説明

光学装置

次の工程を含む有機発光ダイオードを形成する方法であって、第1のタイプの電荷輸送体を注入する第1の電極を含む基板を提供する工程、第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための電荷輸送材料を基板上に蒸着することによって電荷輸送層を形成する工程、ここで、電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり、前記電荷輸送層を溶媒中に不溶性に変える工程、前記電荷輸送層上に、溶媒、燐光性材料及びホスト材料を含む組成物を蒸着することによって電子発光層を形成する工程、及び前記電子発光層上に、第2のタイプの電荷輸送体の注入のための第2の電極を蒸着する工程を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不溶性有機材料を含む有機光学装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体は、国際公開90/13148号パンフレットに開示される有機発光ダイオード(OLED)、国際公開96/16449号パンフレットに開示される光起電装置、米国特許5523555号明細書に開示される光検出器のような多くの光学装置に頻繁に使用されている。
【0003】
典型的なOLEDは、アノード(通常、インジウム錫酸化物又はITO)が支持される基板、カソード及び前記アノードと前記カソードの間の有機電子発光層を含む。作動においては、アノードを通して正孔が装置に注入され、カソードを通して電子が装置に注入される。正孔と電子は有機電子発光層において結合し励起を形成し、次いで放射崩壊する際に光を放出する。OLEDには他の層も存在することができ、例えば、アノードから有機電子発光層への正孔の注入を促進するためのポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンサルファネート(PEDT/PSS)のような有機正孔注入材料層がアノードと有機電子発光層の間に供給され得る。
【0004】
多くの種類の有機発光材料が知られている。特に、ポリ(p−フェニレンビニレン)(国際公開90/13148号パンフレットに公開)、ポリフルオレン及びポリフェニレンのようなポリマー、米国特許4,539,507号明細書に開示されるトリス−(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)のような低分子材料として知られる種類の材料、及び国際公開99/21935号パンフレットに開示されるデンドリマーとして知られる材料がある。これらの材料は1重項状態からの放射性崩壊によって電子発光(すなわち蛍光)するが、スピン統計は、励起の75%は非放射性崩壊する3重項励起であることを決めており、すなわち、蛍光OLEDは量子効率が25%と低い。例えば、Chem. Phys. Lett., 1993, 210, 61, Nature (London), 2001, 409, 494, Synth. Met., 2002, 125, 55及びこれの引用文献を参照。
【0005】
したがって、3重項励起が放射性崩壊する金属錯体におけるスピン軌道カップリング効果を利用することにより3重項励起からの発光(燐光)を作り出すための多くの努力がなされてきた。金属錯体はホスト材料にドープされ、そこから電荷及び/又は3重項励起を受け取る。この目的のために研究された金属錯体の例は、ランタニド金属キレート[Adv. Mater., 1999, 11, 1349]、プラチナ(II)ポルフィリン[Nature (London), 1998, 395, 151]及びトリス(フェニルピリジン)イリジウム(III)(以後、「Ir(ppy)3」という)[Appl. Phys. Lett., 1999, 75, 4; Appl. Phys. Lett., 2000, 77, 905]。そのような錯体のより詳細な考察は、Pure Appl. Chem., 1999, 71, 2095, Materials Science & Engineering, R: Reports (2002), R 39(5-6), 143-222 及び Polymeric Materials Science and Engineering (2000), 83, 202-203参照。
【0006】
従来の燐光性OLEDは、しばしば、装置効率を最大化するために電子発光層と結合して使用される電荷輸送及び/又は電荷遮断層を含む。電荷輸送/遮断層及び電子発光層は、通常、適当な材料の真空蒸着によって連続して形成される。
【0007】
溶液からの材料の蒸着、例えば、スピンコート又はインクジェット印刷は、真空蒸着に比較してプロセスの簡素化のような利点を有する。しかしながら、多層の溶液蒸着は、最初の蒸着の性質又は次の層のために使用される溶液への蒸着層の溶解によって複雑化される。例えば、米国特許2002/096995号明細書は、Ir(ppy)3発光体がドープされたポリビニルカルバゾール(以後、「PVK」という)の電子発光層のITO及びPEDT/PSS基板上へのスピンコートを開示する。次いで、電子輸送材料が真空蒸着によって蒸着される。
【0008】
この問題に対する1つの解決策は日本国特開2003−077673号公報に開示されており、PVKの正孔輸送層が、1,2−ジクロロエタン溶液からスピンコートにより形成され、続いて、9,9−ジオクチルフルオレンのホスト材料/Ir(ppy)3発光体からなる電子発光材料がキシレン溶液からのスピンコートにより形成される。溶液プロセスによるこの2層の形成は、電子発光層に使用されるキシレン溶媒中のPVKの低溶解度のために可能となる。この方法は、第1層に使用される材料は第2層に使用される溶媒に溶解しないものからのみ得らばれるという制限がある。
【0009】
この問題の他の解決方法は、日本国特開2002−050482号公報に開示されており、不溶性のポリ(フェニレネビニレネ)(以下、「PPV」という)が溶解性の前駆体化合物のスピンコート蒸着によって形成され、続いて前駆体から不溶性PPVへの熱転換が行われる。次いで、PVKホスト材料/Ir(ppy)3ゲスト材料が不溶性PPV層に蒸着される。また、この方法は、溶解性の前駆体を有する不溶性の化合物にのみ応用できる点で制限される。さらに、これら前駆体により要求される熱転換は、強制的な条件を必要とし、完成装置の特性を害する可能性がある腐食性の副生物を生成する。
【0010】
したがって、使用される活性材料の性質によって拘束されない複数層の溶液蒸着により燐光性OLEDを形成する方法を提供する。改良された装置特性を有する燐光性材料を提供することが本発明の他の目的である。
【特許文献1】米国特許2002/096995号明細書
【特許文献2】特開2003−077673号公報
【特許文献3】特開2002−050482号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者は、複数の溶液プロセス層を含む燐光性OLEDが溶液プロセス層の処理により不溶性に変えられることを発見した。
【0012】
したがって、本発明の第1の側面は、次の工程を含む有機発光ダイオードの形成方法を提供する。
1)第1のタイプの電荷輸送体を注入する第1の電極を含む基板を提供する
2)第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための電荷輸送材料を基板上に蒸着するこ とによって電荷輸送層を形成する。ここで、電荷輸送材料は溶媒に溶解性である
3)前記電荷輸送層を溶媒中に不溶性に変える
4)前記電荷輸送層上に、溶媒、燐光性材料及びホスト材料を含む組成物を蒸着する ことによって電子発光層を形成する
5)前記電子発光層上に、第2のタイプの電荷輸送体の注入のための第2の電極を蒸 着する
【0013】
好ましくは、第1の電極はアノードであり、第2の電極はカソードであり、第1のタイプの電荷輸送体は正孔であり、第2のタイプの電荷輸送体は電子である。
【0014】
好ましくは、電荷輸送材料は溶液から蒸着される。このような溶液に使用される溶媒は、電子発光層を蒸着するために使用される溶媒と同じか異なる。
【0015】
1つの実施態様において、前記電荷輸送材料は架橋性材料を含み、前記処理は、前記電荷輸送材料を架橋するために電荷輸送層を加熱、電子マグネトロン照射、特にUV照射することを含む。
【0016】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、架橋性基が存在しなくても電荷輸送層が溶媒中に不溶性に変えられることを発見した。したがって、他の実施態様において、電荷輸送層は架橋性基が実質的に皆無であり、処理は電荷輸送層を加熱することを含む。
【0017】
前記処理に続いて、強制条件により、特に、電荷輸送層が実質的に架橋性基を有しない場合に、電荷輸送層を溶解することが可能である(例えば、高温の溶媒にさらす及び/又は溶媒に長い期間浸漬する)。この場合、本発明の発明者らは、電荷輸送層の上部部分は溶媒に接触して溶解するかもしれないが、電子発光層に蒸着に採用される通常の条件において電荷輸送層の少なくとも1部は無傷であることを発見した。不溶性という用語はこの意味で解釈されるべきである。
【0018】
電荷輸送層の部分的な溶解は、電荷輸送層と電子発光層の間に混合領域を形成するために望ましい。この部分的溶解の範囲は電荷輸送層の不溶化の条件を適当に選択することによって調整される。したがって、架橋性基の使用は、典型的には蒸着される電荷輸送層の全体の不溶化をもたらす。あるいは、架橋性基を実質的に有しない電荷輸送層の熱処理の時間及び温度の選択は、蒸着される電荷輸送層の不溶性の範囲を調整するために使用され得る。
【0019】
好ましくは、電荷輸送材料はポリマーである。
【0020】
好ましくは、前記ポリマーは選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含む。
【0021】
好ましくは、前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I)の選択的に置換される第1の繰返し単位を含む。
【化3】

