説明

光学表面を生成するための型を製造する方法、コンタクトレンズを生成する方法、及び、このような方法と共に使用するための装置

特製の光学表面を生成するための型を製造する方法であって、型の所要形状を得るために、ベース形状を有する型は変更される。変更は、型表面をフォトレジスト層(16)で被覆するステップと、層を所定パターンの照射放射線(9)に露光するステップと、露光された層を現像することによって、所要の型形状(22)を得るために、層の部分を除去するステップとを含むリソグラフィプロセスを用いて遂行される。個々のコンタクトレンズのためのように、少量の光学表面を生成するためにこの方法を用い得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特製の光学表面を生成するための型を製造する方法に関し、それによって、型表面の所要形状を得るために、ベース形状を有する型は変更される。本発明は、そのような合成型を用いて特製コンタクトレンズを生成する方法、及び、これらの方法と共に使用するための装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
光学表面はレンズのような光学素子の表面を意味するものと理解され、それは表面を通過する放射線ビームの波頭を変える。特製光学表面は、特別な目的のため、或いは、メガネ又はコンタクトレンズ装着者のような特別な使用者のために特別に設計される表面を意味するものと理解される。
【0003】
コンタクトレンズを製造する従来的な方法は合成型を用い、UV(紫外線)硬化性高分子を凹面の型表面を有する第一型部分と凸面の型表面を有する第二型部分との間で硬化する。そのような型はプラスチック材料から成ることが多い。金属型を用いた射出成形によってプラスチック型を生成し得る。
【0004】
コンタクトレンズは、人間の眼に当接すべき凹面と、前表面と呼ばれる凸面とを有する。そのようなコンタクトレンズは、球面及び円柱収差のために、人間の眼を矯正するべきである。矯正の程度は眼によって異なる。従って、従来的な製造方法は、所望の眼矯正を得るために、選択すべき多数の所定の型形状を必要とする。さらに、球面及び円柱収差の他に、高次収差のための矯正も望ましく、それによって、事実上、特製のレンズ、即ち、1人の人にのみ適合したレンズが製造されるべきである。特製のレンズの製造は、特別な特製の型を必要とし、その1人の人のための多くのレンズを製造するためにその型を用い得るだけである。
【0005】
特製のコンタクトレンズを製造するための型、即ち、特製の型は、ベース形状を有する型を変更することによって得られる。ベース形状は、所要の特製の形状を所要形状を得るために限定的な変更のみが必要とされる程度にまで接近させる形状を意味するものと理解される。従来的な方法、例えば、金属型を用いた射出成形で生成される限定的な数の標準型からベース形状を有する型を選択し得る。合成型の変更は、一方又は双方の表面、即ち、コンタクトレンズの成形プロセス中にコンタクトレンズの異なる表面にそれぞれ当接する凹面及び凸面のそれぞれの変更を含む。
【0006】
型材料を機械的に除去することによって前記表面変更を遂行し得る。しかしながら、これは時間のかかる方法である。その上、型の所要円滑表面を得るために、型表面の機械加工領域は仕上げ作業を経なければならない。国際公開第WO02/0559169号に開示されている表面変更の他の方法は、制御条件下で、成形作業中に型の表面を所望形状に変形する個々に制御可能なアクチュエータの配列上に載る型表面のサッギングに基づいている。この方法は、特に、詳細な変更が必要とされる場合に、複雑な装置を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特製光学表面を生成するための型の比較的単純且つ安価な製造方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本方法は、フォトレジスト層を備える型を提供するステップと、フォトレジスト層を所定パターンの照射放射線に所定時間露光するステップと、フォトレジスト層を現像することによって、放射線パターンに従ってフォトレジスト材料を選択的に除去し、且つ、フォトレジスト層の露光表面を型の所要最終形状に成形するステップと、を含むフォトリソグラフィプロセスを用いることを特徴とする。
【0009】
この方法は、コンタクトレンズ用のみならずメガネ用の型、及び、光学機器において用いられるべき矯正的光学素子用の型を製造するために用いられ得る。
【0010】
