説明

光導波路部品の作製方法

【課題】平面光回路(PLC)に基板面に対し傾斜し且つ傾斜角度の変化の少ない溝を形成する。
【解決手段】エッチングチャンバー内の下部電極上に、傾斜保持治具20によりPLCを基板面に対して傾斜して保持し、PLC近傍にチャンバー内の電界分布を制御する電解制御ブロック30を配置し、傾斜保持治具および電解制御ブロックを下部電極に電気的に接続した状態で、異方性プラズマエッチングによりPLCに溝を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上の平面光導波路回路に基板面に対し傾斜した溝を形成する方法およびそのための装置構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ファイバ伝送の普及に伴い、多数の光機能素子を高密度に集積する技術が求められており、その一つとして、石英系平面光導波路回路(以下、PLC(Planar Lightwave Circuit)ともいう。)が知られている。PLCは低損失、高信頼性、高い設計自由度といった優れた特徴を有し、複合機能一体集積のプラットフォームとして有望である。実際に伝送端局における光受信装置にはフォトダイオード(以下、PD(Photodiode)ともいう。)などの受光素子からなる光モジュールや、レーザーダイオード(以下、LD(Laser diode)ともいう。)などの発光素子と、合分波器、分岐・結合器、光変調器などの機能素子が形成されたPLCとが光結合により実装されている。
【0003】
このような光導波路と受(発)光素子の光結合を可能とする構造として、図1に示すような、光導波路の一部の領域に、基板面に対して垂直方向に光路を変換する反射ミラーを設ける構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的な構造は様々であるが、加工工程の容易さから、ダイシングソーなどの機械加工や収束イオンビームによりPLCの一部に斜め溝を設ける手法や、化学エッチングを利用して傾斜面を設ける手法が広く行われている。しかし、機械加工は容易に行うことができるものの、加工位置のアライメント精度が低いという欠点がある。また、収束イオンビームによるエッチング加工では時間とコストが掛かりすぎるという欠点がある。そして、化学エッチングは作製できる角度が結晶方位によって固定されているという欠点があった。
【0004】
そこで、上記の手法以外の斜め溝加工手法として、異方性プラズマエッチングを応用した手法を挙げる。異方性プラズマエッチングは半導体デバイスなどの微細加工に適した加工手法であり、加工位置はマスクにより一意に決まるため精度が高く、一度に複数箇所の加工が可能であるため時間およびコストの点でも有利である。この異方性プラズマエッチングを用いた斜め溝加工は以下のように行われる。
【0005】
エッチングチャンバー(以下、「チャンバー」ともいう。)を真空まで排気した後、エッチングガスを流入し、高周波電圧を印加することでチャンバー内にプラズマを発生させる。その後、チャンバー上部と下部に電極面が平行になるように設けられた電極に電圧を印加することでチャンバー内に電界を誘起する。すると、プラズマ中のイオンが電界に従って電極へと引き寄せられる。イオンはチャンバー底面(下部電極)に対し、垂直に引き寄せられ、加速するため、エッチング対象に対して一方向からのみ衝突し、異方性のエッチングが進行する。したがって、チャンバー内に加工対象であるPLCを傾けて設置することでイオンが斜めにPLCに衝突し、斜めにエッチングが行われ、斜め溝加工が可能と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−70365号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図2に示すように、チャンバー内のPLC周辺ではPLCに沿った形で電界が形成されるため、電位勾配の向きはPLCに対して垂直方向に向かう。したがって、イオンは、始めはPLC表面(基板面)に対して斜めに(チャンバー底面に対して垂直に)加速するものの、次第にPLC周辺に形成された電界に沿ってPLCに引き寄せられてゆく。結果として、PLC表面へのイオンの入射角度は、チャンバー底面に対して垂直な方向ではなく、PLC表面(基板面)に対して垂直方向に近い角度となる。すなわち、PLC表面(基板面)に対して垂直方向に近い角度でPLCのエッチングが進行するため、PLC表面に対して垂直な方向から大きく傾いた斜め溝の加工が困難という欠点がある。
【0008】
この問題を解決するためには、斜めにエッチングが進行するように電界を制御することが重要である。具体的には、斜めに設置したPLCの近傍に構造物(以下、「電界制御ブロック」、または単に「ブロック」ともいう。)を設置することで、電界を制御できる。上記のPLCと同様に、この電界制御ブロックの近傍においても、電界制御ブロックの形状に沿った形で電界が形成される。
