説明

光学表示デバイスの生産システムの運転方法

【課題】光学表示部品に所定の処理を施してなる光学表示デバイスの生産システムの運転方法において、不良品の発生を抑えて前記生産システムの収率悪化を防止する。
【解決手段】光学表示部品を生産システムのメインラインに所定量流通させ、光学表示部品に所定の処理を施す初期生産工程(ステップS3)と、初期生産工程後に初期生産工程で得た製品の不良を検査する初期製品検査工程(ステップS4)と、初期製品検査工程で検出した不良品の数に応じて本生産工程へ移行するか否かを判定する本生産移行判定工程(ステップS5)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ等の光学表示デバイスの生産システムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ等の光学表示デバイスの生産システムにおいて、片面に粘着層を有する偏光フィルムを液晶パネルに貼合するものがある(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4079716号公報
【特許文献2】特許第4307510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の生産システムにおいて、実際の生産で多数の液晶パネルに偏光フィルムを貼合する等の所定の処理を行う際、前記生産システムの異常や設定ミス等により、液晶パネルとの間に貼合異物が入り込む等の不良品が発生することがある。このような不良品は、前記生産システムの要部に設置した自動検査装置等により検出され、例えば良品率が設定値よりも低くなるか所定数の不良品が連続して発生した場合には、前記生産システムを一旦停止し、清掃等の対処をした後に前記生産システムを再スタートさせるようにしている。
しかし、上記の方法では、異常を検出した時点では相当数の不良品を発生させてしまい、前記生産システムの歩留まりを低下させるという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、光学表示部品に所定の処理を施してなる光学表示デバイスの生産システムの運転方法において、不良品の発生を抑えて前記生産システムの収率悪化を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の光学表示デバイスの生産システムの運転方法は、光学表示部品に所定の処理を施してなる光学表示デバイスに対応するものにおいて、前記光学表示部品を前記生産システムのメインラインに所定量流通させ、前記光学表示部品に前記所定の処理を施す初期生産工程と、前記初期生産工程後に前記初期生産工程で得た製品の不良を検査する初期製品検査工程と、前記初期製品検査工程で検出した不良品の数に応じて本生産工程へ移行するか否かを判定する本生産移行判定工程とを含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の光学表示デバイスの生産システムの運転方法は、前記光学表示部品を前記メインラインに流通させる前に、前記光学表示部品に前記所定の処理を施す設備内の塵埃を設備外に排出する生産準備工程を含む構成であってもよい。
【0008】
前記生産準備工程を含む構成では、前記初期製品検査工程にて、不良品の数が第一の判定値以下であれば前記本生産工程に移行し、不良品の数が前記第一の判定値よりも大きい第二の判定値以上であれば前記生産準備工程に戻り、不良品の数が前記第一及び第二の判定値間の第三の判定値であれば追加の初期生産工程に移行する構成であってもよい。
【0009】
またこのとき、前記追加の初期生産工程にて、前記光学表示部品を前記メインラインにさらに所定量流通させて前記所定の処理を施した後、追加の初期製品検査工程に移行し、前記追加の初期生産工程で得た製品の不良を検査し、このときの不良品の数が第四の判定値以下であれば前記本生産工程に移行し、不良品の数が前記第四の判定値よりも大きい第五の判定値以上であれば前記生産準備工程に戻る構成であってもよい。
【0010】
また、前記生産準備工程を含む構成では、前記生産準備工程が、前記光学表示部品に相当するダミー部品を前記メインラインに流通させる工程を含むものであってもよい。
またこのとき、前記生産準備工程後で前記初期生産工程の前に、前記生産システムの運転を所定時間停止させる運転休止工程を含む構成であってもよい。
【0011】