フォトリソグラフィは、集積回路(IC)液晶ディスプレイ(LCD)等を製造するためにそれ自体既知であり、それによって、二次元マスクパターンが基板又はウェハ上のレジスト層内の二次元映像に転写される。本発明は、二次元マスクパターンを三次元形状の表面に転写するためにリソグラフィプロセスを用いる。それによって、表面は、例えば、UV放射線に対して敏感な高分子材料、又は、好ましくは、他の波長の放射線に対して敏感なフォトレジストの層で被覆される。レジスト層をUV放射線のパターン化されたビーム、即ち、マスクパターンを通過した放射線に露光した後、レジスト材料は現像剤を用いて現像される。それによって、レジスト層の部分がパターン化された露光に従って除去され、残余のレジスト層が所要の表面形状を形成する。
【0011】
2つの種類のフォトレジストがある。即ち、ポジ型とネガ型である。ポジ型フォトレジストに関して、露光された部分は現像後に除去される。ポジ型フォトレジストの露光は、その化学的構造の変化を引き起こし、よって、レジストは現像液中により溶け易くなる。次に、露光されたレジスト部分は現像液によって除去され、レジスト材料中の「ホール」が残される。ネガ型フォトレジストは反対の方法で作用する。ネガ型レジストの露光はそれを重合させ、よって、溶解をより困難にする。従って、ネガ型レジスト材料の露光部分は表面上に残り、材料の非露光部分のみが現像作業中に除去される。
【0012】
液体を用いた現像は余り円滑さをもたらさないので、所謂「ホットフロー」現像法が用いられるのが好ましい。ホットフロー現像は、露光されたフォトレジストを備える型部分が所定温度に加熱されることを意味する。これは非露光レジストを流動的にする。型部分を速く回転することによって、重合化されないレジストの過剰が除去される。
【0013】
本方法の好適実施態様は、ネガ型フォトレジスト層を用いることを特徴とする。
【0014】
他の実施態様は、型が照射放射線に対して透明な材料から成ることを特徴とする。
【0015】
本方法のさらなる実施態様は、型がプラスチック材料から成ることを特徴とする。
【0016】
ネガ型フォトレジスト層が用いられる実施態様は、好ましくは、フォトレジスト層が型を介して露光されることを特徴とする。
【0017】
本発明は、さらに、コンタクトレンズを生成するための合成型を製造する方法に関し、合成型は、コンタクトレンズの第一表面と第二表面とをそれぞれ形成するための第一型と第二型とを含む。この方法は、各型が前記の方法によって製造されることを特徴とする。
【0018】
特製コンタクトレンズのための型は極めて限定的な使用を有するので、そのような型を製造するとき、本方法の利点、即ち、単純且つ安価なプロセスが最適に用いられる。
【0019】
本発明は、凹面の第一表面と凸面の第二表面とを含むコンタクトレンズを製造する方法であって、第一表面のネガである表面を有する第一型と、第二表面のネガである表面を有する第二型とを提供するステップと、型の前記表面間の空間に高分子材料を充填するステップと、高分子材料をUV放射線に露光することによって、高分子材料を硬化し、高分子材料を第一表面及び第二表面を有するレンズに成形するステップとを有する。この方法は、上記に記載された合成型の製造方法に従って製造される合成型を用いることを特徴とする。
【0020】
コンタクトレンズを生成する方法において単純且つ安価に製造される合成型を用いることは、前者の方法も単純且つ安価にするので、本発明を本方法にも組み込み得る。生成されたコンタクトレンズの場合にも同じことが当て嵌まる。
【0021】
最後に、本発明は、上記に記載された型を製造する方法の露光ステップを遂行するための装置にも関する。この装置は、UV放射線を放射する放射線源と、放射された放射線を照射ビームに集中するための光学手段と、所定パターンに従った放射線分配を照射ビームに付与する空間光変調器と、露光されるべき型を保持するために、空間光変調器からの放射線の経路内に配置された型ホルダとを、この順序で含むことを特徴とする。
【0022】
空間光変調器(SLM)は装置の重要な構成部分である。従来的なリソグラフィ投影装置では、デジタルな性質、即ち、黒色/白色の剛的なフォトマスクが用いられる。それと対比して、空間光変調器は変更可能な映像を発生可能であり、その上、多数の異なる灰色階調を包含し得る。SLMを用いることによって、漸進的変化する強度を備える映像を発生可能であり、それは特製型のための所要表面レリーフパターンを得るために必要とされる。
【0023】
本装置の実施態様は、空間光変調器が次の種類の1つであることを特徴とする。即ち、液晶ディスプレイ(LCD)、デジタルミラーデバイス(DMD)、及び、可変ミラーデバイスである。
【0024】
