説明

光学計測システムを使用した誘電体薄膜の弾性係数の測定

光学計測システム(50)は、二酸化ケイ素、金属または半導体基板を覆う炭素ドープ酸化物のような光学的に透明な誘電体膜(310)の弾性係数を求めるための、データ解析方法を備える。屈折率は、偏光解析器で測定され、レーザ光線の波長は、レーザ分光計を使用して測定される。屈折角は、ウエハ表面に焦点を定めた光パルス(325)を導き、ウエハをz方向に移動して第1の一組の座標(x1, y1, z1)(330)を測定し、ウエハ表面に光パルス(325)を導いて第2の一組の座標(x2, y2, z2)を測定することによって求められ、これらの座標を用いて入射角を計算し、計算した入射角から屈折角を計算し、計算した屈折角から音速vを求めて、求めた音速vを用いて体積弾性係数を計算する。ツールごとの得られる結果の変動を約0.5%以下に抑えるために、ハードウェアの較正および光学計測システムの調整も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して光学計測の方法および装置に関し、より詳細には、誘電体薄膜の弾性係数の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体技術が高度なものになるにつれ、多層金属化プロセスにおける支配的な金属としてのアルミニウムからの脱却が顕著になってきた。半導体チップの製造は、AlCu/SiO2ベースのインターコネクト技術からCu/Low k ILD(Low dielectric constant Interlayer Dielectrics;低誘電率中間層誘電体)に移り変わるにつれ、層間剥離、剥脱、および割れのような、集積化に関する複数の問題が目立つようになった。すなわち、これらの問題は、誘電層の機械的強度の正確な測定および制御が必要であることを表している。
【0003】
ナノ圧子および曲げ試験は、不透明な材料および透明な材料の両方の弾性係数を求めるために一般的に使用される方法である。ナノ圧子では、圧子に負荷を加えてそれを材料に押しつける。圧子が材料に押しつけられるときの、圧子が材料に入り込む量を測定する。圧子の押しのけ量の測定と並行して、圧子に加えた負荷を測定する。しかし、圧子を薄膜に押しつけると、薄膜が変形するだけでなく、基板も同様に変形してしまう。曲げ試験では、歪みを加えて材料の破損特性を判定する。
【0004】
これらの方法を薄膜に適用した場合、薄膜の大きさがミクロンやサブミクロンの寸法に縮小されたときに、その性質を正確に表すことができない。またナノ圧子および曲げ試験は、どちらも破壊的で、実際に接触するものであり、エラーが多くスループットも低いので、半導体プロセスの制御には好適でない。これらの方法の他の不利な点は、代表的なプロセスの設計基準が許容する試験領域よりも大きな領域が必要なことである。
【0005】
これらのことから明らかなように、半導体業界で使用される誘電体膜の弾性係数の正確な測定および制御のために、半導体製造のスループット要件に適合し、非破壊的で、非接触、小スポット、高スループット、且つ高精度な方法が必要である。
【特許文献1】米国特許第6,621,582号公報
【特許文献2】米国特許第5,748,318号公報
【特許文献3】米国特許第5,706,094号公報
【特許文献4】米国特許第5,844,684号公報
【特許文献5】米国特許第5,864,393号公報
【特許文献6】米国特許第6,008,906号公報
【特許文献7】米国特許第6,025,918号公報
【特許文献8】米国特許第6,038,026号公報
【好適な具現化のまとめ】
【0006】
これらの教示を現時点で好適に具現化することにより、前述の、および他の問題が解決され、他の利点が実現される。
【0007】
光学計測システムを使用して、二酸化ケイ素やBlack DiamondTM、CoralTM、金属、半導体基板を覆う炭素ドープ酸化物のような光学的に透明な誘電体膜の弾性係数を求める方法を提供する。ウエハ表面に焦点を定めた光パルス(ポンプ)は、誘電体膜を介して移動する音波を発生させる。一つの側面では、同じスポットに焦点を定めた、同じまたは異なるレーザからの第2の光パルス(プローブ)で、ウエハの光反射率の変化を測定する。反射プローブビームは、誘電体/基板インターフェースからの構成要素と、誘電体膜内を伝播する音波からの構成要素との、2つの構成要素を含む。反射プローブビームのこれらの2つの構成要素の干渉周期が誘電層の弾性係数を求めるために用いられる。別の側面では、基準サンプル(reference sample)の2つのスポットに異なる誘電体膜があるような、第1および第2のスポットの光反射率が異なる表面に沿って、第2の光パルスを異なるスポットに導くことによって、同じ結果が得られる。
