説明

光学記録媒体用コーティング剤及び光学記録媒体

【課題】光学記録媒体への塗布性に優れるうえ、塗膜の透明性、密着性、耐環境性に優れ、かつ、硬化収縮率が低く光学記録媒体の反りを低減することができる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物からなる光学記録媒体用コーティング剤を提供すること。
【解決手段】
一般式(1)で示されるウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物からなることを特徴とする光学記録媒体用コーティング剤。【化1】


(ここで、R1は水素又はメチル基であり、R2は炭素数1〜5のアルキレン基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物からなる光学記録媒体用コーティング剤に関し、より詳しくは、光学記録媒体への塗布性に優れるうえ、塗膜の透明性、密着性、耐湿性などの耐環境性に優れ、かつ、硬化収縮率が低く光学記録媒体の反りを低減することができる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物からなる光学記録媒体用コーティング剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、各種基材へのコーティング剤や接着剤等に幅広く用いられている。また、光学用途にも広く使用されており、その具体例として、光学記録媒体における情報記録層の保護膜が挙げられ、近年はブルーレーザーを用いる高密度型光ディスクへの適用も検討されている。
【0003】
前記高密度型光ディスクは、具体的には、プラスチック等で形成される透明又は不透明の支持体基板上に記録膜を形成し、次いでこの記録膜上に約100μmの透明な保護膜を積層してなり、保護膜を通して記録光及び/又は再生光が入射するように使用される光ディスクである。
【0004】
それらの光ディスクは、保護膜を形成する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化収縮率が大きいために反りが生じて記録及び/又は再生ができない;硬化物層のブルーレーザーに対する光線透過率が低く記録及び/又は再生を十分にできない;等といった課題がある。特に、反りに関しては、0.1mmを超えると記録及び/又は再生時に誤作動が多発する。
【0005】
そこで上記課題の対策として、例えばウレタン(メタ)アクリレートを用いた硬化収縮率の低い保護層とシリカ含有ハードコート層の積層体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、アルコキシシランオリゴマーの加水分解物からなるシリカ粒子を含む無機成分とエチレン性不飽和化合物及び/又はそのオリゴマーとの有機無機ハイブット組成物の提案もなされている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
更に、ポリオキシプロピレングリコール(a1)及び/又は脂肪族コポリカーボネートジオール(a2)、カルボキシル基含有ポリオール(a3)を含むポリオール成分(A)、ポリイソシアネート成分(B)及び水酸基含有(メタ)アクリレート成分(C)を反応させてなるウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]、エチレン性不飽和化合物[II]、シリカ粒子[III]を含有してなる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物からなる光学記録媒体用コーティング剤も提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−245672号公報
【特許文献2】特開2004−169028号公報
【特許文献3】特開2006−241234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1の開示技術では、保護層のみでは硬度が不十分であり、保護層とハードコート層を積層するため反りやすく、またコストの点等で未だ実用性に乏しいものであった。
【0010】
また、上記特許文献2の開示技術では、厚膜化した場合でも十分な強度と低硬化収縮性とを有するものの、基材との密着性、耐環境性、高表面硬度を全て満足させることが難しく、かつ十分な塗布作業性を確保するために必要な低粘度化が困難である点において、まだまだ満足の行くものではなく、更なる改良が望まれている。
【0011】
更に、上記特許文献1〜3の開示技術では、シリカ粒子が凝集しやすく、記録光及び/又は再生時に光散乱による誤作動を生じやすいという点で、更なる改良が望まれている。
【0012】
このように、従来知られている、光学記録媒体の保護膜に用いられるような透明性を有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物では、厚膜化したときの硬化収縮や透明性に問題があったり、或いは、基材との密着性、表面硬度、耐湿性などの耐環境性などの問題があった。
【0013】
このため、従来の保護膜が有するような透明性、耐環境性、高密着性、塗布作業性を有しつつ、かつ、厚膜化した場合でも十分な低硬化収縮性を有し、光学記録媒体の反りを低減することができる硬化性樹脂組成物の出現が望まれていた。
【0014】
そこで、本発明はこのような背景下において、光学記録媒体への塗布性に優れるうえ、塗膜の透明性、密着性、表面硬度、耐環境性に優れ、かつ、硬化収縮率が低く光学記録媒体の反りを低減することができる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物からなる光学記録媒体用コーティング剤、及び、このような光学記録媒体用コーティング剤の硬化物層を有する光学記録媒体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
しかるに、本発明者等はかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物からなる光学記録媒体用コーティング剤において、特定構造のウレタン(メタ)アクリレート系化合物を含有させることにより、塗布性に加え、塗膜の透明性、密着性、耐環境性に優れ、かつ、硬化収縮率が低く光学記録媒体の反りを低減することができることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
即ち、本発明の要旨は、一般式(1)で示されるウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物からなる光学記録媒体用コーティング剤に関するものである。
【0017】
【化1】

(ここで、R1は水素又はメチル基であり、R2は炭素数1〜5のアルキレン基である。)
【0018】
更に本発明は、上記の光学記録媒体用コーティング剤からなる硬化物層を有する光学記録媒体をも提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、特定のウレタン(メタ)アクリレート系化合物を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いるため、光学記録媒体への塗布性に加え、塗膜の透明性、密着性、耐環境性に優れ、かつ、硬化収縮率が低く光学記録媒体の反りを低減することができるといった効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸又はメタクリル酸」を、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」をそれぞれ意味する。
【0021】
本発明の光学記録媒体用コーティング剤を構成する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、一般式(1)で示されるウレタン(メタ)アクリレート化合物[I]を含有するものである。
【0022】
【化2】

(ここで、R1は水素又はメチル基であり、R2は炭素数1〜5のアルキレン基である。)
【0023】
本発明では、上記一般式(1)で示されるウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]を、本発明の組成物の構成要素として用いることにより、特に低い硬化収縮性を示し、かつ、得られる硬化物に、透明性、表面硬度、密着性、耐湿性などの耐環境性を付与することができる。
【0024】
本発明で使用されるウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]は、硬化収縮率が6%以下であることが好ましく、特には5.5%以下、更に好ましくは5.3%以下であることが好ましい。かかるウレタン(メタ)アクリレート系化合物を用いることにより、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化収縮率も低くすることができ、光ディスクに保護膜を形成した時に発生しやすい反りやうねりを回避することができる。逆に言えば、硬化収縮率が大きすぎると、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化収縮率も増大し、光ディスクに保護膜を形成した時に反りが大きくなる傾向がある。なお、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]の硬化収縮率の下限としては通常3%である。
【0025】
なお、本発明において、硬化収縮率とは、液状の化合物或いは組成物から固体の硬化物に変化するときの体積収縮率で表されるものであり、硬化前の比重D1と硬化後の比重D2から、下記式に基づき算出される。
硬化収縮率(%)=100×(1−D1/D2)
【0026】
かかるウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]としては、速硬化性の点からR1が水素であることが好ましい。より好ましくは、粘度の点から、R2が炭素数2〜4のアルキレン基を有する化合物であり、特に好ましくは、表面硬度の点から、R2が炭素数2もしくは3のアルキレン基を有する化合物である。
【0027】
かかるウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]の製造方法としては、公知の手法を用いることができる。具体的には、イソホロンジイソシアネート成分(A)と水酸基含有(メタ)アクリレート成分(B)を反応させることにより製造される。
【0028】
水酸基含有(メタ)アクリレート成分(B)としては、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好適に用いられる。これらの中でも、粘度の点から2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0029】
かかる反応においては、反応を促進する目的でジブチルチンジラウレートのような金属触媒や、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7のようなアミン系触媒、エチルヘキサン酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス等の有機ビスマス化合物等を適宜用いることも好ましく、更に反応温度は通常30〜90℃、特には40〜80℃の範囲が好ましい。
【0030】
本発明において、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]に加えて、低吸水性、耐環境性、樹脂組成物の粘度を下げるなどの観点から、エチレン性不飽和化合物[II]を用いることが好ましい。
【0031】
かかるエチレン性不飽和化合物[II]としては、従来公知のものが使用可能であり、例えば、(メタ)アクリレート系モノマーが挙げられる。
【0032】
(メタ)アクリレート系モノマーの中で、単官能の化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(n=2)(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性(n=2.5)(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート等のフタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートモノエステル等が挙げられる。
【0033】
また、2官能の化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートジエステル等が挙げられる。
【0034】
更に、3官能以上の化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
