説明

光学素子及び光学系

【課題】曲率半径の小さい光学面の中心部のみならず周辺部においても良好な反射防止性能を有する光学素子を提供する。
【解決手段】光学素子は、光学面を有するベース部材11と、使用波長域のうち最も短い波長よりも小さい平均ピッチを有する凹凸構造体13と、光学面と凹凸構造体との間に形成され、該凹凸構造体とは材質が異なり、ベース部材の屈折率と凹凸構造体を形成する材料の屈折率の間の屈折率を有する少なくとも一層の中間層12とを有する。光学面は回転対称軸を有する。中間層の厚さ又は中間層と凹凸構造体の双方の厚さが、回転対称軸からの距離が大きくなるほど増加するように変化している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射抑制機能(反射防止機能)を有する光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光学系に含まれるレンズ等の光学素子は、光学ガラスや光学プラスチック等の透過基材を用いて製作されている。このような透過基材は、屈折率が大きいため、反射率が高くなる。反射率が高いと、像面に到達する有効光量が少なくなってしまうとともに、不要な反射によってゴーストやフレアが生じる。このため、透過基材を用いた光学素子には、反射防止機能を付与することが必要となる。
【0003】
光学素子に反射防止機能を付与するには、一般に、光学素子(透過基材)の表面に反射防止膜を形成する。反射防止膜は、一般的な光学干渉の理論に従って、透過基材の表面に薄膜層を積層することで形成される。
【0004】
反射防止膜の形成方法としては、ドライ法(真空成膜法)やウエット法(湿式成膜法)等がある。ドライ法は、蒸着法やスパッタリング法のように、低屈折率の金属フッ化物や金属酸化物を透過基材の表面にコーティングする方法である。また、ウエット法は、ディッピング法やスピンコート法等によって透過基材の表面に低屈折率材料を含むコート液を塗布した後、乾燥や焼成等を行う方法である。
【0005】
反射防止膜の膜厚は、光学素子(ここではレンズとする)の中心部、すなわち光線の入射角度が0度となる部分で反射防止効果が最大となるように設計されることが多い。このように設計された反射防止膜は、レンズ面全体において膜厚が均一となる。
【0006】
ただし、このような反射防止膜が形成されたレンズの中心部に垂直に光線が入射し、かつレンズの周辺部にも該光線と平行に光線が入射すると、周辺部では光線の入射角度が大きくなる。このため、周辺部での反射防止性能が、中心部での反射防止性能に比べて低くなる。
【0007】
特許文献1には、レンズ面内の任意の位置における入出射光線に対し、反射率が最も低くなる光学膜厚を有する反射防止膜が開示されている。一般的な光学干渉の理論では、反射防止膜の表面での反射光と、反射防止膜と透過基材との境界面での反射光との光路差が波長の1/2の奇数倍となり、これらの光が干渉により打ち消し合う。特許文献1では、この理論を利用している。この手法によれば、反射防止膜の膜厚を、中心部から周辺部に向かって厚くする必要がある。
【0008】
ただし、一般的な光学干渉の理論に従って製作された反射防止膜は、膜厚に大きく依存し、実際の膜厚が設計膜厚からずれると有効な反射防止効果が得られない。このため、反射防止膜を形成するには、高精度の膜厚制御が必要となる。
【0009】
また、光学素子に反射防止機能を付与する他の方法として、透過基材の表面に、入射する光の波長(以下、使用波長という)よりも細かい凹凸形状を有した構造体を形成する方法がある。
【0010】
使用波長よりも細かい凹凸構造においては、入射光はその凹凸形状を認識できずに一様な媒質であるかのように振る舞う。このとき、凹凸構造は、凹凸形状を構成する材料の体積比に準じた屈折率を有し、通常の材料では得られないような低い屈折率を示す。このため、このような凹凸構造体を用いれば、低屈折率材料により形成される反射防止膜と比べてより高い反射防止性能が得られる。
【0011】
上記のような凹凸構造を形成するには、使用波長より小さい粒径を有する微粒子を分散した膜を塗布する方法(特許文献2参照)や、微細加工装置によるパターン形成によって周期的な凹凸構造を形成する方法(特許文献3参照)がある。さらに、ゾル−ゲル法を用いた花弁状アルミナの凹凸組織を形成する方法(特許文献4参照)もある。
【0012】
ただし、このような凹凸構造を形成するには、煩雑なプロセスを必要とする。さらに、凹凸構造を構成する材料が限定されるため、屈折率に関する設計自由度が低い。このため、凹凸構造体によって高い反射防止性能が得られるのは、限られた屈折率の透過基材に対してのみという問題がある。
【0013】
特許文献5には、凹凸構造を構成する材料の屈折率と透過基材の屈折率との中間的な屈折率を持つ材料により形成される薄膜層(中間層)を、凹凸構造体と透過基材との間に配置する方法が開示されている。これによれば、凹凸構造体から透過基材までの屈折率が段階的に変化し、透過基材の界面での反射を減少させることができる。また、薄膜層を構成する材料を選択することにより、透過基材の選択の幅を広げることも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2004−333908号公報
