説明

光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器

【課題】 本発明の目的は、上記従来の問題点に鑑み、長期信頼性に優れた光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器を提供することにある。
【解決手段】 本発明の光導波路は、コア部と、前記コア部の周囲を覆うクラッド部とで構成されている光導波路であって、前記コア部および前記クラッド部の少なくとも1層が酸発生を含有しているものであって、前記クラッド部の周囲の少なくとも一部に、酸捕捉剤を有する樹脂層を積層してなることを特徴とする。また、本発明の光配線は、上記に記載の光導波路を備えたことを特徴とする。また、本発明の光電気混載基板は、電気配線と、上記に記載の光配線とを、有することを特徴とする。また、本発明の電子機器は、上記に記載の光導波路を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、光導波路用材料としては、ガラス(石英)やプラスチックなどさまざまな材料が検討されている。このような光導波路用材料の中には、酸発生剤で材料の硬化やパターニングを行い、光導波路を形成する手法が多く見られる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような酸発生剤を用いて形成した光導波路を長期にわたって使用すると残留した酸が構成材料の分解の触媒として働いたり、周辺の金属部材を腐食したりする等の問題が生じる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−66051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記従来の問題点に鑑み、長期信頼性に優れた光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記(1)〜(11)に記載の本発明により達成される。
(1)コア部と、前記コア部の周囲を覆うクラッド部とで構成されている光導波路であって、前記コア部および前記クラッド部の少なくとも一方が酸発生剤を含有しているものであって、前記クラッド部の周囲の少なくとも一部に、酸捕捉剤を有する樹脂層を積層してなることを特徴とする光導波路。
(2)前記光導波路は、第1クラッド層と、コア部およびクラッド部を有するコア層と、第2クラッド層とがこの順に積層され、前記第1クラッド層、前記コア層および前記第2クラッド層の少なくとも1層が酸発生剤を含有しており、かつ前記第1クラッド層および前記第2クラッド層の少なくとも一層のコア層と反対側面に、さらに酸捕捉剤を有する樹脂層を積層してなる上記(1)に記載の光導波路。
(3)前記第1クラッド層および前記第2クラッド層の両方共が、コア層と反対側の面に、酸捕捉剤を有する樹脂層を積層してなる上記(2)に記載の光導波路。
(4)前記コア層が酸発生剤を含有しているものである上記(2)または(3)に記載の光導波路。
(5)前記第1クラッド層および前記第2クラッド層の少なくとも一層が、酸発生剤を含有しているものである上記(2)ないし(4)のいずれかに記載の光導波路。
(6)前記酸捕捉剤は、アミン系化合物である上記(2)ないし(5)のいずれかに記載の光導波路。
(7)前記アミン化合物が、3級アミンである上記(6)に記載の光導波路。
(8)前記アミン化合物が、イミダゾール類である上記(7)に記載の光導波路。
(9)上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の光導波路を備えたことを特徴とする光配線。
(10)電気配線と、上記(9)に記載の光配線とを、有することを特徴とする光電気混載基板。
(11)上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の光導波路を備えたことを特徴とする電子機器。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、長期信頼性に優れた光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】光導波路の一例を示すための断面図である。
【図2】第1クラッド層の形成方法を説明するための断面図である。
【図3】コア層の形成方法を説明するための断面図である。
【図4】光導波路の製造方法を説明するための断面図である。
【図5】光導波路の他の実施形態を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器について説明する。
本発明の光導波路は、コア部と、前記コア部の周囲を覆うクラッド部とで構成されている光導波路であって、前記コア部および前記クラッド部の少なくとも1層が酸発生を含有しているものであって、前記クラッド部の周囲の少なくとも一部に、酸捕捉剤を有する樹脂層を積層してなることを特徴とする。
また、本発明の光配線は、上記に記載の光導波路を備えたことを特徴とする。
また、本発明の光電気混載基板は、電気配線と、上記に記載の光配線とを、有することを特徴とする。
また、本発明の電子機器は、上記に記載の光導波路を備えたことを特徴とする。
【0010】
以下、本発明の光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器について説明する。
【0011】
(第1実施形態)