また、本発明の光学表示デバイスの生産システムの運転方法は、前記本生産工程にて、前記光学表示部品を前記メインラインに所定量流通させる毎に良品率を算出し、前記良品率が所定値を越えれば前記本生産工程を継続し、前記良品率が前記所定値以下であれば前記初期生産工程に戻る構成であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生産数を限定した初期生産工程及び初期製品検査工程を行うことで、不良品の発生につながる前記生産システムの異常や設定ミス等を早期に検出した上で本生産工程へ移行することができる。これにより、不良品の発生を抑えると共に不良品の発生を効率よく検出し、前記生産システムの収率悪化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態における光学表示デバイスのフィルム貼合システムの概略構成図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】本発明の実施形態における液晶パネルの平面図である。
【図4】本発明の実施形態における光学シートの断面図である。
【図5】本発明の実施形態におけるフィルム貼合システムの運転方法を示すフローチャートである。
【図6】図5の本生産工程のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態のフィルム貼合システム1の概略構成を示す。フィルム貼合システム1は、例えば液晶パネルや有機ELパネルといったパネル状の光学表示部品に、偏光フィルムや反射防止フィルム、光拡散フィルムといったフィルム状の光学部材を貼合するもので、前記光学表示部品及び光学部材を含んだ光学表示デバイスを生産する生産システムの一部として構成される。フィルム貼合システム1では、前記光学表示部品として液晶パネルPを用いている。
【0015】
図3は、液晶パネルPをその液晶層P3の厚さ方向から見た平面図である。液晶パネルPは、平面視で長方形状をなす第一基板P1と、第一基板P1に対向して配置される比較的小形の長方形状をなす第二基板P2と、第一基板P1と第二基板P2との間に封入された液晶層P3とを備える。液晶パネルPは、平面視で第一基板P1の外形状に沿う長方形状をなし、平面視で液晶層P3の外周の内側に収まる領域を表示領域P4とする。
【0016】
図4は、液晶パネルPに貼合する光学部材F1を含む光学シートFの断面図である。光学シートFは、フィルム状の前記光学部材F1と、光学部材F1の一方の面(図では上面)に設けられた粘着層F2と、粘着層F2を介して光学部材F1の一方の面に分離可能に積層されたセパレータF3と、光学部材F1の他方の面(図では下面)に積層された表面保護フィルムF4とを有する。光学部材F1は偏光板として機能し、液晶パネルPの表示領域P4の全域とその周辺領域とにわたって貼合される。なお、図示都合上、図4の各層のハッチングは略す。
【0017】
光学部材F1は、その一方の面に粘着層F2を残しつつセパレータF3を分離した状態で、液晶パネルPに粘着層F2を介して貼合される。以下、光学シートFからセパレータF3を除いた部分を貼合シートF5という。
【0018】
セパレータF3は、粘着層F2から分離されるまでの間に粘着層F2及び光学部材F1を保護する。表面保護フィルムF4は、光学部材F1とともに液晶パネルPに貼合される。表面保護フィルムF4は、光学部材F1に対して液晶パネルPと反対側に配置されて光学部材F1を保護すると共に、所定のタイミングで光学部材F1から分離される。なお、光学シートFが表面保護フィルムF4を含まない構成であったり、表面保護フィルムF4が光学部材F1から分離されない構成であってもよい。
【0019】
光学部材F1は、シート状の偏光子F6と、偏光子F6の一方の面に接着剤等で接合される第一フィルムF7と、偏光子F6の他方の面に接着剤等で接合される第二フィルムF8とを有する。第一フィルムF7及び第二フィルムF8は、例えば偏光子F6を保護する保護フィルムである。
【0020】
なお、光学部材F1は、一層の光学層からなる単層構造でもよく、複数の光学層が互いに積層された積層構造でもよい。前記光学層は、偏光子F6の他に、位相差フィルムや輝度向上フィルム等でもよい。第一フィルムF7と第二フィルムF8の少なくとも一方は、液晶表示素子の最外面を保護するハードコート処理やアンチグレア処理を含む防眩などの効果が得られる表面処理が施されてもよい。光学部材F1は、第一フィルムF7と第二フィルムF8の少なくとも一方を含まなくてもよい。例えば第一フィルムF7を省略した場合、セパレータF3を光学部材F1の一方の面に粘着層F2を介して貼り合わせてもよい。