また、エチレン性不飽和化合物[II]として、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]以外のウレタン(メタ)アクリレート系化合物を用いることもできる。ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]は、透明性、低硬化収縮性、密着性、耐湿性などの耐環境性を付与するための必須成分であるが、成分[I]以外のウレタン(メタ)アクリレート系化合物は得られる組成物の粘度や硬化物の諸特性を所望の範囲に調整するなどのために用いられる。
【0036】
かかるウレタン(メタ)アクリレート系化合物としては、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]以外のものであれば特に限定されることないが、その配合量は、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]100重量部に対して、50重量部以下であることが好ましく、特には30重量部以下が好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]以外のウレタン(メタ)アクリレート系化合物が多すぎると、硬化物の硬化収縮率が増大したり耐環境性が低下する傾向にある。
【0037】
更に、エチレン性不飽和化合物[II]として、上記の他に、スチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリロイルモルフォリン、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピリジンや、アクリル酸のミカエル付加物あるいは2−アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステルも挙げられる。アクリル酸のミカエル付加物としては、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸ダイマー、アクリル酸トリマー、メタクリル酸トリマー、アクリル酸テトラマー、メタクリル酸テトラマー等が挙げられる。また、2−アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステルとしては、特定の置換基をもつカルボン酸であり、例えば2−アクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル等が挙げられる。更に、その他オリゴエステルアクリレート、エポキシアクリレートも挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0038】
本発明においては、上記の中でも、得られる樹脂組成物の速硬化性の点から2官能以上の(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく、低硬化収縮率、耐湿性の観点から、脂環式(メタ)アクリレート系モノマーがより好ましい。2官能以上の脂環式(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
上記エチレン性不飽和化合物[II]の配合量としては、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]100重量部に対して、10〜300重量部であることが好ましく、特には20〜250重量部、更に好ましくは30〜200重量部であることが好ましい。かかるエチレン性不飽和化合物[II]の配合量が少なすぎると、粘度が高くなり塗布性が悪くなる傾向があり、多すぎると、硬化収縮率が増大する傾向にある。
【0040】
本発明においては、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、更に光重合開始剤を含有させることが、ごく短時間の紫外線等の活性エネルギー線照射により硬化させることができる点で好ましい。
【0041】
光重合開始剤としては、光の作用によりラジカルを発生するものであれば特に限定されず、従来公知のものが使用可能であるが、例えば、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピレンフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2−エチルアンスラキノン、4′,4″−ジエチルイソフタロフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、α−アシロキシムエステル、アシルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン等が挙げられ、中でもベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイルイソプロピルエーテル、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンが好適に用いられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0042】
更に、光重合開始剤の助剤としてトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4′−ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等の1種又は2種以上を併用することも可能である。
【0043】
上記光重合開始剤の含有量は、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I](更にエチレン性不飽和化合物[II]を併用する場合はウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]とエチレン性不飽和化合物[II]の合計)100重量部に対して0.1〜20重量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10重量部、特に好ましくは1〜8重量部である。かかる含有量が少なすぎると充分に硬化させることが困難となる傾向があり、また多すぎると重合反応が急激に進行して光学歪の増大をもたらすだけでなく色相も悪化する傾向がある。
【0044】
本発明で用いる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]、エチレン性不飽和化合物[II]、光重合開始剤の他に、更に、酸化防止剤、重合禁止剤、黄変防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、油、乾燥剤、分散剤、安定剤、消泡剤、レベリング剤、チクソトロピー性付与剤、難燃剤、艶消し剤、架橋剤等を適宜配合することも可能である。