まず、光導波路について、具体的な第1実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、光導波路100は、樹脂層11と、第1クラッド層1と、コア部21およびクラッド部22を有するコア層2と、第2クラッド層3と、樹脂層31とがこの順に積層されている。
【0012】
ここで、コア層2は、酸発生剤を含んでいる。本発明は、酸発生剤の影響で低下する長期信頼性を改善することを目的とするものだからである。
特に、光照射等のパターニングによりコア部21とクラッド部22とを形成するコア層2の場合、コア層2に酸発生剤を含有することが好ましい。これにより、コア部21およびクラッド部22の形成を容易にすることができる。
【0013】
本実施形態では、樹脂層11および樹脂層31の両方の層が、酸捕捉剤を有する。これにより、第1クラッド層1等が有する酸発生剤に起因する長期信頼性の低下を抑制することができる。
このように、樹脂層11および樹脂層31の両方の層が、酸捕捉剤を有することにより、長期信頼性の低下を抑制できる理由は、次のように考えられる。
樹脂層11等が酸捕捉剤を含有することで、第1クラッド層1等で発生した酸の残渣を中和することができ、それによって第1クラッド層1等中に残存する酸の量を低減することができ、それによって酸の作用が原因で生じる長期信頼性の低下を抑制することができる。
【0014】
以下、各層を構成する材料について説明する。
<第1クラッド層1および第2クラッド層3>
本発明のクラッド層の材料は特に制限されず、光導波路中のクラッド層を形成させるために用いることが可能な公知のポリマーを適宜用いることができ、例えば、環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂等のポリマーや、これらのポリマーの1種又は2種以上を組み合わせたポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体、架橋体等が好適なものとして挙げられる。なお、このような樹脂を含有するクラッド層を備える光導波路において、コア部を導光路として十分に機能させるためには、クラッド層の屈折率をコア部の屈折率よりも低くする必要がある。そのため、クラッド層にはコア層を形成する樹脂よりも屈折率が低い樹脂を選択して用いることが好ましい。
【0015】
<コア層2>
本発明のコア層の材料は特に限定されず、光導波路のコア層を形成させるために用いることが可能な公知の樹脂(ポリマー)を適宜用いることができ、例えば、環状オレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂等のポリマーや、これらのポリマーの1種又は2種以上を組み合わせたポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体、架橋体等が挙げられ、環状オレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド樹脂が好ましい。このような樹脂は1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
また、このような樹脂としては、後述する酸発生剤に由来する酸の作用により化学変化が生じて生成される樹脂であることが好ましい。すなわち、このような樹脂としてはコア層用ポリマーに由来して形成される樹脂(例えば、コア層用ポリマーそのもの、コア層用ポリマーどうしの反応物、コア層用ポリマーとコア形成用ワニス中のモノマーや架橋剤等とが反応して形成される樹脂等)であることがより好ましい。また、コア層用の樹脂としては、優れた光伝送性能を有し且つ耐熱性と柔軟性を兼ね備えているという観点から、ノルボルネン系ポリマーであることが好ましい。
【0017】
本発明のコア層は、酸発生剤を含有する。酸発生剤の作用により、コア層の成分が解裂、架橋、重合等の化学変化を生じることで光導波路のパターンを形成したり、フィルム材料としての機械特性、耐熱性等を向上させたりすることが出来る。
酸発生剤としては、例えば光酸発生剤、熱酸発生剤等が挙げられる。これらの酸発生剤中でも光酸発生剤が好ましい。これにより、フォトマスク等を用いて任意のデザインの光導波路をパターニングすることができる。
【0018】
前記光酸発生剤としては、例えばトリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム−トリフルオロメタンスルホネート、ジメチル(2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル)スルホニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのスルホニウム塩類、p−ニトロフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのジアゾニウム塩類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、(トリキュミル)ヨードニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのヨードニウム塩類、キノンジアジド類、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタンなどのジアゾメタン類、1−フェニル−1−(4−メチルフェニル)スルホニルオキシ−1−ベンゾイルメタン、N−ヒドロキシナフタルイミド−トリフルオロメタンサルホネートなどのスルホン酸エステル類、ジフェニルジスルホンなどのジスルホン類、トリス(2,4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3.4−メチレンジオキシフェニル)−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどのトリアジン類などを例示できる。