液晶ディスプレイはそれ自体周知であり、拡大寸法で表示されるべき映像を発生するための映像投影装置で現在用いられている。LCDは透過型LCD又は反射型LCDであり得る。後者は照射ビームのパターン化が、より少ない放射線損失で進むという利点を示す。デジタルミラーデバイスは個々に制御可能な傾斜可能なミクロミラーの配列を含み、それは投影レンズの開口を通じて入射放射線を反射し或いは反射せず、このようにして、映像の明るい又は暗いピクセルを表わす。DMDは映像投影装置においてLCDの代替手段として現在ある。LCDと比較して、DMDはより迅速に切り換え可能であるという利点を示す。可変ミラーデバイス、又は、適合光学素子は、ミラーによって反射される光の方向を局所的に制御し得るよう、表面を局所的に変形し得るミラーである。
【0025】
好ましくは、装置は、光学投影システムが空間光変調器と型ホルダとの間に配置されることをさらに特徴とする。
【0026】
投影システムは、その焦点面に空間光変調器のピクセル構造の鮮明な映像を形成する。投影システムは、通常、1つ又はそれ以上のレンズを含むレンズシステムである。代替的に、投影システムは、1つ又はそれ以上の映像形成ミラーを含むミラーシステムであってもよい。もし照射放射線が、許容し得るレンズ材料が利用可能でない波長を有するならば、ミラー投影システムが用いられる。
【0027】
代替的に、本装置は、型ホルダ及び空間光変調器が、それらの間の光学手段と干渉することなく、互いに近接して配置されることを特徴とする。
【0028】
この実施態様において、投影システムは用いられず、空間光変調器のピクセル構造の映像は所謂近接撮像によって形成される。
【0029】
(デジタルである)従来的なフォトマスクと対比して、空間光変調器は、多数の異なる灰色階調を包含するUV光映像を発生し得る。映像は、特製の型用の所要表面レリーフパターンを得るために望ましい漸進的に変化する強度を用いて形成され得る。
【0030】
本装置の好適実施態様は、拡散素子が空間光変調器と型ホルダとの間の照射ビームの経路に配置されていることを特徴とする。
【0031】
SLM画像構造の映像がフォトレジスト層内に過度に鮮明に撮像される、即ち、SLMの個々のピクセルがこの層内で「可視的」であるならば、そのような拡散素子が用いられる。もし拡散素子が照射ビームの経路内に配置されるならば、フォトレジスト層内に形成される映像が余り鮮明にならず、且つ、現像された表面がより円滑になるよう、照射放射線は所定程度に散乱される。拡散素子は、例えば、円形並進動作で速く又は遅く移動される弱いレンズ素子によって構成され得る。拡散素子は、照射ビームの軸に対して僅かに傾斜した回転する平坦ガラス板でもあってもよい。
【0032】
代替的な実施態様は、型ホルダが、露光されるべき型上のフォトレジスト層が投影システムの焦点面の外側にあるような投影システムからの距離で配置されていることを特徴とする。
【0033】
この構造は、フォトレジスト層内に形成されるSLM画像の映像が鮮明過ぎず、よって、現像された層の表面が十分に円滑であることを確実にする。
【0034】
本装置は、空間光変調器がフォトレジスト層内に形成されるべき露光パターンに関するデータを供給するコンピュータに結合されていることを特徴とする。
【0035】
コンタクトレンズのための型が製造されなければならない場合、所要の眼矯正に関するデータがコンピュータによって空間光変調器のためのパラメータ値に演算処理され、コンピュータは露光プロセス全体を制御する。
【0036】
本発明のこれらの及び他の特徴は、以下に記載されるコンタクトレンズを生成するための型を製造するための方法の実施態様を参照して、非制限的な実施例によって、明瞭に解明されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図面は概略的表現に過ぎず、本発明を理解するために関連する構成部材のみを示している。
【0038】
図1は、コンタクトレンズを生成するための合成型を示している。合成型は2つの型、即ち、コンタクトレンズの凸面の前表面を成形するために用いられる凹面1’の型表面を有する型1と、コンタクトレンズの凹面の背表面を成形するために用いられる凸面2’の型表面を有する型2とを含む。背表面は、コンタクトレンズが眼の上に配置されるときに眼に当接し、コンタクトレンズのベース面とも呼ばれる。双方の型1,2は円形の縁部4を備え、コンタクトレンズの生成中に部分1,2を所定位置に保持するために、部分1,2をクランプし得る。双方の型1,2は、透明プラスチック材料で生成され、例えば、金属型を用い成型作業によって製造され得る。これらの型を用いて生成されたコンタクトレンズの表面が成型プロセス後に追加的な仕上げ作業を必要としないよう、型1の凹表面及び型2の凸表面は円滑でなければならない。
【0039】