【0008】
データ解析法によって、測定信号から、例えば±0.5%の精度で周期を求めることが可能になる。本発明は、異なるツールを用いた場合でも結果の変動を約0.5%以下に抑えるために、光学計測システムのためのハードウェアの較正および調整法をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
これらの教示の前述および他の側面は、以下の「好適な具現化の詳細な説明」を添付図面とともに読むことによってより明らかになる。
【0010】
【図1】光学計測システムのブロック図である。
【0011】
【図2】光学経路が示される光音響膜厚測定システムのブロック図である。
【0012】
【図3】本発明による透明な中間層誘電体を通るときのポンプパルスを示す図である。
【0013】
【図4】本発明による計測システムを構成する方法を示すフローチャートである。
【好適な具現化の詳細な説明】
【0014】
本発明は、光学計測システムを使用して、不透明な基板上の光学的に透明な誘電体膜の弾性係数を測定するための方法を提供する。これに限定されないが、1つの好適なタイプの光学計測システムは、MetaPULSETMとして公知であり、本特許出願書の譲受人から入手可能である。米国特許第6,621,582号、"Optical metrology system and method employing laser-server supplying laser energy to distributed slave metrology heads"、および米国特許第5,748,318号、"Optical stress generator and detector"も例として参照することができる。
【0015】
はじめに図1を参照する。測定ステージ60と、ウエハハンドリングシステム65と、測定システム75と、カセットステーション70と、コンピュータ制御器55と、通信線80とを含む計測システム50が示されている。コンピュータ制御器(制御器)55は、一般に入手可能なパーソナルコンピュータシステムであってよく、通信線80を経て、測定システム75と、測定ステージ60と、ロボットおよびウエハハンドリングシステム65と、カセットステーション70とに電気的に接続される。制御器55は、本発明のステップを行うことができるコンピュータ可読媒体(図示せず)に組み込まれるソフトウェアをさらに含む。
【0016】
動作中に、制御器55は、ロボットおよびウエハハンドリングシステム65に命令を送信して、カセットステーション70からウエハを取り出して、ウエハを測定ステージ60上に配置する。制御器55は、次いで測定ステージ60にコマンドを発行して、所定の位置で測定が行えるように、測定システムに対してウエハを配置する。制御器55は、次いで測定システム75にコマンドを発行して、測定および測定結果の表示を行う。測定が終了すると、制御器55は、ロボットおよびウエハハンドリングシステム65に命令を発行して、ウエハをカセットステーション70に戻す。
【0017】
測定ステージ60は、測定のためにウエハが配置される試験表面と、3自由度でウエハを操作するための移動ステージとを含む。
【0018】
図2は、光音響測定システム75の概略図であり、図2の構成では、パルス光源100と、サンプルステージ220と、ステージ/真空チャック230と、第1のプローブステアリングミラー180と、ポンプビームステアリングミラー150と、第1のステアリングミラー110と、ポンプ-プローブビームスプリッタ120と、偏波器135と、電気光学変調器(Electro-Optic Modulator; EOM)130とを含む。加えて、光音響システム75は、プローブ逆反射体160と、遅延調査ステージ170と、ディザーEOM205と、ビームダンプ242と、検出器250とを含む。さらに、光音響測定システム75は、線形ポンプ識別偏波器245と、高調波発生器波長セレクタ(波長セレクタ)102と、投影レンズ210と、コリメーティングレンズ240と、ポンプ逆反射体140と、第2のプローブステアリングミラー190とを含む。
【0019】
パルス光源100は、80MHzで動作し、800nmで光を放射するチタン-サファイヤレーザであってよい。レーザは、代わりに、周波数倍増複屈折結晶で構成して400nmでレーザ光線105を放射することもできる。異なる波長および異なる周波数で動作する、他のタイプのレーザも使用することができる。
【0020】