【0019】
前記熱酸発生剤としては、例えば2−ニトロベンジルトシレートなどのニトロベンジルトシレート類、ベンジルアニリニウムスルホネート類、ビススルホニルジアゾメタン類、アリールスルフィン酸類、2−ブテニルテトラメチレンスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネートや3−メチル−2−ブテニルテトラメチレンスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネートなどヘキサフルオロアンチモネート類、トリフルオロメタンスルホネート類、トルフルオロ酢酸エステルなどのトリハロ酢酸等を例示できる。
【0020】
このような酸発生剤の含有量は、特に限定されないが、コア層を構成する樹脂100重量部に対して0.001〜10重量部が好ましく、特に0.005〜5重量部が好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に耐熱性に優れる。なお、重合開始温度を調整するために、前記重合開始剤を複数種混合して用いることも可能である。
【0021】
本発明のクラッド層および/またはコア層には前記の樹脂成分、酸発生剤以外に、反応性モノマー、硬化剤、硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、密着助剤、可塑剤等の成分を含んでいても良い。
【0022】
<樹脂層11および樹脂層31>
本実施形態における樹脂層11および樹脂層31の材料は、樹脂であれば特に限定されず、例えばノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン樹脂、鎖状のポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリシラン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンザオキサゾール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂、液晶ポリマーなどを例示できる。
【0023】
樹脂層11および樹脂層31は、コア層に含まれる酸発生剤を中和するための酸捕捉剤を含有する。
前記酸捕捉剤としては、例えばアミン系化合物、アミド系化合物、イミド系化合物、カーバメート系化合物、アンモニウム塩系化合物、エポキシ化合物などを用いることが出来る。具体的な例を挙げるとアミン系化合物としては、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、tert−アミルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、セチルアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジセチルアミン、N,N−ジメチルメチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルテトラエチレンペンタミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、トリペンチルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、トリセチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルテトラエチレンペンタミン、ジメチルエチルアミン、メチルエチルプロピルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ベンジルジメチルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−プロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、エチルアニリン、プロピルアニリン、ジメチルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン、トリメチルアニリン、2−ニトロアニリン、3−ニトロアニリン、4−ニトロアニリン、2,4−ジニトロアニリン、2,6−ジニトロアニリン、3,5−ジニトロアニリン、2− (ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルトルイジン、ジフェニル(p−トリル)アミン、メチルジフェニルアミン、トリフェニルアミン、フェニレンジアミン、ナフチルアミン、ジアミノナフタレン、ピロール、2H−ピロール、1−メチルピロール、2,4−ジメチルピロール、2,5−ジメチルピロール、N−メチルピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾール、2-ブチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン、ベンズイミダゾール、1−シアノエチルイミダゾール、1−ビニルイミダゾール、ピロリン、2−メチル−1−ピロリン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、ピロリジノン、N−メチルピロリドン、ピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ブチルピリジン、4−(1−ブチルペンチル)ピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、トリエチルピリジン、フェニルピリジン、3−メチル−2−フェニルピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ジフェニルピリジン、ベンジルピリジン、メトキシピリジン、ブトキシピリジン、ジメトキシピリジン、1−メチル−2−ピリドン、4−ピロリジノピリジン、1−メチル−4−フェニルピリジン、2−(1−エチルプロピル)ピリジン、アミノピリジン、ジメチルアミノピリジン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルピリジン、4−(3−フェニルプロピル)ピリジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、インドール、キノリン、3−キノリンカルボニトリル、イソキノリン、カルバゾール、フェノチアジン、ジシアンジアミド、アミノ安息香酸、インドールカルボン酸、ニコチン酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、グリシルロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、リジン、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、メトキシアラニン、3−ピリジンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム、2−ヒドロキシピリジン、アミノクレゾール、2,4−キノリンジオール、3−インドールメタノールヒドレート、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2,2’−イミノジエタノール、2−アミノエタノ−ル、3−アミノ−1−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、2−(2−ヒドロキシエチル)ピリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、1−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジン、ピペリジンエタノール、1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリジノン、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、3−ピロリジノ−1,2−プロパンジオール、8−ヒドロキシユロリジン、3−クイヌクリジノール、3−トロパノール、1−メチル−2−ピロリジンエタノール、1−アジリジンエタノール、N−(2−ヒドロキシエチル)フタルイミド、N−(2−ヒドロキシエチル)イソニコチンアミド、アミノトリアジンノボラック樹脂、ポリアクリルアミン樹脂、ポリアリルアミン樹脂等が挙げられる。
【0024】
アミド系化合物としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、アセトアニリド、ベンズアニリド、ダイアセトンアクリルアミド等が挙げられる。イミド誘導体としては、フタルイミド、サクシンイミド、マレイミド等が挙げられる。カーバメート誘導体としてはN−tert−ブトキシカルボニル−N,N−ジシクロヘキシルアミン、N−tert−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、1,4−ビス(N,N−ジ−ブトキシカルボニル−アミノメチル)ベンゼン、オキサゾリジノン等が挙げられる。アンモニウム塩類としては、ピリジニウム=p−トルエンスルホネート、トリエチルアンモニウム=p−トルエンスルホネート、トリオクチルアンモニウム=p−トルエンスルホネート、トリエチルアンモニウム=2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホネート、トリオクチルアンモニウム=2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホネート、トリエチルアンモニウム=カンファースルホネート、トリオクチルアンモニウム=カンファースルホネート、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラエチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラブチルアンモニウムヒドロキサイド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラメチルアンモニウム=p−トルエンスルホネート、テトラブチルアンモニウム=p−トルエンスルホネート、ベンジルトリメチルアンモニウム=p−トルエンスルホネート、テトラメチルアンモニウム=カンファースルホネート、テトラブチルアンモニウム=カンファースルホネート、ベンジルトリメチルアンモニウム=カンファースルホネート、テトラメチルアンモニウム=2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホネート、テトラブチルアンモニウム=2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホネート、ベンジルトリメチルアンモニウム=2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホネート、テトラメチルアンモニウム=アセテート、テトラブチルアンモニウム=アセテート、ベンジルトリメチルアンモニウム=アセテート、テトラメチルアンモニウム=ベンゾエート、テトラブチルアンモニウム=ベンゾエート、ベンジルトリメチルアンモニウム=ベンゾエート、テトラブチルアンモニウム=テトラフェニルボラート、テトラブチルアンモニウム=トリフェニルブチルボラート等が挙げられる。