説明

光学素子のアクチュエータ

【課題】対物レンズを直交する2方向に対して高い感度で駆動できるアクチュエータを提供する。
【解決手段】NA0.7〜0.9の対物レンズを備えるレンズホルダの対向する2面にそれぞれ固定された矩形で偏平状の1個のフォーカスコイル、2個トラッキングコイルと、コイルの外側に対向配置された複数のマグネットと、L字型のヨークとを備え、2個のトラッキングコイルはレンズの光軸と直交する方向に各々の1辺が対向するように配置し、フォーカスコイルはトラッキングコイルに対して光軸方向にずらせて配置し、ヨークの長辺は最も外側に位置して各々複数のマグネットが固定され、ヨークの短辺はレンズホルダとフォーカスコイルの1辺との間に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光磁気ディスクドライブ、追記型ディスクドライブ、相変化型ディスクドライブ、CD−ROM、DVD、光カードなどの光記録媒体に対して情報を記録および/または再生する情報記録再生装置に用いられる対物レンズや、光通信に用いられる光ファイバ用のカップリングレンズ、または走査顕微鏡の対物レンズなどの光学素子を駆動可能に支持するアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、上記情報記録再生装置などの光学装置に用いられる光ピックアップ用アクチュエータでは、光学素子である対物レンズを直交するフォーカス方向およびトラッキング方向の2方向に駆動可能に支持し、対物レンズの光スポットを正確に記録媒体の記録トラックに位置させる必要がある。このため、光学素子を2方向に駆動可能に支持するアクチュエータとしては、従来から記録密度やアクセス速度の向上などを図ることを目的として駆動感度の高い様々なものが提案されている。
【0003】
例えば、実開平2−30120号公報には、図11に示す如くのアクチュエータが提案されている。このアクチュエータは、対物レンズ10をホルダ11で保持し、フォーカス方向Xおよびトラッキング方向Yに直交するタンジェンシャル方向Zにおいてホルダ11に対向配置した2つの取り付け面11f(図11では一方のみ表示)にそれぞれ、扁平状のフォーカスコイル12およびトラッキングコイル13を1つづつ配置し、これらフォーカスコイル12およびトラッキングコイル13に対して、対向配置したマグネット14からヨーク15を介して有効な磁界を差し向けたものである。この従来技術は、フォーカスコイル12においては作用辺12a,12bの2辺を作用辺として利用し、トラッキングコイル13においては作用辺13a,13bの2辺を電磁力の発生する作用辺として利用することでアクチュエータの応答性(駆動感度)を高めるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−30120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、こうしたアクチュエータにあっては、フォーカスコイル12およびトラッキングコイル13に対向する位置にマグネット14およびヨーク15を配置して閉磁気回路を構成するマグネットのトラッキングコイル12,13側に配置されたヨークを有しないオープン磁気回路を形成しているため、フォーカスコイル12およびトラッキングコイル13に作用する磁束密度が低く、駆動感度が低いという欠点があった。
【0006】
そこで、フォーカスコイル12(トラッキングコイル13)を介してマグネット14に対向する位置に新たなヨークを配置して、このヨークとマグネット14との間にフォーカスコイル12(トラッキングコイル13)の有効部分を挟み込んで磁気ギャップを構成すると、フォーカスコイル12(トラッキングコイル13)を差し向けた磁束の密度を高めることができる。
【0007】
ところが、こうした場合、対物レンズ10を保持するホルダ11に新たなヨークを収納するための大きな凹部や開口部などを形成する必要があるため、ホルダ11の剛性と共に共振周波数が低下してしまい、例えば、対物レンズ10の位置を微調整する際、適切なフォーカスサーボまたはトラッキングサーボが得られないという不都合が生じていた。