【0045】
一方、本発明においては、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物として、実質的にフィラーを含まないことが好ましく、これによりブルーレーザーに対して光散乱を生じることなく、高い光線透過率を維持することができる。
【0046】
なお、ここでいうフィラーとは、硬化収縮率の低減や、硬化物の諸特性(表面硬度向上、耐熱性向上、線膨張係数低減、屈折率制御など)を目的として添加されるものである。一般的には、上記目的を、硬化物の透明性を維持しながら達成するために、微細なシリカ粒子やアルミナ粒子などの無機酸化物が使用される。光の波長以下に微細な場合はナノフィラーと言われ、近年透明用途において検討されているものである。
【0047】
樹脂組成物にフィラーを配合する手法としては、直接フィラーを組成物に添加する手法や、金属アルコキサイドなどのフィラー前駆体を組成物に添加し、その後加水分解などの手法で金属酸化物として組成物中に分散させる手法が挙げられる。しかしながら、フィラーの凝集や析出などのために光散乱現象を生じやすいため、光ディスクの保護膜をフィラー入りの樹脂組成物で形成した場合に、かかる光散乱現象が記録及び/又は再生の誤作動の原因となっている。
【0048】
また、本発明で用いる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、実質的に溶媒を含有しないことが好ましいが、使用する際の粘度調整、保護膜の平滑性、均一性などの確保の面から、有機溶剤を配合しても良い。かかる有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、セロソルブ類、ジアセトンアルコール等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。有機滑剤を配合する場合は、塗布後に溶剤乾燥を行ってから、活性エネルギー線を照射する。
【0049】
かくして本発明で用いる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が得られるが、かかる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、好ましくは常温で低粘度の液状である。樹脂組成物が常温で固体であったり、高粘度液体であったりすると、樹脂組成物を塗布する際の作業性が著しく低下する傾向にある。
【0050】
また、本発明で用いる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の25℃における粘度の好ましい範囲の上限は10Pa・s、より好ましくは7Pa・sであり、下限は0.1Pa・s、より好ましくは1Pa・sである。粘度が高すぎると、各種塗布方法、特にスピンコート法による塗布の際に、膜厚不均一、塗りムラ、クレーター状欠陥、ユズ肌・サメ肌等の塗布欠陥を生じたり、塗り残しが生じたりする傾向にあり、逆に、粘度が低すぎると、数十μm以上の膜厚の大きな層を形成する場合にその膜厚制御が困難になる傾向がある。
【0051】
本発明において、上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して硬化物を形成するわけであるが、得られる活性エネルギー線硬化物は、厚膜化した際であっても光学記録媒体の用途に有利な性質を備えていることが好ましく、具体的には、低硬化収縮率、高光線透過率、高表面硬化度、高耐溶剤性、低吸水率、低複屈折、高密着性であることが好ましい。
【0052】
硬化収縮率は小さいほど好ましく、通常7%以下、より好ましくは6%以下である。硬化収縮率が大きすぎると、光ディスクに保護膜を形成したときに反りが増大したり、基材に対する密着性が低下したりする傾向がある。なお、硬化収縮率の下限としては通常1%である。なお、硬化収縮率の定義は上記と同様である。
【0053】
光線透過率については、400nmにおける光路長0.1mm当たりの光線透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上、更に好ましくは88%以上である。光線透過率が低すぎると、ブルーレイディスクの記録及び/又は再生が困難となる傾向がある。なお、光線透過率の上限値は通常99.9%である。
【0054】
表面硬度はHB以上であることが好ましく、より好ましくはH以上であり、さらに好ましくは2H以上である。硬度が小さすぎると、光ディスク表面に傷が付きやすい傾向となる。なお、表面硬度の上限値は通常8Hである。
【0055】
また、上記活性エネルギー線硬化物は、各種溶剤に対して溶解しないことが好ましく、代表的にはトルエン、クロロホルム、アセトン、テトラヒドロフランといった溶剤に対して溶解しないことが好ましい。
【0056】
本発明で用いる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、活性エネルギー線を照射することにより硬化され、活性エネルギー線硬化物を得ることができる。
かかる活性エネルギー線としては、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できるが、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等から紫外線照射による硬化が有利である。
【0057】
紫外線照射により硬化させる方法としては、150〜450nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ等を用いて、0.01〜10J/cm2程度照射すればよい。紫外線照射後は、必要に応じて加熱を行って硬化の完全を図ることもできる。
【0058】
なお、本発明の組成物を硬化させる際の活性エネルギー線照射時の雰囲気は、空気中でもよいし、窒素、アルゴン等の不活性ガス中でもよい。
【0059】
本発明にかかる活性エネルギー線硬化物は、低硬化収縮性、表面硬度、耐環境性に優れているので、光学記録媒体材料に好ましく用いられる。
【0060】
本発明でいう光記録媒体とは特に限定はされないが、好ましくはブルーレーザーを用いる次世代高密度光記録媒体が好ましい。上記光記録媒体としては、基板において誘電体膜、記録膜、反射膜など(以下、これらの層を総称して「記録再生機能層」という。)を形成した面に保護膜が形成される光記録媒体であって、波長370〜900nmのレーザー光、好ましくは波長400〜500nmのレーザー光を用いる光記録媒体を意味する。