これらの中でも特にトリイソプロピルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルピリジン、4−(3−フェニルプロピル)ピリジン等の3級アミン化合物や2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類が好ましい。これにより、光導波路の長期信頼性をより向上することができる。
【0025】
前記酸捕捉剤の樹脂組成物中の含有量は、コア層に残存する酸を中和するのに十分な量であれば良く、特に残存する酸の量よりも過剰に含有することが好ましい。その含有量は、コア層の酸発生剤の含有量にもよるが、樹脂層を構成する樹脂100重量部に対して0.001〜10重量部が好ましく、特に0.05〜5重量部が好ましい。含有量が前記範囲内であると、長期信頼性に優れた光導波路を製造できる。樹脂組成物には、上述した樹脂および酸捕捉剤以外に、硬化剤、硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、密着助剤、可塑剤等を含んでいても良い。
【0026】
光導波路100が形成された後での樹脂層11および樹脂層31に含まれる酸捕捉剤の量は、例えば熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計(熱分解GC−MS)やバージンアンドトラップガスクロマトグラフ質量分析計(パージアンドトラップGC−MS)で測定することができる。
例えば熱分解GC−MSの場合、具体的な条件としては下記のような測定条件を例示できる。
・分析装置
熱分解装置 ;フロンティア・ラボ PY−2020iD型縦型加熱炉型熱分解装置
GC ;アジレントテクノロジー 6890N型ガスクロマトグラフ
MS ;アジレントテクノロジー 5975B型質量検出器
・分析条件
GC注入口温度 ;300℃
GCオーブン温度 ;40℃(5分間保持)→10℃/分→300℃(9分間保持)
MSインターフェイス温度 ;300℃
カラム ;アジレントテクノロジー HP−5MS
(5%フェニルポリジメチルシロキサン)
30m×0.25mmi.d.(膜厚:0.25μm)
注入方法 ;スプリット法(スプリット比:50/1)
キャリアガス流量 ;He 1mL/分(定流量モード)
MSイオン化方法 ;EI(電子衝撃)法
MS検出質量範囲 ;m/z=25〜800
サンプル加熱条件 ;300℃/10分
【0027】
次に、上述したような光導波路100を製造する方法について簡単に説明する。
第1クラッド層1は、上述したような第1クラッド層1を構成する樹脂または樹脂組成物を、溶剤に溶解したワニス1aの状態で、支持基板5に塗布する(図2a)。
この支持基板5を換気されたレベルテーブルに置いて、液状被膜表面の不均一な部分を水平化すると共に、溶媒を蒸発(脱溶媒)することにより第1クラッド層1を形成する(図2b)。
なお、第2クラッド層2についても同様に形成することができる。
【0028】
次に、コア層2は、上述したようなコア層2を構成する樹脂組成物を、溶剤に溶解したワニス2aの状態で、支持基板5に塗布する(図3a)。
この支持基板5を換気されたレベルテーブルに置いて、液状被膜表面の不均一な部分を水平化すると共に、溶媒を蒸発(脱溶媒)することによりコア層2を形成する(図3b)。
【0029】
上述したようにワニス2aは、樹脂と酸発生剤とを含む樹脂組成物構成されており、紫外線等の活性放射線の照射により、コア層2へのパターニングが可能となっている。
【0030】
このコア層2に対して、開口部81を有するマスク8を介して選択的に活性エネルギー線82を照射して(図4(a))、屈折率の異なる部位(具体的には、活性エネルギー線82が未照射であり、屈折率の高いコア部31と、活性エネルギー線82が照射され、コア部31よりも屈折率の低いクラッド部32)を形成したコア層2を形成する(図4b)。
ここで、活性エネルギー線82の種類としては、例えば紫外線、電子線、X線、レーザー等を挙げることができる。
【0031】
なお、本実施形態においては、活性エネルギー線82が照射された部分がクラッド部22となるような場合について説明したが、特に限定されず、活性エネルギー線82が照射された部分がコア部21となるようなものでも良い。
【0032】
ここで、活性エネルギー線82の照射により、コア層2に屈折率の異なる部位が形成される理由は、いくつか挙げられるが、一例としては、樹脂が前記酸発生剤の作用により解裂、架橋等の化学構造に変化が生じるものである場合には、その化学構造の変化に伴って屈折率も変化する。したがって、活性エネルギー線82が照射された部分と、未照射の部分とでコア層2を構成する樹脂の化学構造が異なり、屈折率が異なる部位が形成されることになる。また、樹脂組成物中に酸発生剤の作用により、変化するモノマーが含まれている場合も活性エネルギー線82が照射された部分と、未照射部とでコア層2を構成する樹脂の化学構造に違いが生じ、それによって屈折率が異なるようになっている。
【0033】
また、樹脂層11および樹脂層31についても同様に、それぞれの樹脂層を構成する樹脂組成物を、溶剤に溶解したワニスの状態で、支持基板に塗布する(不図示)。