【0021】
以下、図1,2を参照してフィルム貼合システム1について説明する。なお、図中右側は液晶パネルPの搬送方向上流側(以下、パネル搬送上流側という)を、図中左側は液晶パネルPの搬送方向下流側(以下、パネル搬送下流側という)をそれぞれ示すものとする。
【0022】
フィルム貼合システム1は、貼合工程の始発位置から終着位置まで、例えば駆動式のローラコンベヤ5を用いて液晶パネルPを搬送しつつ、液晶パネルPに順次所定の処理を施す。液晶パネルPは、その表裏面を水平にした状態でローラコンベヤ5上を搬送される。
【0023】
ローラコンベヤ5は、後に詳述する第一反転装置15を境に、上流側コンベヤ6と下流側コンベヤ7とに分かれる。液晶パネルPは、例えば上流側コンベヤ6では前記表示領域P4の短辺を搬送方向に沿わせた向きで搬送され、下流側コンベヤ7では表示領域P4の長辺を搬送方向に沿わせた向きで搬送される。この液晶パネルPの表裏面に対して、帯状の前記光学シートFから所定長さに切り出した前記貼合シートF5が貼合される。フィルム貼合システム1の各部は、電子制御装置としての制御部20により統括制御される。
【0024】
フィルム貼合システム1は、上流工程の終着位置まで搬送された液晶パネルPを吸着して上流側コンベヤ6の始発位置まで搬送すると共に液晶パネルPのアライメントを行う第一吸着装置11と、始発位置よりもパネル搬送下流側に設けられる第一集塵装置12と、第一集塵装置12よりもパネル搬送下流側に設けられる第一貼合装置13と、第一貼合装置13よりもパネル搬送下流側に設けられる第一ズレ検査装置14と、第一ズレ検査装置14よりもパネル搬送下流側に設けられて上流側コンベヤ6の終着位置に達した液晶パネルPを下流側コンベヤ7の始発位置まで搬送する第一反転装置15とを備える。
【0025】
また、フィルム貼合システム1は、下流側コンベヤ7の始発位置よりもパネル搬送下流側に設けられる第二集塵装置16と、第二集塵装置16よりもパネル搬送下流側に設けられる第二貼合装置17と、第二貼合装置17よりもパネル搬送下流側に設けられる第二ズレ検査装置18と、第二ズレ検査装置18よりもパネル搬送下流側に設けられる第二反転装置19と、第二反転装置19よりもパネル搬送下流側に設けられる欠陥検査装置21とを備える。
【0026】
第一吸着装置11は、液晶パネルPを保持して垂直方向及び水平方向で自在に搬送すると共に液晶パネルPのアライメントを行うパネル保持部11aと、例えばパネル保持部11aに設けられて液晶パネルPのアライメント基準を検出するアライメントカメラ11bとを有する。
【0027】
パネル保持部11aは、上流工程の終着位置に運ばれた液晶パネルPの上面を真空吸着によって保持すると共に、この液晶パネルPを貼合工程(上流側コンベヤ6)の始発位置へ水平状態のまま搬送し、当該位置で前記吸着を解除して液晶パネルPを上流側コンベヤ6に受け渡す。
【0028】
アライメントカメラ11bは、例えばパネル保持部11aが保持した液晶パネルPを上流側コンベヤ6上に載置する際、液晶パネルPのアライメントマークや先端形状等を撮像する。アライメントカメラ11bの撮像データは前記制御部20に送信され、この撮像データに基づき制御部20がパネル保持部11aを作動させる。これにより、上流側コンベヤ6に対する液晶パネルPのアライメントがなされる。このとき、液晶パネルPは、上流側コンベヤ6に対して、搬送方向と直交する水平方向(コンベヤ幅方向)での位置決めと、垂直軸回りの回転方向での位置決めとがなされる。
【0029】
第一集塵装置12は、第一貼合装置13の貼合位置に近接してそのパネル搬送上流側に設けられ、貼合位置に導入される直前の液晶パネルPの下面側の静電気の除去及び集塵を行う。
第一貼合装置13は、貼合位置に導入された液晶パネルPの下面に対して、所定サイズにカットした貼合シートF5の貼合を行う。
【0030】
第一貼合装置13は、光学シートFが巻回された原反ロールR1から光学シートFを巻き出しつつ光学シートFをその長手方向に沿って搬送する搬送装置22と、搬送装置22が光学シートFから分離させた所定長さの貼合シートF5を上流側コンベヤ6が搬送する液晶パネルPの下面に貼合する挟圧ロール23とを備える。
【0031】