【0061】
本発明の光学記録媒体用コーティング剤は、光学記録媒体のうち保護層に使用されることが好ましい。
保護層は、前述の本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をスピンコートし、通常これを硬化させた硬化物からなり、記録再生機能層に接して設けられる。
【0062】
このようにして形成される保護層の光線透過率は、記録・再生に用いられる光の波長において、通常80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上である。このような範囲であれば、記録再生光の吸収や散乱による損失を最小限にすることができる。一方、光線透過率は、100%になることが最も好ましいが、用いる材料の性能上、通常99.9%以下となる。
【0063】
保護層は、記録再生機能層を水や塵埃から保護するような性質を持つことが望ましい。
【0064】
加えて、保護層の表面硬度は、JIS K5400に準拠した鉛筆硬度試験による表面硬度がHB以上であるのが好ましく、H以上であるのがさらに好ましく、2H以上であるのが特に好ましく、7H以下であるのが好ましい。硬度が小さすぎると、表面に傷が付きやすいため好ましくない。硬度が大きすぎること自体の問題はないが、硬化物が脆くなる傾向となり、クラックや剥離が生じやすく好ましいことではない。
【0065】
保護層の膜厚は、通常10μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは40μm以上、特に好ましくは50μm以上である。膜厚をこのような範囲とすれば、保護層表面に付着したゴミや傷の影響を低減することができ、また記録再生機能層を外気の水分等から保護するのに十分な厚さとすることができる。一方、保護層の厚さは通常200μm以下、好ましくは150μm以下、より好ましくは120μm以下である。膜厚をこの範囲とすれば、スピンコートなどで用いられる一般的な塗布方法で均一な膜厚を容易に形成することができる。保護層は記録再生機能層をカバーする範囲に均一な膜厚で形成されることが好ましい。
【0066】
かくして、一般式(1)で示されるウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]を含有してなる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物からなる本発明の光学記録媒体用コーティング剤は、光学記録媒体への塗布性に加え、塗膜の透明性、密着性、耐環境性に優れ、かつ、硬化収縮率が低く光学記録媒体の反りを低減することができるコーティング剤として非常に有用である。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0068】
各物性の測定方法は以下の通りである。
〔粘度〕
E型粘度計を用いて25℃で測定した。
【0069】
〔密着性〕
100×100×3mmのガラス板上に、スピンコートにて樹脂組成物を100μmの厚みに塗布した後、高圧水銀ランプにて15cmの距離から1J/cm2の紫外線を照射して樹脂組成物を硬化させ、硬化した樹脂組成物部分の中央にカッターナイフでガラス表面に到達するように切り込みを入れ、室温で14日間放置後、切り込み部の硬化物とガラス表面との界面の剥離が目視で観察されるかどうかにて評価した。剥離が観察されなかった場合を「○」、剥離が観察された場合を「×」とした。
【0070】
〔光線透過率〕
100×100×3mmのガラス板上に、スピンコートにて樹脂組成物を100μmの厚みに塗布した後、高圧水銀ランプにて15cmの距離から1J/cm2の紫外線を照射して樹脂組成物を硬化させ、硬化物をガラス板から剥離して400nmにおける光線透過率を、分光計を用いて測定した。
【0071】
〔表面硬度〕
100×100×3mmのガラス板上に、スピンコートにて樹脂組成物を100μmの厚みに塗布した後、高圧水銀ランプにて15cmの距離から1J/cm2の紫外線を照射して樹脂組成物を硬化させ、硬化物をガラス板から剥離して硬化物表面の鉛筆硬度をJIS K5400に準拠して測定した。
【0072】
〔硬化収縮率〕
硬化前の比重D1と硬化後の比重D2から、下記式に基づき算出した。
なお、硬化物は、100×100×3mmのガラス板上に、スピンコートにてウレタン(メタ)アクリレート系化合物或いは樹脂組成物を100μmの厚みに塗布した後、高圧水銀ランプにて15cmの距離から1J/cm2の紫外線を照射して樹脂組成物を硬化させ、硬化物をガラス板から剥離して得た。
硬化収縮率(%)=100×(1−D1/D2)
【0073】
〔反り〕
直径120mm、厚さ1.1mmのAgスパッタ膜(100nm厚)付きポリカーボネート円板上に、スピンコーターを使用して100μmの厚みの樹脂組成物膜を形成し、高圧水銀ランプにて照射強度1J/cm2で紫外線を照射することにより硬化させて、膜厚100μmの保護膜を形成した後、定盤の上に1時間静置した。静置後、樹脂組成物の硬化収縮によって生じたポリカーボネート円板の凹反りを測定した。測定には隙間ゲージを用い、端部のうき量の最大値を反り量(mm)とした。
【0074】
〔耐湿熱試験〕
更に、反りを測定した円板を80℃、90%RHの高温高湿槽に100時間静置後、再度同様の手法で反り量(mm)を測定した。
【0075】
実施例1
〔ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]の製造〕
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート53.34g(0.24モル)、2−ヒドロキシエチルアクリレート55.73g(0.48モル)、重合禁止剤としてハイドロキノンメチルエーテル0.02g、反応触媒としてジブチルスズジラウレート0.02g、メチルエチルケトン500gを仕込み、60℃で3時間反応させ、残存イソシアネート基が0.3%となった時点で反応を終了し、溶剤を留去して2官能ウレタンアクリレートを得た。
得られたウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]の硬化収縮率は5.2%であった。
【0076】
〔活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製〕
