説明

光学膜

【課題】屈折率が大きく、光学基体上に成膜した場合には反射防止膜等としての機能を奏する光学膜を得る。
【解決手段】(A)分子内に3以上の(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物を1から10質量%、(B)金属酸化物微粒子を3から30質量%、(C)重合開始剤を0.05から1質量%、(D)希釈剤を60から96質量%が分散した組成物を基材に塗布後、紫外線照射によって硬化させた光学膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子等に用いる光学膜に関し、屈折率が大きく、光学基体上に成膜した場合には反射防止膜等としての機能を奏する光学膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光線透過率を向上して撮像性能を向上するために、レンズの光学面には反射防止膜等の光学膜が形成されている。光学膜を形成する手段として、一般的には減圧下で蒸発した成分を真空蒸着する真空蒸着法に代表される真空成膜法が用いられている。
しかし、真空成膜法は、真空下、高温加熱するため成膜時間が長いという問題があった。
近年では上記問題の解決のために、大気圧下で光学膜を形成する方法が提案されている。大気圧下での光学膜の成膜には、熱、紫外線等のエネルギーで硬化するエネルギー硬化型組成物を光学基材に塗布後、加熱、紫外線照射等の方法によって硬化することによって形成している。
【0003】
光学膜には、その目的によって種々の物性の膜を成膜することが求められている。特に、反射防止膜にあっては、低屈折率のものから高屈折率のものまで様々な膜が必要とされる。高屈折率の光学膜を得るためには、芳香族化合物に代表されるπ電子を多く含有したもの、あるいは長い共役構造を有する化合物が用いられている。なかでも、フルオレン骨格やカルバゾール骨格を有するエネルギー硬化型材料が高屈折率材料としては好適である。
しかし、当該材料の屈折率は1.6程度が上限であり、それ以上の屈折率の化合物を得ることは困難であった。
更なる高屈折率化のために、屈折率が2以上の金属酸化物の微粒子をエネルギー硬化型材料に分散する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1には、金属酸化物粒子を含まない樹脂組成物をホットプレート上において硬化挙動を評価したことが記載されているのみであって、金属酸化物の微粒子を配合した組成物の硬化特性およびその硬化物の特性等については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−235196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、真空成膜装置を用いることなく作製することが可能な光学膜を提供するものであり、屈折率が高い光学膜およびそれを有する光学素子を提供することを課題とするものである。また、微粒子を均一に分散した特性が優れた高屈折率の光学膜を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するものであって、(A)分子内に3以上の(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物1から10質量%、(B)金属酸化物微粒子3から30質量%、(C)重合開始剤0.05から1質量%、(D)希釈剤60から96質量%が分散した組成物を基材に塗布後、紫外線照射によって硬化させた光学膜である。
また、前記金属酸化物微粒子(B)の表面が、(メタ)アクリロイル基を有する官能基で表面修飾された前記の光学膜である。
前記重合開始剤(C)が、波長370nmから400nmに光吸収を有している前記の光学膜である。
金属酸化物を含まない紫外線硬化型樹脂からなる膜を表面に設けた基材上に形成された前記の光学膜である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光学膜は、分子内に3以上の(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物1から10質量%と、金属酸化物微粒子3から30質量%、重合開始剤0.05から1質量%、希釈剤60から96質量%が分散した組成物を基材に塗布後、紫外線照射によって硬化させることで、重合性化合物の屈折率を更に高めることができる。 また、前記金属酸化物微粒子の表面は、(メタ)アクリロイル基を有する官能基で表面修飾したものであるので、基材との密着性が良好であるとともに金属酸化物微粒子は紫外線による重合反応を阻害することを防止することができる。
さらに、重合開始剤の吸収波長域を特定した場合には、金属酸化物粒子による紫外線の吸収の影響を受けずに円滑な硬化を進めることによって特性が優れた光学膜の形成が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者は、光学基材の光学面等を形成する光学膜として、分子内に3以上の(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物1から10質量%、(B)金属酸化物微粒子3から30質量%、(C)重合開始剤0.05から1質量%、(D)希釈剤60から96質量%が分散した組成物を基材に塗布後、紫外線照射によって硬化させることによって屈折率が大きな光学膜を提供することが可能であることを見いだしたものである。