【特許文献2】特許第3135944号公報
【特許文献3】特開昭50−70040号公報
【特許文献4】特開平9−202649号公報
【特許文献5】特開2005−275372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前述したスパッタ法や蒸着法といったドライ法は、蒸着源とレンズの中心部が対面するように設置して成膜を行う。このため、中心部では設計通りに反射防止性能が最大となるような反射防止膜を形成することができる。
【0016】
しかしながら、曲率半径が小さいレンズ面にドライ法で成膜を行う場合、蒸着材料の入射角が周辺部になるほど大きくなり、膜厚が減少してしまう。一般に、入射角度0度での膜厚をDとすると、入射角60度での膜厚は、およそD×cos(60°)となり、入射角度0度での膜厚の半分程度である。このため、ドライ法によって、光学干渉の理論に従って周辺部の膜厚を中心部よりも増加させることは困難である。マスクを設置する等の手法によって周辺部の膜厚を中心部よりも増加させることは可能であるが、大掛かりな設備が必要となる。
【0017】
また、前述したディッピング法やスピンコート法といったウエット法は、膜厚制御性自体が低いため、高精度の膜厚制御を行うことが難しい。
【0018】
一方、特許文献5にて開示された凹凸構造体と透過基材との間に薄膜層を配置した反射防止構造体は、干渉の理論に従った反射防止膜や凹凸構造体のみからなる反射防止構造体と比べて、広帯域での反射防止特性に優れている。しかしながら、曲率半径の小さいレンズ面の周辺部でのわずかな反射によってゴーストやフレアが生じる。このため、さらなる反射防止性能の向上が望まれている。
【0019】
本発明は、曲率半径の小さい光学面の中心部のみならず周辺部においても良好な反射防止性能を有する光学素子を提供する。また、本発明は、このような光学素子を用いた光学系、さらには該光学系を有する光学機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一側面としての光学素子は、光学面を有するベース部材と、使用波長域のうち最も短い波長よりも小さい平均ピッチを有する凹凸構造体と、光学面と凹凸構造体との間に形成され、該凹凸構造体とは材質が異なり、前記ベース部材の屈折率と凹凸構造体を形成する材料の屈折率の間の屈折率を有する少なくとも一層の中間層とを有する。光学面は回転対称軸を有する。そして、中間層の厚さ又は中間層と凹凸構造体の双方の厚さが、回転対称軸からの距離が大きくなるほど増加するように変化していることを特徴とする。
【0021】
なお、上記光学素子を用いた光学系、さらには該光学系を用いた光学機器も本発明の他の側面を構成する。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、中間層の厚さ又は中間層と凹凸構造体の双方の厚さが回転対称軸からの距離が大きくなるほど(つまりは周辺部にいくほど)厚くなる構造を有する。このため、本発明によれば、中心部のみならず、光線の入射角度が大きくなる周辺部においても良好な反射防止性能を有する光学素子を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例である光学素子の基本構成を示す断面図。
【図2】本発明の実施例1,2及び比較例1〜3の反射率特性を示す図。
【図3】本発明の実施例3,4及び比較例4の反射率特性を示す図。
【図4】本発明の実施例5である撮像光学系の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
【0025】
まず、具体的な実施例の説明に先立って、各実施例の光学素子に共通する特徴について説明する。図1には、光学素子の基本的な構成例を示す。なお、図1では、凹凸構造体及び中間層をデフォルメして示している。
【0026】
実施例の光学素子は、光学面としての凹レンズ面を有する透過基材(ベース部材)としてのレンズ11と、該光学面上に形成された中間層としての薄膜層12と、該薄膜層12上に形成された微細凹凸形状を有する凹凸構造体としての凹凸構造層13とを有する。
【0027】
薄膜層12は、凹凸構造層13とは異なる材質により形成され、レンズ面と凹凸構造層13との間に配置されている。なお、薄膜層12は、単層構造であってもよいし、互いに材質が異なる2以上の薄膜層を積層した多層構造としてもよい。つまり、レンズ面と凹凸構造層13との間に少なくとも一層の薄膜層が形成されていればよい。薄膜層12を単層構造にする場合、薄膜層12は、凹凸構造層13とは材質が異なり、レンズ11の屈折率と凹凸構造層13を形成する材料の屈折率の間の屈折率となる層となる。薄膜層12を多層構造にする場合、中間層のうち少なくとも一層の薄膜層が、凹凸構造層13とは材質が異なり、レンズ11の屈折率と凹凸構造層13を形成する材料の屈折率の間の屈折率を有する層であればよい。