ここで、各Ar1、Ar2及びAr3は同じか異なり、独立して選択的に置換されるアリール又はヘテロアリールを表す。nは0又は1である。
好ましくは、Ar1はフェニレンである。
【0022】
好ましくは、Ar2は、1,4−フェニレン又は4,4’−ビフェニレンである。nが0であるとき、Ar2は、好ましくは、1,4−フェニレンであり、nが1であるとき、Ar2は、好ましくは、1,4−フェニレン又は4,4’−ビフェニレンである。
【0023】
好ましくは、Ar3は、フェニルである。Ar3は、好ましくは、置換されるか未置換であり、Ar3は、好ましくは、溶解性基で置換され、より好ましくは選択的に置換されるC1-20又はC1-20アルコキシである。
【0024】
好ましくは、前記ポリマーは2又はそれ以上の繰返し単位を含むコポリマーである。好ましくは、このようなコポリマーの繰返し単位の1つは一般式(I)の第1の繰返し単位である。より好ましくは、前記コポリマーは選択的に置換されるフルオレン、インデノフルオレン、スピロフルオレン及びフェニレンから選択される。
【0025】
好ましくは、前記燐光性材料は金属錯体である。
【0026】
好ましくは、前記ホスト材料はホストポリマーである。
【0027】
好ましくは、前記ホストポリマーは、上記で定義されるトリアリールアミン繰返し単位、特に、第1の繰返し単位を含むポリマーである。
【0028】
第2の側面において、本発明は、本発明の第1の側面の方法によって得られる有機発光ダイオードを提供する。
【0029】
第2の側面において、本発明は、順に、アノード、正孔輸送層、燐光性材料及びホスト材料を含む電子発光層、並びにカソードを含む有機発光ダイオードを提供する。ここで、正孔輸送層は、一般式(I)の選択的に置換される繰返し単位を含むポリマーである。
【化4】

