説明

光学補償板、並びに電気光学装置及び電子機器

【課題】液晶装置等に用いられる光学補償板において、製造を容易なものとしつつ、位相差を適切に補償する。
【解決手段】光学補償板(300)は、屈折率異方性が正及び負のうち一方の極性である第1結晶板(310)と、第1結晶板に対向配置されると共に屈折率異方性が正及び負のうち他方の極性である第2結晶板(320)とを備える。第1結晶板及び第2結晶板は、各々が有する位相差を互いに相殺することで全体が有する位相差を所望の位相差に近付ける屈折率及び厚みを夫々有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶ライトバルブ等の液晶装置に用いられる光学補償板、並びに該光学補償板を備えた電気光学装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の光学補償板として、例えば液晶装置における液晶層と偏光板との間に設けられ、光が液晶層を通過する際に生じた位相差を補償するというものがある。例えば特許文献1では、無機材料からなる光学補償プレートによって、光の位相差を補償するという技術が開示されている。
【0003】
上述したような位相差の補償を行うことにより、例えば黒表示の際の偏光板における光漏れ等が抑制され、コントラストを改善することが可能とされている。
【0004】
【特許文献1】特許第3864929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した技術においては、光学補償プレートによって補償される位相差を適切な大きさとするため、材料となる結晶を極めて薄く研磨することが求められる。よって、製造の際には、極めて精度の高い制御が要求され、製造が非常に困難であるという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、比較的製造が容易であり、位相差を適切に補償可能な光学補償板、並びに電気光学装置及び電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学補償板は上記課題を解決するために、屈折率異方性が正及び負のうち一方の極性である第1結晶板と、該第1結晶板に対向配置されると共に屈折率異方性が正及び負のうち他方の極性である第2結晶板とを備え、前記第1結晶板及び前記第2結晶板は、各々が有する位相差を互いに相殺することで全体が有する位相差を所望の位相差に近付ける屈折率及び厚みを夫々有する。
【0008】
本発明に係る光学補償板によれば、屈折率異方性が正及び負のうち一方の極性である第1結晶板と、第1結晶板に対向配置されると共に屈折率異方性が正及び負のうち他方の極性である第2結晶板とが備えられている。即ち、屈折率異方性が互いに異なる2つの結晶板が対向配置されている。尚、第1及び第2結晶板は、互いに密着するように配置されてもよいし、相互間に間隙が存在するように、又は他の光学膜、光学材料、光学部材等が間に介在するように配置されてもよい。
【0009】
光学補償板によって補償される位相差の大きさは、構成する結晶板の厚みや材料が有する複屈折率等に夫々依存している。このため、光学補償板の補償効果は、典型的には、材料の選択及び結晶板の厚みによって調整される。しかしながら、光学補償板に要求される補償効果は比較的小さい場合が多い。よって、本発明の如く2枚の結晶板を含む特別な構成を有しない場合には、結晶板の厚みによって補償効果を調整するためには、例えば結晶板を数μm〜数十μm程度の厚みに研磨することが求められる。即ち、光学補償板を形成する際には、極めて高い精度が要求されることとなる。言い換えれば、このような薄い結晶板は、製造中に、割れたり、欠けたりし易く、加えて、製造できたとしても完成品はもろい。
【0010】
しかるに本発明によれば、屈折率異方性が互いに異なる第1及び第2結晶板を対向配置すると、夫々の結晶板による補償効果は互いに相殺される。そして、本発明に係る光学補償板においては、第1及び第2結晶板の屈折率及び厚みが、各々が有する位相差を互いに相殺することで全体が有する位相差を所望の位相差に近付けるような値とされている。尚、「所望の位相差」とは、光学補償板によって補償が望まれる位相差の値を意味している。本発明に係る「光学補償板」は、所望の位相差を得るための「位相差板」と呼ぶこともできる。
【0011】
上述したように、屈折率異方性が互いに異なる2つの結晶板によって、互いの補償効果を相殺するようにすれば、例えば第1及び第2結晶板が比較的厚く形成されている場合であっても、全体として所望の位相差を実現することが可能である。即ち、第1及び第2結晶板が、単独で所望の位相差を実現できるような厚みとなるまで薄く研磨しなくともよいため、製造を格段に容易にすることができる。尚、光学補償板が設けられる電気光学装置等の装置を小型化するという観点で見れば、第1及び第2結晶板の厚みは小さい方が望ましいが、理論的には、物理的に配置可能なスペースさえあれば、どのような厚みのものであっても、所望の位相差を実現することが可能である。逆に、2枚の結晶板を製造容易とするのに必要な程度に厚くするだけであれば、装置の小型化の妨げになることは余り又は殆どない。