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解消するためになされたものであって、光学素子を直交するフォーカス方向およびトラッキング方向の2方向に対して高い感度で駆動させることができる剛性の高い光学素子のアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくともNA0.7〜0.9の対物レンズを光学素子として有し、当該光学素子を直交するフォーカス方向およびトラッキング方向の2方向に駆動可能に支持する光学素子のアクチュエータにおいて、対物レンズを保持するホルダと、このホルダの一取り付け面に取り付けられ該ホルダを前記フォーカス方向に駆動させるフォーカスコイルおよびトラッキング方向に駆動させるトラッキングコイルと、前記フォーカスコイルおよび前記トラッキングコイルに磁束を差し向ける磁気回路とを有し、当該磁気回路は、マグネットとヨークとを備え、前記マグネットは、前記フォーカスコイルの第1の作用辺に前記フォーカス方向に沿った力を生じさせると共に、前記トラッキングコイルの第1の作用辺に前記トラッキング方向に沿った力を生じさせるための、共用の磁束を前記フォーカスコイル及び前記トラッキングコイルの第1の作用辺に差し向ける第1磁極と、前記フォーカスコイルの第2の作用辺に前記フォーカス方向に沿った他の力を生じさせるための磁束を前記フォーカスコイルの第2の作用辺に差し向ける第2磁極とを備え、前記ヨークは、前記マグネットを挟んで前記フォーカスコイル及び前記トラッキングコイルと対向する位置に配置された外ヨークを有し、少なくとも前記フォーカスコイル及び前記トラッキングコイルの第1の作用辺に前記第1磁極から差し向けられる前記共用の磁束が開磁気回路中を流れる磁束となるように構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明は、少なくともNA0.7〜0.9の対物レンズを光学素子として有して光学素子を直交するフォーカス方向およびトラッキング方向の2方向に駆動可能に支持する光学素子のアクチュエータにおいて、対物レンズを保持するホルダと、このホルダの一取り付け面に取り付けられ該ホルダを前記フォーカス方向に駆動させるフォーカスコイルおよびトラッキング方向に駆動させるトラッキングコイルと、前記フォーカスコイルおよび前記トラッキングコイルに磁束を差し向ける磁気回路とを有し、当該磁気回路は、マグネットとヨークとを備え、前記マグネットは、前記フォーカスコイルの第1の作用辺に前記フォーカス方向に沿った力を生じさせると共に、前記トラッキングコイルの第1の作用辺に前記トラッキング方向に沿った力を生じさせるための、共用の磁束を前記フォーカスコイル及び前記トラッキングコイルの第1の作用辺に差し向ける第1磁極と、前記トラッキングコイルの第2の作用辺に前記トラッキング方向に沿った他の力を生じさせるための磁束を前記トラッキングコイルの第2の作用辺に差し向ける第2磁極とを備え、前記ヨークは、前記マグネットを挟んで前記フォーカスコイル及び前記トラッキングコイルと対向する位置に配置された外ヨークを有し、少なくとも前記フォーカスコイル及び前記トラッキングコイルの第1の作用辺に前記第1磁極から差し向けられる前記共用の磁束が開磁気回路中を流れる磁束となるように構成されていることを特徴とするものである。

【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一の形態である光ディスク用の記録再生装置を示す斜視図である。
【図2】図1の上面図である。
【図3】図1をタンジェンシャル方向から示した側面図である。
【図4】同形態の斜視断面図である。
【図5】同形態のマグネットを示す平面図である。
【図6】同形態のコイルおよびマグネットをホルダから示す斜視図である。
【図7】同形態のコイルおよびマグネットをホルダから示す正面図である。
【図8】本発明の第二の形態を示す要部断面図である。
【図9】本発明の第三の形態を示す要部上面図である。
【図10】本発明の第四の形態を示す要部上面図である。
【図11】従来の光学素子のアクチュエータを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の様々な形態を、添付図面に基づき詳細に説明する。
【0013】
図1〜図3はそれぞれ、本発明の第一の形態である光ディスク用の記録再生装置を示す斜視図、図1の上面図、図1をトラッキング方向から示した側面図であり、図4にはその斜視断面図を示す。
【0014】
この記録再生装置は、相変化記録方式の光ディスク1(図3参照)の記録再生装置であって、光学素子である対物レンズ100を、直交する第1方向(フォーカス方向)Xおよび第2方向(トラッキング方向)Yの2方向に駆動可能に支持するものである。なお、光ディスク1には、図3に示す如く、記録面1fを0−0.1(mm)の薄いカバーガラス1cで覆った既存のものを使用する。
【0015】