コンタクトレンズを生成するために、UV硬化性高分子が2つの透明なプラスチック型1,2の間に導入される。然る後、高分子が硬化又は固化されるよう、高分子を備える合成型はUV光放射に晒される。その結果、型表面1’によって定められる凸面形状のレンズ表面と、型表面2’によって定められる凹面形状のレンズ表面とを有するコンタクトレンズが得られる。コンタクトレンズを生成するためのこの概ね既知の方法は比較的単純であり、低コストで遂行し得る。
【0040】
図2は、フォトリトグラフィ技法を用いて型1又は2のような型を成形するための装置の実施態様を示している。装置は、紫外線(UV)を放射する放射線源6、例えば、ランプ6を含む。放射線源は装置の光学軸7に配置され、例えば、500ワットの水銀アークランプである。ランプによって放射される放射線が効果的に用いられるよう、ランプの背面に配置された反射器8は、装置中の後方に放射された放射線を反射する。照射放射線は光線9によって指し示されている。2つの集光レンズ10,11がこの放射線を集束放射ビームに集中する。このビームはプログラム可能なフォトマスクとして作用する空間光変調器18を通過し、コンピュータ(図示せず)の制御の下でそのマスクパターンを自在に変化し得る。
【0041】
図2の実施態様において、空間光変調器は液晶ディスプレイ(LCD)であり、偏光子12と、液晶パネル13と、検光子14とを含む。液晶パネル13は、パネルに集積された電子回路を用いて個々に制御し得る多数のセル又は画素(ピクセル)の二次元配列を含む。パネルの種類に依存して、そのセルは、オン又はオフ状態で、偏光子12によって所定方向に偏光された入射放射線の偏光方向を回転し、よって、そのようなセルからの放射線は、偏光子と同一の偏光方向を有する検光子14を通過し得ない。そのようなセルは黒色画素を表わし、偏光方向を回転しないセルは白色画素を表わす。このようにして、LCDは白色及び黒色領域のパターンを発生し得る。LCDを通過後、照射ビームはこのパターンで変調される。このLCDパネルは黒色及び白色パターンのみならず、灰色階調を備えたパターン、即ち、高〜ゼロの範囲の強度も表示し得る。
【0042】
図2の実施態様で用いられる透過型LCDの代わりに、反射型LCDも用い得る。反射型LCDは放射損失を余り示さないという利点を有し、よって、反射型LCDが用いられている装置では、利用可能な放射線がより効率的に利用される。
【0043】
空間光変調器18をデジタルミラーデバイス(DMD)によっても構成し得る。そのような装置は個々に制御可能な多数のミクロミラーの二次元配列を含む。デバイスに集積された電子回路の制御の下でこれらのミラーを傾斜し得る。デバイスの種類に依存して、入射放射線が型成形装置のさらなる光学素子に進入しないよう、傾斜されたミラーはそのオン又はオフ状態で入射放射線を反射する。そのような傾斜されたミラーは黒色ピクセルを表わし、ゼロ位置にあるミラーは白色ピクセルを表わす。ピクセルを異なる灰色階調で与え得るよう、異なる角度でミクロミラーを傾斜し得る。このようにして、現在映像表示のために用いられているDMDデバイスを、高〜ゼロの可変の輝度を有する領域のパターンを発生するために用い得る。
【0044】
本発明の成形装置において用い得る空間光変調器の他の種類は、可変ミラー又は適応光学素子である。制御信号をミラー又は素子の領域を強制的に変形させる手段に供給する電子回路の制御の下で、そのような素子の形状を局所的に変形し得る。局所的変形は、入射放射線の方向又は位相を変え、その結果、可変ミラー又は適応素子から入射するビーム中の強度パターンの形成が得られる。
【0045】
他の種類の空間光変調器も用い得る。本質的なことは、処理されるべき型に広範囲の強度を投影し得るよう、空間光変調器が広範囲に亘って変化する強度パターンを発生することである。
【0046】
もし反射型SLM(反射型LCD、DMD、又は、可変ミラー)であるならば、放射線源7及びビーム成形手段10,11は、透過型SLMのための図2に示されるようなSLMの右側ではなく、その左側に配置されなければならないことが明らかであろう。
【0047】
図2において、この型は参照番号2によって指し示されている。それはその円形縁部4を通じて型ホルダ19内に固定される。型の元の凸面型形状を変えるために、それはフォトレジスト層16で被覆され、それは図2の装置で用いられている照射放射線(この場合にはUV放射線)のために高感度である。フォトレジストは例えばUV感光性高分子である。例えば回転塗布によってフォトレジスト層が型上に被覆された後、それは所定温度で所定時間ベークされることによって、溶剤が除去される。次に、フォトレジスト層を備える型は型ホルダ内に配置され、上述の眼のデータに従って空間光変調器によってパターン化された照射ビーム9に露光される。露光後、フォトレジスト層は現像され、それによって、フォトレジスト層の種類に依存して、露光部又は非露光部は、局所的露光の強度に依存した深さに除去される。このようにして、二次元SLMパターンがフォトレジスト層の三次元パターンに転写され、所要の型表面がフォトレジスト層16の外表面22に印刷される。