【0012】
以上説明したように、本発明に係る光学補償板によれば、製造を容易にすると共に、所望の位相差を補償することができる。よって、例えば電気光学装置等において発生する光の位相差をより適切に補償し、画質を向上させることが可能である。
【0013】
本発明の光学補償板の一態様では、前記第1結晶板及び前記第2結晶板は、光軸が互いに同じ向きとされている。
【0014】
この態様によれば、第1及び第2結晶板の光軸が互いに同じ向きとされているため、光学補償板全体としての光軸もまた、第1及び第2結晶板の光軸と同じ向きになる。尚、第1及び第2結晶板の光軸における「同じ向き」とは厳密に同一の向きを指すものではなく、後述するように、光学補償板全体としての光軸の向きや補償する位相差を比較的容易に求めることができるような値を意味する。即ち、ここでの同じ向きとは、実質的に同じ向きと呼ぶこともできる。
【0015】
ここで仮に、第1及び第2結晶板の光軸が同じ向きとされていないとすると、光学補償板全体としての光軸は、第1及び第2結晶板の光軸の角度や補償する位相差等を夫々考慮した上で、複雑な計算をしなければ求められないというおそれがある。
【0016】
しかるに本態様では特に、上述したように、第1及び第2結晶板の光軸が互いに同じ向きとされているため、光学補償板全体としての光軸が、第1及び第2結晶板の光軸と同じ向きになる。また、光学補償板が補償する位相差についても、単純な加減算で求めることが可能である。よって、本態様に係る光学補償板によれば、より容易且つ適切に位相差を補償することが可能である。
【0017】
本発明の光学補償板の他の態様では、前記第1結晶板及び前記第2結晶板は、互いに貼り合わせてある。
【0018】
この態様によれば、第1及び第2結晶板が互いに貼り合わせられているため、光学補償板を配置するためのスペースを小さくすることができる。また、第1及び第2結晶板が互いに固定されているため、配置の際等に、互いの光軸がずれてしまうおそれがない。即ち、光軸が適切な角度となるように、光学補償板を配置することができる。尚、第1及び第2結晶板の貼り合わせには、例えば透明な接着剤等が用いられる。
【0019】
以上説明したように、本態様に係る光学補償板によれば、省スペース化及び配置の簡単化を実現しつつ、位相差を適切に補償することが可能である。
【0020】
本発明の光学補償板の他の態様では、前記第1結晶板及び前記第2結晶板のうち、前記極性が正である方は、水晶を含んでいる。
【0021】
この態様によれば、第1及び第2結晶板のうち、極性が正である結晶板には水晶が含まれている。尚、水晶が含まれる結晶板は、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械研磨)等の各種研磨技術によって、所定の厚みになるように研磨することで形成される。
【0022】
ここで、水晶は硬度が高いため、薄く研磨することが困難である。また、水晶を含んだ結晶板単独で補償を行おうとする場合、比較的複屈折率が高いため、その分薄く研磨しなければ、位相差を適切に補償できない。
【0023】
しかるに本態様では特に、極性が負である他の結晶板によって、水晶を含んだ結晶板の補償する位相差が相殺される。よって、水晶を含んだ結晶板が、比較的厚みのある状態であっても、光学補償板全体として、適切な補償を行うことが可能である。即ち、製造を容易にすると共に、所望の位相差を補償することができる。
【0024】
本発明の光学補償板の他の態様では、前記第1結晶板及び前記第2結晶板のうち、前記極性が負である方は、サファイアを含んでいる。
【0025】
この態様によれば、第1及び第2結晶板のうち、極性が負である結晶板にはサファイアが含まれている。尚、サファイアが含まれる結晶板は、例えばCMP等の各種研磨技術によって、所定の厚みになるように研磨することで形成される。
【0026】
ここで、サファイアは硬度が極めて高いため、薄く研磨することが非常に困難である。よって、光学補償板の製造には、極めて高い技術が求められる。
【0027】
しかるに本態様では特に、極性が正である他の結晶板によって、サファイアを含んだ結晶板の補償する位相差が相殺される。よって、サファイアを含んだ結晶板が、比較的厚みのある状態であっても、光学補償板全体として、適切な補償を行うことが可能である。即ち、製造を容易にすると共に、所望の位相差を補償することができる。
【0028】
本発明の電気光学装置は上記課題を解決するために、一対の第1及び第2基板間に液晶層が挟持されてなる液晶パネルと、光軸が前記液晶層の液晶分子の傾きに対応するように傾斜された、上述した本発明に係る光学補償板(但し、その各種態様を含む)とを備える。