【0028】
また、実施例の光学素子は、レンズ面が回転対称軸を有する形状、すなわち回転対称形状を有する。
【0029】
そして、実施例の光学素子では、薄膜層12の膜厚、又は薄膜層12と凹凸構造層13の双方の膜厚が、回転対称軸からの距離が大きくなるほど増加するように変化している。
【0030】
図1において、Dcはレンズ11の中心、つまりはレンズ11の回転対称軸(以下、光軸という)の位置、さらに詳しくは光軸とレンズ面とが交わる位置(以下、光軸位置という)での薄膜層12の厚さ(以下、膜厚という)を示す。なお、薄膜層12が多層構造である場合には、Dcは該多層構造における個々の薄膜層の膜厚を示す。
【0031】
また、hは光軸位置から光軸に直交する方向(又はレンズ面に沿った方向)での距離を示す。D(h)は、光軸位置から距離hの位置(以下、h位置という)での薄膜層12の膜厚を示す。
【0032】
φ(h)は、薄膜層12におけるh位置に光軸に平行に入射した光線が、薄膜層12の表面側(凹凸構造層13側の外側)において、薄膜層12の最表面におけるh位置での法線となす角度を示す。
【0033】
さらに、θ(h)は、薄膜層12におけるh位置に光軸に平行に入射した光線が、該薄膜層12内(中間層内)において、薄膜層12最表面におけるh位置での法線となす角度である。
【0034】
薄膜層12の屈折率をnとするとき、φ(h)とθ(h)は、スネルの式である、
sin(φ(h))=n×sin(θ(h))
を満足する。
【0035】
前述したように曲率を有するレンズ11の周辺部(以下、レンズ周辺部という)では、光線の入射角度が大きくなり、レンズ11の中心部(以下、レンズ中心部という)に比べて反射防止性能が低下する。一般的な光学干渉の理論を満たすように反射防止膜の膜厚をレンズ面内の位置に応じて変化させれば良好な反射防止性能を得ることはできる。しかし、一般的な光学干渉の理論に従った反射防止膜の反射防止性能は膜厚に大きく依存するため、実際の膜厚が設計膜厚からわずかにずれただけで反射防止性能が低下する。
【0036】
このため、実施例では、凹凸構造層13とレンズ11(レンズ面)との間に薄膜層12を設けている。
【0037】
凹凸構造層13は、該光学素子に入射する光の波長域である使用波長域のうち最も小さな波長よりも十分に小さな平均ピッチを有する凹凸構造により構成されている。ここにいうピッチは、1つの凸部とこれに隣り合う1つの凹部とを1組の凹凸部とするとき、互いに隣り合う2組の凹凸部間の間隔である。
【0038】
さらに、凹凸構造層13の構造(形状)は、厚さ方向に変化している。具体的には、凸部の幅が光学素子に光が入射してくる側(光入射側)から薄膜層12側(又はレンズ11側)に向かって大きくなり、凹部の幅が光入射側から薄膜層12側に向かって小さくなる。このため、凹凸構造層13は、屈折率が厚さ方向に連続的に変化する構造体として扱うことができる。連続的な屈折率の変化により、構造体内では振幅の小さな反射光が無数に発生し、互いに干渉して打ち消しあう。薄膜層12とレンズ11との界面での反射光においても、構造体内で無数の干渉を起こして減衰するため、反射防止性能の膜厚精度に対する依存性が少ない。
【0039】
したがって、実施例の光学素子は、従来の反射防止膜を有する光学素子と比較して、膜厚に対して鈍感となり、光線入射角度の大きいレンズ周辺部において膜厚精度にある程度の余裕度(許容度)を有する。
【0040】
以上の構成により、曲率半径の小さいレンズ中心部のみならず、レンズ周辺部においても良好な反射防止性能を実現でき、しかも量産性に優れた光学素子を得ることができる。
【0041】
実施例の光学素子は、
0.3≦n×sin(θ(h))<1 …(1)
を満足するθ(h)に対して、
Dc<D(h)<Dc/cos(θ(h)) …(2)
なる条件を満足することが好ましい。
【0042】
さらに望ましくは、条件(2)に代えて、以下の条件を満足することが好ましい。
【0043】
(Dc/2)×(1/cos(θ(h))+1)<D(h)<Dc/cos(θ(h))…(3)
また、実施例の光学素子は、以下の条件を満足するとより好ましい。
【0044】
λ/(8×n)≦Dc≦(2×λ)/n …(4)
ただし、λは使用波長域のうち最も短い波長である。
【0045】
また、実施例の光学素子を、結像光学系又は観察光学系等の光学系に用いた場合において、光学素子は、
0.3≦n×sin(ψ(h))<1 …(5)
を満足するψ(h)に対して、
Dc<D(h)<Dc/cos(ψ(h)) …(6)
なる条件を満足することが好ましい。
【0046】
ただし、ψ(h)は、光学系において、薄膜層12におけるh位置を通過する全光線の入射角の平均値の入射角を有する光線が、薄膜層12内(中間層内)において、該薄膜層12の最表面におけるh位置での法線となす角度である。