対物レンズ100は、図4に示す如く、NA0.7〜0.9と高いNAを有するものであり、中心軸O1が対物レンズ100の光軸と一致するホルダ110の上端に形成された取り付け穴に固定保持される。ホルダ110はまた、その下端に色収差補正レンズ120を固定保持して、この色収差補正レンズ120を対物レンズ100のフォーカス方向Xのバランサとして機能させる一方、対物レンズ100を色収差補正レンズ120のフォーカス方向Xのバランサとして機能させている。この場合、ホルダ110には余計なバランサが不要となる。
【0016】
ホルダ110は、図4に示す如く、フォーカス方向Xおよびトラッキング方向Yに直交する第3方向(タンジェンシャル方向)Zにおいて該ホルダ110に対向配置された2つの取り付け面111,112とを有する。
【0017】
取り付け面111は、図2に示す如く、第1扁平コイル(以下、フォーカスコイルという)131を収納するコイル溝を有し、この溝によってフォーカスコイル131が取り付け面111に位置決めされた状態で、取り付け面111の全面に対して平行に接着固定されている。また取り付け面111は、タンジェンシャル方向Zに沿って突出した突起(図示せず)を有し、この突起が2つの第2扁平コイル(以下、トラッキングコイルという)132,133それぞれの内部と接触することによって、2つのトラッキングコイル132,133がフォーカスコイル131を介して取り付け面111に位置決めされた状態で、取り付け面111の全面に対して平行に接着固定されている。
【0018】
取り付け面112も同様に、図2に示す如く、第1扁平コイル(以下、フォーカスコイルという)134を収納するコイル溝(図示せず)が形成されており、このコイル溝によってフォーカスコイル134が取り付け面112に位置決めされた状態で、取り付け面112の全面に対して平行に接着固定されている。また、取り付け面112も同様に、タンジェンシャル方向Zに沿って突出した突起(図示せず)を有し、この突起が2つの第2扁平コイル(以下、トラッキングコイルという)135,136それぞれの内部と接触することによって、2つのトラッキングコイル135,136がフォーカスコイル134を介して取り付け面111に位置決めされた状態で、取り付け面111の全面に対して平行に接着固定されている。
【0019】
つまり、取り付け面111(112)では、フォーカスコイル131(134)およびトラッキングコイル132,133(135,136)は、ホルダの中心軸O1、即ち、対物レンズ100の光軸を介して対向するように設けられたフォーカス方向Xに平行な取り付け面111(112)に対して平行に取り付けられている。
【0020】
またホルダ110は、トラッキングコイル132,133側の上下端に2ヶ所づつ、フォーカス方向Xに沿って延在する固定部115を一体に備え、この固定部115にはそれぞれ、ばね140a,140bの一端が接着固定されている。ばね140a,140bは、厚さ0.05(mm)程度のベリリウム銅からなる薄板をエッチング加工したものであって、ばね140a,140bの中間部は、対物レンズ100の周囲を取り囲むように位置している。そしてばね140a,140bの他端はそれぞれ、スプリングホルダ142の上下端に2ヶ所づつ、スプリングホルダ142と一体に形成されたばね固定部142a,142bに接着固定されている。
【0021】
ベース141は、図1,3に示す如く、厚さ0.6(mm)の鉄板をタンジェンシャル方向Zの両側において折り曲げ成形したほぼT字形状の壁部分141a,141bと、その底部から突出させた壁部分141c,141dとを備えるものであって、壁部分141a,141bはそれぞれ外ヨークとして機能する一方、壁部分141c,141dはそれぞれ内ヨークとして機能し、壁部分(以下、外ヨークという)141a,141bの内側にはそれぞれ、マグネット151,152を接着する。なお、スプリングホルダ142の取り付け面142fは、図2に示す如く、外ヨーク141bの外面に接着固定されている。
【0022】
マグネット151(152)は、図5に示す如く、主となる磁極151a(152a)の左右下を取り囲む位置に3つの第2磁極151b,151c,151d(152b,152c,152d)を配置したほぼT字形状であり、第1磁極151aは第2磁極151b,151c,151d(152b,152c,152d)に対して逆向きの磁極を有する。なお、第1磁極151a(152a)および第2磁極151b,151c(152b,152c)は、1つのマグネットを3極着磁したものであり、残りの第2磁極151d(152d)は、第1磁極151a(152a)および第2磁極151b,151c(152b,152c)と別体の小さなマグネットで構成される。
【0023】
図6および図7はそれぞれ、コイル131〜133(134〜136)およびマグネット151(152)をホルダ110(図示せず)から示す斜視図および正面図である。
【0024】