【0009】
分子内に3以上の(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート等を挙げることができる。
本発明において(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基、メタアクリロイル基の少なくともいずれか一方を含有するものを意味する。
これらの重合性化合物は、金属酸化物粒子を分散させた組成物とした場合、芳香族骨格の共役構造によって、金属酸化物微粒子の含有する効果を損ねることなく、透明性が高く、屈折率の高い樹脂組成物とすることができる。
分子内に3以上の(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物の配合量が1質量%より少ない場合には光学膜が硬化せず、一方、配合量が10質量%より多い場合には重合性化合物を単独で硬化した場合に比べて屈折率が大きくならない。
【0010】
金属酸化物微粒子としては、酸化チタン、インジウムスズ複合酸化物(ITO)、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セレン、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化タンタル等の微粒子を挙げることができ、これらの一種以上を配合することができる。
金属酸化物微粒子の配合量が、3質量%よりも少ない場合には、屈折率の向上の効果が得られず、一方、金属酸化物微粒子の配合量が30質量%を超えると光学膜の硬化性が不充分なものとなる。
また、金属酸化物粒子は、表面が、(メタ)アクリロイル基を有する官能基で表面修飾されていることが好ましい。
【0011】
また、光重合開始剤としては、任意のものを用いることができるが、波長370nmから400nmに光吸収を有する重合開始剤の使用が好ましい。370nm以上であれば、金属酸化物の微粒子が波長370nm以下で光吸収することによる影響を受けにくい。また400nm以下であれば、光学膜の使用波長の光による影響を受けくい。
一例を挙げれば、金属酸化物粒子として酸化チタン微粒子を用いて可視光域において使用する光学膜の場合には、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン)(長瀬産業製イルガキュア907)やビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(イルガキュア819)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184)などが好ましく、光重合反応を円滑に進めるとともに、可視光域において着色をしない硬化樹脂を得ることができる。これらは、単独に用いても構わないし、複数を組み合わせて用いてもよい。
光重合開始剤は、0.05から1質量%を配合することが好ましく、0.05質量%よりも少ない場合には、光学膜が充分に硬化しない。一方、光重合開始剤の配合量が1質量%よりも多いと得られる光学膜が黄変をする。
【0012】
これらに加えて、希釈剤としてプロピレングリコールメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類、及びジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテル類、及び酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、及びジアルキルグリコールエーテル類等が挙げられ、これらは各々単独であるいは適宜互いに組み合わせて使用することができる。
希釈剤によって使用目的に応じた所望の塗布特性を付与することができるが、希釈剤の配合量が60質量%よりも少ない場合には、平滑な膜が得られず、一方、96質量%よりも多くなると硬化しなくなる。
【0013】
本発明の光学膜は、様々な光学材料に利用することができ、レンズ、フィルター、ミラー等の光学素子であって、基材には、合成樹脂、ガラスのいずれをも使用可能である。
本発明の光学膜は、以上のような、分子内に3以上の(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物1から10質量%、(B)金属酸化物微粒子3から30質量%、(C)重合開始剤0.05から1質量%、(D)希釈剤60から96質量%が分散した組成物を基材に塗布後、紫外線照射によって形成することができる。
【0014】
本発明の光学膜は、金属酸化物を含まない紫外線硬化型樹脂からなる膜を表面に設けた基材上に形成される事が好ましい。さらに密着性を向上させることができる。
【0015】
以下に、実施例、比較例を示し本発明を説明する。
【実施例】
【0016】
実施例1