動作中に、パルス光源100は、第1のステアリングミラー110によってリダイレクトされる、レーザ光線105を放射する。ポンププローブビームスプリッタ120は、入射レーザ光線パルス(ピコ秒またはより短い持続時間が好ましい)を、ポンプビーム125Aと、ポンプビーム125Bとに分割する。電気光学変調器(EOM)130は、例えば10kHz乃至10MHzで、ポンプビーム125Aの水平および垂直間の分極を回転させる。偏波器135は、ポンプビーム125Aの分極回転を振幅変調ポンプビーム200に切り換える。ポンプ逆反射体140およびポンプビームステアリングミラー150は、変調ポンプビーム200をディザーEOM205上へ偏向させる。
【0021】
プローブビーム125Bは、遅延走査ステージ170を使用して、変調ポンプビーム200の長さに対するプローブビーム125Bの光路の長さを変更する、プローブ逆反射体160に伝送されるので、時間遅延したプローブビーム195を形成する。遅延プローブビーム195および変調ポンプビーム200は、ディザーEOM205を通過し、次いで投影レンズ210を通過し、最後にサンプル220上に伝播する。ステージ/真空チャック230は、サンプルウエハの位置決めユニットとしての役割を果たし、高さ(z軸)、位置(xおよびy軸)、および傾斜(T)の調整が可能な複数の自由度のステージであり、変調ポンプビーム200および遅延プローブビーム195に対してサンプルの一部分をモーター制御して位置決めできることが好ましい。代わりに、または加えて、ステージは、自由に回転運動するものであってよい。z軸は、ポンプおよびプローブビームの焦点領域にサンプルを垂直に平行移動させ、xおよびy軸は、焦点面に平行にサンプルを平行移動させ、傾斜軸は、サンプル220の方向を調整して、プローブビームの所望の入射角を定めるために使用する。
【0022】
変調ポンプビーム200および遅延プローブビーム195は、変調ポンプビーム200がビームダンプ242によって集められるコリメーティングレンズ240を介して伝播する。ポンプ識別偏波器245は、変調ポンプビーム200から反射プローブビーム225を分離する。検出器250は、反射プローブビーム225を信号対遅延ステージ170の位置に切り換える。この信号は、解析(例えば膜厚を求める)のために復調されて制御器55(図1に示す)に送信される。
【0023】
膜厚を求める、および他の膜の特性を求めるために解析を行うための現在の好適な技術には次のような米国特許が挙げられる:第4,710,030号、"Optical Generator and Detector of Stress Pulses";第5,706,094号、"Ultrafast Optical Technique for the Characterization of Altered Materials";第5,748,318号、"Optical Stress Generator and Detector";第5,844,684号、"Optical Method for Determining the Mechanical Properties of Material";第5,864,393号、"Optical Method for the Determination of Stress in Thin Films";第6,008,906号、"Optical Method for the Characterization of the Electrical Properties of Semiconductors and Insulating Films";第6,025,918号、"Apparatus and Method for Measurement of the Mechanical Properties and Electromigration of Thin Films";および、第6,038,026号、"Apparatus and Method for the Determination of Grain Size in Thin Films"。これらは全て参照することにより本願明細書にその全体が組み込まれる。
【0024】
図3Aおよび3B(集合的に図3と称する)を参照する。光学計測システム50は、不透明な基板上の光学的に透明な誘電体膜の弾性係数を測定するように構成される。誘電体膜310を通過して、基板表面の5×7ミクロン2のスポットに焦点を定めた光パルス(ポンプ)は、誘電体膜310を伝播する、破線で示された音波320を発生する。同じスポットに焦点を定めた同じまたは異なるレーザからの第2の光パルス(プローブ)325は、音波320によって変調された誘電体膜310の光反射率を測定する。反射プローブビーム325Aは、誘電体/基板インターフェースからの構成要素と、誘電層310内を移動するときの音波320からの構成要素との、2つの構成要素を有する。音響が誘電層310内を移動すると、プローブビーム325を反射する光学的特性の小さな局所的変化が生じる。プローブビームのこれらの2つの構成要素は、検出器330で干渉して、一定周期で振動する信号をもたらす。振動の周期は、プローブビーム325の波長、プローブビーム325の入射角、誘電体膜310における音速、および誘電体膜310の屈折率に依存する。図3Aは、反射プローブビーム325がそれ自体によって相殺的に干渉する場合を示す。図3Bは、反射プローブビーム325Aが建設的に干渉する場合を示す。