【0029】
本発明に係る電気光学装置によれば、その動作時に、例えば投射光やバックライト等の光源光が液晶パネルに入射されることにより、例えば投影画像や直視画像として画像が表示される。液晶パネルは、一対の第1及び第2基板が液晶層を挟持することで構成されており、例えばTFT(Thin Film Transistor)等によって駆動される。
【0030】
ここで本発明では特に、上述した第1及び第2結晶板によって構成された光学補償板が、光軸が液晶層の液晶分子の傾きに対応するように傾斜されて配置されている。尚、ここでの「光軸」は、第1及び第2結晶板の各々の光軸ではなく、光学補償板全体としての光軸を意味するものとする。光学補償板は、典型的には、液晶層に面するように形成された配向膜との界面付近の液晶分子に対応するように、光軸が傾斜されている。即ち、このような液晶分子によって発生する位相差を補償するように、光軸が傾斜されている。尚、光学補償板の液晶パネルに対する位置は、液晶パネルに入射する光の入射側でも出射側でもよく、液晶層の液晶がTN(Twisted Nematic)液晶の場合は、入射側と出射側の両方に配置することで、より高い補償効果を得ることも可能である。
【0031】
以上説明したように、本発明に係る電気光学装置によれば、光学補償板によって、液晶層等において発生する位相差が補償されるため、表示される画像のコントラストが向上される。従って、高品質な画像を表示することが可能である。
【0032】
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置(但し、その各種態様も含む)を具備する。
【0033】
本発明の電子機器によれば、上述した本発明に係る電気光学装置を具備してなるので、高品質な表示を行うことが可能な、投射型表示装置、テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。また、本発明の電子機器として、例えば電子ペーパなどの電気泳動装置等も実現することも可能である。
【0034】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0036】
<光学補償板>
先ず、本実施形態に係る光学補償板について図1から図5を参照して説明する。ここに図1は本実施形態に係る光学補償板の全体構成を示す斜視図であり、図2は、本実施形態に係る光学補償板の変形例を示す斜視図である。また図3及び図4は夫々、光学補償板の光軸を概念的に示す斜視図である。図5は、光学補償板によって補償される位相差を、比較例と共に示すグラフである。
【0037】
図1において、本実施形態に係る光学補償板300は、屈折率異方性が正である第1結晶板310と、屈折率異方性が負である第2結晶板320とを備えて構成されている。即ち、光学補償板300は、屈折率異方性が互いに異なる2つの結晶板を備えて構成されている。屈折率異方性が正である第1結晶板310は、例えば水晶等の結晶を研磨することによって形成される。また、屈折率異方性が負である第2結晶板320は、例えばサファイア等の結晶を研磨することによって形成される。
【0038】
第1結晶板310及び第2結晶板320は、典型的には、透明な接着剤等で貼り合わせられており、互いの位置がずれないように固定されている。これにより、例えば後述する、第1結晶板310及び第2結晶板320の各々の光軸の角度が互いにずれてしまうことが防止される。
【0039】
図2において、第1結晶板310及び第2結晶板320は、互いに接触しないように構成されていてもよい。即ち、第1結晶板310及び第2結晶板320間には、ある程度の空間が存在してもよい。このように構成すれば、第1結晶板310及び第2結晶板320が互いに固定されていないため、配置の際の自由度が高められる。但し、第1結晶板310及び第2結晶板320間に、光源光に位相差を発生させてしまうような光学素子が配置されることは望ましくない。
【0040】
尚、図1及び図2では、補償の対象となる光源光が第1結晶板310側から入射し、第2結晶板320側から出射するようにしているが、逆方向であってもよい。即ち、光源光が第2結晶板320側から入射し、第1結晶板310側から出射するようにしてもよい。
【0041】
図3において、正の屈折率異方性を有する第1結晶板310における光軸は、楕円体の結晶の傾き(即ち、屈折率楕円体における長軸或いは中心軸の傾き)によって概念的に表すことができる。また、負の屈折率異方性を有する第2結晶板320における光軸は、平板上の結晶の傾き(即ち、平板状の屈折率楕円体における中心軸の傾き)によって概念的に表すことができる。第1結晶板310及び第2結晶板320における光軸は、図に示すように、夫々所定角度θ傾くように構成されている。即ち、第1結晶板310及び第2結晶板320における光軸は、互いに同じ向きとされている。