搬送装置22は、セパレータF3をキャリアとして貼合シートF5を搬送するもので、帯状の光学シートFを巻回した原反ロールR1を保持すると共に光学シートFをその長手方向に沿って繰り出すロール保持部22aと、原反ロールR1から巻き出した光学シートFを所定の搬送経路に沿って案内するべく光学シートFを巻きかける複数のガイドローラ22bと、搬送経路上の光学シートFにハーフカットを施す切断装置22cと、ハーフカットを施した光学シートFを鋭角に巻きかけてセパレータF3から貼合シートF5を分離させつつこの貼合シートF5を貼合位置に供給するナイフエッジ22dと、ナイフエッジ22dを経て単独となったセパレータF3を巻き取るセパレータロールR2を保持する巻き取り部22eとを有する。
【0032】
搬送装置22の始点に位置するロール保持部22aと搬送装置22の終点に位置する巻き取り部22eとは、例えば互いに同期して駆動する。これにより、ロール保持部22aが光学シートFをその搬送方向へ繰り出しつつ、巻き取り部22eがナイフエッジ22dを経たセパレータF3を巻き取る。以下、搬送装置22における光学シートF(セパレータF3)の搬送方向上流側をシート搬送上流側、搬送方向下流側をシート搬送下流側という。
【0033】
各ガイドローラ22bは、搬送中の光学シートFの進行方向を搬送経路に沿って変化させると共に、複数のガイドローラ22bの少なくとも一部が搬送中の光学シートFのテンションを調整するべく可動する。
【0034】
切断装置22cは、光学シートFが所定長さ繰り出された際、光学シートFの長手方向と直交する幅方向の全幅にわたって、光学シートFの厚さ方向の一部を切断する(ハーフカットを施す)。
切断装置22cは、光学シートFの搬送中に働くテンションによって光学シートF(セパレータF3)が破断しないように(所定の厚さがセパレータF3に残るように)、切断刃の進退位置を調整し、粘着層F2とセパレータF3との界面の近傍まで前記ハーフカットを施す。なお、切断刃に代わるレーザー装置を用いてもよい。
【0035】
ハーフカット後の光学シートFには、その厚さ方向で光学部材F1及び表面保護フィルムF4が切断されることにより、光学シートFの幅方向の全幅にわたる切込線が形成される。切込線は、帯状の光学シートFの長手方向で複数並ぶように形成される。例えば同一サイズの液晶パネルPを搬送する貼合工程の場合、複数の切り込み線は光学シートFの長手方向で等間隔に形成される。光学シートFは、前記複数の切込線によって長手方向で複数の区画に分けられる。光学シートFにおける長手方向で隣り合う一対の切込線に挟まれる区画は、それぞれ貼合シートF5における一つのシート片とされる。
【0036】
ナイフエッジ22dは、上流側コンベヤ6の下方に配置されて光学シートFの幅方向で少なくともその全幅にわたって延在する。ナイフエッジ22dは、ハーフカット後の光学シートFのセパレータF3側に摺接するようにこれを巻きかける。
【0037】
ナイフエッジ22dは、光学シートFの幅方向(上流側コンベヤ6の幅方向)から見て伏せた姿勢に配置される第一面と、第一面の上方で光学シートFの幅方向から見て第一面に対して鋭角に配置される第二面と、第一面及び第二面が交わる先端部とを有する。
【0038】
ナイフエッジ22dは、その先端部に光学シートFを鋭角に巻きかける。光学シートFは、ナイフエッジ22dの先端部で鋭角に折り返す際、セパレータF3から貼合シートF5のシート片を分離させる。ナイフエッジ22dの先端部は、挟圧ロール23のパネル搬送下流側に近接して配置される。ナイフエッジ22dによりセパレータF3から分離した貼合シートF5は、上流側コンベア6が搬送する液晶パネルPの下面に重なりつつ、挟圧ロール23の一対の貼合ローラ23a間に導入される。
【0039】
挟圧ロール23は、互いに軸方向を平行にして配置された一対の貼合ローラ23aを有する。一対の貼合ローラ23a間には所定の間隙が形成され、この間隙内が第一貼合装置13の貼合位置となる。前記間隙内には、液晶パネルP及び貼合シートF5が重なり合って導入される。これら液晶パネルP及び貼合シートF5が、各貼合ローラ23aに挟圧されつつパネル搬送下流側に送り出される。これにより、液晶パネルPの下面に貼合シートF5が一体的に貼合される。以下、この貼合後のパネルを片面貼合パネルP11という。
【0040】
第一ズレ検査装置14は、片面貼合パネルP11における第一貼合装置13で貼合した貼合シートF5の液晶パネルPに対する位置が適正か否か(位置ズレが公差範囲内にあるか否か)を検査する。第一ズレ検査装置14は、例えば片面貼合パネルP11のパネル搬送上流側及び下流側における貼合シートF5の端縁を撮像する一対のカメラ14aを有する。各カメラ14aによる撮像データは前記制御部20に送信され、この撮像データに基づき貼合シートF5及び液晶パネルPの相対位置が適正か否かが判定される。前記相対位置が適正ではないと判定された片面貼合パネルP11は、不図示の払い出し手段によりシステム外に排出される。