【0025】
振動の周期を用いて、次式を用いた誘電層310における音速vを求めることができる。
〔式1〕

ここで、nは、誘電層310の屈折率であり、τは、干渉振動の周期であり、λは、プローブビーム325の波長であり、θは、屈折角である。
【0026】
誘電体膜310の弾性剛性は、c1111 =ρv2によって表される。誘電体膜のヤング率(Y)は、次式で計算することができる。
〔式2〕

同様に、誘電体膜310の体積弾性係数は、次式で計算することができる。
〔式3〕

ここで、ρは、誘電体膜310の密度であり、νは、誘電体膜310のポアソン比である。
【0027】
加えて、半導体プロセスの監視に必要な精度および再現性を有し、一方でツールごとの結果の変動を最小限に抑える弾性係数を求めるために、図4に示されるような方法は、式1の各パラメータの値を求めるための複数のハードウェア調整を備える。
【0028】
先験的に公知でない場合、屈折率は、偏光解析器で測定することが可能であり、レーザ光線の波長は、計測システムに統合されたレーザ分光計420を使用して測定することが可能である。0.1%を上回る波長測定精度は、市販の小型分光計(例、Ocean Optics model S2000)によって達成することができ、式1によって見出すことができる(この精度は、係数測定において0.5%の精度を達成するのに十分である)。屈折角は、以下の方法によって求められる。
【0029】
SiO2のパターンウエハ、または天然および1000オングストロームのSiO2などの対照的な光反射率の2つの異なる領域を有する参照チップ(SiO2のパターンウエハから切断)を、測定に使用することもできる。プローブビームは、天然の酸化物の領域に存在する1000オングストロームのSiO2を有する測定領域(またはその逆)の、xおよびyの両方向の周縁部にわたって走査する。レーザの反射率は、これらの2つの膜の間で異なるので、走査によって、2つの曲線(1つはx方向に走査したもの、もう1つはy方向に走査したもの)が生成される。各曲線を相補的なエラー関数(レーザ光線の強度がガウス分布を有するという仮定に基づく)にフィットさせることによって、xおよびyの両方向におけるスポットの位置およびサイズを得ることができる。スポットの位置(x, y)は、この方法によってz方向の異なる位置で検出される。ブロック445の入射角(Angle of Incidence; AOI)は、次式で計算される。

【0030】
AOIの測定精度を向上させるために、z方向における連続する6または7つの位置に対するレーザ光線の位置(x, y)を測定し、線形データモデリングを用いてノイズを減じることができる。1つの時間設定によって、ユーザーが介入せずに、これらの角度および波長の測定を自動的に行うことができる。
【0031】
好適な実施形態では、略法線の入射角を使用することが可能である。ブロック50で示される現在の好適な光学計測システムは、法線に対して約40度のプローブの入射角で動作する。プローブの入射角が小さくなる(より膜の法線に近づく)と、式1の角度依存の項は、角度の不安定性に対してあまり敏感でなくなり、システム間の測定のマッチングが改善される。
【0032】
離散フーリエ変換(Discrete Fourier Transform; DFT)460が、周期を得るための信号の振動数成分の解析に用いられることが好ましい。DFT460は、高周波雑音における正弦波の周波数を見つけるのに十分に適している。しかし、DFT460は、本来循環的であり、はじめと終わりが一致しない場合には、「スペクトル漏れ」(スペクトルの不鮮明化)と呼ばれるアーチファクトが生じる。別のアーチファクトは、スカロッピングまたは「杭垣」効果('picket fence' effect)として公知である。これは、波の実際の周波数がDFT460の周波数分解能と一致しないときにもたらされる。DFT460の周波数分解能は、サンプリング周波数fSとデジタル化されたサンプルNの数の比である。中間層誘電体からの信号が、インターフェースでの音波反射および音響減衰によって変動する(すなわち、経時的に変化する)ので、測定に長い時間をかけて任意にNを増加させることは困難である。しかし、周波数領域におけるSincまたは周波数保存補間法は、周波数領域において単純にゼロ詰めすることによって時間領域で達成することができる。
【0033】
