説明

光学素子搭載用基板および光学装置

【課題】 絶縁基体と側面導体との熱膨張率の違いによって光学素子搭載用基板に生じる反りを抑制すること。
【解決手段】
光学素子搭載用基板1は、光学素子2の搭載領域11aを含む上面を有しており、平面視において矩形状の絶縁基体11と、絶縁基体11の対向する第1の一対の側面11bに設けられた第1の側面導体12と、絶縁基体11の対向する第2の一対の側面11cに設けられた第2の側面導体13とを有しており、第1の側面導体12が下方向に向かうに伴って厚くなっており、第2の側面導体13が下方向に向かうに伴って薄くなっている。絶縁基体11の角部における反りが低減されて、絶縁基体11の角部を起点とする絶縁基体11の反りが低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子搭載用基板および光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばプロジェクタ等の光学機器において、光走査装置等の光学装置が用いられている。光走査装置は、光学素子搭載用基板の上面に搭載された光走査素子等の光学素子を有している。例示的な光走査素子は、半導体基板上に多数の微小な鏡が敷き詰められており、微小な鏡のそれぞれの角度をデジタル制御で変化させることのできるデジタルマイクロミラーデバイスである(例えば、特許文献1参照)。光学素子搭載用基板は、例えば、矩形状の絶縁基体と、絶縁基体の側面に設けられた側面導体とを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−69457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光学装置に照射される光によって光学素子搭載用基板が加熱されると、光学素子搭載用基板の絶縁基体と側面導体との熱膨張率が異なることから、絶縁基体と側面導体との間で熱応力が生じて光学素子搭載用基板が反ってしまう。光学素子搭載用基板が反ると、搭載された光学素子が傾いてしまうため、光学素子に入射する光および光学素子から照射される光が、所望の位置からずれてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの態様による光学素子搭載用基板は、平面視において矩形状の絶縁基体と、第1の側面導体と、第2の側面導体とを有している。絶縁基体は、光学素子の搭載領域を含む上面を有している。第1の側面導体は、絶縁基体の対向する第1の一対の側面に設けられている。第2の側面導体は、絶縁基体の対向する第2の一対の側面に設けられている。第1の側面導体は下方向に向かうに伴って厚くなっており、第2の側面導体は下方向に向かうに伴って薄くなっている。
【0006】
本発明の他の態様による光学装置は、上記構成の光学素子搭載用基板と、光学素子搭載用基板の前記搭載領域に搭載された光学素子とを有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様による光学素子搭載用基板は、第1の側面導体が下方向に向かうに伴って厚くなっており、第2の側面導体が下方向に向かうに伴って薄くなっていることによって、光学素子搭載用基板が加熱された場合に、第1の一対の側面と第2の一対の側面とに加わる熱応力の向きが互いに反対方向となるので、絶縁基体の角部における反りが低減される。したがって、絶縁基体の角部を起点とする絶縁基体の反りが低減される。
【0008】
本発明の他の態様による光学装置は、加熱された場合にも光学素子搭載用基板の反りが低減されることから、光学素子の傾きを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態における光学装置の分解斜視図を示している。
【図2】(a)は図1に示した光学装置のA−A線における縦断面図を示しており、(b)は図1に示した光学装置のB−B線における縦断面図を示している。
【図3】本発明の第2の実施形態における光学装置の分解斜視図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のいくつかの例示的な実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