【0042】
ここで、第1結晶板310の厚みをW1とし、第2結晶板320の厚みをW1より小さいW2として、第1結晶板310が補償する位相差を、第2結晶板320が補償する位相差より大きくなるように構成したとする。この場合、第1結晶板310及び第2結晶板320が有する位相差は互いに相殺され、光学補償板300の補償する位相差は、第1結晶板310の位相差から第2結晶板320の位相差を差し引いたものとなる。即ち、光学補償板300が補償する位相差を、比較的小さいものとすることができる。尚、図に示すように、屈折率異方性は、第1結晶板310の位相差の方が大きいため正となり、光軸の角度は、第1結晶板310及び第2結晶板320共に所定角度θ傾斜されているため、同様に所定角度θ傾斜されたものとなる。
【0043】
図4において、第1結晶板310の厚みをW3とし、第2結晶板320の厚みをW3より大きいW4として、第1結晶板310が補償する位相差を、第2結晶板320が補償する位相差より小さくなるように構成したとする。この場合も同様に、第1結晶板310及び第2結晶板320が有する位相差は互いに相殺され、光学補償板300の補償する位相差は、第2結晶板320の位相差から第1結晶板310の位相差を差し引いたものとなる。即ち、光学補償板300が補償する位相差を、比較的小さいものとすることができる。尚、図に示すように、屈折率異方性は、第2結晶板320の位相差の方が大きいため負となり、光軸の角度は、第1結晶板310及び第2結晶板320共に所定角度θ傾斜されているため、同様に所定角度θ傾斜されたものとなる。
【0044】
上述したように、本実施形態に係る光学補償板300によれば、第1結晶板310及び第2結晶板320の厚みを夫々調整することにより、所望の位相差を補償可能とすることができる。よって、例えば比較的小さい位相差を補償しようとする場合に、材料となる結晶を薄く(例えば、数μm〜数十μm程度に)研磨しなくとも済む。従って、製造工程を比較的簡単なものとすることが可能である。以下では、光学補償板300の具体例を比較例と共に説明する。
【0045】
図5において、仮にサファイアの結晶板1つのみで、補償する位相差が200nmである光学補償板を形成しようとすると、厚みは25μmとなり、配置角度と位相差との関係は、図に実線で示すようなものとなる。これに対し、サファイアの結晶板に加えて水晶の結晶板を用いて、同様の光学補償板を形成する場合、例えば水晶の結晶板の厚みを500μmであれば、サファイアの結晶板の厚みは645μmとすればよい。そして、配置角度と位相差との関係は、図に鎖線で示すようになり、上述したサファイアの結晶板のみで構成する場合と同様の補償効果を得ることが可能である。即ち、屈折率異方性の互いに異なる2つの結晶板を用いれば、結晶板1つの場合と比較して、極めて厚みの大きい結晶板であっても、同様の補償効果を得ることができる。尚、補償する位相差は材料のもつ複屈折率にも依存しているため、材料によっても所望の位相差を得るための厚みは変化するが、比較的単純な計算によって求めることが可能である。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る光学補償板300によれば、製造を容易なものとしつつ、位相差を適切に補償することが可能である。
【0047】
<電気光学装置>
次に、上述した光学補償板が用いられた電気光学装置について、図6から図11を参照して説明する。尚、以下の実施形態では、本発明の電気光学装置の一例である駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例にとる。
【0048】
<第1実施形態>
先ず、本実施形態に係る電気光学装置に用いられる液晶パネルの全体構成について、図6及び図7を参照して説明する。ここに図6は、本実施形態に係る液晶パネルの構成を示す平面図であり、図7は、図6のH−H´線断面図である。
【0049】
図6及び図7において、本実施形態に係る液晶パネルでは、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10は、例えば石英基板、ガラス基板、シリコン基板等の透明基板である。対向基板20も、TFTアレイ基板10と同様に、透明基板である。TFTアレイ基板10と対向基板20との間に液晶層50が封入されている。TFTアレイ基板10と対向基板20とは、複数の画素電極が設けられた画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
【0050】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(即ち、基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。
【0051】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