上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]50部、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート(新中村化学社製、「A−DCP」)50部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバガイギー社製、「Irgacure184」)3部を、60℃にて均一になるまで撹拌し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の粘度は3Pa・sであり、硬化収縮率は5.8%であった。
【0077】
〔光ディスクの作製と評価〕
得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、直径120mm、厚さ1.1mmのAgスパッタ膜(100nm厚)付きポリカーボネート円板上にスピンコーターにより塗布し、高圧水銀ランプにて照射強度1J/cm2で紫外線を照射することにより硬化させて、膜厚100μmの保護膜を形成した。得られた光ディスクの反りは0.1mm未満であった。
【0078】
実施例2
〔活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製〕
実施例1のウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]30部、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート(新中村化学社製、「A−DCP」)70部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバガイギー社製、「Irgacure184」)3部を、60℃にて均一になるまで撹拌し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の粘度は1Pa・sであり、硬化収縮率は6.0%であった。
【0079】
〔光ディスクの作製と評価〕
得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、直径120mm、厚さ1.1mmのAgスパッタ膜(100nm厚)付きポリカーボネート円板上にスピンコーターにより塗布し、高圧水銀ランプにて照射強度1J/cm2で紫外線を照射することにより硬化させて、膜厚100μmの保護膜を形成した。得られた光ディスクの反りは0.1mm未満であった。
【0080】
比較例1
〔活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製〕
ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート(新中村化学社製、「A−DCP」)100部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバガイギー社製、「Irgacure184」)3部を、60℃にて均一になるまで撹拌し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。得られた組成物の粘度は0.1Pa・sであり、硬化収縮率は6.4%であった
【0081】
〔光ディスクの作製と評価〕
得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いて、実施例と同様にして保護膜を形成した。得られた光ディスクの反りは0.1mmを超えていた。
【0082】
実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。
【0083】
【表1】

【0084】
表1より、本発明の光学記録媒体用コーティング剤は、硬化収縮性、透明性、表面硬度、密着性、耐反り性のすべてにおいて優れることが分かる。一方、一般式(1)で示されるウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]を含有しない場合には、硬化収縮性、表面硬度、密着性、耐反り性において劣るものとなり、光学記録媒体用コーティング剤として不適であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の光学記録媒体用コーティング剤は、光学記録媒体への塗布性に加え、塗膜の透明性、密着性、表面硬度、耐環境性に優れ、かつ、硬化収縮率が低く光学記録媒体の反りを低減することができるコーティング剤として非常に有用である。
このような本発明の光学記録媒体用コーティング剤による硬化物層、特に保護層を有する本発明の光学記録媒体は、各種光学記録媒体、とりわけブルーレーザーを用いる次世代高密度光記録媒体として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示されるウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物からなることを特徴とする光学記録媒体用コーティング剤。
【化1】

(ここで、R1は水素又はメチル基であり、R2は炭素数1〜5のアルキレン基である。)
【請求項2】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化収縮率が7%以下であることを特徴とする請求項1記載の光学記録媒体用コーティング剤。
【請求項3】
一般式(1)で示されるウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]の硬化収縮率が6%以下であることを特徴とする請求項1または2記載の光学記録媒体用コーティング剤。
【請求項4】
更に、エチレン性不飽和化合物[II](但し、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]を除く。)を含有することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の光学記録媒体用コーティング剤。
【請求項5】
更に、光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の光学記録媒体用コーティング剤。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の光学記録媒体用コーティング剤からなる硬化物層を有する光学記録媒体。

【公開番号】特開2010−153013(P2010−153013A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233992(P2009−233992)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】