ここで、各Ar1、Ar2及びAr3は同じか異なり、独立して選択的に置換されるアリールを表し、nは0又は1である。
【0030】
好ましくは、前記ポリマーは選択的に置換されるフルオレン、インデノフルオレン、スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含む。
【0031】
好ましくは、導電性有機材料を含む正孔注入層は、前記アノードと前記正孔輸送層の間に配置される。
【0032】
好ましくは、燐光性材料は金属錯体である。
【0033】
第3の側面において、本発明は、第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極、第2のタイプの電荷輸送体の注入のための第2の電極、燐光性材料とホスト材料を含む第1と第2の電極の間の電子発光層を含む有機発光ダイオードを提供し、ここで、第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための電荷輸送材料の混合物、前記燐光性材料、及び前記ホスト材料を含む混合層が電荷輸送層と電子発光層の間に配置される。
【0034】
好ましくは、前記混合層は、電荷輸送材料の濃度が第1の電極からの距離と共に減少するように、厚さを横切って濃度勾配を有する。
【0035】
好ましくは、第1の電極はアノードであり、第2の電極はカソードであり、電荷輸送材料は正孔輸送材料である。
【0036】
第4の側面において、本発明は、次の工程を含む本発明の第3の側面も装置の形成方法を提供する。
1)第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極を含む基板を供給する
2)第1のタイプの電荷輸送体の輸送のための電荷輸送材料を基板上に蒸着し、前記 電荷輸送材料は溶媒に可溶性である
3)溶媒、燐光性材料及びホスト材料を含む組成物を電荷輸送層上に蒸着することに より電子発光層を形成し、及び
4)第2のタイプの電荷輸送体の注入のための第2の電極を電子発光層上に蒸着する
【0037】
第4の側面の方法は、電子発光層の蒸着に際し、電荷輸送材料の少なくとも部分的な溶解をもたらす。
【0038】
電荷輸送材料が溶解する範囲は、本発明の第1の側面の電荷輸送層の溶解に関する上記のようにその蒸着に従って電荷輸送材料の適切な処理によって調整される。
【0039】
好ましくは、前記第1の電極はアノード、前記第2の電極はカソードであり、前記輸送材料は正孔輸送材料である。
【0040】
第5の側面において、本発明は、次の工程を含む本発明の第3の側面の装置を形成する方法を提供する。
1)第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極を含む基板を供給する
2)溶媒、燐光性材料、ホスト材料及び第1のタイプの電荷輸送体の輸送のための電荷輸送材料を含む組成物を基板上に蒸着する
3)電荷輸送材料が第1電極に向かって移動するように、溶媒の蒸発の間、前記組成物を相分離させる
4)第2のタイプの電荷輸送体の注入のための第2の電極を電子発光層上に蒸着する
【0041】
第5の側面の方法は、混合領域及び/又は電荷輸送層を含む装置を形成する方法を提供する。好ましくは、電荷輸送材料、電子発光材料及びホスト材料の相分離は、厚さ方向の濃度勾配を含む混合領域をもたらし、ここで、電荷輸送材料の濃度は第1の電極からの距離にしたがって減少する。
【0042】
好ましくは、第1の電極はアノードであり、第2の電極はカソードであり、電荷輸送材料は正孔輸送材料である。
【0043】
好ましくは、第5の側面の燐光性材料及びホスト材料は同じ分子の構成要素である。
【0044】
好ましくは、前記組成物は第1の電極上に供給されるに導電性有機材料の層上に蒸着される。好ましくは、前記導電性有機材料はドープされたポリ(エチレネジオキシチオフェン)、より好ましくは、ポリ(スチレンサルファネート)がドープされるポリ(エチレネジオキシチオフェン)を含む。
【0045】
好ましくは、電荷輸送材料はポリマーであり、より好ましくは、トリアリールアミン繰返し単位、最も好ましくは一般式(I)のトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーである。
【0046】
本発明の発明者らは、電子発光層が低い3重項エネルギーレベルの電荷輸送材料に隣接するとき、燐光性OLEDの燐光がクエンチされ得ることを発見した。
【0047】
したがって、第6の側面において、本発明は、順に、第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極、第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層、電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電子発光層、及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み、第1の電荷輸送材料は燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有する有機発光ダイオードを提供する。
【0048】
低い3重項エネルギーレベルの電荷輸送又は注入材料は電子発光層に隣接する場合は好ましくなく、そのような材料は電子発光層から離れて配置されると装置特性を最大化し得る。
【0049】
したがって、第1のタイプの電荷輸送体の輸送のための第2の電荷輸送層は第1の電極と第1の電荷輸送層の間に供給されることが好ましい。
【0050】
同様に、電子発光層から離れて第1のタイプの電荷輸送体の注入のための導電性有機材料を含む電荷注入層を提供しこれら3層が隣接する場合のクエンチ(例えば、導電性材料のポラロンバンドによるクエンチ)を防ぐことが望ましい。
【0051】
したがって、第1のタイプの電荷輸送体の注入のための導電性有機材料は第1の電極と第1の電荷輸送層の間に供給されることが望ましい。
【0052】
好ましくは、導電性有機材料はドープされたポリ(エチレネジオキシチオフェン)、より好ましくは、ポリ(スチレンサルファネート)がドープされたポリ(エチレネジオキシチオフェン)を含む。
【0053】
本発明の第3、第4、第5及び第6の側面の好ましい電荷輸送材料、ホスト材料及び電子発光材料は本発明の第1の側面に関連する記載のとおりである。
【0054】
次に、本発明を添付の図面を参照して、単に例示としてさらに詳細に説明する。
【0055】
図1を参照すると、本発明の方法により作成された有機発光ダイオードは基板1、インジウム錫酸化物のアノード2、有機正孔注入材料の層3、不溶性正孔輸送層4、電子発行層5及びカソード6を含む。
【0056】
光学装置は湿気及び酸素によって劣化しやすい傾向にある。したがって、基板1は好ましくは、湿気及び酸素が装置に侵入するのを防ぐための良好な遮断特性を有する。基板は通常ガラスであるが、特に装置の柔軟性が求められる場合には他の基板も使用され得る。例えば、基板は交互共重合体プラスチックの基板を開示する米国特許6268695号明細書のようなプラスチック及び遮断層、又は欧州特許0949850号明細書に開示されるガラスとプラスチックのラミネートを含む。
【0057】
必須ではないが、アノードから半導体層への正孔注入を促進するので有機正孔注入材料の層3が存在することが好ましい。正孔輸送材料の例としては、欧州特許0901176及び0947123号明細書に開示されるPEDT/PSS、又は米国特許5723873及び5798170号明細書に開示されるポリアニリンを含む。
【0058】
カソード6は、電子が効率よく装置に注入されるように選択され、アルミニウム層のような単層導電性材料を含む。あるいは、複数の材料、例えば、国際公開00/48258に開示されるようなカルシウムとアルミニウムの2層のような複数の金属層を含む。例えば、国際公開00/48258のように、電子の注入を助けるために、フッ化リチウムのような誘電材料の薄い層が電子発光層5及びカソード6の間に供給される。
【0059】
装置は、好ましくは、湿気と酸素の侵入を防止するためにカプセル材により封止される。適切なカプセル材は、ガラスシート、例えば、国際公開01/81649に開示されるポリマーと誘電材料の交互積層のような遮断特性を有する薄膜、又は例えば国際公開01/19142に開示されるような選択的に乾燥剤を有する気密性容器を含む。
【0060】
実用装置においては、少なくとも1つの電極は光が放出されるように半透明である。アノードが透明であるとき、典型的にはインジウム錫酸化物を含む。透明カソードの例としては、GB2348316に開示されている。
【0061】
典型的な装置は、仕事関数4.8eVを有するアノードを含む。したがって、正孔輸送層4のための正孔輸送材料のHOMOレベルは好ましくは約4.8〜5.5eVである。適切な正孔輸送材料は、低分子、ポリマー及び選択的に置換されるトリアリールアミン単位、特にトリフェニルアミン単位、及びカルバゾール単位を含む材料である。
【0062】
正孔輸送層4は電子遮断層として機能することができる。正孔輸送層4が、ホスト材料及び燐光性ドープ材より浅い(すなわち、より活性でない)LUMOレベルを有するとき、電子遮断機能が提供される。典型的な装置設計においては、正孔輸送層4の適切なLUMOレベルは約1.6〜2.3eVである。
【0063】
正孔輸送層4は、励起遮断層としても機能する。励起遮断機能は、正孔輸送層4が(a)より広いHOMO−LUMOバンドギャップ及び(b)燐光性ドープ材より広いT1〜T0のエネルギーギャップを有する。
【0064】
正孔輸送層4の好ましい正孔輸送材料は、繰返し単位1〜6を有するポリマーのようなトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーである。
【0065】
【化5】