【0052】
周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
【0053】
TFTアレイ基板10上には、対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域に、両基板間を上下導通材107で接続するための上下導通端子106が配置されている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
【0054】
図7において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜が形成されている。画素電極9aは、ITO(Indium Tin Oxide)膜などの透明導電膜からなり、配向膜は、ポリイミド膜などの有機膜からなる。他方、対向基板20上には、格子状又はストライプ状の遮光膜23が形成された後に、その全面に亘って対向電極21が設けられており、更には最上層部分に配向膜が形成されている。対向電極21は、ITO膜などの透明導電膜からなり、配向膜は、ポリイミド膜などの有機膜からなる。このように構成され、画素電極9aと対向電極21とが対面するように配置されたTFTアレイ基板10と対向基板20との間には、液晶層50が形成されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で所定の配向状態をとる。
【0055】
尚、図6及び図7に示したTFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等の駆動回路に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
【0056】
続いて、第1実施形態に係る電気光学装置の構成について、図8及び図9を参照して説明する。ここに図8は、第1実施形態に係る電気光学装置の構成を示す断面図であり、図9は、第1実施形態に係る電気光学装置の変形例を示す断面図である。尚、第1実施形態では、液晶パネルの液晶層がVA(Vertical Alignment)液晶である場合を例にとり説明する。
【0057】
図8において、第1実施形態に係る電気光学装置は、上述した液晶パネル100と、光学補償板300と、第1偏光板410と、第2偏光板420とを備えて構成されている。
【0058】
液晶パネル100は、TFTアレイ基板10及び対向基板20によって液晶層50が挟持されてなり、外部回路接続端子102(図1参照)には、フレキシブル基板200が電気的に接続されている。フレキシブル基板200における液晶パネル100と接続されない端部は、例えば図示しない回路基板等に電気的に接続される。
【0059】
第1偏光板410は、液晶パネル100に対する光源光の入射側に配置されており、第2偏光板420は、液晶パネル100に対する光源光の出射側に配置されている。第2偏光板420と液晶パネル100との間には、光学補償板300が配置されている。光学補償板300は、屈折率異方性が正である第1結晶板310と、屈折率異方性が負である第2結晶板320を備えており、光軸が液晶層50の液晶分子で生じる位相差を補償するように傾斜されている。より具体的には、例えば配向膜により付与されたプレチルトに起因して傾いている、配向膜との界面付近の液晶分子の傾きに対応するように傾斜している。尚、本実施形態のように液晶パネル100がVA液晶である場合には、例えば5°程度傾斜される。
【0060】
図9に示すように、光学補償板300は、液晶パネル100と第1偏光板410との間に配置されてもよい。即ち、光学補償板300は、液晶パネル100における光源光の入射側に配置されてもよいし、出射側に配置されてもよい。そして、光学補償板における第1結晶板310及び第2結晶板320は離れて配置されてもよい。このように配置する場合、例えば図に示すように、第1結晶板310を液晶パネル100の外表面に、防塵ガラスとして形成することもできる。第1結晶板310が防塵ガラスとして機能することで、液晶パネル100に塵や埃等が付着して画質が低下してしまうことを防止することができる。更に、第1結晶板310を水晶等のような放熱性の比較的高い材料から形成すれば、液晶パネル100の放熱板として機能させることも可能となる。第1結晶板310によって、液晶パネル100において発生する熱を効率的に放出することができれば、液晶パネルの故障や誤動作を、効果的に防止することが可能である。
【0061】
続いて、第1実施形態に係る電気光学装置の動作について、図8を参照して説明する。尚、以下では、光源光の経路に従って上述した各部の動作を説明する。
【0062】
図8において、光源光は、先ず第1偏光板410に入射される。第1偏光板410は、所定の方向に振動する光のみが通過できるように構成されている。よって、第1偏光板410に入射した光源光は直線偏光となる。