【0041】
第一反転装置15は、例えば液晶パネルPの搬送方向に対して平面視で45°に傾斜した回動軸15aと、回動軸15aを介して上流側コンベヤ6の終着位置及び下流側コンベヤ7の始発位置の間に支持される反転アーム15bとを有する。反転アーム15bは、第一ズレ検査装置14を経て上流側コンベヤ6の終着位置に達した片面貼合パネルP11を吸着や挟持等により保持し、この反転アーム15bが回動軸15a回りに180°回動することで、片面貼合パネルP11の表裏を反転させると共に、例えば前記表示領域P4の短辺と平行に搬送されていた片面貼合パネルP11を表示領域P4の長辺と平行に搬送されるように方向転換させる。
【0042】
前記反転は、液晶パネルPの表裏面に貼合する各光学部材F1が偏光軸方向を互いに直角に配置するような場合になされる。上流側コンベヤ6及び下流側コンベヤ7は、共に図の右側から左側へ向う方向を液晶パネルPの搬送方向とするが、第一反転装置15を経由することで、上流側コンベヤ6及び下流側コンベヤ7が平面視で所定量オフセットする。
【0043】
なお、単に液晶パネルPの表裏を反転させる場合には、例えば搬送方向と平行な回動軸を有する反転アームを有する反転装置を用いればよい。この場合、第一貼合装置13のシート搬送方向と第二貼合装置17のシート搬送方向とを平面視で互いに直角にして配置すれば、液晶パネルPの表裏面に互いに偏光軸方向を直角にした光学部材F1を貼合できる。
【0044】
反転アーム15bは、前記第一吸着装置11のパネル保持部11aと同様のアライメント機能を有する。第一反転装置15には、前記第一吸着装置11のアライメントカメラ11bと同様のアライメントカメラ15cが設けられる。
【0045】
第二集塵装置16は、第二貼合装置17の貼合位置に近接してそのパネル搬送上流側に設けられ、貼合位置に導入される直前の片面貼合パネルP11の下面側の静電気の除去及び集塵を行う。
第二貼合装置17は、貼合位置に導入された片面貼合パネルP11の下面に対して、所定サイズにカットした貼合シートF5の貼合を行う。第二貼合装置17は、前記第一貼合装置13と同様の搬送装置22及び挟圧ロール23を備えている。
【0046】
挟圧ロール23の一対の貼合ローラ23a間の間隙内(第二貼合装置17の貼合位置)には、片面貼合パネルP11及び貼合シートF5が重なり合った状態で導入され、片面貼合パネルP11の下面に貼合シートF5が一体的に貼合される。以下、この貼合後のパネルを両面貼合パネルP12という。
【0047】
第二ズレ検査装置18は、両面貼合パネルP12における第二貼合装置17で貼合した貼合シートF5の液晶パネルPに対する位置が適正か否か(位置ズレが公差範囲内にあるか否か)を検査する。第二ズレ検査装置18は、例えば両面貼合パネルP12のパネル搬送上流側及び下流側における貼合シートF5の端縁を撮像する一対のカメラ18aを有する。各カメラ18aによる撮像データは前記制御部20に送信され、この撮像データに基づき貼合シートF5及び液晶パネルPの相対位置が適正か否かが判定される。前記相対位置が適正ではないと判定された両面貼合パネルP12は、不図示の払い出し手段によりシステム外に排出される。
【0048】
第二反転装置19は、第一反転装置15を経てバックライト側を上向きにした液晶パネルP(両面貼合パネルP12)の表裏を反転させ、フィルム貼合システム1への搬入時と同様に液晶パネルPの表示面側を上向きにする。
欠陥検査装置21は、第二反転装置19を経て表示面側を上向きにした液晶パネルP(両面貼合パネルP12)を、その下面側(バックライト側)から光を当てて上面側(表示面側)よりカメラ21aで撮像し、この撮像データに基づき両面貼合パネルP12の欠陥(貼合不良等)の有無を検査する。
【0049】
次に、図5,6のフローチャートを参照し、本実施形態の光学表示デバイスの生産システムの運転方法について、フィルム貼合システム1の運転方法を中心に説明する。
図5を参照し、フィルム貼合システム1の起動時には、まずシステム内の全作業項目に対応する設備の清掃を行った後に、生産準備工程として、液晶パネルPに相当するダミー部品を1カセット分(1ロット分、40枚程度)だけフィルム貼合システム1のメインライン(ローラコンベヤ5)に流通させる(ステップS1)。前記ダミー部品には貼合シートF5を貼合せず、単品のままローラコンベア5上を搬送させる。これにより、フィルム貼合システム1の設備内の塵埃等をダミー部品に付着させて設備外に排出することが可能である。