図3および図6に示す如く、第1磁極151a(152a)および第2磁極151b,151c(152b,152c)には、外ヨーク141a(141b)のみを配置して磁気ギャップの無い開磁気回路を構成する。これに対し、第2磁極151d(152d)には、この第2磁極面151d(152d)に対向する高さの低い壁部分141c(141d)が外ヨーク141a(141b)と共に内ヨークとして配置されるため、閉磁気回路中に磁気ギャップを構成する。
【0025】
さらに詳細に説明すると、フォーカスコイル131(134)は、図7に示す如く、その上側作用辺131a(134a)がマグネット151(152)の第1磁極151a(152a)に、また、その下側作用辺131b(134b)がマグネット151(152)の第2磁極151d(152d)に対向する位置に配置されている。
【0026】
またトラッキングコイル132,133(135,136)は、その外側作用辺132b,133b(135b,136b)がそれぞれ、第2磁極151b,151c(152c,152b)に、また、その内側作用辺132a,133a(135a,136a)がそれぞれ、第1磁極151a(152a)に対向する位置に配置されている。
【0027】
これにより、図6に示す如く、第1磁極151aからトラッキングコイル132,133(135,136)の内側作用辺132a,133a(135a,136a)それぞれを通って第2磁極151b(152c)または第2磁極151c(152b)に至る開磁気回路中を流れる磁束Φ1と、第1磁極151aからフォーカスコイル131の上側作用辺131a(134a)を通って第2磁極151dに至る開磁気回路中を流れる磁束Φ2と、第2磁極151dから外ヨーク141a(141b)、内ヨーク141c(141d)およびフォーカスコイル131の下側作用辺131b(134b)を通って再度第2磁極151dに至る閉磁気回路中を流れる磁束Φ3とを形成する。
【0028】
つまり、第1磁極151a(152a)は、第1コイルの第1部分となるフォーカスコイル131(134)の上側作用辺131a(134a)と、第2コイルの第1部分となるトラッキングコイル132,133(135,136)の内側作用辺132a,133a(135a,136a)とに対向配置することにより兼用され、それ以外の第2磁極151b〜151d(152b〜152d)はそれぞれ、第2コイルの第1部分以外の第2部分となるトラッキングコイルの外側作用辺132b,133b(135b,136b)、第1コイルの第1部分以外の第2部分となるフォーカスコイル131(134)の下側作用辺131b(134b)の1辺のみに対向配置することにより専用に使用される。
【0029】
ベース141は、図2に示す如く、そのトラッキング方向Yの外側面にセンサホルダ160が固定されている。センサホルダ160は、タンジェンシャル方向Zにおいて対向する両端に、トラッキング方向Yに2分割された受光面を有するPD(フォトダイオード)161およびLED(発光ダイオード)162を備える。
【0030】
LED162から出射した光は、図2に示す如く、ホルダ110のトラッキング側に配した遮光用バー113に投射されて、その中央部を遮光されPD161の受光部に入射される。このとき、対物レンズ100と一体にホルダ110がトラッキング方向Yに移動すると、遮光用バー113もトラッキング方向Yに移動するため、PD161上の2分割された受光面の出力差を取ることによって、対物レンズ100のトラッキング方向Yでの位置を検出できる。
【0031】
本形態の記録再生装置は、図示しないレーザーからの光を色収差補正レンズ120を介して対物レンズ100に入射させることにより、図3に示す如く、光ディスク1の記録面1fに光スポットSを結ばせる。また本形態は、光ディスク1の記録面1fからの反射光を対物レンズ100、色収差補正レンズ120へと逆の光路を辿らせ、エラー検出光学素子を経由して受光素子に入射させることにより、トラッキングエラーの検出、フォーカスエラーの検出、RF信号の検出を行うことができる。なお、こうした光学系に関しては、種々のものが提案されているため、その説明は省略するものとする。
【0032】
ここで、対物レンズ100の微調整方法を説明する。
【0033】
まず、対物レンズ100をフォーカス方向Xに微調整する場合は、フォーカスコイル131,134にばね140a,140bを介してフォーカスサーボ電流を供給する。このとき、フォーカスコイル131の2つの作用辺131a,131bおよびフォーカスコイル134の2つの作用辺134a,134bにはそれぞれ、マグネット151,152からの磁界に協働した同一の力がフォーカス方向Xに沿って発生するため、ホルダ110がフォーカス方向Xに沿って駆動して、対物レンズ100をフォーカス方向Xに微調整することができる。