【0063】
第1偏光板410を通過した光源光は、液晶パネル100に入射する。即ち、対向基板20を通して、液晶層50に入射する。ここで、液晶層50には電圧が印加されており、液晶層50に含まれる液晶分子は印加された電圧によって傾きが変化している。しかしながら、例えば対向基板20及びTFTアレイ基板10との界面付近には、電圧をかけても完全に立ち上がらない液晶分子や、中間調表示の際に立ち上がりきらない液晶分子が存在する。よって、液晶層50に入射した光源光は、その界面付近において、位相がずれてしまうこととなる。
【0064】
液晶パネル100を通過した光は、光学補償板300に入射される。よって、液晶パネル100等において発生した位相差は適切に補償されることとなる。このため、第2偏光板420において、通過させる光が通過されない、或いは通過させない光が通過してしまうことを防止することができ、表示される画像のコントラストを高めることが可能である。
【0065】
以上説明したように、第1実施形態に係る電気光学装置によれば、光学補償板300が備えられているため、光源光に発生する位相差が適切に補償される。よって、高品質な画像を表示させることが可能である。
【0066】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る電気光学装置について、図10及び図11を参照して説明する。ここに図10は、第2実施形態に係る電気光学装置の構成を示す断面図であり、図11は、第2実施形態に係る電気光学装置の変形例を示す断面図である。尚、第2実施形態では、液晶パネルの液晶層がTN液晶である場合を例にとり説明する。また、図10及び図11においては、図8及び図9に示した第1実施形態に係る構成要素と同様の構成要素に同一の参照符号を付し、第1実施形態と重複する説明は適宜省略する。
【0067】
図10において、第2実施形態に係る電気光学装置では、光学補償板300が、液晶パネル100における光源光の入射側及び出射側に夫々配置されている。本実施形態のように、液晶パネル100がTN液晶である場合には、入射側及び出射側に光学補償板300を配置することで、補償効果をより高めることが可能である。
【0068】
2つの光学補償板300は、典型的には、液晶層50における光源光の入射側及び出射側のうち一方の界面における液晶分子の傾きに夫々対応するように配置される。即ち、異なる位置で発生する位相差を、2つの光学補償板300が別々に補償する。尚、液晶パネル100がTN液晶である場合には、図3及び図4で示した光軸の傾斜角度θは、例えば60°〜80°程度とされる。
【0069】
図11に示すように、光学補償板における第1結晶板310及び第2結晶板320は離れて配置されてもよい。このように配置する場合、例えば図に示すように、第1結晶板310を液晶パネル100の外表面に、防塵ガラスとして形成することもできる。更に、第1結晶板310を水晶等のような放熱性の比較的高い材料から形成すれば、液晶パネル100の放熱板として機能させることも可能となる。
【0070】
以上説明したように、第2実施形態に係る電気光学装置によれば、液晶パネルにおける光源光の入射側及び出射側に夫々光学補償板300が備えられているため、光源光に発生する位相差が適切に補償される。よって、高品質な画像を表示させることが可能である。
【0071】
<電子機器>
次に、上述した電気光学装置である液晶装置を各種の電子機器に適用する場合について説明する。ここに図12は、プロジェクタの構成例を示す平面図である。以下では、この液晶装置をライトバルブとして用いたプロジェクタについて説明する。
【0072】
図12に示されるように、プロジェクタ1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から射出された投射光は、ライトガイド1104内に配置された4枚のミラー1106及び2枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応するライトバルブとしての液晶パネル1110R、1110B及び1110Gに入射される。
【0073】
液晶パネル1110R、1110B及び1110Gの構成は、上述した液晶装置と同等であり、画像信号処理回路から供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるものである。そして、これらの液晶パネルによって変調された光は、ダイクロイックプリズム1112に3方向から入射される。このダイクロイックプリズム1112においては、R及びBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。従って、各色の画像が合成される結果、投射レンズ1114を介して、スクリーン等にカラー画像が投写されることとなる。
【0074】