ここで、X、Y、A、B、C及びDは、H又は置換基から独立して選択される。より好ましくは、X、Y、A、B、C及びDの1又は2以上は、選択的に置換される、分岐状又は線状アルキル、アリール、ペルフルオロアルキル、チオアルキル、シアノ、アルコキシ、ヘテロアリール、アルキルアリール及びアリールアルキル基からなる群より独立して選択される。最も好ましくは、X、Y、A及びBはC1−10アルキルである。一般式1の繰返し単位が最も好ましい。
【0066】
これらのポリマーはホモポリマー又はコポリマーであり得る。これらがコポリマーであるとき、適切なコ繰返し単位は、Adv. Mater. 2000 12 (23) 1737-1750に開示されるフルオレン、特に2,7−結合9,9−ジアルキルフルオレン、9,9−ジアリールフルオレン又は9−アルキル−9−アリールフルオレンのような選択的に置換されるアリーレン、欧州特許0707020号に開示される2,7−結合スピロフルオレンのようなスピロフルオレン、2,7結合インデノフルオレンのようなインデノフルオレン、又はアルキル若しくはアルコキシ置換1,4フェニルのようなフェニレンである。これらの各繰返し単位は置換され得る。これらコポリマーは、良好な薄膜形成能を有し、得られるポリマーの領域規則性の制御が高精度で行うことができるスズキ又はヤマモト重合によって容易に形成されるので、特に有利である。
【0067】
一般式(II)の繰返し単位を含む好ましいポリフルオレン
【化6】

ここで、R及びR’は、水素又は選択的に置換されるアルキル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール及びヘテロアリールアルキルから独立して選択され、少なくとも1つのR及びR’は水素ではない。より好ましくは、少なくとも1つのR及びR’は選択的に置換されるC1〜C20アルキル基、より好ましくはC4〜C10アルキル基を含む。
【0068】
好ましくは、第1の半導体ポリマーは、1:1のフルオレン繰返し単位とトリアリールアミン繰返し単位の規則交互コポリマーを含む。
【0069】
他の適切な正孔輸送ポリマーはポリ(ビニルカルバゾール)である。
【0070】
緑色燐光性材料のような高い3重項エネルギーと共に使用される際の正孔輸送層による燐光のクエンチを避けるために、一般式(II)の繰返し単位に比較してポリマーの3重項エネルギーが増加する繰返し単位を有するように正孔輸送ポリマーが選択される。このタイプの適切な繰返し単位は、非平面繰返し単位及び部分的又は完全非共役繰返し単位を含む。
【0071】
非平面繰返し単位は、非平面繰返し単位の置換基と隣接する環系の間で立体相互作用によりねじれを誘引することができる置換基を持つ環との間の立体層相互作用により生じるねじれを含む単位を含む。
【0072】
ポリマー主鎖におけるねじれを生成することができる繰返し単位の1つの種類は、一般式(III)の選択的に置換される繰返し単位を含む。
【化7】

ここで、mは0、1又は2であり、R3は置換基であり、好ましくは選択的に置換されるアルキル、アルコキシ、アリール、アリーロキシ、ヘテロアリール又はヘテロアリーロキシ基であり、より好ましくはC1-10アルキル基である。
【0073】
3基は、R3基が付着しているフェニル基に隣接する一般式(III)の繰返し単位のフェニル基との立体的相互作用によりねじれを誘引する。
【化8】