【0050】
1カセット分のダミー部品を搬送した後には、運転休止工程として、フィルム貼合システム1の運転を停止して所定時間(10分間程)だけ放置する(ステップS2)。これにより、通常のロット切り替え時と同様の雰囲気が再現される。
【0051】
次いで、初期生産工程として、所定量(例えば10枚)の液晶パネルPを流通させて、実際に両面貼合パネルP12を生産する(ステップS3)。このとき生産した両面貼合パネルP12の貼合不良の検査を行うことで(ステップS4、初期製品検査工程)、フィルム貼合システム1の設備内がクリーンであるか等の状況が確認される。なお、前記ステップS4は欠陥検査装置21により自動で行っても作業者の目視により行ってもよい。
【0052】
制御部20は、ステップS4の検査結果から貼合不良品の数nを検知し、この貼合不良品の数nに基づいて、後述の本生産工程へ移行するか否かを判定する(ステップS5、本生産移行判定工程)。ステップS5において、貼合不良品の数nが第一の判定値f1(例えば1)以下であれば、1カセット単位の本生産工程(ステップS6)に移行し、貼合不良品の数nが第一の判定値f1よりも大きい第二の判定値f2(例えば3)以上であれば、前記生産準備工程(ステップS1)に戻る。これにより、システム運転の初期段階における生産準備不足等による貼合不良品の発生が抑制される。
【0053】
一方、前記貼合不良品の数nが第一及び第二の判定値f1,f2間の第三の判定値f3(例えば2)である場合、本生産工程に移行するか生産準備工程に戻るかを再度判断するために、追加の初期生産工程(ステップS7)及び追加の初期製品検査工程(ステップS8)を実施する。すなわち、さらに所定量(例えば6枚)の液晶パネルPを搬送して両面貼合パネルP12とし(追加の初期生産工程)、その後に欠陥検査装置21又は目視により両面貼合パネルP12の貼合不良の検査を行う(追加の初期製品検査工程)。これにより、初期生産時の貼合不良品の発生が一時的なものか生産準備工程まで戻るべきものかを正確に判断する。なお、第三の判定値f3が複数設定されて所定範囲をなすものであってもよい。
【0054】
制御部20は、ステップS8の検査結果から貼合不良品の数nを検知し、この貼合不良品の数nに基づいて、本生産工程に移行するか否かを再度判定する(ステップS9、追加の本生産移行判定工程)。ステップS9において、貼合不良品の数nが第四の判定値f4(例えば1)以下であれば、1カセット単位の本生産工程(ステップS6)に移行し、貼合不良品の数nが第四の判定値f4よりも大きい第五の判定値f5(例えば2)以上であれば、前記生産準備工程(ステップS1)に戻る。第四及び第五の判定値f4,f5間に貼合不良品の数nに相当する数値はなく、ステップS9ではグレーゾーンのない二択の判断となる。
【0055】
次いで、図6を参照し、本生産工程では、まず1カセット分の液晶パネルPを両面貼合パネルP12とする生産を行う(ステップS11)。本生産工程では、欠陥検査装置21によってAOI検査(光学式自動外観検査:Automatic Optical Inspection)が実施される。制御部20は、欠陥検査装置21の検査結果から貼合不良品を除いた良品率Rを検知し、この良品率Rに基づいて、本生産工程を継続するか否かを判定する(ステップS12、本生産継続判定工程)。
【0056】
制御部20は、ステップS12において、1カセット毎の良品率R((全数−貼合不良のない良品の数)/全数)が第六の判定値f6(例えば70%)以下である場合には、カウントCに「1」を加算し(ステップS13)、次いでカウントCが第七の判定値f7(例えば3)以上であるか否かを判定する(ステップS14)。
【0057】
ステップS14において、カウントCが第七の判定値f7であれば、前記良品率Rが第六の判定値f6以下の状態が第七の判定値f7分の回数(例えば3回)連続していることとなり、この場合はフィルム貼合システム1を停止し、システム全体の清掃及びチェック等のメンテナンスを行う(ステップS15)。
【0058】
ステップS14において、カウントCが第七の判定値f7未満であれば、ステップS3に戻り(ステップS16)、初期生産工程以降の処理を繰り返す。これにより、設備内がクリーンな状態が維持されているかが確認され、かつフィルム貼合システム1の根本的な改善を要するか否かが判定される。