この支持基板を換気されたレベルテーブルに置いて、液状被膜表面の不均一な部分を水平化すると共に、溶媒を蒸発(脱溶媒)することにより樹脂層11および樹脂層31を形成する(不図示)。
【0034】
上述したコア部21とクラッド部22とを形成したコア層2の両面に、コア部21よりも屈折率の低い第1クラッド層1および第2クラッド層3を、さらに第1クラッド層1および第2クラッド層を挟むように樹脂層11および樹脂層31を、例えばロールラミネーターを用いて積層して、例えば160℃で2時間加熱することにより、図1に示すような光導波路100を得る。
【0035】
図1に示すように光導波路100は、コア部21が、コア部21よりも屈折率の低いクラッド部22およびクラッド層(第1クラッド層1および第2クラッド層3)で囲まれている。このように、コア部21が、屈折率の低いクラッド部22およびクラッド層に囲まれていることにより、コア部21に入射した光信号は、クラッド部22等に侵入することなく、コア部21内で全反射を繰り返して、光信号が伝播されるようになる。これにより、コア部21を介しての光信号の授受が可能となる。
【0036】
さらに、樹脂層11および樹脂層31が、酸捕捉剤を含んでいるので、コア層2に含まれる酸発生剤または酸発生剤に由来する化合物を中和することができる。これによって、光導波路100の長期信頼性を向上することができるものである。
【0037】
上述した第1実施形態では、コア層2のみが酸発生剤を含有している場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、第1クラッド層1のみが酸発生剤を含有している場合、第2クラッド層3のみが酸発生剤を含有している場合、コア層2、第1クラッド層1および第2クラッド層3のいずれもが酸発生剤を含有している場合などでも良い。すなわち、コア部およびクラッド部の少なくとも一方が、酸発生剤を含有していれば良い。
【0038】
上述した第1実施形態では、樹脂層11および樹脂層31の両方ともが酸捕捉剤を含有している場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、樹脂層11および樹脂層31のいずれか一方のみが酸捕捉材を含有するものであっても良い。
【0039】
(第2実施形態)
次に、他の実施形態について説明する。
図5は、光導波路10の別の実施態様を示したものである。図1の実施形態と異なる部分について説明する。
図5に示す光導波路100では、樹脂層がクラッド層の一方の側にのみ形成されている。
すなわち、光導波路100は、樹脂層11と、第1クラッド層1と、コア部21およびクラッド部22を有するコア層2と、第2クラッド層3とがこの順に積層されている。このように、樹脂層31が無い場合であっても光導波路100の長期信頼性を維持することができる。
【0040】
このような第2実施形態の光導波路100は、コア層2および第1クラッド層1に酸発生剤が含まれるような場合に特に有効に用いることができる。
【0041】
次に、光配線、光電気混載基板および電子機器について簡単に説明する。
本発明の光配線は、上述したような光導波路100を有している。これにより、導波路製造プロセスにおいて現像やRIE(リアクティブイオンエッチング)などを経る必要がないために加工の自由度を向上することができる。
また、本発明の光電気混載基板は、電気配線と、上述したような光導波路100を有する光配線とを有している。これにより、従来の電気配線で問題となっていたEMI(電磁波障害)の改善が可能となり、従来よりも信号伝達速度を大幅に向上することができる。
また、本発明の電子機器は、上述したような光導波路100を有している。これにより、省スペース化を図ることができる。
このような電子機器としては、具体的にはコンピューター、サーバー、携帯電話、ゲーム機器、メモリーテスター、外観検査ロボット等を挙げることができる。
【実施例】
【0042】
(実施例1)
(1.コア層2の形成)
まず、コア層2を構成するための樹脂の調製について説明する。
ヘキシルノルボルネン(HxNB)(8.94g、0.05mol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン (diphNB)(16.1g、0.05mol)、1−ヘキセン(4.2g、0.05mol)およびトルエン(142.0g)を250mLのシーラムボトルで混合し、オイルバスで120℃に加熱して溶液を形成した。この溶液に[Pd(PCy(OCCH)(NCCH)]テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Pd1446)(5.8E−3g、4.0E−6mol)およびN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA)(3.2E−3g、4.0E−6mol)を、それぞれ濃縮ジクロロメタン溶液の形態で、加えた。添加後、得られた溶液を120℃で6時間維持した。勢いよく攪拌された混合物にメタノールを滴下すると共重合体が沈殿した。沈殿した共重合体はろ過して集め、80℃のオーブンで、真空で乾燥させた。乾燥後の重量は12.0gであった(48%)。共重合体の分子量をTHF溶媒中でGPCにより測定すると(ポリスチレン換算)、Mw=16,196およびMn=8,448であった。共重合体の組成を1H−NMRで測定すると、54/46 HxNB/diPhNBであった。ポリマーの屈折率をプリズムカップリング法で測定したところ、波長633nmで、TEモードで1.5569であり、TMモードで1.5555であった。乾燥させた共重合体を十分なメシチレンに溶解して30wt%の樹脂溶液とした。