【0074】
あるいは、R3基は、一般式(III)の繰返し単位に隣接する繰返し単位との立体的相互作用によりねじれを誘引する。この場合、R3基は、前記隣接する繰返し単位に結合する繰返し単位の炭素原子に隣接する炭素原子に付着される。
【化9】

【0075】
より高い3重項エネルギーの正孔輸送ポリマーの部分又は非共役繰返し単位の例は、一般式7〜10である(破線は他の繰返し単位との結合を示す)。どちらかの末端にアリール基を有する繰返し単位は、ズズキ又はヤマモト重合によって適当なモノマーから容易に形成できるので特に有利である。
【化10】

【0076】
より高い3重項エネルギーの繰返し単位の他の種類は、選択的に置換される3,6−結合フルオレン又はカルバゾール繰返し単位である。
【0077】
正孔輸送材料は、溶媒からのその蒸着を可能にするため、及び/又はその溶媒からの電子発光層に蒸着の際内部混合を可能にするために少なくともいくつかの有機溶媒に可溶性である。
【0078】
1つの適切な処理は、正孔輸送材料に結合されるか又は混合される架橋性基の架橋を引き起こす。適切な架橋性基は、Nature 421, 829-833, 2003に開示されるオキセタン、国際公開96/20253に開示されるアジド、アクリレート、米国特許6107452号明細書に開示されるビニル基、及びKim et al, Synthetic Metals 122 (2001), 363-368に開示される。架橋は熱処理によって達成され、又は正孔輸送層の露光、特にUV露光によって達成される。
【0079】
正孔輸送層は、適当な不溶性処理によって、架橋性基が内部に存在しなくても不溶性に変えられ得る。次いで、正孔輸送層は電子発光層の溶液蒸着に対して安定である。本発明の発明者らは、(a)PEDT/PSS層が使用されるとされないにかかわらず(PEDT/PSSの存在が好ましいが)、及び(b)空気中又は窒素だけの雰囲気中で、この不溶性層が形成することを発見した。しかしながら、本発明の発明者らは、装置特性を最大化するために正孔輸送層に不溶性処理を施すことが必要なこと、特に、第1の層の不溶性を増大させることによって第1層と第2層の混合を最小化させることが必要であることを発見した。理論に拘束されずに言うならば、架橋性基が存在しない場合に不溶性処理により正孔輸送層の溶解性が喪失する可能性のメカニズムは、相対的に溶液不浸透性の表面の形成、又は正孔輸送層に蒸着した溶液からの溶媒の除去に続いて表面への固着を含む。
【0080】
溶媒の除去手段は真空処理及び加熱処理を含む。加熱処理は、単独又は真空処理と合わせて行うことが好ましい。加熱処理は、適切な処理時間は5分〜2時間の範囲である。加熱処理の温度は、好ましくは正孔輸送材料のガラス転移温度以上である。
【0081】
好ましくは、正孔輸送層は厚さ10〜20nmの範囲を有する。正孔輸送ポリマーが正孔輸送層4を形成するために使用されるとき、ポリマーの分子量の適当な選択によってその厚さは変形され得る。したがって、50,000のMwは厚さ2nmの薄さ、しかし約250,000〜300,000のMwは約15〜20nmの厚さを与える。
【0082】
電子発光層5は正孔輸送層4に直接蒸着され、ホスト材料と燐光性材料を含む。ホスト材料はドープ材より高いT1エネルギーレベルを有する。適切なホスト材料の例はトリアリールアミン単位(例えば、Shirota, J. Mater. Chem., 2000, 10,1-25)、上記に開示されるようなトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマー、又はカルバゾール、特にポリ(ビニルカルバゾール)である。
【0083】
ホスト材料は電荷輸送特性も有する。正孔輸送ホスト材料は、次の一般式を有する選択的に置換ざれる正孔輸送アリールアミンのようなものが特に好ましい。
【化11】

ここで、Ar5は、フェニル又は次式のように選択的に置換される芳香基であり、
【化12】

及びAr6、Ar7、Ar8及びAr9は、選択的に置換される芳香族基又は複素環式芳香族基(Shi et al (Kodak) US 5,554,450. Van Slyke et al, US 5,061,569. So et al (Motorola) US 5,853,905 (1997))。Arは好ましくはビフェニルである。少なくとも2つのAr6、Ar7、Ar8及びAr9は、チオール基又は反応性不飽和炭素−炭素結合を含む基を形成するために結合される。Ar6及びAr7及び/又はAr8及びAr9基は、例えばNがカルバゾール単位例えば次式の一部を形成するように、N含有環を形成するように選択的に結合する。
【化13】