【0047】
光学系に用いた際に、光軸からの距離hの地点を通過する全光線の平均値の入射角をもった光線が、薄膜層内で、薄膜層の最表面の法線となす角である。
【0048】
さらに望ましくは、条件(6)に代えて、以下の条件を満足することが好ましい。
【0049】
(Dc/2)×(1/cos(ψ(h))+1)<D(h)<Dc/cos(ψ(h))…(7)
また、実施例の光学素子を、結像光学系又は観察光学系等の光学系であって絞りを有する光学系に用いた場合において、光学素子は、
0.3≦n×sin(ζ(h))<1 …(8)
を満足するζ(h)に対して、
Dc<D(h)<Dc/cos(ζ(h)) …(9)
なる条件を満足することが好ましい。
【0050】
ただし、ζ(h)は、光学系において、薄膜層12におけるh位置と絞りの中心とを通過する光線が、薄膜層12内(中間層内)において、該薄膜層12の最表面におけるh位置での法線となす角度である。
【0051】
さらに望ましくは、条件(9)に代えて、以下の条件を満足することが好ましい。
【0052】
(Dc/2)×(1/cos(ζ(h))+1)<D(h)<Dc/cos(ζ(h))…(10)
上述した条件(2),(3),(6),(7),(9)及び(10)のうち少なくとも1つを満足することで、前述したように、レンズ周辺部においても良好な反射防止性能を実現でき、かつ量産性に優れた光学素子をより確実に得ることができる。
【0053】
なお、実施例における薄膜層12の形成方法は、特に限定されない。例えば、スパッタリング法や蒸着法といったドライ法(真空成膜法)により形成してもよいし、ゾル−ゲルコート液を使ったディッピング法やスピンコート法といったウエット法(湿式成膜法)により形成してもよい。
【0054】
これらの手法により、レンズ11のレンズ面上に薄膜層12を形成した後、該薄膜層12の表面上に凹凸構造層13を形成する。凹凸構造層13の形成方法も特に限定されず、使用波長以下の粒径を有する微粒子を分散した膜を塗布する方法や、ゾル−ゲル法を用いた花弁状アルミナの凹凸組織を形成する方法等により凹凸構造層13を形成することができる。
【0055】
また、薄膜層12を形成するため材料(材質)は、凹凸構造層13の材質と異なれば、特に限定されない。ただし、ジルコニア、シリカ、チタニア及び酸化亜鉛のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。凹凸構造層13は、アルミナを主成分とすることが好ましい。
【0056】
以下、一例として、スピンコート法を用いて薄膜層12及び凹凸構造層13を形成する方法について説明する。
【0057】
まず、レンズ11のレンズ面上に薄膜層12を形成するには、SiOゾル液とTiOゾル液を混ぜ合わせて攪拌する。これを、SiO−TiO塗工液として、スピンコート法によりレンズ面上に塗布する。該塗布後、数百度で加熱及び乾燥を行い、透明なアモルファスSiO/TiO膜を得る。このとき、薄膜層12の屈折率は、SiOゾル液とTiOゾル液とを混ぜ合わせる際のモル比により決定される。また、薄膜層12の膜厚は、スピンコート法におけるレンズ11の回転速度や塗布液の粘度により制御される。
【0058】
次に、薄膜層12の表面に、アルミナを含むゾル−ゲルコート液を塗布してゲル膜を形成する。そして、ゲル膜を温水に浸漬することにより、アルミナを主成分とする板状結晶を析出させ、該析出した結晶が凸部となる凹凸構造を形成する。
【0059】
ゲル膜を温水に浸漬することで、アルミナを含むゾル−ゲルコート液の塗布により形成されたゲル膜の表層の一部が解膠作用等を受け、そこからゲル膜の成分が溶出する。各種水酸化物の温水への溶解度の違いにより、アルミナを主成分とする板状結晶がゲル膜の表層に析出し、成長することで、凹凸構造が形成される。温水の温度は、40〜100℃とすることが好ましい。また、温水処理時間としては、5分程度〜24時間程度とすることが好ましい。
【0060】
なお、実施例において、透過基材としてのレンズ11は、光学ガラスや光学プラスチックにより形成される。透明基材は、光学面を有し、最終的に使用目的に応じた形状を持たせることができるものであれば、平板、フィルム、シート等のレンズ形状以外のものであってもよい。
【0061】
以下に、具体的な実施例を示す。各実施例での使用波長域は400〜700nmであり、使用中心波長は550nmである。ただし、これらは例に過ぎず、本発明の実施例はこれらの条件に限定されるものではない。
【実施例1】
【0062】
本発明の実施例1では、単層構造を有する薄膜層12の膜厚が、光軸位置から周辺部の外縁に向かって次第に増加するように変化し、凹凸構造層13の厚さがレンズ面内で均一である場合を示す。
【0063】
実施例1では、外径が51mmのメニスカスレンズ(屈折率2.0)を透過基材とした。このレンズの凹面(直径38mm、曲率半径20.3mm)にSiO−TiO塗布液をスピンコート法により塗布した後、加熱及び乾燥を行い、薄膜層12を形成した。次に、アルミナを含むゾル−ゲルコート液を塗布してゲル膜を形成し、これを温水に浸漬することにより、アルミナを主成分とする板状結晶を析出させ、凹凸構造層13を形成した。