光学膜形成用組成物1の調製
重合性化合物として、トリメチロールプロパントリアクリレート(ダイセル・サイテック製)10g、金属酸化物微粒子として、粒径50nmの酸化チタン分散液(CIKナノテック社製酸化チタン15質量%分散液)200g、光重合開始剤として、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン)(長瀬産業製イルガキュア907)1g(吸収域410nm以下)、希釈剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業製)64gを配合して、室温下、密閉容器中攪拌・混合した。
【0017】
光学膜評価用試料の作製
直径30mmの鏡面研磨したガラス基材(オハラ社製 S−BSL7)に、光学膜形成用組成物1の0.1mlを滴下し、回転数4000rpmで30秒間回転して均一に塗布した。塗布後、メタルハライドランプを用い、波長365nmの紫外線が積算光量で1000mJ/cm2 となるように照射した。
【0018】
光学膜の評価
得られた光学膜に、レンズクリーニングワイパー(小津産業製ダスパー)を1.97Nの力で押し当て、10往復させて目視によって外観を観察したところ、外観に変化がなかった。
また、チタン酸化物を配合前の成分の硬化物、およびチタン酸化物を含有した薄膜のそれぞれの波長550nmにおける屈折率を反射率測定器(オリンパス製USPM−RU)を用いて20℃60%RHの条件で測定したところ、それぞれ1.50および1.82であった。
【0019】
実施例2
光学膜形成用組成物2の調製
重合性化合物として、トリメチロールプロパントリアクリレート(ダイセル・サイテック製)1g、金属酸化物微粒子として、粒径50nmの酸化チタン分散液(CIKナノテック社製酸化チタン15wt%分散液20g、光重合開始剤として、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン)(長瀬産業製イルガキュア907)0.05g、希釈剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業製)96gを配合し、実施例1と同様にして混合した。
【0020】
光学膜評価用試料の作製と評価
実施例1と同様に、作製した光学膜を同様に評価したところ、外観に変化はなかった。
また、チタン酸化物を配合前の成分の硬化物、およびチタン酸化物を含有した薄膜の波長550nmにおける屈折率を反射率測定器(オリンパス製USPM−RU)を用いて20℃60%RHの条件で測定したところ、それぞれ1.50および1.78であった。
【0021】
実施例3
光学膜形成用組成物3の調製
重合性化合物として、トリメチロールプロパントリアクリレート(ダイセル・サイテック製)10g、金属酸化物微粒子として、粒径50nmの酸化チタン分散液(CIKナノテック社製酸化チタン15質量%分散液)200g、光重合開始剤として、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン)(長瀬産業製イルガキュア907)0.05g、希釈剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業製)65gを配合し、実施例1と同様にして混合した。
【0022】
光学膜評価用試料の作製と評価
実施例1と同様に調製した光学膜を同様に評価したところ、外観に変化はなかった。
また、チタン酸化物を配合前の成分の硬化物、およびチタン酸化物を含有した薄膜の波長550nmにおける屈折率を反射率測定器(オリンパス製USPM−RU)を用いて20℃60%RHの条件で測定したところ、それぞれ1.50および1.82であった。
【0023】
実施例4
光学膜形成用組成物4の調製
重合性化合物として、トリメチロールプロパントリアクリレート(ダイセル・サイテック製)10g、金属酸化物微粒子として、粒径50nmの酸化チタン分散液(CIKナノテック社製酸化チタン15質量%分散液)20g、光重合開始剤として、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン)(長瀬産業製イルガキュア907)0.05g、希釈剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業製)92gを配合し、実施例1と同様にして混合した。
【0024】
光学膜評価用試料の作製と評価
実施例1と同様に調製した光学膜を同様に評価したところ、外観に変化はなかった。
また、チタン酸化物を配合前の成分の硬化物、およびチタン酸化物を含有した薄膜の波長550nmにおける屈折率を反射率測定器(オリンパス製USPM−RU)を用いて20℃60%RHの条件で測定したところ、それぞれ1.50および1.58であった。
【0025】
実施例5
光学膜形成用組成物5の調製
重合性化合物として、トリメチロールプロパントリアクリレート(ダイセル・サイテック製)1g、金属酸化物微粒子として、粒径50nmの酸化チタン(CIKナノテック社製酸化チタン15質量%分散液)200g、光重合開始剤として、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン)(長瀬産業製イルガキュア907)1g、希釈剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業製)68gを配合し、実施例1と同様にして混合した。