【0048】
図2に示される実施態様において、フォトレジスト層は型2材料を通じて露光され、それは透明な型材料を必要とする。この材料は例えば透明プラスチックである。漸進的に変化する層の厚さを備えた円滑なレジストプロファイルを得るよう、フォトレジストがネガ型フォトレジストであるならば、型を通じた露光が好ましい。同一の理由のために、型上のポジ型フォトレジスト層は前面から露光されるのが好ましい。
【0049】
より良好な型表面22の円滑さが依然として求められる場合、フォトレジスト層16は表面仕上げベークステップを経てもよく、それによって、型2及び層16は所定時間所定温度に加熱され、そのステップの結果、表面22はより円滑にされる。
【0050】
好ましくは、図2に示されるように、SLMパターンをフォトレジスト層内に撮像するために、投影システム15がSLM18とフォトレジスト層を備えた型との間に配置される。投影システムは1つ又はそれ以上のレンズを含むレンズ系であるのが普通であるが、1つ又はそれ以上のミラーを含むミラー投影システムであってもよい。もし許容可能なレンズ材料が利用可能でない波長(濃UV)を有する照射放射線が用いられるのが好ましいならば、ミラー投影システムが用いられる。
【0051】
近接印刷技法を用いてSLMパターンをフォトレジスト層内に転写することも好ましい。その場合には、前面2がSLMに接近して配置され、投影システム(介在光学手段)はそれらの間に配置されない。SLMからの放射線は、前表面とSLMとの間の小さな空気間隙を介して、前表面に直接入射する。そのような配置のためには、ポジ型フォトレジストが好ましい。
【0052】
SLMパターンはピクセル構造を有し、且つ、もしフォトレジスト層が投影システムの焦点面に配置されるならば、投影システムはこのパターンの鮮明な映像をフォトレジスト層内に形成するので、印刷パターンはピクセル、即ち、非円滑構造も示す。フォトレジスト層を投影システムの外側に配置することによって、これを回避し得る。次に、印刷型表面が異なる表面レベル間の円滑な移行を示すよう、SLMパターンの映像は十分な程度に塗布される。
【0053】
画素化された型表面の形成を防止する他の方法は、投影システムとフォトレジスト層との間に拡散体を配置することである。そのような拡散体は照射ビームの放射を所定程度まで散乱し、その結果、SLMパターンの映像の塗布が得られる。この拡散体は動的拡散体、即ち、時間変化空間散乱を示す拡散体であるのが好ましい。そのような拡散体は、例えば、円形並進運動で速く又は遅く移動される弱レンズ素子によって形成され得る。拡散体は、照射ビームの軸に対して僅かに傾斜した回転ガラス板でもあってもよい。
【0054】
現像及びポストベーク後の残余のフォトレジスト層の最終的な材料の厚さ分布は、SLMによって生成されるパターン、総照射時間、放射線源からの照射ビームの強度、並びに、速度及びコントラストのようなフォトレジスト材料の特性のような多数のパラメータに依存する。
【0055】
コンタクトレンズを生成するための特製の合成型が製造されなければならない場合、2つの型が上述の方法で生成され、それによって、SLMによって発生する所要灰色階調が、コンピュータを介して装置に供給される眼科測定データから得られる。
【0056】
複雑な三次元構造を備える型が製造されなければならないならば、所要の表面プロファイルの複雑さに依存して、上述の型製造プロセスを一度又はそれ以上反復し得る。
【0057】
本発明がコンタクトレンズ用の型の製造業者の手で記載されたことは、本発明がこの用途に限定されることを意味しない。本発明をメガネ用の型の製造のために用いてもよく、ガラスをガラスプレス成形又はプラスチック型技法によって生成し得る。矯正位相板を生成するためにも本発明を用いることが可能であり、光学器具又は機器内に残存光学収差を矯正するために、それを光学器具又は機器内で用い得る。用いられる技法は単純且つ安価なので、そのような矯正板をコンタクトレンズと同一方法で、即ち、型を介して生成し得るが、直接的に且つそのような型と同一の方法でも生成し得る。光学表面を少量(1から少し)生成するために本発明を一般的に用い得る。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】コンタクトレンズを生成するための型を示す断面図である。
【図2】型を成形するための装置の実施態様を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特製の光学表面を生成するための型を製造し、型表面の所要形状を得るようベース形状を有する型を変更する方法であって、