DFT460に関連するアーチファクトを防止するために、以下のアルゴリズムを用いることが好ましい。記録されたデータは、矩形関数またはボックスカー関数を用いて、整数倍の波長が含まれるように、窓関数がかけられる。DFT460を行う。最大振幅が生じる周波数に等しい中心周波数と、中心周波数の関数である狭帯域幅を有する理想的なフィルタを適用する。周波数領域におけるSinc補間法を得られたスペクトルに行い、ピーク精緻化アルゴリズムを用いて、振動の周波数の高精度な値を見つける。
【0034】
音速に関する情報を担持する反射プローブビームの構成要素からもたらされる振動の構成要素に加えて、光学計測システムによって測定した信号は、ポンプパルスによって供給される熱エネルギーの消散による「バックグラウンド」コントリビューションを含む。この構成要素は、経時的にゆっくりと壊変する。この構成要素は、信号の非定常化の更なる一因となり、DFT460の方法を用いて得られる精度を低下させる。加えて、このバックグラウンドの構成要素は、光学的配列の細部に依存し、ツールごとの変動の一因となる。サーマルバックグラウンドは、信号に指数または多項式関数をフィットさせて、それを差し引くことによって、差し引くことができる。
【0035】
細密な周波数分解能および測定の感度を得るために、詰めたデータセットにSinc補間を行うが、これは数倍のデータポイントを含むことが可能である。Sinc補間法は、データセットの増加により時間がかかるようになる場合がある。
【0036】
以下を含む、より高速なアルゴリズムを用いることができる。サーマルバックグラウンドは、未加工のデータに低次多項式関数をフィットさせることによって差し引かれる。得られる信号は、理想的周波数フィルタリングを使用することによってノイズ除去される。理想的周波数フィルタリングは、DFT変換460を適用すること、予め指定した範囲内の最大強度の周波数を見つけること、最大強度の構成要素を囲む狭帯域の外側のあらゆる構成要素を取り除くこと、および逆DFTを計算して時間領域内のノイズ除去したデータを得ること、を伴う。
【0037】
この信号は単一の周波数振動で構成されるので、信号の周期は、ピーク精緻化アルゴリズムを用いて、その最大および最小の時間を見つけることによって求めることができる。これらの時間は、信号の時間サンプリングによって得られる解像度にわたる改善された解像度によって得ることができる。
【0038】
ピーク間の分離は、少なくともkminカウントによって分離された複数対のピークにわたって平均することができ、ピーク時間によって昇順にソートされた一組のM極値時間{ei}に対して以下の式を用いて振動周期Tが得られる:

接近したピークは、その解答をより大きく変動させる一因となるので、それらを可能な限り除外することが重要である。
【0039】
別様には、ピーク時間対ピーク数を線形フィッティングさせることによって、傾斜および切片を得ることが可能である。傾斜は、振動周期の片側半分に等しい。
【0040】
ILD (Inter Layer Dielectric; 層間絶縁)膜がより薄く、膜の底部からの第1の音響反射の前に、少数しか、または全く振動周期が観察することができないような状況では、上述の方法は十分であるとはいえない。この状況では、MUSICまたはDMUSICアルゴリズムを用いるか、または代わりに、単一の周波数正弦曲線を有する信号のいくつかの非線形フィッティングを用いて、その振幅、フェーズ、および周波数を最適化して、データに最もフィットするものを得ることができる。当該の最適化の目標関数は、測定した信号とフィットした信号との間の差異の二乗の合計として定義される通常のFit Errorとするか、または測定およびフィットした信号の相互関係とすることができる。
【0041】
密度は、次式によって、誘電体/Siインターフェースにおいて入射および反射した振動間の振幅変化を測定することによって求めることができる(470):
〔式4〕

〔式5〕

ここで、Rは、反射係数であり、Aは、入射波振幅であり、Bは、反射波振幅であり、Zは、固有音響インピーダンスである。固有音響インピーダンスはSi基板として公知のものとする。ヤング率または体積弾性係数の計算には、公表された値のポアソン比を使用することができる。
【0042】
本発明の教示によって解決される問題に対処する別の技術は、狭帯域幅/長パルスシステムを含むことに留意されたい。チタンサファイヤレーザによって発生する100fsecのレーザパルスは、一般に、800nmで約10nmの帯域幅を有し、倍化パルスは、約3nmの帯域幅を有する。約1psecの長いパルス幅を使用してこの技術を実行することが可能であり、これらのパルスは非常に小さな帯域幅(<1nm)を有する。より小さな帯域幅は、波長の範囲を制限することによって、式1を通じた技術の精度を向上させる。
【0043】