【0026】
光学膜評価用試料の作製と評価
実施例1と同様に調製した光学膜を同様に評価したところ、外観に変化はなかった。
また、チタン酸化物を配合前の成分の硬化物、およびチタン酸化物を含有した薄膜の波長550nmにおける屈折率を反射率測定器(オリンパス製USPM−RU)を用いて20℃60%RHの条件で測定したところ、それぞれ1.50および1.97であった。
【0027】
実施例6
光学膜形成用組成物6の調製
重合性化合物として、トリメチロールプロパントリアクリレート(ダイセル・サイテック製)1g、金属酸化物微粒子として、粒径50nmの酸化チタン(CIKナノテック社製酸化チタン15質量%分散液)20g、光重合開始剤として、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン)(長瀬産業製イルガキュア907)1g、希釈剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業製)95gを配合し、実施例1と同様にして混合した。
【0028】
光学膜評価用試料の作製と評価
実施例1と同様に調製した光学膜を同様に評価したところ、外観に変化はなかった。
また、チタン酸化物を配合前の成分の硬化物、およびチタン酸化物を含有した薄膜の波長550nmにおける屈折率を反射率測定器(オリンパス製USPM−RU)を用いて20℃60%RHの条件で測定したところ、それぞれ1.50および1.78であった。
【0029】
実施例7
光学膜形成用組成物7の調製
重合性化合物として、トリメチロールプロパントリアクリレート(ダイセル・サイテック製)10g、金属酸化物微粒子として、粒径50nmの酸化チタン(CIKナノテック社製酸化チタン15質量%分散液)20g、光重合開始剤として、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン)(長瀬産業製イルガキュア907)1g、希釈剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業製)91gを配合し、実施例1と同様にして混合した。
【0030】
光学膜評価用試料の作製と評価
実施例1と同様に調製した光学膜を同様に評価したところ、外観に変化はなかった。
また、チタン酸化物を配合前の成分の硬化物、およびチタン酸化物を含有した薄膜の波長550nmにおける屈折率を反射率測定器(オリンパス製USPM−RU)を用いて20℃60%RHの条件で測定したところ、それぞれ1.50および1.58であった。
【0031】
実施例8
光学膜形成用組成物8の調製
重合性化合物として、トリメチロールプロパントリアクリレート(ダイセル・サイテック製)1g、金属酸化物微粒子として、粒径50nmの酸化チタン(CIKナノテック社製酸化チタン15質量%分散液)200g、光重合開始剤として、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(長瀬産業製イルガキュア907)0.05g、希釈剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業製)69gを配合し、実施例1と同様にして混合した。
光学膜評価用試料の作製と評価
実施例1と同様に調製した光学膜を同様に評価したところ、外観に変化はなかった。
また、チタン酸化物を配合前の成分の硬化物、およびチタン酸化物を含有した薄膜の波長550nmにおける屈折率を反射率測定器(オリンパス製USPM−RU)を用いて20℃60%RHの条件で測定したところ、それぞれ1.50および1.97であった。
【0032】
実施例9
光学膜形成用組成物9の調製
重合性化合物として、トリメチロールプロパントリアクリレート(ダイセル・サイテック製)1g、金属酸化物微粒子として、粒径50nm以下の酸化チタン粉末(石原産業TTO−51)4g、酸化チタン粉末の表面修飾剤としてKBM5103(信越シリコーン製)0.5g、光重合開始剤として、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(長瀬産業製イルガキュア907)0.05g、希釈材として、プロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業製)45gを配合し、実施例1と同様にして混合した。
光学膜評価用試料の作製と評価
実施例1と同様に調製した光学膜を同様に評価したところ、外観に変化はなかった。
また、チタン酸化物を配合前の成分の硬化物、およびチタン酸化物を含有した薄膜の波長550nmにおける屈折率を反射率測定器(オリンパス製USPM−RU)を用いて20℃60%RHの条件で測定したところ、それぞれ1,50および1.90であった。
【0033】
比較例1−1
光学膜形成用組成物比較1−1の調製