【0084】
ホスト材料は代替的に電子輸送特性を有する。電子輸送ホスト材料の例としては、アゾール、ジアゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、ベンゾキサゾール、ベンザゾール及びフェナントロリンであり、それぞれ選択的に置換され得る。特に好ましい置換基はアリール基、特にフェニル、オキサジアゾール、特に、アリール置換オキサジアゾールである。これらのホスト材料は低分子の形で存在し、ポリマーの繰返し単位として供給され、特に、ポリマー主鎖に配置される繰返し単位又はポリマー主鎖からの分岐置換基として供給される。電子輸送ホスト材料の特定の例は、3−フェニル−4−(1−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4トリアゾール及び2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−フェナントロリンを含む。
【0085】
ホスト材料は二極性であり、すなわち、正孔及び電子を輸送することができる。適切な2極性材料は好ましくは少なくとも2つのカルボザール単位を含む(Shirota, J. Mater. Chem., 2000, 10,1-25)1つの好ましい化合物において、Ar6、Ar7、Ar8及びAr9は、カルバゾール環を形成するために結合され、Ar5はフェニルである。あるいは、2極性ホスト材料は、正孔輸送区域及び電子輸送区域を含む材料であり得る。このような材料の例としては、国際公開00/55927号に開示されるような正孔輸送区域と電子輸送区域を含むポリマーがあり、ここで、正孔輸送はポリマー主鎖内に位置するトリアリールアミン繰返し単位によって供給され、電子輸送はポリマー主鎖内の共役ポリフルオレン鎖によって供給される。あるいは、正孔輸送及び電子輸送特性は共役又は非共役ポリマー主鎖からの分岐繰返し単位によって供給される。
【0086】
「低分子」ホスト材料の特定の例は、CBPとして知られる4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル、及びTCTAとして知られる(4,4’,4”−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン)、並びにMTDATAとして知られるトリス−4−(N−3−メチルフェニル−N−フェニル)フェニルアミンを含む。
【0087】
ホモポリマー及びコポリマーは、正孔輸送層に関して、上記のようなポリフルオレン、ポリスピロフルオレン、ポリインデノフルオレン又はポリフェニレンのように選択的に置換されるポリアリーレンを含む。
【0088】
従来技術におけるホストポリマーの特定の例は、例えば、Appl. Phys. Lett. 2000, 77 (15), 2280に開示されるポリ(ビニルカルバゾール)、Synth. Met. 2001, 116, 379, Phys. Rev. B 2001, 63, 235206 及びAppl. Phys. Lett. 2003, 82 (7), 1006に開示されるポリフルオレン、Adv. Mater. 1999, 11 (4), 285に開示されるポリ[4−(N−4−ビニルベンジロキシエチニル、N−メチルアミノ)−N−(2,5−ジ−第3−ブチルフェニルナフタルイミド)、J. Mater. Chem. 2003, 13, 50-55に開示されるポリ(パラ−フェニレン)、J. Chem. Phys. (2003), 118(6), 2853-2864に開示されるファク−トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)及び2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリンプラチナ(II)に対するホスト材料としてのポリ[9,9’−ジ−n−ヘキシル−2,7−フルオレン−アルト−1,4−(2,5−ジ−n−ヘキシロキシ)フェニレン]、Mat. Res. Symp. Spring Meeting 2003 Book of Abstracts, Heeger, p. 214に開示されるジオクチルフルオレン及びジシアノ−ベンゼンのランダムコポリマー、及びMat. Res. Soc. Symp. Proc. 708, 2002,131に開示されるフルオレン繰返し単位とフェニレン繰返し単位のABコポリマーがある。
【0089】
適切な燐光性ドープ材料は、急速な項間交差及び3重項状態からの発光を可能にする強いスピン軌道結合を誘発する重原子Mに基づく金属錯体である。
1)セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、ジスプロシウム、トゥリウム、エルビウム及びネオジウム、及び
2)d−ブロック金属、特に2列及び3列のもの、すなわち、元素39〜48及び72〜80、特に、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ及び金
【0090】
f−ブロック金属の適切な配位基は、カルボン酸、1,3−ジケトネート、ヒドロキシカルボン酸、アシルフェノールを含むシッフ塩基及びイミノアシル基のような酸素又は窒素ドナーシステムを含む。知られるように、発光ランタニド金属錯体は、金属イオンの1重項状態より高い3重項エネルギーレベルを有する感光基を必要とする。発光は金属のf−f遷移から生じ、発光色は金属の選択によって決められる。激しい発光は通常狭く、ディスプレイの応用に有利な純色の発光をもたらす。
【0091】
dブロック金属はポルフィリン又は一般式(VII)の2座リガンドのような炭素又は窒素ドナーを有する有機金属錯体を形成する。
【化14】

ここで、Ar10及びAr11は同じか異なり、選択的に置換されるアリール又はヘテロアリールから独立して選択される。X1及びY1は同じか異なり、炭素又は窒素から独立して選択される。Ar10及びAr11は一緒に縮合され得る。X1が炭素Y1が窒素であるリガンド、又はX1及びY1が共に窒素であるリガンドが特に好ましい。
【0092】
2座リガンドの例は下記に例示される。
【化15】