フォトレジスト層を備える型を提供するステップと、
前記フォトレジスト層を所定パターンの照射放射線に所定時間露光するステップと、
前記フォトレジスト層を現像することによって、放射線パターンに従ってフォトレジスト材料を選択的に除去し、且つ、前記フォトレジスト層の露光表面を前記型の所要最終形状に成形するステップとを有するフォトリソグラフィプロセスを用いる、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
ネガ型フォトレジスト層が用いられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記型は照射放射線に対して透明な材料から成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記型はプラスチック材料から成ることを特徴とする請求項1乃至3に記載の方法。
【請求項5】
前記フォトレジスト層は前記型を介して露光されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
コンタクトレンズを生成するための合成型を製造する方法であって、該合成型は、前記コンタクトレンズの第一表面と第二表面とをそれぞれ形成するための第一型と第二型とを有し、各型は上記請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の方法によって製造されることを特徴とする方法。
【請求項7】
凹面の第一表面と凸面の第二表面とを有するコンタクトレンズを製造する方法であって、
前記第一表面のネガである表面を有する第一型と、前記第二表面のネガである表面を有する第二型とを提供するステップと、
前記型の前記表面間の空間に高分子材料を充填するステップと、
前記高分子材料をUV放射線に露光することによって、前記高分子材料を硬化し、前記高分子材料を前記第一表面及び第二表面を有するレンズに成形するステップとを有し、
請求項6に記載の方法に従って製造される合成型を用いる、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法を用いて製造されるコンタクトレンズ。
【請求項9】
請求項1に記載の方法の露光ステップを遂行するための装置であって、
UV放射線を放射する放射線源と、
前記放射された放射線を照射ビームに集中するための光学手段と、
前記所定パターンに従った放射線分配を前記照射ビームに付与する空間光変調器と、
露光されるべき型を保持するために、前記空間光変調器からの放射線の経路内に配置された型ホルダとを、
上記順序で有する装置。
【請求項10】
前記空間光変調器は、液晶ディスプレイ、デジタルミラーデバイス、及び、可変ミラーデバイスの種類の1つである、ことを特徴とする請求項98に記載の装置。
【請求項11】
光学投影システムが前記空間光変調器と前記型ホルダとの間に配置されている、ことを特徴とする請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
前記型ホルダ及び前記空間光変調器は、それらの間の光学手段と干渉することなく、互いに近接して配置されている、ことを特徴とする請求項9又は10に記載の装置。
【請求項13】
拡散素子が前記空間光変調器と前記型ホルダとの間の前記照射ビームの前記経路に配置されている、ことを特徴とする請求項9乃至12のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記型ホルダは、露光されるべき型上の前記フォトレジスト層が前記投影システムの焦点面の外側にあるような前記投影システムからの距離で配置されている、ことを特徴とする請求項9乃至12のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記空間光変調器は、前記フォトレジスト層内に形成されるべき露光パターンに関するデータを供給するコンピュータに結合されている、ことを特徴とする請求項9乃至14のうちいずれか1項に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2007−518592(P2007−518592A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518480(P2006−518480)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051146
【国際公開番号】WO2005/005121
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】