重合性化合物のトリメチロールプロパントリアクリレート(ダイセル・サイテック製)0.8gとした点を除き,他の成分を実施例1と同様にして混合した。
光学膜評価用試料の作製と評価
実施例1と同様にして光学膜を作製しようとしたが膜が硬化しなかった。
【0034】
比較例1−2
光学膜形成用組成物比較1−2の調製
重合性化合物のトリメチロールプロパントリアクリレート(ダイセル・サイテック製)12gとした点を除き,他の成分を実施例1と同様にして混合した。
【0035】
光学膜評価用試料の作製と評価
実施例1と同様に調製した光学膜を同様に評価したところ、外観に変化がなかった。
また、チタン酸化物を配合前の成分の硬化物、およびチタン酸化物を含有した薄膜の波長550nmにおける屈折率を反射率測定器(オリンパス製USPM−RU)を用いて20℃60%RHの条件で測定したところ、それぞれ1.50および1.81であった。
【0036】
比較例2−1
光学膜形成用組成物比較2−1の調製
酸化チタンの配合量を2gとした点を除き,他の成分を実施例1と同様にして混合した。
【0037】
光学膜評価用試料の作製と評価
実施例1と同様に調製した光学膜を同様に評価したところ、外観に変化はなかった。
また、チタン酸化物を配合前の成分の硬化物、およびチタン酸化物を含有した薄膜の波長550nmにおける屈折率を反射率測定器(オリンパス製USPM−RU)を用いて20℃60%RHの条件で測定したところ、それぞれ1.50および1.56であった。
【0038】
比較例2−2
光学膜形成用組成物比較2−2の調製
酸化チタンの配合量を32gとした点を除き,他の成分を実施例1と同様にして混合した。
【0039】
光学膜評価用試料の作製と評価
実施例1と同様に調製した光学膜を同様に評価したところ、薄膜に傷が生じた。
また、チタン酸化物を配合前の成分の硬化物、およびチタン酸化物を含有した薄膜の波長550nmにおける屈折率を精密屈折率計(島津デバイス製造製KPR−200)を用いて20℃60%RHの条件で測定したところ、それぞれ1.50および1.92であった。
【0040】
比較例3−1
光学膜形成用組成物比較3−1の調製
光重合開始剤の配合量を0.03gとした点を除き,他の成分を実施例1と同様にして混合した。
【0041】
光学膜評価用試料の作製と評価
実施例3と同様に調製した光学膜を同様に評価したところ、光学膜が硬化しなかった。
【0042】
比較例3−2
光学膜形成用組成物比較3−2の調製
光重合開始剤の配合量を1.5gとした点を除き,他の成分を実施例1と同様にして混合した。
【0043】
光学膜評価用試料の作製と評価
実施例3と同様に調製した光学膜を同様に評価したところ、光学膜が黄色に着色した。
【0044】
比較例4−1
光学膜形成用組成物比較4−1の調製
希釈剤の配合量を50gとした点を除き,他の成分を実施例1と同様にして混合した。
【0045】
光学膜評価用試料の作製と評価
実施例1と同様に調製した光学膜を同様に評価したところ、平滑な膜にはならなかった。
【0046】
比較例4−2
光学膜形成用組成物比較4−2の調製
希釈剤の配合量を100gとした点を除き,他の成分を実施例1と同様にして混合した。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の光学膜は、分子内に3以上の(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物を含有する1から10質量%と、金属酸化物微粒子3から30質量%、重合開始剤0.05から1質量%、希釈剤60から96質量%が分散した組成物を基材に塗布後、紫外線照射によって硬化させたので、重合性化合物の屈折率を更に高めることができので、屈折率が大きな反射防止膜等の光学膜を真空成膜装置を用いることなく形成することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子内に3以上の(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物を1から10質量%、(B)金属酸化物微粒子を3から30質量%、(C)重合開始剤を0.05から1質量%、(D)希釈剤を60から96質量%が分散した組成物を基材に塗布後、紫外線照射によって硬化させたことを特徴とする光学膜。
【請求項2】
前記金属酸化物微粒子(B)の表面が、(メタ)アクリロイル基を有する官能基で表面修飾されたことを特徴とする請求項1記載の光学膜。
【請求項3】
前記重合開始剤(C)が、波長370nmから400nmに光吸収を有していることを特徴とする請求項1または2記載の光学膜。
【請求項4】
金属酸化物を含まない紫外線硬化型樹脂からなる膜を表面に設けた基材上に形成されたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の光学膜。

【公開番号】特開2013−29702(P2013−29702A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166207(P2011−166207)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】