【0093】
Ar10及びAr11の1又は両者は1又は2以上の置換基を有する。特に好ましい置換基は、国際公開02/45466号、国際公開02/44189号、米国特許2002−117662号及び米国2002−182441号に開示される錯体の発光の青色シフトに使用されるフルオライン又はトリフルオロメチル、日本国公開2002−324679に開示されるアルキル又はアルコキシ基、国際公開02/81448に開示されるような発光材料として使用されるとき正孔輸送を助けるカルバゾール、国際公開02/68435号及び欧州特許1245659号に開示される他の基の付着のためのリガンドを機能させるために働く臭素、塩素又はヨウ素、及び国際公開02/66552に開示される金属錯体の溶液プロセス性を得るため又は増大するために使用されるデンドロンを含む。
【0094】
ホスト金属における燐光性発光ドープ材の濃度は薄膜が高い発光効率を有するようにあるべきである。発光種の濃度が高すぎると、発光のクエンチが生じる。0.01〜49重量%、より好ましくは0.5〜10重量%、最も好ましくは1〜3%の範囲の濃度が通常適切である。
【0095】
ホスト材料と電子発光材料は上記のように別々の材料として供給される。あるいは、これらは同じ分子の構成要素である。例えば、燐光性金属錯体は、例えば、WO02/31896号、WO03/18653号及び欧州特許124659号に開示されるようなホストポリマーの繰返し単位、側鎖置換基又は末端基として供給され得る。同様に、低分子ホスト材料は燐光性金属錯体のリガンドに直接結合される。
【0096】
燐光性材料は、典型的には、ホスト材料内で低濃度(1〜5%)のドープ材として導入される。任意の溶媒における燐光性材料の溶解度は比較的低いことがわかる。あるいは、溶解度の増大した燐光性材料が導入され得る。このような燐光性材料としては、日本国特開2002−324679号に開示されるアルキ又はアルコキシ基を有する錯体、国際公開02/66552に開示されるデンドリマー、国際公開02/31896、03/001616に開示される溶解性ポリマーの繰返し単位、側鎖置換基、又は末端基として供給される燐光性錯体を含む。
【0097】
正孔輸送層及び電子発光層の蒸着のための適切な溶液プロセス技術は、欧州特許880303号に開示されるスピンコート、インクジェット、欧州特許0851714号に開示されるレーザー転移、フレクソグラフィック印刷、スクリーン印刷及びドクターブレードコートを含む。上記のような溶解性基の製造は、燐光性材料をインクジェット印刷のような溶液プロセスにより適するように変えるのに特に有利である。
【0098】
上記処理にしたがって、正孔輸送層は完全に不溶性又は部分的に不溶性であり得る。正孔輸送材料は実質的に架橋性基を有しない場合、不溶性の程度は加熱処理の持続時間及び温度によって変化する。完全に不溶性の層を残すために溶解性正孔輸送材料は適当な溶媒中で洗浄することにより除去され得る。しかしながら、本発明は、第1層は部分的にのみ不溶化にされ溶解性部分が除去されない場合の電子発光層も包含する。この場合、正孔輸送層と電子発光層の材料の間である程度の混合が生じる。これは、正孔輸送層及びある程度の正孔輸送材料を含む電子発光層を提供するのに有利であり、カソードからアノードに向けて動く正孔輸送材料の濃度の増加勾配を生み出す。
【0099】
本発明の正孔輸送材料、ホスト材料及び燐光性材料は共通の溶媒に少なくとも部分的に可溶性である。電子発光層及び(溶液蒸着の場合)正孔輸送層の蒸着に適する溶媒は、当業者に自明である。例えば、ポリフルオレン、ポリフェニレン及びポリインデノフルオレンのようなアルキル−、アルコキシ−置換ポリアリーレンは、通常、芳香族炭化水素、より好ましくは、トルエンエチルベンゼン及びシクロヘキシルベンゼンのようなモノ−又はポリ−アルキレート又はアルコキシレートベンゼン、ポリアルキルベンゼン、例えば、キシレン、トリメチルベンゼン及びテトラメチルベンゼン、アニソールのようなアルコキシベンゼン、及びこれらの混合に可溶性である。他方、PVKは1,2−ジクロロエタンのような溶媒に可溶性である。
【0100】
上記の処理はPLEDの効率及び寿命を改良することが発見された。理論に拘束されずに言うならば、次の要因がこれらの観察された増加に寄与する。
1)第1層は、アノードと第2層の間に位置するとき正孔輸送、電子遮断及び/又は励起遮断層として働く
2)PEDT/PSS層として使用される場合、不溶性正孔輸送層が酸性のPSS材料から第2層への水素イオンの侵入を防止する。これは、特に、ポリマーが、水素イオンを受領することができる一般式1−6のアミン、又はピリジルのような上記Het基のような基本単位を含むときに適用される
【0101】
特に、残存する可溶性材料を除去するために行われる正孔輸送層を洗浄する際に達成できる不溶性層の厚さは、高い駆動電圧のようなより厚い層に起因する装置特性への悪影響を与えることなく、電子がPEDT/PSS正孔注入層及び/又はITOアノード層に入るのを遮断することができる。
【実施例】
【0102】
一般的手続き
本発明は、正孔輸送層として、下記に示され、国際公開99/54385号に開示される“F8−TFB”を使用して例示される。
【化16】

【0103】
一般的な方法は下記のステップに従う。
1)PEDT/PSS(Baytron P登録商標として、H C Starck of Leverkusen, Germanyより入手可)をガラス基板に支持されたインジウム錫酸化物(Applied Films, Colorado, USAより入手可)上に蒸着する
2)濃度2%w/vを有するキシレン溶液からF8-TFBをスピンコートすることにより、正孔輸送層を蒸着する
3)正孔輸送層を不活性(窒素)雰囲気中で加熱する
4)残存する可溶性F8-TFBを除去するために基板をキシレン中で選択的にスピン洗浄 する
5)キシレン溶液からスピンコートにより電子発光層を蒸着する
6)国際公開00/48258号に開示されるように、電子発光層上にリチウムの第 1層(4nm)、第2層カルシウム(10nm)及びアルミニウムキャップ層(>200)を含むカソードを蒸着する
7)Gaes Getters SpAから入手可能な気密性金属封入物を使用して装置を封止する
【0104】
通常のプロセス内のパラメータは変化し得る。特に、正孔輸送材料の濃度は約3%w/vまでである。あるいは、特に薄い薄膜を提供するには0.5%w/vの低さであり得る。選択的な加熱工程は約2時間までの適当な長さ続けられる。選択的な加熱工程は約2208℃までの適当な温度、しかし、好ましくは、蒸着ポリマーのガラス転移温度以上で行われる。当業者に明らかなように、第1及び/又は第2のポリマー、及びPEDT/PSSのような他の装置構成要素は、加熱温度が過剰であると熱劣化を生じ、したがって、加熱温度を選択しなければならない。
【0105】
実施例1
上記の一般的方法は、次のものを含む電子発光装置を使用して遂行される。
1)国際公開02/92723に開示される70%の9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル、10%の9,9−ジフェニルフルオレン−2,7−ジイル、10%の“TFB”繰返し単位及び“PFB”繰返し単位(TFB及びPFB繰返し単位は下記に例示される)。ポリマーは、例えば、国際公開00/53656号に開示されるように、スズキ重合によって製造される
2)Nature (London), 1998, 395, 151に開示される赤色燐光性ドーププラチナオクタエチルプロフィリン
ホスト材料:ドープ材の比98.8:1.2
【0106】
正電荷輸送層は電子発光層の蒸着の前に130℃で10分間熱処理された。
【化17】