【0009】
したがって、図3に示すように、この電界制御ブロックの近傍に形成される電界と、PLC近傍に形成される電界とで形成された電位の勾配の向きが、PLC表面(基板面)に対して斜めになるように、電界制御ブロックとPLCを配置することで、PLC基板面に対して斜めに(チャンバー底面に対して垂直に)エッチングが進行しやすくなるため、傾きの大きい斜め溝加工が容易となる。
【0010】
一方で斜め溝の被加工体であるPLCは石英ガラスを材料として下層からアンダークラッド、コア、オーバークラッドの順番で構成される。低損失な反射ミラーを形成するためには、少なくともコアにいたるまでのおよそ数十μmの深さまで、エッチングを平滑に行う必要がある。一般的な半導体プロセスではビア形成などを除くとエッチング深さは数μm程度、また代表的な半導体材料であるSiはSiO2より加工が容易であることと比較すると、PLCのプラズマエッチング加工では、加工時間が長時間に及んだ場合でも、加工均一性を維持するため、高いプラズマ安定性が求められているといえる。
【0011】
先に述べたように異方性プラズマエッチングによる斜め溝加工では、チャンバー内にPLCを斜めに固定するための治具(以下、「傾斜保持治具」または単に「治具」ともいう。)や電界制御ブロックを用いることが想定されている。これらの治具やブロックは、斜め加工に適した電界分布を提供するものの、別の視点から見ると、チャンバー内の電界分布を通常の状態から乱す要素を設置していることになるため、プラズマの不安定化要因の導入と等価といえる。実際に、傾斜保持治具および電界制御ブロックを用いてPLCの斜め溝加工を行ってみると、エッチングの初期と最後において、斜め溝角度が異なることや、エッチング面の荒れといった問題が見られた。
【0012】
このような斜め溝の角度の変化は、エッチング時間の経過とともに、傾斜保持治具、電界制御ブロック、PLCに電荷が溜まり、この電荷の影響でPLC近傍の電位勾配が変化したことが原因と考えられる。また、同時にこれらの電荷の影響によりイオンやラジカルによるエッチングと側面への保護層堆積とのバランスが崩れ、その結果、エッチングレートの低下や荒れの増加が発生したものと考えられる。
【0013】
以上のように、位置精度や複数個所の一括加工に優れた異方性プラズマエッチングにより、斜め溝の作製が可能であるものの、加工対象をPLCとした場合、所望の斜め溝角度や平滑なミラー面が得られるだけの安定した加工が困難である。
【0014】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、異方性プラズマエッチングを用いて、平面光回路(PLC)に基板面に対し傾斜し且つ傾斜角度の変化の少ない溝を形成する方法およびそのための装置構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、異方性プラズマエッチングで、基板上に形成された光回路に前記基板の面の垂直方向から傾斜した溝を作成する方法であって、対面する上部電極と下部電極との間に、前記下部電極に電気的に接続された傾斜保持手段を用いて前記下部電極の面に対して傾斜した状態に前記光回路を保持することと、前記下部電極に電気的に接続され前記下部電極の面に垂直な面を有する電界制御手段を、当該電界制御手段の前記垂直な面が、前記光回路のエッチングされる面の向かい側の前記光回路の近傍に設置することと、前記上部電極と前記下部電極との間に電圧を印加して、生成したプラズマにより前記光回路をエッチングすることとを含むことを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の方法において、前記傾斜保持手段および前記電界制御手段は、導体または半導体により構成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の方法において、前記傾斜保持手段および前記電界制御手段は、表面に導電性コーティングが施されていることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明は、異方性プラズマエッチング用のチャンバーであって、対面する上部電極と下部電極と、前記上部電極と前記下部電極との間に設置された傾斜保持手段であって、光回路を前記下部電極の面に対して傾斜した状態に保持する傾斜保持手段と、前記上部電極と前記下部電極との間に設置された、前記下部電極の面に垂直な面を有する電界制御手段であって、当該電界制御手段の前記垂直な面が前記光回路のエッチングされる面の向かい側となるように前記光回路の近傍に設置された電界制御手段と、前記傾斜保持手段および前記電界制御手段を前記下部電極に