【0034】
次に、対物レンズ100をトラッキング方向Yに微調整する場合は、トラッキングコイル132,133および135,136にばね140a,140bを介してトラッキングサーボ電流を供給する。このとき、トラッキングコイル132,133の作用辺132a,132bおよび133a,133bと、トラッキングコイル135,136の作用辺135a,135bおよび136a,136bにはそれぞれ、マグネット151,152からの磁界に協働した同一の力がトラッキング方向Yに沿って発生するため、ホルダ110がトラッキング方向Yに沿って駆動して、対物レンズ100をトラッキング方向Yに微調整することができる。
【0035】
このとき本形態は、第1コイルの第1部分となるフォーカスコイルの上側作用辺131a(134a)と、第2コイルの第1部分となるトラッキングコイルの内側作用辺132a,133a(135a,136a)とに共用の磁束を差し向ける内ヨークが存在しない第1磁極151a(152a)で開磁気回路を構成する。従って本形態によれば、ホルダ110に内ヨークを取り付けるための凹部や開口部が不用となり、ホルダ110をブロック状に構成できるから、ホルダ110の剛性が高まると共に共振周波数を高めることができる。
【0036】
加えて本形態は、フォーカスコイル131,134と、トラッキングコイル132,133および135,136とを扁平状にして、その扁平状面をホルダ110に対してその中心軸O1に平行に取り付けたため、ホルダ110に取り付けたコイル131〜136の剛性が格段に高くなり、コイルそのものが変形するモードの共振周波数が非常に高くなる。またホルダ110自体もブロック状で剛性が高い上に中心軸O1の開口部が対物レンズ100と色収差補正レンズ120で補強されると共に、その外周部が扁平状のコイル131〜136によって補強されるために剛性が高くなり、その共振周波数も高くなる。従って本形態によれば、対物レンズ100を微調整する際に、安定したフォーカスサーボおよびトラッキングサーボを得ることができる。
【0037】
また、本形態では、第1コイルの第1部分となるフォーカスコイル131(134)の上側作用辺131a(134a)と、第2コイルの第1部分となるトラッキングコイル132,133(135,136)の内側作用辺132a,133a(135a,136a)とがホルダ110上で重なり合うように取り付けられているため、この重なり合う部分では、共通な磁束が作用している。このため、本形態によれば、第1磁極151a(152a)を小さくすることにより、光ディスクの記録再生装置の小型化を図ることができる。
【0038】
加えて本形態では、フォーカスコイル131(134)と、トラッキングコイル132,133(135,136)とが重なり合わない第2コイルの第1部分以外の第2部分となるトラッキングコイルの外側作用辺132b,133b(135b,135b)および第1コイルの第1部分以外の第2部分となるフォーカスコイル131(134)の下側作用辺131b(134b)に作用する第2磁極151b,151c,151dを専用に配置した。従って、本形態によれば、フォーカスコイルの上下側作用辺131a,131b(134a,134b)と、トラッキングコイルの外内側作用辺132a,132bおよび133a,133b(135a,135bおよび136a,136b)の長さ寸法を長く設定できるから、フォーカス方向Xとトラッキング方向Yの駆動感度を高めることができる。このとき、第1磁極151aおよび第2磁極151b〜151dは、(それぞれに対応する)コイル専用であるため、フォーカスコイルまたはトラッキングコイルを構成する辺の長さを無駄の無い最適な大きさに設定することができる。
【0039】
さらに本形態では、トラッキングコイルと重なっていない第1コイルの第1部分以外の第2部分となるフォーカスコイルの下側作用辺131b(134b)のみに内ヨーク141c(141d)を形成し、マグネットの第4磁極151d(152d)とで閉磁気回路を構成した。従って本形態によれば、フォーカスコイルの下側作用辺131b(134b)に作用する磁束密度を高めることができるから、フォーカス方向Xの駆動感度も高めることができる。
【0040】
図8は、本発明の第二の形態を示す要部断面図である。但し、本形態において、第一の形態と同一部分は同一符合をもってその説明を省略する。
【0041】