別の代替案として、測定信号の振動的な性質が微分形の測定に役に立つことから、微分モード係数測定システム(Derivative Mode Modulus Measurement System)の使用が挙げられる(米国特許第5,748,318号を参照のこと)。これにより信号対雑音比が向上し、再現性の向上および測定時間の短縮(より高いスループット)がもたらされる。
【0044】
更なる代替案には、傾斜補正の使用が挙げられる。光学ヘッドに対するウエハの傾斜は、式1での計算において角度の不安定性の一因となる。当該の傾斜は、サンプル、チャック、またはステージの不均一性によって、サンプル全体の測定位置によって異なる可能性がある。傾斜の測定は、例えば標準的なレーザダイオードおよび位置検知検出器を使用して、これらの影響を補正するために、各サイトで行うことが可能である。
【0045】
加えて、公知の音響および光学的特性を有する1つ以上の最適化された「検査サンプル」(例、SiO2/Si、ベアSi、およびSiN/Si)を使用して、システム間の再現性および/またはマッチングを改善した複数の光学計測システムを較正および/または監視することが可能である。当該のサンプルは、定期的にツールに装填するか、またはツールの内部に備えて定期的に監視することが可能である。
【0046】
別の代替案には、複数の角度のプローブビームシステムの使用が挙げられる。複数の公知のプローブ角度でサンプルを測定することによって、式1の屈折率nの単独の計算が可能になる。これによって、システムは、音速に影響を与える可能性のあるプロセス変動と、屈折率に影響を与える可能性のあるプロセス変動を一意的に識別することが可能になる。
【0047】
更なる代替案には、スポットサイズおよびポンプ/プローブビーム強度の一致が挙げられる。先の研究では、ほとんどの膜の測定結果が、ポンプおよびプローブスポットのサイズおよび出力にわずかに経験的に依存することを提案している。同様に、これらのシステムパラメータのある程度の制御は、係数測定のマッチングに好ましい場合がある。加えて、極めて平坦なチャック(<0.01度)を有する入射プローブの角度の不安定性を減じることによって、式1および2を通じたツールの一致がもたらされる。
【0048】
膜温度補償は、別の代替案である。音速の温度依存に関する実験に基づく文献によれば、多数の膜は、10-4 1/Cオーダーの温度係数を有する。したがって、膜温度がツール間で同程度でない限り、測定した音速における差異が予想される。温度差は、レーザパルスの吸収の結果として、周囲温度または膜内の温度の上昇による場合がある。較正テーブルは、膜の速度および屈折率温度係数、周囲温度の正確な測定、測定した量(ポンプおよびプローブレーザの出力、スポットのサイズ、および膜の反射率)を踏まえた膜温度の上昇の計算に基づいて、各材料に対するツールを一致させるように作成することが可能である。
【0049】
さらに、好適な実施形態に関して記述されているが、当業者には本発明の教示に複数の変更が生じる場合があり、それでも本発明の範囲内にあることを理解されたい。本方法は、例によって誘電体被覆膜に制限するものではなく、Cu/ILDダマシン・インターコネクトにあるような、金属/誘電体パターン構造の弾性係数に対する有効な値の測定に適用することもできる。
【0050】
したがって、上述の好適な実施形態のコンテキストで説明しているが、これらの実施形態は、本発明の実施において限定的な意味に解釈されるべきではないと理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学計測の方法であって、
横方向に基準サンプルを走査して前記基準サンプルの反射を生じさせるステップと、
第1の一組の反射座標(x1, y1)の位置を特定するステップと、
z方向に前記基準サンプルを移動させるステップと、
横方向に前記基準サンプルを走査して第2の一組の反射座標(x2, y2)の位置を特定するステップと、
前記位置を特定した第1および第2の一組の座標から入射角を計算するステップと、を含む、光学計測方法。
【請求項2】
前記計算した入射角を用いて屈折角を計算するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基準サンプルの少なくとも一部分における前記計算した屈折角を用いて音速vを求めるステップと、前記求めた音速vを用いて前記基準サンプルの前記部分の弾性係数を計算するステップと、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
光学計測の方法であって、
サンプル表面に第1の光パルスを導くことと、
前記第1の光パルスの反射部分を使用して、第1の一組の座標(x1, y1, z1)を求め、
z方向に前記サンプルを移動させることと、