電気的に接続する手段とを備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のチャンバーにおいて、前記傾斜保持手段および前記電界制御手段は、導体または半導体により構成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載のチャンバーにおいて、前記傾斜保持手段および前記電界制御手段は、表面に導電性コーティングが施されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、異方性プラズマエッチングを用いて、平面光回路(PLC)に基板面に対し傾斜し且つ傾斜角度の変化の少ない溝を形成する方法およびそのための装置構成を提供することが可能となる。また、本発明によれば、平滑な面を有する溝が形成され、フォトダイオードやレーザーダイオードの表面実装に好適な損失の小さい光導波路部品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】光導波路の一部の領域に、基板面に対して垂直方向に光路を変換する反射ミラーを設けた構造を説明する図である。
【図2】エッチングチャンバー内のPLC周辺に形成される電界を説明する図である。
【図3】エッチングチャンバー内に電界制御ブロックを設置した場合にPLC周辺に形成される電界を説明する図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる、平面光回路(PLC)に基板面に対し傾斜し且つ傾斜角度の変化の少ない溝を形成する方法およびそのための装置構成を説明するための図である。
【図5】実施例1におけるPLCの概略を示す図である。
【図6】実施例1におけるエッチングチャンバー内の構成を示す図である。
【図7】本願明細書における設置角度と斜め溝角度と称する角度を示す図である。
【図8】実施例1において得た、PLCの設置角度と形成された斜め溝角度との関係を示す図である。
【図9】実施例1において得た、エッチング時間と形成された斜め溝角度との関係を示す図である。
【図10】実施例2において得た、エッチング時間と形成された斜め溝角度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0024】
本発明は、異方性プラズマエッチングを用いて、平面光回路(PLC)に基板面に対し傾斜し且つ傾斜角度の変化の少ない溝を形成する方法およびそのための装置構成を提供する。
【0025】
図4は、エッチングチャンバー内の構成の概略を示す。図4には、チャンバー内に設置された、マスク16が形成されたPLC10も示されている。エッチングチャンバーは内部に、下部電極50と、傾斜保持治具20と、電解制御ブロック30とを備える。
【0026】
下部電極50は、上部電極(図示しない)と対向し、電極面が平行になるように配置されている。下部電極50と上部電極との間に高周波電圧を印加して、チャンバー内にプラズマを発生することができる。また、下部電極50と上部電極との間に電圧を印加することにより、チャンバー内に電界を誘起することができる。
【0027】
傾斜保持治具20および電解制御ブロック30は、導電性テープ40により下部電極にそれぞれ電気的に接続されている。台座を用いて傾斜保持治具20および電界制御ブロック30を固定しても良い。台座を用いる場合には、台座も下部電極20に電気的に接続されるように構成するのが望ましい。
【0028】
傾斜保持治具20は、下部電極50の電極面と被加工物であるPLC10とが作る角度(以下、設置角度ともいう。)が所望の角度となるようにPLC10を保持する。
【0029】
電界制御ブロック30は、下部電極50の電極面に垂直な面を有する(例えば、立方体状、直方体状、三角柱状、半円柱状または板状の)構造体である。電界制御ブロック30は、PLC10の斜め溝が形成される面(エッチングされる面)の向かい側に設置される。より好ましくは、電界制御ブロック30の垂直な面の下部電極側の辺とPLC10の斜め溝が形成される面の下部電極側の辺とが平行になるように設置されている。または、電界制御ブロック30垂直な面の法線とPLC10の斜め溝が形成される面の法線が、下部電極の電極面に垂直な面に含まれるように設置されている。
【0030】
PLC10、傾斜保持治具20および電界制御ブロック30の位置は、エッチング時に形成される電界分布に影響を与えるため、PLCのサイズや所望の傾斜角(PLCの基板面に対する斜め溝の角度)に応じて調整されている。
【0031】
導電性テープ40は、傾斜保持治具20および電解制御ブロック30の電荷を下部電極下部電極へ逃がし、傾斜保持治具20および電解制御ブロック30に対する帯電を防止するように作用する。したがって、傾斜保持治具20および電解制御ブロック30は導電性の材料で構成されていることが望ましく、半導体や誘電体を材料として用いる場合は導電性の薄膜をコーティングしてもよい。