【0107】
比較例1
比較の目的のため、正孔輸送層(すなわち、上記一般的方法の2−4の工程)が省略された点を除いて、実施例1にしたがって装置が作製された。
【0108】
実施例2
ホスト材料対ドープ材が98.0:2.0である点を除いて実施例1にしたがって装置が作製された。
【0109】
比較例2
比較の目的のため、正孔輸送層(すなわち、上記一般的方法の2−4の工程)が省略された点を除いて、実施例2にしたがって装置が作製された。
【0110】
実施例3
電子発光層が、国際公開02/066552に開示され下記に例示されるホスト材料CBP及び緑色電子発光デンドリマードープ材ED1がCBP:ED1比が8:2であるクロロホルム溶液からスピンコートにより蒸着される点を除いて実施例1にしたがって装置が作製された。
【化18】

【0111】
比較例3
比較の目的のため、正孔輸送層(すなわち、上記一般的方法の2−4の工程)が省略された点を除いて、実施例3にしたがって装置が作製された。
【0112】
下記の表1は、本発明の本発明と比較例の装置の量子効率と寿命を示す。これからわかるように、実施例1及び2の正孔輸送層の含有によってわずかな効率の改善が見られる。さらに、赤色PtOEP発光体(実施例1)及び緑色ED1発光体(実施例3)の寿命が改良されている。
【0113】
実施例1及び2に比較して、実施例3の比較例に対する量子効率(ED1ドープ材)は低下する。理論に拘束されずに言うならば、実施例3の正孔輸送層4のバンドギャップは電子発光層に比べて不十分に広いため、発光がクエンチされるためと考えられる。実施例3の寿命の増加は、適正なバンドギャップの材料(すなわち、前述した励起遮断層)の使用により、比較例の効率を維持又は超えながら達成され得ると考えられる。
【表1】

【0114】
本発明は特定の例示的な実施例によって説明されたが、特許請求の範囲に規定される本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り。多くの改良、変形及びこれらの組み合わせ可能であることは当業者にとって自明である。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】図1は、本発明の方法によって作製されるOLEDを示す。
【符号の説明】
【0116】
1 基板
2 インジウム錫酸化物のアノード
3 有機正孔注入層
4 不溶性正孔輸送層
5 電子発光層
6 カソード






【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程を含む有機発光ダイオードを形成する方法であって、
第1のタイプの電荷輸送体を注入する第1の電極を含む基板を提供する工程、
第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための電荷輸送材料を基板上に蒸着することによって電荷輸送層を形成する工程、ここで、電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり、
前記電荷輸送層を溶媒中に不溶性に変える工程、
前記電荷輸送層上に、溶媒、燐光性材料及びホスト材料を含む組成物を蒸着することによって電子発光層を形成する工程、及び
前記電子発光層上に、第2のタイプの電荷輸送体の注入のための第2の電極を蒸着する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の電極はアノードであり、前記第2の電極はカソードであり、前記第1の電荷輸送体は正孔であり、前記第2の電荷輸送体は電子である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電荷輸送材料は架橋性材料を含み、前記処理は、前記電荷輸送材料を架橋するために前記電荷輸送層を加熱、電子マグネトロン照射、特にUV照射することを含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記電荷輸送層が実質的に架橋性基を有せず、前記処理は前記電荷輸送層を加熱することを含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記電荷輸送層はポリマーである請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマーは選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記トリアリールアミン繰返し単位は選択的に置換される一般式(I)の繰返し単位を含む請求項6に記載の方法であって、
【化1】

ここで、各Ar1、Ar2及びAr3は同じか異なり、独立して選択的に置換されるアリール表し、nは0又は1である方法。
【請求項8】
前記コポリマーは選択的に置換されるフルオレン、インデノフルオレン、スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含む請求項5ないし7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記燐光性材料は金属錯体である請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記ホスト材料はホストポリマーである請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記ホストポリマーは、請求項7又は8で定義される繰返し単位を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の方法によって得られる有機発光ダイオード。
【請求項13】
順に、アノード、正孔輸送層、燐光性材料及びホスト材料を含む電子発光層、並びにカソードを含む有機発光ダイオードであって、ここで、前記正孔輸送層は、一般式(I)の選択的に置換される繰返し単位を含むポリマーであり、
【化2】

ここで、各Ar1、Ar2及びAr3は同じか異なり、独立して選択的に置換されるアリールを表し、nは0又は1である有機発光ダイオード。
【請求項14】
前記コポリマーは選択的に置換されるフルオレン、インデノフルオレン、スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含む請求項13に記載の有機発光ダイオード。
【請求項15】
導電性材料を含む正孔注入層が前記アノードと前記正孔輸送層の間に配置される請求項13又は14に記載の有機発光ダイオード。
【請求項16】
前記燐光性材料は金属錯体である請求項13ないし15のいずれかに記載の有機発光ダイオード。


【図1】
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【公表番号】特表2007−520858(P2007−520858A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544561(P2006−544561)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【国際出願番号】PCT/GB2004/005392
【国際公開番号】WO2005/059951
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(597063048)ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッド (152)
【Fターム(参考)】