【0059】
ステップS12において、良品率Rが第六の判定値f6を越えていれば、カウントCをリセットし(ステップS17)、その後に本生産工程を継続する(ステップS18)。これにより、良品率Rが高い状態を維持しつつ、フィルム貼合システム1の本生産工程を継続することが可能となる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態における光学表示デバイスの生産システムの運転方法は、液晶パネルPに光学部材F1を貼り合わせる貼合工程を経る光学表示デバイスに対応するものにおいて、前記液晶パネルPを前記生産システム(フィルム貼合システム1)のメインライン(ローラコンベヤ5)に所定量流通させ、前記液晶パネルPに前記光学部材F1を貼合する初期生産工程(ステップS3)と、前記初期生産工程後に前記初期生産工程で得た製品の貼合不良を検査する初期製品検査工程(ステップS4)と、前記初期製品検査工程で検出した貼合不良品の数nに応じて本生産工程(ステップS6)へ移行するか否かを判定する本生産移行判定工程(ステップS5)とを含むものである。
【0061】
この構成によれば、生産数を限定した初期生産工程及び初期検査工程を行うことで、貼合不良品の発生につながる前記生産システムの異常や設定ミス等を早期に検出した上で本生産工程へ移行することができる。これにより、貼合不良品の発生を抑えると共に貼合不良品の発生を効率よく検出し、前記生産システムの収率悪化を防止することができる。
【0062】
また、光学表示デバイスの生産システムの運転方法は、前記液晶パネルPを前記メインラインに流通させる前に、前記液晶パネルPに相当するダミー部品を前記メインラインに流通させる生産準備工程(ステップS1)を含むことで、光学表示デバイスの生産前にメインラインの塵埃等をダミー部品に付着させて、フィルム貼合システム1の設備外に排出することができる。
【0063】
また、上記光学表示デバイスの生産システムの運転方法は、前記生産準備工程後で前記初期生産工程の前に、前記生産システムの運転を所定時間停止させる運転休止工程(ステップS2)を含むことで、前記生産システムを本生産工程のロット切り替え時と同様の状態にしてから初期生産工程に移行でき、前記生産システムの異常や設定ミス等をより確実に検出することができる。
【0064】
また、上記光学表示デバイスの生産システムの運転方法は、前記初期製品検査工程にて、貼合不良品の数nが第一の判定値f1以下であれば前記本生産工程に移行し、貼合不良品の数nが前記第一の判定値f1よりも大きい第二の判定値f2以上であれば前記生産準備工程に戻り、貼合不良品の数nが前記第一及び第二の判定値f1,f2間の第三の判定値f3であれば追加の初期生産工程(ステップS7)に移行することで、単一の判定値によらず複数の判定値によって次工程の選択の幅を広げ、貼合不良品の発生を効率よく抑えることができる。
【0065】
また、上記光学表示デバイスの生産システムの運転方法は、前記追加の初期生産工程にて、前記液晶パネルPを前記メインラインにさらに所定量流通させて前記光学部材F1を貼合した後、追加の初期製品検査工程(ステップS8)に移行し、前記追加の初期生産工程で得た製品の貼合不良を検査し、このときの貼合不良品の数nが第四の判定値f4以下であれば前記本生産工程に移行し、貼合不良品の数nが前記第四の判定値よりも大きい第五の判定値f5以上であれば前記生産準備工程に戻ることで、前記第一及び第二の判定値f1,f2間のグレーゾーンにおける判定を追加の初期生産工程及び追加の初期製品検査工程に委ね、貼合不良品の発生をより効率よく抑えることができる。
【0066】
また、上記光学表示デバイスの生産システムの運転方法は、前記本生産工程にて、前記液晶パネルPを前記メインラインに所定量流通させる毎に良品率Rを算出し、前記良品率Rが第六の判定値f6を越えれば前記本生産工程を継続し、前記良品率Rが前記第六の判定値f6以下であれば前記初期生産工程に戻ることで、本生産工程に移行した後の定期的な良品率の監視により、前記生産システムの異常や設定ミス等の発生による貼合不良品の増加を抑えることができる。
【0067】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、光学表示部品の表裏面の一方のみに光学部材を貼り合わせた光学表示デバイスや、照明システムとしてバックライトあるいは反射板を配置したもの等、多種の光学表示デバイスの生産システムに適用してもよい。光学表示デバイスの形成にあたり、拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ及びレンズアレイシート等の適宜な部品を適宜な位置に、一層又は二層以上配置した構成としてもよい。