【0064】
各層の膜厚及び屈折率は、エリプソメーターを用いて測定した。このことは、後述する他の実施例でも同じである。
【0065】
凹凸構造層13の厚さは、レンズ面内での位置によらず160nmであった。また、凹凸構造層13の屈折率は、薄膜層12側から光入射(空気)側に向かって、1.3から1.0まで連続的に減少した。薄膜層12の屈折率nは、1.64であり、その膜厚は光軸位置から周辺部の外縁に向かって滑らかに増加した。
【0066】
表1には、実施例1における光軸位置からの距離hと、h位置でのφ(h)と、薄膜層12の膜厚D(h)と、条件(2)中のDc/cos(θ(h))と、凹凸構造層13の厚さDs(h)と、400〜700nmの波長範囲における平均反射率R(h)を示す。
【0067】
表1に示すように、実施例1における薄膜層12の膜厚は、条件(2)を満足する。
【0068】
また、図2には、距離h=10.2mmの位置における400〜700nmの波長域における反射率特性を示す。実施例1の反射率特性は、400〜700nmの波長域で0.6%以下と、非常に良い結果を示した。
【0069】
さらに、表1に示すように、距離h=10.2mm及び17.6mmにおける400〜700nmの波長域での平均反射率は、Ra(10.2)=0.12%、 Ra(17.6)=2.08%と非常に良い結果を示した。
【実施例2】
【0070】
本発明の実施例2として、単層構造を有する薄膜層12の膜厚と凹凸構造層13の厚さの双方が、光軸位置から周辺部に向かって次第に増加するように変化する場合を示す。
【0071】
実施例2では、実施例1と同様の方法で、メニスカスレンズ上に薄膜層12を形成し、該薄膜層12上に凹凸構造層13を形成した。
【0072】
凹凸構造層13の厚さは、光軸位置から周辺部の外縁に向かって滑らかに増加した。また、凹凸構造層13の屈折率は、薄膜層12側から光入射側に向かって、1.3から1.0まで連続的に減少した。薄膜層12の屈折率nは、1.64であり、その膜厚は光軸位置から周辺部の外縁に向かって滑らかに増加した。
【0073】
表1には、実施例2におけるhと、φ(h)と、D(h)と、Dc/cos(θ(h))と、Ds(h)と、平均反射率R(h)とを示す。
【0074】
表1に示すように、実施例2における薄膜層12の膜厚は、条件(2)を満足する。
【0075】
また、図2に示すように、距離h=10.2mmの位置における400〜700nmの波長域での反射率特性は0.6%以下と、非常に良い結果を示した。
【0076】
また、表1に示すように、距離h=10.2mm及び17.6mmの位置における400〜700nmの波長域での平均反射率は、Ra(10.2)=0.11%、Ra(17.6)=1.18%と非常に良い結果を示した。
【実施例3】
【0077】
本発明の実施例3では、多層(2層)構造を有する薄膜層12の膜厚が、光軸位置から周辺部の外縁に向かって次第に増加するように変化し、凹凸構造層13の厚さがレンズ面内で均一である場合を示す。
【0078】
実施例3では、実施例1と同様の方法で、メニスカスレンズ上に薄膜層12を形成し、該薄膜層12上に凹凸構造層13を形成した。
【0079】
凹凸構造層13の厚さは、レンズ面内での位置によらず195nmであった。また、凹凸構造層13の屈折率は、薄膜層12側から光入射側に向かって、1.36から1.0まで連続的に減少した。2層構造の薄膜層12のうち凹凸構造層13に近い側の薄膜層の屈折率nは1.64であり、レンズ面に近い側の薄膜層の屈折率nは1.74であった。このように、薄膜層を複数の層にする場合、フレネル反射を抑えるために、屈折率がレンズ側から凹凸構造層側に向かって屈折率がより小さくなる層を形成することが好ましい。また、これら2層の薄膜層の膜厚は、光軸位置から周辺部の外縁に向かって滑らかに増加した。
【0080】
表2には、実施例3におけるhと、φ(h)と、2層構造の薄膜層12のうち凹凸構造層13に近い側の薄膜層の膜厚D(h)及び条件(2)中のDc/cos(θ(h))とを示す。また、同表には、2層構造の薄膜層12のうちレンズ面に近い側の薄膜層の膜厚D(h)及び条件(2)中のDc/cos(θ(h))と、Ds(h)と、平均反射率Ra(h)とを示す。
【0081】
表2に示すように、実施例3における各薄膜層の膜厚は、条件(2)を満足する。
【0082】
また、図3には、距離h=10.2mmの位置における400〜700nmの波長域における反射率特性を示す。実施例3の反射率特性は、400〜700nmの波長域で0.5%以下と、非常に良い結果を示した。
【0083】
さらに、表2に示すように、距離h=10.2mm及び17.6mmの位置における400〜700nmの波長域での平均反射率は、Ra(10.2)=0.18%、Ra(17.6)=1.98%と非常に良い結果を示した。