【0043】
上述の樹脂溶液10.0gに、3−(シクロヘキシロキシ)メチル−3−エチルオキセタン (CHOX、CAS 483303−25−9)(0.72g、0.00363mol)、RHODORSIL(登録商標)PHOTOINITIATOR 2074(CAS 178233−72−2、 ニュージャージー州クランベリーのRhodia Inc社から入手)(2.55E−3g、2.516E−6mol、酢酸エチル0.1mL中)を加えて均一に混合し、0.2ミクロンの細孔のフィルターでろ過してコア層形成用のワニスとした。
【0044】
得られたコア層形成用のワニスを、ドクターブレードによって離型処理したPETフィルム上に均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去した後、フォトマスクを圧着して紫外線を1,000mJ/cmで選択的に照射した。マスクを取り去り、乾燥機中150℃で1時間と三段階で加熱を行った。加熱後、非常に鮮明な導波路パターンが現れた第1層が確認された。得られたフィルムから離型処理したPETフィルムを剥離して単層のコア層2のフィルムを得た。
【0045】
(第1クラッド層1および第2クラッド層3の形成)
環状オレフィン系樹脂を含むノルボルネン系樹脂(プロメラス社製 Avatrel2590、4g)を16gのメシチレンに溶解して第1クラッド層1を構成するための樹脂組成物を得た。
また、同じ樹脂組成物を用いて第2クラッド層3を構成するための樹脂組成物を得た。
【0046】
得られたそれぞれの樹脂組成物を、離型処理したPETフィルム上にドクターブレードで均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去すると得られた第1クラッド層1(第2クラッド層3と同一)の塗膜の厚さは20μmで無色透明であり、屈折率は1.52(測定波長;633nm)であった。
【0047】
(3層の積層体の製造)
上述したコア層2のフィルムの両面に、前記条件で塗布乾燥した離型処理したPETフィルム上の第1クラッド層1および第2クラッド層3を、ラミネータで積層した後に離型処理したPETフィルムを剥がすことで3層の積層体を得た。得られた積層体の光伝搬損失をカットバック法にて測定したところ、850nmの光伝搬損失が0.04dB/cmと低い値を示し、優れた積層体であることが分かった。さらに耐湿熱性を調べるために、85℃/85%RHの恒温恒湿槽に投入し1,000時間処理するという加速試験を行った後の光伝搬損失を同様の方法で測定したところ0.19dB/cmと若干の悪化が見られた。
【0048】
(酸捕捉用の樹脂層11および樹脂層31の形成)
酸捕捉用の樹脂層11を構成するための樹脂として環状オレフィン系樹脂を含むノルボルネン系樹脂組成物(プロメラス社製 Avatrel2590の20重量%2−ヘプタノン溶液、10g)に、酸捕捉剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、品番2E4MZ)(0.04g)を添加して樹脂組成物を得た。
また、同じ樹脂組成物を用いて樹脂層31を構成するための樹脂組成物を得た。
【0049】
(樹脂層(酸捕捉層)の積層)
得られたそれぞれの樹脂組成物を、それぞれポリイミドフィルム上(宇部興産株式会社製、Upilex)にドクターブレードで均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入し溶媒を除去した。上述した3層の積層体の両面に、前記条件で塗布乾燥したUpilex上の樹脂層11および樹脂層31を、ラミネータで積層して、積層体を得た。得られた積層体を160℃、2時間の条件で熱処理して最終的にトータル7層の光導波路を得た。得られた光導波路の光伝搬損失をカットバック法にて測定したところ、850nmの光伝搬損失が0.04dB/cmと低い値を示し、3層の積層体の性能を損ねていないことが分かった。さらに耐湿熱性を調べるために、85℃/85%RHの恒温恒湿槽に投入し1,000時間処理するという加速試験を行った後の光伝搬損失を同様の方法で測定したところ0.04dB/cmと変化しなかった。また、外観も湿熱処理前後で変化しなかった。よって上述した3層の積層体の耐湿熱性の弱さを酸補捉層として樹脂層11および樹脂層31を積層することで改善できることが分かった。この様にすることで光学特性、耐湿熱性に優れた光導波路を製造できる。
【0050】
(実施例2)
第1クラッド層1および第2クラッド層3の材料、3層の積層体の製造条件を下記のようにした以外実施例1と同様にした。
(3層の積層体の製造)
離型処理したPETフィルム上に、予め乾燥厚み20μmになるように感光性ノルボルネン樹脂組成物(プロメラス社製 Avatrel2000Pワニス)を実施例1と同じ条件で塗布乾燥して第1クラッド層1および第2クラッド層3を得た。実施例1で用いたものと同じコア層2の両面に離型処理したPETフィルム上の第1クラッド層1および第2クラッド層3を、ラミネータで積層し、紫外線を100mJで全面照射し、乾燥機中150℃で30分間加熱して、Avatrel2000Pを硬化させ、離型処理したPETフィルムを剥がすことで3層の積層体を得た。得られた3層の積層体の光伝搬損失をカットバック法にて測定したところ、850nmの光伝搬損失が0.05dB/cmと低い値を示し、優れた積層体であることが分かった。さらに耐湿熱性を調べるために、85℃/85%RHの恒温恒湿槽に投入し1,000時間処理するという加速試験を行った後の光伝搬損失を同様の方法で測定したところ0.30dB/cmと若干の低下が見られたが、実用上問題の無いレベルであった。