本形態は、マグネット151(152)の厚さtを変更したものであり、このマグネット151(152)は、第2磁極151d(152d)の厚さt=t2に比べて厚くすることにより、第1磁極151a(152a)の厚さt=t1に対して第2磁極151d(152d)をコイル側に突き出した形状である。この場合、フォーカスコイル131(134)の下側作用辺131b(134b)は、トラッキングコイル132,133(135,136)と重なり合っていないため、第2磁極151d(152d)を接近させることができる。従って、本形態によれば、フォーカスコイルの下側作用辺131b(134b)に作用する磁束密度を高めることができるから、フォーカス方向Xの駆動感度をさらに高めることができる。
【0042】
なお、本形態では、マグネット151(152)の厚さtを全体的に変更したが、第1磁極151a(152a)および第2磁極151b〜151d(152b〜152d)の厚さtを変更することなく、第1磁極151a(152a)および第2磁極151b,151c(152b,152c)に対して第2磁極151d(152d)だけをフォーカスコイルの下側作用辺131b(134b)側に突き出した形状にしてもよい。
【0043】
図9は、本発明の第三の形態の要部を示す上面図である。但し、図9は、ホルダ210の取り付け面211のみを示したが、他方の取り付け面211に対しても括弧()で付記したように同様の構成を取るものとし、本形態において、他の形態と同一部分は同一符合をもってその説明を省略する。
【0044】
本形態のホルダ210は、第一および第二の形態と同様、2つの取り付け面211,212を有し、トラッキングコイルの外側作用辺132b,133b(135b,136b)がホルダ210の取り付け面211(212)からトラッキング方向Yに沿ってはみ出した状態で固定されている。また外ヨーク141a(141b)は、そのトラッキング方向両端からコイル側に延在する側壁141a1(141b1)が形成されており、この側壁141a1(141b1)が、第2磁極151b,151c(152b,152c)に対向する内ヨークとして機能する。
【0045】
本形態の場合、第2磁極151b(152c)、外ヨーク141a(141b)、内ヨーク141a1(141b1)によって、トラッキングコイルの外側作用辺132b(135b)に作用する閉磁気回路r1を構成し、第2磁極151c(152b)、外ヨーク141a(141b)、内ヨーク141a1(141b1)によって、トラッキングコイルの外側作用辺133b(136b)に作用する閉磁気回路r2を構成できる。
【0046】
従って本形態によれば、第2コイルの第1部分以外の第2部分となるトラッキングコイルの外側作用辺132b(135b)および133b(136b)をそれぞれ、閉磁気回路r1,r2の磁気ギャップ中に配置できるから、トラッキングコイルの外側作用辺132b,133b(135b,136b)に作用する磁束密度を高めることができるため、トラッキング方向Yの駆動感度を高めることができる。
【0047】
加えて本形態では、ホルダ210の中心部に位置するフォーカスコイルとトラッキングコイルとが重なり合う部分には、内ヨークを配置しないで、ホルダ210の取り付け面211(212)からトラッキング方向Yに沿ってはみ出した第2コイルの第1部分以外の第2部分となるトラッキングコイルの外側作用辺132b,133b(135b,136b)にのみ、内ヨーク141a1(141b1)を形成したから、第一の形態と同様、ホルダ210に対して内ヨークを取り付けるための凹部や開口部が不要となり、ホルダ110をブロック状に構成できるから、ホルダ110の剛性を保持できる。
【0048】
図10は、本発明の第四の形態の要部を示す上面図である。但し、図10も、ホルダ310の取り付け面311のみを示したが、他方の取り付け面311に対しても括弧()で付記したように同様の構成を取るものとし、本形態において、他の形態と同一部分は同一符合をもってその説明を省略する。
【0049】
本形態は、第三の形態と同様、トラッキングコイル132,133(135,136)の外側作用辺132b,133b(135b,136b)がホルダ310の取り付け面311(212)からトラッキング方向Yに沿ってはみ出した状態で固定されている。また外ヨーク141a(141b)は、そのトラッキング方向両端からコイル側に延在して第2磁極151b(152b)または第2磁極151c(152c)を覆う側壁141a2(141b2)が形成されており、この側壁141a2(141b2)が、第2磁極151b,151c(152b,152c)に対向する内ヨークとして機能する。
【0050】
この場合、第2磁極151b(152c)、外ヨーク141a(141b)、内ヨーク141a2(141b2)によって、トラッキングコイルの外側作用辺132b(135b)に作用する閉磁気回路r3を構成し、第2磁極151c(152b)、外ヨーク141a(141b)、内ヨーク141a2(141b2)によって、トラッキングコイルの外側作用辺133b(136b)に作用する閉磁気回路r4を構成できる。