前記サンプル表面上に第2の光パルスを導くことと、
前記第2の光パルスの反射部分を使用して、第2の一組の座標(x2, y2, z2)を求めることと、
前記第1および第2の一組の座標から入射角を計算することと、
前記計算した入射角を用いて、屈折角を計算することと、
前記計算した屈折角を用いて、前記サンプル表面の少なくとも一部分における音速vを求めることと、
前記求めた音速vを用いて、前記サンプル表面の前記部分の弾性係数を求めることと、
を含む、光学計測の方法。
【請求項5】
前記屈折角は、スネル(Snell)の法則を用いて前記入射角から計算される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記入射角は、

を用いて計算される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプル表面は、少なくとも2つの異なる膜を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
光反射率は、前記少なくとも2つの異なる膜の間で異なる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記入射角を求めるために、前記光パルスは、前記z方向の様々な位置においてx方向の曲線およびy方向の曲線を生成するように、少なくとも2つの異なる膜の周縁部をx方向およびy方向に走査する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記サンプルは、その表面に少なくとも1つの誘電体膜が配置された半導体ウエハを備える、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記誘電体膜は、SiO2を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記誘電体膜は、ポリマーを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記誘電体膜は、炭素ドープ酸化物を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
光学計測システムのデータ解析方法であって、
サンプルの屈折率を求めることと
レーザ光線の波長を求めることと、
前記サンプルにおける、第1の反射率を有する第1の部分の表面を第1の光パルスでマーキングすることによって、前記サンプルの屈折角を求めることと、
前記第1の光パルスの反射部分を用いて、前記システムから第1の一組の座標(x1 , y1, z1)を読み取ることと、
前記サンプルにおける、第2の反射率を有する第2の部分の表面を第2の光パルスでマーキングすることと、
前記第2の光パルスの反射部分を用いて、前記システムから第2の一組の座標(x2 , y2, z2)を読み取ることと、
前記第1および第2の一組の座標から入射角を計算することと、
前記計算した入射角を用いて、屈折角を計算することと、
前記計算した屈折角を用いて、前記サンプル表面の少なくとも一部分における音速vを求めることと、
前記求めた音速を用いて、前記サンプル表面の前記部分の弾性係数を求めることと、を含む、データ解析方法。
【請求項15】
前記入射角は、

を用いて計算される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記入射角の測定精度を向上させるために、複数のマークを取得して平均する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
次式

を用いて膜層における音速vを求めるために発振信号が使用され、ここでnは膜層の屈折率であり、τは干渉振動の周期であり、λは前記レーザ光線の波長であり、θは前記屈折角である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
信号の周波数成分を解析して周期を求めるために離散フーリエ変換アルゴリズムが用いられ、該アルゴリズムが、
整数倍の波長が現れるように、矩形関数またはボックスカー関数を用いて記録されたデータに窓関数をかけることと、前記離散フーリエ変換を行うことと、
最大振幅が生じる周波数に等しい中心周波数を有する理想的なフィルタを適用することと、
得られたスペクトルに行われる周波数領域におけるSinc補間と、
振動の周波数の正確な値を見つけるためのピーク改善アルゴリズムと、
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