ここで、各液晶パネル1110R、1110B及び1110Gによる表示像について着目すると、液晶パネル1110Gによる表示像は、液晶パネル1110R、1110Bによる表示像に対して左右反転することが必要となる。
【0075】
尚、液晶パネル1110R、1110B及び1110Gには、ダイクロイックミラー1108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルタを設ける必要はない。
【0076】
尚、図12を参照して説明した電子機器の他にも、モバイル型のパーソナルコンピュータや、携帯電話、液晶テレビや、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器に適用可能なのは言うまでもない。
【0077】
また、本発明は上述の各実施形態で説明した液晶装置以外にも反射型液晶装置(LCOS)、プラズマディスプレイ(PDP)、電界放出型ディスプレイ(FED、SED)、有機ELディスプレイ、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、電気泳動装置等にも適用可能である。
【0078】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う光学補償板、並びに該光学補償板を備えた電気光学装置及び電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施形態に係る光学補償板の構成を示す断面図である。
【図2】実施形態に係る光学補償板の変形例を示す断面図である。
【図3】光学補償板における光軸を概念的に示す斜視図(その1)である。
【図4】光学補償板における光軸を概念的に示す斜視図(その2)である。
【図5】光学補償板によって補償される位相差を示すグラフである。
【図6】電気光学装置における液晶パネルの全体構成を示す平面図である。
【図7】図6のH−H´線断面図である。
【図8】第1実施形態に係る電気光学装置の構成を示す断面図である。
【図9】第1実施形態に係る電気光学装置の変形例を示す断面図である。
【図10】第2実施形態に係る電気光学装置の構成を示す断面図である。
【図11】第2実施形態に係る電気光学装置の変形例を示す断面図である。
【図12】電気光学装置を適用した電子機器の一例たるプロジェクタの構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0080】
10…TFTアレイ基板、10a…画像表示領域、20…対向基板、50…液晶層、100…液晶パネル、200…フレキシブル基板、300…光学補償板、310…第1結晶板、320…第2結晶板、410…第1偏光板、420…第2偏光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率異方性が正及び負のうち一方の極性である第1結晶板と、
該第1結晶板に対向配置されると共に屈折率異方性が正及び負のうち他方の極性である第2結晶板と
を備え、
前記第1結晶板及び前記第2結晶板は、各々が有する位相差を互いに相殺することで全体が有する位相差を所望の位相差に近付ける屈折率及び厚みを夫々有する
ことを特徴とする光学補償板。
【請求項2】
前記第1結晶板及び前記第2結晶板は、光軸が互いに同じ向きとされていることを特徴とする請求項1に記載の光学補償板。
【請求項3】
前記第1結晶板及び前記第2結晶板は、互いに貼り合わせてあることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学補償板。
【請求項4】
前記第1結晶板及び前記第2結晶板のうち、前記極性が正である方は、水晶を含んでいることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光学補償板。
【請求項5】
前記第1結晶板及び前記第2結晶板のうち、前記極性が負である方は、サファイアを含んでいることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の光学補償板。
【請求項6】
一対の第1及び第2基板間に液晶層が挟持されてなる液晶パネルと、
光軸が前記液晶層の液晶分子の傾きに対応するように傾斜された、請求項1から5のいずれか一項に記載の光学補償板と
を備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電気光学装置を具備してなることを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−139620(P2009−139620A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315589(P2007−315589)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】