第1の実施形態における光学装置は、図1および図2に示されているように、光学素子搭載用基板1と、光学素子搭載用基板1に搭載された光学素子2と、光学素子2の周囲を取り囲んで光学素子搭載用基板1に接合された枠状のシールリング3と、シールリング3の開口を覆ってシールリング3に接合された透光性部材4とを有している。図1において、光学装置は、仮想のxyz空間におけるxy平面に実装されている。図1および図2において、上方向とは、仮想のz軸の正方向のことをいう。
【0012】
光学素子搭載用基板1は、平面視において矩形状の絶縁基体11と、絶縁基体11の第1の一対の側面11bに設けられている第1の側面導体12と、絶縁基体11の第2の一対の側面11cに設けられている第2の側面導体13と、絶縁基体11の上面に設けられた接続電極14aと、絶縁基体11の内部に設けられた配線導体14bと、絶縁基体11の下面に設けられた端子電極14cとを有している。
【0013】
絶縁基体11は、光学素子2の搭載領域11aを含む上面を有しており、平面視において矩形の板状の形状を有している。絶縁基体11は、光学素子2を支持するための支持体として機能し、上面中央部の搭載領域11a上に光学素子2が低融点ろう材等の接合剤を介して接着され固定される。
【0014】
絶縁基体11の材料は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体(アルミナセラミックス)、窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化珪素質焼結体またはガラスセラミック等のセラミックスからなる。
【0015】
第1の側面導体12は、絶縁基体11の対向する第1の一対の側面11bに設けられている。第2の側面導体13は、絶縁基体11の対向する第2の一対の側面11cに設けられている。第1の側面導体12は下方向に向かうに伴って厚くなっており、第2の側面導体13は下方向に向かうに伴って薄くなっている。
【0016】
図1に示された例において、第1の側面導体12の上端と第2の側面導体13の下端とは同じ厚みである。また、第1の側面導体12の下端と第2の側面導体13の上端とは同じ厚みである。また、第1の側面導体12と第2の側面導体13とは、図2に示された例のように縦断面視で互いに線対称な形状を有している。すなわち、第1の側面導体12と第2の側面導体13とは、図2に示された例の縦断面視において、上辺と下辺との間を通り、上辺および下辺から等しい距離にある仮想直線を対称の軸とした場合に互いに線対称である。
【0017】
また、図1に示された例において、第1の側面導体12と第2の側面導体13とは回転対称である。すなわち、図1に示された例の第1の側面導体12は、側面視で第1の側面導体12の中央を通り仮想のy軸方向に伸びる仮想直線を軸に180°回転すると第2の側面導体13
と同じ形状となる。
【0018】
このように、第1の側面導体12と第2の側面導体13とが縦断面視において線対称である場合または、第1の側面導体12と第2の側面導体13とが互いに回転対称である場合には、絶縁基体11と第1の側面導体12との間の第1の熱応力と、絶縁基体11と第2の側面導体13との間の第2の熱応力とが、互いに逆方向であって略等しい大きさとなる。したがって、
特に絶縁基体11の角部において第1の熱応力と第2の熱応力とが打ち消し合って、絶縁基体11の変形を低減できる。
【0019】
絶縁基体11の上面には接続電極14aが設けられている。接続電極14aは光学素子2の電極に電気的に接続されている。絶縁基体11の下面には端子電極14cが設けられている。端子電極14cは、絶縁基体11の下面に設けられており、外部の回路基板に電気的に接続されるものである。絶縁基体11の内部には配線導体14bが設けられている。配線導体14bは、接続電極14aおよび端子電極14cに電気的に接続されており、接続電極14aと端子電極14cとを電気的に接続している。
【0020】
第1の側面導体12,第2の側面導体13,接続電極14a,配線導体14bおよび端子電極14cの材料は、例えばタングステン、モリブデンまたはマンガン等の金属である。
【0021】
第1の側面導体12,第2の側面導体13,接続電極14a,配線導体14bおよび端子電極14cの露出する表面には、ニッケル,金等の耐蝕性に優れる金属めっきが被着されている。金属めっきが被着されることによって、第1の側面導体12,第2の側面導体13,接続電極14a,配線導体14bおよび端子電極14cが腐食することを効果的に抑制できる。また、接続電極14aと光学素子2との接合、端子電極14cと外部の回路基板の電極との接合を強固にできる。例えば、第1の側面導体12,第2の側面導体13,接続電極14a,配線導体14bおよび端子電極14cの露出する表面には、厚さ1〜10μm程度のニッケルめっき層と厚さ0.1〜3μm程度の金めっき層とが、電解めっき法もしくは無電解めっき法により順次被