密度が、R = B/A = (Z基板-Z誘電体)/(Z基板+Z誘電体)およびρ = Z/vを用いて、誘電体における入射及び反射オシレーションの間の振幅変動を測定することによって求められ、ここでRは反射係数であり、Aは入射波の振幅であり、Bは反射波の振幅であり、Zは固有音響インピーダンスである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
生のデータセットに低次多項式関数を適用することによってサーマルノイズを差し引くことと、
理想的な周波数フィルタリングを用いて、得られた信号からノイズを取り除くことと、
ピーク精緻化アルゴリズムを用いて信号の最長および最短時間を見つけて、前記信号の振動周期Tを得ることと、
を含むアルゴリズムを用いて周波数分解能を精緻化させる、請求項14に記載の方法。ただし前記振動周期Tは 、

を用いて得られる。
【請求項21】
光学計測システムであって、
基準サンプルをxおよびy軸に従って横方向にビームで走査して、前記基準サンプルの反射を生じさせると共に、前記ビームに対してz軸に沿って前記基準サンプルを移動させるための光源サブシステムと、
第1のz軸および第2のz軸の位置それぞれに対応する、第1の一組の反射座標(x1, y1)および第2の一組の反射座標(x2, y2)の位置を特定するための検出器と、
内蔵プログラムの制御下で動作して前記ビームの入射角を計算するプロセッサと、を備える光学計測システム。
【請求項22】
前記プロセッサは、前記基準サンプルに関連する屈折角を求めるようにさらに動作する、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記プロセッサは、前記求めた屈折角を用いて前記基準サンプルの少なくとも一部分における音速vと、前記求めた音速vを用いて前記基準サンプルの少なくとも一部分における弾性係数と、をさらに求める、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記基準サンプルは、パターン化された基準サンプルを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項25】
光学計測システムであって、
複数の自由度を有するサンプルステージと、
検出器と、
レーザと、
第1の光パルスの反射部分を使用して前記システムから第1の組の座標(x1, y1, z1)を読み取り、z方向に前記サンプルを移動させて第2の光パルスで前記サンプルをマーキングすると共に前記第2の光パルスの反射部分を使用して前記システムから第2の一組の座標(x2, y2, z2)を読み取ることによって、屈折角を求めるために、前記第1の光パルスで前記サンプルをマーキングするための光パルス源を提供する、少なくとも1つの光源と、
前記第1および第2の一組の座標から入射角を計算し、前記計算した入射角から屈折角を計算し、前記計算した屈折角を用いて音速vを求め、前記求めた音速を用いて前記サンプルの弾性係数を求めるための、前記検出器に接続されたデータ解析システムと、を備える、光学計測システム。
【請求項26】
前記データ解析システムは、

を用いる、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記屈折率は、偏光解析器を使用して測定される、請求項25に記載のシステム。
【請求項28】
前記レーザの波長は、分光計を使用して測定される、請求項25に記載のシステム。
【請求項29】
前記光パルス源を使用して、前記入射角の測定精度を向上させるために平均される複数のマークを獲得する、請求項25に記載の光学計測システム。
【請求項30】
前記サンプルは、少なくとも2つの異なる膜を含む、請求項25に記載の光学計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−516229(P2008−516229A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535661(P2007−535661)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/033405
【国際公開番号】WO2006/041493
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(507103868)ルドルフテクノロジーズ  インコーポレイテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】Rudolph Technologies, Inc.
【住所又は居所原語表記】One Rudolph Road, Flanders, NJ 07836 United States of America
【出願人】(593096712)インテル コーポレイション (931)
【Fターム(参考)】