【0051】
従って本形態によれば、上記第三の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0052】
上述したところは、本発明の好適な形態を示したに過ぎず、当業者によれば、請求の範囲において、様々な変更を加えることができる。例えば、本形態では、第1コイルの第1部分となるフォーカスコイルの上側作用辺131a(134a)と、第2コイルの第1部分となるトラッキングコイルの内側作用辺132a,133a(135a,136a)とがホルダ110上で重なり合うように取り付けられているが、第1磁極151d(152d)から、フォーカスコイルの上側作用辺131a(134a)およびトラッキングコイルの内側作用辺132a,133a(135a,136a)に共通な磁束が作用すれば、必ずしも重ね合わせる必要はない。
【0053】
また上記第一〜第四の形態とは逆に、トラッキングコイルおよびフォーカスコイルをそれぞれ第1コイルおよび第2コイルとして、ホルダの取り付け面にトラッキングコイルを組付けたのち、フォーカスコイルを取り付けてもよい。この場合、マグネットの第1磁極に対向配置されたトラッキングコイルおよびフォーカスコイルの作用辺が第1部分となり、それ以外の作用辺がトラッキングコイルおよびフォーカスコイルの第2部分となる。さらに、本形態では1つのフォーカスコイルおよび2つのトラッキングコイルであったフォーカスおよびトラッキングコイルの使用個数も、ホルダの取り付け面に応じて適宜変更することができる。
【0054】
さらに上記第一〜第四の形態では、光ディスクの記録再生装置に用いられる対物レンズのアクチュエータを例示したが、光学素子は、対物レンズに限らず、コリメートレンズやLD(レーザーダイオード)などであってもよい。採用されるアクチュエータも、光通信器機のファイバーにカップリングさせるコリメートレンズのアクチュエータや走査顕微鏡の対物レンズ用アクチュエータなどに適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 光ディスク
100 対物レンズ
110 ホルダ
111,112 取り付け面
115 固定部
120 色収差補正レンズ
131 フォーカスコイル
131a 上側作用辺
131a 下側作用辺
132 トラッキングコイル
132a 内側作用辺
132b 外側作用辺
133 トラッキングコイル
133a 内側作用辺
133b 外側作用辺
134 フォーカスコイル
134a 上側作用辺
134a 下側作用辺
135 トラッキングコイル
135a 内側作用辺
135b 外側作用辺
136 トラッキングコイル
136a 内側作用辺
136b 外側作用辺
140a,140b ばね
141 ベース
141a,141b 外ヨーク
141c,141d 内ヨーク
142 スプリングホルダ
142a,142b ばね固定部
151 マグネット
151a 第1磁極
151b,151c,151d 第2磁極
152 マグネット
152a 第1磁極
152b,152c,152d 第2磁極
160 センサホルダ
161 PD(フォトダイオード)
162 LED(発光ダイオード)
210 ホルダ
211,212 取り付け面
310 ホルダ
311,312 取り付け面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともNA0.7〜0.9の対物レンズを光学素子として有して光学素子を直交するフォーカス方向およびトラッキング方向の2方向に駆動可能に支持する光学素子のアクチュエータにおいて、
対物レンズを保持するホルダと、このホルダの一取り付け面に取り付けられ該ホルダを前記フォーカス方向に駆動させるフォーカスコイルおよびトラッキング方向に駆動させるトラッキングコイルと、前記フォーカスコイルおよび前記トラッキングコイルに磁束を差し向ける磁気回路とを有し、
当該磁気回路は、マグネットとヨークとを備え、
前記マグネットは、前記フォーカスコイルの第1の作用辺に前記フォーカス方向に沿った力を生じさせると共に、前記トラッキングコイルの第1の作用辺に前記トラッキング方向に沿った力を生じさせるための、共用の磁束を前記フォーカスコイル及び前記トラッキングコイルの第1の作用辺に差し向ける第1磁極と、前記フォーカスコイルの第2の作用辺に前記フォーカス方向に沿った他の力を生じさせるための磁束を前記フォーカスコイルの第2の作用辺に差し向ける第2磁極とを備え、