【実施例4】
【0084】
本発明の実施例3では、多層(2層)構造を有する薄膜層12の膜厚と凹凸構造層13の厚さの双方が、光軸位置から周辺部の外縁に向かって次第に増加するように変化する場合を示す。
【0085】
実施例4では、実施例1と同様の方法で、メニスカスレンズ上に薄膜層12を形成し、該薄膜層12上に凹凸構造層13を形成した。
【0086】
凹凸構造層13の厚さは、光軸位置から周辺部の外縁に向かって滑らかに増加した。また、凹凸構造層13の屈折率は、薄膜層12側から光入射側に、1.36から1.0まで連続的に減少した。2層構造の薄膜層12のうち凹凸構造層13に近い側の薄膜層の屈折率nは1.64であり、レンズ面に近い側の薄膜層の屈折率nは1.74であった。これら2層の薄膜層の膜厚は、光軸位置から周辺部の外縁に向かって滑らかに増加した。
【0087】
表2には、実施例4におけるhと、φ(h)と、2層構造の薄膜層12のうち凹凸構造層13に近い側の薄膜層の膜厚D(h)及び条件(2)中のDc/cos(θ(h))とを示す。また、同表には、2層構造の薄膜層12のうちレンズ面に近い側の薄膜層の膜厚D(h)及び条件(2)中のDc/cos(θ(h))と、Ds(h)と、平均反射率Ra(h)とを示す。
【0088】
表2に示すように、実施例4における各薄膜層の膜厚は、条件(2)を満足する。
【0089】
また、図3に示すように、距離h=10.2mmの位置における400〜700nmの波長域での反射率特性は0.5%以下と、非常に良い結果を示した。
【0090】
さらに、表2に示すように、距離h=10.2mm及び17.6mmの位置における400〜700nmの波長域での平均反射率は、Ra(10.2)=0.17%、Ra(17.6)=1.18%と非常に良い結果を示した。
【0091】
以下に、実施例1〜4に対する比較例1〜4を示す。
[比較例1]
比較例1では、実施例1及び2との比較を行うため、単層構造を有する薄膜層の膜厚と凹凸構造層の厚さの双方がレンズ面内で均一である場合を示す。
【0092】
比較例1では、実施例1と同様の方法で、メニスカスレンズ上に薄膜層を形成し、該薄膜層上に凹凸構造層を形成した。
【0093】
凹凸構造層の厚さは、レンズ面内での位置によらず160nmであった。また、凹凸構造層の屈折率は、薄膜層側から光入射側に向かって、1.3から1.0まで連続的に減少した。薄膜層の屈折率nは、1.64であり、その膜厚は光軸位置から周辺部の外縁にかけて65nmと一定とした。
【0094】
表1には、比較例1におけるhと、φ(h)と、D(h)と、Dc/cos(θ(h))と、Ds(h)と、平均反射率Ra(h)とを示す。
【0095】
表1に示すように、比較例1における薄膜層の膜厚は、条件(2)を満足していない。
【0096】
また、図2には、距離h=10.2mmの位置における400〜700nmの波長域での反射率特性を示す。比較例1は、500nm〜700nmの波長域で、実施例1及び2よりも高い反射率を示した。
【0097】
さらに、表1に示すように、距離h=10.2mm及び17.6mmの位置における400〜700nmの波長範囲での平均反射率は、Ra(10.2)=0.16%、Ra(17.6)=2.13%であった。
【0098】
以上のことから分かるように、比較例1の反射防止効果は、実施例1,2と比較して低い。
[比較例2]
比較例2では、実施例1及び2との比較を行うため、単層構造を有する薄膜層の膜厚が光軸位置から周辺部の外縁に向かって極端に増加するように変化し、凹凸構造層の厚さがレンズ面内で均一である場合を示す。
【0099】
比較例2では、実施例1と同様の方法で、メニスカスレンズ上に薄膜層を形成し、該薄膜層上に凹凸構造層を形成した。
【0100】
凹凸構造層の厚さは、レンズ面内での位置によらず160nmであった。また、凹凸構造層の屈折率は、実施例1,2と同様に、薄膜層側から光入射側に向かって、1.3から1.0まで連続的に減少した。薄膜層の屈折率nは、1.64であり、その膜厚は光軸位置から周辺部の外縁にかけて極端に増加した。
【0101】
表1には、比較例2におけるhと、φ(h)と、D(h)と、Dc/cos(θ(h))と、Ds(h)と、平均反射率Ra(h)とを示す。
【0102】
表1に示すように、比較例2における薄膜層の膜厚は、条件(2)を満足していない。
【0103】
また、図2には、距離h=10.2mmの位置における400〜700nmの波長域での反射率特性を示す。比較例2は、400nm〜670nmの波長域で、実施例1及び2よりも高い反射率を示した。
【0104】
さらに、表1に示すように、距離h=10.2mm及び17.6mmの位置における400〜700nmの波長範囲での平均反射率は、Ra(10.2)=0.85%、Ra(17.6)=4.96%であった。
【0105】
以上のことから分かるように、比較例1の反射防止効果は、実施例1,2と比較して低い。
[比較例3]