着される。
【0022】
光学素子2は、例えば光を反射するための光走査素子である。光走査素子としては、例えばデジタルマイクロミラーデバイスが挙げられる。デジタルマイクロミラーデバイスは、半導体基板上に敷き詰められた多数の微小な鏡のそれぞれの角度をデジタル制御で変化させることによって、光源から照射された光を多数の微小な鏡で反射するための装置である。
【0023】
光学素子2は、図1および図2に示された例のように矩形状を有しており、上面には受光部21および上面電極22aが設けられており、下面には下面電極22bが設けられている。受光部21は、光学素子2が例えばデジタルマイクロミラーデバイスである場合には多数の微小な鏡が敷き詰められた領域である。上面電極22aは、例えば導電性ワイヤ部材5によって接続電極14aに電気的に接続されている。また、下面電極22bは、例えば低融点半田等の接合材6を介して接続電極14aに接合されている。上面電極22aおよび下面電極22bの材料は、例えば銀、アルミニウム等を用いることができる。
【0024】
シールリング3および透光性部材4は、光学素子2を封止する封止空間を構成するためのものである。
【0025】
シールリング3は、例えば矩形の枠形状を有しており、光学素子搭載用基板1の上面に、光学素子2を取り囲むように配置されている。このようなシールリング3は、例えば低融点ろう材等の接合部材を介して光学素子搭載用基板1に接合されている。シールリング3の材料には、例えばアルミニウム、ステンレス等を用いることができる。
【0026】
透光性部材4は、例えば矩形の板形状を有しており、シールリング3の上面にシールリング3の開口を覆うように配置されている。透光性部材4は、例えば低融点ろう材等の接合部材を介してシールリング3に接合されている。透光性部材4の材料には、例えばガラスまたはアクリル等を用いることができる。
【0027】
以下、光学装置の製造方法について説明する。
【0028】
光学素子搭載用基板1の製造方法は、例えば絶縁基体11がセラミックスからなる場合には、セラミックグリーンシートを得る工程と、セラミックグリーンシートに、導体パターンを形成する工程と、導体パターンを含む積層体を得る工程と、積層体に導体パターンを形成する工程と、積層体を焼成して絶縁基体11を得る工程と、絶縁基体11に導体を接合する工程とを含んでいる。
【0029】
セラミックグリーンシートは、絶縁基体11が、例えば酸化アルミニウム質焼結体である場合には、アルミナ(Al),シリカ(SiO),カルシア(CaO)およびマグネシア(MgO)等の原料粉末に適当な有機溶剤および溶媒を添加混合して泥漿状となすとともに、これを従来周知のドクターブレード法またはカレンダーロール法等を採用してシート状に成形して、適当な打ち抜き加工を施すことによって形成される。
【0030】
接続電極14a,配線導体14bまたは端子電極14cとなる導体パターンは、セラミックグリーンシートにスクリーン印刷法等の印刷手段によって導体ペーストを印刷塗布することによって形成される。導体ペーストは、主成分の金属粉末に有機バインダーおよび有機溶剤、また必要に応じて分散剤等を加えてボールミル,三本ロールミルまたはプラネタリーミキサー等の混練手段によって混合および混練して作製する。また、導体ペーストは、セラミックグリーンシートの焼結挙動に合わせたり、焼成後の光学素子搭載用基板1との接合強度を高めたりするために、ガラスまたはセラミックスの粉末が添加されていてもよい。
【0031】
なお、貫通導体となる導体パターンは、導体ペーストの印刷前にセラミックグリーンシートに金型またはパンチングによる打ち抜き加工またはレーザー加工等の加工方法によって貫通孔を形成し、この貫通孔に貫通導体用の導体ペーストを充填して形成すればよい。貫通導体用の導体ペーストは、有機バインダーまたは有機溶剤の種類または添加量によって、充填に適した粘度に調整されている。
【0032】
導体パターンを含む積層体は、導体パターンの印刷されたセラミックグリーンシートを必要に応じて複数枚積層することによって形成される。
【0033】