【0032】
同様にPLC10も導電性テープ40などにより、下部電極50へと電気的に接続されていることが望ましい。ここでは、傾斜保持治具20および電解制御ブロック30やPLC10を下部電極50へ接続しているが、要するにイオンが電極に向かって加速するのを妨げずに帯電を防ぐ構造であれば良い。また、電界制御ブロック30、傾斜保持治具20および台座(図示しない)は、分離した別々の構成要素として示しているが、必ずしも別々の構造となっている必要は無く、電界制御ブロック30、傾斜保持治具20および台座のうちの2つまたは3つを一体として構成しても良い。
【0033】
上記構成において、主にPLC20の設置角度や電界制御ブロック30の位置や高さといったパラメータを調整することで、PLC10に所望の角度を有した斜め溝を形成することが可能である。
【0034】
具体的には、PLC10の設置角度が大きいほど、及び/または電界制御ブロック30がPLCに近いほど、より傾斜した斜め溝を作製することができ、逆の場合は、傾斜が小さい溝を作製することができる。電界制御ブロック30がPLCに近い場合には、PLC付近においてイオンを下部電極面に垂直な方向に引き寄せる電界が形成され、PLC10の基板面に対して設置角度に略等しい角度を有する方向にエッチングが進むからである。
【0035】
PLC10における斜め溝の加工領域の高さが電界制御ブロック30の高さより高い場合は、電位勾配の向きはPLCの基板面に対して垂直に近づくため、エッチングがPLCの基板面に対して斜めに進行し難くなる。したがって電界制御ブロック30の高さ(少なくとも下部電極の電極面に垂直な面の高さ)をPLC10の加工領域の高さよりも高くする、または台座にスリット(図示しない)を設け、PLC10を挿入して加工領域が電界制御ブロック30の高さより低くなるように調整してもよい。台座に設けたスリットがPLC10を固定できるようにすることで、台座を傾斜保持治具20の代替として用いても良い。勿論、台座と傾斜保持治具20の双方を用いて、PLC10を所望の位置および傾斜角度に固定してもよい。また、奥行き方向の均一性が必要な場合は、斜め溝の加工領域に対して、電界制御ブロック30と傾斜保持治具20を奥行き方向に十分大きくすることで、加工領域において均一な電界分布を形成することができる。
【0036】
以上のように、傾斜保持治具20および電界制御ブロック30を電気的に電極と接続することで、エッチング時のプラズマの安定性を高めることができる。上記の例では、傾斜保持治具20および電界制御ブロック30を電気的に下部電極50に接続することで、エッチング中に発生する傾斜保持治具20および電界制御ブロック30への帯電を防ぎ、帯電による電界分布の変化を積極的に抑制することができる。PLC10のようにエッチング時間が長い場合、帯電などによりプラズマ安定性が崩れやすいが、本実施形態による構成を用いることで、電気的にプラズマをより安定した状態に保つことが可能となる。その結果、平滑なミラー面かつ、所望の角度の反射ミラーを有するPLCを、異方性プラズマエッチングにより作製することが容易となる。
【0037】
(実施例1)
図5に示す15×20mm2のPLCを被加工対象として用い、異方性プラズマエッチングにより斜め溝を形成した。被加工対象のPLC上にはフォトリソグラフィーにより短辺に対して並行に開口部17が形成されているマスク16を作製した。
【0038】
図6に示すように、高さ15mmの電界制御ブロック30と高さ10mmの傾斜保持治具20を用いてPLC10を固定した。電界制御ブロック30および傾斜保持治具20はカーボンを材料としたものを一つずつ用意した。エッチングチャンバー内の下部電極50上に傾斜保持治具20を設置し、PLCから1mm離した位置に電界制御ブロック30を設置した。そしてそれぞれを下部電極50と導電性カーボンテープ40を用いて電気的に接続した。
【0039】
PLCの基板面に対して45度の傾斜を有する斜め溝を形成するための条件を求めるため、30度、45度、60度の角度でPLCをチャンバー内に設置し、それぞれエッチングを行った。また、累計エッチング時間で1時間、2時間、4時間のときにチャンバーから取り出し、斜め溝の角度と面荒れの評価を行った。設置角度および斜め溝角度と呼称する箇所を図7に示す。
【0040】
図8に設置角度に対する各エッチング時間における斜め溝角度を示す。各エッチング時間のプロットがほとんど重なっていることから、電界分布やプラズマが変化無く、安定してエッチングされていることがわかる。また設置角度に対するプロットから、45度の傾斜を有する斜め溝の加工には、設置角度50度付近が最適であることがわかった。ミラー面の算術平均荒さは70nm以下であり、平滑な面が形成されていることを確認した。