比較例3では、実施例1及び2との比較を行うため、単層構成である薄膜層を真空蒸着法で形成した後、スピンコート法で凹凸構造層を形成した場合を示す。薄膜層の膜厚は、光軸位置から周辺部の外縁に向かって減少するように変化し、凹凸構造層の厚さはレンズ面内で均一とした。
【0106】
比較例3では、実施例1と同形状のメニスカスレンズ上に、薄膜層として、アルミナ(Al)層(屈折率1.64)を真空蒸着法にて形成した。次に、該アルミナ薄膜層上に、ゾル−ゲルコート液を用いたスピンコート法により凹凸構造層を形成した。
【0107】
凹凸構造層の厚さは、レンズ面内での位置によらず160nmであった。また、凹凸構造層の屈折率は、実施例1,2と同様に、薄膜層側から光入射側に向かって、1.3から1.0まで連続的に減少した。薄膜層の膜厚は、光軸位置において65nmで、光軸位置から周辺部の外縁に向かって滑らかに減少した。
【0108】
表1には、比較例3におけるhと、φ(h)と、D(h)と、Dc/cos(θ(h))と、Ds(h)と、平均反射率Ra(h)とを示す。
【0109】
表1に示すように、比較例3における薄膜層の膜厚は、条件(2)を満足していない。
【0110】

また、図2には、距離h=10.2mmの位置における400〜700nmの波長域での反射率特性を示す。比較例3は、400nm〜700nmの波長域で、実施例1及び2の2倍程度の高い反射率を示した。
【0111】
さらに、表1に示すように、距離h=10.2mm及び17.6mmの位置における400〜700nmの波長範囲での平均反射率は、Ra(10.2)=0.41%、Ra(17.6)=4.17%であった。
【0112】
以上のことから分かるように、比較例1の反射防止効果は、実施例1,2と比較して低い。
[比較例4]
比較例4では、実施例3及び4との比較を行うため、2層構造を有する薄膜層を真空蒸着法で形成した後、スピンコート法で凹凸構造層を形成した場合を示す。薄膜層の膜厚は、光軸位置から周辺部の外縁に向かって減少するように変化し、凹凸構造層の厚さはレンズ面内で均一とした。
【0113】
比較例4では、実施例1と同形状のメニスカスレンズ上に、酸化マグネシウム(屈折率1.74)の薄膜層と、アルミナ(Al)(屈折率1.64)の薄膜層の2層を真空蒸着法にて形成した。次に、アルミナ薄膜層上に、ゾル−ゲルコート液を用いたスピンコート法により凹凸構造層を形成した。
【0114】
凹凸構造層の厚さは、レンズ面内での位置によらず195nmであった。また、凹凸構造層の屈折率は、実施例3,4と同様に、薄膜層側から光入射側に向かって、1.36から1.0まで連続的に減少した。酸化マグネシウム薄膜層の膜厚は光軸位置において79nmとし、アルミナ薄膜層の膜厚は光軸位置において43nmとした。これらの薄膜層の膜厚は、光軸位置から周辺部の外縁に向かって滑らかに減少した。
【0115】
表2には、比較例4におけるhと、φ(h)と、2層構造の薄膜層のうち凹凸構造層に近い側の酸化マグネシウム薄膜層の膜厚D(h)及びDc/cos(θ(h))とを示す。また、同表には、2層構造の薄膜層のうちレンズ面に近い側のアルミナ薄膜層の膜厚D(h)及びDc/cos(θ(h))と、Ds(h)と、平均反射率Ra(h)とを示す。
【0116】
表2に示すように、比較例4における薄膜層の膜厚は、条件(2)を満足していない。
【0117】
また、図3には、距離h=10.2mmの位置における400〜700nmの波長域での反射率特性を示す。比較例4は、400nm〜700nmの波長域で、実施例3及び4の2倍以上も高い反射率を示した。
【0118】
さらに、表2に示すように、距離h=10.2mm及び17.6mmの位置における400〜700nmの波長範囲での平均反射率は、Ra(10.2)=0.59%、Ra(17.6)=1.96%であった。
【0119】
以上のことから分かるように、比較例1の反射防止効果は、実施例3,4と比較して低い。
【0120】
具体的な比較例としては示さないが、2層構造の薄膜層と凹凸構造層とを有する反射防止構造でも、薄膜層の膜厚がレンズ面内で均一である場合と薄膜層の膜厚が光軸位置から周辺部の外縁に向かって極端に増加する場合は、反射防止効果が低いことが分かった。
【0121】
以上説明したように、実施例1〜4によれば、曲率半径の小さいレンズ中心部のみならずレンズ周辺部においても高い反射防止性能を有し、量産性に優れた光学素子を実現することができる。
【0122】
【表1】

【0123】
【表2】

【実施例5】
【0124】
図4には、実施例1〜4に示した光学素子を用いた撮像光学系(結像光学系)を示している。この撮像光学系は、デジタルカメラ、ビデオカメラ及び交換レンズ等の光学機器に用いられる。
【0125】
図4において、43は撮像面であり、CCDセンサ又はCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)が配置される。42は絞りである。
【0126】