前記ヨークは、前記マグネットを挟んで前記フォーカスコイル及び前記トラッキングコイルと対向する位置に配置された外ヨークを有し、少なくとも前記フォーカスコイル及び前記トラッキングコイルの第1の作用辺に前記第1磁極から差し向けられる前記共用の磁束が開磁気回路中を流れる磁束となるように構成されていることを特徴とする光学素子のアクチュエータ。
【請求項2】
少なくともNA0.7〜0.9の対物レンズを光学素子として有して光学素子を直交するフォーカス方向およびトラッキング方向の2方向に駆動可能に支持する光学素子のアクチュエータにおいて、
対物レンズを保持するホルダと、このホルダの一取り付け面に取り付けられ該ホルダを前記フォーカス方向に駆動させるフォーカスコイルおよびトラッキング方向に駆動させるトラッキングコイルと、前記フォーカスコイルおよび前記トラッキングコイルに磁束を差し向ける磁気回路とを有し、
当該磁気回路は、マグネットとヨークとを備え、
前記マグネットは、前記フォーカスコイルの第1の作用辺に前記フォーカス方向に沿った力を生じさせると共に、前記トラッキングコイルの第1の作用辺に前記トラッキング方向に沿った力を生じさせるための、共用の磁束を前記フォーカスコイル及び前記トラッキングコイルの第1の作用辺に差し向ける第1磁極と、前記トラッキングコイルの第2の作用辺に前記トラッキング方向に沿った他の力を生じさせるための磁束を前記トラッキングコイルの第2の作用辺に差し向ける第2磁極とを備え、
前記ヨークは、前記マグネットを挟んで前記フォーカスコイル及び前記トラッキングコイルと対向する位置に配置された外ヨークを有し、少なくとも前記フォーカスコイル及び前記トラッキングコイルの第1の作用辺に前記第1磁極から差し向けられる前記共用の磁束が開磁気回路中を流れる磁束となるように構成されていることを特徴とする光学素子のアクチュエータ。
【請求項3】
前記ヨークは、前記フォーカスコイル及び前記トラッキングコイルの第1の作用辺を介して前記第1磁極に対向する位置を除くように、前記フォーカスコイルの第2の作用辺を介して、前記第2磁極に対向する位置に配置された部分を有することを特徴とする請求項1に記載の光学素子のアクチュエータ。
【請求項4】
前記ヨークは、前記フォーカスコイル及び前記トラッキングコイルの第1の作用辺を介して前記第1磁極に対向する位置を除くように、前記トラッキングコイルの第2の作用辺を介して、前記第2磁極に対向する位置に配置された部分を有することを特徴とする請求項2に記載の光学素子のアクチュエータ。
【請求項5】
前記第2の作用辺は、前記第2磁極の磁極面に対して垂直な方向から見たときに、前記ホルダの一取り付け面からはみ出したものであることを特徴とする請求項1乃至4に記載の光学素子のアクチュエータ。
【請求項6】
前記フォーカスコイルおよび前記トラッキングコイルは、前記第1磁極の磁極面に対して垂直な方向から見たときに、前記ホルダの一取り付け面に対して、各々の第1の作用辺が互いに重なり合うように取り付けられたものであることを特徴とする請求項1乃至5に記載の光学素子のアクチュエータ。
【請求項7】
前記第1磁極または前記第2磁極のうちの一方の磁極が、他方の磁極に対して前記一方の磁極の磁極面に対して垂直な方向であって前記フォーカスコイルまたは前記トラッキングコイル側に突き出した形状であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光学素子のアクチュエータ。
【請求項8】
前記第2トラッキングコイルの第2の作用辺に磁束を差し向ける第3磁極とを備え、
前記ヨークは前記第3磁極に対向配置する部分を有することを特徴とする請求項1、3、5乃至7のいずれか一項に記載の光学素子のアクチュエータ。
【請求項9】
前記ホルダは、色収差補正レンズを有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光学素子のアクチュエータ。
【請求項10】
前記色収差補正レンズは、前記対物レンズの前記フォーカス方向のバランサであることを特徴とする請求項9に記載の光学素子のアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−159381(P2011−159381A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49567(P2011−49567)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【分割の表示】特願2001−203654(P2001−203654)の分割
【原出願日】平成13年7月4日(2001.7.4)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】