求項8】
前記突起の頂点と前記半円の円弧との間の最大距離bと前記半円の直径2rとの比で定められるアスペクト比(b/2r)が2.5以上4.0以下であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の光学素子。
【請求項9】
第1の屈折率を有する第1の媒質から成る通常媒質領域と、
第2の媒質が前記第1の媒質中に一定の周期で二次元的に配列され、前記第1の屈折率とは異なる平均屈折率を有するフォトニック結晶領域と、
前記通常媒質領域と前記フォトニック結晶領域との境界部分に配設され、光の入射方向と直交方向に延びる筒形状を持ち横断面が半円形状を有する第2の媒質が前記第1の媒質中に周期的に配列される中間領域とを備え、
前記半円形状の直線部分の向きが、前記中間領域と前記フォトニック結晶領域との間の境界面に平行な方向から所定角度傾いていることを特徴とする光学素子。
【請求項10】
前記所定角度が0度より大きく30度以下であることを特徴とする、請求項9に記載の光学素子。
【請求項11】
前記フォトニック結晶領域は、前記第1の媒質内に、光の入射方向と直交方向に延びる円筒形状を持つ第2の媒質が、一定の周期で二次元の格子状に配列されて形成されることを特徴とする、請求項10又は11に記載の光学素子。
【請求項12】
光入射面を有し第1の屈折率を有する第1の媒質から成る第1の通常媒質領域と、
第2の媒質が前記第1の媒質中に一定の周期で二次元的に配列され、前記第1の屈折率とは異なる平均屈折率を有するフォトニック結晶領域と、
前記第1の通常媒質領域と前記フォトニック結晶領域との境界部分に配設される第1の中間領域であって、光の入射方向と直交方向に延びる筒形状を持ち横断面が前記フォトニック結晶領域側の部分で半円形状を有し前記通常媒質領域側の部分で前記半円形状から延びる突起を有する突起付き半円形状を持つ第2の媒質が前記第1の媒質中に周期的に配列される第1の中間領域と、
前記フォトニック結晶領域における第2の媒質の配列方向から45度の角度を成す光出射面を有し、前記第1の媒質から成る第2の通常媒質領域と、
前記第2の通常媒質領域と前記フォトニック結晶領域との間に配設される第2の中間領域であって、光の出射方向と直交方向に延びる筒形状を持ち横断面が半円形状を有する第2の媒質が前記第1の媒質中に前記光出射面と平行な方向に周期的に配列される第2の中間領域とを備え、
前記突起付き半円形状の突起の向きが、前記中間領域と前記フォトニック結晶領域との間の境界面に垂直な方向から、10度より大きく30度以下傾いており、
前記半円形状の直線部分の向きが、前記中間領域と前記フォトニック結晶領域との間の境界面に平行な方向から所定角度傾いていることを特徴とする光学素子。
【請求項13】
請求項1〜4、6〜12の何れか一に記載の光学素子を備えるスーパープリズム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−47442(P2006−47442A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225111(P2004−225111)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年2月3日 社団法人電子情報通信学会東京支部主催の「フォトニック結晶〜基礎から製品まで〜」において文書をもって発表
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】