44は光学素子としてのレンズであり、その入射面及び射出面のうち少なくとも一方に、実施例1〜4に示した薄膜層12と凹凸構造層13とにより構成される反射防止構造41(図中に多数のドットで示す)を有する。
【0127】
本実施例の撮像光学系の使用波長領域は可視域であり、使用波長域における最も短い波長を400nmとしている。
【0128】
本実施例におけるψ(h)は、光軸位置からの距離hの位置を通過する全光線の入射角の平均値の入射角を持った光線が、薄膜層の最表面の法線となす角とするのが好ましい。
【0129】
また、本実施例の光学系におけるζ(h)は、光軸位置からの距離hの位置と絞り42の中心を通過する光線が、薄膜層内において、該薄膜層の最表面の法線となす角とするのが好ましい。
【0130】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0131】
曲率半径の小さい光学面の中心部のみならず周辺部においても良好な反射防止性能を有する光学素子を提供できる。
【符号の説明】
【0132】
11 透過基材(レンズ)
12 薄膜層
13 凹凸構造層
41 反射防止構造
42 絞り
43 撮像面
44 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学面を有するベース部材と、
使用波長域のうち最も短い波長よりも小さい平均ピッチを有する凹凸構造体と、
前記光学面と前記凹凸構造体との間に形成され、該凹凸構造体とは材質が異なり、前記ベース部材の屈折率と凹凸構造体を形成する材料の屈折率の間の屈折率を有する少なくとも一層の中間層とを有する光学素子であって、
前記光学面は回転対称軸を有し、
前記中間層の厚さ又は前記中間層と前記凹凸構造体の双方の厚さが、前記回転対称軸からの距離が大きくなるほど増加するように変化していることを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記凹凸構造体は、厚さ方向に構造が変化していることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記回転対称軸の位置での前記中間層の厚さをDcとし、該中間層の屈折率をnとし、前記使用波長域のうち最も短い波長をλとするとき、
以下の条件を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学素子。
λ/(8×n)≦Dc≦(2×λ)/n
【請求項4】
前記回転対称軸の位置での前記中間層の厚さをDcとし、該中間層の屈折率をnとし、前記回転対称軸からの距離がhであるh位置での前記中間層の厚さD(h)とするとき、
以下の条件を満足することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の光学素子。
0.3≦n×sin(θ(h))<1
Dc<D(h)<Dc/cos(θ(h))
ただし、θ(h)は、前記中間層における前記h位置に前記回転対称軸に平行に入射した光線が、前記中間層内において、該中間層の最表面における前記h位置での法線となす角度である。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の光学素子を有することを特徴とする光学系。
【請求項6】
前記回転対称軸の位置での前記中間層の厚さをDcとし、該中間層の屈折率をnとし、前記回転対称軸からの距離がhであるh位置での前記中間層の厚さD(h)とするとき、
以下の条件を満足することを特徴とする請求項5に記載の光学系。
0.3≦n×sin(ψ(h))<1
Dc<D(h)<Dc/cos(ψ(h))
ただし、ψ(h)は、前記光学系において、前記中間層における前記h位置を通過する全光線の入射角の平均値の入射角を有する光線が、前記中間層内において、該中間層の最表面における前記h位置での法線となす角度である。
【請求項7】
絞りを有し、
前記回転対称軸の位置での前記薄膜層の厚さをDcとし、該中間層の屈折率をnとし、前記回転対称軸からの距離がhであるh位置での前記中間層の厚さD(h)とするとき、
以下の条件を満足することを特徴とする請求項5に記載の光学系。
0.3≦n×sin(ζ(h))<1
Dc<D(h)<Dc/cos(ζ(h))
ただし、ζ(h)は、前記中間層における前記h位置と前記絞りの中心とを通過する光線が、前記中間層内において、該中間層の最表面における前記h位置での法線となす角度である。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1つに記載の光学系を有することを特徴とする光学機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−79274(P2010−79274A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184144(P2009−184144)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】