第1の側面電極12および第2の側面電極13となる導体パターンは、導体パターンを含む積層体の側面に、上記した導体ペーストを上記した印刷手段によって印刷塗布することによって形成される。第1の側面電極12となる導体パターンは、積層体の下面側に向かうに伴って厚くなるように、対向する第1の一対の積層体の側面に導体ペーストを複数回印刷して形成される。第2の側面電極13となる導体パターンは、積層体の下面側に向かうに伴って薄くなるように、対向する第2の一対の積層体の側面に導体ペーストを複数回印刷して形成される。
【0034】
このようにして形成した導体パターンを含む積層体を高温(約1500〜1800℃)で焼成することによって光学素子搭載用基板1が作製される。
【0035】
作製した光学素子搭載用基板1の上面に、光学素子2を実装する。次に、光学素子等採用基板1の上面に、光学素子2の周囲を取り囲むようにシールリング3を接合する。その後、シールリング3の上面に透光性部材4を接合して光学装置が作製される。
【0036】
本実施形態における光学素子搭載用基板1は、第1の側面導体12が下方向に向かうに伴って厚くなっており、第2の側面導体13が下方向に向かうに伴って薄くなっている。このような構成であることによって、光学素子搭載用基板1が加熱された場合に、第1の一対
の側面11bと第1の側面導体12との間で生じる熱応力の向きと、第2の一対の側面11cと第2の側面導体13との間で生じる熱応力の向きとが、Z軸方向において逆向きになる。したがって、絶縁基体11の角部には互いに逆向きの熱応力が加わることから、絶縁基体11の角部における熱応力が低減されるので、絶縁基体11の角部における反りが低減されて、絶縁基体11の角部を起点とする絶縁基体11の反りが低減される。
【0037】
本実施形態における光学装置は、上記構成の光学素子搭載用基板1と、光学素子搭載用基板1の搭載領域11aに搭載された光学素子2とを有していることによって、光学装置が加熱された場合にも、光学素子搭載用基板1の反りが低減されていることから、光学素子の傾きを低減できる。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態による光学装置について、図3を参照しつつ説明する。
【0039】
本発明の第2の実施形態における光学装置において、上記した第1の実施形態の光学装置と異なる点は、図3に示された例のように、対向する第1の一対の側面11bのそれぞれにおいて、第1の側面導体12が複数設けられており、絶縁基体11に凹部11dが設けられている点である。
【0040】
本実施形態における光学装置は、第1の側面導体12が複数設けられていることから、同じ側面に設けられた第1の側面導体12同士の間の領域において熱応力が緩和されるので、絶縁基体11の角部に加わる熱応力が低減され、絶縁基体11の角部における反りをさらに低減できる。
【0041】
なお、本発明は上述の実施の形態の例に限定されるものではなく、種々の変更は可能である。例えば、対向する第2の一対の側面11cのそれぞれにおいて、第2の側面導体13が複数設けられていてもよい。
【0042】
また、光学素子2は光学素子搭載用基板1にフリップチップ実装されていてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 光学素子搭載用基板
11 絶縁基板
11a 搭載領域
11b 第1の一対の側面
11c 第2の一対の側面
11d 凹部
12 第1の側面導体
13 第2の側面導体
14a 接続電極
14b 配線導体
14c 端子電極
2 光学素子
21 受光部
22a 上面電極
22b 下面電極
3 シールリング
4 透光性部材
5 ワイヤ部材
6 接合材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子の搭載領域を含む上面を有しており、平面視において矩形状の絶縁基体と、
該絶縁基体の対向する第1の一対の側面に設けられた第1の側面導体と、
前記絶縁基体の対向する第2の一対の側面に設けられた第2の側面導体とを備えており、前記第1の側面導体が下方向に向かうに伴って厚くなっており、前記第2の側面導体が前記下方向に向かうに伴って薄くなっていることを特徴とする光学素子搭載用基板。
【請求項2】
請求項1に記載の光学素子搭載用基板と、
該光学素子搭載用基板の前記搭載領域に搭載された光学素子とを備えている光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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