【0068】
また、本発明は、光学表示部品の表裏面の両方に貼り合せる各光学部材を互いに同一構成としても異なる構成としてもよい。各光学部材の貼合工程は、互いに同時又はほぼ同時に行ってもよく、かつ同時に行わない場合は表裏面側のどちらを先に行ってもよい。光学部材を液晶パネル毎に完全にカットして個別のシート片とし、このシート片を液晶パネルに貼り合わせる構成としてもよい。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 フィルム貼合システム(光学表示デバイスの生産システム)
5 ローラコンベア(メインライン)
P 液晶パネル(光学表示部品)
n 貼合不良品の数(不良品の数)
R 良品率
F1 光学部材
S1 生産準備工程
S2 運転休止工程
S3 初期生産工程
S4 初期製品検査工程
S5 本生産移行判定工程
S7 追加の初期生産工程
S8 追加の初期製品検査工程
f1 第一の判定値
f2 第二の判定値
f3 第三の判定値
f4 第四の判定値
f5 第五の判定値
f6 第六の判定値(所定値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学表示部品に所定の処理を施してなる光学表示デバイスの生産システムの運転方法において、
前記光学表示部品を前記生産システムのメインラインに所定量流通させ、前記光学表示部品に前記所定の処理を施す初期生産工程と、
前記初期生産工程後に前記初期生産工程で得た製品の不良を検査する初期製品検査工程と、
前記初期製品検査工程で検出した不良品の数に応じて本生産工程へ移行するか否かを判定する本生産移行判定工程とを含むことを特徴とする光学表示デバイスの生産システムの運転方法。
【請求項2】
前記光学表示部品を前記メインラインに流通させる前に、前記光学表示部品に前記所定の処理を施す設備内の塵埃を設備外に排出する生産準備工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の光学表示デバイスの生産システムの運転方法。
【請求項3】
前記初期製品検査工程にて、不良品の数が第一の判定値以下であれば前記本生産工程に移行し、不良品の数が前記第一の判定値よりも大きい第二の判定値以上であれば前記生産準備工程に戻り、不良品の数が前記第一及び第二の判定値間の第三の判定値であれば追加の初期生産工程に移行することを特徴とする請求項2に記載の光学表示デバイスの生産システムの運転方法。
【請求項4】
前記追加の初期生産工程にて、前記光学表示部品を前記メインラインにさらに所定量流通させて前記所定の処理を施した後、追加の初期製品検査工程に移行し、前記追加の初期生産工程で得た製品の不良を検査し、このときの不良品の数が第四の判定値以下であれば前記本生産工程に移行し、不良品の数が前記第四の判定値よりも大きい第五の判定値以上であれば前記生産準備工程に戻ることを特徴とする請求項3に記載の光学表示デバイスの生産システムの運転方法。
【請求項5】
前記生産準備工程が、前記光学表示部品に相当するダミー部品を前記メインラインに流通させる工程を含むことを特徴とする請求項2から4の何れか1項に記載の光学表示デバイスの生産システムの運転方法。
【請求項6】
前記生産準備工程後で前記初期生産工程の前に、前記生産システムの運転を所定時間停止させる運転休止工程を含むことを特徴とする請求項2から5の何れか1項に記載の光学表示デバイスの生産システムの運転方法。
【請求項7】
前記本生産工程にて、前記光学表示部品を前記メインラインに所定量流通させる毎に良品率を算出し、前記良品率が所定値を越えれば前記本生産工程を継続し、前記良品率が前記所定値以下であれば前記初期生産工程に戻ることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の光学表示デバイスの生産システムの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−113897(P2013−113897A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257558(P2011−257558)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】