【0051】
(樹脂層(酸捕捉層)の積層)
その後、実施例1と同じ樹脂組成物を用いて、実施例1と同じ工程で樹脂層11および樹脂層31を積層しトータル7層の光導波路を得た。得られた光導波路の光伝搬損失をカットバック法にて測定したところ、850nmの光伝搬損失が0.05dB/cmと低い値を示し、3層の積層体の性能を損ねていないことが分かった。さらに耐湿熱性を調べるために、85℃/85%RHの恒温恒湿槽に投入し1,000時間処理するという加速試験を行った後の光伝搬損失を同様の方法で測定したところ0.05dB/cmと変化しなかった。また、外観も湿熱処理前後で変化せず優れた性能の光導波路が得られた。
【0052】
(実施例3)
酸捕捉層の積層工程で3層の積層体の片面のみ(第1クラッド層1上のみ)に酸捕捉層である樹脂層11を積層し最終的にトータル5層の光導波路とした以外は実施例2と同様にした。
【0053】
得られた光導波路の光伝搬損失をカットバック法にて測定したところ、850nmの光伝搬損失が0.05dB/cmと低い値を示し、3層の積層体の性能を損ねていないことが分かった。さらに耐湿熱性を調べるために、85℃/85%RHの恒温恒湿槽に投入し1,000時間処理するという加速試験を行った後の光伝搬損失を同様の方法で測定したところ0.05dB/cmと変化しなかった。また、外観も湿熱処理前後で変化せず優れた性能の光導波路が得られた。
【0054】
(比較例1)
樹脂層11および樹脂層31に酸捕捉剤を添加しない事以外は、実施例2と同様にした。
得られた光導波路について実施例1と同様の評価を行った。その結果、初期の光伝搬損失が0.05dB/cmと低損失であったが、湿熱処理後の光伝搬損失は0.25dB/cmと若干変化した。また湿熱処理後の外観は僅かに黄色く着色し、パターンも若干不鮮明になった。
【0055】
通常の湿熱条件下では、実施例および比較例で得られた光導波路の長期信頼性にあまり相違は観察できないが、上述したような高温高湿度での加速試験を行った場合、実施例1〜3の光導波路は、比較例1の光導波路に比べて湿熱処理後の伝搬損失が低くなっており、長期信頼性に優れていた。
なお、上述した実施形態では、ノルボルネン系樹脂について詳細に検討したが、本発明の効果はこれに限定されず、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリシラン樹脂等についても適用可能と推測される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、高耐熱性、高信頼性で光学特性に優れたプラスチック光導波路が得られることから、本発明の光導波路は、光インターコネクション、光デバイス、光電気混載回路基板の分野で広範に利用できると考えられる。
【符号の説明】
【0057】
1 第1クラッド層
1a ワニス
11 樹脂層
2 コア層
2a ワニス
21 コア部
22 クラッド部
3 第2クラッド層
31 樹脂層
5 支持基板
8 マスク
81 開口部
82 活性エネルギー線
100 光導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部と、前記コア部の周囲を覆うクラッド部とで構成されている光導波路であって、
前記コア部および前記クラッド部の少なくとも一方が酸発生剤を含有しているものであって、
前記クラッド部の周囲の少なくとも一部に、酸捕捉剤を有する樹脂層を積層してなることを特徴とする光導波路。
【請求項2】
前記光導波路は、第1クラッド層と、コア部およびクラッド部を有するコア層と、第2クラッド層とがこの順に積層され、前記第1クラッド層、前記コア層および前記第2クラッド層の少なくとも1層が酸発生剤を含有しており、かつ前記第1クラッド層および前記第2クラッド層の少なくとも一層のコア層と反対側面に、さらに酸捕捉剤を有する樹脂層を積層してなる請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記第1クラッド層および前記第2クラッド層の両方共が、コア層と反対側の面に、酸捕捉剤を有する樹脂層を積層してなる請求項2に記載の光導波路。
【請求項4】
前記コア層が酸発生剤を含有しているものである請求項2または3に記載の光導波路。
【請求項5】
前記第1クラッド層および前記第2クラッド層の少なくとも一層が、酸発生剤を含有しているものである請求項2ないし4のいずれかに記載の光導波路。
【請求項6】
前記酸捕捉剤は、アミン系化合物である請求項2ないし5のいずれかに記載の光導波路。
【請求項7】
前記アミン化合物が、3級アミンである請求項6に記載の光導波路。
【請求項8】
前記アミン化合物が、イミダゾール類である請求項7に記載の光導波路。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の光導波路を備えたことを特徴とする光配線。
【請求項10】
電気配線と、請求項9に記載の光配線とを、有することを特徴とする光電気混載基板。
【請求項11】
請求項1ないし8のいずれかに記載の光導波路を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−141304(P2011−141304A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289(P2010−289)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】