【0041】
また、本発明の効果を検証するため、石英ガラスを材料とした上記と同サイズの傾斜保持治具を用意し、上記と同様の実験を行った。図9にエッチング時間に対する各設置角度における斜め溝角度を示す。各設置角度において、エッチング時間の増加とともに斜め溝角度も大きくなっている。ミラー面の算術平均粗さは120nm程度であった。これらの結果は、エッチングが進むにつれて、傾斜保持治具および電界制御ブロックが帯電し、電界分布が変化したため、プラズマが不安定になったことを示している。
【0042】
以上の実験により、エッチングに用いる傾斜保持治具および電界制御ブロックや設置したPLCの帯電を防ぐことで、電界分布およびプラズマが安定し、均一なエッチングが可能であることを確認し、本発明の有効性を確かめた。
【0043】
(実施例2)
実施例1では、石英ガラスを材料とした傾斜保持治具を用いて斜め溝の加工を行った場合、エッチング時間が進むにつれて電界分布が変化するため、均一なエッチングが出来なかった。そこでエッチングに用いる傾斜保持治具および電界制御ブロックの表面にスパッタでAuをコーティングし、下部電極と電気的に接続することで、傾斜保持治具および電界制御ブロックの帯電の抑制を試みた。使用したPLC、および傾斜保持治具のサイズは実施例1と同様である。図10にエッチング時間に対する各設置角度における斜め溝角度を示す。図9と比較して、エッチングが進んでも、斜め溝角度の変化は小さいことが明らかとなった。したがって、電界分布およびプラズマがより安定なエッチングであることがわかる。
【0044】
以上の実験により、エッチングに用いる傾斜保持治具および電界制御ブロックが誘電体のような帯電しやすい材料であっても、導電性のコーティングを施すことで、帯電を防ぎ、均一なエッチングが容易になることを確認し、本発明の有効性を確かめた。
【符号の説明】
【0045】
10 PLC
11 基板
12 アンダークラッド
13 コア
14 オーバークラッド
15 斜め溝
16 マスク
17 開口部
20 傾斜保持治具
30 電界制御ブロック
40 誘電性テープ
50 下部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異方性プラズマエッチングで、基板上に形成された光回路に前記基板の面の垂直方向から傾斜した溝を作成する方法であって、対面する上部電極と下部電極との間に、
前記下部電極に電気的に接続された傾斜保持手段を用いて前記下部電極の面に対して傾斜した状態に前記光回路を保持することと、
前記下部電極に電気的に接続され前記下部電極の面に垂直な面を有する電界制御手段を、当該電界制御手段の前記垂直な面が、前記光回路のエッチングされる面の向かい側の前記光回路の近傍に設置することと、
前記上部電極と前記下部電極との間に電圧を印加して、生成したプラズマにより前記光回路をエッチングすることと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記傾斜保持手段および前記電界制御手段は、導体または半導体により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記傾斜保持手段および前記電界制御手段は、表面に導電性コーティングが施されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
異方性プラズマエッチング用のチャンバーであって、
対面する上部電極と下部電極と、
前記上部電極と前記下部電極との間に設置された傾斜保持手段であって、光回路を前記下部電極の面に対して傾斜した状態に保持する傾斜保持手段と、
前記上部電極と前記下部電極との間に設置された、前記下部電極の面に垂直な面を有する電界制御手段であって、当該電界制御手段の前記垂直な面が前記光回路のエッチングされる面の向かい側となるように前記光回路の近傍に設置された電界制御手段と、
前記傾斜保持手段および前記電界制御手段を前記下部電極に電気的に接続する手段と
を備えたことを特徴とするチャンバー。
【請求項5】
前記傾斜保持手段および前記電界制御手段は、導体または半導体により構成されていることを特徴とする請求項4に記載のチャンバー。
【請求項6】
前記傾斜保持手段および前記電界制御手段は、表面に導電性コーティングが施されていることを特徴とする請求項4に記載のチャンバー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−42515(P2012−42515A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181030(P2010−181030)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】